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特許7214208熱交換器及び給湯器、熱交換器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】熱交換器及び給湯器、熱交換器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/32 20060101AFI20230123BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20230123BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20230123BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F28F1/32 B
F28F1/32 D
F28F1/32 L
F28D7/16 A
F24H9/00 A
B23K1/00 330K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019040808
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020143840
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小田 大志
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063089(JP,A)
【文献】特開2018-096622(JP,A)
【文献】特開2013-011410(JP,A)
【文献】特開2016-169934(JP,A)
【文献】特開平05-141889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
F28D 7/16
F24H 9/00
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向へ所定間隔をおいて並設される複数のフィンと、各前記フィンに設けた複数の貫通孔をそれぞれ貫通する伝熱管とをロウ付けしてなる熱交換器であって、
ロウ付け姿勢で上側となる各前記フィンの上部で各前記伝熱管の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部がそれぞれ切欠形成されていると共に、各前記フィンの表面には、前記凹部の下端からその下方に位置する前記貫通孔との間に亘って上下方向の溝がそれぞれ形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
各前記貫通孔は、内縁にバーリング部を備えており、前記溝の下端は、少なくとも前記バーリング部の根元にまで達していることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
各前記貫通孔の最頂部には、前記バーリング部のない切除部が形成されており、前記溝は、前記切除部を挟んで一対形成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
バーナと、前記バーナの燃焼排気が通過する請求項1乃至3の何れかに記載の熱交換器とを含んでなる給湯器。
【請求項5】
厚み方向へ所定間隔をおいて並設される複数のフィンと、各前記フィンに設けた複数の貫通孔をそれぞれ貫通する伝熱管とをロウ付けする熱交換器の製造方法であって、
ロウ付け姿勢で上側となる各前記フィンの上部で各前記伝熱管の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部をそれぞれ切欠形成すると共に、各前記フィンの表面に、前記凹部の下端からその下方に位置する前記貫通孔との間に亘って上下方向の溝をそれぞれ形成し、
各前記フィンの前記凹部にロウ材を載置した状態で加熱することで、溶融したロウ材を前記溝を伝って前記貫通孔と前記伝熱管の外周面との間に行き渡らせることを特徴とする熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器等に設けられる熱交換器と、その熱交換器を用いた給湯器と、熱交換器の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器等の熱交換器では、厚み方向に所定間隔をおいて並設される複数のフィンに複数の伝熱管を貫通させて、フィン間にバーナの燃焼排気等の高温の気体を通過させることで、気体と伝熱管内を流れる流体との間で熱交換可能となっている。この伝熱管とフィンとは、伝熱管の外周面とフィンに設けた貫通孔の内面との間にロウ材を介在させることで固定される。具体的には、特許文献1に開示されるように、フィンの上端にロウ材を保持させるロウ材保持部を凹設し、このロウ材保持部に保持させたロウ材を炉中で加熱することで、溶融したロウ材を毛細管現象で伝熱管とフィンとの間に流下させ、固化させることで固定される。特にここでは、フィンが左右に傾斜した状態でもロウ材が伝熱管の外周面全体へ均等に流下するように、バーリング加工されたフィンの貫通孔の上側周縁に、伝熱管の外周面に接触しない切欠状の非接触部を左右に形成すると共に、非接触部の間に、伝熱管の外周面に向かって延設されるロウ材導流部を形成して、一方の非接触部で堰き止められて貯留したロウ材を他方の非接触部側へ導くようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-63089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような熱交換器では、溶融したロウ材が凹部から流下する際、隣接するフィンの間でブリッジしてしまい、伝熱管の外周面までロウ材が到達しない場合がある。特に、フィンや伝熱管がステンレス製であると、伝熱管とバーリング孔との間の隙間に余裕がない設計となるため、ロウ材が行き渡りにくくなってロウ付け不良が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、フィンと伝熱管とが確実にロウ付けされる熱交換器及び給湯器と、当該熱交換器の製造方法とを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、厚み方向へ所定間隔をおいて並設される複数のフィンと、各フィンに設けた複数の貫通孔をそれぞれ貫通する伝熱管とをロウ付けしてなる熱交換器であって、
ロウ付け姿勢で上側となる各フィンの上部で各伝熱管の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部がそれぞれ切欠形成されていると共に、各フィンの表面には、凹部の下端からその下方に位置する貫通孔との間に亘って上下方向の溝がそれぞれ形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、各貫通孔は、内縁にバーリング部を備えており、溝の下端は、少なくともバーリング部の根元にまで達していることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、各貫通孔の最頂部には、バーリング部のない切除部が形成されており、溝は、切除部を挟んで一対形成されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、給湯器であって、バーナと、バーナの燃焼排気が通過する請求項1乃至3の何れかに記載の熱交換器とを含んでなることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、厚み方向へ所定間隔をおいて並設される複数のフィンと、各フィンに設けた複数の貫通孔をそれぞれ貫通する伝熱管とをロウ付けする熱交換器の製造方法であって、
ロウ付け姿勢で上側となる各フィンの上部で各伝熱管の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部をそれぞれ切欠形成すると共に、各フィンの表面に、凹部の下端からその下方に位置する貫通孔との間に亘って上下方向の溝をそれぞれ形成し、各フィンの凹部にロウ材を載置した状態で加熱することで、溶融したロウ材を溝を伝って貫通孔と伝熱管の外周面との間に行き渡らせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィンに設けた凹部及び溝により、凹部で溶融したロウ材を溝による毛細管現象によって貫通孔の内面と伝熱管の外周面との隙間へ導くことができる。よって、フィンと伝熱管とが確実にロウ付け固定可能となる。
特に請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、各貫通孔は、内縁にバーリング部を備えており、溝の下端は、バーリング部の根元にまで達しているので、バーリング部の根元のRを利用してロウ材を貫通孔の内面と伝熱管の外周面との隙間へ確実に導くことができる。
また、請求項3に記載の発明によれば、上記効果に加えて、各貫通孔の最頂部には、バーリング部のない切除部が形成されており、溝は、切除部を挟んで一対形成されているので、凹部上のロウ材の一部を直接切除部へ流れ込ませて貫通孔の内面と伝熱管の外周面との隙間へ導くことができると共に、溝からバーリング部の根元に流れたロウ材の一部も切除部に導くことができる。よって、貫通孔の内面と伝熱管の外周面との間の隙間に余裕がない場合でもフィンと伝熱管とを確実に固定することができる。さらに、凹部と切除部との間の距離が短くなるため、凹部から垂れ落ちたロウ材がフィンの間でブリッジしにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フロントカバーを外した給湯器の正面図である。
図2】樹脂シート及びコントローラ、表示操作パネルを省略した給湯器の正面図である。
図3図2の内胴のみのA-A線断面図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5】一次熱交換器の下方からの斜視図である。
図6】フィンの左側からの斜視図である。
図7】フィンの右側からの斜視図である。
図8】フィンの説明図で、(A)は左側面、(B)は正面、(C)は平面をそれぞれ示す。
図9】(A)は図8のC-C線拡大断面図、(B)はD-D線拡大断面図である。
図10】(A)はフィンの貫通孔部分の拡大図、(B)はE-E線断面図、(C)はF-F線断面図である。
図11】(A)は溝部分の拡大斜視図、(B)は図10のG-G線断面図である。
図12】凹部からのロウ材の流れを示す説明図である。
図13】(A)は中ケーシングにおけるフィン部分の左側面図、(B)は平面図、(C)は底面図である。
図14図12のA矢視図である。
図15】(A)は図12のH-H線断面図、(B)はI-I線断面図、(C)は(A)のB矢視図である。
図16】フィンを上下に2段重ねた状態を上下逆に示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す正面図で、フロントカバーを外した状態で示している。図2図1において、樹脂シート及びコントローラ、表示操作パネルを除いた状態を示している。
この給湯器1は、前面を開口した四角箱状の筐体2内に、バーナ4と、本発明の熱交換器である一次熱交換器5と、二次熱交換器6とが上から順に設けられる内胴3を収容した逆燃焼式となっている。また、筐体2内には、内胴3の下部から後方へ回り込んで上向きに設けられる排気部7と、内胴3の右側方でバーナ4に連結されたファンユニット8と、ファンユニット8の下側でファンユニット8に連結され、ガスガバナ9を介してガス導入管11から燃料ガスが供給されるガス供給ユニット10とが設けられている。内胴3の下方右側には、電装基板を収容してなるコントローラ12が横向きに設置され、その下方中央には、フロントカバーから露出する表示操作パネル13が設けられている。
【0010】
バーナ4は、燃料ガスと燃焼に必要な全ての燃焼用空気との混合気が燃焼する全一次空気式で、上下面を開口して上下方向に所定深さを有する平面視横長矩形状の上ケーシング14を有し、上ケーシング14の上面は、上方へ突出してファンユニット8が接続されるチャンバ15によって閉塞されている。上ケーシング14の下面には、図3,4に示すように、複数の炎孔が形成されて下向きへ円弧状に膨出する炎孔板16が設けられて、炎孔板16の表面(下面)で混合気が燃焼可能となっている。
ファンユニット8は、平面視円形のファンケース17内にファン17a(図4)を収容し、ファンケース17の上側中央に、ファン17aを回転駆動させるファンモータ18を設けている。
【0011】
一次熱交換器5は、図5にも示すように、バーナ4が取り付けられる四角筒状の中ケーシング20内の下部に、複数のフィン21,21・・(各図では一部のみ図示)を厚み方向となる左右方向へ所定間隔をおいて並設すると共に、各フィン21を左右方向に貫通する伝熱管22を配設してなるステンレス製となっている。中ケーシング20は、図3にも示すように、フィン21が並設される下壁部20aの前後の間隔が、バーナ4の燃焼領域となる上壁部20bの前後の間隔よりも小さくなっている。
ここでの伝熱管22は、最下段で前後方向に所定間隔をおいて配設される横断面楕円形で、長軸を上下方向とした8本の直線状の大径管23,23・・と、その上方で中ケーシング20の上壁部20bの前後外側へそれぞれ上下方向に所定間隔をおいて3本ずつ配設される横断面円形の直線状の小径管24,24・・とを含んでいる。このうち大径管23は、中ケーシング20の左右の側面に設けられた下側ヘッダ25により、前後に隣接する2本の端部同士が左右で交互に接続されて、全体で1本に繋がる蛇行状となっている。但し、最後部の大径管23の右端部には、二次熱交換器6との接続管26が接続され、最前部の大径管23の右端部は、上下に延びる前側ヘッダ27により、前側3本の小径管24の右端部と接続されている。中ケーシング20の左側面には、前後の3本の小径管24の左端部同士を接続する左側ヘッダ28が設けられている。中ケーシング20の右側面には、後側3本の小径管24の右端部同士を接続する右側ヘッダ29が設けられて、右側ヘッダ29に出湯管30が接続される。
【0012】
よって、一次熱交換器5の伝熱管22では、接続管26から最後部の大径管23に流入した湯水は、最下段の大径管23,23・・を交互に通過しながら前方へ蛇行状に移動した後、最前部の大径管23から前側3本の小径管24、後側3本の小径管24を順番に通過して出湯管30へ流れることになる。
中ケーシング20の上側外周には、略全面に導電パターンが蛇行状に網羅されてなる帯状の樹脂シート31が巻回されて、中ケーシング20からの燃焼排気の漏洩を検知可能となっている。各大径管23には、通過する湯水を撹拌するための乱流板32が挿入されている。
【0013】
そして、ここでのフィン21は、図6~9に示すように、前後方向に延びる横長板状で、バーリング加工によって内縁に左側へ突出するバーリング部36を備えた8つの楕円形の貫通孔35,35・・が、前後方向へ等間隔をおいて形成されている。フィン21の上側で各貫通孔35の間には、前後の貫通孔35,35の外周面形状に沿った湾曲状の内縁を有し、下方へ行くに従って前後の間隔が小さくなるV字状の上切れ込み部37が、貫通孔35の長軸の中心よりもやや下方に達するまで形成されている。また、フィン21の上縁で各貫通孔35の上側には、切欠38が形成されている。
さらに、フィン21の前後両端には、中ケーシング20の下壁部20aの内面に当接する上下方向の端縁部39,39が左側へ折り返し形成されている。各端縁部39の上側には、内側への切欠部40が形成されて、切欠部40の上側は、端縁部39よりも内側にあって下壁部20aに当接せず、先端が下壁部20aの内面側へ突出する三角形状の張り出し部41となっている。張り出し部41の上端には、内側へ行くに従って(下壁部20aの内面から離れるに従って)下向きとなる傾斜状の突出部42が、左側へ折り返し形成されている。
【0014】
そして、フィン21の下側で各貫通孔35,35の間には、図10にも示すように、上方へ行くに従って前後の間隔が小さくなる逆V字状の下切れ込み部43が形成されている。この下切れ込み部43の切込み深さは上切れ込み部37よりも小さく、前後方向で貫通孔35のバーリング部36の下部にオーバーラップする浅い深さとなっている。この下切れ込み部43には、左側へ向けて突出するガイド部44が折り返し形成されている。このガイド部44は、前後で隣接する貫通孔35,35に挿入される大径管23,23と両端がオーバーラップする前後長さを有して前後の大径管23,23の間の領域と上下方向で重なり、前後の大径管23,23の下側の外周面との間に通路45,45を形成可能となっている。この通路45は、下方へ行くに従って(燃焼排気の下流側へ向けて)徐々に狭くなるように形成されている。ガイド部44の上側で通路45,45への入口に当たる位置には、左側へ突出する一対のボス部46,46が形成されている。このボス部46の突出高さは、フィン21,21間のピッチの半分よりやや小さくなっている。
【0015】
また、フィン21の下縁で各貫通孔35の下側には、切欠38と同じ幅で切欠38よりも深い凹部47が形成されている。各凹部47の上側でバーリング部36と反対側となる右側表面には、図11に示すように、凹部47の前後両端とバーリング部36の根元36aとを繋ぐ一対の溝48,48が上下方向に形成されている。凹部47の下側で溝48,48の間には、バーリング部36のない切除部49が形成されている。
【0016】
この一次熱交換器5では、厚み方向に積層したフィン21,21・・の各貫通孔35に大径管23,23・・を貫通させて、バーリング部36を含む貫通孔35の内面と大径管23の外周面との間をロウ付けすることで製造される。このロウ付けは、図12に示すように、フィン21の上下を逆にした状態で、上側に位置する各凹部47間に跨がって棒状のロウ材Pを左右方向に載置し、これを炉中で加熱することにより行われる。すると、凹部47で溶融したロウ材Pは、点線矢印P1で示すように、フィン21の表面、特に右側では一対の溝48,48を伝って毛細管現象によってバーリング部36の根元36aへ導かれ、そのまま前後に分かれて貫通孔35と大径管23との隙間へ行き渡る。そして、ロウ材Pを固化させれば、各貫通孔35の内面と大径管23の外周面との間をむらなく固定することができる。
また、溝48,48の間に流れ落ちたロウ材Pは、点線矢印P2で示すように、切除部49に達した後、大径管23の外周面に沿って前後に分かれ、溝48,48から流れるロウ材と合流して貫通孔35と大径管23との隙間に行き渡ることになる。ここでは凹部47と切除部49との間の距離が短くなるため、凹部47から流れるロウ材がフィン21,21間でブリッジしにくくなる。
【0017】
こうして製造された一次熱交換器5では、図13~15に示すように、各フィン21の前後両端では、上端の突出部42によって左側に隣接するフィン21との間が閉塞される。よって、中ケーシング20の下壁部20aに沿って下向きに流れる燃焼排気は、図13(A)に点線矢印G1で示すように、突出部42によって流れを阻害され、傾斜する突出部42に沿って内側へガイドされることになる。
また、各大径管23,23の間の下方空間は、各フィン21の下端に設けられたガイド部44によって閉塞される。よって、大径管23,23の間で下向きに流れる燃焼排気は、点線矢印G2で示すように、ガイド部44によって前後の通路45,45に分岐して各大径管23の下面に沿って下方へ流れることになる。このとき各通路45の入口ではボス部46と干渉して乱流が生じる。
【0018】
一方、二次熱交換器6は、図3,4に示すように、中ケーシング20と連通する四角筒状の下ケーシング55内に、傾斜状の凹凸を形成した複数の伝熱プレート56,56を前後方向へ所定間隔をおいて前後互い違いに並設して、伝熱プレート56の左右両端同士で繋がる内部流路57を形成し、下ケーシング55の正面側下部に設けた入口58と正面側上部に設けた出口59とを内部流路57に接続してなる。入口58には給水管60が接続され、出口には接続管26が接続される。
排気部7は、二次熱交換器6の下ケーシング55の下面に取り付けられるドレン受け61と、ドレン受け61の後部に立設される排気ダクト62とを備える。ドレン受け61の底部は、ドレン排出管63を介して中和器64と接続される。
排気ダクト62は、合成樹脂製の横長角筒状で、排気ダクト62の上端の開口には、筐体2の上面に突出する円筒状の排気筒部66を備えた上カバー65が接合される。
【0019】
以上の如く構成された給湯器1においては、器具内に通水されると、リモコン等で要求される燃焼量に応じた回転数でコントローラ12がファンモータ18を駆動させてファン17aを回転させる。すると、ファンユニット8では、ファン17aの回転数に比例した空気が吸い込まれる。同時にガス導入管11からは燃料ガスが供給され、ガスガバナ9で調圧された後、ガス供給ユニット10でファンユニット8の吸込側に設けたベンチュリーを介して空気と混合されて混合気が生成される。生成された混合気は、ファンケース17の吐出口からバーナ4のチャンバ15に吐出され、上ケーシング14内に供給されて、炎孔板16の各炎孔から噴出し、図示しない点火電極によって点火されて燃焼する。
【0020】
バーナ4からの燃焼排気は、一次熱交換器5の中ケーシング20で各フィン21,21の間を通過することで、伝熱管22内を流れる湯水と熱交換し、顕熱が回収される。伝熱管22のうち、各大径管23内では、乱流板32によって湯水が撹拌されるため、滞留や温度ムラが生じにくくなる。
このとき、中ケーシング20の内面際を流れる燃焼排気は、前述のように各フィン21間を閉塞する突出部42によって流れが阻害され、図13のように中ケーシング20の内面から離れる方向へ傾斜状に導かれて内側に移動する。よって、中ケーシング20に燃焼排気が接触しにくくなり、中ケーシング20の温度上昇が抑制される。また、中ケーシング20の内面でドレンが発生しても、突出部42が内側に案内するため、ドレンがフィン21と中ケーシング20の内面との間に侵入することが防止される。
さらに、突出部42に燃焼排気が接触しても、突出部42を有する張り出し部41は中ケーシング20の内面と非接触となっている上、中ケーシング20と接触する端縁部39との間には切欠部40が形成されているので、張り出し部41が高温になっても中ケーシング20への伝熱は抑制される。
【0021】
そして、各フィン21では、図13に示すように、最外の大径管23の中心と中ケーシング20の内面との前後方向の距離D1が、前後に隣接する大径管23,23の中心間距離D2の1/2以下となるように短く設定されている。このため、中ケーシング20の熱を大径管23に伝熱させて中ケーシング20の温度上昇を抑制することができる。
また、中ケーシング20内でのバーナ4の燃焼領域に合わせてフィン21の前後幅を大きくすると、熱伝導率の悪いステンレスでは大径管23から遠い部分が高温となりやすく、中ケーシング20の温度も上昇しやすくなるが、ここではフィン21の端縁部39,39が当接する下壁部20aの前後の内面の距離を、上壁部20bの前後の内面の距離よりも小さくしているので、最外の大径管23から突出するフィン21の前後両端が短くなり、ここでも中ケーシング20の熱をフィン21を介して大径管23に伝熱させて中ケーシング20の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
一方、大径管23,23間を通過する燃焼排気は、前述のようにガイド部44に当接して前後の通路45,45に分岐して下方へ流れるため、各通路45を流れる際に、燃焼排気が前後の大径管23,23に接触して熱交換される。特に、各通路45の入口にはボス部46が突設されているので、燃焼排気が乱流状態となって大径管23との接触時間を稼ぐことができる。
また、通路45は下方へ行くに従って幅が狭くなっているので、通路45内での燃焼排気の流速を上げることができ、大径管23に沿って燃焼排気が流れやすくなる。
さらに、ガイド部44は前後端が大径管23,23に上下方向で重なるまで延びているので、燃焼排気と大径管23との接触距離を長く確保することができる。
【0023】
その後、燃焼排気は、二次熱交換器6の下ケーシング55内で各伝熱プレート56,56の間を通過することで、内部流路57を流れる水と熱交換し、潜熱が回収される。
そして、下ケーシング55を通過した燃焼排気は、排気部7のドレン受け61内に進入し、ドレン受け61の後部に移動して排気ダクト62内を上昇して排気筒部66から外部に排出される。二次熱交換器6で発生したドレンは、ドレン受け61内に落下し、ドレン排出管63及び中和器64を介して器具の外部へ排出される。
【0024】
(フィンに設けた溝に係る発明の効果)
上記形態の一次熱交換器5及び給湯器1によれば、ロウ付け姿勢で上側となる各フィン21の上部で伝熱管22の各大径管23の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部47がそれぞれ切欠形成されていると共に、各フィン21の表面には、凹部47の下端からその下方に位置する貫通孔35との間に亘って上下方向の溝48がそれぞれ形成されていることで、凹部47で溶融したロウ材を溝48による毛細管現象によって貫通孔35の内面と大径管23の外周面との隙間へ導くことができる。よって、フィン21と大径管23とが確実にロウ付け固定可能となる。
【0025】
特にここでは、各貫通孔35は、内縁にバーリング部36を備えており、溝48の下端は、バーリング部36の根元36aにまで達しているので、バーリング部36の根元36aのRを利用してロウ材を貫通孔35の内面と大径管23の外周面との隙間へ確実に導くことができる。
また、各貫通孔35の最頂部には、バーリング部36のない切除部49が形成されており、溝48は、切除部49を挟んで一対形成されているので、凹部47上のロウ材の一部を直接切除部49へ流れ込ませて貫通孔35の内面と大径管23の外周面との隙間へ導くことができると共に、溝48からバーリング部36の根元に流れたロウ材の一部も切除部49に導くことができる。よって、貫通孔35の内面と大径管23の外周面との間の隙間に余裕がない場合でもフィン21と大径管23とを確実に固定することができる。さらに、凹部47と切除部49との間の距離が短くなるため、凹部47から垂れ落ちたロウ材がフィン21,21の間でブリッジしにくくなる。
【0026】
(一次熱交換器5の製造方法に係る発明の効果)
上記形態の一次熱交換器5の製造方法によれば、ロウ付け姿勢で上側となる各フィン21の上部で伝熱管22の各大径管23の上側に、溶融前のロウ材を載置可能な凹部47をそれぞれ切欠形成すると共に、各フィン21の表面に、凹部47の下端からその下方に位置する貫通孔35との間に亘って上下方向の溝48をそれぞれ形成し、各フィン21の凹部47にロウ材を載置した状態で加熱することで、溶融したロウ材を溝48を伝って貫通孔35と大径管23の外周面との間に行き渡らせるようにしたので、凹部47で溶融したロウ材を溝48による毛細管現象によって貫通孔35の内面と大径管23の外周面との隙間へ導くことができる。よって、フィン21と大径管23とが確実にロウ付け固定可能となる。
【0027】
なお、凹部の形状は上記形態に限らず、例えば下端における溝の形成部分にV字状の切込みを入れて、ロウ材を溝に流れやすくしてもよい。また、溝の数や位置も上記形態に限らず、溝の数を3本以上としたり、中央に1本のみ設けたりしてもよい。溝が1本の場合、切除部をなくして中央にもバーリング部を設けるのが望ましい。
さらに、溝の下端はバーリング部の根元を越えてバーリング部の内面にまで延ばすこともできる。
但し、バーリングがない貫通孔でも本発明は適用可能で、この場合は溝をフィンの表裏両面に設けることもできる。
【0028】
(フィンに設けたガイド部に係る発明の効果)
上記形態の一次熱交換器5及び給湯器1によれば、各フィン21における燃焼排気(気体)の通過方向の下流側の端縁で、並設方向で互いに隣接する伝熱管22の大径管23,23・・の間に、互いに隣接する大径管23の間へ行くに従って通過方向の上流側へ切れ込む下切れ込み部43(切れ込み部)がそれぞれ形成されると共に、各下切れ込み部43に、隣接するフィン21側へ突設され、互いに隣接する大径管23,23の間の領域と上下方向でオーバーラップして、燃焼排気を互いに隣接する各大径管23側へ振り分けるガイド部44が形成されているので、大径管23,23間を通過する燃焼排気をガイド部44によって各大径管23へ確実に接触させることができる。よって、フィン21の反りを防止しつつ、熱効率の向上も図ることができる。また、大径管23,23間の距離を大きくする必要がないので、局所的なヒートスポットも生じない。
【0029】
特にここでは、各フィン21におけるガイド部44の上流側には、ガイド部44の突設側へ突出するボス部46が形成されているので、大径管23とガイド部44との間を通過する燃焼排気を乱流状態にすることができ、熱効率の向上に繋がる。
また、ガイド部44と互いに隣接する各大径管23との間に形成される通路45の幅は、通過方向の下流側へ行くに従って徐々に狭くなっているので、通路45に流れ込んだ燃焼排気の流速を上げることができ、大径管23に沿って燃焼排気を効果的に流すことができる。よって、熱効率の向上に寄与できる。
さらに、ガイド部44の端部は、互いに隣接する各大径管23と上下方向でオーバーラップするまで延設されているので、通路45を長くして燃焼排気を大径管23に沿ってより多く導くことができ、熱効率の向上に寄与できる。
【0030】
なお、ガイド部は上記形態に限らず、適宜変更可能で、前後端を短くして大径管とオーバーラップさせないようにしたり、逆に上記形態よりも長くしたりすることができる。ボス部も、数や位置、突出高さの変更の他、ボス部を省略することも可能である。
また、ガイド部により形成される通路は、上記形態では下流側へ向けて徐々に狭くなるようにしているが、通路の全長に亘って同一幅となるように形成してもよい。
【0031】
(一次熱交換器の抑制手段に係る発明の効果)
上記形態の一次熱交換器5及び給湯器1によれば、フィン21に、燃焼排気と中ケーシング20(ケーシング)との接触を低減して中ケーシング20の温度上昇を抑制する抑制手段(張り出し部41及び突出部42、切欠部40)が設けられていることで、中ケーシング20への燃焼排気の接触が抑制される。よって、中ケーシング20の温度上昇が効果的に抑制可能となる。
【0032】
特にここでは、抑制手段は、フィン21における中ケーシング20との隣接部分で燃焼排気の通過方向の上流端に設けられ、中ケーシング20側へ突出する張り出し部41と、張り出し部41からフィン21の厚み方向に突出する突出部42とを含んでなることで、突出部42によって中ケーシング20の下壁部20aの内面へ向かう燃焼排気の流れを阻害でき、中ケーシング20の下壁部20aへの燃焼排気の接触を効果的に抑制できる。よって、中ケーシング20の温度上昇が簡単に抑制可能となる。
また、抑制手段は、中ケーシング20との隣接部分で張り出し部41よりも通過方向の下流側に設けられる切欠部40を含んでなることで、フィン21において高温になりやすい張り出し部41からその下方の端縁部39への伝熱を抑制できる。よって、中ケーシング20の温度上昇がより効果的に抑制可能となる。
さらに、フィン21における切欠部40よりも通過方向の上流側の張り出し部41は、中ケーシング20と非接触となっているので、中ケーシング20の温度上昇がより効果的に抑制可能となる。
【0033】
加えて、突出部42は、中ケーシング20から離れるに従って通過方向の下流側へ向くように傾斜しているので、突出部42によって中ケーシング20の内面で発生したドレンを当該内面から離れた方向に案内できる。よって、ドレンがフィン21と中ケーシング20の内面との間に浸入することが防止可能となる。
また、フィン21における切欠部40よりも通過方向の下流側の端縁部39は、大径管23と直交する前後方向の両端でそれぞれ中ケーシング20と接触しているので、中ケーシング20の熱をフィン21を介して大径管23に伝達でき、中ケーシング20の温度上昇の抑制に繋がる。
【0034】
さらに、フィン21の前後方向の両端における中ケーシング20との接触部間の距離(端縁部39,39間の距離)は、フィン21の上流側での中ケーシング20内の燃焼排気の通過領域(上壁部20bの内面間の距離)よりも小さくなっているので、最外の大径管23と端縁部39との距離が短くなり、ステンレス製の端縁部39が高温となりにくい上、端縁部39の熱が下壁部20aに伝わることも抑制される。
特に、フィン21における中ケーシング20との隣接部分に位置する最外の大径管23の中心と中ケーシング20の下壁部20aとの間の距離D1は、互いに隣接する大径管23,23の中心間距離D2の1/2よりも小さくなっているので、最外の大径管23と端縁部39との距離D1がより短くなって下壁部20aへの伝熱がより効果的に抑制される。
【0035】
なお、突出部は、前後方向に長く延ばしたり、傾斜させずに形成したり、各フィンに設けずに1つの突出部を隣接するフィン側へ長く延ばして複数のフィン間を覆うようにしたり等、適宜変更可能である。また、フィンに折曲形成する他、板状の別部材をフィンに固定したり、ケーシングの内面に固定したりしてフィン間を覆うようにしてもよい。張り出し部も、中ケーシングに接触させたりしてもよい。
さらに、切欠部も、形状や大きさ、切込み深さを変更したり、数を増やしたりしてもよい。切欠部の省略も可能である。
【0036】
その他、各発明に共通して、バーナ、一次熱交換器、二次熱交換器の各形態やファンユニットの配置、コントローラの配置等は適宜変更可能である。二次熱交換器がなくてもよいし、逆燃焼式でなくてもよい。
また、一次熱交換器では、大径管の数は適宜増減可能であるし、伝熱管として小径管がない形態であっても差し支えない。横断面形状も上記形態のような楕円形とすれば、短軸方向の寸法がコンパクトとなるが、楕円形以外も採用できる。フィン及び伝熱管の向きも上記形態と逆であってもよいし、フィン及び伝熱管は1段でなく複数段設けてもよい。図16はフィンを2段とした例を示すもので、ここではロウ付けの際、下段のフィン21の凹部47に上段のフィン21の切欠38が合致して載置されることで、ロウ材が貫通保持される透孔50が形成されるようになっている。
さらに、ファンユニットで燃料ガスと燃焼用空気とを混合した混合気をチャンバへ供給する予混合式となっているが、これに限らず、ファンからは燃焼用空気のみを供給させてファンの下流側で燃料ガスと燃焼用空気とをチャンバに導入させる給湯器であっても各発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・内胴、4・・バーナ、5・・一次熱交換器、6・・二次熱交換器、7・・排気部、8・・ファンユニット、10・・ガス供給ユニット、12・・コントローラ、14・・上ケーシング、20・・中ケーシング、20a・・下壁部、20b・・上壁部、21・・フィン、22・・伝熱管、23・・大径管、24・・小径管、26・・接続管、30・・出湯管、35・・貫通孔、36・・バーリング部、36a・・根元、37・・上切れ込み部、38・・切欠、39・・端縁部、40・・切欠部、41・・張り出し部、42・・突出部、43・・下切れ込み部、44・・ガイド部、45・・通路、46・・ボス部、47・・凹部、48・・溝、49・・切除部、55・・下ケーシング、60・・給水管、62・・排気ダクト。
図1
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