(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】歯間清掃具、歯間清掃具の本体、歯間清掃具の製造方法、および金型
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20230123BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61C15/04 501
A46B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2018216650
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100170449
【氏名又は名称】山本 英彦
(72)【発明者】
【氏名】南部 佑将
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-150709(JP,A)
【文献】特開2000-166945(JP,A)
【文献】特開2016-165547(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179356(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯間に挿入される線材と、
前記線材を引張した状態で、前記線材の一端を支持する一端部と他端を支持する他端部とを有する
とともに、概略平板状に形成され、前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に前記平板状の厚さ方向に貫通する貫通孔を有する支持部と、
前記線材に沿って前記支持部の前記一端部および前記他端部の少なくともいずれか一方から前記線材の途中まで延び
、かつ、前記線材を中心として前記線材を包むように形成される軸心部と、
同じく前記線材の途中まで延び、前記線材を中心として前記軸心部を包むように形成され、かつ、前記線材の径方向の外側に突出する複数の突起部を有するブラシ部とを備え、
前記ブラシ部は、前記一端部および前記他端部の少なくとも一方を基端部とし
、かつ、弾性材料で形成さ
れ、
前記支持部は、前記基端部となる前記少なくとも一方に前記貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔に、前記ブラシ部を形成する弾性材料が流し込まれて充填されることを特徴とする、歯間清掃具。
【請求項2】
前記支持部と前記軸心部とは合成樹脂により一体的に形成される、請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記支持部
が前記平板状の面の外側から凹む凹部を有し、
前記凹部に弾性材料
が充填
され、
前記ブラシ部と、前記ブラシ部から前記支持部及び使用者に把持される把持部まで連続して設けられる接続部
とが前記充填される弾性材料により一体的に形成されている、請求項
1または2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記把持部は、前記一端部または前記他端部のいずれか一方側に設けられており、
前記ブラシ部は、把持部側の前記一端部および前記他端部の少なくとも一方を前記基端
部としている、請求項
3に記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記線材、前記支持部、使用者に把持される把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、
前記ブラシ部を弾性材料
により形成するブラシ部形成工程とを
有する請求項1または2に記載の歯間清掃具を製造する製造方法であって、
前記本体形成工程においては、前記本体を形成する合成樹脂を流し込むための本体金型が前記軸心部に対応した凹所を有するように構成するとともに、前記本体金型の所定の位置に前記線材を配置することにより前記線材が中心となるように前記軸心部を形成し、
前記ブラシ部形成工程においては、前記ブラシ部を形成する弾性材料を流し込むための接続体金型が前記ブラシ部を形成するための凹所を有するように構成するとともに、前記本体を、前記軸心部が前記ブラシ部の概略中心に位置するように前記接続体金型に挟み込んで配置した状態で弾性材料を流し込むことを特徴とする歯間清掃具の製造方法。
【請求項6】
前記線材、前記支持部、使用者に把持される把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、
前記ブラシ部を弾性材料
により形成するブラシ部形成工程とを
有する請求項1または2に記載の歯間清掃具を製造する製造方法であって、
前記本体形成工程においては、前記本体の金型である本体金型において前記貫通孔を形成するための柱状部が突設されるように構成し、かつ、前記本体金型に合成樹脂を流し込み、
前記ブラシ部形成工程においては、前記支持部が前記平板状の面の外側から凹む凹部に弾性材料を流し込むことを特徴とする歯間清掃具の製造方法。
【請求項7】
前記柱状部は、前記本体金型において、前記貫通孔が前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に形成される位置に突設されることを特徴とする請求項6に記載の歯間清掃具の製造方法。
【請求項8】
前記線材、前記支持部、前記把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、
前記ブラシ部
及び前記接続部を弾性材料
により形成するブラシ部形成工程とを
有する請求項3に記載の歯間清掃具を製造する製造方法であって、
前記本体形成工程においては、前記本体を形成する合成樹脂を流し込むための本体金型が前記凹部を形成するための凸状部を有するように構成するとともに、前記本体金型を、前記凹部と前記線材側とを連続させるための溝部を有するように構成し、
前記ブラシ部形成工程においては、前記凹部に前記ブラシ部及ぶ前記接続部を形成するための弾性材料を流し込むことを特徴とする歯間清掃具の製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8の何れかに記載された歯間清掃具の製造方法に用いる1組の金型であって、
一対の金型片を有するとともに、これらの内側に前記本体を形成するための合成樹脂を流し込む本体金型と、前記一対の金型片とは異なる一対の金型片を有するとともに、これらの内側に前記本体を挟み込んだ状態で前記ブラシ部を形成するための弾性材料を流し込む接続体金型とを含む1組の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間に挿入される線材とブラシ部とを備える歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯間清掃具として、使用者の指によって摘まんで把持される把持部と、その把持部の先端側に設けられ、口腔内に案内される略コ字状の支持部とを備え、コ字状の両端に線材を引張した状態でかけ渡した歯間清掃具がある。そのような歯間清掃具は、線材を歯間に挿入し、歯間に挟まった食べ物かすを掻き出して除去できるようなっている。
【0003】
このような歯間清掃具には、歯間の清掃性を向上すべく、特許文献1に示すように、線材沿って、線材の径方向外側に向けて突出する複数の突起部を周方向に渡って形成したブラシ部を備えるものがある。このような線材にブラシ部を形成した歯間清掃具によれば、線材のうち、ブラシ部が形成されていない部分から歯間に挿入した後、線材に沿ってブラシ部を歯間に挿入することにより、ブラシ部を円滑に歯間に誘導し、清掃性の高いブラシ部で歯間を清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のように線材にブラシ部を形成した歯間清掃具では、ブラシ部が容易に線材から脱離してしまうという問題があった。特に、口腔を清掃している際にブラシ部が脱離して口腔内に残ると、誤ってブラシ部を嚥下してしまうという危険もあった。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑み、線材とブラシ部とを備える歯間清掃具において、ブラシ部が線材から脱離してしまうことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る歯間清掃具は、歯間に挿入される線材と、前記線材を引張した状態で、前記線材の一端を支持する一端部と他端を支持する他端部とを有する支持部と、前記線材に沿って前記支持部の前記一端部および前記他端部の少なくともいずれか一方から前記線材の途中まで延び、前記線材の径方向の外側に突出する複数の突起部を有するブラシ部とを備え、前記ブラシ部は、前記一端部および前記他端部の少なくとも一方を基端部として、弾性材料で形成されていることを特徴とする。また、歯間に挿入される線材と、前記線材を引張した状態で、前記線材の一端を支持する一端部と他端を支持する他端部とを有するとともに、概略平板状に形成され、前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に前記平板状の厚さ方向に貫通する貫通孔を有する支持部と、前記線材に沿って前記支持部の前記一端部および前記他端部の少なくともいずれか一方から前記線材の途中まで延び、かつ、前記線材を中心として前記線材を包むように形成される軸心部と、同じく前記線材の途中まで延び、前記線材を中心として前記軸心部を包むように形成され、かつ、前記線材の径方向の外側に突出する複数の突起部を有するブラシ部とを備え、前記ブラシ部は、前記一端部および前記他端部の少なくとも一方を基端部とし、かつ、弾性材料で形成され、 前記支持部は、前記基端部となる前記少なくとも一方に前記貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔に、前記ブラシ部を形成する弾性材料が流し込まれて充填されてもよい。さらに、前記支持部と前記軸心部とは合成樹脂により一体的に形成されてもよい。
【0008】
このような歯間清掃具によれば、支持部の一端部および他端部の少なくともいずれか一方を基端としてブラシ部が弾性材料により形成されている。これにより、ブラシ部が支持部に強固に固定されるため、ブラシ部が支持部から剥離してしまうといった不具合を抑止することができる。
【0009】
(2)前記支持部は、概略平板状に形成され、かつ、前記ブラシ部の基端部となる前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に前記平板状の厚さ方向に貫通する貫通孔を有し、前記ブラシ部は、前記貫通孔に弾性材料を充填するように形成されていてもよい。
【0010】
このような歯間清掃具によれば、支持部に形成された貫通孔に弾性材料を充填するようにブラシ部が形成されることにより、ブラシ部が支持部に強固に固定されるため、ブラシ部が支持部から剥離してしまうといった不具合を抑止することができる。
【0011】
(3)前記した歯間清掃具によれば、前記支持部は前記平板状の面の外側から凹む凹部を有し、前記凹部に弾性材料を充填するよう前記ブラシ部に接続する接続部を形成されていてもよい。また、前記支持部が前記平板状の面の外側から凹む凹部を有し、前記凹部に弾性材料が充填され、前記ブラシ部と、前記ブラシ部から前記支持部及び使用者に把持される把持部まで連続して設けられる接続部とが前記充填される弾性材料により一体的に形成されてもよい。このような歯間清掃具によれば、凹部に弾性材料を充填するように接続部が形成されることにより、ブラシ部が支持部に強固に固定されるため、ブラシ部が支持部から剥離してしまうといった不良を抑止することができる。
【0012】
(4)さらに、前記支持部から連続し、使用者に把持される把持部を備え、前記接続部を形成する前記弾性材料は、前記把持部まで連続していてもよい。このような歯間清掃具によれば、弾性材料が把持部まで形成されることにより、弾性部材のグリップ力により歯間清掃具の把持が容易になる。
【0013】
(5)また、前記把持部は、前記一端部または前記他端部のいずれか一方側に設けられており、前記ブラシ部は、把持部側の前記一端部および前記他端部の少なくとも一方を前記基端部としていてもよい。このような歯間清掃具によれば、ブラシ部が把持部側に形成されることになるため、ブラシ部の基端から把持部まで弾性材料を少量にすることができる。
【0014】
(6)本発明に係る歯間清掃具の本体は、歯間に挿入される線材と、前記線材の一端を支持する一端部と他端を支持する他端部とを有し、平板状に形成される支持部と、前記線材に沿って前記支持部の前記一端部および前記他端部の少なくともいずれか一方から前記線材の途中まで延びる軸心部とを備えることを特徴とする。
【0015】
この歯間清掃具の本体によれば、線材と、線材を支持する支持部と、支持部の一端部および他端部の少なくともいずれか一方から線材の途中まで延びる軸心部とを備えることにより、軸心部に沿って、ブラシ部を形成することができる。これにより、軸心部にブラシ部が強固に結合した歯間清掃具を容易に製造することができる。
【0016】
(7)前記した歯間清掃具の本体において、前記支持部は、前記軸心部側となる前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に前記平板状の厚さ方向に貫通する貫通孔を有してもよい。この歯間清掃具によれば、支持部に形成された貫通孔に弾性材料を充填するようにブラシ部が形成されることにより、ブラシ部が支持部に強固に固定されるため、ブラシ部が支持部から剥離してしまうといった不具合を抑止することができる。
【0017】
(8)本発明に係る歯間清掃具の製造方法は、歯間清掃具の本体を形成する本体形成工
程と、前記歯間清掃具の本体にブラシ部を弾性材料から形成するブラシ部形成工程とを含
み、前記本体は、歯間に挿入される線材と、前記線材の一端を支持する一端部と他端を支
持する他端部とを有し、平板状に形成される支持部と、前記線材に沿って前記支持部の前
記一端部および前記他端部の少なくともいずれか一方から前記線材の途中まで延びる軸心
部とを備え、前記支持部は、前記平板状の面の外側から凹む凹部を少なくとも一方の面側
に有し、前記凹部は、前記軸心部に連続する溝部を形成することを特徴とする。
また、前記線材、前記支持部、使用者に把持される把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、前記ブラシ部を弾性材料により形成するブラシ部形成工程とを有する歯間清掃具を製造する製造方法であって、前記本体形成工程においては、前記本体を形成する合成樹脂を流し込むための本体金型が前記軸心部に対応した凹所を有するように構成するとともに、前記本体金型の所定の位置に前記線材を配置することにより前記線材が中心となるように前記軸心部を形成し、前記ブラシ部形成工程においては、前記ブラシ部を形成する弾性材料を流し込むための接続体金型が前記ブラシ部を形成するための凹所を有するように構成するとともに、前記本体を、前記軸心部が前記ブラシ部の概略中心に位置するように前記接続体金型に挟み込んで配置した状態で弾性材料を流し込んでもよい。
また、前記線材、前記支持部、使用者に把持される把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、前記ブラシ部を弾性材料により形成するブラシ部形成工程とを有する歯間清掃具を製造する製造方法であって、前記本体形成工程においては、前記本体の金型である本体金型において前記貫通孔を形成するための柱状部が突設されるように構成し、かつ、前記本体金型に合成樹脂を流し込み、前記ブラシ部形成工程においては、前記支持部が前記平板状の面の外側から凹む凹部に弾性材料を流し込んでもよい。そして、前記柱状部は、前記本体金型において、前記貫通孔が前記一端部および前記他端部の少なくとも一方に形成される位置に突設されてもよい。
さらに、前記線材、前記支持部、前記把持部及び前記軸心部を含む歯間清掃具の本体を形成する本体形成工程と、前記ブラシ部及び前記接続部を弾性材料により形成するブラシ部形成工程とを有する歯間清掃具を製造する製造方法であって、前記本体形成工程においては、前記本体を形成する合成樹脂を流し込むための本体金型が前記凹部を形成するための凸状部を有するように構成するとともに、前記本体金型を、前記凹部と前記線材側とを連続させるための溝部を有するように構成し、前記ブラシ部形成工程においては、前記凹部に前記ブラシ部及ぶ前記接続部を形成するための弾性材料を流し込んでもよい。
【0018】
この歯間清掃具の製造方法によれば、本体形成工程により、線材を支持する支持部が凹部を備え、凹部が線材に連続する溝部を形成された歯間清掃具の本体が形成され、ブラシ部形成工程において、本体の凹部から溝部を介して弾性部材を軸心部から線材に向けて流しこみ、ブラシ部を形成することが可能となる。これにより、線材にブラシ部が強固に結合した歯間清掃具を容易に製造することができる。
【0019】
(9)前記した歯間清掃具の製造方法において、記ブラシ部形成工程は、前記支持部から連続する把持部まで弾性部材により接続部を形成してもよい。この歯間清掃具の製造方法によれば、弾性材料が把持部まで形成され、弾性部材のグリップ力により把持が容易な歯間清掃具を容易に製造することができる。
【0020】
(10)本発明に係る歯間清掃具の金型は、一端から他端に引張された状態の線材の前
記一端を支持する一端部と、前記他端を支持する他端部とを有し、平板状に形成される支
持部と、前記線材に沿って前記支持部の前記一端部および前記他端部の少なくともいずれ
か一方から前記線材の途中まで延びる軸心部とを形成する金型の凹所と、前記凹部内の前
記支持部の前記一端部および他端部の少なくともいずれか一方に貫通孔を形成するための
柱状部を備えることを特徴とする。また、歯間清掃具の製造方法に用いる1組の金型であって、一対の金型片を有するとともに、これらの内側に前記本体を形成するための合成樹脂を流し込む本体金型と、前記一対の金型片とは異なる一対の金型片を有するとともに、これらの内側に前記本体を挟み込んだ状態で前記ブラシ部を形成するための弾性材料を流し込む接続体金型とを含む1組の金型であってもよい。
【0021】
この歯間清掃具の本体金型によれば、歯間清掃具は、線材を支持する支持部の一端部および他端部の少なくともいずれか一方に線材の途中まで延びる軸心部が形成される。このとき、金型は、軸心部の形成される側の一端部または他端部の凹部内に、貫通孔を形成するための柱状部を備えることにより、軸心部までの本体を形成する材料の流れが制御され、線材に沿った軸心部を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ブラシ部が線材から脱離してしまうことを防止することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形形態に係る歯間清掃具を示すであり、(A)は、歯間清掃具の正面図、(B)は歯間清掃具の上面図、(C)は、歯間清掃具の底面図、(D)は歯間清掃具の左側面図、(E)は歯間清掃具の右側面図を示す。
【
図3】歯間清掃具の本体を形成するための本体金型の正面図を示す。
【
図4】歯間清掃具の本体金型の断面図を示し、
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、それぞれ、
図3における断面T、断面Uおよび断面Vにおける本体金型の断面図を示す。
【
図5】歯間清掃具の本体を示すであり、(A)は、歯間清掃具の本体の正面図、(B)は歯間清掃具の本体の上面図、(C)は、歯間清掃具の本体の底面図、(D)は歯間清掃具の本体の左側面図、(E)は歯間清掃具の本体の右側面図を示す。
【
図6】歯間清掃具の接続体を形成するための接続体金型の正面図を示す。
【
図7】
図6の断面Wにおける接続体金型の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態に係る歯間清掃具1および、歯間清掃具の製造方法について、
図1~
図7を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、歯間清掃具1を示すであり、(A)は、歯間清掃具1の正面図、(B)は歯間清掃具1の上面図、(C)は、歯間清掃具1の底面図、(D)は歯間清掃具1の左側面図、(E)は歯間清掃具1の右側面図を示す。なお、歯間清掃具1の背面図は、図示しないが、(A)の正面図と左右を逆にして同じになる。また、(A)の斜線部は、後述する接続部50を示す。
【0026】
図1に示すように、歯間清掃具1は、歯間に挿入される線材10と、線材10を引張した状態で支持する支持部20と、支持部20に連続し、歯間清掃具1を操作する者が把持する把持部30と、線材10に沿って支持部20の他端部22から線材10の途中まで延びる軸心部60(
図5を参照)と、軸心部60を覆うように、線材10に沿って支持部20の他端部22から線材10の途中まで延びるブラシ部40と、ブラシ部40から連続して支持部20および把持部30まで設けられる接続部50とを有する。
【0027】
線材10は、例えば、数百本のフィラメントを束ねて1mあたり50回程度の撚りをかけて製造される。フィラメントは撚りをかけることにより相互に密着し、断面が略円形に形成される。また、フィラメントは、ナイロンのような合成樹脂を材料としている。
【0028】
支持部20は、線材10の一端を支持する一端部21と他端を支持する他端部22とを有し、一端部21から他端部22にかけて弧状に形成されている。支持部20と線材10とは、それぞれが弧と弦からなる弓形状に構成されている。本実施形態において、把持部30は、支持部20の他端側に連続して設けられている。
【0029】
支持部20と把持部30と軸心部60とはポリプロピレンのような合成樹脂を材料として一体的に平板状に形成されている。すなわち、支持部20と把持部30と軸心部60とは本体形成工程にて同時に形成される。
【0030】
図2は、
図1における仮想的な断面Sのブラシ部40の断面を示す断面図である。
図2に示すように、ブラシ部40は、線材10および軸心部60を包むように軸心部60の外周に沿って形成されており、線材10の径方向の外側に突出する複数の突起部41を有する。なお、軸心部60は、線材10を包むように線材10の外周に沿って形成されている。
【0031】
突起部41は、線材10の延在方向における断面視で十字状になるように四方に突出し、また、異なる断面では、周方向に位相をずらして四方に突出している。本実施形態において、軸心部60は、線材10を中心として線材10を包むように形成されており、ブラシ部40は、線材10を中心として軸心部60を包むように形成されている。
【0032】
再び
図1を参照するに、接続部50は、ブラシ部40から連続し、平板状の支持部20および把持部30において、正面側および背面側の両面に埋め込まれるように支持部20の他端部22から略中央部にかけてと、把持部30の終端付近まで、支持部20と把持部30とに沿って延在している。
【0033】
接続部50において、支持部20の他端部22に対応する部分がブラシ部40の基端部となっている。接続部50とブラシ部40とはエラストマーのような弾性材料により一体的に形成されている。すなわち、ブラシ部40と接続部50とはブラシ部形成工程にて同時に形成される。
【0034】
歯間清掃具1は、支持部20と把持部30と軸心部60とを含む歯間清掃具の本体11と、ブラシ部40と接続部50とを含む接続体とで異なる工程で製造される。歯間清掃具の本体11は接続部50が埋め込まれた状態となる凹部11aを有し(
図5を参照)、接続部50が凹部11aに嵌り込んだ状態で、歯間清掃具1は、ブラシ部40を除いて、平板状に形成されている。すなわち、接続部50は、歯間清掃具の本体11の凹部11aに対して、いわゆる面一の状態となる。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る歯間清掃具の製造方法について説明する。
【0036】
歯間清掃具の製造方法は、主に、歯間清掃具の本体11を形成する本体形成工程と、歯間清掃具の本体11にブラシ部40および接続部50を形成するブラシ部形成工程とを含む。すなわち、歯間清掃具1は、いわゆる二色成型により製造される。
【0037】
ここで、
図3は、歯間清掃具の本体11を形成するための本体金型Mの正面図、
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)は、それぞれ、
図3の断面T、断面Uおよび断面Vにおける本体金型Mの断面図を示す。なお、
図3および
図4の本体金型Mにおいて、説明を簡単にするために、線材10を挟み込むための左右方向に延在する凹所については、図示を省略する。
【0038】
また、
図5は、歯間清掃具の本体11を示すであり、(A)は、歯間清掃具の本体11の正面図、(B)は歯間清掃具の本体11の上面図、(C)は、歯間清掃具の本体11の底面図、(D)は歯間清掃具の本体11の左側面図、(E)は歯間清掃具の本体11の右側面図を示す。なお、歯間清掃具の本体11の背面図は、図示しないが、(A)の正面図と左右を逆にして同じになる。
【0039】
さらに、
図6は、歯間清掃具の接続体を形成するための接続体金型Nの正面図を示し、
図7は、
図6の断面Wにおける接続体金型Nの断面図を示す。
【0040】
歯間清掃具の製造方法において、まず、本体形成工程では、従来よく知られた射出成型により、合成樹脂を材料として圧力をかけながら本体金型Mに流し込まれることにより、歯間清掃具の本体11が形成される。このとき、本体金型には線材10が所定の位置に配置されており、歯間清掃具の本体11は、線材10を含む。なお、線材10は、支持部20の外側部分が切断されて、支持部20の内側のみが残される。
【0041】
歯間清掃具の本体形成工程では、本体金型Mは、概略前後対称の一対の金型片(
図3を参照)により形成されており、合成樹脂が流し込まれる凹所M11を内側にして、一対の金型片を合わせる。その後、金型片に形成された材料導入孔(図示なし)から合成樹脂を材料として導入することにより、金型の内側に設けられた凹所M11に適合した形状に歯間清掃具の本体11が形成される。
【0042】
ここで、
図3および
図4に示すように、本体金型Mの一対の金型片のそれぞれには、流し込まれた合成樹脂が支持部20と把持部30と軸心部60とを形成するように、支持部20と把持部30とに対応した凹所M11と、軸心部60に対応した凹所M60とが形成されている(
図4(A)を参照)。また、支持部20と把持部30に対応する凹所M11内には、後の工程でエラストマーが流し込まれ凹部11aを形成するための凸状部M11aが形成されている。
【0043】
本体金型Mにおいて、支持部20の他端部22に対応する場所には、線材10に連続する溝部24に対応する突出部M24が形成される(
図4(B)を参照)。さらに、本体金型Mは、凹所M11内の所定の場所に貫通孔23を形成するための柱状部M23が形成されている(
図4(C)を参照)。ここで、柱状部M23が形成されることにより、合成樹脂の流れが制御され、軸心部60の概略中心に線材10が位置するように、軸心部60を形成することができる。すなわち、本体金型Mに合成樹脂を流し込む際に、柱状部M23は、合成樹脂が線材10に直接流れ込むことを防止する。これにより、線材10は合成樹脂から受ける圧力が軽減されるため、ぶれることなく、所定の位置に維持された状態で、周囲に合成樹脂の軸心部60を形成される。これにより、線材10が中心となるように軸心部60を形成することができる。
【0044】
図5に示すように、本体形成工程において形成された歯間清掃具の本体11は、歯間に挿入される線材10と、線材10の一端を支持する一端部21および他端を支持する他端部22を有する支持部20と、把持部30と、軸心部60とを備え、概略開平板状に形成されている。また、支持部20は、平板状の両面の外側から凹む凹部11aを両面に有し、当該凹部11aは、線材10に連続する溝部24を形成されている。
【0045】
さらに、支持部20に位置する凹部11aは、平板状の両面において同一形状に形成されており、凹部11aの形成された支持部20の他端部22、すなわちブラシ部40の基端に相当する位置には、両面から貫通する貫通孔23が形成されている。貫通孔23は、断面円形に形成されている。しかし、貫通孔23の断面形状は、他の形状であってもよい。
【0046】
歯間清掃具の製造方法において、次に、ブラシ部形成工程では、従来よく知られた射出成型により、後述する接続体金型Nに歯間清掃具の本体11を配置し、接続体金型N内にエラストマーを弾性材料として圧力をかけながら流し込むことにより、ブラシ部40および接続部50を形成する。
【0047】
具体的には、歯間清掃具の接続体形成工程では、接続体金型Nは、概略前後対称の一対の金型片(
図6を参照)により形成されており、弾性材料であるエラストマーが流し込まれる凹所N11を内側にして、歯間清掃具の本体11を挟み込んだ状態で、一対の金型片を合わせる。その後、金型片に形成された材料導入孔(図示なし)からエラストマーを導入することにより、金型の内側に設けられた凹所N11と歯間清掃具の本体11とから形成される空間M50sに歯間清掃具1のブラシ部40および接続部50が形成される。
【0048】
ブラシ部形成工程において、接続体金型Nに流し込まれたエラストマーがブラシ部40と接続部50とを形成するように、凹所N11は、ブラシ部40を形成する凹所N40と、本体11を受け入れる凹所N50とが形成されている。本体11の凹部11aは金型の凹所N50対して空間M50sが形成され、その空間M50sにエラストマーが流れ込むことにより接続部50が形成される。
【0049】
このとき、支持部20の他端部22では、溝部24を介してエラストマーが線材10に向けて凹所N40に流れ込むことになる。これにより、ブラシ部40は、軸心部60が先の本体形成工程で概略中心に位置するように形成されるため、ブラシ部40は、歯間清掃具の本体11に強固に結合することになる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る歯間清掃具1は、線材10と、線材10に沿って形成されたブラシ部40とを備える。また、ブラシ部40は、支持部20の他端部22を基端部として形成されている。これにより、線材10部分から歯間に挿入され、ブラシ部40を歯間に誘導することで歯間挿入を容易にしながら、清掃性の高いブラシ部40で歯間を清掃することができるとともに、ブラシ部40が線材から脱離することを防止できる。
【0051】
本実施形態に係る歯間清掃具1において、線材10は、数百本のフィラメントを束ねて1mあたり50回程度の撚りをかけて製造される形態について説明した。しかし、繊維状部材を製造する際のフィラメントの本数、撚り数は適宜変更できる。また、フィラメントの材料は、ポリアミド以外の他の合成樹脂であってもよい。
【0052】
本実施形態に係る歯間清掃具1において、ブラシ部40は、支持部20の他端部22を基端部として延びる形態について説明した。しかし、ブラシ部40が支持部20の一端部21を基端として延びてもよい。すなわち、ブラシ部40は、一端部21および他端部22の少なくともいずれか一方を基端部として延びていればよい。
【0053】
本実施の形態に係る歯間清掃具1において、接続部50は、歯間清掃具の本体11の凹部11aに対して、いわゆる面一の状態となる形態について説明してきた。しかし、接続部50は、歯間清掃具の本体11の凹部11aから突出したり、または、はみ出すように形成されていてもよい。
【0054】
本実施形態において、接続部50の形状は、正面図および背面図において左右を逆にして同一になる形態について説明した。しかし、接続部50の形状は、異なる形状であってもよい。例えば、正面側において接続部50が把持部30まで連続し、背面側において、接続部50が他端部22までしか連続しないような形状であってもよい。
【0055】
本実施形態に係る歯間清掃具1において、ブラシ部40は、線材10の径方向の外側に突出する複数の突起部41を有する形態について説明した。しかし、ブラシ部40は、他の形状であってもよく、例えば、断面視で突起の本数が6つ、8つ等でもよく、また例えば、突起部41を有さず、単に線材10を包む筒状に形成されていてもよい。さらに、複数の突起が螺旋状に配置されていてもよい。
【0056】
本実施形態に係る歯間清掃具の本体11において、ポリプロピレンのような合成樹脂を材料とする形態について説明してきた。しかし、歯間清掃具の本体11は、所定の合成を有し、口腔内でしようできる材料であれば、他の材料であってもよい。また、本実施形態に係る歯間清掃具1の接続体12において、エラストマーにより形成される形態について説明した。しかし、接続体12は、エラストマーに限らず、天然ゴム、合成ゴム等の材料であってもよい。
【0057】
本実施形態に係る歯間清掃具1の本体金型M、および接続体金型Nにおいて、1つの歯間清掃具1を成型する形態について説明してきた。しかし、両金型は、1度に複数個の成型が可能なように、凹所が成型されていてもよい。
【0058】
以上、本発明の具体的な態様の例を、上記の実施形態、実施例により説明したが、本発明は、当該実施形態および実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 歯間清掃具
10 線材
11 本体
12 接続体
20 支持部
21 一端部
22 他端部
23 貫通孔
24 溝部
30 把持部
40 ブラシ部
50 接続部