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▶ タレンゲン インターナショナル リミティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】脂肪肝を予防および治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20230123BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P1/16 ZNA
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10
A61P13/12
A61P3/04
A61P9/12
A61P7/02
A61P13/02
A61P31/12
A61P31/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P35/00
A61P5/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019531975
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2017089047
(87)【国際公開番号】W WO2018107688
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-19
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110168
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110172
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リ ジナン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】Guoji Jianyan Yixue Zazhi,2013年,Vol.34,No.19,pp.2614-2616
【文献】Xiandai Zhongxiyi Jiehe Zazhishe,2014年,Vol.23,No.31,pp.3490-3491
【文献】Russian Journal of Bioorganic Chemistry,2014年,Vol.40,No.6,pp590-605
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.,1997年,Vol.94,pp.10335-10340
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の脂肪肝を予防および/または治療するための、予防および/または治療に有効な量のプラスミノーゲンを含む医薬組成物であって
前記プラスミノーゲンは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有し、前記医薬組成物は、前記プラスミノーゲンを唯一の有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記脂肪肝が、肥満性脂肪肝、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、急速体重減少性脂肪肝、栄養不良性脂肪肝、糖尿病脂肪肝、および薬物性脂肪肝からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記対象の肝臓における脂質沈着を予防および/または治療するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記脂肪肝は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、肥満症、飲酒、および薬物治療からなる群より選択される疾患または状態によって引き起こされるまたはそれに伴われるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記脂肪肝は、高血圧、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、糖尿病、慢性肝炎、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、閉塞性胆管炎、および薬物治療からなる群より選択される疾患または状態によって引き起こされるまたはそれに伴われるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
高脂血症の対象の肝臓における脂質沈着を低減するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記高脂血症は、血清のトリグリセリド(TG)の上昇と、血清の低密度リポタンパク質(LDL)の上昇と、超低密度リポタンパク質(VLDL)の上昇とからなる群より選択される一つ以上を示す、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記高脂血症は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、および低高密度リポタンパク質血症からなる群より選択される、請求項6または7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
ラベルを含む容器と、
前記容器内に、請求項1~のいずれか1項に記載のプラスミノーゲンを含む前記医薬組成物とを含むキットであって、
前記ラベルは、前記組成物を前記対象に投与することを指示するものである、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の組織器官における異常な脂肪沈着を低減して脂肪代謝障害およびその関連疾患、合併症を予防および/または治療する目的を実現するように、脂肪代謝障害およびその関連疾患に罹患しやすいまたは罹患している被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、脂肪代謝障害およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪代謝障害は脂質代謝異常とも言われ、代謝性疾患の一つであり、原発性または後天性要素による血液およびその他の組織器官中の脂質(リピド)および代謝生成物の質と量との異常である。脂質代謝は、脂質が小腸で消化・吸収され、リンパ系から血液循環に入り(リポタンパク質により輸送され)、肝臓により転化され、脂肪組織に保存され、必要に応じて組織に利用されることを含む。脂質は体内での主な機能は酸化によるエネルギー供給であり、脂肪組織は生体のエネルギー倉庫であり、脂肪は皮膚、骨格、筋肉と相乗して内臓を保護し、体温消散を防止し、食物中の脂溶性ビタミンの吸収に寄与することができる。リン脂質はすべての細胞膜の重要な構造成分であり、コレステロールは胆酸およびステロイドホルモン(副腎皮質ホルモンと性腺ホルモン)の前駆体である。脂質代謝は、遺伝、神経液、ホルモン、酵素および肝臓などの組織器官によって調節される。これらの要素に異常がある場合、例えば、高リポタンパク血症およびそれによる臨床症候群、肥満症、脂肪肝など、脂質代謝障害および関連器官の病理的生理的変化を引き起こし得る。
【0003】
高リポタンパク血症(Hyperlipoproteinemia)は、血液中の過剰なリポタンパク質によるものである。トリグリセリド(TG)、遊離コレステロール(FC)、コレステロールエステル(CE)およびリン脂質などの、血液中の脂質は水に溶けることは少なく、アポリポタンパク質(APO)と巨大分子複合体(リポタンパク質)を構成するしか血液中に溶解、輸送、代謝することができない。血脂が健常人の上限より高い場合は高脂血症(Hyperlipemia)となる。血脂は血液においてリポタンパク質の形で輸送されるので、高脂血症は高リポタンパク血症ともいわれる。一般的に、成人の空腹血トリグリセリドが160mg/dlを超え、コレステロールが260mg/dlを超え、子供のコレステロールが160mg/dlを超えることを基準とされる[1]
【0004】
高リポタンパク血症(高脂血症)は、アテローム性動脈硬化病変の要因の一つであり、体内の脂質代謝異常の表れである。血脂またはリポタンパク質の種類が異なるため、正常な範囲を超えた血脂またはリポタンパク質の種類も異なり得るので、世界保健機関(WHO)は高リポタンパク血症を以下の5型に分けている。すなわち、I型、主にカイロミクロンが増加し、血清が混濁して乳白色を呈し、その中には大量のトリグリセリド(TG)が含まれていること;II型、さらにIIa型とIIbとの二亜型に分けられ、前者は主に低密度リポタンパク質(LDL)が明らかに増加していることであり、後者は超低密度リポタンパク質(VLDL)も増加していることである;III型、血清は常に混濁し、LDLもVLDLも増加し、電気泳動では両者が融合していること;IV型、主にVLDLが増加し、血清が混濁しているか混濁しないこと;V型、カイロミクロンおよびVLDLは増加し、血清が混濁して乳白色を呈することである。その中で、II型およびIV型は最も多い[1]
【0005】
高脂血症は病因によって原発性と継発性との二種類に分けられることができる。原発性は、脂質およびリポタンパク質代謝の先天性欠陥(または遺伝性欠陥)およびある環境要素(飲食、栄養、薬物などを含む)によって未知のメカニズムで引き起こされることが多い。継発性は主にある疾患、例えば、糖尿病、肝臓疾患、腎臓疾患、甲状腺疾患、および飲酒、肥満に継発するものである。飲食およびライフスタイルなどの環境要素もその病因である。
【0006】
糖尿病はよく脂質代謝障害と合併するので、糖尿病は「糖脂病」ともいわれる[2]。糖尿病の発症メカニズムは、B細胞の機能障害およびインスリンの抵抗に相関し、慢性高血糖として表れるが、糖代謝障害はよく脂質代謝障害と合併している。糖尿病の脂質代謝障害はすでに心血管疾患の独立した危険因子となっており、主に高トリグリセリド血症、低レベルのHDL、およびLDL濃度の増加として表れている。
【0007】
糖尿病の脂質代謝障害の発生メカニズムはまだ不明であるが、インスリン抵抗がその発生の中心となっていることは多くの証拠により示されている。近年の研究では腸インスリンの抵抗もその中に参与していることが発見された。糖尿病の動物モデルおよび患者に対して研究した結果、脂質代謝と相関するある遺伝子発現の異常がさらにインスリン抵抗を引き起こすことが発見された。糖尿病患者のアテローム性動脈硬化症の発生は様々な要素と関係しているが、血漿脂質レベルの異常は最も主要な要素である。研究によると、糖尿病患者の心血管疾患の発病率および死亡率は非糖尿病患者より明らかに高く、糖尿病はすでに心血管疾患の独立した危険要素となっている[3]
【0008】
近年来、腎臓病と脂質代謝障害との関係はますます注目されてきており、慢性進行性腎損傷に脂質代謝異常が伴われ、高脂血症は腎損傷を促進し厳重化させ、糸球体損傷に介在する他、尿細管間質損傷においても関与する。1913年Munkはまず腎臓病症候群の血脂異常を記述した。70%~10%の腎臓病症候群の患者に高脂血症があるとある学者によって報道された。主に総コレステロール(TC)の明らかな増加、且つ低密度リポタンパク質コレステロールの上昇を主として、トリグリセリド(TG)の軽度の増加として表れ、その中で低密度リポタンパク質(LDL)の上昇は尿蛋白質と一定の相関性を有する[4]。慢性腎機能不全の患者は中程度のトリグリセリド血症を主として、血漿総コレステロールレベルは一般的に正常であり、VLDLC、中程度密度のリポタンパク質コレステロール(IDLC)においてコレステロールが増加している。高密度リポタンパク質コレステロール(HDLC)は減少し、各種のリポタンパク質中のトリグリセリド含有量はいずれも増加している。その根本的な原因は、トリグリセリドの合成と分解代謝に対する尿毒症による環境の悪影響およびコレステロールの逆輸送に対する阻害作用である[5]
【0009】
腎臓移植療法の普及および各種の新型免疫阻害剤(特にCsA、プレドニゾン)の幅広い応用に伴い、慢性腎機能不全(CRF)患者の生存期間は著しく延長されているが、腎臓移植後の高脂血症の発生率は非常に高い。腎臓移植手術後の高脂血症は主に血漿総コレステロール(TC)、トリグリセリド(TG)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDLC)、超低密度リポタンパク質コレステロール(VLDLC)レベルの上昇として表れる[6]
【0010】
脂質代謝障害と糖尿病腎症との間は一定の相関性があることは、臨床研究により実証された。糖尿病患者には脂質代謝障害があり、上昇した脂質は糸球体基底膜に沈着して基底膜の細胞増殖および細胞外間質の生成を刺激する。早くとも1936年に、KimmelstielおよびWilsonは糖尿病腎症患者の腎細動脈、糸球体および腎尿細管内に大量の脂質沈着を見つけた[7]。脂質代謝異常による糸球体および腎尿細管間質の繊維化は、腎機能の進行性損傷を引き起こす要因の一つである[8]
【0011】
脂質代謝障害は肥満症(肥満症候群)をも引き起こし得る。肥満症は単純性と継発性との二種類に分けられる。単純性肥満とは、明らかな内分泌代謝疾患のない肥満を指し、さらに体質性肥満および後天性肥満の二種類に分けられる。体質性肥満は家族歴があり、患者は幼い頃から豊富な食事をして過剰に摂取し、幼い頃から肥満であり、脂肪細胞は増殖肥大を呈する。後天性肥満は栄養過剰および/または体力活動の減少、例えば、中年になってから生活物質の条件の改善、病気からの回復および休養が十分であること、出産後スポーツやトレーニングまたは体力労働を中止したことなどによって引き起こされることは多い。脂肪細胞は肥大に変化し、増殖減少がなく、治療効果はよい。継発性肥満は主に神経内分泌疾患によるものである。神経内分泌は代謝に対して下記の重要な調節作用がある。すなわち、(1)視床下部には食欲を調節する中枢があり、中枢神経系の炎症後遺症、創傷、腫瘍などはいずれも視床下部の機能異常を引き起こして食欲を旺盛にさせて肥満を招く可能性がある。(2)インスリンの分泌が増え、例えば初期の非インスリン依存型糖尿病患者にインスリンを注射し過ぎて、高インスリン血症を引き起こす;膵島B細胞腫は過剰のインスリンを分泌することで、脂肪合成が増加して肥満を引き起こす。(3)下垂体の機能が低下し、特に性腺刺激ホルモンおよび甲状腺刺激ホルモンが減少して性腺および甲状腺の機能低下を引き起こした場合は肥満症となり得る。(4)経産婦または女性用避妊薬を経口服用している者は肥満になり易く、これは、エストロゲンが脂肪合成を促進する作用があることを示唆している。(5)コルチゾン過剰症には中心性肥満症がよく伴われる。(6)甲状腺の機能が減退し、代謝率が低下しているので、脂肪が堆積し、粘液水腫が伴われる。(7)性腺の低下、例えば、脂肪性器性発育不全症候群も肥満を引き起こし得る(脳性脂肪症、フレーリッヒ症候群、外傷や脳炎、下垂体炎、頭蓋咽頭腫などによる視床下部の損傷によるものであり、中心性肥満症として現れ、尿崩症および性的遅熟が伴われる)。
【0012】
脂質代謝障害はよく脂肪肝を引き起こす。脂肪肝は、様々な原因によって引き起こされる肝細胞内の脂肪の過剰な堆積という病変である。肝臓は脂質代謝においてとても重要な役割を果たしており、リポタンパク質を合成することができ、脂質の輸送に役立つとともに、脂肪酸の酸化およびケトン体の形成の主要な場所である。正常時に肝臓の脂質含有量は多くないが、約4%であり、その中は主にリン脂質である。肝臓は適時に脂肪を運び出さないと、脂肪は肝細胞に堆積して脂肪肝となる。
【0013】
脂肪肝が独立した疾患であってもよいが、肥満性脂肪肝、アルコール性脂肪肝、急速体重減少性脂肪肝、栄養不良性脂肪肝、糖尿病脂肪肝、薬物性脂肪肝など、その他の原因によるものであってもよい。
【0014】
テトラサイクリン、副腎皮質ホルモン、ピューロマイシン、シクロヘキシルアミン、エメチンおよびヒ素、鉛、銀、水銀など、一部の薬物または化学毒物はタンパク質の合成を阻害して脂肪肝を引き起こす。また、脂質低下薬はリポタンパク質の代謝を乱して脂肪肝を引き起こすことがある。
【0015】
脂肪肝の危害の一つは、アテローム性動脈硬化症の形成を促進することであり、アテローム性動脈硬化症の原因の一つは、脂肪肝患者には高脂血症が伴われ、血液粘度が増加し、その中低密度リポタンパク質(LDL)は分子量が極めて小さいため、動脈血管内膜を通過して血管壁に沈着しやすく、動脈の弾性を低下させ、管径が狭くなり、靭性が弱くなり、最終的には血液循環障害に至る。脂肪肝のもう一つの危害は、高血圧、冠状動脈性心臓病を誘発したり厳重化させたりして、心筋梗塞を引き起こして急死に至る。脂肪肝の三つ目の危害は、脳症脂肪肝症候群(Reye症候群)である。脂肪肝の四つ目の危害は、肝硬変、肝機能不全、肝癌を引き起こすことである。
【0016】
脂肪肝は肝臓脂質代謝の不調の産物であるとともに、肝臓損傷を厳重化させる致病要素であり、これは互いに因果になり、悪循環的発展である。肝細胞中の脂肪滴が増えて肝細胞脂肪の変性、腫れを引き起こし、細胞核は押出されて中心から離れてしまう。脂肪の代謝は主にコンドリオソームにおいて行われ、細胞外への脂肪の輸送は主に滑面小胞体によって行われ、肝細胞内における脂肪の堆積はさらにコンドリオソームと小胞体の負担を重くさせてその機能を低下させ、さらにその他の栄養素、ホルモン、ビタミンの代謝を影響してしまう。長期的な肝細胞変性は肝細胞の再生障害および壊死を引き起こしてさらに肝臓の繊維化、肝硬変となる。肝硬変に継発して肝細胞癌となる確率は高い。
【0017】
脂肪肝の五つ目の危害は急性妊娠性脂肪肝であり、致死率が高い。この病気は産科急性黄色肝萎縮症ともいわれ、珍しい予後危険な妊娠合併症である。妊娠の最後の3ヶ月に発生するのが多く、臨床的症状は急性重症肝炎とよく類似し、急性肝機能不全、膵臓炎、腎機能不全、全身血液凝固異常症が現れて急速死に至ることがあり、初妊娠の妊婦に発生することが多い。
【0018】
脂肪肝の六つ目の危害は、糖尿病を誘発または厳重化させることである。肥満性脂肪肝患者は血糖濃度が正常レベルを超えると、糖尿病の診断基準には達していないが、一般的に糖尿病前期であると考えられる。脂肪肝と糖尿病は常に相伴って影響し合うので、臨床治療により大きな困難をもたらす。
【0019】
本発明の研究により明らかなように、プラスミノーゲンは、身体組織器官における脂肪の異常沈着を予防および/または低減することができ、例えば、血液、血管壁、内臓器官および器官間の組織内における脂質の異常沈着を予防および低減してこれらの組織器官の機能を改善することができ、さらに脂肪代謝障害およびその関連疾患、ならびにそれに伴う疾患または合併症に全く新しい予防および治療策を提供している。
【発明の概要】
【0020】
本発明は下記項に係る。
【0021】
一つの局面において、本発明は、項1.脂肪肝およびその関連疾患に罹患しているか罹患した疑いがある、または脂肪肝およびその関連疾患に罹患するリスクがある被験者に、予防および/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の脂肪肝およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。
【0022】
また、項2.前記脂肪肝は、肥満性脂肪肝、アルコール性脂肪肝、非アルコール性脂肪肝、急速体重減少性脂肪肝、栄養不良性脂肪肝、糖尿病脂肪肝、薬物性脂肪肝を含む、項1に記載の方法に係る。
【0023】
もう一つの局面において、本発明は、項3.被験者に予防および/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む被験者の脂肪肝およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法であって、前記脂肪肝は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、肥満症、飲酒、薬物治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪肝である、被験者の脂肪肝およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。
【0024】
また、項4.前記脂肪肝は、高血圧、糖尿病、慢性肝炎、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、閉塞性胆管炎、エストロゲン治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪肝である、項3に記載の方法に係る。
【0025】
もう一つの局面において、本発明は、項5.肝臓における脂質沈着およびその関連疾患に罹患しているか罹患した疑いがある、または脂肪肝およびその関連疾患に罹患するリスクがある被験者に、予防および/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肝臓における脂質沈着およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に係るに係る。
【0026】
また、項6.前記肝臓における脂質沈着は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、肥満症、飲酒、薬物治療によって引き起こされるまたはそれに伴われるものである、項5に記載の方法に係る。
【0027】
また、項7.前記肝臓における脂質沈着は、高血圧、糖尿病、慢性肝炎、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、閉塞性胆管炎、薬物治療によって引き起こされるまたはそれに伴われるものである、項6に記載の方法に係る。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、項8.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、アテローム性動脈硬化症の被験者の肝臓における脂質沈着を低減するための方法に係る。
【0029】
もう一つの局面において、本発明は、項9.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、糖尿病の被験者の肝臓における脂質沈着を低減するための方法に係る。
【0030】
もう一つの局面において、本発明は、項10.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、高脂血症の被験者の肝臓における脂質沈着を低減するための方法に係る。
【0031】
また、項11.前記高脂血症は、血清のトリグリセリド(TG)の上昇と、血清の低密度リポタンパク質(LDL)の上昇と、超低密度リポタンパク質(VLDL)の上昇とからなる群より選ばれる一つ以上である、項10に記載の方法に係る。
【0032】
また、項12.前記高脂血症は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、および低高密度リポタンパク質血症を含む、項10または11に記載の方法に係る。
【0033】
また、項13.前記プラスミノーゲンは一種以上のその他の薬物または治療方法と併用することができる、項1~12のいずれか一項に記載の方法に係る。
【0034】
また、項14.前記一種以上のその他の薬物は、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、腎症症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬を含む、項13に記載の方法に係る。
【0035】
また、項15.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンを含む、項14に記載の方法に係る。
【0036】
また、項16.項1~15のいずれか一項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンに係る。
【0037】
もう一つの局面において、本発明は、項17.薬学的に許容される担体および項1~15のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンを含む薬物組成物に係る。
【0038】
もう一つの局面において、本発明は、項18.(i)項1~15のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットに係る。
【0039】
また、項19.前記手段はシリンジまたはバイアルである、項18に記載のキットに係る。
【0040】
また、項20.項1~15のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む、項18または19に記載のキットに係る。
【0041】
もう一つの局面において、本発明は、項21.ラベルを含む容器と、
(i)項1~15のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であって、
前記ラベルは、項1~15のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する、製品に係る。
【0042】
また、項22.その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む、項20に記載のキット、または項21に記載の製品に係る。
【0043】
また、項23.前記一種以上のその他の薬物は、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、腎症症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬を含む、項22に記載の方法に係る。
【0044】
また、項24.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンからなる群より選ばれる一つ以上である、項23に記載のキットまたは製品に係る。
【0045】
また、項25.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0046】
また、項26.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除および/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0047】
また、項27.前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0048】
また、項28.前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0049】
また、項29.前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0050】
また、項30.前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0051】
また、項31.前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0052】
また、項32.前記プラスミノーゲンは、ヒト由来の天然プラスミノーゲンである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0053】
また、項33.前記被験者はヒトである、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0054】
また、項34.前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している、項1~15のいずれか1項に記載の方法または項16に記載のプラスミノーゲン、項17に記載の薬物組成物、項19~20、22~24のいずれか一項に記載のキットまたは項21~24のいずれか一項に記載の製品に係る。
【0055】
また、項35.前記不足または欠乏は、先天的、継発的および/または局所的である、項34に記載の方法、プラスミノーゲン、薬物組成物、キットまたは製品に係る。
【0056】
本発明はさらに、項1~15のいずれか1項に記載の方法を実施するためのプラスミノーゲンの用途に係る。
【0057】
本発明はさらに、項1~15のいずれか1項に記載の方法に用いられる薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。
【0058】
本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患を予防および/または治療することに係る。
【0059】
一つの局面において、本発明は、脂肪代謝障害に罹患しやすい、脂肪代謝障害に罹患している、またはその他の疾患に罹患しているとともに脂肪代謝障害が伴われる被験者に、予防および/または治療に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害およびその関連疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0060】
一部の実施形態において、前記脂肪代謝障害は、内分泌障害疾患、糖代謝疾患、肝臓疾患、腎臓疾患、心血管疾患、腸疾患、甲状腺疾患、胆嚢または胆道疾患、肥満症、飲酒、薬物治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪代謝障害である。一部の実施形態において、前記脂肪代謝障害は、高血圧、糖尿病、慢性肝炎、肝硬変、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、閉塞性胆管炎、薬物またはホルモン治療によって引き起こされるまたはそれに伴われる脂肪代謝障害である。一部の実施形態において、前記脂肪代謝障害は、高脂血症、高リポタンパク血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、肥満症、臓器脂肪沈着である。もう一部の実施形態において、前記アテローム性動脈硬化症は、アテローム性大動脈硬化症、冠状動脈アテローム性硬化症、脳動脈アテローム性硬化症、腎動脈アテローム性硬化症、肝動脈アテローム性硬化症、腸間膜動脈アテローム性硬化症、下肢アテローム性動脈硬化症を含む。
【0061】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着を予防および/または低減するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着の予防および/または低減におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着を予防および/または低減するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着の予防および/または低減に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着を予防および/または低減するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0062】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着による疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の身体の組織器官における異常な脂肪沈着による疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0063】
一部の実施形態において、前記身体の組織器官における異常な脂肪沈着とは、血液、皮下組織、血管壁、臓器における異常な脂肪沈着のことである。一部の実施形態において、前記身体の組織器官における異常な脂肪沈着による疾患は、肥満症、高脂血症、高リポタンパク血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、脂質性心臓損傷、脂質性腎損傷、脂質性膵島損傷を含む。
【0064】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の脂肪代謝障害による疾患を予防および/または治療する方法に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の脂肪代謝障害による疾患の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の脂肪代謝障害による疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。一部の実施形態において、前記疾患は、肥満症、高脂血症、高リポタンパク血症、脂肪肝、アテローム性動脈硬化症、脂質性心臓損傷、脂質性腎損傷を含む。
【0065】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、異常な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための方法に係る。本発明はさらに、異常な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患の治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、異常な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、異常な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患の治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、異常な脂肪沈着を低減することによって被験者の疾患を治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0066】
一部の実施形態において、前記疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、脂肪肝、肝硬変、脳虚血、脳梗塞、腎機能不全、腎臓病症候群、腎機能不全、肥満症を含む。
【0067】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の組織器官の脂質性損傷の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の組織器官の脂質性損傷を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0068】
一部の実施形態において、前記組織器官は、動脈管壁、心臓、肝臓、腎臓、膵臓を含む。
【0069】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高脂血症を改善するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症の改善におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高脂血症の改善に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0070】
一部の実施形態において、前記高脂血症は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、および低高密度リポタンパク質血症からなる群より選ばれる一つ以上である。
【0071】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための方法に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクの低下におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクの低下に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させるための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0072】
一部の実施形態において、前記被験者は、高血圧、肥満症、糖尿病、慢性肝炎、肝硬変、腎損傷、慢性糸球体腎炎、慢性腎盂腎炎、腎病症候群、腎機能不全、腎移植、尿毒症、甲状腺機能低下、閉塞性胆嚢炎、または閉塞性胆管炎に罹患している、または前記被験者は、脂肪代謝に影響する薬物またはホルモンを服用している。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、血の総コレステロールレベルを低下させることと、トリグリセリドレベルを低下させることと、低密度リポタンパク質レベルを低下させることと、高密度リポタンパク質レベルを上昇させることとからなる群より選ばれる一つ以上によって被験者のアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させる。
【0073】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療することにおけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療することに使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高脂血症を改善することによって疾患を治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。
【0074】
一部の実施形態において、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含む。
【0075】
もう一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患の予防および/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための薬物、薬物組成物、製品、キットの製造におけるプラスミノーゲンの用途に係る。さらに、本発明は、被験者の高血脂の関連疾患の予防および/または治療に使用されるプラスミノーゲンに係る。本発明はさらに、被験者の高血脂の関連疾患を予防および/または治療するための、プラスミノーゲンを含む薬物、薬物組成物、製品、キットに係る。一部の実施形態において、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含む。
【0076】
本発明の上記いずれか一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは、一種以上のその他の薬物または治療方法と併用することができる。一部の実施形態において、前記一種以上のその他の薬物は、高血圧の治療薬、糖尿病の治療薬、アテローム性動脈硬化症の治療薬、慢性糸球体腎炎の治療薬、慢性腎盂腎炎の治療薬、腎臓病症候群の治療薬、腎機能不全の治療薬、尿毒症の治療薬、腎移植の治療薬、脂肪肝の治療薬、肝硬変の治療薬、肥満症の治療薬を含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンを含む。一部更なる実施形態において、前記薬物は、スタチン系、フィブラート系、ニコチン酸、コレスチラミン、クロフィブラート、益壽寧や血脂平や心脈楽のような不飽和脂肪酸、硫酸多糖類(Poly Saccharide Sulphate、Alginic Sodium Diester)のような脂質低下薬;アスピリン、ペルサンチン、クロピドグレル、シロスタのような抗血小板薬;ヒドララジン、ニトログリセリン、硝酸イソソルビド、ニトロプルシドナトリウム、プラゾシンのようなα1受容体遮断薬、フェントラミンのようなα受容体遮断薬、サルブタモールのようなβ2受容体刺激薬、カプトプリル、エナラプリル、ニフェジピン、ジルチアゼム、サルブタモール酸、ミノキシジル、プロスタグランジン、カルジオナトリンのような血管拡張薬;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性化剤、単鎖ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化剤、TNK-組織型プラスミノーゲン活性化剤のような血栓溶解薬;ヘパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、ビバリルジンのような抗凝固薬を含む。
【0077】
本発明の上記いずれか一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除および/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。
【0078】
一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は2、6、8、10または12に示される通りである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンである。
【0079】
一部の実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。一部の実施形態において、前記不足または欠乏は、先天的、継発的および/または局所的である。
【0080】
一部の実施形態において、前記薬物組成物は、薬学的に許容される担体および前記方法に使用されるプラスミノーゲンを含む。一部の実施形態において、前記キットは、(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットであってもよい。一部の実施形態において、前記手段はシリンジまたはバイアルである。一部の実施形態において、前記キットは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0081】
一部の実施形態において、前記製品は、ラベルを含む容器と;(i)前記方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であり、前記ラベルは、前記いずれかの方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する。
【0082】
一部の実施形態において、前記キットまたは製品は、その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗感染薬、抗ウイルス薬、免疫調節薬、炎症調節薬、抗腫瘍薬、ホルモン薬、チロキシンからなる群より選ばれる。
【0083】
前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは全身または局所投与により投与され、好ましくは、静脈内、筋肉内、皮下という経路により投与される。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは適切なポリペプチド担体または安定化剤と組み合わせて投与する。前記方法の一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは毎日0.0001~2000mg/kg、0.001~800mg/kg、0.01~600mg/kg、0.1~400mg/kg、1~200mg/kg、1~100mg/kg、10~100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001~2000mg/cm、0.001~800mg/cm、0.01~600mg/cm、0.1~400mg/cm、1~200mg/cm、1~100mg/cm、10~100mg/cm(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは少なくとも毎日投与する。
【0084】
本発明は、本発明に係る実施形態どうしの技術的特徴のすべての組み合わせを明確にカバーし、且つこれらの組み合わせた技術構成は前記実施形態が単独且つ明確に開示されているように、本出願で明確に開示されている。また、本発明はさらに各実施形態および要素のすべてのサブの組み合わせを明確にカバーし、この組み合わせた技術構成は本明細書中において明確に開示されている。
定義
【0085】
本発明に記載された「脂肪代謝障害」は「脂肪代謝異常」、「脂肪代謝乱れ」ともいわれ、脂肪代謝が異常を起こし、乱れ、あるいは障害されて引き起こされる臨床または病理的表現の総称である。本文において、「脂肪代謝障害」、「脂肪代謝異常」、「脂肪代謝乱れ」は互いに置き換えて使用することができる。本発明において、「脂肪代謝」、「脂代謝」、「脂質代謝」は互いに置き換えて使用することができる。
【0086】
「脂肪代謝障害の関連疾患」は、脂肪代謝障害に相関する疾患の総称である。前記相関は、病因の相関、発症メカニズムの相関、病理的表現の相関、臨床症状の相関、および/または治療原則の相関であってもよい。
【0087】
「血脂」は、トリグリセリド、コレステロール、およびリン脂質などの総称であり、リポタンパク質は、アポリポタンパク質と血脂とからなる球状高分子複合体であり、リポタンパク質が含むコレステロール、トリグリセリドの成分の違いおよび密度によって、カイロミクロン(CM)、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)の5種類に分けられている。血脂危険レベルによって、臨床で最もよく見られる異常なリポタンパク質血症の類型として、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症、低高密度リポタンパク質血症が挙げられる。継発性血脂は、糖尿病、甲状腺機能低下、腎臓病症候群、腎移植、重篤肝臓病、閉塞性胆道疾患、肥満症、飲酒、エストロゲン治療などのような薬物治療によく見られており、継発性血脂を排除できれば、原発性血脂異常であることは考えられる。
【0088】
「高血脂」は、血漿におけるコレステロール、トリグリセリド、リン脂質、および脂質化していない脂肪酸など、血脂成分が増加する病理的状況を指す。
【0089】
「高血脂の関連疾患」とは、病因、発症メカニズム、病理的表現、臨床症状、および/または治療原則が高血脂と相関する疾患のことである。好ましくは、前記疾患は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心臓病、狭心症、心筋梗塞、不整脈、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、脳循環不全、脳虚血、脳梗塞、慢性腎炎、慢性腎盂腎炎、腎機能不全、腎臓病症候群、尿毒症、肥満症を含むが、これらに限られていない。
【0090】
脂肪代謝または運転異常による血漿における一種以上の脂質異常は、「高脂血症」、「高血脂症」、または「血脂異常」(dyslipidemia)と称される。
【0091】
脂質は水に溶けない、または微量に溶けるので、タンパク質と結合してリポタンパク質の形でしか血液循環において運送できないため、高脂血症はよく「高リポタンパク血症」を反映している。
【0092】
本発明の「高血脂の関連疾患」は、「高脂血症の関連疾患」、「高リポタンパク血症の関連疾患」とも言われる。
【0093】
「脂肪肝」は、様々な原因によって引き起こされる肝細胞内の脂肪の過剰な堆積という病変であり、独立した疾患であってもよいが、肥満性脂肪肝、アルコール性脂肪肝、急速体重減少性脂肪肝、栄養不良性脂肪肝、糖尿病脂肪肝、薬物性脂肪肝など、その他の原因によるものであってもよい。
【0094】
脂肪肝の場合、肝細胞中の脂肪滴が増えて肝細胞脂肪の変性、腫れを引き起こし、細胞核は押出されて中心から離れてしまう。脂肪の代謝は主にコンドリオソームにおいて行われ、細胞外への脂肪の輸送は主に滑面小胞体によって行われ、肝細胞内における脂肪の堆積はさらにコンドリオソームと小胞体の負担を重くさせてその機能を低下させ、さらにその他の栄養素、ホルモン、ビタミンの代謝を影響してしまう。長期的な肝細胞変性は肝細胞の再生障害および壊死を引き起こしてさらに肝臓の繊維化、肝硬変となる。
【0095】
「アテローム性動脈硬化症」は慢性的、進行性動脈疾患であり、発症時動脈に堆積した脂肪の一部またはすべては血流を塞ぐ。本来は滑らかで堅固な動脈内膜が粗くなって厚くなり、しかも脂肪、フィブリン、カルシウムおよび細胞破片により詰まられると、アテローム性動脈硬化症が現れる。アテローム性動脈硬化は進行性過程である。血液中の脂質濃度が大きくなると、動脈壁に沿って脂肪線条を形成する。これらの脂肪線条は脂肪およびコレステロールの沈着をもたらし、これらの沈殿物は元々滑らかな動脈内膜上に付着して小節を形成する。これらの小節の下に続いて繊維化した瘢痕組織が生じてカルシウム沈着が引き起こされる。沈着したカルシウムはだんだん除去できない白亜質の硬い薄膜(アテローム性プラークという)に変化する。動脈内部のこの永久の薄膜は、動脈の正常な拡張および収縮を阻害し、動脈内の血流速度を緩め、血ぺいを形成しやすく、動脈を通る血液の流れを阻害または阻止することになる。
【0096】
アテローム性動脈硬化症の確実な原因はまだ確定されていないが、高脂血症、高血圧、喫煙歴、アテローム性動脈硬化症の家族歴(60歳前にこの疾患を罹患した)あり、または糖尿病という重要な致病要素はすでに発見された。高脂血症は脂肪線条の形成を促進できる。高血圧は動脈に一定の力を与え、動脈閉塞および硬化過程を加速するので、アテローム性動脈硬化症の罹患率を増加させることができる。喫煙は動脈の収縮を引き起こして血液の流動を制限し得るので、動脈閉塞になる条件を作った。糖尿病も、特にとても小さい動脈に対してアテローム性動脈硬化症の発生を促し得る。
【0097】
アテローム性動脈硬化症のみについていえば、何の症状も感じられない。体内のある重要な器官とつながっている動脈が塞がれた後しか、この疾患が発見されることができない。これは、該器官における動脈が塞がれて引き起こされる症状が目立つからである。例えば、心臓の供血動脈の部分は塞がれると、狭心症が感じられるが、完全にふさがれると、心臓病を引き起こす可能性がある(塞がれた動脈により供血される心臓組織が死亡した)。アテローム性動脈硬化症は脳部動脈を影響すると、めまいや視線のかすみや気絶が感じられ、甚だしきに至っては卒中(塞がれた動脈により供血される脳組織が死亡し、神経損傷を引き起こす;例えば、死亡した脳組織により制御される四肢体幹が麻痺状態になる)を引き起こす可能性がある。腎臓部への動脈が塞がれると、腎不全を引き起こす可能性がある。眼部への血管が塞がれると失明するおそれがある。四肢動脈が塞がれると、各四肢体幹の病変を引き起こす可能性がある。
【0098】
アテローム性動脈硬化症は、冠状動脈性心臓病、脳梗塞、末梢血管疾患の主因である。脂質代謝障害はアテローム性動脈硬化症の病変基礎であり、その特徴として、係る動脈の病変は内膜から始まり、一般的にはまず脂質および複合糖類が蓄積され、出血して血栓が形成され、さらに繊維組織が増殖してカルシウム質が沈着し、しかも動脈中間層の段階的な変質および石灰化があり、動脈壁が厚くなり硬くなり、血管腔が狭くなる。病変はよく大中筋性動脈に係り、一旦発展すると動脈腔を塞ぐまでに至り、該動脈により供給される組織または器官は虚血または壊死することになる。
【0099】
アテローム性動脈硬化症は全身性疾患であり、一つの器官の血管にアテローム性動脈硬化症が発生すると、その他の箇所の血管にも同じ病変が存在することを意味する。同様に、一つの器官に血管の事情があると、その他の箇所に血管の事情が生じる危険性が増えることを意味する。
[発明の詳細な説明]
【0100】
プラスミンはプラスミノーゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニンおよびプロテオグリカンを含む[9]。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である[10、11]。プラスミンはプラスミノーゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノーゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノーゲンは血漿および他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成および活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳密な制御を受け、例えばホルモン、成長因子およびサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAとのプラスミノーゲン活性剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある[12、13]
【0101】
プラスミノーゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである[14、15]。プラスミノーゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノーゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノーゲンは組織および体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である[16、17]。プラスミノーゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノーゲン(Glu-plasminogen)およびリジン-プラスミノーゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌されかつ分解していない形のプラスミノーゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノーゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノーゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノーゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノーゲンと比較して、リジン-プラスミノーゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノーゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPAまたはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす[18]。プラスミノーゲンのアミノ基末端部分は五つの相同性三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノーゲンとフィブリンおよびその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンジオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノーゲンから生成される。
【0102】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理学的血栓の形成を予防するキーポイントである[19]。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカンおよびゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している[15、20、21]。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3およびMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である可能性がある[22]。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する[23-25]。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0103】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物およびD-二量体に加水分解する。
【0104】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドのヒト由来の天然プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメインおよび5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、Papは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0105】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。δ-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1およびセリンプロテアーゼドメインしか含有せず[26、27]、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり[27]、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5およびセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノーゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており[28]、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し[29]、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0106】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」とは互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」とは互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0107】
本願において、プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0108】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲンおよびプラスミンをカバーするものである。
【0109】
循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物およびD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPApドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体および基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレインおよび血液凝固因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0110】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とはプラスミノーゲンタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノーゲンの技術構成に係り、プラスミノーゲン活性フラグメントでプラスミノーゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノーゲンは該プラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノーゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0111】
現在、血液中のプラスミノーゲンおよびその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象(被験者)の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のプラスミノーゲンはSKの作用下においてプラスミンとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例の関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0112】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0113】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーションおよび機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、塩基性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジンおよびリジンは親水性の塩基性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0114】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離および/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0115】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされたおよび非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、および修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しないか)を含む融合物;等々である。
【0116】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要に応じてギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0117】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、と、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0118】
そのうちXは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのAおよびBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0119】
本文において使用されているように、用語の「治療」および「処理」は期待される薬理および/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、および/または疾患および/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;および(c)疾患および/またはその症状を減軽し、即ち疾患および/またはその症状を減退させること。
【0120】
用語の「個体」、「被験者」および「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0121】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防および/または治療を実現できるプラスミノーゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン、治療しようとする被験者の疾患および/または症状の重症度および年齢、体重などに従って変化するものである。
【0122】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離および精製されるものでもよく、標準的な化学ペプチド合成技術によって合成するものでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmocおよびBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:BaranyおよびSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);およびGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10およびCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0123】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメントおよび転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現とプラスミノーゲンの収集および精製とに適した条件下において宿主を維持する。
【0124】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0125】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)およびその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、および各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写および翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列を有してもよい。
【0126】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))およびピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列などを含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよびその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターはアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、およびマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0127】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノーゲンの発現および生成に用いることができる(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、および形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、およびエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、および必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、および転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウィルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0128】
一旦合成(化学または組み換え的に)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0129】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと必要に応じた薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington′s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))とを混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量および濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩およびその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖およびその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);および/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0130】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0131】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子およびナノカプセル)中に入れ、または粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセルおよびポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington′s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0132】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥および再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0133】
本発明のプラスミノーゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸との共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体およびリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、およびポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチルおよび乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するのであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、および特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0134】
投与および使用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0135】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液および乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水および緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガ―デキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体および栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤およびその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなども存在してもよい。
【0136】
医療関係者は各種臨床的要素により用量案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数および経路、全体の健康度、および同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)とすることができる。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた任意のスケジュール表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量のスケジュール表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果および安全性はリアルタイムに評価すべきである。
【0137】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病によって引き起こされる心血管疾患およびその関連疾患を治療するための本発明のプラスミノーゲンまたはプラスミンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる心血管疾患およびその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液およびグルコース溶液を含む。さらには商業および使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針および注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物および疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1図1は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の肝臓のオイルレッドO染色写真である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの肝臓における脂質沈着面積は溶媒PBS投与対照群より有意に小さく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの肝臓における脂肪沈着を減少させることができることを示している。
図2図2はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の肝臓のオイルレッドO染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を減少させることができることを示している。
図3図3は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の肝臓のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかも定量分析の差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を改善できることを示している。
図4図4は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。AおよびCは溶媒PBS投与対照群であり、BおよびDはプラスミノーゲン投与群であり、Eは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂肪沈着を改善できることを示している。
図5図5は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のHE染色の代表的写真を示すものである。AおよびCは溶媒PBS投与対照群であり、BおよびDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の大動脈管壁には泡沫細胞沈着が見られ(矢印に示される)、プラークの沈着が深刻である;プラスミノーゲン投与群の大動脈管壁には軽度の泡沫細胞沈着のみが見られ、しかも内膜下には明らかなアテローム性プラーク沈着が見られず、プラスミノーゲン投与群の大動脈の損傷が軽い。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞内壁の、脂質沈着による損傷を改善できることを示している。
図6図6は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓フィブリンの免疫組織化学染色の写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心臓フィブリンの陽性発現は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症による心臓損傷を減少させることができることを示している。
図7図7は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のIgM免疫染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心臓IgMの陽性発現は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが高脂血症による心臓損傷を軽減できることを示している。
図8図8は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのコラーゲンの沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓繊維化を軽減できることを示している。
図9図9は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清の心筋トロポニンの検出結果を示すものである。その結果、溶媒PBS投与対照群の血清の心筋トロポニン濃度はプラスミノーゲン投与群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症による心臓損傷を明らかに修復できることを示している。
図10図10はプラスミノーゲンをそれぞれ10日および20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清の高密度リポタンパク質コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲンを投与した後のプラスミノーゲン投与群マウスのHDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも両者は10日および20日投与した後の高密度リポタンパク質濃度の差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレステロールの含有量を効果的に高め、高脂血症モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
図11図11はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清の総コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における総コレステロールの含有量を低下させることができ、血脂を降下する機能を有することを示している。
図12図12はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清の低密度リポタンパク質コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールの含有量を低減することができ、高血脂を改善する機能を有することを示している。
図13図13はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清のアテローム性動脈硬化指数の検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを効果的に低下させることができることを示している。
図14図14はプラスミノーゲンを20日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清の心臓リスク指数の結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群のCRIは溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、しかもその差が統計学的にとても有意である(**は、P<0.01を表す)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓疾患の発症リスクを効果的に低減できることを示している。
図15図15は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の大動脈洞のHE染色写真である。AおよびCは溶媒PBS投与対照群であり、BおよびDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の血管管壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に示される)、中間層弾性膜の配列が乱れ、血管壁が厚くなり、管壁は凹凸して不均一である;プラスミノーゲン投与群の中間層弾性膜の構造は規則し、波状を呈し、血管管壁の厚さは均一である。これは、プラスミノーゲンが糖尿病による大動脈損傷に対して一定の修復作用を有することを示している。
図16図16は26週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の心室のオイルレッドO染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心室における脂質沈着(矢印に示される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を減少させ、心室損傷の修復を促進することができることを示している。
図17図17は26週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の血清中の高密度リポタンパク質コレステロール含有量の検出結果を示すものである。その結果、糖尿病マウスにヒトプラスミノーゲンを35日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清中のHDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より高く、しかもその差が統計学的に有意である。これは、プラスミノーゲンが血清における高密度リポタンパク質コレステロールの含有量の上昇を促進し、糖尿病マウスの血脂障害を改善できることを示している。
図18図18は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の血清中の低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)含有量の検出結果を示すものである。その結果、糖尿病モデルマウスにヒトプラスミノーゲンを31日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清中のLDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より低く、しかもその差が統計学的に有意に近い(P=0.1)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロール含有量を低減できることを示している。
図19図19はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清総コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清における総コレステロールの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
図20図20はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清のトリグリセリドの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのトリグリセリド濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清におけるトリグリセリドの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
図21図21はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の血清の低密度リポタンパク質コレステロールの検出結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールの含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化モデルマウスの血脂障害を改善できることを示している。
図22図22はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のオイルレッドO染色の代表的写真を示すものである。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化モデルマウスの大動脈洞における脂肪沈着を改善できることを示している。
図23図23は16週齢の高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のシリウスレッド染色の代表的写真である。AおよびCは溶媒PBS投与対照群であり、BおよびDはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群の大動脈洞の血管内壁におけるコラーゲンの沈着(矢印に示される)面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを低減できることを示している。
図24図24はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心係数の統計結果を示すものである。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心臓臓器係数(心係数)は溶媒PBS投与対照群より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの心臓損傷による心臓代償性肥大を改善できることを示している。
図25図25はプラスミノーゲンを30日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓のシリウスレッド染色の観察結果を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群の腎臓におけるコラーゲンの沈着(矢印に示される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である;プラスミノーゲン投与群の繊維化は基本的に正常レベルに回復した。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を効果的に軽減できることを示している。
図26図26はプラスミノーゲンを30日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓のオイルレッドO染色の観察結果を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの腎脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である。また、プラスミノーゲン投与群の脂質沈着レベルはブランク対照群マウスに似ている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの腎臓における脂肪の沈着を低減でき、それによって脂肪沈着による腎損傷を減少させることができることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0139】
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの肝臓における脂質沈着を改善することに関するものである。
24~25週齢のオスdb/dbマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群とで、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測り群分けした。1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し始めた。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、35日間連続に投与した。36日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図1B)マウスの肝臓における脂肪沈着面積は溶媒PBS投与対照群(図1A)より明らかに小さく、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.02)(図1C)。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの肝臓における脂肪の沈着を低減できることを示している。
【0140】
[実施例2]
実施例2は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの肝臓における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症を誘発した[40,41]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。31日目にマウスを殺処分して肝臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図2B)マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(図2A)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(P=0.02)(図2C)。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの肝臓における脂肪の沈着を低減できることを示している。
【0141】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して肝臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
オイルレッドO染色は、脂質沈着を表し、脂質沈着の程度を反映することができる[34]。その結果、プラスミノーゲン投与群(図3B)マウスの肝臓における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(図3A)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(図3C)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの肝臓における脂肪の沈着を低減できることを示している。
【0142】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂質沈着を低減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、大動脈洞の凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で40倍(図4A、4B)、200倍(図4C、4D)にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図4B、4D)マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(図4A、4C)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(図4E)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞における脂質沈着を低減できることを示している。
【0143】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの大動脈洞損傷を改善することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。大動脈洞の組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリンおよびエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で40倍(図5A、B)、200倍(図5C、D)にて観察した。
その結果、溶媒PBS投与対照群(図3A、C)の大動脈洞内壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に示される)、プラークの沈着が深刻である;プラスミノーゲン投与群(図3B、D)の大動脈洞内壁には軽度の泡沫細胞沈着のみが見られ、しかも内膜下には明らかなアテローム性プラーク沈着が見られず、プラスミノーゲン投与群の大動脈洞内壁の損傷が軽い。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞内壁の損傷を改善できることを示している。
【0144】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの心臓フィブリンの発現を低減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗った。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、水で2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、水で2回洗い、毎回5分間であった。ウサギ抗マウスフィブリン抗体(Abcam)を滴加して4℃で終夜インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒複染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
フィブリノーゲンはフィブリンの前駆体であり、組織に損傷が存在する状況下において、生体の損傷に対する応答反応として、フィブリノーゲンはフィブリンに加水分解されて損傷部位に沈着する[35,36]。そのため、損傷局所のフィブリンのレベルを損傷程度の一つの指標とすることができる。
免疫組織化学染色の結果、プラスミノーゲン投与群マウス(図6B)の心臓フィブリンの陽性発現は溶媒PBS投与対照群(図6A)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(図6C)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症による心筋損傷を減少させることができることを示している。
【0145】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの心筋損傷を効果的に保護することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗った。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、水で2回洗い、毎回5分間であった。5%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で30分間ブロッキングした;時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、水で2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗マウスIgM(HRP)抗体(Abcam)を室温で1時間インキュベーションし、PBSで2回洗い、毎回5分間であった。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで核を30秒染色して、流水で5分間流した。アルコールで段階的に脱水させてキシレンで透徹にし、中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
IgM抗体は、アポトーシス細胞および壊死細胞の排除において重要な役割を果たし、損傷した組織器官の局所IgM抗体のレベルは、損傷の程度と正比例に相関している[37,38]。よって、検出した組織器官の局所IgM抗体のレベルは該組織器官の損傷程度を反映することができる。
免疫染色の結果、プラスミノーゲン投与群マウス(図7B)の心臓IgM陽性発現は、溶媒PBS投与対照群(図7A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデル動物の心臓損傷を減少させることができることを示している。
【0146】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの心臓繊維化を軽減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
シリウスレッド染色は、コラーゲンを長期的に染色することができ、病理学的切片の特殊染色法として、シリウスレッド染色はコラーゲン組織を特異的に表示することができる。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図8B)のコラーゲン沈着は溶媒PBS投与対照群(図8A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓組織におけるコラーゲンの沈着を低減し、心筋の繊維化を軽減できることを示している。
【0147】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの心筋損傷を修復することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、30日目に投与した後マウスを禁食し、マウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、心筋トロポニン(Cardiac troponin I,CTNI)検出キット(南京建成)を用いて血清における心筋トロポニン濃度を測定した。
心筋トロポニンIは、心筋損傷の重要な指標であり、その血清における濃度は、心筋損傷の程度を反映することができる[39]
測定した結果、溶媒PBS投与対照群の血清における心筋トロポニン濃度はプラスミノーゲン投与群より明らかに高く、しかもその差が統計学的に有意である(図9)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓損傷を有意に改善できることを示している。
【0148】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレステロール濃度を高めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。10日目、20日目にマウスを16時間禁食した後、11日目、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、血清の高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)を測定した。本文では、高密度リポタンパク質コレステロール含有量を、検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)に記載の方法で測定した。
高密度リポタンパク質はアテローム性動脈硬化症を防ぐ血漿リポタンパク質であり、冠状動脈性心臓病の保護因子であり、いわゆる「血管清掃者」である。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに高く、しかも両者は10日と20日投与した後のHDL-C濃度の差が統計学的に有意である(図10)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における高密度リポタンパク質コレステロール含有量を高め、高脂血症マウスの血脂障害を改善できることを示している。
【0149】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清における総コレステロールレベルを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。20日目にマウスを16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロールを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図11)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における総コレステロール含有量を低めることができることを示している。
【0150】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールレベルを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、20日間投与した。20日目にマウスを16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)を測定した。
低密度リポタンパク質はコレステロールを末梢組織細胞に運ぶリポタンパク質粒子であり、酸化低密度リポタンパク質に酸化されることができる。低密度リポタンパク質、特に酸化修飾された低密度リポタンパク質(OX-LDL)が過剰になると、それにより運ばれるコレステロールは動脈壁上に蓄積して動脈硬化を誘発してしまう。そのため、低密度リポタンパク質コレステロールは「悪いコレステロール」と呼ばれる。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの(LDL-C)濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(図12)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの血清における低密度ポリタンパク質コレステロール含有量を低め、高脂血症マウスの血脂障害を改善できることを示している。
【0151】
[実施例13]
実施例13は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症の形成リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投薬した後マウスを禁食し、16時間禁食した後、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定し、高密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)含有量を測定した。
アテローム性動脈硬化指数は、臨床上でアテローム性動脈硬化症を予測するための総合的指標であり、それが冠状動脈性心臓病のリスクを見積もる面における臨床的意義は、総コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質、および低密度リポタンパク質のいずれか一つより大きいと考えられている[40]。アテローム性動脈硬化指数=(T-CHO-HDL-C)/HDL-C。
計算した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのアテローム性動脈硬化指数は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的にとても有意である(図13)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスのアテローム性動脈硬化症のリスクを低下させることができることを示している。
【0152】
[実施例14]
実施例14は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの心臓発症リスクを低めることに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)を測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。20日目に投与した後、マウスを16時間禁食し、21日目に眼窩静脈叢から50μL採血して遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロール含有量を測定した。高密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて高密度リポタンパク質コレステロール含有量を測定した。心臓リスク指数=T-CHO/HDL-C。
心臓リスク指数(cardiac risk index,CRI)は、血脂障害によって心臓疾患が誘発されるリスクを評価するためのものである[38]
その結果、プラスミノーゲン投与群のCRIは溶媒PBS投与対照群より明らかに小さく、しかもその差が統計学的にとても有意である(図14)。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓疾患の発症リスクを低めることができることを示している。
【0153】
[実施例15]
実施例15は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの大動脈管壁の損傷を軽減することに関するものである。
24~25週齢のオスdb/dbマウス10匹を取り、実験開始当日を0日目として体重を測り、体重によってランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群とで、各群5匹ずつとした。1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。32日目にマウスを殺処分して大動脈を取り、10%中性ホルマリン固定液において24時間固定を行った。固定後の大動脈をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは5μmであり、切片を脱パラフィンさせ、さらに浸水してヘマトキシリンおよびエオシンで染色(HE染色)させ、1%塩酸エタノールで分別させ、アンモニア水でブルーイングさせ、さらにアルコールで段階的に脱水させて封入させ、切片を光学顕微鏡下で400倍(図15A、B)、1000倍(図15C、D)にて油浸対物レンズで観察した。
糖尿病合併高血脂は、よく見られる糖尿病の合併症であり、糖尿病大血管病変の重要な危険因子である[39]
染色の結果、溶媒PBS投与対照群(図15A、C)の血管管壁には泡沫細胞沈着があり(矢印に示される)、中間層弾性膜の配列が乱れ、血管壁が厚くなり、管壁は凹凸して不均一である;プラスミノーゲン投与群(図15B、D)の中間層弾性膜の構造は規則し、波状を呈し、血管管壁の厚さは均一である。これは、プラスミノーゲン注射が糖尿病マウスの大動脈管壁における脂質沈着を低減でき、動脈管壁における脂質沈着による損傷に対して一定の保護作用を有することを示している。
【0154】
[実施例16]
実施例16は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂質沈着を低減することに関するものである。
26週齢のオスdb/dbマウス9匹を取ってランダムに群分けし、プラスミノーゲン投与群で4匹と溶媒PBS投与対照群で5匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、35日投与した。36日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウス(図16B)の心室における脂質沈着(矢印に示される)は溶媒PBS投与対照群(図16A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心室における脂肪の沈着を低減し、心室損傷の修復を促進できることを示している。
【0155】
[実施例17]
実施例17は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における高密度リポタンパク質コレステロールレベルを高めることに関するものである。
26週齢のオスdb/dbマウス20匹を取ってランダムに群分けをし、プラスミノーゲン投与群で11匹と溶媒PBS投与対照群で9匹とした。実験開始当日を0日目として体重を測って群に分け、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、35日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。36日目にマウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、高密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A112-1)を用いて血清における高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)濃度を測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるHDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より高く、しかもその差が統計学的に有意である(図17)。これは、プラスミノーゲン注射が血清における高密度リポタンパク質コレステロール含有量の上昇を促進し、糖尿病の血脂障害を改善できることを示している。
【0156】
[実施例18]
実施例18は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロールレベルを低めることに関するものである。
24~25週齢のオスdb/dbマウス10匹を取ってランダムに群分けし、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群とで各5匹ずつとし、さらにdb/m3匹を取って正常対照群とした。実験開始当日を0日目として体重を測って群分けをし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日間投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、正常対照群マウスに対して何の処置もしなかった。32日目にマウスの眼球を摘出して全血を採血し、4℃で3500r/分で10分間遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いて血清における低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)濃度を測定した。
その結果、糖尿病モデルマウスにヒトプラスミノーゲンを31日間連続して注射した後、プラスミノーゲン投与群マウスの血清におけるLDL-C含有量は溶媒PBS投与対照群より低く、しかもその差が統計学的に有意に近い(P=0.1)(図18)。これは、プラスミノーゲンが血清におけるLDL-C含有量を低減できることを示している。
【0157】
[実施例19]
実施例19は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清の総コレステロール含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[30,31]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、総コレステロール検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A111-1)を用いて総コレステロールを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスの総コレステロール濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.014)(図19)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における総コレステロール含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0158】
[実施例20]
実施例20は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清のトリグリセリド含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[30,31]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群とで6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、トリグリセリド検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A110-1)を用いてトリグリセリドを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのトリグリセリド濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.013)(図20)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清におけるトリグリセリド含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0159】
[実施例21]
実施例21は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの血清の低密度リポタンパク質コレステロール含有量を低めることに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[30,31]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。30日目にマウスを16時間禁食し、31日目に眼球を摘出して採血し、遠心分離して上澄み液を取り、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)検出キット(南京建成生物工程研究所、品目番号A113-1)を用いてLDL-Cを測定した。
測定した結果、プラスミノーゲン投与群マウスのLDL-C濃度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(P=0.017)(図21)。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの血清における低密度リポタンパク質コレステロール含有量を低下させ、アテローム性動脈硬化症の血脂障害を改善できることを示している。
【0160】
[実施例22]
実施例22は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの大動脈洞における脂質沈着を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化症モデルを誘発した[30,31]。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、30日間投与した。31日目にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で40倍にて観察した。
染色の結果、プラスミノーゲン投与群(図22B)マウスの大動脈洞における脂肪沈着は溶媒PBS投与対照群(図22A)より明らかに少ない。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化症モデルマウスの大動脈洞における脂質沈着を低減できることを示している。
【0161】
[実施例23]
実施例23は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの大動脈洞繊維化を軽減することに関するものである。
6週齢のオスC57マウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症モデルを誘発し[32,33]、このモデルを16週齢高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で6匹とプラスミノーゲン投与群で5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。大動脈洞の組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で40倍(図23A、23B)、200倍(図23C、23D)にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図23B、23D)の大動脈洞血管内壁におけるコラーゲン沈着(矢印に示される)の面積は溶媒PBS投与対照群(図23A、23C)より明らかに小さい。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを軽減できることを示している。
【0162】
[実施例24]
実施例24は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症マウスの心臓代償性肥大を改善することに関するものである。
6週齢のオスApoEマウス13匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、品目番号TP2031)を16週間給餌して高脂血症モデルを誘発した[47,48]。モデル化後のマウスについて、投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、モデルマウスをT-CHO含有量によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群で7匹とプラスミノーゲン投与群で6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、投与期間中に引き続き高脂肪高コレステロール食を与えた。投与した31日目に体重を測ってマウスを殺処分し、心臓を取って重量を測って、心係数を計算した。心係数(%)=心臓重量/体重×100。
その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの心係数は溶媒PBS投与対照群(図24)より明らかに低い。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化症モデルマウスの心臓損傷による心臓代償性肥大を軽減できることを示している。
【0163】
[実施例25]
実施例25は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を軽減することに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとした。モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。また、同じ週齢のオスC57マウス5匹を取ってブランク対照群とし、実験期間中に通常の維持食を与えた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取して総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群とで各8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。30日間投与し、31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させおよびキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。腎臓の組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸エタノールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図25C)の腎臓におけるコラーゲン沈着(矢印に示される)は溶媒PBS投与対照群(図25B)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(図25D);プラスミノーゲン投与群の繊維化は基本的に正常レベルに回復した(図25A)。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を効果的に軽減できることを示している。
【0164】
[実施例26]
実施例26は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎脂肪沈着を低減することに関するものである。
9週齢のオスC57マウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血症を誘発し[32,33]、このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル化後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を与えた。また、同じ週齢のオスC57マウスを5匹取ってブランク対照群とし、実験期間中に通常の維持食を給餌した。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、モデルマウスを総コレステロール濃度および体重によってランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群とで、各群で8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒトプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、オイルレッドOで15分間染色し、75%アルコールで5秒間分別し、そしてヘマトキシリンで30秒間核を染色し、グリセリンゼラチンに封入させた。切片を光学顕微鏡下で400倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(図26C)マウスの腎脂肪沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(図26B)より明らかに少なく、しかもその定量分析の差が統計学的に有意である(図26D)。また、プラスミノーゲン投与群の脂質沈着レベルはブランク対照群マウス(図26A)に似ている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの腎臓における脂肪の沈着を低減でき、それによって脂肪沈着による腎損傷を減少させることができることを示している。
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