(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】索道設備の電力供給装置
(51)【国際特許分類】
B61B 12/02 20060101AFI20230123BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B61B12/02 H
B61B12/02 C
H02J7/00 301B
(21)【出願番号】P 2018209357
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】杉本 瑞樹
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526570(JP,A)
【文献】特表昭60-502199(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0266776(US,A1)
【文献】特開平03-106796(JP,A)
【文献】特開2009-148570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 12/02
H02J 7/00
B60M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停留場において搬器の握索機が走行する走行レールと、前記握索機の端部に備えたエンドローラーを誘導するコ字形状のガイドレールとを備えた索道設備において、
前記ガイドレールの前記握索機側の側面に延設された給電レールと、
前記握索機の前記エンドローラーを支持する軸から前記給電レール側に延びるアームと、該アームの先端部に設けられた集電子と、を備え、
該集電子と前記給電レールが当接することにより搬器に給電することを特徴とする索道設備における電力供給装置。
【請求項2】
前記給電レールは、内部に電源レールを延設した溝を備え、前記集電子は、前記溝と嵌合するブラシを備えたことを特徴とする請求項1記載の索道設備における電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道設備の停留場において、搬器に電力を供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
索道設備は、空中に張架した索条に搬器を懸垂し、人員や物資を運ぶ輸送設備であり、多くは山岳傾斜地における人員の移動手段や、スキー場におけるスキーヤーやスノーボーダーの移動手段として利用されている。また、索道設備は、鉄道等のように地上にレール等を敷設する必要がなく線路に要する用地が少なくてすむために、特に海外においては都市部の公共交通機関として運用されるようになってきている。
【0003】
このように、都市部等においてゴンドラリフトやロープウェイのように閉鎖型搬器を運用する索道設備を、日常的な交通機関として運用するにあたっては、乗客の快適性を向上するために各搬器には空調装置や客車内の照明装置等を備えることが望ましい。しかしながら従来周知のように、索道設備においては線路中を移動する搬器へ電力を供給することが困難なことから、一般的には小型の蓄電池を搬器に備え、これを運行終了後に停留場において充電して使用しており、空調装置等の消費電力が大きな機器を搬器に備えることは困難であった。
【0004】
このように運行終了後に充電を行うには、多数の搬器を運用するゴンドラリフト等においては多数の充電器が必要となり費用が嵩むことから、索道設備の運行中に停留場内で搬器が移動しながら蓄電池の充電を行うことが従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、搬器外面に取付けられ蓄電池に接続された充電用コネクタと、索道の途中に配置された停留所内に設けられ、搬器が停留所内を移動する間に充電用コネクタと接触する電気供給子と、電気供給子に接続された電源供給装置とを備え、搬器が停留場内を移動していても蓄電池の充電を行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来技術においては、スパーク等のトラブルを防ぐために充電用コネクタと電気供給子との間には、埃やゴミ等が極力付着しないことが望ましい。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電力供給側と蓄電池側との接触面を良好な状態に保つことのできる索道設備の電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、停留場において搬器の握索機が走行する走行レールと、前記握索機の端部に備えたエンドローラーを誘導するコ字形状のガイドレールとを備えた索道設備において、前記ガイドレールの前記握索機側の側面に延設された給電レールと、前記握索機の前記エンドローラーを支持する軸から前記給電レール側に延びるアームと、該アームの先端部に設けられた集電子と、を備え、該集電子と前記給電レールが当接することにより搬器に給電することを特徴としている。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の索道設備の電力供給装置において、前記給電レールは、内部に電源レールを延設した溝を備え、前記集電子は、前記溝と嵌合するブラシを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給電レールをコ字形状のガイドレールの内側側面に設けたことにより、埃やゴミ等が給電レールに付着し辛くなり、ブラシと電源レールとの接触を良好に保つことができる。また、給電レールに溝を形成し、この溝にブラシが嵌合するようにしたことによりブラシと電源レールとの接触が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態においては、索道設備の代表例として自動循環式索道により説明を行う。
図1は、自動循環式索道の模式図である。自動循環式索道10は、線路の端部に停留場11及び停留場12を有しており、各停留場11、12には、原動滑車13及び従動滑車14を回転自在に備えている。原動滑車13と従動滑車14には、索条15が無端状に巻き掛けられており、原動滑車13を回転駆動することにより、索条15は両停留場11、12間を循環して移動する。索条15には、線路中で所定の間隔となるように複数の搬器18が懸垂される。
【0012】
搬器18は索条15に着脱自在であって、線路中では索条15に取り付けられて索条15とともに移動し、停留場11、12内では索条15から切り離される。停留場11、12には、平面視U字状の走行レール16及び走行レール17がそれぞれ敷設されており、索条15から切り離された搬器18は、走行レール16、17に沿って次のように移動する。まず、停留場11、12に到着した搬器18は、索条15から切り離されるとともに、走行レール16、17に乗り移り、走行レール16、17に沿って設けられた移送装置により減速させられる。乗客が乗降可能な速度まで搬器18が減速すると、その速度を保って停留場11、12内を出発側へ折返し、この間に乗客の乗降が行われる。出発側へ折り返した搬器18は、索条15の速度と同一速度にまで加速させられた後、索条15に取り付けられるとともに走行レール16、17から離脱して線路中へ出発する。
【0013】
図2は、停留場11、12の一部を示した図である。搬器18の握索機20には、走行レール16、17上を転動する走行ローラー21を備えるとともに、走行ローラー21とは反対側の端部にエンドローラー22を備えている。エンドローラー22の位置には、走行レール16、17の外周と平行してコ字形状のガイドレール19が延設されており、これにより停留場11、12で進行する搬器18の姿勢が一定に保たれる。ガイドレール19の内側側面に沿っては、通電された給電レール23が延設されており、一方、握索機20には給電レール23に接触する集電子24を備えている。集電子24には電線ケーブル25が接続されており、電線ケーブル25の他端は搬器18内の蓄電池26に接続されている。停留場11、12内においては、給電レール23と集電子24とが接触して搬器18が移動し、この間に搬器18側へ電力が供給され蓄電池26が充電される。
【0014】
図3は、握索機の正面図であり、
図4は、握索機の平面図である。集電子24は、ブラケット27と、アーム28と、ブラシ29とを備えている。ブラケット27は、握索機20のエンドローラー22取付部付近に一端部を固着されており、平面視においてガイドレール19側へ斜めに突出している。ブラケット27のガイドレール19側の端部には、アーム28が水平方向へ回動可能に枢支されている。アーム28の先端部には、伝導体からなる複数のブラシ29が搬器18の移動する方向へ延伸する形状で取り付けられている。アーム28の中間部とブラケット27の先端部とには、バネ30の端部がそれぞれ連結されており、これによりブラシ29がガイドレール19側方向へ回動するようにバネ力が付勢されている。
【0015】
一方、ガイドレール19の握索機20側の側面には、給電レール23を備えている。給電レール23の握索機20側には、集電子24の各ブラシ29に対応する位置に握索機20の移動する方向に沿って溝32が形成されており、各溝32の底部には伝導体からなる電源レール31が延設されている。各電源レール31には電気が通電されており、溝32にブラシ29が嵌合するとともにブラシ29と電源レール31が当接して搬器18側へ給電される。
【0016】
以上の構成によれば、給電レール23をコ字形状のガイドレール19の内側側面に設けたことにより、給電レール23の給電面が垂直面となって埃やゴミ等が給電面に付着し辛くなっており、ブラシ29と電源レール31との接触状態を良好に保つことができる。また、給電レール23に溝32を形成し、この内部に電源レール31を延設したことにより、さらに埃やゴミ等が電源レール31に付着し辛くなるとともに、溝32にブラシ29が嵌合することにより、ブラシ29と電源レール31との接触位置が特定の位置に保たれて接触が確実になる。また、本構成によれば、給電レール23を取り付けるブラケット等を必要としないので、既存の設備にも容易に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
10 自動循環式索道
11 停留場
12 停留場
13 原動滑車
14 従動滑車
15 索条
16 走行レール
17 走行レール
18 搬器
19 ガイドレール
20 握索機
21 走行ローラー
22 エンドローラー
23 給電レール
24 集電子
25 電線ケーブル
26 蓄電池
27 ブラケット
28 アーム
29 ブラシ
30 バネ
31 電源レール
32 溝