(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20230123BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20230123BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230123BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C08L53/00
C08K9/04
C08K5/10
C08K3/08
(21)【出願番号】P 2019082462
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-527130(JP,A)
【文献】特開2005-187567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(A)と、
前記共重合体(A)と相溶性を有する相溶化合物(B)と、
充填剤(C)と、を含有する組成物であって、
前記共重合体(A)が、下記共重合体(A1
)または(A3)であり、
前記相溶化合物(B)が、分子量が500以下のエステル類であり、
前記充填剤(C)が、金属核粒子(C1)表面に、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドより選択される1種以上の被覆分子(C2)が被覆した被覆金属粒子(C0)であり、
前記共重合体(A)と前記相溶化合物(B)とが相溶してなるゲル状組成物が0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有する、
組成物。
(A1):
(メタ)アクリレート系モノマー(α1)を主な構成単位とするブロック(a1)と、
(メタ)アクリレート系モノマー(β1)を主な構成単位とするブロック(b1)と、を有するブロック共重合体であって、
前記モノマー(α1)の単独重合体のガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、前記モノマー(β1)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下である、ブロック共重合体(A1)
。
(A3):
スチレン系モノマー(α3)を主な構成単位とするブロック(a3)と、
アルケン系モノマー、ジエン系モノマー、及びアルキン系モノマーより選択される1種以上のモノマー(β3)を主な構成単位とするブロック(b3)、または、
(メタ)アクリレート系モノマー(β4)を主な構成単位とするブロック(b4)と、を有するブロック共重合体であって、
前記(メタ)アクリレート系モノマー(β4)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であるブロック共重合体(A3)。
【請求項2】
前記組成物が0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記相溶化合物(B)の粘度が、25℃で0.001Pa・s以上10Pa・s以下である、
請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記被覆金属粒子(C0)が、金属核粒子(C1)表面に、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドより選択される1種以上の被覆分子(C2)が2.5~5.2個/nm
2の被覆密度で被覆した粒子である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記金属核粒子(C1)の平均一次粒径が、1nm以上300nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記共重合体(A)100質量部に対して、前記相溶化合物(B)が200質量部以上1000質量部以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記共重合体(A)及び前記相溶化合物(B)の合計100質量部に対して、前記充填剤(C)が5質量部以上60質量部以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機能性を有する充填剤を分散させて、熱伝導ペーストや導電性ペースト、塗料などの、各種機能性組成物とすることがある。当該組成物において充填材が均一に分散していることが好ましい。
【0003】
特許文献1には、顔料やフィラーの沈降が抑制される樹脂組成物として、顔料乃至フィラーと、樹脂と、溶媒を含有する樹脂組成物であって、特定のウレタンワックスを分散配合してなる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、導電性フィラーの沈降が抑制される導電性ペーストとして、熱可塑性樹脂と、導電性フィラーと、特定のチキソトロピー付与剤とを含む導電性ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-059628号公報
【文献】特開2007-179772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2の組成物は、フィラー等を流動体中に分散させるため、組成物の保管中に当該フィラーが沈降することがあり、保存安定性に問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するものであり、充填剤を長時間分散させることができる組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る組成物の一実施形態は、共重合体(A)と、前記共重合体(A)と相溶性を有する相溶化合物(B)と、充填剤(C)と、を含有する組成物であって、前記共重合体(A)と前記相溶化合物(B)とが相溶してなるゲル状組成物が0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有する。
【0009】
前記組成物の一実施形態は、0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有する。
【0010】
前記組成物の一実施形態は、前記共重合体(A)が、下記共重合体(A1)、(A2)または(A3)である。
(A1):(メタ)アクリレート系モノマー(α1)を主な構成単位とするブロック(a1)と、
(メタ)アクリレート系モノマー(β1)を主な構成単位とするブロック(b1)と、を有するブロック共重合体であって、
前記モノマー(α1)の単独重合体のガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、
前記モノマー(β1)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であるブロック共重合体(A1)。
(A2):(メタ)アクリレート系モノマー(α2)を主な構成単位とするポリマー鎖(a2)と、
(メタ)アクリレート系モノマー(β2)を主な構成単位とするポリマー鎖(b2)と、を有するグラフト共重合体であって、
前記モノマー(α2)の単独重合体のガラス転移温度が30℃超180℃以下であり、
前記モノマー(β2)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上30℃以下であるグラフト共重合体(A2)。
(A3):スチレン系モノマー(α3)を主な構成単位とするブロック(a3)と、
アルケン系モノマー、ジエン系モノマー、及びアルキン系モノマーより選択される1種以上のモノマー(β3)を主な構成単位とするブロック(b3)、または、(メタ)アクリレート系モノマー(β4)を主な構成単位とするブロック(b4)と、を有するブロック共重合体であって、
前記(メタ)アクリレート系モノマー(β4)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であるブロック共重合体(A3)。
【0011】
前記組成物の一実施形態は、前記相溶化合物(B)の粘度が、25℃で0.001Pa・s以上10Pa・s以下である。
【0012】
前記組成物の一実施形態は、前記充填剤(C)が、無機フィラー、金属粒子、及び被覆金属粒子からなる群から選択される1種以上を含む。
【0013】
前記組成物の一実施形態は、前記被覆金属粒子が、金属核粒子表面に、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドより選択される1種以上が2.5~5.2個/nm2の被覆密度で被覆した粒子である。
【0014】
前記組成物の一実施形態は、前記相溶化合物(B)の分子量が500以下である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、充填剤を長時間分散させることができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る組成物の各実施形態について説明する。
なお本発明において、「液状-ゲル状転移温度(Tc)」(以下、単にTcとすることがある)とは、貯蔵剛性率G’と損失剛性率G’’とが等しくなる温度を表す。
また本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタアクリルの各々を表す。
【0017】
[組成物]
本実施形態の組成物は、共重合体(A)と、前記共重合体(A)と相溶性を有する相溶化合物(B)と、充填剤(C)と、を含有する組成物であって、前記共重合体(A)と前記相溶化合物(B)とが相溶してなるゲル状組成物が0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有することを特徴とする。
【0018】
共重合体(A)と相溶化合物(B)との組合せであるゲル状組成物は、Tc温度未満ではゲル状であり、Tc以上に加熱すると液状となる性質を有する。そのため、Tc以上に加熱することで、充填剤(C)を均一に分散できる。そして、分散後に冷却することにより、充填剤(C)が均一に分散された状態でゲル状組成物がゲル化する。その結果、充填剤の沈降が抑制され、長期間保存した場合であっても充填剤(C)の均一な分散配置が維持される。
【0019】
本発明おいてゲル状組成物は、0~150℃の範囲で熱可逆的な相転移をする物理ゲルである。Tcが0~150℃であることによりゲル状組成物の液状-ゲル状転移の性質を活用しやすい。中でも、Tcは10~100℃が好ましく、20~90℃がより好ましく、30~80℃が更に好ましい。
なお、ゲル状組成物のTcと、当該ゲル状組成物に充填剤(C)が添加された本発明の組成物のTcはほぼ同等である。従って、本発明の組成物全体のTcも、上記の温度範囲内にあることが好ましい。
【0020】
本実施形態の組成物は少なくとも共重合体(A)、相溶化合物(B)、充填剤(C)とを含有し、本発明の効果を損なわない範囲で更に他の成分を含有してもよい。以下、当該組成物に含まれうる各成分について順に詳細に説明する。
【0021】
<共重合体(A)>
本実施形態において共重合体(A)は、後述する相溶化合物(B)と相溶して、Tcが0~150℃の物理ゲルとなるものである。
以下、このような共重合体(A)について(A1)、(A2)及び(A3)の3つの例を挙げて具体的に説明するが、本発明における共重合体(A)はこれらに限定されるものではない。なお便宜的に、共重合体(A1)(A2)又は(A3)を含むゲル組成物をこの順番にゲル組成物(X1)、(X2)又は(X3)と称することがある。
【0022】
1.共重合体(A1)
ゲル状組成物(X1)を構成する第1の共重合体(A1)は、
(メタ)アクリレート系モノマー(α1)を主な構成単位とするブロック(a1)と、
(メタ)アクリレート系モノマー(β1)を主な構成単位とするブロック(b1)と、を有するブロック共重合体であって、
前記モノマー(α1)の単独重合体のガラス転移温度が50℃超180℃以下であり、前記モノマー(β1)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であるブロック共重合体である。
【0023】
共重合体(A1)の好適な態様は、特開2017-66368号公報に記載の「ブロック共重合体化合物」が挙げられる。特開2017-66368号公報の説明と重複する部分については適宜説明を省略する。
なお、特開2017-66368号公報における「(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックa」が、「(メタ)アクリレート系モノマー(α1)を主な構成単位とするブロック(a1)」に対応し、「(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb」が、「(メタ)アクリレート系モノマー(β1)を主な構成単位とするブロック(b1)」に対応する。
【0024】
上記モノマー(α1)及びモノマー(β1)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の脂環構造含有(メタ)アクリレート;アクリロイルモルフォリン、メタクリロイルモルフォリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等の中から、単独共重合体のガラス転移温度が所定の温度のものを選択して用いることができる。なお単独共重合体のガラス転移温度は、文献値を参照すればよい。
モノマー(α1)としては、例えば、単独共重合体のガラス転移温度が140℃のメチルメタクリレートを用いることができる。
モノマー(β1)としては、例えば、単独共重合体のガラス転移温度が-25℃のブチルアクリレートを用いることができる。
【0025】
前記ブロック(a1)は、前記モノマー(α1)を主な構成単位とするブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(α1)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ブロック(a1)を構成するモノマー(α1)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。なお、ブロック(a1)を構成するモノマーとして、単独共重合体のガラス転移温度が50℃超180℃以下を満たすモノマーを2種以上含む場合、いずれのモノマーもモノマー(α1)として取り扱うものとする。ブロック(a1)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0026】
また、前記ブロック(b1)は、前記モノマー(β1)を主な構成単位とするブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(β1)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ブロック(b1)を構成するモノマー(β1)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。なお、ブロック(b1)を構成するモノマーとして、単独共重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下を満たすモノマーを2種以上含む場合、いずれのモノマーもモノマー(β1)として取り扱うものとする。ブロック(b1)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0027】
共重合体(A1)のブロック構成は、ブロック(a1)-(b1)、ブロック(b1)-(a1)-(b1)など任意の構成とすることができる。中でも、ゲル組成物(X1)の液状-ゲル状の転移性の点から、共重合体(A1)は、ブロック(a1)-(b1)-(a1)のトリブロック共重合体が好ましい。
【0028】
液状-ゲル状転移性の観点から、ブロック(a1)とブロック(b1)の質量比(a1/b1)は、好ましくは5~95/95~5、より好ましくは10~90/90~10、更に好ましくは15~85/85~15である。
【0029】
また、液状-ゲル状転移性の観点から、共重合体(A1)の重量平均分子量は好ましくは8000~300000、より好ましくは15000~280000、更に好ましくは30000~250000である。
【0030】
また共重合体(A1)は、相溶化合物(B)と相溶した際の弾性及び粘着性を向上させる点から、末端又は側鎖に、ラジカル反応性基、カチオン反応性基、アニオン反応性基及び湿気反応性基からなる群から選択される少なくとも1種以上の官能基を有してもよい。
【0031】
共重合体(A1)としては、例えば、市販品である「KURARITY」(登録商標、クラレ社製)を用いてもよい。共重合体(A1)として、LA2140、LA2250、LA4285、LA2330、LA3270、LA1114、LA1892(クラレ社製)などが挙げられる。
【0032】
2.共重合体(A2)
ゲル状組成物(X2)を構成する第2の共重合体(A2)は、
(メタ)アクリレート系モノマー(α2)を主な構成単位とするポリマー鎖(a2)と、
(メタ)アクリレート系モノマー(β2)を主な構成単位とするポリマー鎖(b2)と、を有するグラフト共重合体であって、
前記モノマー(α2)の単独重合体のガラス転移温度が30℃超180℃以下であり、前記モノマー(β2)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上30℃以下である、グラフト共重合体である。
【0033】
共重合体(A2)の好適な態様は、特開2018-76496号公報に記載の「ブロック共重合体化合物」が挙げられる。特開2018-76496号公報の説明と重複する部分については適宜説明を省略する。
なお、特開2018-76496号公報における「(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックa」が、「(メタ)アクリレート系モノマー(α2)を主な構成単位とするポリマー鎖(a2)」に対応し、「(メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb」が、「(メタ)アクリレート系モノマー(β2)を主な構成単位とするポリマー鎖(b2)」に対応する。
【0034】
上記モノマー(α2)及びモノマー(β2)は、上述した条件を満たす(メタ)アクリレート系モノマーの中から適宜選択して用いることができる。モノマーの具体例は、共重合体(A1)において例示したものと同様のものが挙げられる。
モノマー(α2)としては、例えば、メタクリレート、メチルメタクリレート等が挙げられる。
モノマー(β2)としては、例えば、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。
【0035】
前記ポリマー鎖(a2)は、前記モノマー(α2)を主な構成単位とするポリマー鎖であり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(α2)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ポリマー鎖(a2)を構成するモノマー(α2)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。なお、ポリマー鎖(a2)を構成するモノマーとして、単独共重合体のガラス転移温度が30℃超180℃以下を満たすモノマーを2種以上含む場合、いずれのモノマーもモノマー(α2)として取り扱うものとする。ポリマー鎖(a2)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0036】
また、前記ポリマー鎖(b2)は、前記モノマー(β2)を主な構成単位とするポリマー鎖であり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(β2)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ポリマー鎖(b2)を構成するモノマー(β2)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。なお、ポリマー鎖(b2)を構成するモノマーとして、単独共重合体のガラス転移温度が-100℃以上30℃以下を満たすモノマーを2種以上含む場合、いずれのモノマーもモノマー(β2)として取り扱うものとする。ポリマー鎖(b2)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0037】
共重合体(A2)は、ポリマー鎖(a2)を主鎖とし側鎖にポリマー鎖(b2)を有するグラフト共重合体であってもよく、ポリマー鎖(b2)を主鎖とし側鎖にポリマー鎖(a2)を有するグラフト共重合体であってもよい。中でも主鎖がポリマー鎖(b2)で、側鎖がポリマー鎖(a2)であることが好ましい。
【0038】
側鎖を構成するポリマー鎖は、液状-ゲル状転移性の観点から、GPC法による数平均分子量が好ましくは3000~100000、より好ましくは5000~50000である。
また主鎖を構成するポリマー鎖は、液状-ゲル状転移性の観点から、GPC法による数平均分子量が好ましくは5000~200000、好ましくは10000~150000である。
【0039】
液状-ゲル状転移性の観点から、ポリマー鎖(a2)とポリマー鎖(b2)の質量比(a2/b2)は、好ましくは5~95/95~5、より好ましくは10~90/90~10、更に好ましくは15~85/85~15である。
【0040】
また、液状-ゲル状転移性の観点から、共重合体(A2)の重量平均分子量は好ましくは8000~300000、より好ましくは15000~280000、更に好ましくは30000~250000である。
【0041】
また共重合体(A2)は、相溶化合物(B)と相溶した際の弾性及び粘着性を向上させる点から、末端又は側鎖に、ラジカル反応性基、カチオン反応性基、アニオン反応性基及び湿気反応性基からなる群から選択される少なくとも1種以上の官能基を有してもよい。
【0042】
共重合体(A2)は、例えば、特開平5-170838号公報、特開平6-234822号公報に記載された製造方法で得ることができる。また、三菱レイヨン社製、NB5015、NB5065、NB5066、NB5073、NB5088(いずれも、主鎖がブチルアクリレート、側鎖がメチルメタアクリレートのグラフト共重合体)を用いてもよい。
【0043】
3.共重合体(A3)
ゲル状組成物(X3)を構成する第1の共重合体(A3)は、
スチレン系モノマー(α3)を主な構成単位とするブロック(a3)と、
アルケン系モノマー、ジエン系モノマー、及びアルキン系モノマーより選択される1種以上のモノマー(β3)を主な構成単位とするブロック(b3)、または、
(メタ)アクリレート系モノマー(β4)を主な構成単位とするブロック(b4)と、を有するブロック共重合体であって、
前記(メタ)アクリレート系モノマー(β4)の単独重合体のガラス転移温度が-100℃以上50℃以下であるブロック共重合体(A3)。
【0044】
共重合体(A3)の好適な態様は、特開2018-80330号公報に記載の「ブロック共重合体化合物」が挙げられる。特開2018-80330号公報の説明と重複する部分については適宜説明を省略する。
なお、特開2018-80330号公報における「スチレン系化合物単位を主体とする重合体ブロックa」が、「スチレン系モノマー(α3)を主な構成単位とするブロック(a3)」に対応し、「アルケン系化合物、ジエン系化合物及びアルキン系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素系化合物の単位を主体とする重合体ブロックb1」が、「アルケン系モノマー、ジエン系モノマー、及びアルキン系モノマーより選択される1種以上のモノマー(β3)を主な構成単位とするブロック(b3)」に対応し、「メタ)アクリレート単位を主体とする重合体ブロックb2」が、「(メタ)アクリレート系モノマー(β4)を主な構成単位とするブロック(b4)」に対応する。
【0045】
モノマー(α3)は、スチレン及びスチレン誘導体を含み、具体的には、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、4-ヘキシルスチレンなどのアルキル基置換スチレン;p-ヒドロキシスチレンなどのヒドロキシル基置換スチレン;p-メトキシスチレン、4-tert-ブトキシスチレンなどのアルコキシ基置換スチレン;4-アミノスチレンなどのアミノ基置換スチレン;及び4-クロロスチレン、4-ブロモスチレンなどのハロゲン置換スチレン等が挙げられる。
【0046】
モノマー(β3)における、アルケン系モノマーとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。ジエン系モノマーとしては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、アルキン系モノマーとしては、アセチレン等が挙げられる。
【0047】
モノマー(β4)は(メタ)アクリレート系モノマーの中から適宜選択して用いることができる。モノマーの具体例は、共重合体(A1)において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0048】
前記ブロック(a3)は、前記モノマー(α3)を主な構成単位とするブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(α3)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ブロック(a3)を構成するモノマー(α3)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。ブロック(a3)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0049】
前記ブロック(b3)は、前記モノマー(β3)を主な構成単位とするブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(β3)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ブロック(b3)を構成するモノマー(β3)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。ブロック(b3)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0050】
また、前記ブロック(b4)は、前記モノマー(β4)を主な構成単位とするブロックであり、本発明の効果を損なわない範囲でモノマー(β4)に該当しないモノマーを含んでいてもよい。具体的には、ブロック(b4)を構成するモノマー(β4)の割合が、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることが更により好ましい。ブロック(b4)の重量平均分子量は1×105以上であることが好ましく、1×105以上1×109以下であることがより好ましく、1×105以上1×107以下であることが更により好ましい。
【0051】
共重合体(A3)のブロック構成は、ブロック(a3)-(b3)又は(b4)、ブロック(b3)/(b4)-(a3)-(b3)/(b4)など任意の構成とすることができる。中でも、ゲル組成物(X1)の液状-ゲル状の転移性の点から、共重合体(A3)は、ブロック(a3)-(b3)-(a3)のトリブロック共重合体が好ましい。
【0052】
液状-ゲル状転移性の観点から、ブロック(a3)とブロック(b3)の質量比(a3/b3)は、好ましくは5~95/95~5、より好ましくは10~90/90~10、更に好ましくは15~85/85~15である。
【0053】
また、液状-ゲル状転移性の観点から、共重合体(A3)の重量平均分子量は好ましくは8000~300000、より好ましくは15000~280000、更に好ましくは30000~250000である。
【0054】
また共重合体(A3)は、相溶化合物(B)と相溶した際の弾性及び粘着性を向上させる点から、末端又は側鎖に、ラジカル反応性基、カチオン反応性基、アニオン反応性基及び湿気反応性基からなる群から選択される少なくとも1種以上の官能基を有してもよい。
【0055】
ブロック(a3)とブロック(b3)を有する共重合体(A3)としては、クラレ社製、ハイプラー、セプトン; クレイトンポリマー社製、クレイトン; 日本ゼオン社製、クインタック; 旭化成社製、タフテック等が挙げられる。
【0056】
<相溶化合物(B)>
本実施形態において相溶化合物(B)は、前記共重合体(A)と相溶して、Tcが0~150℃の物理ゲルとなるものである。
【0057】
ゲル状組成物における共重合体(A)と相溶化合物(B)の組成比は、液状時の部材への塗布性及びゲル状時の部材同士の接着性並びに相転移性の観点から、共重合体(A)100質量部に対して、相溶化合物(B)が200質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、250質量部以上800質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
相溶化合物(B)は、上述した条件を満たす化合物であれば特に限定されないが、例えば(メタ)アクリレート系モノマー若しくは(メタ)アクリルアミド系モノマー等のラジカル重合性不飽和結合を含有するモノマー、可塑剤、または溶媒とすることができる。
相溶化合物(B)にモノマーを用いる場合は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ置換アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート;4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;からなる群から選択される少なくとも1種以上のモノマーを用いることが好ましく、イソデシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、及び4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレートから選択される少なくとも1種以上のモノマーを用いることがより好ましい。
【0059】
ゲル状組成物の強度、弾性及び粘着性を向上させる観点から、相溶化合物(B)は、ラジカル反応性基、カチオン反応性基、アニオン反応性基、及び湿気反応性基からなる群から選択される1種以上の官能基を有することが好ましい。
【0060】
上記ラジカル反応性基としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニル基、ビニルエーテル、アリルエーテル、マレイミド、及び無水マレイン酸からなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることが好ましく、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ウレタン(メタ)アクリレート、及びビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることがより好ましく、(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることが更により好ましい。
上記カチオン反応性基としては、エポキシ基、オキセタン、及びビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることが好ましい。
上記アニオン反応性基としては、エポキシ基、オキセタン、及びビニルエーテルからなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることが好ましい。
上記湿気反応性基としては、イソシアネート基、及びアルコキシシリル基からなる群から選択される1種以上の反応性基を用いることが好ましい。
なお、相溶化合物(B)が上記ラジカル反応性基を有する場合、ラジカル反応が迅速に進行する点から、相溶化合物(B)が2以上のラジカル反応性基を有することが好ましい。
【0061】
ゲル状組成物の強度、弾性、及び粘着性を向上させる観点から、共重合体(A)と相溶化合物(B)は、同種の官能基を有することが好ましい。すなわち、共重合体(A)がラジカル反応性基を有する場合は、相溶化合物(B)もラジカル反応性基を有することが好ましい。また、共重合体(A)がカチオン反応性基を有する場合は、相溶化合物(B)もカチオン反応性基を有することが好ましい。また、共重合体(A)がアニオン反応性基を有する場合は、相溶化合物(B)もアニオン反応性基を有することが好ましい。また、共重合体(A)が湿気反応性基を有する場合は、相溶化合物(B)も湿気反応性基を有することが好ましい。
【0062】
ゲル状組成物の強度、弾性及び粘着性を向上させる観点から、相溶化合物(B)は、自身の有する官能基の種類に応じて適切な種類の重合開始剤を含有していることが好ましい。
例えば、相溶化合物(B)がラジカル反応性基を有する場合は、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイル ビフェニル、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光反応開始剤化合物、アクリジン系光反応開始剤化合物、及びトリアジン系光反応開始剤化合物からなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることが好ましく、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシドからなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることがより好ましい。
【0063】
また、相溶化合物(B)がカチオン反応性基を有する場合は、アリールジアゾニウム塩、ジアリールハロニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリホスホニウム塩、鉄アレン錯体、チタノセン錯体、及びアリールシラノールアルミニウム錯体からなる群から選択される1種以上のイオン性光酸発生剤化合物;及び、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、燐酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、及びN-ヒドロキシイミドスルホナートからなる群から選択される1種以上の非イオン性光酸発生剤化合物;からなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることが好ましい。
【0064】
また、相溶化合物(B)がアニオン反応性基を有する場合は、1,10-ジアミノデカン、4,4’-トリメチレンジピペラジン、カルバメート類化合物及びその誘導体、コバルト-アミン錯体類化合物、アミノオキシイミノ類化合物、及びアンモニウムボレート類化合物からなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることが好ましい。
【0065】
また、相溶化合物(B)が湿気反応性基を有する場合は、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラアセチルアセトナート、及びビスアセチルアセトナトジイソプロポキシチタンからなる群から選択される1種以上のチタン化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジメチルマレエート、ジブチル錫ジエチルマレエート、ジブチル錫ジブチルマレエート、ジブチル錫ジオクチルマレエート、ジブチル錫ジトリデシルマレエート、ジブチル錫ジベンジルマレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジエチルマレエート、ジオクチル錫ジオクチルマレエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ジノニルフェノキサイド、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ジエチルアセトアセトナート、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、及びジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物からなる群から選択される1種以上の有機スズ化合物;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートからなる群から選択される1種以上の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラアセチルアセトナートなどのジルコニウム化合物;アミン系化合物;酸性リン酸エステル;酸性リン酸エステルとアミン系化合物との反応物;飽和または不飽和の多価カルボン酸またはその酸無水物;カルボン酸化合物とアミン系化合物との塩;オクチル酸鉛;シラノール縮合触媒;並びにイソシアネート反応触媒;からなる群から選択される1種以上の重合開始剤を用いることが好ましい。
【0066】
上記イソシアネート反応触媒としては、トリエチルアミン、ベンジルメチルアミン、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン及びジメチルエタノールアミンからなる群から選択される1種以上のアミン類化合物;トリエチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類化合物;ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、錫オクトエート及びジブチル錫ジエチルヘキサノレートからなる群から選択される1種以上の有機スズ化合物;ジ(2-エチルヘキサン酸)鉛;ナフテン酸鉛;ナフテン酸銅;及び、ナフテン酸コバルトから選択される1種以上の化合物を用いることができる。
【0067】
相溶化合物(B)に可塑剤を用いる場合は、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、及びブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル;アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジイソノニル、及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル等の多価カルボン酸エステル;安息香酸アルキル;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル;トリメリット酸エステル;(水添)ポリイソプレン、水酸基含有(水添)ポリイソプレン、(水添)ポリブタジエン、水酸基含有(水添)ポリブタジエン、ポリブテン等のゴム系ポリマー;熱可塑性エラストマー;石油樹脂;脂環族飽和炭化水素樹脂;テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、及び水添テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;ロジンフェノール等のロジン系樹脂;不均化ロジンエステル系樹脂、重合ロジンエステル系樹脂、及び水添ロジンエステル系樹脂等のロジンエステル系樹脂;キシレン樹脂;及び、アクリルポリマー、アクリルコポリマー等のアクリル系樹脂;からなる群から選択される1種以上の可塑剤を用いることが好ましく、多価カルボン酸エステル及びロジンエステル系樹脂からなる群から選択される1種以上の可塑剤を用いることがより好ましい。
【0068】
相溶化合物(B)に溶媒を用いる場合は、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン、スチレンなどの炭化水素類;ジエチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸プロピレンなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの窒素類;ブチルグリコール、メチルジグリコール、ブチルジグリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、テトラヒドロフランなどのグリコールエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどの塩素類;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;ギ酸、酢酸等のカルボン酸類;及び、水;からなる群から選択される1種以上の溶媒を用いることが好ましく、アルコール類、炭化水素類、エステル類、及びケトン類からなる群から選択される1種以上の溶媒を用いることがより好ましく、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、及び炭酸ジエチルからなる群から選択される1種以上の溶媒を用いることが更により好ましい。
【0069】
相溶化合物(B)は、共重合体(A)とのゲル状組成物が流動性を有する化合物であるが、共重合体(A)に対してある配合量までは、共重合体(A)と相溶して0~150℃の間でTcを有するゲル状組成物を構成でき、その配合量を超えるとTcが0℃未満となり、室温が0℃を超えるとゲル状組成物であることができなくなり、共重合体(A)が化合物Bに溶解した溶液になってしまう場合がある。このような場合、相溶化合物(B)は、Tcが0~150℃にある配合量のときはゲル状組成物の媒質であり、Tcが0℃未満になるとゲル状組成物の溶剤であることになる。
【0070】
本発明における溶剤とは、溶剤とゲル状組成物との混合組成物のTcが、その溶剤の配合量が一定量を超えると0℃未満になる化合物ということができる。従って、ラジカル重合性不飽和結合含有モノマーや可塑剤であっても、混合組成物のTcが、そのラジカル重合性不飽和結合含有モノマーや可塑剤の配合量が一定量を超えると0℃未満になれば、それらは本発明における溶剤であるとみなすことができる。
【0071】
ゲル状組成物を容易に製造できる点から、相溶化合物(B)の粘度は0.001Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましく、0.001Pa・s以上1Pa・s以下であることがより好ましく、0.001Pa・s以上0.5Pa・s以下であることが更により好ましい。なお、相溶化合物(B)は、ゲル状組成物の液状-ゲル状転移温度(Tc)以上において上記の粘度を有していれば、液状-ゲル状転移温度(Tc)未満において高粘度であったり固体であったりしてもよい。例えば、相溶化合物(B)がオリゴマー等の場合は、温度Tcよりも低温環境で高粘度あるいは固体の場合がある。この場合でも、相溶化合物(B)は温度Tcよりも高温の環境では低粘度になったり、低粘度の他の相溶化合物(B)には溶解したり、溶剤に溶解したりする。したがって、これらを組合せて共重合体(A)と混錬することで、ゲル状組成物を製造できる。
【0072】
また、共重合体(A)との相溶性に優れる点から、相溶化合物(B)の分子量は500以下であることが好ましく、450以下であることがより好ましい。相溶化合物(B)の分子量が500以下であることにより、共重合体(A)同士の間に相溶化合物(B)が入りやすく、共重合体(A)と相溶化合物(B)とが相溶しやすい。
【0073】
ゲル状組成物を、後述する接着剤組成物として使用する場合、部材への塗付性の観点から、液状のゲル状組成物の粘度は、0.1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、0.3Pa・s以上50Pa・s以下であることがより好ましく、0.5Pa・s以上10Pa・s以下であることが更により好ましい。なお、相溶化合物(B)及びゲル状組成物の粘度は、実施例に記載した測定条件で測定することができる。
【0074】
(ゲル状組成物)
本実施形態においてゲル状組成物は、前記共重合体(A)と相溶化合物(B)とを混合することにより得ることができる。
【0075】
ゲル状組成物は、温度Tc以上の温度では、大気圧下で水平なガラスプレート上に0.01g以上滴下すると自然流動する液状体であるが、温度Tc未満の温度では、大気圧下で水平なガラスプレート上に0.01g以上静置しても流動しないゲル状体である。
【0076】
ゲル状組成物は、温度Tcの前後の温度で、ゲル状体と液状体に可逆的に変化する。
【0077】
ゲル状組成物をゲル状で使用できる温度範囲が広く、あまり高温で液状にする必要がないという観点から、温度Tcは、好ましくは10~100℃、より好ましくは20~90℃、更に好ましくは30~80℃である。
【0078】
温度Tcは、ブロック(a1)、(a2)、(a3)をTgが高いモノマーでブロックを構成するか、相溶化合物(B)の配合比率を少なくすると、高温側に設定できる。一方、温度Tcは、ブロック(a1)、(a2)、(a3)のTgが低いモノマーでブロックを構成するか、相溶化合物(B)の配合比率を大きくすると、低温側に設定できる。
【0079】
例えば、組成物を後述する接着剤組成物として使用した場合、温度Tcより高温で液状の組成物を部材上に塗工し、組成物を介して部材同士を貼合せて、温度Tcより低温にすると、部材同士は、ゲル状の組成物を介して安定に接着されるが、再び、温度Tcより高温にすると、組成物がゲル状から液状に変化するため、部材同士を容易に分離した状態にすることができる。
【0080】
<充填剤(C)>
本実施形態で用いられる充填剤(C)は、任意の機能を有する粒子を用いることができる。当該粒子としては例えば、導電性や熱伝導性を有する粒子などが挙げられる。当該粒子は上記のゲル状組成物に分散される。充填剤(C)は、例えば無機フィラー、金属粒子、及び被覆金属粒子からなる群から選択される1種以上を含むことができる。中でも、安定性及び分散性の観点から、充填剤(C)は被覆金属粒子であることが好ましい。
【0081】
共重合体(A)及び相溶化合物(B)の合計に対する充填剤(C)の割合は、液状時の部材への塗布性及びゲル状時の部材同士の接着性並びに相転移性の観点から、共重合体(A)及び相溶化合物(B)の合計100質量部に対して、充填剤(C)が5質量部以上60質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
【0082】
また、分散性の観点から、充填剤(C)の平均一次粒径は、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更により好ましい。また、物性付与の観点から、充填剤(C)の平均一次粒径は、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることが更により好ましい。
【0083】
充填剤(C)に無機フィラーを用いる場合は、シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、石綿粉、酸化銅、水酸化銅、酸化鉄、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉛、マグネシア、酸化スズ等の金属酸化物粒子、ならびに炭酸カルシウム、カーボン、シリカ、マイカ、スメクタイト、及びカーボンブラック等の、無機微粒子から1種以上を適宜選択して用いることが好ましい。
【0084】
充填剤(C)に金属粒子を用いる場合は、その材質として、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金の中から1種以上の金属を適宜選択して用いることが好ましい。金属粒子の材質は、焼結後に導電性を示す金属であることが好ましく、中でも、金、銀、又は銅であることがより好ましく、銀、又は銅であることが更により好ましい。これらの金属を用いることで、例えば電子回路の印刷等に本実施形態の金属粒子分散液を適用することができる。また、本実施形態で用いられる被覆金属粒子は、耐酸化性に優れていることから、金属粒子として銅を好適に用いることができる。被覆金属粒子が複数ある場合、含まれる各金属粒子は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0085】
充填剤(C)に被覆金属粒子を用いる場合は、金属核粒子表面に有機分子が被覆した有機物被覆金属粒子や、金属核粒子表面に酸化皮膜が被覆した酸化物被覆金属粒子を用いることが好ましい。金属核粒子の材質としては、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金の中から1種以上の金属を適宜選択して用いることが好ましい。金属核粒子の材質は、焼結後に導電性を示す金属であることが好ましく、中でも、金、銀、又は銅であることがより好ましく、銀、又は銅であることが更により好ましい。これらの金属を用いることで、例えば電子回路の印刷等に本実施形態の金属粒子分散液を適用することができる。また、本実施形態で用いられる被覆金属粒子は、耐酸化性に優れていることから、金属核粒子として銅を好適に用いることができる。被覆金属粒子が複数ある場合、含まれる各金属核粒子は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
中でも、充填剤(C)に被覆金属粒子を用いる場合は、金属核粒子(C1)表面に、脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドより選択される1種以上の被覆分子(C2)が被覆した粒子(以降、被覆金属粒子(C0)と表記することがある)であることが好ましい。被覆分子(C2)は、通常、親水基側が金属核粒子(C1)の表面に吸着して単分子膜を形成している。このため、金属核粒子(C1)の表面は、被覆分子(C2)によって保護されて酸化が抑制され、高い耐酸化性を有するものと推定される。例えば、上記の金属核粒子(C1)として銀核粒子を用いた被覆銀粒子においては、製造後2ヶ月経過後における酸化銀及び水酸化銀の含有割合を、被覆銀粒子中の銀核粒子100質量%に対して5質量%以下に抑制することも可能である。なお、被覆金属粒子(C0)中における金属酸化物の生成は、被覆金属粒子(C0)のX線回折(XRD)測定により確認することができる。
【0087】
また、被覆分子(C2)は金属核粒子(C1)と物理吸着等により結合していると推定されるため、比較的低温で拡散・脱離すると考えられる。したがって、各金属核粒子(C1)の表面は加熱によって容易に露出され、金属核粒子(C1)の表面同士の接触が可能になるため、被覆金属粒子(C0)は低温での焼結性に優れている。
【0088】
1.金属核粒子(C1)
本実施形態で用いられる金属核粒子(C1)の平均一次粒径は、低温焼結性及び分散性の観点から、300nm未満であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが更により好ましい。また、金属核粒子(C1)の平均一次粒径は、通常、1nm以上であり、5nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。なお、当該金属核粒子(C1)の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察された任意の20個の金属粒子の一次粒子径の算術平均値である。
【0089】
金属核粒子(C1)の材質は、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、鉄、クロム、スズ、ニッケル、亜鉛、鉛、インジウム、ビスマス、ゲルマニウム、アンチモン、コバルト、パラジウム、ロジウム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、ガリウム、ヒ素、ホウ素、ケイ素、及び、これらの合金の中から1種以上を適宜選択して用いることができる。また、金属核粒子(C1)の材質は、焼結後に導電性を示す金属であることが好ましく、中でも、金、銀、又は銅であることがより好ましく、銀、又は銅であることが更により好ましい。これらの金属を用いることで、例えば電子回路の印刷等に本実施形態の金属粒子分散液を適用することができる。また、本実施形態で用いられる被覆金属粒子(C0)は、耐酸化性に優れていることから、金属核粒子(C1)として銅を好適に用いることができる。被覆金属粒子(C0)が複数ある場合、含まれる各金属核粒子(C1)は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0090】
金属核粒子(C1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、金属酸化物、金属水酸化物、及びその他の不純物を含んでいてもよい。金属酸化物及び金属水酸化物の含有割合は、導電性の点から、金属核粒子(C1)に対して5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更により好ましい。また、導電性の点から、金属核粒子(C1)中の金属の含有割合は、95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更により好ましい。
【0091】
金属核粒子(C1)の形状は、用途等に応じて適宜選択することができる。当該形状は、真球状を含む略球状、板状、棒状などが挙げられ、中でも、略球状であることが好ましい。なお、後述する被覆金属粒子(C0)の製造方法によれば、おおよそ球状に近似可能な略球状の金属核粒子(C1)が得られる。なお、被覆金属粒子(C0)の粒径は、SEM観察により決定できる。
【0092】
2.被覆分子(C2)
・脂肪族カルボン酸
本実施形態において脂肪族カルボン酸は、単独で、又は後述する脂肪族アルデヒドと組み合わせて、前記金属核粒子(C1)の表面に被覆し、金属核粒子(C1)の酸化を抑制する。また、焼結時においては、当該脂肪族カルボン酸は容易に金属核粒子(C1)の表面から除去され、または分解あるいは揮発するため、焼結体中の残留が抑制される。これにより、電気伝導性に優れた導電体が得られる。
【0093】
脂肪族カルボン酸は、脂肪族化合物に1個又は2個以上のカルボキシ基が置換された構造を有する化合物であり、本実施形態においては、通常、金属核粒子(C1)表面に、脂肪族カルボン酸のカルボキシ基が配置される。本実施形態においては、脂肪族化合物に1個のカルボキシ基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と、1個のカルボキシ基を有する化合物が好ましい。
【0094】
脂肪族カルボン酸を構成する脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝、又は環状構造を有する炭化水素基であって、不飽和結合を有していてもよい。本実施形態においては、金属核粒子(C1)表面に所定の密度で単分子膜を形成しやすい点から、分枝及び環状構造を有しない、直鎖脂肪族炭化水素基を用いることが好ましい。不飽和結合は、二重結合であっても三重結合であってもよいが、二重結合であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合、その個数は、1分子中に1~3個有することが好ましく、1~2個有することがより好ましく、1個であることが更により好ましい。
【0095】
本実施形態において脂肪族カルボン酸は、中でも、直鎖脂肪族炭化水素基の末端にカルボキシ基を有することが好ましい。脂肪族炭化水素基を直鎖構造とすることで、被覆金属粒子(C0)とゲル状組成物との親和性を高め、被覆金属粒子(C0)の分散性を向上することができる。また、当該脂肪族カルボン酸において、脂肪族基の炭素原子数は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、7以上であることが更により好ましい。炭素原子数が3以上であることにより、被覆金属粒子(C0)の耐酸化性やゲル状組成物との親和性を向上することができる。一方、脂肪族基の炭素原子数が17以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、11以下であることが更により好ましい。炭素原子数が17以下であることにより、被覆金属粒子(C0)の焼結時に除去されやすく、電気伝導性に優れた導電体を得ることができる。なお、本実施形態において、脂肪族基の炭素原子数には、カルボキシ基を構成する炭素原子は含まないものとする。
【0096】
好ましい脂肪族カルボン酸の具体例としては、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。脂肪族カルボン酸は1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0097】
・脂肪族アルデヒド
本実施形態においては、前記脂肪族カルボン酸の代わりに、又は、前記脂肪族カルボン酸と組み合わせて、前記金属核粒子(C1)表面に脂肪族アルデヒドを配置することができる。この場合であっても、脂肪族カルボン酸と同様に、電気伝導性に優れた導電体を形成可能な被覆金属粒子(C0)が得られる。
【0098】
脂肪族アルデヒドは、脂肪族化合物に1個又は2個以上のアルデヒド基が置換された構造を有する化合物である。本実施形態に用いられる脂肪族アルデヒドは、脂肪族化合物に1個のアルデヒド基が置換された構造、即ち、脂肪族炭化水素基と1個のアルデヒド基とを有する化合物が好ましい。本実施形態においては、通常、金属核粒子(C1)表面に、脂肪族アルデヒドのアルデヒド基が配置される。金属核粒子(C1)表面にアルデヒド基が配置されることにより、脂肪族アルデヒドの還元作用による、金属核粒子(C1)表面の酸化抑制や、汚染物質の洗浄効果が得られる。また、金属核粒子(C1)表面にアルデヒド基が配置されることにより、基材表面の異物や酸化物を除去する効果を有するものと推定される。
【0099】
脂肪族アルデヒドを構成する脂肪族炭化水素基は、前記脂肪族カルボン酸と同様のものを選択することができる。
好ましい脂肪族アルデヒドの具体例としては、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、オクタデシルアルデヒド、ヘキサデセニルアルデヒドなどが挙げられる。脂肪族アルデヒドは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
被覆金属粒子(C0)の表面における被覆分子(C2)の密度は特に限定されるものではないが、ゲル状組成物の脂肪族基と相互作用して相溶性に優れる点から、2.5~5.2個/nm2であることが好ましく、3.0~5.2個/nm2であることがより好ましく、3.5~5.2個/nm2であることが更により好ましい。被覆分子(C2)の密度を2.5個/nm2以上とすることで、ゲル状組成物の脂肪族基と相互作用できる被覆分子(C2)の個数が多くなり、被覆金属粒子(C0)とゲル状組成物との親和性を高めることができると考えられる。また、被覆分子(C2)の密度を5.2個/nm2以下とすることで、被覆分子(C2)同士の間にゲル状組成物の脂肪族基が入り込む隙間が生じるため、被覆金属粒子(C0)がゲル状組成物に対して効率よく分散されるものと考えられる。
【0101】
金属核粒子(C1)表面における被覆分子(C2)の密度は以下のようにして算出することができる。被覆金属粒子(C0)について、特開2012-88242号公報に記載される方法に従って、液体クロマトグラフィー(LC)を用いて表面に付着している有機成分を抽出し、成分分析を行う。また、TG-DTA測定(熱重量測定・示差熱分析)を行い、被覆金属粒子(C0)に含まれる有機成分量を測定する。次いでLCの分析結果と合わせて被覆金属粒子(C0)に含まれる被覆分子(C2)の量を算出する。また、SEM画像観察により金属核粒子(C1)の平均一次粒子径を測定する。
以上の分析結果から、被覆金属粒子(C0)1gに含まれる被覆分子(C2)の分子数は下記式(a)で表される。
[被覆分子(C2)の分子数]=MA/(Mw/NA) ・・・(a)
ここで、MAは被覆金属粒子1gに含まれる被覆分子(C2)の質量[g]であり、Mwは被覆分子(C2)の分子量であり、NAはアボガドロ定数である。2種以上の被覆分子(C2)が含まれる場合には、各成分ごとに分子数を算出し、合計する。
金属核粒子(C1)の形状を球体と近似して、被覆金属粒子(C0)の質量から有機成分量を差し引いて金属核粒子(C1)の質量MB[g]を求める。被覆金属粒子(C0)1g中の金属核粒子(C1)の数は下式(b)で表される。
[金属核粒子(C1)の数]=MB/[(4πr3/3)×d×10-21] ・・・(b)
ここで、MBは被覆金属粒子(C0)1gに含まれる金属核粒子(C1)の質量[g]であり、rはSEM画像観察により算出した一次粒子径の半径[nm]であり、dは金属の密度[g/cm3]である(銅の場合d=8.94)。被覆金属粒子(C0)1gに含まれる金属核粒子(C1)の表面積は式(b)から、下式(c)で表される。
[金属核粒子(C1)の表面積(nm2)]=[金属核粒子(C1)の数]×4πr2 ・・・(c)
以上から、被覆分子(C2)による金属核粒子(C1)の被覆密度[個/nm2]は、式(a)及び式(c)を用いて、下記式(d)で算出される。
[被覆密度]=[被覆分子(C2)の分子数]/[金属核粒子(C1)の表面積]・・・(d)
【0102】
被覆金属粒子(C0)における被覆分子(C2)と金属核粒子(C1)との結合状態は、イオン性結合であっても物理吸着であってもよい。被覆分子(C2)は、被覆金属粒子(C0)の焼結性の観点から、金属核粒子(C1)の表面に物理吸着していることが好ましく、金属核粒子(C1)の表面にカルボキシ基、又はアルデヒド基で物理吸着していることが好ましい。
【0103】
被覆分子(C2)が金属核粒子(C1)に物理吸着していることは、被覆金属粒子(C0)の表面組成を分析することで確認できる。具体的には、被覆金属粒子(C0)について飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)表面分析を行い、実質的に遊離の被覆分子(C2)のみが検出され、金属原子と結合している被覆分子(C2)が実質的に検出されないことで確認することができる。ここで、金属原子と結合している被覆分子(C2)が実質的に検出されないとは、金属核粒子(C1)に付着している被覆分子(C2)のシグナル量が、遊離の被覆分子(C2)のシグナル量に対して5%以下であること意味し、1%以下であることが好ましい。
【0104】
また、被覆分子(C2)が、カルボキシ基、又はアルデヒド基で金属核粒子(C1)の表面に物理吸着していることは、被覆金属粒子(C0)について、赤外吸収スペクトル測定を行い、実質的にC-O-金属塩由来の伸縮振動ピークのみが観測され、遊離のカルボン酸等に由来する伸縮振動ピークが実質的に観測されないことで確認することができる。
【0105】
被覆金属粒子(C0)の粒子径は、用途等に応じて適宜選択することができる。被覆金属粒子(C0)の平均一次粒子径は、分散性、導電性、及びひび割れ抑制の観点から、0.02μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上5μm以下であることがより好ましく、0.07μm以上2.5μm以下であることが更により好ましい。
被覆金属粒子(C0)の平均一次粒子径は、SEM観察による任意の20個の被覆金属粒子の一次粒子径の算術平均値DSEMとして算出される。
また、被覆金属粒子(C0)の粒度分布の変動係数(標準偏差SD/平均一次粒子径DSEM)の値は例えば、0.01~0.5であり、0.05~0.3が好ましい。特に、後述する被覆金属粒子の製造方法で製造されていることで、粒度分布の変動係数が小さく、粒子径の揃った状態とすることができる。被覆金属粒子(C0)の粒度分布の変動係数が小さいことで、分散性に優れ、高濃度の分散物を得ることが可能となる。
【0106】
本実施形態で用いられる被覆金属粒子(C0)は、耐酸化性と焼結性に優れ、得られる焼結体は高い接合強度及び電気伝導性を示す。そのため、基材上に印刷して配線パターン等を形成する金属粒子分散液に好適に用いることができる。
【0107】
本実施形態の金属粒子分散液に含まれる被覆金属粒子(C0)の割合は、金属含有率が40質量%以下となる範囲で適宜変更することができる。例えば、金属粒子分散液の全量に対する金属含有率を5~40質量%とすることができ、好ましくは10~35質量%とすることができ、より好ましくは15~30質量%とすることができる。上記の含有量とすることで、薄膜化した焼結体を得ることができる。
【0108】
<被覆金属粒子の製造方法>
本実施形態で用いられる被覆金属粒子(C0)は、上記特定の金属核粒子(C1)となる金属を含む金属カルボン酸塩と、上記特定の脂肪族カルボン酸及び脂肪族アルデヒドから選択される1種以上の分子を用いて製造される。例えば、前記特許文献2の段落0052から段落0101、及び、段落0110~0114等の記載を参考にして製造することができる。あるいは、特開2016-069716号公報の段落0031から段落0066まで、及び段落0085等の記載を参考にして製造することができる。
被覆金属粒子(C0)の好ましい製造方法においては、金属カルボン酸塩と、被覆分子(C2)と、媒体を含む反応液を準備し、当該反応液中で生成する錯化合物を熱分解処理して、被覆金属粒子(C0)を得ることができる。当該製造方法では、金属核粒子(C1)の表面に被覆分子(C2)が2.5~5.2個/nm2の密度で被覆された被覆金属粒子(C0)を得ることができる。
【0109】
<他の成分>
本発明に係る組成物は、上述した共重合体(A)と、相溶化合物(B)と、充填剤(C)と、を含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて更に他の成分を含有してもよいものである。上記他の成分としては例えば、上記の共重合体(A)、相溶化合物(B)、及び充填剤(C)に含まれない溶媒、重合開始剤、及び増粘剤等が挙げられる。これらの溶媒、重合開始剤、及び増粘剤等を組み合わせることにより、例えば組成物のレオロジー特性等を調整することができる。
【0110】
共重合体(A)、相溶化合物(B)、充填剤(C)、及び上記他の成分の混合物の粘度は、例えば、25℃、10rpmにおける粘度を0.01Pa・s以上500Pa・s以下の範囲で適宜調整することができ、0.01Pa・s以上50Pa・s以下であることが好ましい。なお、上記他の成分の配合量は、組成物の全質量中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0111】
(溶媒)
本実施形態に係る組成物に含有できる溶媒としては、共重合体(A)及び相溶化合物(B)と相溶性の高い溶媒が挙げられる。当該溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒のような無極性有機溶媒や、主鎖骨格の炭素原子数が2以下の脂肪族アルコール類、脂肪族アミノアルコール類、脂肪族カルボン酸類、脂肪族アミン類、脂肪族エーテル類、脂肪族アセテート類、脂肪族チオール類、及び脂肪族シラノール類のような極性有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0112】
(添加剤)
本実施形態に係る組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、充填剤(C)以外の添加剤を含めることができる。例えば、酸化防止剤、濡れ剤、界面活性剤、イオン性液体、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機、有機各種フィラー、ポリマー等の添加剤を含めることができる。
【0113】
[組成物の用途]
本発明の組成物は、充填剤(C)が分散されているため、熱伝導ペーストや導電性ペースト、塗料などの、機能性ペーストとして用いることができる。特に、充填剤(C)に被覆金属粒子を用いた場合は、加熱により被覆金属粒子が焼結するため、印刷用の導電性ペーストとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0114】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0115】
(1)被覆金属粒子の製造
(製造例1)
攪拌機、温度計、還流冷却管、および窒素導入管を備えた3000mLガラス製四ツ口フラスコを150℃のオイルバス内に設置した。
上記フラスコ内に、ギ酸銅無水物484g(3.1モル)と、ラウリン酸(関東化学社製)68g(0.1当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(補助媒体)としてのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)150g(0.2当量/ギ酸銅無水物)と、媒体(主媒体)としての石油系炭化水素(C9アルキルシクロヘキサン混合物)(ゴードー社製「スワクリーン150」)562g(1.4当量/ギ酸銅無水物)とを仕込んだ。窒素雰囲気下、上記フラスコ内の内容物をオイルバスで加温しながら、液温度が50℃になるまで、攪拌しながら、混合した。
上記混合物に対して、錯化剤として3-アミノ-1-プロパノール(東京化成社製)712g(3.0当量/ギ酸銅無水物)をゆっくり滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物をオイルバスで加温して、液温度が120℃付近になるまで、攪拌しながら、混合した。液温度の上昇に伴って、反応液は濃青色から茶褐色に変化し、炭酸ガスの発泡が生じた。炭酸ガスの発泡が収まった時点を反応終点として、オイルバス温調を停止し、室温まで自然冷却した。
室温まで冷却した上記反応液に対して、メタノール(関東化学社製)1200gを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。上記沈殿物に対して、メタノール(関東化学社製)1200gと、アセトン(関東化学社製)390gとを添加し、混合した。得られた混合液を30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションして、沈殿物を得た。これらの操作(メタノールおよびアセトンの添加とデカンテーション)をさらにもう一回繰り返した。
得られた沈殿物を、メタノール(関東化学社製)400gを用いて500mLナスフラスコに移した。これを30分間以上静置した後、上澄み液をデカンテーションした。
得られた沈殿物に対して、α-テルピネオール(関東化学社製)18gを添加し、混合した。その後、ナスフラスコを回転式エバポレータに設置し、内容物を減圧乾燥(真空乾燥)した。減圧乾燥(真空乾燥)後、室温まで自然冷却した後、ナスフラスコ内を窒素置換しながら減圧解除した。以上のようにして、200gの茶褐色粘稠体の被覆銅粒子Cu1を得た。
【0116】
(2)被覆金属粒子の評価
被覆金属粒子の物性評価は、以下のTG-DTA測定、XRD測定、SEM観測によって実施した。被覆銅粒子Cu1の平均一次粒子径は86nm、被覆銅粒子Cu1の被覆分子の被覆量は0.68wt%、被覆銅粒子Cu1の被覆分子の被覆密度は3.67分子/nm2であった。
【0117】
<熱重量・示差熱(TG-DTA)分析>
測定装置:リガク社製TG8120
昇温速度:10℃/min
測定温度範囲:25~500℃
測定雰囲気:窒素(250ml/min)
<粉末X線回折(XRD)分析>
測定装置:リガク社製Smartlab
管電圧:45kV
管電流:200mA
<SEM画像観察>
測定装置:日本電子製FE-EPMA JXA-8500F
測定条件:加速電圧 15~20kV
観察倍率 ×1,500~×30,000
<平均一次粒子径及び変動率の計算>
測定装置:日本電子製FE-EPMA JXA-8500F
平均一次粒子径:サンプル20点の平均値
変動率:サンプル20点の標準偏差/平均値で計算される値
【0118】
(2)組成物の調製
以下の材料を用いて組成物を調製した。
・共重合体(A-1):ポリメチルメタクリレート/ポリn-ブチルアクリレート/ポリメチルメタクリレート(PMMA/PnBA/PMMA)トリブロックポリマー (クラレ社製、KURARITY LA2330)
・共重合体(A-2):ポリスチレン/水添ポリブタジエン/ポリスチレン(PSt/水添PBD/PSt)トリブロックポリマー (クラレ社製、SEPTON J3341)
・相溶化合物(B-1):トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート) (分子量402.6, Proviron社製、Proviplast1783)
・相溶化合物(B-2):1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(分子量427.7 BASF社製、Hexamoll DINCH)
・相溶化合物(B-3):パルミチン酸2-エチルヘキシル(分子量368.6, 日清オイリオ社製、)
・充填剤(C-1):製造例1の被覆銅粒子Cu1
・充填剤(C-2):銅粉(平均一次粒径2.0μm 三井金属鉱業社製、1200N)
・充填剤(C-3):アルミナ粒子(平均一次粒径0.10μm 大明化学工業社製、TM-DA)
・充填剤(C-4):シリカ粒子(粒径0.2~0.4μm アドマテックス社製、SO-C1)
【0119】
(実施例1:組成物の調製)
共重合体(A-1)2.0質量部と、相溶化合物(B-1)6.4質量部と、充填剤(C-1)2.04質量部とを混合して、実施例1の組成物を得た。なお充填剤(C-1)は、2.04質量部中、1.8質量部の銅粒子と、0.04質量部のラウリン酸と、0.2質量部のα-テルピネオールを含んでいる。
【0120】
(実施例2~10)
実施例1において、各成分及び配合割合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10の組成物を得た。
【0121】
(比較例1~4)
実施例1において、各成分及び配合割合を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1~4の組成物を得た。
【0122】
【0123】
<状態評価>
実施例及び比較例で得られた組成物について、25℃における流動性の状態を目視にて評価した。結果を表1に示す。
サンプル瓶に封入した組成物を傾けても形が保持されていた場合は「ゲル」、
サンプル瓶に封入した組成物を傾けたときに自然流動した場合は「液体」と評価した。
【0124】
<液状-ゲル状転移温度(Tc)評価>
実施例及び比較例で得られた組成物について、貯蔵剛性率G’と損失剛性率G”を、レオメータ(Anton Paar社製)を使用し、コーンローター(φ=25mm、ローター角度2°)、周波数1Hz、ひずみ1%で、150℃から0℃に向けて、2℃/分で冷却して測定し、0℃~150℃の範囲において、貯蔵剛性率G’と損失剛性率G”とが等しくなる温度をTcとした。結果を表1に示す。なお、表1において、0℃~150℃の範囲にTcを有さないものについては「-」として示している。
【0125】
また、実施例1及び6において、充填剤を添加しなかった以外は、実施例1及び6と同様として、ゲル状組成物1及び6を調製し、上記と同様にTc評価を行ったところ、ゲル状組成物1はTcが41℃であり、ゲル状組成物6はTcが51℃であった。
【0126】
<分散安定性評価>
実施例及び比較例の組成物を調製し1週間経過後の分散性(分散安定性)を目視で評価した。結果を表1に示す。充填剤(C)が分散していた場合は「○」、充填剤(C)が凝集又は沈殿していた場合を「×」として示す。
【0127】
[結果のまとめ]
表1に示されるように、実施例1~10の組成物は、0~150℃の範囲に液状-ゲル状転移温度(Tc)を有し、室温における充填剤(C)の分散安定性に優れていることが明らかとなった。