(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】印刷塗工装置
(51)【国際特許分類】
B41F 23/04 20060101AFI20230123BHJP
B05C 1/08 20060101ALI20230123BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230123BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20230123BHJP
B05C 9/14 20060101ALI20230123BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20230123BHJP
B41F 33/06 20060101ALI20230123BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20230123BHJP
F26B 13/12 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B41F23/04 A
B05C1/08
B05C11/10
B05C11/00
B05C9/14
B41F33/00 234
B41F33/06 S
B41F9/00 B
F26B13/12 Z
(21)【出願番号】P 2019011384
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】市川 幹二
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103217(JP,A)
【文献】特開2013-237252(JP,A)
【文献】特開2006-138499(JP,A)
【文献】特開2010-046980(JP,A)
【文献】特開2014-231950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0090267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 23/04
B05C 1/08
B05C 11/10
B05C 11/00
B05C 9/14
B41F 33/00
B41F 33/06
B41F 9/00
F26B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ウェブを連続搬送させる第1ウェブ搬送手段と、
連続搬送される上記第1ウェブに転写液を転写する転写手段と、
該転写手段の下流側に設けられ、上記第1ウェブに付着した転写液を連続搬送させながら乾燥させる乾燥手段と、
該乾燥手段又は当該乾燥手段の下流側に設けられ、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥状態を検出可能な少なくとも1つの検出センサを有する乾燥状態検出手段と、
上記第1ウェブ搬送手段及び上記乾燥状態検出手段に接続され、上記第1ウェブ搬送手段を作動させる制御手段とを備え、
該制御手段は、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥状態の目標値が記憶された記憶部と、上記検出センサで検出した検出値と上記目標値とを比較して上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であるか否かを判定する判定部と、該判定部により少なくとも1つの上記検出センサの検出値において上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定されると、上記第1ウェブ搬送手段に速度低下信号を出力して上記第1ウェブの搬送速度を低下させる一方、全ての上記検出センサの検出値において上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定されると、上記第1ウェブ搬送手段に速度上昇信号を出力して上記第1ウェブの搬送速度を上昇させるウェブ速度変更部とを備え
、
上記転写手段は、連続搬送される上記第1ウェブに対して回転しながら外周面に付着する転写液を転写する版胴と、該版胴の外周面に接触して当該外周面に付着する余分な転写液を上記版胴の回転動作により掻き取って除去するドクターブレードとを備え、
該ドクターブレードは、その先端が上記版胴の回転方向に対して反対方向を向くように、且つ、上記版胴の回転軸心の延長方向に見て上記版胴の外周面に対して鋭角な姿勢となるように当該版胴の外周面に接触していることを特徴とする印刷塗工装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の印刷塗工装置において、
上記転写液には、有機溶剤が含まれており、
上記乾燥状態検出手段は、上記第1ウェブに付着する転写液が上記乾燥手段において乾燥する際に転写液から気化した有機溶剤の量を検出する有機溶剤検出センサを備え、
上記記憶部には、残留有機溶剤量の目標値が記憶され、
上記判定部は、上記有機溶剤検出センサで検出した検出値が上記目標値より大きい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定する一方、上記目標値より小さい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定するよう構成されていることを特徴とする印刷塗工装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の印刷塗工装置において、
上記乾燥状態検出手段は、上記第1ウェブに付着した転写液の膜厚を検出する膜厚検出センサを備え、
上記記憶部には、上記第1ウェブに付着させる転写液の膜厚の目標値が記憶され、
上記判定部は、上記膜厚検出センサで検出した検出値が上記目標値より大きい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定する一方、上記検出値が上記目標値より小さい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定するよう構成されていることを特徴とする印刷塗工装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1つに記載の印刷塗工装置において、
第2ウェブを連続搬送させる第2ウェブ搬送手段をさらに備え、
上記転写手段は、上記第1ウェブに接着剤を転写する塗工ユニットであり、
上記第1ウェブ搬送手段及び上記第2ウェブ搬送手段は、上記第1ウェブ及び上記第2ウェブを重ねて挟み込むとともに回転動作によってその間を同方向に移動させながら上記接着剤を用いて貼り合わせてラミネート製品を得る第1貼合用ロール及び第2貼合用ロールを備えていることを特徴とする印刷塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続搬送されるウェブにインキや塗工液等の転写液を転写する印刷塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、連続搬送されるウェブにインキや塗工液等の転写液を転写する印刷塗工装置は、ウェブに付着させた転写液を乾燥させて得る転写済ウェブの品質を安定させるために、ウェブの搬送速度や乾燥温度の設定等、段取りに時間がかかることが一般的に知られている。
【0003】
これに対応するために、例えば、特許文献1の印刷装置は、転写済ウェブの品質が安定するウェブの搬送速度等の設定値を記憶可能な記憶部を備え、同様の印刷作業を繰り返す場合には、記憶部に記憶させた設定値に基づいて各機構を作動させることで、段取り時間を短縮するようにしている。
【0004】
しかし、特許文献1の場合、上述の設定値を決めるための最初に行う各機構の設定は、作業者の勘や経験により行う必要がある。したがって、同様の印刷作業を繰り返す場合には、上記記憶部に記憶された設定値に基づいて2回目以降の段取り時間が短縮されはするものの、初回の段取り時や異なる作業を行う場合については段取り時間が短くならないという問題がある。また、各機構の設定値は、気温や湿度等がばらついてもそれらに対応できる値に設定しておく必要があるので、気温や湿度等がばらつくと、各機構の設定値がインキの転写状態を安定させる最適な設定値では無くなってしまうという問題がある。さらに、一般的に、装置の運転開始時の各機構の最適設定値と通常運転時の各機構の最適設定値とは異なるので、特許文献1のように各機構の設定値を所定の値に固定すると、生産開始時から生産終了時までの間において各機構を常に最適な条件で作動させることができないという問題もある。
【0005】
これらに対応するために、ウェブに付着する転写液の転写状態を確認しながら各機構の設定値を変更させることが考えられる。例えば、特許文献2の塗工装置は、乾燥機の出口近傍に温度センサが設けられ、該温度センサにより乾燥機を通過したウェブ表面を測定するようになっている。そして、温度センサによる測定値と予め記憶された基準値とを比較し、基準値よりも測定値が低い場合には、乾燥機に熱風を供給する熱風供給手段の熱風の温度か、或いは、流速を上昇させる一方、基準値よりも測定値が高い場合には、熱風供給手段の熱風の温度か、或いは、流速を低下させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭60-42047号公報
【文献】特開2001-246306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の場合、熱風供給手段の熱風の温度又は流速を制御しており、制御部による温度又は流速変更指示時においてウェブ表面の温度が目標値へと変化する応答速度が遅いので、乾燥機を通過するウェブに付着する塗工液の乾燥状態に基づいて各機構の設定値を変更させる場合、乾燥状態を目標の状態にするまでに時間がかかってしまうおそれがある。特に、朝一のような生産開始時においては、乾燥機内の温度が低い状態であるので、ウェブ表面の塗工液の乾燥状態を十分な状態にするまでに多くの時間を費やすおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、生産条件や生産時期に関わらずにウェブ表面に付着する転写液の転写状態を短い時間で最適な状態にしてウェブ表面に品質の良い印刷層又は塗工層を形成することができる印刷塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、ウェブに付着する転写液の乾燥状態に基づいてウェブの搬送速度を変更させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、第1の発明では、第1ウェブを連続搬送させる第1ウェブ搬送手段と、連続搬送される上記第1ウェブに転写液を転写する転写手段と、該転写手段の下流側に設けられ、上記第1ウェブに付着した転写液を連続搬送させながら乾燥させる乾燥手段と、該乾燥手段又は当該乾燥手段の下流側に設けられ、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥状態を検出可能な少なくとも1つの検出センサを有する乾燥状態検出手段と、上記第1ウェブ搬送手段及び上記乾燥状態検出手段に接続され、上記第1ウェブ搬送手段を作動させる制御手段とを備え、該制御手段は、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥状態の目標値が記憶された記憶部と、上記検出センサで検出した検出値と上記目標値とを比較して上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であるか否かを判定する判定部と、該判定部により少なくとも1つの上記検出センサの検出値において上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定されると、上記第1ウェブ搬送手段に速度低下信号を出力して上記第1ウェブの搬送速度を低下させる一方、全ての上記検出センサの検出値において上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定されると、上記第1ウェブ搬送手段に速度上昇信号を出力して上記第1ウェブの搬送速度を上昇させるウェブ速度変更部とを備え、上記転写手段は、連続搬送される上記第1ウェブに対して回転しながら外周面に付着する転写液を転写する版胴と、該版胴の外周面に接触して当該外周面に付着する余分な転写液を上記版胴の回転動作により掻き取って除去するドクターブレードとを備え、該ドクターブレードは、その先端が上記版胴の回転方向に対して反対方向を向くように、且つ、上記版胴の回転軸心の延長方向に見て上記版胴の外周面に対して鋭角な姿勢となるように当該版胴の外周面に接触していることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記転写液には、有機溶剤が含まれており、上記乾燥状態検出手段は、上記第1ウェブに付着する転写液が上記乾燥手段において乾燥する際に転写液から気化した有機溶剤の量を検出する有機溶剤検出センサを備え、上記記憶部には、残留有機溶剤量の目標値が記憶され、上記判定部は、上記有機溶剤検出センサで検出した検出値が上記目標値より大きい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定する一方、上記目標値より小さい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記乾燥状態検出手段は、上記第1ウェブに付着した転写液の膜厚を検出する膜厚検出センサを備え、上記記憶部には、上記第1ウェブに付着させる転写液の膜厚の目標値が記憶され、上記判定部は、上記膜厚検出センサで検出した検出値が上記目標値より大きい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が不十分であると判定する一方、上記検出値が上記目標値より小さい場合には、上記第1ウェブに付着する転写液の乾燥が十分であると判定するよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、第2ウェブを連続搬送させる第2ウェブ搬送手段をさらに備え、上記転写手段は、上記第1ウェブに接着剤を転写する塗工ユニットであり、上記第1ウェブ搬送手段及び上記第2ウェブ搬送手段は、上記第1ウェブ及び上記第2ウェブを重ねて挟み込むとともに回転動作によってその間を同方向に移動させながら上記接着剤を用いて貼り合わせてラミネート製品を得る第1貼合用ロール及び第2貼合用ロールを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、ウェブ表面に付着する転写液の乾燥状態に基づいて制御するのが第1ウェブ搬送手段の搬送速度であり、制御手段による速度変更指示時においてウェブ搬送速度が目標速度へと変化する応答速度が速いので、時間をかけずに転写液の乾燥状態を目標の状態にすることができる。また、乾燥手段を通過したウェブに付着する転写液の乾燥状態に基づいてウェブ搬送速度を変更させるので、気温や湿度が変化したり、或いは、生産時期が異なる場合であっても、その時々の転写液の乾燥状態に基づいた最適なウェブ搬送速度でウェブに転写液が付着するようになる。したがって、作業者の勘や経験によってウェブ搬送速度等を設定するといった必要が無く、段取り時間を短くでき、しかも、ウェブ表面に品質の良い印刷層又は塗工層を形成することができる。
【0016】
また、ドクターブレードの先端が版胴の回転方向に対して同方向に向くようにドクターブレードを版胴の外周面に接触させた場合に比べて、ウェブ搬送速度が変化したときに、ドクターブレードと版胴外周面との間に形成される隙間に変動が生じ難くなる。したがって、ウェブ表面に付着する転写液の乾燥状態に基づいてウェブ搬送速度を変化させたときのウェブに対する転写液の転写量を安定させることができる。
【0017】
第2の発明では、乾燥した転写液に有機溶剤が含まれないか、或いは、ほとんど含まれない転写済ウェブを製造しながらウェブ搬送速度を最速にできるので、例えば、有機溶剤の匂いが出ないようにする必要がある食品系の包装材に使用される転写済ウェブを製造する場合において、効率良くウェブに転写液を転写することができる。
【0018】
第3の発明では、ウェブ表面に対する転写液の転写状態にばらつきが発生しないように転写済ウェブを製造しながらウェブ搬送速度を最速にできるので、品質の良い転写済ウェブを効率良く製造することができる。
【0019】
第4の発明では、第1ウェブに転写する接着剤の転写状態が最適な状態で第1ウェブと第2ウェブとを重ね合わせることができるので、品質にばらつきの無いラミネート製品を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係るドライラミネート用の塗工装置の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態2に係る
図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0022】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1のドライラミネート用の塗工装置1を示す。該塗工装置1は、有機溶剤が含まれる接着剤L(転写液)を用いて長尺状の2つの可撓性を有する第1ウェブX1と第2ウェブY1とをそれぞれ連続搬送させながら互いに貼り合わせてラミネート製品Z1を製造するものである。
【0023】
塗工装置1は、第1ウェブX1を連続的に巻き出す第1巻出ロール2と、第2ウェブY1を連続的に巻き出す第2巻出ロール3とを備え、第1巻出ロール2から巻き出された第1ウェブX1と第2巻出ロール3から巻き出された第2ウェブY1とが交わる部分には、第1ウェブX1及び第2ウェブY1を貼り合わせるラミネート装置4が配設されている。
【0024】
第1巻出ロール2は、第1駆動モータ2aにより回転駆動するようになっていて、第1巻出ロール2から巻き出された第1ウェブX1は、複数の第1ガイドロール11aに巻き掛けられながらラミネート装置4まで連続搬送されるようになっている。
【0025】
一方、第2巻出ロール3は、第2駆動モータ3aにより回転駆動するようになっていて、第2巻出ロール3から巻き出された第2ウェブY1は、複数の第2ガイドロール11bに巻き掛けられながらラミネート装置4まで連続搬送されるようになっている。
【0026】
第1巻出ロール2とラミネート装置4との間には、塗工ユニット5(転写手段)、乾燥ユニット6(乾燥手段)及び乾燥状態検出ユニット7(乾燥状態検出手段)が第1ウェブX1の搬送方向に沿って上流側から順に配設されている。
【0027】
塗工ユニット5は、グラビアコート方式(ダイレクトグラビア方式)と呼ばれる塗工方式で塗工するようになっていて、第1ウェブX1の搬送方向と同方向に回転する版胴5aと、第1ウェブX1の幅方向に延びる略直方体形状の塗工チャンバー5bと、第1ウェブX1を版胴5aに上方から圧着させる圧胴5fとを備えている。
【0028】
版胴5aは、下側駆動モータ5gにより回転駆動する一方、圧胴5fは、上側駆動モータ5hにより回転駆動するようになっている。
【0029】
塗工チャンバー5bには、接着剤Lを貯溜する液溜部5eが設けられ、該液溜部5eは、版胴5a側に開口している。版胴5aは、その外周面の一部が液溜部5eの接着剤Lに浸されるように塗工チャンバー5bに接近配置されている。
【0030】
塗工チャンバー5bの下部には、板状をなすシールプレート5cが液溜部5eの開口下端側周縁から斜め上方に向かって突設され、該シールプレート5cの先端が版胴5aの回転動作時に当該版胴5aの外周面に摺接して液溜部5eにおけるロール回転方向上流側をシールするようになっている。
【0031】
一方、塗工チャンバー5bの上部には、板状をなすドクターブレード5dが液溜部5eの開口上端側周縁から斜め下方に向かって突設されている。
【0032】
ドクターブレード5dは、その先端が版胴5aの回転方向に対して反対方向に向くように、且つ、版胴5aの回転軸心の延長方向に見て版胴5aの外周面に対して鋭角な姿勢となるように版胴5aの外周面に接触して液溜部5eのロール回転方向下流側をシールしており、版胴5aの回転動作時にドクターブレード5dの先端が版胴5aの外周面に摺接することにより、版胴5aの外周面に付着する余分な接着剤Lを掻き取って除去するようになっている。
【0033】
そして、版胴5a及び圧胴5fで第1ウェブX1を挟みこむとともに、下側駆動モータ5g及び上側駆動モータ5hによる版胴5a及び圧胴5fの回転動作により第1ウェブX1を正面視で略V字状となるように移動させながら版胴5aの外周面に付着する接着剤Lを第1ウェブX1の被塗工面(第2ウェブY1との重合面)に転写するようになっている。尚、本発明では、第1ウェブX1に接着剤Lを2.0~5.0g/m2付着させている。
【0034】
乾燥ユニット6は、水平方向に延びる略直方体形状をなす第1乾燥ボックス6a、第2乾燥ボックス6b及び第3乾燥ボックス6cを備え、第1乾燥ボックス6a、第2乾燥ボックス6b及び第3乾燥ボックス6cは、第1ウェブX1の搬送方向に沿って順に水平方向に並設されている。
【0035】
第1乾燥ボックス6a、第2乾燥ボックス6b及び第3乾燥ボックス6cの下流側の側壁には、第1排気ダクトD1、第2排気ダクトD2及び第3排気ダクトD3がそれぞれ設けられている。
【0036】
第1乾燥ボックス6a、第2乾燥ボックス6b及び第3乾燥ボックス6cの内部には、熱風を供給可能なノズル(図示せず)がそれぞれ配設されていて、当該ノズルから熱風を連続搬送中の第1ウェブX1の被塗工面に向かって吐出させることにより、第1ウェブX1に付着させた接着剤Lを乾燥させるようになっている。
【0037】
乾燥状態検出ユニット7は、第3乾燥ボックス6cの下流側に設けられ、第1ウェブX1に付着させた接着剤Lの膜厚を検出可能な膜厚検出センサ7aと、該膜厚検出センサ7aが一端に固定された正面視で略V字状をなす固定ブラケット7bと、該固定ブラケット7bの他端が上面に固定されたスライダ7cと、該スライダ7cを第1ウェブX1の幅方向に沿ってスライド可能に支持するスライドレール7dとを備えている。
【0038】
膜厚検出センサ7aは、赤外線膜厚計であり、具体的な商品として、倉敷紡績株式会社製の型式:RX-200が挙げられる。
【0039】
膜厚検出センサ7aは、第3乾燥ボックス6cの内部に臨んでいて、第1ガイドロール11aに巻き掛けられて斜め下方に向かう第1ウェブX1の被塗工面に付着する接着剤Lの膜厚を斜め上方から検出するようになっている。
【0040】
つまり、膜厚検出センサ7aは、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥状態を検出可能になっている。
【0041】
また、スライダ7cは、手動によりスライドレール7d上を第1ウェブX1の幅方向に沿ってスライドさせることが可能になっていて、スライダ7cのスライド動作により、膜厚検出センサ7aにおける第1ウェブX1の検出位置を当該第1ウェブX1の幅方向に変更可能になっている。尚、本発明の実施形態1では、スライダ7cを手動でスライドさせるようにしているが、スライダ7cを電動モータ等を利用して自動でスライドさせるようにしてもよい。
【0042】
ラミネート装置4は、上下に並んで配置された第1貼合用ロール4a及び第2貼合用ロール4bを備え、該第1貼合用ロール4a及び第2貼合用ロール4bは、それぞれ第3駆動モータ4c及び第4駆動モータ4dにより回転駆動するようになっている。
【0043】
第1貼合用ロール4a及び第2貼合用ロール4bは、第3駆動モータ4c及び第4駆動モータ4dによって回転駆動することにより、第1ウェブX1と第2ウェブY1とを重ねて挟み込むとともに回転動作によってその間を同方向に移動させながら接着剤Lを用いて貼り合わせてラミネート製品Z1を製造するようになっている。
【0044】
ラミネート装置4の下流側には、複数の第3ガイドロール11cに巻き掛けられながら連続搬送されるラミネート製品Z1を巻き取る巻取ロール8が配設され、該巻取ロール8は、第5駆動モータ8aにより回転駆動するようになっている。
【0045】
尚、本発明の第1ウェブ搬送手段12は、第1巻出ロール2、第1ガイドロール11a、版胴5a、圧胴5f、第1貼合用ロール4a、第2貼合用ロール4b及び巻取ロール8で構成される一方、本発明の第2ウェブ搬送手段13は、第2巻出ロール3、第2ガイドロール11b、第1貼合用ロール4a、第2貼合用ロール4b及び巻取ロール8で構成されている。
【0046】
第1巻出ロール2、第2巻出ロール3、ラミネート装置4、塗工ユニット5、乾燥ユニット6、乾燥状態検出ユニット7及び巻取ロール8には、制御盤9(制御手段)が接続され、該制御盤9は、第1巻出ロール2、第2巻出ロール3、ラミネート装置4、塗工ユニット5、乾燥ユニット6及び巻取ロール8に作動信号を出力するようになっている。
【0047】
制御盤9は、第1駆動モータ2a、第2駆動モータ3a、第3駆動モータ4c、第4駆動モータ4d、第5駆動モータ8a、下側駆動モータ5g及び上側駆動モータ5hの各回転動作を制御することにより、第1ウェブX1及び第2ウェブY1の搬送速度を変更できるようになっている。尚、制御盤9は、第1ウェブX1及び第2ウェブY1の搬送速度を、250m/min以上にならないように制御している。
【0048】
また、制御盤9は、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥状態の膜厚検出センサ7aにおける膜厚の目標値が記憶された記憶部9aと、膜厚検出センサ7aで検出した検出値と記憶部9aで記憶される目標値とを比較して第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が不十分であるか否かを判定する判定部9bとを備えている。
【0049】
具体的には、制御盤9は、膜厚検出センサ7aで検出した検出値が膜厚の目標値より大きい場合には、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が不十分であると判定する一方、検出値が膜厚の目標値より小さい場合には、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が十分であると判定するよう構成されている。
【0050】
さらに、制御盤9は、判定部9bにより膜厚検出センサ7aの検出値において第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が不十分であると判定されると、第1ウェブ搬送手段12に速度低下信号を出力して第1ウェブX1の搬送速度を低下させる一方、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が十分であると判定されると、第1ウェブ搬送手段12に速度上昇信号を出力して第1ウェブX1の搬送速度を上昇させるウェブ速度変更部9cを備えている。
【0051】
以上より、本発明の実施形態1によると、第1ウェブX1表面に付着する接着剤Lの乾燥状態に基づいて制御するのが第1ウェブ搬送手段12の搬送速度であり、制御盤9による速度変更指示時において第1ウェブX1の搬送速度が目標速度へと変化する応答速度が速いので、時間をかけずに接着剤Lの乾燥状態を目標の状態にすることができる。
【0052】
また、乾燥ユニット6を通過した第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥状態に基づいて第1ウェブX1の搬送速度を変更させるので、気温や湿度が変化したり、或いは、生産時期が異なる場合であっても、その時々の接着剤Lの乾燥状態に基づいた最適な第1ウェブX1の搬送速度で第1ウェブX1に接着剤Lが付着するようになる。したがって、作業者の勘や経験によって第1ウェブX1の搬送速度等を設定するといった必要が無く、段取り時間を短くでき、しかも、第1ウェブX1の表面に品質の良い塗工層を形成することができる。
【0053】
また、第1ウェブX1の表面に対する接着剤Lの転写状態にばらつきが発生しないように転写済の第1ウェブX1を製造しながら第1ウェブX1の搬送速度を最速にできるので、品質の良い転写済の第1ウェブX1を効率良く製造することができる。
【0054】
さらに、ドクターブレード5dの先端が版胴5aの回転方向に対して反対方向に向くようにドクターブレード5dを版胴5aの外周面に接触させているので、ドクターブレード5dの先端が版胴5aの回転方向に対して同方向に向くようにドクターブレード5dを版胴5aの外周面に接触させた場合に比べて、第1ウェブX1の搬送速度が変化したときに、ドクターブレード5dと版胴5aの外周面との間に形成される隙間に変動が生じ難くなる。したがって、第1ウェブX1の表面に付着する接着剤Lの乾燥状態に基づいて第1ウェブX1の搬送速度を変化させたときの第1ウェブX1に対する接着剤Lの転写量を安定させることができる。
【0055】
それに加えて、第1ウェブX1に転写する接着剤Lの転写状態が最適な状態で第1ウェブX1と第2ウェブY1とを重ね合わせることができるので、品質にばらつきの無いラミネート製品Z1を効率良く製造することができる。
【0056】
尚、本発明の実施形態1では、乾燥ユニット6における第3乾燥ボックス6c内に膜厚検出センサ7aを配置して第1ウェブX1に付着する接着剤Lの膜厚を検出しているが、第3乾燥ボックス6cの下流側における当該第3乾燥ボックス6cの外側の位置に膜厚検出センサ7aを配置しても良い。
【0057】
《発明の実施形態2》
図2は、本発明の実施形態2に係る塗工装置1を示す。この実施形態2では、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥状態を検出するセンサが膜厚検出センサ7aではなく、有機溶剤検出センサ14である点と制御盤9の制御とが実施形態1と異なるだけでその他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを説明する。
【0058】
実施形態2の乾燥ユニット6における第1乾燥ボックス6aの第1排気ダクトD1には、有機溶剤検出センサ14が取り付けられ、該有機溶剤検出センサ14は、第1ウェブX1に付着する接着剤Lが第1乾燥ボックス6aにおいて乾燥する際に気化した有機溶剤の量を検出するようになっている。尚、上記有機溶剤検出センサ14の具体的な商品として、理研計器株式会社製の型式:SD-D58が挙げられる。
【0059】
実施形態2の制御盤9の記憶部9aには、残留有機溶剤量の目標値が20ppmとして記憶されている。
【0060】
そして、実施形態2の制御盤9の判定部9bは、有機溶剤検出センサ14で検出した検出値が目標値より大きい場合には、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が不十分であると判定する一方、目標値より小さい場合には、第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が十分であると判定するよう構成されている。
【0061】
以上より、本発明の実施形態2によると、乾燥した接着剤Lに有機溶剤が含まれないか、或いは、ほとんど含まれない転写済の第1ウェブX1を製造しながら第1ウェブX1の搬送速度を最速にできるので、例えば、有機溶剤の匂いが出ないようにする必要がある食品系の包装材に使用される転写済の第1ウェブX1を製造する場合において、効率良く第1ウェブX1に転写液を転写することができる。
【0062】
尚、本発明の実施形態2では、乾燥ユニット6における第1乾燥ボックス6aの第1排気ダクトD1に有機溶剤検出センサ14を取り付けているが、第2乾燥ボックス6bの第2排気ダクトD2や第3乾燥ボックス6cの第3排気ダクトD3に有機溶剤検出センサ14を取り付けても良い。
【0063】
また、本発明の実施形態2では、残留有機溶剤量の目標値を20ppmにしているが、その他の値であってもよい。
【0064】
また、本発明の実施形態2の塗工装置1に実施形態1の乾燥状態検出ユニット7を設けてもよい。この場合、制御盤9のウェブ速度変更部9cは、判定部9bにより膜厚検出センサ7a及び有機溶剤検出センサ14の少なくとも一方の検出値において第1ウェブX1に付着する接着剤Lの乾燥が不十分であると判定されると、第1ウェブ搬送手段12に速度低下信号を出力して第1ウェブX1の搬送速度を低下させる一方、膜厚検出センサ7a及び有機溶剤検出センサ14の両方の検出値において第1ウェブX1に付着する転写液の乾燥が十分であると判定されると、第1ウェブ搬送手段12に速度上昇信号を出力して第1ウェブX1の搬送速度を上昇させるようになる。
【0065】
尚、本発明の実施形態1,2で塗工装置1に適用した第1ウェブX1に転写した転写液の乾燥状態に基づいて第1ウェブX1の搬送速度を変更する構造は、第1ウェブX1に印刷を施す印刷装置にも流用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、連続搬送されるウェブにインキや塗工液等の転写液を転写する印刷塗工装置に適している。
【符号の説明】
【0067】
1 塗工装置(印刷塗工装置)
4a 第1貼合用ロール
4b 第2貼合用ロール
5 塗工ユニット(転写手段)
5a 版胴
5d ドクターブレード
6 乾燥ユニット(乾燥手段)
7 乾燥状態検出ユニット(乾燥状態検出手段)
7a 膜厚検出センサ
9 制御盤(制御手段)
9a 記憶部
9b 判定部
9c ウェブ速度変更部
12 第1ウェブ搬送手段
13 第2ウェブ搬送手段
14 有機溶剤検出センサ
X1 第1ウェブ
Y1 第2ウェブ
Z1 ラミネート製品