(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】温調システム
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20230123BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230123BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F25B7/00 D
F25B1/00 331Z
F25B1/00 399Y
F25B5/02 Z
(21)【出願番号】P 2019545840
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019007993
(87)【国際公開番号】W WO2020095464
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/041324
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/048186
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正勝
(72)【発明者】
【氏名】上田 禎一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】市山 亮二
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第205002436(CN,U)
【文献】特開平04-222355(JP,A)
【文献】特開2016-053456(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10121544(DE,A1)
【文献】特開2007-078211(JP,A)
【文献】特開平06-174388(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073537(WO,A1)
【文献】特開2008-298407(JP,A)
【文献】特開2015-215109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F25B 1/00
F25B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1冷凍機ユニットと、
第2冷凍機ユニットと、
前記第1冷凍機ユニットによって冷却される第1の流体を通流させる第1流体通流装置と、
前記第2冷凍機ユニットによって冷却される第2の流体を通流させる第2流体通流装置と、
前記第1流体通流装置から前記第1の流体を受け入れるとともに、前記第2流体通流装置から前記第2の流体を受け入れ、前記第1の流体及び前記第2の流体のいずれを選択的に
温度制御対象側へ流出させるバルブユニットと、
を備え、
前記第1冷凍機ユニットは、
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側膨張弁及び高温側蒸発器が、この順に高温側冷媒を循環させるように接続された高温側冷凍回路を有する高温側冷凍機と、
中温側圧縮機、中温側凝縮器、中温側第1膨張弁及び中温側第1蒸発器が、この順に中温側冷媒を循環させるように接続された中温側冷凍回路を有するとともに、前記中温側冷凍回路における前記中温側凝縮器の下流側で且つ前記中温側第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記中温側第1蒸発器の下流側で且つ前記中温側圧縮機の上流側の部分に接続され、前記中温側冷凍回路から分岐する前記中温側冷媒を通流させる分岐流路、前記分岐流路に設けられた中温側第2膨張弁、及び前記分岐流路において前記中温側第2膨張弁よりも下流側に設けられた中温側第2蒸発器を含むカスケード用バイパス回路を有する中温側冷凍機と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、低温側膨張弁及び低温側蒸発器が、この順に低温側冷媒を循環させるように接続された低温側冷凍回路を有する低温側冷凍機と、を備え、
前記高温側冷凍機の前記高温側蒸発器と前記中温側冷凍機の前記中温側凝縮器とが、前記高温側冷媒と前記中温側冷媒との熱交換を可能とする第1カスケードコンデンサを構成し、
前記中温側冷凍機の前記中温側第2蒸発器と前記低温側冷凍機の前記低温側凝縮器とが、前記中温側冷媒と前記低温側冷媒との熱交換を可能とする第2カスケードコンデンサを構成し、
前記第1冷凍機ユニットは、前記第1の流体を冷却する際、前記中温側第1膨張弁及び前記中温側第2膨張弁の両方を開状態として、前記第1の流体を、前記中温側冷凍機の前記中温側第1蒸発器によって冷却した後、前記低温側冷凍機の前記低温側蒸発器によって冷却するようになっており、
前記第2冷凍機ユニットは、第2側圧縮機、第2側凝縮器、第2側膨張弁及び第2側蒸発器が、この順に第2側冷媒を循環させるように接続された第2側冷凍回路を有し、前記第2側蒸発器によって前記第2の流体を冷却するようになっており、
前記低温側冷媒の沸点は、前記第2側冷媒の沸点よりも低い、温調システム。
【請求項2】
冷却水を通流させる冷却水通流装置をさらに備え、
前記冷却水通流装置は、共通配管から分岐する第1冷却管と第2冷却管とを有し、
前記高温側凝縮器は、前記第1冷却管から流出する前記冷却水により前記高温側冷媒を冷却し、
前記第2側凝縮器は、前記第2冷却管から流出する前記冷却水により前記第2側冷媒を冷却する、請求項1に記載の温調システム。
【請求項3】
第3冷凍機ユニットと、
前記第3冷凍機ユニットによって冷却される第3の流体を通流させる第3流体通流装置と、をさらに備え、
前記第3冷凍機ユニットは、第3側圧縮機、第3側凝縮器、第3側膨張弁及び第3側蒸発器が、この順に第3側冷媒を循環させるように接続された第3側冷凍回路を有し、前記第3側蒸発器によって前記第3の流体を冷却するようになっており、
前記冷却水通流装置は、前記共通配管から分岐する第3冷却管をさらに有し、
前記第3側凝縮器は、前記第3冷却管から流出する前記冷却水により前記第3側冷媒を冷却する、請求項2に記載の温調システム。
【請求項4】
前記バルブユニットは、
第1流入口に流入する前記第1の流体を通流させて第1流出口から流出させる第1供給流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第1供給流路における前記第1の流体の通流及び遮断を切り替える第1供給側電磁切替弁と、
前記第1供給流路の前記第1供給側電磁切替弁よりも上流側の部分から分岐し、前記第1供給流路から流入する前記第1の流体を通流させる第1分岐流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第1分岐流路における前記第1の流体の通流及び遮断を切り替える第1分岐側電磁切替弁と、
第2流入口に流入する前記第2の流体を通流させて第2流出口から流出させる第2供給流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第2供給流路における前記第2の流体の通流及び遮断を切り替える第2供給側電磁切替弁と、
前記第2供給流路の前記第2供給側電磁切替弁よりも上流側の部分から分岐し、前記第2供給流路から流入する前記第2の流体を通流させる第2分岐流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第2分岐流路における前記第2の流体の通流及び遮断を切り替える第2分岐側電磁切替弁と、
前記第1流出口から流出して所定領域を経由した後に戻る前記第1の流体又は前記第2流出口から流出して前記所定領域を経由した後に戻る前記第2の流体を受け入れる受け入れ流路と、
前記受け入れ流路から二股に分岐する第1循環流路及び第2循環流路と、
前記第1循環流路の開状態及び閉状態を切り替える第1循環側電磁切替弁と、
前記第2循環流路の開状態及び閉状態を切り替える第2循環側切替弁と、
を有する、請求項1に記載の温調システム。
【請求項5】
前記中温側冷媒と、前記低温側冷媒とが同じ冷媒である、請求項1に記載の温調システム。
【請求項6】
前記中温側冷凍機は、前記中温側冷凍回路における前記中温側凝縮器の下流側で且つ前記中温側第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記カスケード用バイパス回路における前記中温側第2蒸発器の下流側の部分に接続され、前記中温側冷凍回路から分岐する前記中温側冷媒を通流させる冷却用流路と、前記冷却用流路に設けられた中温側第3膨張弁と、を有するカスケード冷却用回路をさらに有している、請求項1又は5に記載の温調システム。
【請求項7】
前記低温側冷凍回路における前記低温側凝縮器の下流側で且つ前記低温側膨張弁の上流側の部分と、前記低温側冷凍回路における前記低温側蒸発器の下流側で且つ前記低温側圧縮機の上流側の部分とが、各前記部分を通過する前記低温側冷媒の熱交換を可能とする内部熱交換器を構成する、請求項5に記載の温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ヒートポンプ式の冷凍装置によって流体を冷却し、冷却された流体によって温度制御対象を温度制御する温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-215109号公報は三元冷凍装置を開示する。
【0003】
三元冷凍装置は、それぞれ圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する高温側冷凍機、中温側冷凍機及び低温側冷凍機を備えており、高温側冷凍機は高温側冷媒を循環させ、中温側冷凍機は中温側冷媒を循環させ、低温側冷凍機は低温側冷媒を循環させる。このような三元冷凍装置では、高温側冷媒と中温側冷媒とを熱交換させる高中側カスケードコンデンサが高温側冷凍機の蒸発器及び中温側冷凍機の凝縮器によって構成され、中温側冷媒と低温側冷媒とを熱交換させる中低側カスケードコンデンサが中温側冷凍機の蒸発器及び低温側冷凍機の凝縮器によって構成される。そして、低温側冷凍機の蒸発器によって、温度制御対象を極めて低温まで温度制御することができる。
【0004】
また、上述のような三元冷凍装置の低温側冷凍機の蒸発器によってブライン等の流体を冷却し、冷却された流体によって温度制御対象を温度制御する温調システムが従来から知られている。このような温調システムは、半導体製造装置の温度制御に用いられる場合がある。半導体製造装置用の温調システムは、近年の半導体の微細化に伴い、温度制御精度の一層の向上を強く求められる傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三元冷凍装置は、温度制御対象を目標冷却温度まで安定的に冷却するために、各冷凍機において高性能な圧縮機が必要となる場合がある。特に低温側冷凍機の圧縮機に関しては、高性能であることに加え、極めて低温の低温側冷媒に対する耐久性能(耐冷性能)を確保するための特殊構造が必要な場合も生じ得る。そのため、装置全体のサイズが過度に大型化したり、圧縮機が入手困難となることによる製造コストの増加や工期遅延が生じたりする場合がある。
【0006】
一方で、三元冷凍装置によって冷却された流体により温度制御を行う温調システムは、温度制御対象を、極めて低温の温度(-70℃)と、これよりもある程度高い温度(例えば、-20℃~20℃)とに繰り返し且つ迅速に温度制御するような運転パターンの実施を求められる場合がある。この場合、三元冷凍装置における冷温側冷凍機の蒸発器の冷凍能力の調整やヒータによる流体の加熱等を行うことで、対応することもできる。しかしながら、迅速性に欠ける。
【0007】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、極めて低温までの冷却を容易に且つ安定的に実現でき、さらには極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施することができる温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態にかかる温調システムは、
第1冷凍機ユニットと、
第2冷凍機ユニットと、
前記第1冷凍機ユニットによって冷却される第1の流体を通流させる第1流体通流装置と、
前記第2冷凍機ユニットによって冷却される第2の流体を通流させる第2流体通流装置と、
前記第1流体通流装置から前記第1の流体を受け入れるとともに、前記第2流体通流装置から前記第2の流体を受け入れ、前記第1の流体及び前記第2の流体のいずれを選択的に流出させるバルブユニットと、
を備え、
前記第1冷凍機ユニットは、
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側膨張弁及び高温側蒸発器が、この順に高温側冷媒を循環させるように接続された高温側冷凍回路を有する高温側冷凍機と、
中温側圧縮機、中温側凝縮器、中温側第1膨張弁及び中温側第1蒸発器が、この順に中温側冷媒を循環させるように接続された中温側冷凍回路を有するとともに、前記中温側冷凍回路における前記中温側凝縮器の下流側で且つ前記中温側第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記中温側第1蒸発器の下流側で且つ前記中温側圧縮機の上流側の部分に接続され、前記中温側冷凍回路から分岐する前記中温側冷媒を通流させる分岐流路、前記分岐流路に設けられた中温側第2膨張弁、及び前記分岐流路において前記中温側第2膨張弁よりも下流側に設けられた中温側第2蒸発器を含むカスケード用バイパス回路を有する中温側冷凍機と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、低温側膨張弁及び低温側蒸発器が、この順に低温側冷媒を循環させるように接続された低温側冷凍回路を有する低温側冷凍機と、を備え、
前記高温側冷凍機の前記高温側蒸発器と前記中温側冷凍機の前記中温側凝縮器とが、前記高温側冷媒と前記中温側冷媒との熱交換を可能とする第1カスケードコンデンサを構成し、
前記中温側冷凍機の前記中温側第2蒸発器と前記低温側冷凍機の前記低温側凝縮器とが、前記中温側冷媒と前記低温側冷媒との熱交換を可能とする第2カスケードコンデンサを構成し、
前記第1冷凍機ユニットは、前記第1の流体を冷却する際、前記中温側第1膨張弁及び前記中温側第2膨張弁の両方を開状態として、前記第1の流体を、前記中温側冷凍機の前記中温側第1蒸発器によって冷却した後、前記低温側冷凍機の前記低温側蒸発器によって冷却するようになっており、
前記第2冷凍機ユニットは、第2側圧縮機、第2側凝縮器、第2側膨張弁及び第2側蒸発器が、この順に第2側冷媒を循環させるように接続された第2側冷凍回路を有し、前記第2側蒸発器によって前記第2の流体を冷却するようになっており、
前記低温側冷媒の沸点は、前記第2側冷媒の沸点よりも低い、温調システム。
【0009】
上記温調システムでは、第1流体通流装置が通流させる第1の流体が、中温側冷凍機の中温側第1蒸発器によって冷却(プレクール)された後、中温側第1蒸発器よりも大きい冷凍能力を出力し得る低温側冷凍機の低温側蒸発器によって冷却される。これにより、第1冷凍機ユニットは、温度制御対象物(第1の流体)に対する目標の所望温度までの冷却を実現する際に、低温側冷凍機において高性能な圧縮機を採用した単純な三元冷凍装置よりも、容易に製作され得るため、具体的には特に低温側冷凍機の低温側圧縮機を簡素化できるため、極めて低温の温度域に設定される所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる。
また、第1冷凍機ユニットとは別の第2冷凍機ユニットにより、第2の流体を第1の流体よりも低い温度に温度制御する。そして、それぞれ異なる温度に温度制御される第1の流体と第2の流体とをバルブユニットにより選択的に切り替えて流出させることで、極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施できる。
したがって、極めて低温までの冷却を容易に且つ安定的に実現でき、さらには極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施することができる。
【0010】
本発明の一実施の形態にかかる温調システムは、冷却水を通流させる冷却水通流装置をさらに備え、前記冷却水通流装置は、共通配管から分岐する第1冷却管と第2冷却管とを有し、前記高温側凝縮器は、前記第1冷却管から流出する前記冷却水により前記高温側冷媒を冷却し、前記第2側凝縮器は、前記第2冷却管から流出する前記冷却水により前記第2側冷媒を冷却してもよい。
【0011】
この構成では、高温側凝縮器及び第2側凝縮器に対する冷却系統を共通化することで、温調システムの複雑化及び高コスト化を抑制できる。
【0012】
本発明の一実施の形態にかかる温調システムは、第3冷凍機ユニットと、前記第3冷凍機ユニットによって冷却される第3の流体を通流させる第3流体通流装置と、をさらに備え、前記第3冷凍機ユニットは、第3側圧縮機、第3側凝縮器、第3側膨張弁及び第3側蒸発器が、この順に第3側冷媒を循環させるように接続された第3側冷凍回路を有し、前記第3側蒸発器によって前記第3の流体を冷却するようになっており、前記冷却水通流装置は、前記共通配管から分岐する第3冷却管をさらに有し、前記第3側凝縮器は、前記第3冷却管から流出する前記冷却水により前記第3側冷媒を冷却してもよい。
【0013】
この構成では、第3流体通流装置によって、温度制御パターンのバリエーションを増加させることができる一方で、高温側凝縮器、第2側凝縮器及び第3側凝縮器に対する冷却系統を共通化することで、第3流体通流装置の設置による温調システムの複雑化及び高コスト化を可及的に抑制できる。
【0014】
前記バルブユニットは、
第1流入口に流入する前記第1の流体を通流させて第1流出口から流出させる第1供給流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第1供給流路における前記第1の流体の通流及び遮断を切り替える第1供給側電磁切替弁と、
前記第1供給流路の前記第1供給側電磁切替弁よりも上流側の部分から分岐し、前記第1供給流路から流入する前記第1の流体を通流させる第1分岐流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第1分岐流路における前記第1の流体の通流及び遮断を切り替える第1分岐側電磁切替弁と、
第2流入口に流入する前記第2の流体を通流させて第2流出口から流出させる第2供給流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第2供給流路における前記第2の流体の通流及び遮断を切り替える第2供給側電磁切替弁と、
前記第2供給流路の前記第2供給側電磁切替弁よりも上流側の部分から分岐し、前記第2供給流路から流入する前記第2の流体を通流させる第2分岐流路と、
開状態及び閉状態の切り替えにより、前記第2分岐流路における前記第2の流体の通流及び遮断を切り替える第2分岐側電磁切替弁と、
前記第1流出口から流出して所定領域を経由した後に戻る前記第1の流体又は前記第2流出口から流出して前記所定領域を経由した後に戻る前記第2の流体を受け入れる受け入れ流路と、
前記受け入れ流路から二股に分岐する第1循環流路及び第2循環流路と、
前記第1循環流路の開状態及び閉状態を切り替える第1循環側電磁切替弁と、
前記第2循環流路の開状態及び閉状態を切り替える第2循環側電磁切替弁と、
を有してもよい。
【0015】
この構成では、第1の流体を流出させる状態から第2の流体を流出させる状態、又はその逆を切り替える際、流体の流れの切り替えのための弁が電磁切替弁であるため、電流の供給及び遮断により、第1の流体の供給と第2の流体の供給とが迅速に切り替わる。また、流体の流れの切り替えのための弁が電磁切替弁であるため、比例式電磁弁よりも弁座の口径を大きくすることができ、大流量の液体を適正に開閉できる。また、比例式電磁弁を用いた場合よりも、液体の漏れも抑制することができる。これにより、異なる温度の流体(第1の流体及び第2の流体)を迅速に切り換えて供給できるとともに、供給する流体の温度変動を抑制できる。
【0016】
本発明の一実施の形態にかかる温調システムにおいては、前記中温側冷媒と、前記低温側冷媒とが同じ冷媒であってもよい。
【0017】
本発明では、中温側冷媒が供給された中温側第1蒸発器と、低温側冷媒が供給された低温側蒸発器とで、第1の流体を異なる温度に温度制御することを目的としていないため、中温側冷媒と低温側冷媒とを同じ冷媒にすることができ、これにより、第1の流体を極めて低温まで迅速に冷却できる。一方で、始動時においては、第1の流体が例えば常温であると中温側冷媒及び低温側冷媒の過熱度が過剰に大きくなり、運転に支障が生じ得るが、この問題は、第2冷凍機ユニットによって冷却された第2の流体で温度制御対象を冷却しておき、冷却された温度制御対象に第1の流体を通過させて冷却することで、解消され得る。
【0018】
前記中温側冷凍機は、前記中温側冷凍回路における前記中温側凝縮器の下流側で且つ前記中温側第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記カスケード用バイパス回路における前記中温側第2蒸発器の下流側の部分に接続され、前記中温側冷凍回路から分岐する前記中温側冷媒を通流させる冷却用流路と、前記冷却用流路に設けられた中温側第3膨張弁と、を有するカスケード冷却用回路をさらに有してもよい。
【0019】
この構成では、カスケード冷却用回路が、中温側第2蒸発器から流出した中温側冷媒に、中温側第3膨張弁で膨張させた低温且つ低圧の中温側冷媒を混入させて、中温側第2蒸発器から流出する中温側冷媒の温度を調節することで、中温側第1蒸発器から流出する中温側冷媒の温度と、中温側第2蒸発器から流出する中温側冷媒の温度とを同等にすることができる。本実施の形態では、中温側第1蒸発器と、中温側第2蒸発器とが互いに異なる流体(第1の流体と低温側冷媒)を冷却するため、中温側第1蒸発器から流出する中温側冷媒の温度と、中温側第2蒸発器から流出する中温側冷媒の温度とが異なる状況が生じ得る。このような状況が生じた際に、中温側第1蒸発器から流出する中温側冷媒の温度と、中温側第2蒸発器から流出する中温側冷媒の温度とを同等にすることで、温度差のある中温側冷媒が混ざり合うことで生じ得る中温側冷凍機に対する負担を軽減できるため、中温側冷凍機の損傷を抑制できる。
【0020】
本発明の一実施の形態にかかる温調システムにおいては、前記低温側冷凍回路における前記低温側凝縮器の下流側で且つ前記低温側膨張弁の上流側の部分と、前記低温側冷凍回路における前記低温側蒸発器の下流側で且つ前記低温側圧縮機の上流側の部分とが、各前記部分を通過する前記低温側冷媒の熱交換を可能とする内部熱交換器を構成してもよい。
【0021】
この構成では、始動時に生じ得る低温側冷媒の過熱度の増大を内部熱交換器によって低減できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる温調システムによれば、極めて低温までの冷却を容易に且つ安定的に実現でき、さらには極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施の形態にかかる温調システムの概略図である。
【
図2】
図1の温調システムを構成する中温側冷凍機及び低温側冷凍機の拡大図である。
【
図3】
図1の温調システムを構成する低温側冷凍機の拡大図である。
【
図4】
図1の温調システムを構成するバルブユニットの概略図である。
【
図5】
図1の温調システムの動作を説明する図である。
【
図6】
図1の温調システムの動作を説明する図である。
【
図7】
図4のバルブユニットに設けられる弁として用いられ得るパイロットキック式電磁弁の断面図である。
【
図8】バルブユニットの変形例を示す概略図である。
【
図9】
図8に示す変形例にかかるバルブユニットを備える温調システムの動作を説明する図である。
【
図10】
図8に示す変形例にかかるバルブユニットを備える温調システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる温調システム1の概略図である。本実施の形態に係る温調システム1は、第1冷凍機ユニット10と、第2冷凍機ユニット40と、第3冷凍機ユニット50と、第1冷凍機ユニット10によって冷却される第1の流体を通流させる第1流体通流装置20と、第2冷凍機ユニット40によって冷却される第2の流体を通流させる第2流体通流装置60と、第3冷凍機ユニット50によって冷却される第3の流体を通流させる第3流体通流装置70と、バルブユニット80と、制御装置90と、を備えている。
【0026】
温調システム1は、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を第1冷凍機ユニット10によって冷却し、冷却された第1の流体を第1流体通流装置20からバルブユニット80に供給する。また、温調システム1は、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体を第2冷凍機ユニット40によって冷却し、冷却された第2の流体を第2流体通流装置60からバルブユニット80に供給する。ここで、バルブユニット80は、第1流体通流装置20から第1の流体を受け入れるとともに、第2流体通流装置60から第2の流体を受け入れ、第1の流体及び第2の流体のいずれを選択的に流出させるようになっている。
【0027】
バルブユニット80から流出する第1の流体又は第2の流体は、温度制御対象Taに供給され、温度制御対象Taの一部を温度制御した後に、バルブユニット80を介して第1流体通流装置20又は第2流体通流装置60に戻る。また、温調システム1は、第3冷凍機ユニット50によって第3流体通流装置70が通流させる第3の流体を冷却し、冷却された第3の流体を温度制御対象Taに供給し、温度制御対象Taの他の一部を温度制御する。その後、第3の流体は、第3流体通流装置70に戻る。
【0028】
本実施の形態にかかる温調システム1では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体が、20℃から-70℃、好ましく-80℃までの範囲で温度制御され、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体が、80℃から-10℃までの範囲で温度制御され、第3流体通流装置70が通流させる第3の流体が、150℃~10℃までの範囲で温度制御される。ただし、温調システム1の冷凍能力や流体を冷却な温度は特に限られるものではない。
【0029】
また、制御装置90は、各冷凍機ユニット(10、40、50)、各流体通流装置(20、60、70)及びバルブユニット80に電気的に接続されており、これら各装置の動作を制御するものである。制御装置90は、例えばCPU、ROM、RAM等を含むコンピュータであってもよく、記憶されたコンピュータプログラムに従い各冷凍機ユニット(10、40、50)、各流体通流装置(20、60、70)及びバルブユニット80の動作を制御してもよい。以下、温調システム1を構成する各部について詳述する。
【0030】
<第1冷凍機ユニット>
第1冷凍機ユニット10は三元式冷凍装置であり、それぞれヒートポンプ式の冷凍機として構成される高温側冷凍機100と、中温側冷凍機200と、低温側冷凍機300と、を備えている。
【0031】
高温側冷凍機100と中温側冷凍機200との間には第1カスケードコンデンサCC1が構成され、中温側冷凍機200と低温側冷凍機300との間には第2カスケードコンデンサCC2が構成される。これにより、第1冷凍機ユニット10は、高温側冷凍機100が循環させる高温側冷媒によって中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒を冷却可能であり、冷却された中温側冷媒によって低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒を冷却可能である。
【0032】
(高温側冷凍機)
高温側冷凍機100は、高温側圧縮機101、高温側凝縮器102、高温側膨張弁103及び高温側蒸発器104が、この順に高温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)によって接続された高温側冷凍回路110と、高温側ホットガス回路120と、冷却用バイパス回路130と、を有している。
【0033】
高温側冷凍回路110では、高温側圧縮機101が、高温側蒸発器104から流出した基本的には気体の状態の高温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で高温側凝縮器102に供給する。高温側凝縮器102は、高温側圧縮機101で圧縮された高温側冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、高温側膨張弁103に供給する。
【0034】
本実施の形態では、温調システム1が冷却水通流装置2をさらに備えており、冷却水通流装置2が、共通配管2Aから分岐する第1冷却管2B、第2冷却管2C及び第3冷却管2Dを有する。このうちの第1冷却管2Bが高温側凝縮器102に接続され、高温側凝縮器102は、第1冷却管2Bから流出する冷却水により高温側冷媒を冷却する。冷却水通流装置2が通流させる冷却水は、水でもよいし、その他の冷媒が用いられてもよい。また、後述するが、第2冷却管2Cは第2冷凍機ユニット40の第2側凝縮器42に接続され、第3冷却管2Dは第3冷凍機ユニット50の第3側凝縮器52に接続されている。
【0035】
高温側膨張弁103は、高温側凝縮器102から供給された高温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の高温側冷媒を高温側蒸発器104に供給する。高温側蒸発器104は、中温側冷凍機200の後述する中温側凝縮器202と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成し、供給された高温側冷媒を、中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒と熱交換させて中温側冷媒を冷却する。中温側冷媒と熱交換した高温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、高温側蒸発器104から流出して再び高温側圧縮機101で圧縮される。
【0036】
高温側ホットガス回路120は、高温側冷凍回路110における高温側圧縮機101の下流側で且つ高温側凝縮器102の上流側の部分から分岐して、高温側膨張弁103の下流側で且つ高温側蒸発器104の上流側の部分に接続されるホットガス流路121と、ホットガス流路121に設けられた流量調節弁122と、を有している。
【0037】
高温側ホットガス回路120は、流量調節弁122の開閉及び開度調節に応じて、高温側圧縮機101から流出した高温側冷媒を高温側膨張弁103が膨張させた高温側冷媒に混合させることで、高温側蒸発器104の冷凍能力を調節する。すなわち、高温側ホットガス回路120は、高温側蒸発器104の容量制御のために設けられている。高温側冷凍機100では、高温側ホットガス回路120を設けることで高温側蒸発器104の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
【0038】
冷却用バイパス回路130は、高温側冷凍回路110における高温側凝縮器102の下流側で且つ高温側膨張弁103の上流側の部分から分岐して、高温側圧縮機101に接続される冷却用流路131と、冷却用流路131に設けられた冷却用膨張弁132と、を有している。冷却用バイパス回路130は、高温側凝縮器102から流出した高温側冷媒を膨張させ、膨張前に対して降温させた高温側冷媒により、高温側圧縮機101を冷却することができる。
【0039】
以上のような高温側冷凍機100で用いられる高温側冷媒は特に限られるものではないが、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却し、冷却された第1の流体によって温度制御対象を冷却するために、高温側冷媒としてR410Aが用いられるが、高温側冷媒の種類は特に限られるものではない。高温側冷媒としては、R32、R125、R134a、R407C、HFO系、CO2、アンモニア等が用いられてもよい。また、高温側冷媒は混合冷媒でもよい。また、R410A、R32、R125、R134a、R407C、混合冷媒等において、オイルキャリアとして、n-ペンタンが添加された冷媒が用いられてもよい。n-ペンタンが添加された場合には、高温側圧縮機101の潤滑のためのオイルを冷媒とともに好適に循環させることができ、高温側圧縮機101を安定的に運転させることができる。また、オイルキャリアとして、プロパンが添加されてもよい。
【0040】
(中温側冷凍機)
中温側冷凍機200は、中温側圧縮機201、中温側凝縮器202、中温側第1膨張弁203及び中温側第1蒸発器204が、この順に中温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)により接続された中温側冷凍回路210と、カスケード用バイパス回路220と、中温側ホットガス回路230と、カスケード冷却用回路240と、を有している。
【0041】
中温側冷凍回路210では、中温側圧縮機201が、中温側第1蒸発器204から流出した基本的には気体の状態の中温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で中温側凝縮器202に供給する。中温側凝縮器202は、上述したように高温側冷凍機100の高温側蒸発器104と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成しており、供給された中温側冷媒を、第1カスケードコンデンサCC1において高温側冷媒によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、中温側第1膨張弁203に供給する。
【0042】
中温側第1膨張弁203は、中温側凝縮器202から供給された中温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の中温側冷媒を中温側第1蒸発器204に供給する。中温側第1蒸発器204は、供給された中温側冷媒を、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換させて当該流体を冷却する。第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換した中温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、中温側第1蒸発器204から流出して再び中温側圧縮機201で圧縮される。
【0043】
カスケード用バイパス回路220は、中温側冷凍回路210における中温側凝縮器202の下流側で且つ中温側第1膨張弁203の上流側の部分から分岐し、中温側第1蒸発器204の下流側で且つ中温側圧縮機201の上流側の部分に接続され、中温側冷凍回路210から分岐する中温側冷媒を通流させる分岐流路221と、分岐流路221に設けられた中温側第2膨張弁223と、分岐流路221において中温側第2膨張弁223よりも下流側に設けられた中温側第2蒸発器224と、を有している。
【0044】
中温側第2膨張弁223は、中温側冷凍回路210から分岐した中温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の中温側冷媒を中温側第2蒸発器224に供給する。中温側第2蒸発器224は、低温側冷凍機300の後述する低温側凝縮器302と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された中温側冷媒を、低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒と熱交換させて低温側冷媒を冷却する。低温側冷媒と熱交換した中温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、第2カスケードコンデンサCC2から流出する。そして、第2カスケードコンデンサCC2(中温側第2蒸発器224)から流出した中温側冷媒は、中温側第1蒸発器204から流出した中温側冷媒と合流し、中温側圧縮機201に流入する。
【0045】
中温側ホットガス回路230は、中温側冷凍回路210における中温側圧縮機201の下流側で且つ中温側凝縮器202の上流側の部分から分岐して、カスケード用バイパス回路220における中温側第2膨張弁223の下流側で且つ中温側第2蒸発器224の上流側の部分に接続されるホットガス流路231と、ホットガス流路231に設けられた流量調節弁232と、を有している。
【0046】
中温側ホットガス回路230は、流量調節弁232の開閉及び開度調節に応じて、中温側圧縮機201から流出した中温側冷媒を中温側第2膨張弁223が膨張させた中温側冷媒に混合させることで、第2カスケードコンデンサCC2(中温側第2蒸発器224)の冷凍能力を調節する。すなわち、中温側ホットガス回路230は、第2カスケードコンデンサCC2の容量制御のために設けられている。中温側冷凍機200では、中温側ホットガス回路230を設けることで第2カスケードコンデンサCC2の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
また、中温側ホットガス回路230は、中温側圧縮機201に吸入される冷媒の圧力を一定に維持する機能も有している。本実施の形態では、中温側第1蒸発器204と、中温側第2蒸発器224とが互いに異なる流体(第1の流体と低温側冷媒)を冷却するため、中温側第1蒸発器204から流出する中温側冷媒の圧力と、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の圧力とが異なる状況が生じ得る。このような状況が生じた際に、本実施の形態では、中温側ホットガス回路230が、中温側第2膨張弁223の下流側で中温側第2蒸発器224の上流側の部分を流れる中温側冷媒に高温且つ高圧の中温側冷媒を混入させて、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の圧力を調節することができる。これにより、中温側第1蒸発器204から流出する中温側冷媒の圧力と、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の圧力とを同等にすることが可能となる。これらが同等の圧力になった場合には、中温側圧縮機201の上流側で中温側冷媒の状態が乱れることが抑制されるため、温度制御の精度低下が抑制される。
【0047】
また、カスケード冷却用回路240は、中温側冷凍回路210における中温側凝縮器202の下流側で且つ中温側第1膨張弁203の上流側の部分から分岐し、カスケード用バイパス回路220における中温側第2蒸発器224の下流側の部分に接続され、中温側冷凍回路210から分岐する中温側冷媒を通流させる冷却用流路241と、冷却用流路241に設けられた中温側第3膨張弁243と、を有している。
【0048】
カスケード冷却用回路240は、第2カスケードコンデンサCC2を構成する中温側第2蒸発器224から流出した中温側冷媒の温度が中温側第1蒸発器204から流出した中温側冷媒の温度よりも高い場合に、第2カスケードコンデンサCC2を構成する中温側第2蒸発器224から流出した中温側冷媒の温度を下げる機能を有する。本実施の形態では、中温側第1蒸発器204と、中温側第2蒸発器224とが互いに異なる流体(第1の流体と低温側冷媒)を冷却するため、中温側第1蒸発器204から流出する中温側冷媒の温度と、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の温度とが異なる状況が生じ得る。このような状況が生じた際に、本実施の形態では、カスケード冷却用回路240が、中温側第2蒸発器224から流出した中温側冷媒に、中温側第3膨張弁243で膨張させた低温且つ低圧の中温側冷媒を混入させて、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の温度を調節することができる。これにより、中温側第1蒸発器204から流出する中温側冷媒の温度と、中温側第2蒸発器224から流出する中温側冷媒の温度とを同等にすることが可能となる。これらが同等の温度になった場合には、温度差の大きい中温側冷媒が混ざり合うことで生じ得る中温側冷凍機200に対する負担が軽減されることで、中温側冷凍機200の損傷が抑制される。
【0049】
以上のような中温側冷凍機200で用いられる中温側冷媒は特に限られるものではないが、高温側冷媒の場合と同様に、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却するために、中温側冷媒としてR23が用いられるが、中温側冷媒の種類は特に限られるものではない。
【0050】
(低温側冷凍機)
低温側冷凍機300は、低温側圧縮機301、低温側凝縮器302、低温側膨張弁303及び低温側蒸発器304が、この順に低温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)により接続された低温側冷凍回路310と、低温側ホットガス回路320と、を有している。
【0051】
低温側冷凍回路310では、低温側圧縮機301が、低温側蒸発器304から流出した基本的には気体の状態の低温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で低温側凝縮器302に供給する。低温側凝縮器302は、上述したように中温側冷凍機200の中温側第2蒸発器224と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された低温側冷媒を、第2カスケードコンデンサCC2において中温側冷媒によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、低温側膨張弁303に供給する。
【0052】
低温側膨張弁303は、低温側凝縮器302から供給された低温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の低温側冷媒を低温側蒸発器304に供給する。低温側蒸発器304は、供給された低温側冷媒を、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換させて当該流体を冷却する。第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換した低温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、低温側蒸発器304から流出して再び低温側圧縮機301で圧縮される。
【0053】
低温側ホットガス回路320は、低温側冷凍回路310における低温側圧縮機301の下流側で且つ低温側凝縮器302の上流側の部分から分岐して、低温側膨張弁303の下流側で且つ低温側蒸発器304の上流側の部分に接続されるホットガス流路321と、ホットガス流路321に設けられた流量調節弁322と、を有している。
【0054】
低温側ホットガス回路320は、流量調節弁322の開閉及び開度調節に応じて、低温側圧縮機301から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303が膨張させた低温側冷媒に混合させることで、低温側蒸発器304の冷凍能力を調節する。すなわち、低温側ホットガス回路320は、低温側蒸発器304の容量制御のために設けられている。低温側冷凍機300では、低温側ホットガス回路320を設けることで低温側蒸発器304の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
【0055】
また、低温側冷凍機300では、低温側冷凍回路310における低温側凝縮器302の下流側で且つ低温側膨張弁303の上流側の第1部分311と、低温側冷凍回路310における低温側蒸発器304の下流側で且つ低温側圧縮機301の上流側の第2部分312とが、各部分311,312を通過する低温側冷媒同士の熱交換を可能とする内部熱交換器IEを構成している。
【0056】
内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303に流入する前に冷却することができ、低温側蒸発器304から流出した低温側冷媒を低温側圧縮機301に流入する前に加熱することができる。その結果、低温側蒸発器304の冷凍能力を簡易的に高くすることができ、且つ低温側圧縮機301の耐久性能(耐冷性能)の確保に対する負担を軽減できる。
【0057】
以上のような低温側冷凍機300で用いられる低温側冷媒は特に限られるものではないが、高温側冷媒及び中温側冷媒の場合と同様に、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却するために、低温側冷媒としてR23が用いられるが、低温側冷媒の種類は特に限られるものではない。
【0058】
ここで、本実施の形態における中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300は共に、R23を用いるが、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300では互いに異なる冷媒が用いられてもよい。また、極めて低温の冷却を実現する場合、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R23に代えて、R1132aが用いられてもよい。R1132aは、その沸点が約-83℃以下であり、-70℃以下まで降温可能であるため、極めて低温の冷却を行う際に好適に用いられ得る。しかも、R1132aの地球温暖化係数(GWP)は極めて低いため、環境に優しいに装置を構成することができる。
【0059】
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R23とその他の冷媒とを含む混合冷媒や、R1132aとその他の冷媒とを含む混合冷媒が用いられてもよい。
例えば、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいては、R1132aと、CO2(R744)とを混合させた混合冷媒が用いられてもよい。この場合、極めて低温の冷却と地球温暖化係数の抑制を実現しつつ、取り扱いも容易になり得る。
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R1132aと、R744と、R23とを混合させた混合冷媒が用いられてもよい。
【0060】
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいては、例えば、R23、R1132a、又はこれらの少なくともいずれかを含む混合冷媒に、n-ペンタンが添加された冷媒が用いられてもよい。n-ペンタンはオイルキャリアとして機能するため、添加された場合には、圧縮機201,301の潤滑のためのオイルを冷媒とともに好適に循環させることができ、圧縮機201,301を安定的に運転させることができる。また、オイルキャリアとして、プロパンが添加されてもよい。
【0061】
また、以上に説明した第1冷凍機ユニット10は、上述したように、中温側第1蒸発器204に供給された中温側冷媒により、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換させて当該流体を冷却するとともに、低温側蒸発器304に供給された低温側冷媒により、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と熱交換させて当該流体を冷却する。この際、第1冷凍機ユニット10は、中温側第1膨張弁203及び中温側第2膨張弁223の両方を開状態として、第1の流体を、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204によって冷却した後、低温側冷凍機300の低温側蒸発器304によって冷却するようになっている。このときの中温側第1膨張弁203及び中温側第2膨張弁223の開度は、中温側第1蒸発器204で出力される冷凍能力が、少なくとも2kW以上となり、低温側蒸発器304で出力される冷凍能力が、少なくとも2kW以上、本例では11kW以上となるように設定される。
【0062】
<第2冷凍機ユニット>
第2冷凍機ユニット40は、第2側圧縮機41、第2側凝縮器42、第2側膨張弁43及び第2側蒸発器44が、この順に第2側冷媒を循環させるように接続された第2側冷凍回路45を有し、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体を第2側蒸発器44によって冷却するようになっている。
【0063】
第2側冷凍回路45では、第2側圧縮機41が、第2側蒸発器44から流出した基本的には気体の状態の第2側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で第2側凝縮器42に供給する。第2側凝縮器42は、第2側圧縮機41で圧縮された第2側冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、第2側膨張弁43に供給する。ここで、第2側凝縮器42は冷却水通流装置2の第2冷却管2Cと接続しており、第2冷却管2Cから流出する冷却水により第2側冷媒を冷却する。
【0064】
第2側膨張弁43は、第2側凝縮器42から供給された第2側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の第2側冷媒を第2側蒸発器44に供給する。第2側蒸発器44は、供給された第2側冷媒を、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体と熱交換させて当該流体を冷却する。第2流体通流装置60が通流させる第2の流体と熱交換した第2側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、第2側蒸発器44から流出して再び第2側圧縮機41で圧縮される。
【0065】
以上のような第2冷凍機ユニット40における第2側冷凍回路45で用いられる第2側冷媒は特に限られるものではないが、沸点が、第1冷凍機ユニット10の低温側冷凍機300で使用する低温側冷媒の沸点よりも高いものの中から選択される。また、第2側冷媒の選択の際には、温度制御対象に対する目標冷却温度も考慮する。本実施の形態では、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体を-10℃まで冷却することを想定しているため、第2側冷媒としてR410Aが用いられるが、第2側冷媒の種類は特に限られるものではない。なお、R410Aの沸点は、約-52℃であり、R23の沸点は、約-82℃である。
【0066】
<第3冷凍機ユニット>
第3冷凍機ユニット50は、第3側圧縮機51、第3側凝縮器52、第3側膨張弁53及び第3側蒸発器54が、この順に第3側冷媒を循環させるように接続された第3側冷凍回路55を有し、第3流体通流装置70が通流させる第3の流体を第3側蒸発器54によって冷却するようになっている。
【0067】
第3側冷凍回路55では、第3側圧縮機51が、第3側蒸発器54から流出した基本的には気体の状態の第3側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で第3側凝縮器52に供給する。第3側凝縮器52は、第3側圧縮機51で圧縮された第3側冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、第3側膨張弁53に供給する。ここで、第3側凝縮器52は冷却水通流装置2の第3冷却管2Dと接続しており、第3冷却管2Dから流出する冷却水により第3側冷媒を冷却する。
【0068】
第3側膨張弁53は、第3側凝縮器52から供給された第3側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の第3側冷媒を第3側蒸発器54に供給する。第3側蒸発器54は、供給された第3側冷媒を、第3流体通流装置70が通流させる第3の流体と熱交換させて当該流体を冷却する。第3流体通流装置70が通流させる第3の流体と熱交換した第3側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、第3側蒸発器54から流出して再び第3側圧縮機51で圧縮される。
【0069】
以上のような第3冷凍機ユニット50における第3側冷凍回路55で用いられる第3側冷媒は特に限られるものではなく、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、第3側冷媒としてR410Aが用いられるが、第3側冷媒の種類は特に限られるものではない。
【0070】
<第1流体通流装置>
次に第1流体通流装置20は、第1の流体が通流する第1側流体流路21と、第1側流体流路21で第1の流体を通流させるための駆動力を付与する第1側ポンプ22と、を有している。本実施の形態における第1側流体流路21は、上流口21Uと下流口21Dとの間の中間部分を、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204に接続するとともに低温側冷凍機300の低温側蒸発器304に接続し、さらには上流口21Uと下流口21Dとをバルブユニット80に接続している。
【0071】
第1側ポンプ22から流出した第1の流体は、中温側第1蒸発器204において中温側冷媒によって冷却された後、低温側蒸発器304において低温側冷媒によって冷却される。その後、第1の流体はバルブユニット80に流入する。バルブユニット80は、受け入れた第1の流体を温度制御対象Ta側に供給した後に第1側流体流路21に戻す状態と、第1の流体を温度制御対象Ta側に供給せずに第1側流体流路21に戻す状態とを切り替えるようになっている。第1流体通流装置20が通流させる第1の流体は特に限られるものではないが、本実施の形態では、超低温用のブラインが用いられる。
【0072】
<第2流体通流装置>
第2流体通流装置60は、第2の流体が通流する第2側流体流路61と、第2側流体流路61で第2の流体を通流させるための駆動力を付与する第2側ポンプ62と、を有している。本実施の形態における第2側流体流路61は、上流口61Uと下流口61Dとの間の中間部分を第2冷凍機ユニット40の第2側蒸発器44に接続するとともに、上流口61Uと下流口61Dをバルブユニット80に接続している。
【0073】
第2側ポンプ62から流出した第2の流体は、第2側蒸発器44において第2側冷媒によって冷却された後、バルブユニット80に流入する。バルブユニット80は、受け入れた第2の流体を温度制御対象Ta側に供給した後に第2側流体流路61に戻す状態と、第2の流体を温度制御対象Ta側に供給せずに第2側流体流路61に戻す状態とを切り替えるようになっている。第2流体通流装置60が通流させる第2の流体は特に限られるものではないが、本実施の形態では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体と同一の超低温用のブラインが用いられる。ただし、第1の流体として用いられるブラインに混入されても支障がないのであれば、第2の流体として用いられるブラインは、第1の流体を構成するブラインと異なっていてもよい。
【0074】
<第3流体通流装置>
第3流体通流装置70は、第3の流体が通流する第3側流体流路71と、第3側流体流路71で第3の流体を通流させるための駆動力を付与する第3側ポンプ72と、を有している。本実施の形態における第3側流体流路71は、その中間部分で第3冷凍機ユニット50の第3側蒸発器54に接続され、下流側端部で温度制御対象Taに接続されるとともに上流側端部で温度制御対象Taに接続されている。
【0075】
第3側ポンプ72から流出した第3の流体は、第3側蒸発器54において第3側冷媒によって冷却された後、温度制御対象Taに流入し、その後、第3側流体流路71に戻る。第3流体通流装置70が通流させる第3の流体は特に限られるものではないが、本実施の形態では、超低温用ではなく、150℃~10℃までの範囲で支障無く流動するブラインが用いられる。
【0076】
<バルブユニット>
次に
図4を参照しつつバルブユニット80について説明する。
図4には、第1流体通流装置20及び第2流体通流装置60も概略的に示されている。
【0077】
バルブユニット80は、第1流体通流装置20の第1側流体流路21の上流口21U及び下流口21Dに流体的に接続されるとともに、第2流体通流装置60の第2側流体流路61の上流口61U及び下流口61Dに流体的に接続されており、第1側流体流路21の下流口21Dから第1の流体を供給され、第2側流体流路61の下流口61Dから第2の流体を供給される。そして、バルブユニット80は、第1の流体を温度制御対象Taに流出させた後に上流口21Uに戻し且つ第2の流体を温度制御対象Taに流出させずに上流口61Uに戻す状態と、第1の流体を温度制御対象Taに流出させずに上流口21Uに戻し且つ第2の流体を温度制御対象Taに流出させた後に上流口61Uに戻す状態とを切り替えるように構成されている。
【0078】
バルブユニット80と温度制御対象Taとは、供給側中継流路901及びリターン側中継流路902を介してバルブユニット80に流体的に接続されており、バルブユニット80が第1の流体又は第2の流体を温度制御対象Taに供給する場合、温度制御対象Taを通過した第1の流体又は第2の流体は、リターン側中継流路902を介してバルブユニット80に戻る。一方、第1の流体又は第2の流体を温度制御対象Taに供給しない場合、第1の流体又は第2の流体は、バルブユニット80内で方向転換されて第1側流体流路21又は第2側流体流路61に戻る。
【0079】
バルブユニット80は、第1供給流路831と、第1供給側電磁切替弁841と、第1分岐流路851と、第1分岐側電磁切替弁861と、第2供給流路832と、第2供給側電磁切替弁842と、第2分岐流路852と、第2分岐側電磁切替弁862と、受け入れ流路870と、第1循環流路871と、第2循環流路872と、第1循環側電磁切替弁881と、第2循環側電磁切替弁882と、を備えている。なお、本明細書において用いる「切替弁」と言う用語は、切替二方弁のことを意味する。
【0080】
第1供給流路831は、第1流入口831Aと第1流出口831Bとを有し、第1流入口831Aに流入する第1の流体を通流させて第1流出口831Bから流出させるように構成されている。本実施の形態では、第1流入口831Aに第1側流体流路21の下流口21Dが直接的に接続されている。したがって、第1流入口831Aは、第1側流体流路21が接続される前の状態では外部に開口するようになっている。
【0081】
第1供給側電磁切替弁841は、第1供給流路831に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第1供給流路831における第1の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。第1供給側電磁切替弁841はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0082】
また、第1供給流路831には、第1供給側電磁切替弁841よりも下流側に配置される第1逆止弁891が設けられる。第1逆止弁891は、第1流出口831Bから第1供給側電磁切替弁841に向けた第1の流体の通流を抑制するようになっている。
【0083】
第1分岐流路851は、第1供給流路831の第1供給側電磁切替弁841よりも上流側の部分から分岐し、第1供給流路831から流入する第1の流体を通流させように構成されている。
【0084】
第1分岐側電磁切替弁861は、第1分岐流路851に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第1分岐流路851における第1の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。第1分岐側電磁切替弁861はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0085】
第2供給流路832は、第2流入口832Aと第2流出口832Bとを有し、第2流入口832Aに流入する第2の流体を通流させて第2流出口832Bから流出させるように構成されている。本実施の形態では、第2流入口832Aに第2側流体流路61の下流口61Dが直接的に接続されている。したがって、第2流入口832Aは、第2側流体流路61が接続される前の状態では外部に開口するようになっている。
【0086】
第2供給側電磁切替弁842は、第2供給流路832に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第2供給流路832における第2の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。第2供給側電磁切替弁842はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0087】
また、第2供給流路832には、第2供給側電磁切替弁842よりも下流側に配置される第2逆止弁892が設けられる。第2逆止弁892は、第2流出口832Bから第2供給側電磁切替弁842に向けた第2の流体の通流を抑制するようになっている。
【0088】
ここで、本実施の形態におけるバルブユニット80は、第1供給流路831の第1流出口831B及び第2供給流路832の第2流出口832Bと接続する接続口896Aと、供給側中継流路901に直接的に接続される端口896Bとを有する供給側共通流路896をさらに備えている。
【0089】
供給側共通流路896の端口896Bは、供給側中継流路901が接続される前の状態では外部に開口するようになっている。本実施の形態では、供給側共通流路896が設けられることで、第1側流体流路21からの第1の流体又は第2側流体流路61からの第2の流体が、共通の出口となる供給側共通流路896の端口896Bから供給側中継流路901に供給されることになる。
【0090】
第2分岐流路852は、第2供給流路832の第2供給側電磁切替弁842よりも上流側の部分から分岐し、第2供給流路832から流入する第2の流体を通流させように構成されている。
【0091】
第2分岐側電磁切替弁862は、第2分岐流路852に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第2分岐流路852における第2の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。第2分岐側電磁切替弁862はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0092】
受け入れ流路870は、第1流出口831Bから流出して温度制御対象Taを経由した後にバルブユニット80側に戻る第1の流体又は第2流出口832Bから流出して温度制御対象Taを経由した後にバルブユニット80側に戻る第2の流体を、リターン側中継流路902を介して受け入れるように構成されている。受け入れ流路870の上流口はリターン側中継流路902に直接的に接続されており、リターン側中継流路902が接続される前の状態では外部に開口するようになっている。
【0093】
受け入れ流路870の下流口からは第1循環流路871と第2循環流路872が二股に分岐し、第1循環流路871と第2循環流路872は、受け入れ流路870の下流口から流出する流体を通流させることが可能となっている。
【0094】
第1循環側電磁切替弁881は第1循環流路871に設けられ、第1循環流路871の開状態及び閉状態を切り替えるように構成されている。第1循環側電磁切替弁881はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0095】
第2循環側電磁切替弁882は第2循環流路872に設けられ、第2循環流路872の開状態及び閉状態を切り替えるように構成されている。第2循環側電磁切替弁882はソレノイドを有し、ソレノイドに対する電流の印加による励磁及び非励磁を切り替えることで、開状態及び閉状態の切り替えを行うようになっている。
【0096】
ここで、本実施の形態におけるバルブユニット80は、第1分岐流路851の下流口及び第1循環流路871の下流口と接続する接続口897Aと、第1側流体流路21の上流口21Uに直接的に接続される端口897Bとを有する第1排出側共通流路897をさらに備えている。また、バルブユニット80は、第2分岐流路852の下流口及び第2循環流路872の下流口と接続する接続口898Aと、第2側流体流路61の上流口61Uに直接的に接続される端口898Bとを有する第2排出側共通流路898をさらに備えている。
【0097】
第1排出側共通流路897の端口897Bは、第1側流体流路21が接続される前の状態では外部に開口するようになっており、第2排出側共通流路898の端口898Bは、第2側流体流路61が接続される前の状態では外部に開口するようになっている。
【0098】
また、上述のようなバルブユニット80において、第1供給側電磁切替弁841、第2供給側電磁切替弁842、第1分岐側電磁切替弁861、第2分岐側電磁切替弁862、第1循環側電磁切替弁881及び第2循環側電磁切替弁882はそれぞれ、同じサイズで且つ同じ構造のパイロット式電磁切替弁、より詳しくはパイロットキック式電磁切替弁で構成されている。
【0099】
図7は、バルブユニット80における上記各弁として用いられ得るパイロットキック式電磁切替弁の断面図である。
図7に示すパイロットキック式電磁切替弁は、流入ポート1001、流出ポート1002、及びこれらの間に形成される弁座1003を有する弁ボディ10004と、弁座1003に離接可能に配置される弁体1005と、弁体1005を弁座1003から離接させるソレノイド駆動部1010と、を備えている。
【0100】
ソレノイド駆動部1010は、軸状の可動鉄心1011と、可動鉄心1011と同軸上に並ぶ軸状の固定鉄心1012と、可動鉄心1011及び固定鉄心1012の周囲に配置されるコイル1013と、可動鉄心1011と固定鉄心1012との間に設けられ、可動鉄心1011に対して弁座1003側に向けた弾性力を付与する第1スプリング1014と、可動鉄心1011と弁体1005とを連結し、弁座1003に接した状態の弁体1005に対して可動鉄心1011側に向けた弾性力を付与する第2スプリング1015と、を備える。弁体1005には開口1005Aが形成されており、コイル1013が非励磁状態のとき、可動鉄心1011は、第1スプリング1014の弾性力によって開口1005Aをその先端で閉じている。コイル1013に電流が供給されて励磁状態となったときは、可動鉄心1011が固定鉄心1012側に移動し、開口1005Aが開かれる。
【0101】
このようなパイロットキック式電磁切替弁では、閉状態から開状態に移行する際に、コイル1013に電流が供給されて励磁状態となる。この際、まず、開口1005Aから流体が下流側に流れる。その後、下流側に流体が流れるに従い、弁体1005が弁座1003から離れて、流体が弁座1003から下流側に流れる。パイロットキック式電磁切替弁は、段階的な開動作によって弁座1003の口径(流路面積)を大きく確保できるため、例えば20L/min以上などの大流量の流体の切り替えに適している。
【0102】
なお、大流量時に流速を低下させることなく下流側に流すことが可能であれば、第1供給側電磁切替弁841、第2供給側電磁切替弁842、第1分岐側電磁切替弁861、第2分岐側電磁切替弁862、第1循環側電磁切替弁881及び第2循環側電磁切替弁882は直動式の電磁切替弁で構成されてもよい。流量が大きくない場合には、コスト面を考慮すると、直動式の電磁切替弁が用いられることが好ましい。また、パイロットキック式ではないパイロット式電磁弁が採用されてもよい。
【0103】
また、本実施の形態では、第1供給側電磁切替弁841、第2供給側電磁切替弁842、第1分岐側電磁切替弁861、第2分岐側電磁切替弁862、第1循環側電磁切替弁881及び第2循環側電磁切替弁882がパイロットキック式電磁切替弁である。しかしながら、例えば第1供給側電磁切替弁841及び第2供給側電磁切替弁842がパイロットキック式電磁切替弁であり、その他は、直動式の電磁切替弁であってもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、第1の流体が-70℃以下に温度制御されるため、各電磁弁の材質は低温に充分に耐え得るものを使用することが望ましい。具体的には、弁ボディや、弁体は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で形成することが好ましい。弁ボディはブラスで形成してもよい。また、可動鉄心、固定鉄心、スプリング等はステンレス鋼から形成してもよい。
【0105】
<動作>
次に、温調システム1の動作の一例を説明する。
【0106】
温調システム1を動作させる際には、まず、制御装置90の指令により、第1冷凍機ユニット10における高温側冷凍機100の高温側圧縮機101、中温側冷凍機200の中温側圧縮機201、低温側冷凍機300の低温側圧縮機301が駆動され、第2冷凍機ユニット40における第2側圧縮機41が駆動され、第3冷凍機ユニット50における第3側圧縮機51が駆動される。また、制御装置90の指令により、第1流体通流装置20の第1側ポンプ22、第2流体通流装置60の第2側ポンプ62及び第3流体通流装置70の第3側ポンプ72が駆動される。
【0107】
これにより、高温側冷凍機100において高温側冷媒が循環し、中温側冷凍機200において中温側冷媒が循環し、低温側冷凍機300において低温側冷媒が循環する。第2冷凍機ユニット40において第2側冷媒が循環し、第3冷凍機ユニット50において第3側冷媒が循環する。また、第1流体通流装置20において第1の液体が通流し、第2流体通流装置60において第2の流体が通流し、第3流体通流装置70において第3の流体が通流する。
【0108】
制御装置90は、冷却の動作の際、高温側冷凍機100における高温側膨張弁103、流量調節弁122及び冷却用膨張弁132、中温側冷凍機200における中温側第1膨張弁203、中温側第2膨張弁223、流量調節弁232及び中温側第3膨張弁243、低温側冷凍機300における低温側膨張弁303及び流量調節弁322の開度を適宜調節することができる。同様に、第2側膨張弁43や第3側膨張弁53の開度も調節され得る。なお、上記各弁は、本実施の形態において、外部信号に基づいて開度を調節可能な電子膨張弁である。
【0109】
第1冷凍機ユニット10では、高温側冷凍機100において、高温側圧縮機101が圧縮させた高温側冷媒が高温側凝縮器102で凝縮されて、高温側膨張弁103に供給される。高温側膨張弁103は、高温側凝縮器102が凝縮した高温側冷媒を膨張させて降温し、高温側蒸発器104に供給する。高温側蒸発器104は、上述したように中温側冷凍機200の中温側凝縮器202と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成しており、供給された高温側冷媒を、中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒と熱交換させて中温側冷媒を冷却する。
【0110】
中温側冷凍機200では、中温側圧縮機201が圧縮させた中温側冷媒が第1カスケードコンデンサCC1において凝縮されて、
図2に示される分岐点BPにおいて分岐して、矢印に示すように、中温側第1膨張弁203と、中温側第2膨張弁223とに送られる。第1の流体を極めて低温まで冷却する際には、中温側第1膨張弁203と中温側第2膨張弁223とがともに開かれる。中温側第1膨張弁203は、第1カスケードコンデンサCC1が凝縮した中温側冷媒を膨張させて降温し、中温側第1蒸発器204に供給する。一方、中温側第2膨張弁223は、第1カスケードコンデンサCC1が凝縮した中温側冷媒を膨張させて降温し、中温側第2蒸発器224に供給する。
【0111】
そして、中温側第1蒸発器204は、中温側冷媒によって、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を冷却する。中温側第2蒸発器224は、上述したように低温側冷凍機300の低温側凝縮器302と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された中温側冷媒を、低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒と熱交換させて低温側冷媒を冷却する。
【0112】
低温側冷凍機300では、低温側圧縮機301が圧縮させた低温側冷媒が第2カスケードコンデンサCC2において凝縮されて、
図3に示されるように内部熱交換器IEを経て低温側膨張弁303に送られる。低温側膨張弁303は、内部熱交換器IEを通過した低温側冷媒を膨張させて降温し、低温側蒸発器304に供給する。そして、低温側蒸発器304は、低温側冷媒によって、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体を冷却する。そして、中温側第1蒸発器204によって冷却された後、低温側蒸発器304によって冷却された第1の流体は、バルブユニット80に流入する。
【0113】
また、内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒に過冷却度が付与され得る。
【0114】
第2冷凍機ユニット40では、第2側冷凍回路45において、第2側圧縮機41が圧縮させた第2側冷媒が第2側凝縮器42で凝縮されて、第2側膨張弁43に供給される。第2側膨張弁43は、第2側凝縮器42が凝縮した第2側冷媒を膨張させて降温し、第2側蒸発器44に供給する。第2側蒸発器44は、供給された第2側冷媒によって、第2流体通流装置60が通流させる第2の流体を冷却する。そして、第2側蒸発器44によって冷却された第2の流体は、バルブユニット80に流入する。
【0115】
また、第3冷凍機ユニット50では、第3側冷凍回路55において、第3側圧縮機51が圧縮させた第3側冷媒が第3側凝縮器52で凝縮されて、第3側膨張弁53に供給される。第3側膨張弁53は、第3側凝縮器52が凝縮した第3側冷媒を膨張させて降温し、第3側蒸発器54に供給する。第3側蒸発器54は、供給された第3側冷媒によって、第3流体通流装置70が通流させる第3の流体を冷却する。そして、第3側蒸発器54によって冷却された第3の流体は、温度制御対象Taに流入し、温度制御対象Taを温度制御した後、第3流体通流装置70に戻る。
【0116】
一方で、バルブユニット80に流入する第1の流体及び第2の流体は選択的に温度制御対象Taに供給される。バルブユニット80に含まれる各弁の開閉は、制御装置90からの制御信号によって制御される。
【0117】
温度制御対象Taに第1の流体を供給する際には、第1供給側電磁切替弁841及び第1循環側電磁切替弁881が開状態となるとともに、第1分岐側電磁切替弁861が閉状態となる。また第2供給側電磁切替弁842及び第2循環側電磁切替弁882が閉状態となるとともに、第2分岐側電磁切替弁862が開状態となる。
【0118】
この際、
図5に示すように、第1側流体流路21から流出する第1の流体は、第1供給流路831を介して温度制御対象Taに流れる。そして、温度制御対象Taから流出した第1の流体は、リターン側中継流路902を介して受け入れ流路870に流れる。その後、第1の流体は、第1循環流路871及び第1排出側共通流路897を介して第1側流体流路21に戻る。また、第2側流体流路61から流出する第2の流体は、第2側流体流路61と、第2供給流路832の一部と、第2分岐流路852と、第2排出側共通流路898とで構成される閉回路で循環する。
【0119】
また、温度制御対象Taに第2の流体を供給する際には、第2供給側電磁切替弁842及び第2循環側電磁切替弁882が開状態となるとともに、第2分岐側電磁切替弁862が閉状態となる。また、第1供給側電磁切替弁841及び第1循環側電磁切替弁881が閉状態となるとともに、第1分岐側電磁切替弁861が開状態となる。
【0120】
この際、
図6に示すように、第2側流体流路61から流出する第2の流体は、第2供給流路832を介して温度制御対象Taに流れる。そして、温度制御対象Taから流出した第2の流体は、リターン側中継流路902を介して受け入れ流路870に流れる。その後、第2の流体は、第2循環流路872及び第2排出側共通流路898を介して第2側流体流路61に戻る。また、第1側流体流路21から流出する第1の流体は、第1側流体流路21と、第1供給流路831の一部と、第1分岐流路851と、第1排出側共通流路897とで構成される閉回路で循環する。
【0121】
以上に説明した温調システム1では、第1流体通流装置20が通流させる第1の流体が、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204によって冷却(プレクール)された後、中温側第1蒸発器204よりも大きい冷凍能力を出力し得る低温側冷凍機300の低温側蒸発器304によって冷却される。これにより、温調システム1は、温度制御対象に対する目標の所望温度までの冷却を実現する際に、低温側冷凍機300において高性能な圧縮機を採用した単純な三元冷凍装置よりも容易に製作され得るため、具体的には特に低温側冷凍機300の低温側圧縮機301を簡素化できるため、極めて低温の温度域に設定される所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる。
【0122】
また、第1冷凍機ユニット10とは別の第2冷凍機ユニット40により、第2の流体を第1の流体よりも低い温度に温度制御する。そして、それぞれ異なる温度に温度制御される第1の流体と第2の流体とをバルブユニット80により選択的に切り替えて流出させることで、極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施できる。
したがって、極めて低温までの冷却を容易に且つ安定的に実現でき、さらには極めて低温の温度域を含む温度制御範囲内での温度差の大きい温度制御の切換を迅速に実施することができる。
【0123】
また、内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303に流入する前に冷却することができ、低温側蒸発器304から流出した低温側冷媒を低温側圧縮機301に流入する前に加熱することができる。その結果、低温側蒸発器304の冷凍能力を簡易的に高くすることができ、且つ低温側圧縮機301の耐久性能(耐冷性能)の確保に対する負担を軽減できる。そのため、低温側圧縮機301の能力を過剰に高めなくても所望の冷却を実現し易くなるため、製作容易性を向上させることができる。
【0124】
また、始動時においては、低温側蒸発器304から流出した低温側冷媒の過熱度が増加し得る問題があるが、内部熱交換器IEによって低温側冷媒の過熱度を低減できる。また、本実施の形態では、始動時において、まず、第2冷凍機ユニット40によって冷却された第2の流体で温度制御対象Taが冷却され、続いて、第1流体通流装置20が運転される。そして、冷却された温度制御対象Taに第1の流体を通過させることで、第1の流体が冷却される。続いて、第1冷凍機ユニット10が運転され、ある程度冷却された第1の流体を中温側第1蒸発器204及び低温側蒸発器304が冷却することで、過熱度の問題が解消され得る。
【0125】
また、バルブユニット80においては、温度制御対象Taに第1の流体を供給する状態から温度制御対象Taに第2の流体を供給する状態、又はその逆を切り替える際、流体の流れを切り替えるための弁が電磁切替弁(841,842,861,862,881,882)であるため、電流の供給及び遮断により、第1の流体の供給と第2の流体の供給とが迅速に切り替わる。また、流体の流れを切り替えるための弁が電磁切替弁であるため、比例式電磁弁よりも弁座の口径を大きくすることができ、大流量の液体を適正に開閉できる。また、比例式電磁弁を用いた場合よりも、液体の漏れも抑制することができる。したがって、異なる温度の流体(第1の流体及び第2の流体)を迅速に切り換えて供給できるとともに、供給する流体の温度変動を抑制できる。つまり、第1の流体によって第2の流体の温度が変動すること、又は、第2の流体によって第1の温度が変動することを抑制できる。
【0126】
また、本実施の形態では、第1の流体を第1流出口831Bから流出させる際に、第1供給側電磁切替弁841及び第1循環側電磁切替弁881が開状態となるとともに、第1分岐側電磁切替弁861が閉状態となる。また第2供給側電磁切替弁842及び第2循環側電磁切替弁882が閉状態となるとともに、第2分岐側電磁切替弁862が開状態となる。一方で、第2の流体を第2流出口832Bから流出させる際には、第2供給側電磁切替弁842及び第2循環側電磁切替弁882が開状態となるとともに、第2分岐側電磁切替弁862が閉状態となる。また、第1供給側電磁切替弁841及び第1循環側電磁切替弁881が閉状態となるとともに、第1分岐側電磁切替弁861が開状態となる。
【0127】
上述のように第1の流体を第1流出口831Bから流出させる際の各電磁切替弁の状態と、第2の流体を第2流出口832Bから流出させる際の各電磁切替弁の状態とは、本実施の形態において、各弁に対する制御信号を反転させることで切り替えることが可能となる。そのため、異なる温度の流体を極めて迅速に且つ容易に切り換えて供給できるようになる。
【0128】
また、第1供給流路831には、第1供給側電磁切替弁841よりも下流側に配置される第1逆止弁891が設けられ、第2供給流路832には、第2供給側電磁切替弁842よりも下流側に配置される第2逆止弁892が設けられている。これにより、第1の流体を第1流出口831Bから流出させる際に、第1の流体が第2側流体流路61側に流れることが抑制され、第2の流体を第2流出口832Bから流出させる際に、第2の流体が第1側流体流路21側に流れることが抑制される。これにより、第1の流体又は第2の流体の不所望な漏れ及び温度変動が抑制されることで、効率的な流体供給が可能となる。
【0129】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態においては種々の変更を加えることができる。
【0130】
<バルブユニットの変形例>
以下、バルブユニット80の変形例について説明する。変形例における構成部分のうち上述の実施の形態と同様のものは、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0131】
図8に示す変形例にかかるバルブユニット80’は、第1供給流路831と、第2供給流路832と、供給側流路切替三方弁931と、第1分岐流路851と、第1分岐側電磁切替弁861と、第2分岐流路852と、第2分岐側電磁切替弁862と、循環側流路切替三方弁932と、第1循環流路871と、第2循環流路872と、を備える。
【0132】
第1供給流路831は、第1流入口831Aと第1流出口831Bとを有し、第1流入口831Aに流入する第1の流体を通流させて第1流出口831Bから流出させるように構成されている。
【0133】
第2供給流路832は、第2流入口832Aと第2流出口832Bとを有し、第2流入口832Aに流入する第2の流体を通流させて第2流出口832Bから流出させるように構成されている。
【0134】
供給側流路切替三方弁931は、第1流出口831Bと接続して第1の流体を受け入れる第1流体流入ポート931Aと、第2流出口832Bと接続して第2の流体を受け入れる第2流体流入ポート931Bと、供給側流出ポート931Cとを有し、第1流体流入ポート931Aと供給側流出ポート931Cとの流体的接続及び第2流体流入ポート931Bと供給側流出ポート931Cとの流体的接続を切り替えるように構成されている。
【0135】
第1分岐流路851は、第1供給流路831から分岐し、第1供給流路831から流入する第1の流体を通流させる。第1分岐側電磁切替弁861は第1分岐流路851に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第1分岐流路851における第1の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。
【0136】
第2分岐流路852は、第2供給流路832から分岐し、第2供給流路832から流入する第2の流体を通流させる。第2分岐側電磁切替弁862は第2分岐流路852に設けられ、開状態及び閉状態の切り替えにより、第2分岐流路852における第2の流体の通流及び遮断を切り替えるように構成されている。
【0137】
循環側流路切替三方弁932は、供給側流出ポート931Cから流出して温度制御対象Taを経由した後にバルブユニット80’側に戻る第1の流体又は第2の流体を受け入れる循環側流入ポート932Aと、第1流出ポート932Bと、第2流出ポート932Cとを有し、循環側流入ポート932Aと第1流出ポート932Bとの流体的接続及び循環側流入ポート932Aと第2流出ポート932Cとの流体的接続を切り替えるように構成されている。
【0138】
循環側流入ポート932Aは受け入れ流路870に接続される。第1循環流路871は、第1流出ポート932Bに接続され、第2循環流路872は、第2流出ポート932Cに接続される。ここで、本実施の形態におけるバルブユニット80’も、第1分岐流路851の下流口及び第1循環流路871の下流口と接続する接続口897Aと、第1側流体流路21に直接的に接続される端口897Bとを有する第1排出側共通流路897をさらに備えている。また、バルブユニット80’は、第2分岐流路852の下流口及び第2循環流路872の下流口と接続する接続口898Aと、第2側流体流路61に直接的に接続される端口898Bとを有する第2排出側共通流路898をさらに備えている。
【0139】
バルブユニット80’の動作について
図9及び
図10を参照しつつ説明する。以下の説明においては、上述の実施の形態と同様に、バルブユニット80’における各弁が制御装置90の制御に応じて動作している。
図9及び
図10において、太線で示された部分は流体が流れる箇所を示している。
【0140】
第1の流体を供給側流出ポート931Cから流出させる際に、供給側流路切替三方弁931が、第1流体流入ポート931Aと供給側流出ポート931Cとを流体的に接続し、第2流体流入ポート931Bと供給側流出ポート931Cとを流体的に遮断する。また、循環側流路切替三方弁932は、循環側流入ポート932Aと第1流出ポート932Bとを流体的に接続し、循環側流入ポート932Aと第2流出ポート932Cとを流体的に遮断する。また、第1分岐側電磁切替弁861が閉状態となり、第2分岐側電磁切替弁862は開状態となる。
【0141】
この際、
図9に示すように、第1の流体は、第1側流体流路21から第1供給流路831及び供給側流出ポート931Cを介して温度制御対象Taに流れる。そして、温度制御対象Taから流出した第1の流体は、リターン側中継流路902を介して受け入れ流路870に流れる。その後、第1の流体は、第1流出ポート932B、第1循環流路871及び第1排出側共通流路897を介して第1側流体流路21に戻る。また、第2側流体流路61から流出する第2の流体は、第2側流体流路61と、第2供給流路832の一部と、第2分岐流路852と、第2排出側共通流路898とで構成される閉回路で循環する。
【0142】
また、第2の流体を供給側流出ポート931Cから流出させる際には、供給側流路切替三方弁931が、第1流体流入ポート931Aと供給側流出ポート931Cとを流体的に遮断し、第2流体流入ポート931Bと供給側流出ポート931Cとを流体的に接続する。また、循環側流路切替三方弁932は、循環側流入ポート932Aと第1流出ポート932Bとを流体的に遮断し、循環側流入ポート932Aと第2流出ポート932Cとを流体的に接続する。また、第1分岐側電磁切替弁861が開状態となり、第2分岐側電磁切替弁862は閉状態となる、
【0143】
この際、
図10に示すように、第2側流体流路61から流出する第2の流体は、第2側流体流路61から第2供給流路832及び供給側流出ポート931Cを介して温度制御対象Taに流れる。そして、温度制御対象Taから流出した第2の流体は、リターン側中継流路902を介して受け入れ流路870に流れる。その後、第2の流体は、第2流出ポート932C、第2循環流路872及び第2排出側共通流路898を介して第2側流体流路61に戻る。また、第1側流体流路21から流出する第1の流体は、第1側流体流路21と、第1供給流路831の一部と、第1分岐流路851と、第1排出側共通流路897とで構成される閉回路で循環する。
【0144】
以上の変形例にかかるバルブユニット80’では、上述の実施の形態のバルブユニット80よりも使用する弁の個数を減らすことが可能となるため、組み立て作業やコスト面で有利となる。
【符号の説明】
【0145】
1…温調システム、2…冷却水通流装置、2A…共通配管、2B…第1冷却管、2C…第2冷却管、2D…第3冷却管、10…第1冷凍機ユニット、20…第1流体通流装置、21…第1側流体流路、21U…上流口、21D…下流口、22…第1側ポンプ、100…高温側冷凍機、101…高温側圧縮機、102…高温側凝縮器、103…高温側膨張弁、104…高温側蒸発器、110…高温側冷凍回路、120…高温側ホットガス回路、121…ホットガス流路、122…流量調節弁、130…冷却用バイパス回路、131…冷却用流路、132…冷却用膨張弁、200…中温側冷凍機、201…中温側圧縮機、202…中温側凝縮器、203…中温側第1膨張弁、204…中温側第1蒸発器、210…中温側冷凍回路、220…カスケード用バイパス回路、221…分岐流路、223…中温側第2膨張弁、224…中温側第2蒸発器、230…中温側ホットガス回路、231…ホットガス流路、232…流量調節弁、240…カスケード冷却用回路、241…冷却用流路、243…中温側第3膨張弁、300…低温側冷凍機、301…低温側圧縮機、302…低温側凝縮器、303…低温側膨張弁、304…低温側蒸発器、310…低温側冷凍回路、311…第1部分、312…第2部分、320…低温側ホットガス回路、321…ホットガス流路、322…流量調節弁、40…第2冷凍機ユニット、41…第2側圧縮機、42…第2側凝縮器、43…第2側膨張弁、44…第2側蒸発器、45…第2側冷凍回路、50…第3冷凍機ユニット、51…第3側圧縮機、52…第3側凝縮器、53…第3側膨張弁、54…第3側蒸発器、55…第3側冷凍回路、60…第2流体通流装置、61…第2側流体流路、61U…上流口、61D…下流口、62…第2側ポンプ、70…第3流体通流装置、71…第3側流体流路、72…第3側ポンプ、80…バルブユニット、831…第1供給流路、831A…第1流入口、831B…第1流出口、832…第2供給流路、832A…第2流入口、832B…第2流出口、841…第1供給側電磁切替弁、842…第2供給側電磁切替弁、851…第1分岐流路、852…第2分岐流路、861…第1分岐側電磁切替弁、862…第2分岐側電磁切替弁、870…受け入れ流路、871…第1循環流路、872…第2循環流路、881…第1循環側電磁切替弁、882…第2循環側電磁切替弁、891…第1逆止弁、892…第2逆止弁、896…供給側共通流路、896A…接続口、896B…端口、897…第1排出側共通流路、897A…接続口、897B…端口、898…第2排出側共通流路、898A…接続口、898B…端口、901…供給側中継流路、902…リターン側中継流路、90…制御装置、CC1…第1カスケードコンデンサ、CC2…第2カスケードコンデンサ、IE…内部熱交換器、Ta…温度制御対象