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  • 特許-セラミック系複合材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】セラミック系複合材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/632 20060101AFI20230123BHJP
   C04B 35/80 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 35/634 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C04B35/632
C04B35/80 300
C04B35/634 880
【請求項の数】 64
(21)【出願番号】P 2018565874
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017065408
(87)【国際公開番号】W WO2017220727
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】102016007652.6
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/064401
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501018232
【氏名又は名称】ウニベルジテート バイロイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クノール シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クレンケル ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】プヒャス ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァムサー トーマス
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504265(JP,A)
【文献】特開2008-294163(JP,A)
【文献】特開2002-338362(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016388(WO,A1)
【文献】米国特許第04983422(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0197465(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02380862(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/622-35/84
C04B 35/05
C04B 35/107
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造方法であって、以下の工程:
a)セラミック繊維の編成物を、以下の成分:
(i)泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む泥漿で含浸する工程と、
b)含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させて、セラミック系複合材のためのプリプレグを得る工程と、
c)工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料を得る工程と、
d)前記賦形された複合材料を、含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減により圧密させることで、グリーン成形体を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルコール性有機溶剤が、グリセリン、少なくとも1種のC~C-アルカンジオール、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコール性有機溶剤が、グリセリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記泥漿が、分散剤を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記分散剤が、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)において使用される泥漿が、分散剤を泥漿の全固体含量に対して5重量%以下の量で含有する、請求項又はに記載の方法。
【請求項7】
工程a)において使用される泥漿が、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~10重量%の有機結合剤を含有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記泥漿が、有機結合剤を含まない、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)において使用される泥漿が、1s-1のせん断速度及び20℃の温度で同軸円筒形回転粘度計を用いて測定される10Pas未満の粘度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記セラミック粒子が、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック繊維が、
(i)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせと、
(ii)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、及びカーボンの2種以上からのセラミックブレンド又は複合物から形成されている繊維と、
(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)から選択される種々の繊維の組み合わせと、
から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、ロービングを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、長繊維から形成されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、織物又はノンクリンプ織物である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、100mm未満の長さを有する短繊維から形成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、布帛である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程a)において使用される泥漿が、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程a)において使用される泥漿が、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程a)において使用される泥漿が、少なくとも20体積%のセラミック粒子を含有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量が、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、工程b)の後に工程b)の前よりも少なくとも5体積%だけ高まるように調整される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量が、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、少なくとも45体積%であるように調整される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量が、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、多くとも60体積%であるように調整される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の水の割合が、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記プリプレグ中のセラミック繊維の体積割合が、プリプレグの全体積に対して15体積%~60体積%である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
含水量を低減する工程b)が、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~2時間の時間にわたり保持することを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
含水量を低減する工程b)が、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~30分間の時間にわたり保持することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
含水量を低減する工程b)が、含浸された繊維編成物の水熱的なコンディショニングを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記水熱的なコンディショニングが、10℃~30℃の範囲の温度、30%~80%の相対湿度の条件下で1時間~20時間の時間にわたり実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水熱的なコンディショニングが、20℃~30℃の範囲の温度の条件下で実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記水熱的なコンディショニングが、30%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間の時間にわたり実施される、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、工程b)の後に水熱的なコンディショニングによる前記1つ以上のプリプレグの再湿化を含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記水熱的なコンディショニングが、10℃~30℃の範囲の温度、30%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間の時間にわたり実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が、工程b)において得られたプリプレグの、高くとも60%の相対空気湿度での貯蔵を含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程c)における賦形された複合材料の取得が、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上を賦形された支持体上に施与することを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記賦形された複合材料が、積層物であり、かつ工程c)における賦形された複合材料の取得が、工程b)において取得されたプリプレグの2つ以上を積層させることを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記積層物を、賦形された支持体材料上に施与して、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記2つ以上のプリプレグを、賦形された支持体材料上で互いに積層させて、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
工程c)において、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上は、賦形された支持体材料の周りに巻き付けられる、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
工程d)において、賦形された複合材料のアルコール性有機溶剤の含量は、グリーン成形体中のマトリクス材料のアルコール性有機溶剤の含量が、圧密の実施後にマトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して20重量%以下となる範囲内で低減される、請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
工程d)における含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減が、賦形された複合材料を100℃以上へと減圧下又はガス流中で加熱することによって実施される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の方法によるグリーン成形体の製造の工程と該グリーン成形体の焼結の工程とを含む、セラミック系複合材の製造方法。
【請求項42】
前記セラミック系複合材が、少なくとも30体積%の該複合材の全体積に対する繊維体積含有率を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
泥漿で含浸されているセラミック繊維の編成物を含むセラミック系複合材のためのプリプレグであって、前記泥漿は、(i)セラミック粒子と、(ii)アルコール性有機溶剤と、(iii)水とを含み、かつ前記アルコール性有機溶剤は、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択される、プリプレグ。
【請求項44】
前記アルコール性有機溶剤が、グリセリン、少なくとも1種のC~C-アルカンジオール、及びそれらの混合物から選択される、請求項43に記載のプリプレグ。
【請求項45】
前記アルコール性有機溶剤が、グリセリンである、請求項43又は44に記載のプリプレグ。
【請求項46】
前記泥漿が、分散剤を含有する、請求項4345のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項47】
前記分散剤が、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、請求項46に記載のプリプレグ。
【請求項48】
前記泥漿が、分散剤を泥漿の全固体含量に対して5重量%以下の量で含有する、請求項46又は47に記載のプリプレグ。
【請求項49】
前記泥漿が、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~10重量%の有機結合剤を含有する、請求項4348のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項50】
前記泥漿が、有機結合剤を含まない、請求項4349のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項51】
前記セラミック粒子が、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、請求項4350のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項52】
前記セラミック繊維が、
(i)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせと、
(ii)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、及びカーボンの2種以上からのセラミックブレンド又は複合物から形成されている繊維と、
(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)から選択される種々の繊維の組み合わせと、
から選択される、請求項4351のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項53】
前記セラミック繊維の編成物が、ロービングを含む、請求項4352のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項54】
前記セラミック繊維の編成物が、長繊維から形成されている、請求項4353のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項55】
前記セラミック繊維の編成物が、織物又はノンクリンプ織物である、請求項4354のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項56】
前記セラミック繊維の編成物が、100mm未満の長さを有する短繊維から形成されている、請求項4353のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項57】
工程a)におけるセラミック繊維の編成物が、布帛である、請求項4356のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項58】
前記泥漿が、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、請求項4357のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項59】
工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、請求項4358のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項60】
前記泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して少なくとも45体積%である、請求項4359のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項61】
前記泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して多くとも60体積%である、請求項4360のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項62】
前記泥漿の水の割合が、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%である、請求項4361のいずれか一項に記載のプリプレグ。
【請求項63】
請求項4362のいずれか一項に記載の1つ以上のプリプレグを含む、賦形された複合材料。
【請求項64】
前記複合材料が、請求項4362のいずれか一項に記載のプリプレグの2つ以上からの積層物である、請求項63に記載の賦形された複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材、特に繊維強化されたセラミック系複合材の材料開発及び方法開発に関する。この関連において、セラミック系複合材のためのプリプレグ、該プリプレグを用いたグリーン成形体の製造方法、及び本発明により製造されたグリーン成形体からのセラミック系複合材の製造方法が提供される。
【背景技術】
【0002】
モノリシックセラミックは一般的に脆性破壊を起こす。繊維強化されたセラミック系複合材(「複合物」)では、繊維とそれを取り囲むマトリクスとを複合させることによって靭性又は準延性の破壊挙動が実現される(例えば、特許文献1又は特許文献2)。上記セラミック系複合材は、セラミック繊維(例えば、C、SiC、Al、ムライト)及びセラミックマトリクス(例えば、C、SiC、Al、ムライト)からなる。
【0003】
繊維強化としては、一般的に50000本までの単一フィラメントからなる高温耐熱性の長繊維束が使用される。上記複合物の破壊挙動は、繊維-マトリクス結合を適合させることにより狙い通りに調整される。亀裂がマトリクスを通じて繊維中に引き起こされずに、亀裂分岐、亀裂偏向、又は繊維引き抜き等のエネルギー散逸的効果が起こることが重要である。広く知られた構想では、繊維-マトリクス結合の調整のために繊維被覆が見込まれる。もう1つのアプローチは、弱い多孔質マトリクス中への繊維の埋設である。マトリクスの高い多孔性とそれにより低下したマトリクスの剛性とによって、上記のエネルギー散逸的効果が起こり、その効果により準延性の破壊挙動が引き起こされる。
【0004】
上記マトリクスは、通常は繊維ロービング又は繊維構造物を、泥漿、前駆物質、ポリマー、又は金属溶融物で含浸させることにより合成される。1000℃を上回る温度処理によって上記マトリクスが形成される。上記マトリクスは、繊維フィラメント間に応力伝達を起こすのに十分な強度を有さねばならない。特許文献3及び特許文献4は、特別に処理又は選択された酸化物セラミック粉体を含むとともに、有機結合剤不含であり得る繊維強化されたセラミック系複合材料の製造のための泥漿を開示している。
【0005】
セラミック系複合材の製造における難題は、均一な高い繊維体積含有率(可能な限り25体積%を上回る)を調整すること、及び繊維を取り囲む(多孔質にもかかわらず)均質なマトリクスを作製することである。高い繊維体積含有率及び均質なマトリクスは、50MPaを上回る曲げ強さ及び準延性の破壊挙動等の所望の特性を実現するために有利である。
【0006】
セラミックマトリクスの合成に際しては、該マトリクスが焼結の間にわずかしか収縮すべきではなく、かつ所望の準延性の破壊挙動を達成するために繊維束の完全な含浸が必要であることを顧慮せねばならない。したがって、水性泥漿から出発するセラミック系複合材の従来の製造の場合には、繊維の含浸時の泥漿の高い固体含量によって高いグリーン密度、ひいては低い焼結収縮を実現することが試みられる。しかしながら、高い固体含量を有する泥漿の粘度は同様に高いため、繊維束又は該繊維束から製造された半製品(例えば、織物)の完全な含浸は非常に困難なものとなる。
【0007】
高いグリーン密度の調整のための1つの手法は、低い固体含量を有する低粘性の泥漿により繊維構造物を含浸し、引き続き予備乾燥により水を部分的に除去することである。上記予備乾燥は、所望の水の割合が除去されるまで乾燥棚中で寝かせることにより行われ得る。
【0008】
特許文献5に記載される泥漿へのグリセリンの添加は、有利なアプローチであることが分かった。そのような泥漿による繊維構造物の含浸の後に、例えば気候調節室内での定義された温度及び湿度でのコンディショニングによって、繊維を取り囲む泥漿中の定義された含水量を調整することができる。製造されたプリプレグは一般的に、繊維織物又はそれ以外の平坦な繊維構造物(例えば、マット、不織布、ノンクリンプ織物)と、後の焼結工程の間にマトリクスの作製のために用いられ得る泥漿とを含有する。コンディショニングされた泥漿は、有利には高い粘度を有し、さらに、含浸された繊維構造物に粘着性を授けるために使用され得る。したがって、泥漿含浸された繊維構造物は、形状付与のために有利な高い粘着性だけでなくドレープ性も有し得る。これによって、該プリプレグは、ホットプレス技術の場合のように型の相手方を要さずに一方の型上又は型内(凸型又は凹型)で積み重ねることが可能となる。例えば、積層のような形状付与の場合には、高い機械的特性値を達成するために、高い繊維体積含有率(例えば、30体積%超)が実現され得る。それにもかかわらず、プリプレグ中の繊維又は繊維束は再配置される場合があり、かつ場合によって過剰のマトリクス材料が形状付与の間に絞り出され得る。必要とされる押圧は非常に低いので、繊維損傷は回避され得る。その形状付与の結果として、自立性の、例えば複雑な大体積の構造物が得られ、その構造物は引き続いての温度処理によって軟化せずに焼結により固化させることができる。均一な繊維体積含有率及び均質なマトリクスを有する個々のプリプレグ層の積み重ねは再現可能である。その粘着性にかかわらず、個々の層を再び取り外すことができ、別の繊維配向に位置調整することができる。
【0009】
プリプレグ中の繊維を取り囲む泥漿の特性、特にその乾燥挙動だけでなく湿潤化も、グリセリン添加により本質的に影響される。焼結過程において、残留したグリセリンは残らず焼失される。そのグリセリンは、複合材の損傷許容性を高める細孔形成剤として機能し得る。
【0010】
グリセリンの添加量は、2つの観点から決定される。一方では、予め決められた雰囲気及び温度でプリプレグ中の水分含量が調整される。他方では、グリーン成形体はそれらの1つ以上のプリプレグの乾燥後に自己支持性であるべきであり、グリーン成形体中のグリセリンの吸湿特性に起因して周囲空気から水を吸収することで再び不安定化されるべきではない。したがって、プリプレグの製造のためにグリセリンが使用される場合には、添加される量は、水の除去後に安定なグリーン成形体が得られるように調整された。そのようなプリプレグの1つの不利点は、その加工に際して典型的な製造条件下、例えば約30%~60%の相対湿度の空気湿度下で乾いてしまうことである。したがって、プリプレグの有利な特性、例えばその粘着性及びドレープ性を最適に利用し得るためには、上記加工は、迅速に行わねばならず、中間貯蔵は、制御された条件下で、特に高められた空気湿度下で行わねばならないこととなる。さらに、プリプレグ装置でのプリプレグの自動化された製造には問題がある。プリプレグ装置において、繊維構造物には、浸透に引き続き乾燥又はコンディショニングが連続的に行われる。約1m/分のベルト速度及び5mの(気候調節された)乾燥帯域の場合には、繊維構造物の含浸の後に水の除去、例えば制御された温度及び空気湿度でのコンディショニングによって泥漿中の高い固体割合を調整するために約5分間を利用可能である。今までに知られたグリセリン含有の泥漿の場合には、泥漿中の含水量の制御された減少を保証するために、一般的に1時間より明らかに長い調整時間/コンディショニング時間が使用される。迅速な水の除去に際してプリプレグ中の泥漿の含水量が大幅に低下しすぎると、該プリプレグはその水塑性を失うため、プリプレグ品質の低下がもたらされる。この場合に水塑性とは、プリプレグ材料が泥漿中の水の再吸収によって、プリプレグが弾性特性を有するより低い含水量を有する状態から、該材料が塑性挙動を示すか又は塑性変形可能であるより高い含水量を有する状態へと移り変わる能力を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第1645410号
【文献】独国特許出願公開第102010055221号
【文献】欧州特許出願公開第1734023号
【文献】欧州特許出願公開第1734024号
【文献】国際公開第2016/016388号
【発明の概要】
【0012】
こうした背景の下、本発明は、セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造方法であって、以下の工程:
a)セラミック繊維の編成物を、以下の成分:
(i)泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む泥漿で含浸する工程と、
b)含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させて、セラミック系複合材のためのプリプレグを得る工程と、
c)工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料を取得する工程と、
d)上記賦形された複合材料を、含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減により圧密させることで、グリーン成形体を得る工程と、
を含む、方法を提供する。
【0013】
また、こうして得られたグリーン成形体の焼結によるセラミック系複合材の製造方法も本発明の主題である。
【0014】
さらに、本発明は、泥漿で含浸されているセラミック繊維の編成物を含むセラミック系複合材のためのプリプレグであって、上記泥漿が以下の成分:
(i)セラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む、プリプレグを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】時間の関数としての、コンディショニング又は乾燥の過程でのプリプレグにおける泥漿の水の割合の、浸透後の泥漿中の水の割合に対する変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の範囲においては、有利な加工性、特に有利な粘着性及びドレープ性を有するプリプレグを得るために、そして高いグリーン密度を有するグリーン成形体を取得するために、規定のアルコール性有機溶剤をグリセリンの代わりに又はグリセリンに加えてセラミック系複合材のための泥漿中で使用することができることが確認された。上記繊維構造物中に含まれる泥漿のコンディショニングによって、これらの特性はプリプレグの形で、再現可能にかつ持続的に、例えばプリプレグの完全な乾燥及び貯蔵後にも得ることができる。
【0017】
アルコール性溶剤の有利な高い含量を有する泥漿の使用によって、有利には、低い空気湿度を有する環境において、その水塑性特性を失うことなくより長期にわたって貯蔵及び/又は再加工することができるプリプレグが得られる。さらに、プリプレグを得る際にプリプレグ中に含まれる泥漿の含水量を迅速に低減させることができる。すなわち、水塑性が不可逆的に損失する危険性を伴わず、より高い温度及び/又はより低い空気湿度(例えば、100℃、10%の相対空気湿度)が使用され得る。こうして、プリプレグの製造のために必要となる時間は明らかに(例えば、1時間を下回る時間に)短縮され得る。こうして、プリプレグの機械的製造も可能となる。
【0018】
さらに、グリーン成形体の製造に際して圧密工程を含む本発明による方法により、得られたグリーン成形体の所望の特性がアルコール性溶剤の吸湿特性によって損なわれることなく、アルコール性溶剤の含量を広い範囲にわたって変動させることが可能となる。こうして、本発明の有利な実施形態の範囲においては、比較的高い含量のアルコール性溶剤を有する、有利には高い含量のグリセリンを有する泥漿を特に使用することができる。この有利な実施形態により、水の吸収によって中に含まれるアルコール性溶剤の吸湿特性に起因して不安定化されることのない形状安定な、一般的に自己支持性のグリーン成形体を取得するために、グリーン成形体の製造のための本発明による方法の範囲においては、まず、高い含量のアルコール性溶剤を有する1つ以上のプリプレグから、賦形された複合材料が形成される。後続の圧密工程において、該複合材料中に含まれる泥漿の含水量及びアルコール性溶剤の含量は低減され、グリーン成形体が形成される。それにより、得られたグリーン成形体は、例えば20℃の室温及び60%未満の相対湿度の空気湿度下のような、さもなければグリーン成形体の不安定化又は軟化がもたらされるであろう通常の周囲条件下で貯蔵した場合でも再湿化することができなくなる。その圧密工程にもかかわらず、プリプレグの製造時に含水量が迅速に低減される可能性に基づいて相当の時間利得が残ることで、本発明による方法によって短時間内でセラミック系複合材のためのグリーン成形体又はセラミック系複合材自体を製造することができる。それにより複合材のための36時間以内の製造時間が実現可能となる。
【0019】
上記で説明されたように、本発明の1つの態様は、セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造方法であって、工程a)~d):
a)セラミック繊維の編成物を、以下の成分:
(i)泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む泥漿で含浸する工程と、
b)含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させて、セラミック系複合材のためのプリプレグを得る工程と、
c)工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料を取得する工程と、
d)上記賦形された複合材料を、含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減により圧密させることで、グリーン成形体を得る工程と、
を含む、方法に関する。
【0020】
工程a)における項目(ii)で挙げられた溶剤は、一般的には室温、例えば20℃で液状である。有利には、それらの溶剤は吸湿特性を有する。
【0021】
工程b)において、含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量が低減される。その場合に、アルコール性有機溶剤の含量は、一般的には低減されないか、又は低い程度でのみ低減される。
【0022】
その場合に、上記方法の工程b)においては、本発明によるプリプレグは中間生成物として得られる。したがって、本発明による方法の工程a)~b)についての以下の説明は、個々の場合に他の記載がなされない限りは、本発明によるプリプレグ及びその製造についても同様に適用されることは、当業者には明らかであろう。
【0023】
本発明による方法の工程a)における及び本発明によるプリプレグにおけるセラミック繊維の編成物(「繊維編成物」とも呼ばれる)は、セラミック繊維から形成される。該セラミック繊維は、有利にはロービング、すなわちセラミックフィラメントの繊維束を含み、より有利には、該セラミック繊維の編成物は、そのようなロービングからなる。例えば、上記セラミック繊維は、1本のロービング中にそのようなフィラメントを100本以上組み合わせる場合がある。有利には、上記セラミック繊維は、300本以上、より有利には400本以上のフィラメントを有する。1束当たりのフィラメントの最大本数は、その束を簡単に製造して取り扱うことができる限りは、特に限定されない。例えば、50000本、有利には最大20000本、より有利には最大10000本、更により有利には最大5000本、特に有利には最大1000本のフィラメントの最大本数を有する繊維束を使用することができる。上記フィラメントは、一般的にはμm範囲の直径、例えば3μm~15μmの範囲、有利には7μm~13μmの範囲の直径を有する。当業者の理解によれば、この関連における束という用語は、複数のフィラメントが同じ長軸の配向で並んで存在するフィラメントを組み合わせたものを指す。一般的に、上記フィラメントは、束内で隣接するフィラメントと交絡していない。上記束自体は撚り合わされていてもよい。
【0024】
セラミック繊維は、例えば長繊維、短繊維、又はそれらの組み合わせから選択され得る。短繊維は、例えば100mm未満、有利には30mm未満の長さを有する。短繊維は、有利には20mmよりは短くない。セラミック繊維の編成物としては、セラミック長繊維の編成物が特に有利である。
【0025】
セラミック繊維の編成物は、有利には布帛、例えば平面織物又はノンクリンプ織物である。そのような布帛は、規則的な形、例えば長方形又は正方形を有することができ、該布帛は、帯の形で提供することができ、又はそれぞれの用途に適合された不規則な形を有することができる。上記布帛は、例えば巻取り体としての所定の形を成していてもよい。巻取り時に、まずはロービングが含浸され、引き続き芯上に積み重ねられる。ブレイディング過程においても同様の手順が考えられる。本発明の範囲におけるセラミック繊維製の布帛の厚さは、例えば0.25mm~10mm、有利には0.25mm~3mmの範囲である。同様に有利なセラミック繊維の編成物は、三次元形状における編組み織物又はノンクリンプ織物である。特に、セラミック繊維の編成物としては、ロービングの形の長繊維からの平面織物又はノンクリンプ織物が有利である。
【0026】
本発明の範囲において使用するためのセラミック繊維及び該繊維から形成される、例えば布帛の形の編成物は、繊維及び半製品として商業的に容易に入手可能である。
【0027】
本発明による方法の工程a)において含浸された編成物を形成するセラミック繊維は一般的に、取得されたプリプレグ及びグリーン成形体中に含まれている。当業者に理解され得るように、上記繊維の編成物は一般的に、取得されたプリプレグ及びグリーン成形体内で基本的に保持されるが、泥漿での含浸により繊維又はフィラメントがずれる場合がある。例えば、ロービングの膨潤又はその中に含まれるフィラメントの分離が引き起こされる場合がある。
【0028】
本発明では、上記セラミック繊維のために適したセラミック材料に関して、特に限定されない。例えば、上記セラミック繊維は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、若しくはカーボン、又はこれらの材料の2種以上の組み合わせを含有し得る。そのような組み合わせは、セラミックブレンド若しくは繊維構造内が種々の材料からなる複合物であり、又は種々の材料製の複数の繊維を含む繊維編成物であり得る。セラミック材料の組み合わせからの繊維のための1つの例として、Al及びムライトからの組み合わせを挙げることができ、例えばそれは、Nextel(商標)の商標で市販されている繊維内で使用される。
【0029】
上記のセラミック材料から形成されているセラミック繊維においては、これらの材料の含量は、100重量%としてのセラミック繊維の全重量に対して、有利には90重量%以上、より有利には95重量%以上であり、又は上記セラミック繊維は、これらのセラミック材料からなる。
【0030】
セラミック繊維及び該繊維から製造された半製品は、その製造の間に塗布された糊を含有し得る。本発明の範囲においては、セラミック繊維の編成物の含浸の前に、その存在し得る糊を、例えば熱処理によって除去することが有益である場合がある。
【0031】
本発明による方法の工程a)で使用される泥漿、したがってまた本発明によるプリプレグもセラミック粒子を含む。これらの粒子は、セラミック材料を含み、有利にはそのような材料からなる。該セラミック材料は特に限定されないが、それが焼結工程の後にセラミック系複合材中にセラミックマトリクスを形成し得るセラミック材料の粒子であるべきことは当業者には明らかであろう。例えば、上記セラミック粒子は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボン、又はこれらの材料の2種以上の組み合わせを含有し得る。そのような組み合わせは、セラミックブレンド若しくは個々の粒子内が種々の材料からなる複合物であり、又は種々の材料製の粒子を含む粒子混合物であり得る。Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、及びカーボンから選択される個々の材料からなるが、任意に種々の材料製の粒子を含む混合物としても使用される粒子が有利である。セラミック繊維のセラミック材料は、セラミック粒子のセラミック材料と同じであってもよく、又はそれらは異なってもよい。熱機械的及び熱力学的な適合性を達成するためには、同じであることが有利である。
【0032】
有利には、上記セラミック粒子は、3μm以下、より有利には2μm以下、そして更により有利には1μm以下の平均粒度(体積平均、例えばレーザー散乱により測定される)を有する。さらに、上記平均粒度が0.1μm以上であることが有利である。例えばレーザー散乱により測定される25μmを上回る粒度を有する粒子が存在しないことが更に有利である。15μmを上回る粒度を有する粒子が存在しないことがより有利である。様々な粒度分布を有するセラミック粉体は市販されている。必要に応じて又は所望であれば、上記粒度は、例えば粒子の粉砕により調整することができる。
【0033】
セラミック粒子としては、1つのピークを0.05μm~0.3μmの範囲、有利には0.08μm~0.2μmの範囲に有し、かつ1つのピークを0.5μm~3.0μmの範囲、有利には0.7μm~1.2μmの範囲に有する二峰性の粒度分布(粒度に対する体積割合、例えばレーザー散乱により測定される)を有するそのような粒子の混合物が特に有利である。さらに、上記0.05μm~0.3μmの範囲、有利には0.08μm~0.2μmの範囲のピークが粒子の3体積%~25体積%の体積割合に対して存在し、かつ上記0.5μm~3.0μmの範囲、有利には0.7μm~1.2μmの範囲のピークが粒子の75体積%~97体積%の体積割合に対して存在することが有利である。それぞれのサイズにおける粒子の体積割合は、必要に応じて、例えばレーザー散乱により測定されるような粒子の累積サイズ分布から測定され得る。一般的に、上記の有利な粒度を有するこれらの有利な泥漿は、所望のサイズを有するセラミック粒子を混合することによって簡単に得ることができる。
【0034】
本発明による方法の工程a)で使用される泥漿は、100体積%としての泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子を含有する。有利には、少なくとも20体積%のセラミック粒子(すなわち、20体積%~40体積%)、より有利には少なくとも25体積%のセラミック粒子(すなわち、25体積%~40体積%)、特に有利には少なくとも30体積%のセラミック粒子(すなわち、30体積%~40体積%)が含まれている。泥漿による含浸に際して取り込まれる粒子は一般的に、本発明による方法の工程b)において取得されるプリプレグ中にも含まれている。しかしながら、当業者には明白であるように、上記泥漿の固体割合は、工程b)における含水量の低減によって高められるので、得られたプリプレグ中のセラミック粒子の体積割合はより高い。また、上記グリーン成形体はセラミック粒子を含有するが、例えば工程c)における賦形された複合材料を取得する場合に、含浸に際して当初吸収された泥漿及びその中に含まれる粒子の或る程度の割合は除去され得る。例えば、積層過程では過剰の泥漿は複合材料から絞り出され得る。
【0035】
本発明による方法の工程a)で使用される泥漿、したがって本発明によるプリプレグも、上記セラミック粒子の他に、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤を含む。
【0036】
上記列挙から明らかなように、上記実施形態(ii-1)~(ii-4)は、組み合わせて使用されない択一的な実施形態である。アルコール性有機溶剤という名称は、相応の物質がアルコール性ヒドロキシル基(OH基)を有することを示す。溶剤として、上記物質は、泥漿の加工温度で、一般的には20℃の温度で液状であり、水中に可溶性であり、有利には吸湿性である。該溶剤は、懸濁液の安定性に対して悪影響を及ぼさない。該溶剤は、水と同様に分散媒であり、上記粉体粒子を取り囲む。したがって、セラミック粉体は凝集し得ない。
【0037】
実施形態(ii-1)~(ii-4)のうち、実施形態(ii-1)が有利である。すなわち、工程a)におけるセラミック繊維の編成物の含浸は、有利には、以下の成分:
泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
水と、
を含む泥漿を用いて行われる。
【0038】
本発明による方法の有利な実施形態(ii-1)による工程a)における泥漿のグリセリン含量、それとともに有利な実施形態により取得されたプリプレグ中のグリセリン含量も、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%である。グリセリンは、吸湿性であり、水中に可溶性であり、かつセラミック粒子に対して分散作用を有する。製造時及び加工時のグリセリンの蒸発は無視することができる。グリセリンの使用によって、繊維編成物の含浸後の泥漿の固体含量を、該泥漿の含水量の低減によって簡単に調整することが可能である。こうして、本発明による方法の工程a)において、より低い固体含量を有し、それによってより低い粘度を有する泥漿を繊維編成物の含浸のために使用することができる。したがって、泥漿(又は粒子)が存在し得る繊維束中にも浸透し得る繊維編成物の完全な含浸が可能である。水の引き続いての除去(例えば、蒸発による)によって、高められた固体含量を得ることができる。その場合に、予め決められた温度及び空気湿度で、上記泥漿において水の出発含量とは無関係にグリセリン及び水の平衡を調整することを利用することができる。
【0039】
より有利には、本発明による方法の有利な実施形態(ii-1)による泥漿は、グリセリンを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%のグリセリン、更により有利には少なくとも25重量%のグリセリン、特に有利には少なくとも26重量%のグリセリンの量で含有する。有利には、上記泥漿は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%のグリセリン、より有利には多くとも29重量%のグリセリン、特に有利には多くとも28重量%のグリセリンを含有する。
【0040】
上記の実施形態(ii-2)によれば、工程a)で使用される泥漿は、アルコール性有機溶剤として、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の量で含む。
【0041】
有利には、本発明による方法の実施形態(ii-2)による泥漿は、上記オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも21重量%の量で、より有利には少なくとも24重量%の量で、更により有利には少なくとも25重量%の量で、特に有利には少なくとも26重量%の量で含有する。有利には、上記泥漿は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%の上記オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールを含有する。
【0042】
上記オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールの平均分子量(一般的には、数平均として示される)は、好ましくは最大600g/mol、より有利には最大400g/molである。一般的には、上記オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール中には、少なくとも10個の繰返単位(-CO-)が存在する。
【0043】
既に上述のように、オリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールの有利な構造及び/又は有利な量についての上記記載は、実施形態(ii-2)による泥漿を用いて取得される本発明によるプリプレグにも同様に適用される。
【0044】
上記の実施形態(ii-3)によれば、工程a)で使用される泥漿は、アルコール性有機溶剤として、C~C-アルカンジオールを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の量で含む。その場合に、種々のC~C-アルカンジオールの混合物も含まれている。
【0045】
有利には、本発明による方法の実施形態(ii-3)による泥漿は、上記C~C-アルカンジオールを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも21重量%の量で、より有利には少なくとも24重量%の量で、更により有利には少なくとも25重量%の量で、特に有利には少なくとも26重量%の量で含有する。有利には、上記泥漿は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%の上記C~C-アルカンジオールを含有する。
【0046】
当業者によく知られるように、C~C-アルカンジオールという用語は、2個~6個の炭素原子を有し、その炭素原子にある2個の水素原子がOH基により置き換えられているアルカンを指す。有利には、C~C-アルカンジオール中のOH基は、もっぱら第一級又は第二級OH基、特に有利にはもっぱら第一級OH基である。
【0047】
有利には、実施形態(ii-3)においては、C~C-アルカンジオールが使用される。
【0048】
したがってより有利には、上記泥漿は、実施形態(ii-3)によるアルコール性有機溶剤として、エタン-1,2-ジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び少なくとも2種の上記溶剤の混合物から選択される溶剤を含有する。更により有利には、実施形態(ii-3)による泥漿は、アルコール性有機溶剤として、エタン-1,2-ジオール及び1,2-プロパンジオールから選択される溶剤を含有し、実施形態(ii-3)によるアルコール性有機溶剤としては、エタン-1,2-ジオールが特に有利である。
【0049】
既に上述のように、C~C-アルカンジオールの有利な構造及び/又は有利な量についての上記記載は、実施形態(ii-3)による泥漿を用いて取得される本発明によるプリプレグにも同様に適用される。
【0050】
上記の実施形態(ii-4)によれば、工程a)で使用される泥漿は、アルコール性有機溶剤として、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物を、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の量で含む。
【0051】
有利には、本発明による方法の実施形態(ii-4)による泥漿は、上記混合物を、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも21重量%の量で、より有利には少なくとも24重量%の量で、更により有利には少なくとも25重量%の量で、特に有利には少なくとも26重量%の量で含有する。有利には、上記泥漿は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%の上記混合物を含有する。
【0052】
有利なオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール及び有利なC~C-アルカンジオールに関して、実施形態(ii-2)又は実施形態(ii-3)でなされた記載は、実施形態(ii-4)についても相応して適用される。
【0053】
既に上述のように、上記混合物の成分の有利な構造及び/又は上記混合物の有利な量についての上記記載は、実施形態(ii-4)による泥漿を用いて取得される本発明によるプリプレグにも同様に適用される。
【0054】
本発明によりグリセリンに代えて使用することができる実施形態(ii-2)、(ii-3)、又は(ii-4)によるアルコール性有機溶剤のための具体的な例としては、以下:
・ 800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、グリセリンとの混合物としての800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと一緒での1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール及びエタン-1,2-ジオールから選択される少なくとも1種のジオール、
・ エタン-1,2-ジオール、グリセリンとの混合物としてのエタン-1,2-ジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールから選択される少なくとも1種のジオールとの混合物としてのエタン-1,2-ジオール、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールとの混合物としてのエタン-1,2-ジオール、
・ 1,2-プロパンジオール、100重量%としてのアルコール性有機溶剤の全重量に対して少なくとも40重量%の、グリセリン、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、及びエタン-1,2-ジオールから選択される少なくとも1種の溶剤との混合物としての1,2-プロパンジオール、
・ 100重量%としてのアルコール性有機溶剤の全重量に対して少なくとも40重量%の、グリセリン、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、及びエタン-1,2-ジオールから選択される少なくとも1種の溶剤との混合物としての1,3-プロパンジオール、
・ 100重量%としてのアルコール性有機溶剤の全重量に対して少なくとも50重量%の、グリセリン、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、及びエタン-1,2-ジオールから選択される少なくとも1種の溶剤との混合物としての1,4-ブタンジオール、
・ 100重量%としてのアルコール性有機溶剤の全重量に対して少なくとも50重量%の、グリセリン、800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、及びエタン-1,2-ジオールから選択される少なくとも1種の溶剤との混合物としての2-メチル-1,3-プロパンジオール、
を挙げることができる。
【0055】
800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコール、及び/又はC~C-アルカンジオールを、実施形態(ii-2)~(ii-4)による泥漿中で使用することで、例えば上記泥漿の粘度を適切に適合させることができる。上記物質をグリセリンに代えて、又はグリセリンとの混合物として含有する泥漿では、グリセリンに対して低減された粘度を有するため、含浸過程が簡単になり得る。この効果は、泥漿中のアルコール性溶剤の含量が高い場合に、例えば少なくとも21重量%の含量の場合に特に顕著である。さらに、実施形態(ii-2)~(ii-4)による泥漿中での800g/molの最大平均分子量を有するオリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール及び/又はC~C-アルカンジオールの使用は、プリプレグをグリーン成形体へと更に加工する際にアルコール性溶剤の回収を更に簡単にし得る。それというのも、それらは一般的にグリセリンに対してより少ない縮合生成物しか有さないからである。
【0056】
泥漿中に含まれるセラミック粒子に対する、プリプレグ中に含まれる泥漿のアルコール性有機溶剤の含量は一般的に、本発明による方法の工程a)で使用される泥漿に対して不変であるか、又は僅かに(例えば、100重量%としての工程a)で使用される泥漿中の含量に対して5重量%未満だけ、有利には3重量%未満だけ)低減されるにすぎない。有利には、上記含量は不変のままである。上記グリーン成形体においては、工程d)における圧密の結果として、セラミック粒子に対するアルコール性有機溶剤の割合は低下する。
【0057】
本発明による方法の工程a)で使用される泥漿及びプリプレグ中に含まれる泥漿の液相は、上記アルコール性有機溶剤の他に、必須成分として水を含有する。上記アルコール性有機溶剤及び水の他に、泥漿には、非アルコール性有機溶剤等のその他の溶剤が添加され得る。しかしながら、経済的かつ環境的な観点から、上記泥漿の液相の少なくとも80体積%、有利には少なくとも90体積%(例えば、20℃で測定される)が上記アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリン及び水により提供されることが有利である。その場合に、液相中に溶解された固体は、該液相の体積に数えられない。最も有利には、上記液相は、アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリン及び水からなる。
【0058】
上記泥漿は、セラミック粒子の他に、セラミックマトリクスの形成のために泥漿の取り扱い、繊維の含浸、及び/又は泥漿の乾燥を容易にする更なる添加剤を含有し得る。そのような添加剤には、例えば分散剤、又は粘度に影響を及ぼす有機添加剤(例えば、チキソトロピー剤)が含まれる。そのような分散剤が使用される場合に、該分散剤は一般的に、100重量%としての泥漿の全固体含量に対して5重量%以下、有利には2重量%以下の量で含まれている。分散剤としては、例えばイオン性基、例えばプロトン化形又はイオン形のカルボン酸基がポリマー鎖と共有結合されているポリマーが適切である。有利な分散剤は、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである。該コポリマーに関しては、重合されるアクリル酸単位の含量が50mol%以上、好ましくは70mol%以上であることが有利である。ポリアクリル酸が特に有利である。分散剤としてのポリマーは、一般的には、低い分子量を有する、例えば5000g/mol未満、有利には2000g/mol未満の分子量を有するポリマーである。
【0059】
本発明による方法の工程a)で使用される泥漿及びプリプレグ中に含まれる泥漿への有機結合剤の添加は必要とされない。パラフィン又はワックスの使用も必要とされない。しかしながら、有機結合剤は、任意に泥漿の所望の特性の制御のために使用される場合がある。例えば、ゲルを形成することが可能な有機結合剤を使用することにより、プリプレグの貯蔵安定性を高めることができる。プリプレグが製造時に乾燥され、そして再湿化されるときに、該バインダーは固化又は硬化され得る。三次元に架橋された結合剤は、賦形された複合材料の形状を安定化するために機能し得る。工程c)における賦形過程、例えば積層工程の間の圧縮も、結合剤の添加により影響され得る。その影響により、セラミック粒子は繊維束中に固定化され、絞り出され得ない。含浸された短繊維の編成物の場合に、該編成物はバインダーにより固定化されるため、加工は容易になり得る。
【0060】
そのような有機結合剤が使用される場合に、該結合剤は一般的に、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%以下の量で含まれている。有利には、上記有機結合剤の含量は、0重量%~5重量%、より有利には0重量%~2重量%、特に有利には0重量%~1重量%である。
【0061】
有機結合剤が使用される場合に、該結合剤は一般的に、有機ポリマー結合剤である。一般的な有機ポリマー結合剤は、10000g/molより大きい分子量を有するポリマーである。上記目的のために知られている結合剤の1つの群は、ポリマーの水溶液として使用され得る、例えばポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドン等の結合剤である。三次元架橋するポリマーとしては、本明細書ではゼラチンを挙げることができる。さらに、UV硬化性結合剤、特に三次元架橋するUV硬化性結合剤を例として挙げることができる。更なる1つの群は、ポリマー粒子の水性分散液として使用される、例えばポリスチレンポリマー又はポリアクリレートポリマー等の結合剤により構成される。例えば粒子体積に基づいてレーザー散乱を用いて測定されるような一般的な平均粒度は、0.1μm~1μmの範囲である。プリプレグは、分散液型バインダーにより、これを乾燥させて加工のために再湿化させることによって固化され得る。このことは、切断短繊維からの繊維編成物の場合に有利である場合がある。
【0062】
全体として、泥漿の固体含量(任意に水及びアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンからの混合物中に溶解されている固体を含む)の95重量%以上、より有利には97重量%以上、更により有利には98重量%以上が上記セラミック粒子により提供されていることが有利である。同様に、泥漿の固体含量の5重量%以下、より有利には3重量%以下、更により有利には2重量%以下が、分散剤及び有機結合剤を含む任意の添加物質により提供されていることが有利である。
【0063】
本発明による方法の工程a)において使用される泥漿及び上記プリプレグ中に含まれる泥漿は、必須成分としての上記セラミック粒子、水、及び上記アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンと、任意成分としての状況に応じて分散剤及び/又は状況に応じて有機結合剤とからなることが特に有利である。
【0064】
本発明による方法の工程a)において上記セラミック繊維の編成物が、完全にかつ均質に泥漿により含浸されることを保証するために、工程a)における泥漿が、10Pas未満の粘度、より有利には5Pas未満の粘度、更により有利には3.5Pas未満の粘度を有することが有利である。上記粘度は、例えば1s-1のせん断速度及び20℃の温度で、同軸円筒形回転粘度計を用いて測定することができる。
【0065】
本発明による方法の工程a)におけるセラミック繊維の編成物の含浸に際しての手法は、特に限定されず、当業者にこの目的のために知られている数多くの方法、例えば、繊維編成物上への泥漿の吹き付け、繊維編成物上への泥漿の流し込み、泥漿中での繊維編成物の浸漬、泥漿の繊維編成物上への適切な器具を用いた塗布を使用することができる。含浸は、プリプレグ装置において適切に機械的に行うこともできる。繊維編成物の泥漿による浸透は、加圧下で又は真空によって支援することもできる。繊維編成物中での泥漿の均質な分配は、超音波により支援することができる。含浸後に過剰な泥漿材料を、例えばドクターブレード又はへらにより除去する方策もある。
【0066】
本発明による方法の工程b)においては、含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させることで、セラミック系複合材のためのプリプレグが得られる。
【0067】
「予備含浸繊維(preimpregnated fibres)」という用語に由来する短縮形としてのプリプレグとは、セラミック系複合材の専門分野では、セラミック系複合材から素材又は構成部材を製造するために硬化され得る予備含浸された繊維-マトリクス半製品を指す。プリプレグのマトリクスとして又は後のセラミック系複合材中のマトリクスのまだ硬化されていない前駆物質として、本発明の範囲においては本明細書で定義される泥漿が用いられる。
【0068】
一般的には、工程b)における含水量の低減は、含浸された繊維編成物を、水が泥漿から気化又は有利には蒸発する温度及び/又は相対空気湿度(本明細書では、相対湿度とも呼ばれる)の条件で保持することにより行われる。当業者には理解されるように、上記条件は、アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンが泥漿中に保持されるか、又は僅かしか(例えば、100重量%としての工程a)で使用される泥漿中の含量に対して5重量%未満だけ、有利には3重量%未満だけしか)低減されないように選択されるべきである。有利には、上記溶剤は保持される。しかしながら、そのことは、該アルコール性有機溶剤が比較的高い沸点を有するので問題はない。例えば、グリセリンは、290℃の沸点(分解下)を有する。
【0069】
上述のように、泥漿中に比較的高い含量のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを有する本発明により取得される有利なプリプレグは、例えば高温及び/又は低い空気湿度で含水量を迅速に低減させた場合にもその水塑性を不可逆的に失わず、すなわち除去された水の量が、得られたプリプレグが塑性特性を有さないほど、例えば弾性特性を有するほど多い場合でさえも、プリプレグの再湿化によって再び塑性の変形可能性を得ることができる。さらに、泥漿中の含水量を介して、プリプレグの表面特性、特にその粘着性を制御することもできる。例えば、積層物の製造のためのプリプレグの加工に際して、該プリプレグが、積層を容易にする粘着性表面を有することが有利である。アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンが比較的多量に存在することに基づき、プリプレグの表面の粘着性は、20℃~25℃の温度及び30%~60%の相対湿度の一般的な条件下でのより長期の貯蔵後でさえもなおも保持され得る。任意に、上記表面の粘着性はまた、プリプレグの再湿化によって回復され得る。乾燥後の再湿化によって、上記のように、プリプレグの固化がバインダーにより更に行われ得る。
【0070】
その点で、本発明による方法及びその際に取得されるプリプレグは、当業者にプリプレグの製造及び再加工に際して高度の柔軟性を提供する。
【0071】
例えば、工程b)における泥漿の含水量の低減は、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~2時間、有利には1分間~1時間の時間にわたり保持することを含む。この変法は、本明細書ではまた「乾燥」とも呼ばれる。
【0072】
例えば、プリプレグ装置でのプリプレグの迅速な機械的な製造の場合に重要な場合がある有利な変法によれば、工程b)における泥漿の含水量の低減は、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~30分間の時間、有利には1分間~15分間、特に有利には3分間~10分間にわたり保持することを含む。この変法は、本明細書ではまた「迅速な乾燥」とも呼ばれる。上記で論じられたように、その変法は、工程a)において比較的高い含量のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを、例えば21重量%以上の含量で有する泥漿が使用される本発明の実施形態のために特に適している。
【0073】
更なる有利な変法によれば、工程b)における泥漿の含水量の低減は、水熱的なコンディショニング、すなわち、含浸された繊維編成物を、制御された温度及び制御された空気湿度で、プリプレグ中の泥漿の含水量と周囲雰囲気の含水量との間の平衡状態が調整されるのに十分な時間にわたり保持することを含む。該水熱的なコンディショニングは、例えば気候調節室又は乾燥炉中で、制御された雰囲気で実施され得る。しかしながら、その水熱的なコンディショニングは、含浸された繊維編成物又はプリプレグの気候調節された空間内での貯蔵、更には加工によっても行うことができる。
【0074】
その場合に、上記水熱的なコンディショニングのための例示的条件は、10℃~30℃の範囲の温度、30%~80%の相対湿度、及び1時間~20時間の時間である。
【0075】
上記水熱的なコンディショニングのための有利な条件は、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~60%、特に有利には50%~60%の相対湿度、及び1時間~10時間、特に有利には1時間~5時間の時間である。それらの条件は、工程a)において比較的高い含量のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを、例えば21重量%以上の含量で有する泥漿が使用される本発明の実施形態のために特に適している。
【0076】
両方の手法(すなわち、乾燥又は迅速な乾燥及び水熱的なコンディショニング)は、例えば乾燥又は迅速な乾燥によって所望の含水量に近い含水量を調整し(予備乾燥とも呼ばれる)、引き続き水熱的なコンディショニングによって所望の含水量を制御された様式で調整し得ることにより適切に組み合わせることもできる。
【0077】
本発明によるプリプレグは、有利には、例えば含水量の大幅な低減の後に再湿化によって良好に加工可能な状態にすることができるので、上記水熱的なコンディショニングは、上記で定義されるように、工程b)における含水量の低減のためだけに使用され得るわけではない。すなわち、上記平衡状態は、繊維編成物中の泥漿が平衡状態に相当するものより高い含水量を有する状態から出発するだけでなく、繊維編成物中の泥漿が平衡状態に相当するものより低い含水量を有する状態から出発して達成される場合もある。したがってこの場合に、上記水熱的なコンディショニングは、工程b)の後のプリプレグの再湿化のためにも使用することができる。
【0078】
こうして、例えばまずは上記のような乾燥又は迅速な乾燥によって、良好に取り扱い可能かつ貯蔵可能なプリプレグを取得することができ、該プリプレグは、引き続き工程c)における更なる加工の前に、最適な加工特性を保証するために水熱的なコンディショニングに供される。乾燥又は迅速な乾燥と水熱的なコンディショニングとによって、更にプリプレグの固化がバインダーにより行われ得る。
【0079】
同様に、例えばまずは工程b)において含水量の低減のための任意の方法によって、また乾燥若しくは迅速な乾燥、又は水熱的なコンディショニングによっても、良好に取り扱い可能かつ貯蔵可能なプリプレグを取得することができ、該プリプレグは、引き続き低い空気湿度の条件下でより長い時間にわたって貯蔵され、したがって同様に工程c)における更なる加工の前に、最適な加工特性を保証するために水熱的なコンディショニングにかけられる。
【0080】
したがって、本発明による方法は、特に工程a)において比較的高い含量のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを、例えば21重量%以上の含量で有する泥漿が使用される本発明の実施形態のために、工程b)において得られたプリプレグの高くとも60%の相対空気湿度での貯蔵も含み得る。上記貯蔵の時間は限定されず、その時間は、所望であれば、複数時間又は複数日及び複数ヶ月であり得る。
【0081】
当業者に明らかなように、工程b)における含水量の低減は、一方で繊維編成物中の泥漿の粘度の増大をもたらすので、該泥漿が流れ出す又は滴り落ちることなくプリプレグの取り扱いが可能となる。他方で、セラミック粒子の体積割合が高まり、それによりプリプレグ又は該プリプレグから製造されるグリーン成形体の、セラミック系複合材へと更に加工する際の収縮が制限される。さらに、アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンと組み合わせて適切な含水量はまた、上述のようにプリプレグの表面の粘着性をもたらし得る。
【0082】
例えば、工程b)における含水量の低減は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対するセラミック粒子の体積割合が、工程b)の後に工程b)の前よりも少なくとも5体積%だけ高まるように実施され得る。全てのパーセント表記、すなわち5体積%の限界値はまた、泥漿の全体積を基準とするものであり、すなわち工程a)において、例えば38体積%のセラミック粒子の割合を有する泥漿の使用から始まって、工程b)の実施後に泥漿が少なくとも43体積%のセラミック粒子の割合を有するプリプレグが得られることとなる。
【0083】
より有利には、プリプレグ中の泥漿の全体積に対するプリプレグ中のセラミック粒子の体積割合は、少なくとも45体積%、更により有利には少なくとも50体積%、特に有利には少なくとも52体積%である。この点では、工程b)で取得されたプリプレグ中の泥漿の含水量は、相応して調整されることが有利である。
【0084】
有利には、プリプレグ中の泥漿の全体積に対するプリプレグ中のセラミック粒子の体積割合は、多くとも60体積%、より有利には多くとも57体積%である。
【0085】
その場合に、プリプレグ中の泥漿の全体積に対するプリプレグ中のセラミック粒子の体積割合は、例えば間接的に、本発明による方法の工程b)における泥漿中の含水量の低減の前後での含浸された繊維編成物の重量の比較によって測定することができる。工程a)で含浸のために使用される泥漿中のセラミック粒子の体積割合は、該泥漿中で簡単に直接的に測定することができる。プリプレグ中に存在する泥漿の量は、同様に含浸の前後での繊維編成物の重量の比較によって容易に測定され得る。こうして、工程b)において除去される水の測定量から、残留する水量だけでなく、残留する水及びグリセリン量中のセラミック粒子の体積も計算することができる。
【0086】
プリプレグ中の泥漿の含水量は、少なくともプリプレグの加工に際して、有利には泥漿がプリプレグに粘着性表面を授けるように調整されるべきである。泥漿中に含まれるアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンの量に関して、粘着性表面をもたらす含水量は、通常の試験によって、特にプリプレグの表面の軽い接触による粘着性の試験によって簡単に測定され得る。粘着性はまたT型剥離試験によっても確認され得る。25mmの幅を有する2枚の積層されたプリプレグテープから製造された試験片を用いた剥離試験によって測定される剥離力は、少なくとも0.5N/25mmであるべきである。
【0087】
一般的に泥漿の有利な粘着性が保証されているプリプレグ中の泥漿の有利な水の割合は、100重量%としてのプリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%、より有利には4重量%~11重量%、特に有利には4重量%~8重量%である。水の割合は、例えばプリプレグを、水が完全に除去されるまで乾燥させることによって測定することができる。
【0088】
既に上記で述べたように、工程a)で使用される泥漿中のセラミック粒子の全重量に対するアルコール性有機溶剤の含量に関する記載は、プリプレグ中に含まれる泥漿についても適用される。したがって、有利には、取得されたプリプレグ中の泥漿のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンの含量は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%である。より有利には、上記泥漿は、アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%、より有利には少なくとも25重量%、特に有利には少なくとも26重量%の量で含有する。有利には、上記泥漿は、100重量%としての泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%の上記アルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを含有する。
【0089】
プリプレグ中のセラミック繊維の、そこに含まれる泥漿に対する体積比は、例えば上記セラミック編成物中のセラミック繊維の繊維構造物と、それが泥漿を保持する能力とに依存してかなり変動し得る。例えば、プリプレグ中のセラミック繊維の体積割合は、プリプレグの全体積に対して15体積%~60体積%であり得る。
【0090】
本発明による方法の工程c)においては、工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料が取得される。こうして取得された、工程b)により得られた1つ以上のプリプレグを含む賦形された複合材料も本発明による材料である。
【0091】
本発明によるプリプレグは、この方法工程c)において、有利には多大な労力を掛けることなく所望の形状にすることができる。
【0092】
上記プリプレグは上述のように、含まれる泥漿中の含水量の調整によって、任意に泥漿の再湿化によって粘着性表面を伴って取得され得るので、該プリプレグは、例えば特に好ましくは積層物の形の賦形された複合材料の形成のために適している。
【0093】
泥漿の存在により、プリプレグ中の繊維が、賦形された複合材料の形成に際して再配置されて、その繊維の引張り又は損傷を避けることが可能となる。また、該プリプレグは、高い圧力がなくても互いに接合することができるので、同様に繊維の損傷を避けることにも寄与する。
【0094】
さらに、工程c)において、賦形された複合材料の形成のために組み合わされたプリプレグは、工程d)における圧密の前にまた再び分離し、そしてそれは、例えば得られる形状の修正の範囲内で必要となる場合には、別の様式で再び組み合わせることができる。
【0095】
賦形された複合材料を取得するための賦形方法には特に限定はなされないが、個別に又は組み合わせても実施することができる一連の方法工程を例として挙げることができる。
【0096】
工程c)における賦形された複合材料の取得は、例えば、プリプレグを裁断又は打ち抜きによって所望の形状にする工程を含み得る。
【0097】
賦形された複合材料の取得は、例えば1つ以上のプリプレグを賦形された支持体上に施与することを含むことができ、その際、その施与は、1つ以上のプリプレグが賦形された支持体材料の周りに巻き付けられるように実施することもできる。こうして、例えば任意に追加の乾燥工程後又は圧密工程後に、引き続き支持体材料を再び取り除くことにより、中空形を作製することができる。
【0098】
適切な賦形された支持体材料は、有利には柔軟性を有しない表面を提供すべきであり、有利にはグリーン成形体の取得のために形状を変えることなく熱処理に耐えることができるべきである。一般的な支持体材料は、例えば石膏、木材、金属、又はセラミックから製造されていてもよい。賦形された支持体材料の型に対しては、特に限定は存在しない。適切な型には、プリプレグが導入され得る種々の形状の型枠が含まれ、又はプリプレグが施与され得る円筒等の外表面を有する型が含まれる。
【0099】
本発明による方法の工程c)における賦形された複合材料の取得の範囲内の有利な方法工程は、工程b)で得られたプリプレグの2つ以上の積層である。したがって、工程c)で取得される賦形された複合材料の有利な実施形態はまた、本発明によるプリプレグの2つ以上からの積層物である。当業者に明らかなように、上記積層物の製造のために取得された使用されるプリプレグは、有利には布帛の形で存在する。さらに、プリプレグが積層の過程で粘着性表面を有することが有利である。上記で説明したように、それは、プリプレグ中に含まれている泥漿中の含水量の相応の調整によって達成することができる。
【0100】
本発明の範囲におけるプリプレグの積層のためには、該プリプレグは、例えば積み重ねることによって、それらの表面が触れ合うように直接的に互いに接触される。所望の数のプリプレグが組み合わされたら、一般的に圧力及び任意に温度の使用によって(例えば、オートクレーブ中で)積層が実施される。有利には、本発明によるプリプレグの積層のためにかけられる圧力はそれほど高くする必要はない。それは、セラミック繊維を取り囲む泥漿が、例えばそのアルコール性有機溶剤の含量に基づいて流動性を維持するため、或るプリプレグ中の繊維が、積層物中のそのプリプレグの下及び/又はその上にあるプリプレグ中の繊維に対するそれらの位置を柔軟に適合し得るからである。さらに、上記で説明されたように、プリプレグの粘着性表面を提供することができることにより、高い圧力を必要とすることなくプリプレグを互いに付着させることが可能となる。
【0101】
こうして、有利には積層の間のセラミック繊維の負荷は軽減され、損傷、例えば繊維の破壊は妨げられ得る。一般的に、プリプレグの積層に際してかけられる圧力は、1000kPaの値を超過せず、有利には100kPaの値を超過しない。該積層は、例えば固い型内で実施され得る。有利には、例えばプリプレグ積層物の導入後に、例えば50kPa以下、例えば5kPa~40kPaの残留圧力にまで排気される柔軟性のある真空袋を使用することもできるので、該真空袋に作用する周囲圧力が、積層のために必要とされる加圧を引き起こす。この手法の場合には、有利には水及びグリセリンの含量の低減により圧密させる工程d)は、同様に真空の支援により真空袋中で実施され得る。
【0102】
有利な賦形された複合材料として本発明により取得され得るプリプレグの積層物は、互いに積層された布帛の形で、より有利には2枚~40枚、特に有利には2枚~20枚のプリプレグを含む。
【0103】
積層の前又は後にも、プリプレグ自体の形状は、例えばプリプレグ又は積層物の裁断、縫い合わせ、又は打ち抜きによって適合させることができる。該積層物は、所望であれば、賦形された支持体材料上で取得され得る。その場合に、該積層物を、積層させた後に賦形された支持体材料上に施与して、予定された三次元形状を有する積層物を得ることができる。あるいは2つ以上のプリプレグを、賦形された支持体材料上で互いに積層させて、予定された三次元形状を有する積層物を得ることができる。適切な賦形された支持体材料は、有利には柔軟性を有しない表面を提供すべきであり、有利にはグリーン成形体の取得のために形状を変えることなく熱処理に耐えることができるべきである。一般的な支持体材料は、例えば石膏、木材、金属、又はセラミックから製造されていてもよい。賦形された支持体材料の型に対しては、特に限定は存在しない。適切な型には、積層物が導入され得る若しくは積層物が形成され得る種々の形状の型枠が含まれ、又は積層物が施与され得る若しくは積層物が形成され得る円筒等の外表面を有する型が含まれる。
【0104】
賦形された複合材料を、例えばプリプレグの積層により取得するにあたり、例えば100体積%としての賦形された複合材料の全体積に対して30体積%以上の賦形された複合材料中の繊維体積含有率が達成され得る。こうして、有利には機械的特性が保証され得る。必要であり所望される場合には、工程c)における賦形の過程において高い繊維体積含有率を調整するために、泥漿の一部を、賦形された複合材料を形成する1つ以上のプリプレグから押し出すことができる。
【0105】
本発明による方法の工程d)においては、工程c)において取得された賦形された複合材料の圧密は、含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減によって行われて、グリーン成形体が得られる。
【0106】
上述のように、本発明による方法の工程a)~c)におけるプリプレグ及び賦形された複合材料の取得のために使用される泥漿は、有利な実施形態においては、21重量%~35重量%のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを含有する。また、工程d)における賦形された複合材料のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンの含量は、グリーン成形体中のセラミック繊維を取り囲むマトリクス材料中のその含量が、圧密の実施後にマトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して20重量%以下、より有利には18重量%以下、特に有利には16重量%以下となる範囲内で低減されることが有利である。他方で、短縮された圧密時間に基づいて、なおもアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンがグリーン成形体中に含まれていて、該アルコール性有機溶剤の含量がマトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して有利には5重量%以上、特に有利には10重量%以上であることが有利である。
【0107】
賦形された複合材料の含水量は、工程d)において、得られたグリーン成形体中に水が存在しないか、又はマトリクス材料中に僅かな水の残留量が存在している範囲内で低減され得る。本発明による方法の工程d)で取得されたグリーン成形体の含水量は、100重量%としてのグリーン成形体の全重量に対して、有利には5重量%以下、より有利には3重量%以下である。
【0108】
当業者に明らかなように、その場合にマトリクス材料とは、工程d)における含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減により、プリプレグ又は賦形された複合材料中に含まれていた泥漿から生じるグリーン成形体中の材料を指す。該マトリクス材料は、グリーン成形体の焼結に際して、セラミック系複合材中でセラミック繊維を取り囲むセラミックマトリクスを形成する。したがって、上記マトリクス材料は、セラミック粒子及び有利にはアルコール性有機溶剤、任意成分として残留量の水、及び/又は任意に泥漿中に含まれていた添加物質、例えば有機結合剤、分散剤及び/又は粘度に影響を及ぼすための添加剤を含有する。
【0109】
本発明による方法の工程d)において含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減のために使用され得る適切な措置は、当業者であれば容易に利用し得る。上記措置は、特に賦形された複合材料の加熱及び/又は減圧下での保持を含み得る。その加熱に際して、賦形された複合材料は、好ましくは50℃~200℃、より有利には100℃~170℃、特に有利には100℃~150℃の温度にさらされる。上記加熱に際して使用されるべき温度を上回る高い沸点/分解点を有するアルコール性有機溶剤、例えばグリセリンが製造に際して使用される場合に、上記加熱に際してアルコール性有機溶剤の含量の低減を支援するために、加熱された複合材料をガス流中で又は減圧下で保持して、上記溶剤を蒸発させることが有利である。ガス流としては、本明細書では例えば、ブロワーにより生成される空気流、又は不活性ガス流が使用され得る。圧密工程の時間は、グリーン成形体の所望の組成に適合され得る。一般的に、圧密過程には、長くても15時間、有利には長くても12時間、特に有利には長くても11時間がかかる。
【0110】
本発明による方法によって取得されるようなセラミック系複合材のためのグリーン成形体は同様に、上記方法の工程a)で含浸されたセラミック繊維を含有し、該繊維はセラミック系複合材中の強化構造として存在するべきである。さらに、該グリーン成形体は、複合材のセラミックマトリクスの前駆物質としてセラミック粒子を含み、該粒子はそのグリーン成形体の焼結に際してこのマトリクスを形成する。該グリーン成形体は一般的に、なおもアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンを含有し、その際、セラミック粒子の全重量に対する該アルコール性有機溶剤の含量は、圧密工程に基づき、本発明によるプリプレグのアルコール性有機溶剤の含量を下回る。焼結の間に、グリーン成形体中になおも残留するアルコール性有機溶剤は残らず焼失される。該溶剤は、セラミックマトリクス中で細孔形成剤として機能し得るので、該セラミック系複合材の損傷許容性を高め得る。
【0111】
また、上記任意の有機結合剤は、それが泥漿中に含まれていたのであれば、グリーン成形体中に一般的になおも存在し、焼結の間に焼失されて、セラミック系複合材料が取得される。
【0112】
また、更なる任意の有機成分、例えば分散剤又は任意の有機結合剤は、該成分が泥漿中に含まれていたのであれば、グリーン成形体中にも一般的になおも存在し、焼結の間に焼失されて、セラミック系複合材料が取得される。
【0113】
有利には、上記グリーン成形体はまた、積層物である。
【0114】
上記で説明したように、グリーン成形体中のアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンの含量は、プリプレグ又は賦形された複合材料に対して低減されている。有利には、グリーン成形体中のセラミック繊維を取り囲むマトリクス材料中のその含量は、該マトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して20重量%以下、より有利には18重量%以下、特に有利には16重量%以下である。他方で、短縮された圧密時間に基づいて、なおもアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンがグリーン成形体中に含まれていて、該含量が、マトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して有利には5重量%以上、特に有利には10重量%以上であることが有利である。
【0115】
また、含水量はプリプレグに対して更に低減されており、グリーン成形体は、水を含有しないか又は少量だけの水を含有し、その少量の水は、例えば本発明による方法の工程d)における圧密の後にも、残留するアルコール性有機溶剤、有利にはグリセリンの吸湿特性に基づき周囲空気から吸収され得る。しかしながら、該アルコール性有機溶剤の含量は、周囲からの水の吸収が起こるとしても、それがグリーン成形体の安定性に悪影響を及ぼさないような僅かな程度でしか生じないように十分に低い。したがって、該グリーン成形体は一般的に、形状安定性であり、例えば60%未満の相対湿度の空気湿度で任意に貯蔵可能である。該グリーン成形体の含水量は、100重量%としてのグリーン成形体の全重量に対して、有利には5重量%以下、より有利には3重量%以下である。
【0116】
一般的には、上記グリーン成形体は柔軟性を有しない。一般的には、該グリーン成形体はまた、粘着性ではなくなる。有利には、自己支持性構造、すなわち支持する必要なくその予定された形を保つ構造を有する。
【0117】
グリーン成形体中のセラミック繊維の、そこに含まれるセラミック粒子に対する体積比は、例えば上記繊維編成物中のセラミック繊維の繊維構造物と、それが該粒子を保持する能力とに依存してかなり変動し得る。例えば、グリーン成形体中のセラミック繊維の体積割合は、100体積%としてのグリーン成形体の全体積に対して15体積%~60体積%であり得る。
【0118】
本発明の更なる実施形態は、上記の本発明による方法によるセラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造工程と該グリーン成形体の焼結工程とを含むセラミック系複合材の製造方法である。
【0119】
上記焼結は、任意になおもグリーン成形体中に存在する水が気化する温度で行われ、該焼結は、なおも存在するアルコール性有機溶剤だけでなく、更に任意に存在する有機化合物、例えば分散剤及び結合剤を焼失させ、そしてセラミック粒子同士は焼結により互いに結合されて、得られるセラミック系複合材中のセラミック繊維を取り囲むセラミックマトリクスが形成される。セラミック粒子の焼結のために適切な温度は、当業者により容易に選択され得る。有利には、上記焼結は、酸化物セラミック繊維を有する複合材の場合には1100℃~1300℃の範囲の温度で実施され、非酸化物セラミック繊維を有する複合材の場合には1400℃~1600℃の範囲の温度で実施される。
【0120】
上記セラミック系複合材は、例えば織物の形において、有利には少なくとも30体積%、より有利には少なくとも35体積%、特に有利には少なくとも40体積%の該複合材の全体積に対する繊維体積含有率を有する。該繊維体積含有率は、上記のように、例えばグリーン成形体の取得のための本発明による方法における泥漿の組成によって、及び/又はグリーン成形体の製造に際しての中間生成物の加工によって適切に調整され得る。
【0121】
有利には、セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造のための又はセラミック系複合材自体の製造のための本発明による方法によって、該複合材の製造は、例えば36時間を下回る時間以内で、有利には24時間以内で行われ得る。その場合に、例えば実施されるべき工程についての所要時間は、以下の通りに見積もることができる:
泥漿の処理:約15分以下、
繊維編成物の泥漿での含浸と該泥漿の含水量の低減とによる、プリプレグ装置でのプリプレグの取得:約15分以下、
プリプレグの積層による、積層物の形における賦形された複合材料の取得:約30分以下、
含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減による圧密:約11時間以下、
焼結炉内での焼結:約12時間。
【0122】
本発明の重要な態様を、もう一度以下の項目においてまとめるが、それらの態様についても上記記載に示された説明が同様に適用される。
【0123】
1. セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造方法であって、以下の工程:
a)セラミック繊維の編成物を、以下の成分:
(i)泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む泥漿で含浸する工程と、
b)含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させて、セラミック系複合材のためのプリプレグを得る工程と、
c)工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料を取得する工程と、
d)上記賦形された複合材料を、含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減により圧密させることで、グリーン成形体を得る工程と、
を含む、方法。
【0124】
2. 工程a)において使用される泥漿は、以下の成分:
(i)泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
(ii)以下の、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択されるアルコール性有機溶剤と、
(iii)水と、
を含む、項目1に記載の方法。
【0125】
3. 上記アルコール性有機溶剤は、グリセリン、少なくとも1種のC~C-アルカンジオール、及びそれらの混合物から選択される、項目1又は2に記載の方法。
【0126】
4. 上記アルコール性有機溶剤は、グリセリンである、項目1又は2に記載の方法。
【0127】
5. 上記泥漿は、分散剤を含有する、項目1~4のいずれかに記載の方法。
【0128】
6. 上記分散剤は、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、項目5に記載の方法。
【0129】
7. 工程a)において使用される泥漿は、分散剤を泥漿の全固体含量に対して5重量%以下、より有利には2重量%以下の量で含有する、項目5又は6に記載の方法。
【0130】
8. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~10重量%、好ましくは0重量%~5重量%、更に有利には0重量%~2重量%、特に有利には0重量%~1重量%の有機結合剤を含有する、項目1~7のいずれかに記載の方法。
【0131】
9. 上記泥漿は、有機結合剤を含まない、項目1~8のいずれかに記載の方法。
【0132】
10. 工程a)において使用される泥漿は、1s-1のせん断速度及び20℃の温度で同軸円筒形回転粘度計を用いて測定される10Pas未満の粘度を有する、項目1~9のいずれかに記載の方法。
【0133】
11. 上記セラミック粒子は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、項目1~10のいずれかに記載の方法。
【0134】
12. 上記セラミック繊維は、
(i)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせと、
(ii)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、及びカーボンの2種以上からのセラミックブレンド又は複合物から形成されている繊維と、
(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)から選択される種々の繊維の組み合わせと、
から選択される、項目1~11のいずれかに記載の方法。
【0135】
13. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、ロービングを含む、項目1~12のいずれかに記載の方法。
【0136】
14. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、長繊維から形成されている、項目1~13のいずれかに記載の方法。
【0137】
15. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、織物又はノンクリンプ織物である、項目1~14のいずれかに記載の方法。
【0138】
16. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、100mm未満の有利な長さを有する短繊維から形成されている、項目1~15のいずれかに記載の方法。
【0139】
17. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、布帛である、項目1~16のいずれかに記載の方法。
【0140】
18. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して、有利には少なくとも24重量%、より有利には少なくとも25重量%、特に有利には少なくとも26重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、項目1~17のいずれかに記載の方法。
【0141】
19. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して、有利には多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、項目1~18のいずれかに記載の方法。
【0142】
20. 工程a)において使用される泥漿は、少なくとも20体積%のセラミック粒子、より有利には少なくとも25体積%のセラミック粒子、特に有利には少なくとも30体積%のセラミック粒子を含有する、項目1~19のいずれかに記載の方法。
【0143】
21. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、工程b)の後に工程b)の前よりも少なくとも5体積%だけ高まるように調整される、項目1~20のいずれかに記載の方法。
【0144】
22. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、少なくとも45体積%、より有利には少なくとも50体積%、特に有利には少なくとも52体積%であるように調整される、項目1~21のいずれかに記載の方法。
【0145】
23. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、多くとも60体積%、より有利には多くとも57体積%であるように調整される、項目1~22のいずれかに記載の方法。
【0146】
24. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の水の割合は、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%、より有利には4重量%~11重量%、特に有利には4重量%~8重量%である、項目1~23のいずれかに記載の方法。
【0147】
25. 上記プリプレグ中のセラミック繊維の体積割合は、プリプレグの全体積に対して15体積%~60体積%である、項目1~24のいずれかに記載の方法。
【0148】
26. 含水量を低減する工程b)は、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~2時間の時間にわたり保持することを含む、項目1~25のいずれかに記載の方法。
【0149】
27. 含水量を低減する工程b)は、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~30分間の時間にわたり保持することを含む、項目1~26のいずれかに記載の方法。
【0150】
28. 含水量を低減する工程b)は、含浸された繊維編成物の水熱的なコンディショニングを含む、項目1~27のいずれかに記載の方法。
【0151】
29. 上記水熱的なコンディショニングは、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~80%の相対湿度の条件下で1時間~20時間の時間にわたり実施される、項目28に記載の方法。
【0152】
30. 上記水熱的なコンディショニングは、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~60%、特に有利には50%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間、特に有利には1時間~5時間の時間にわたり実施される、項目28又は29に記載の方法。
【0153】
31. 上記方法は、工程b)の後に水熱的なコンディショニングによる上記1つ以上のプリプレグの再湿化を含む、項目1~30のいずれかに記載の方法。
【0154】
32. 上記水熱的なコンディショニングは、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~60%、特に有利には50%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間、特に有利には1時間~5時間の時間にわたり実施される、項目31に記載の方法。
【0155】
33. 上記方法は、工程b)において得られたプリプレグの、高くとも60%の相対空気湿度での貯蔵を含む、項目1~32のいずれかに記載の方法。
【0156】
34. 工程c)における賦形された複合材料の取得は、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上を賦形された支持体上に施与することを含む、項目1~33のいずれかに記載の方法。
【0157】
35. 上記賦形された複合材料は、積層物であり、かつ工程c)における賦形された複合材料の取得は、工程b)において取得されたプリプレグの2つ以上を積層させることを含む、項目1~34のいずれかに記載の方法。
【0158】
36. 上記積層物を、賦形された支持体材料上に施与して、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、項目35に記載の方法。
【0159】
37. 上記2つ以上のプリプレグを、賦形された支持体材料上で互いに積層させて、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、項目35に記載の方法。
【0160】
38. 工程c)において、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上は、賦形された支持体材料の周りに巻き付けられる、項目34に記載の方法。
【0161】
39. 工程d)において、賦形された複合材料のアルコール性有機溶剤の含量は、グリーン成形体中のマトリクス材料のアルコール性有機溶剤の含量が、圧密の実施後にマトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して20重量%以下、より有利には18重量%以下、特に有利には16重量%以下となる範囲内で低減される、項目2~38のいずれかに記載の方法。
【0162】
40. 工程d)における含水量及びアルコール性有機溶剤の含量の低減は、賦形された複合材料を100℃以上へと減圧下又はガス流中で加熱することによって実施される、項目1~39のいずれかに記載の方法。
【0163】
41. 項目1~40のいずれかに記載の方法によるグリーン成形体の製造の工程と該グリーン成形体の焼結の工程とを含む、セラミック系複合材の製造方法。
【0164】
42. 上記セラミック系複合材は、少なくとも30体積%、より有利には少なくとも35体積%、特に有利には少なくとも40体積%の該複合材の全体積に対する繊維体積含有率を有する、項目41に記載の方法。
【0165】
43. 泥漿で含浸されているセラミック繊維の編成物を含むセラミック系複合材のためのプリプレグであって、上記泥漿は、(i)セラミック粒子と、(ii)アルコール性有機溶剤と、(iii)水とを含み、かつ上記アルコール性有機溶剤は、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して10重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、少なくとも800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択される、プリプレグ。
【0166】
44. 上記アルコール性有機溶剤は、
(ii-1)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
(ii-2)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、
(ii-3)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の少なくとも1種のC~C-アルカンジオールと、
(ii-4)泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の、C~C-アルカンジオールと、最大800g/molの平均分子量を有するオリゴエチレングリコール又はポリエチレングリコールと、グリセリンとから選択される2種以上の成分からの混合物と、
から選択される、項目43に記載のプリプレグ。
【0167】
45. 上記アルコール性有機溶剤は、グリセリン、少なくとも1種のC~C-アルカンジオール、及びそれらの混合物から選択される、項目43又は44に記載のプリプレグ。
【0168】
46. 上記アルコール性有機溶剤は、グリセリンである、項目43~45のいずれかに記載のプリプレグ。
【0169】
47. 上記泥漿は、分散剤を含有する、項目43~46のいずれかに記載のプリプレグ。
【0170】
48. 上記分散剤は、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、項目47に記載のプリプレグ。
【0171】
49. 上記泥漿は、分散剤を泥漿の全固体含量に対して5重量%以下、より有利には2重量%の量で含有する、項目47又は48に記載のプリプレグ。
【0172】
50. 上記泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~10重量%、有利には0重量%~5重量%、更に有利には0重量%~2重量%、特に有利には0重量%~1重量%の有機結合剤を含有する、項目43~49のいずれかに記載のプリプレグ。
【0173】
51. 上記泥漿は、有機結合剤を含まない、項目43~50のいずれかに記載のプリプレグ。
【0174】
52. 上記セラミック粒子は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、項目43~51のいずれかに記載のプリプレグ。
【0175】
53. 上記セラミック繊維は、
(i)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせと、
(ii)Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、SiCN、SiBNC、及びカーボンの2種以上からのセラミックブレンド又は複合物から形成されている繊維と、
(iii)(i)、(ii)、又は(i)及び(ii)から選択される種々の繊維の組み合わせと、
から選択される、項目43~52のいずれかに記載のプリプレグ。
【0176】
54. 上記セラミック繊維の編成物は、ロービングを含む、項目43~53のいずれかに記載のプリプレグ。
【0177】
55. 上記セラミック繊維の編成物は、長繊維から形成されている、項目43~54のいずれかに記載のプリプレグ。
【0178】
56. 上記セラミック繊維の編成物は、織物又はノンクリンプ織物である、項目43~55のいずれかに記載のプリプレグ。
【0179】
57. 上記セラミック繊維の編成物は、100mm未満の有利な長さを有する短繊維から形成されている、項目43~54のいずれかに記載のプリプレグ。
【0180】
58. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、布帛である、項目43~57のいずれかに記載のプリプレグ。
【0181】
59. 上記泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%、より有利には少なくとも25重量%、特に有利には少なくとも26重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、項目43~58のいずれかに記載のプリプレグ。
【0182】
60. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%、より有利には多くとも29重量%、特に有利には多くとも28重量%のアルコール性有機溶剤を含有する、項目43~59のいずれかに記載のプリプレグ。
【0183】
61. 上記泥漿中のセラミック粒子の体積割合は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して少なくとも45体積%、より有利には少なくとも50体積%である、項目43~60のいずれかに記載のプリプレグ。
【0184】
62. 上記泥漿中のセラミック粒子の体積割合は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して多くとも60体積%である、項目43~61のいずれかに記載のプリプレグ。
【0185】
63. 上記泥漿の水の割合は、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%、より有利には4重量%~11重量%、特に有利には4重量%~8重量%である、項目43~62のいずれかに記載のプリプレグ。
【0186】
64. 項目43~63のいずれかに記載の1つ以上のプリプレグを含む、賦形された複合材料。
【0187】
65. 上記複合材料は、項目43~63のいずれかに記載のプリプレグの2つ以上からの積層物である、項目64に記載の賦形された複合材料。
【0188】
本発明の上記の有利な実施形態のグリセリンを使用する重要な態様を、もう一度以下の項目においてまとめるが、それらの態様についても上記記載に示された説明が同様に適用される。
【0189】
1A. セラミック系複合材のためのグリーン成形体の製造方法であって、以下の工程:
a)セラミック繊維の編成物を、以下の成分:
泥漿の全体積に対して10体積%~40体積%のセラミック粒子と、
泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%のグリセリンと、
水と、
を含む泥漿で含浸する工程と、
b)含浸された繊維編成物中の泥漿の含水量を低減させて、セラミック系複合材のためのプリプレグを得る工程と、
c)工程b)により得られたプリプレグの1つ以上から、賦形された複合材料を取得する工程と、
d)上記賦形された複合材料を、含水量及びグリセリン含量の低減により圧密させることで、グリーン成形体を得る工程と、
を含む、方法。
【0190】
2A. 上記泥漿は、分散剤を含有する、項目1Aに記載の方法。
【0191】
3A. 上記分散剤は、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、項目2Aに記載の方法。
【0192】
4A. 工程a)において使用される泥漿は、分散剤を泥漿の全固体含量に対して2重量%以下の量で含有する、項目2A又は3Aに記載の方法。
【0193】
5A. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~2重量%、好ましくは0重量%~1重量%の有機結合剤を含有する、項目1A~4Aのいずれかに記載の方法。
【0194】
6A. 上記泥漿は、有機結合剤を含まない、項目1A~5Aのいずれかに記載の方法。
【0195】
7A. 工程a)において使用される泥漿は、1s-1のせん断速度及び20℃の温度で同軸円筒形回転粘度計を用いて測定される10Pas未満の粘度を有する、項目1A~6Aのいずれかに記載の方法。
【0196】
8A. 上記セラミック粒子は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、項目1A~7Aのいずれかに記載の方法。
【0197】
9A. 上記セラミック繊維は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせから選択される、項目1A~8Aのいずれかに記載の方法。
【0198】
10A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、ロービングを含む、項目1A~9Aのいずれかに記載の方法。
【0199】
11A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、長繊維から形成されている、項目1A~10Aのいずれかに記載の方法。
【0200】
12A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、織物又はノンクリンプ織物である、項目1A~11Aのいずれかに記載の方法。
【0201】
13A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、100mm未満の有利な長さを有する短繊維から形成されている、項目1A~10Aのいずれかに記載の方法。
【0202】
14A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、布帛である、項目1A~13Aのいずれかに記載の方法。
【0203】
15A. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して、有利には少なくとも24重量%のグリセリン、より有利には少なくとも25重量%のグリセリン、特に有利には少なくとも26重量%のグリセリンを含有する、項目1A~14Aのいずれかに記載の方法。
【0204】
16A. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して、有利には多くとも30重量%のグリセリン、より有利には多くとも29重量%のグリセリン、特に有利には多くとも28重量%のグリセリンを含有する、項目1A~15Aのいずれかに記載の方法。
【0205】
17A. 工程a)において使用される泥漿は、少なくとも20体積%のセラミック粒子、より有利には少なくとも25体積%のセラミック粒子、特に有利には少なくとも30体積%のセラミック粒子を含有する、項目1A~16Aのいずれかに記載の方法。
【0206】
18A. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、少なくとも45体積%、より有利には少なくとも50体積%、特に有利には少なくとも52体積%であるように調整される、項目1A~17Aのいずれかに記載の方法。
【0207】
19A. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の含水量は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対する泥漿中のセラミック粒子の体積割合が、多くとも60体積%、より有利には多くとも57体積%であるように調整される、項目1A~18Aのいずれかに記載の方法。
【0208】
20A. 工程b)において取得されるプリプレグにおける泥漿の水の割合は、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%、より有利には4重量%~11重量%、特に有利には4重量%~8重量%である、項目1A~19Aのいずれかに記載の方法。
【0209】
21A. 上記プリプレグ中のセラミック繊維の体積割合は、プリプレグの全体積に対して15体積%~60体積%である、項目1A~20Aのいずれかに記載の方法。
【0210】
22A. 含水量を低減する工程b)は、含浸された繊維編成物を50℃~150℃の温度及び10%~30%の相対湿度の条件で1分間~30分間の時間にわたり保持することを含む、項目1A~21Aのいずれかに記載の方法。
【0211】
23A. 含水量を低減する工程b)は、含浸された繊維編成物の水熱的なコンディショニングを含む、項目1A~22Aのいずれかに記載の方法。
【0212】
24A. 上記水熱的なコンディショニングは、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~60%、特に有利には50%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間、特に有利には1時間~5時間の時間にわたり実施される、項目23Aに記載の方法。
【0213】
25A. 上記方法は、工程b)の後に水熱的なコンディショニングによる上記1つ以上のプリプレグの再湿化を含む、項目1A~24Aのいずれかに記載の方法。
【0214】
26A. 上記水熱的なコンディショニングは、10℃~30℃、特に有利には20℃~30℃の範囲の温度、30%~60%、特に有利には50%~60%の相対湿度の条件下で1時間~10時間、特に有利には1時間~5時間の時間にわたり実施される、項目25Aに記載の方法。
【0215】
27A. 上記方法は、工程b)において得られたプリプレグの、高くとも60%の相対空気湿度での貯蔵を含む、項目1A~26Aのいずれかに記載の方法。
【0216】
28A. 工程c)における賦形された複合材料の取得は、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上を賦形された支持体上に施与することを含む、項目1A~27Aのいずれかに記載の方法。
【0217】
29A. 上記賦形された複合材料は、積層物であり、かつ工程c)における賦形された複合材料の取得は、工程b)において取得されたプリプレグの2つ以上を積層させることを含む、項目1A~28Aのいずれかに記載の方法。
【0218】
30A. 上記積層物を、賦形された支持体材料上に施与して、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、項目29Aに記載の方法。
【0219】
31A. 上記2つ以上のプリプレグを、賦形された支持体材料上で互いに積層させて、予定された三次元形状を有する積層物が得られる、項目29Aに記載の方法。
【0220】
32A. 工程c)において、工程b)において得られたプリプレグの1つ以上は、賦形された支持体材料の周りに巻き付けられる、項目28Aに記載の方法。
【0221】
33A. 工程d)において、賦形された複合材料のグリセリン含量は、グリーン成形体中のマトリクス材料のグリセリン含量が、圧密の実施後にマトリクス材料中のセラミック粒子の全重量に対して20重量%以下、より有利には18重量%以下、特に有利には16重量%以下となる範囲内で低減される、項目1A~32Aのいずれかに記載の方法。
【0222】
34A. 工程d)における含水量及びグリセリン含量の低減は、賦形された複合材料を100℃以上へと減圧下又はガス流中で加熱することによって実施される、項目1A~33Aのいずれかに記載の方法。
【0223】
35A. 項目1A~34Aのいずれかに記載の方法によるグリーン成形体の製造の工程と該グリーン成形体の焼結の工程とを含む、セラミック系複合材の製造方法。
【0224】
36A. 上記セラミック系複合材は、少なくとも30体積%、より有利には少なくとも35体積%、特に有利には少なくとも40体積%の該複合材の全体積に対する繊維体積含有率を有する、項目35Aに記載の方法。
【0225】
37A. 泥漿で含浸されているセラミック繊維の編成物を含むセラミック系複合材のためのプリプレグであって、上記泥漿は、セラミック粒子、グリセリン、及び水を含み、かつグリセリンは、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して21重量%~35重量%の量で含まれている、プリプレグ。
【0226】
38A. 上記泥漿は、分散剤を含有する、項目37Aに記載のプリプレグ。
【0227】
39A. 上記分散剤は、アクリル酸ポリマー又はアクリル酸コポリマーである、項目38Aに記載のプリプレグ。
【0228】
40A. 上記泥漿は、分散剤を泥漿の全固体含量に対して2重量%以下の量で含有する、項目38A又は39Aに記載のプリプレグ。
【0229】
41A. 上記泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して0重量%~2重量%、特に有利には0重量%~1重量%の有機結合剤を含有する、項目37A~40Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0230】
42A. 上記泥漿は、有機結合剤を含まない、項目37A~41Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0231】
43A. 上記セラミック粒子は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている粒子、又はそのような種類の粒子の2種以上の組み合わせから選択される、項目37A~42Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0232】
44A. 上記セラミック繊維は、Al、SiO、ZrO、Y、Y安定化ZrO、イットリウム-アルミニウム-ガーネット、ムライト、Si、SiC、若しくはカーボンから形成されている繊維、又はそのような種類の繊維の2種以上の組み合わせから選択される、項目37A~43Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0233】
45A. 上記セラミック繊維の編成物は、ロービングを含む、項目37A~44Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0234】
46A. 上記セラミック繊維の編成物は、長繊維から形成されている、項目37A~45Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0235】
47A. 上記セラミック繊維の編成物は、織物又はノンクリンプ織物である、項目37A~46Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0236】
48A. 上記セラミック繊維の編成物は、100mm未満の有利な長さを有する短繊維から形成されている、項目37A~45Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0237】
49A. 工程a)におけるセラミック繊維の編成物は、布帛である、項目37A~48Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0238】
50A. 上記泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して少なくとも24重量%のグリセリン、より有利には少なくとも25重量%のグリセリン、特に有利には少なくとも26重量%のグリセリンを含有する、項目37A~49Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0239】
51A. 工程a)において使用される泥漿は、泥漿中のセラミック粒子の全重量に対して多くとも30重量%のグリセリン、より有利には多くとも29重量%のグリセリン、特に有利には多くとも28重量%のグリセリンを含有する、項目37A~50Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0240】
52A. 上記泥漿中のセラミック粒子の体積割合は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して少なくとも45体積%、より有利には少なくとも50体積%である、項目37A~51Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0241】
53A. 上記泥漿中のセラミック粒子の体積割合は、プリプレグ中の泥漿の全体積に対して多くとも60体積%である、項目37A~52Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0242】
54A. 上記泥漿の水の割合は、プリプレグ中の泥漿の全重量に対して4重量%~13重量%、より有利には4重量%~11重量%、特に有利には4重量%~8重量%である、項目37A~53Aのいずれかに記載のプリプレグ。
【0243】
55A. 項目37A~54Aのいずれかに記載の1つ以上のプリプレグを含む、賦形された複合材料。
【0244】
56A. 上記複合材料は、項目37A~54Aのいずれかに記載のプリプレグの2つ以上からの積層物である、項目55Aに記載の賦形された複合材料。
【実施例
【0245】
実施例1
上記方法を、酸化物セラミック系プリプレグの製造の例として示す。繊維構造物として、Nextel(商標)610織物タイプDF19(供給業者、3M社)を使用する。加工の前に、これらを空気中で糊抜きする(700℃、2時間の保持時間)。水性泥漿は、67重量%の固体含量を有し、Al-ZrO粉体混合物(80%のMRS1、Albemarle社;20%のTZ-3Y-E、Krahn Chemie社)、固体に対して1重量%の分散剤Sokalan PA 15、26重量%のグリセリンを有する。該織物を泥漿で含浸し、ドクターブレードを用いて過剰の泥漿を除去する。粘着性のプリプレグを得るために、種々の方法が使用される。変法Aでは、浸透された織物を、気候調節室内で60の相対湿度及び25℃で24時間にわたり貯蔵する。変法Bでは、50℃(15分間、約10%の相対湿度)で乾燥棚中において部分的な水の除去が行われる。乾燥時間は、その水の除去が変法Aの平衡状態に相当するように選択される(図3を参照)。変法C(図2には示されていない)では、まず50℃(15分間)で部分的な水の除去が行われ、引き続き60%の相対湿度、25℃(24時間)での気候調節室内での貯蔵が行われる。変法Dは、60分間の50℃での水の除去と、60%の相対湿度及び25℃(24時間)での気候調節とから構成される。この場合に、該プリプレグは再湿化されて、平衡状態に至った。
【0246】
図1は、時間の関数としての、コンディショニング又は乾燥の過程でのプリプレグにおける泥漿の水の割合の、浸透後の泥漿中の水の割合に対する変化を示している。
【0247】
引き続き、それらの粘着性のプリプレグを型上に積層させる(実験室は25℃及び60%の相対湿度に気候調節される)。コンディショニング(ブロワーにより100℃、11時間)後に、そのグリーン成形体は、水の除去及びグリセリンの除去により安定となり、粘着性ではなくなる。それらの複合物を、1225℃及び2時間の保持時間で焼結させる。曲げ強さは、全ての変法において約300MPaであり、一様なプリプレグ品質を示す(表1)。
【0248】
【表1】
【0249】
実施例2
上記方法を、酸化物セラミック系プリプレグの製造の例として示す。繊維構造物として、Nextel(商標)610織物タイプDF19(供給業者、3M社)を使用する。加工の前に、これらを空気中で糊抜きする(700℃、2時間の保持時間)。水性泥漿は、67重量%の固体含量を有し、Al-ZrO粉体混合物(80%のMRS1、Albemarle社;20%のTZ-3Y-E、Krahn Chemie社)、固体に対して1重量%の分散剤Sokalan PA 15、26重量%のエタン-1,2-ジオールを有する。該織物を泥漿で含浸し、ドクターブレードを用いて過剰の泥漿を除去する。
【0250】
粘着性のプリプレグを得るために、浸透された織物を、気候調節室内で60の相対湿度及び25℃で20時間にわたり貯蔵する。
【0251】
引き続き、それらの粘着性のプリプレグを型上に積層させる(実験室は25℃及び60%の相対湿度に気候調節される)。コンディショニング(ブロワーにより100℃、11時間)後に、そのグリーン成形体は、水の除去及びエタン-1,2-ジオールの除去により安定となり、粘着性ではなくなる。その複合物を、1225℃及び2時間の保持時間で焼結させる。
図1