(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】腫瘍療法のためのIL-12とT細胞阻害分子遮断薬とを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230123BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230123BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20230123BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
C12N15/24
(21)【出願番号】P 2020156300
(22)【出願日】2020-09-17
(62)【分割の表示】P 2018142367の分割
【原出願日】2012-10-10
【審査請求日】2020-10-13
(32)【優先日】2011-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2011-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2012-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507396301
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】ベッヒャー、ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】フォム ベルク、ヨハネス
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197247(JP,A)
【文献】Nature Immunology,2010年,Vol.11,No.11,p1030-1038
【文献】Molecular Oncology,2011年06月,Vol.5,No.3,p242-255
【文献】Drug Delivery System,2010年,Vol.25,No.2,p94-102
【文献】福岡医学雑誌,2010年,Vol.101,No.10,p207-214
【文献】Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2010年,Vol.107,No.9,p4275-4280
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 39/395
A61P 35/00
C12N 15/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-12ポリペプチドをコードする配列を含む核酸発現ベクターと、
非アゴニストCTLA-4抗体および非アゴニストPD-1抗体から選択されるT細胞阻害遮断薬と
を含む
多形性膠芽腫または黒色腫の療法において使用するための医薬組成物であって、
前記核酸発現ベクターが腫瘍への、腫瘍の近傍への、または腫瘍に関連するリンパ節への投与により提供されるとともに、前記T細胞阻害遮断薬が全身送達用の剤形として提供される、
医薬組成物。
【請求項2】
前記IL-12ポリペプチドが、
a.ヒトp35の配列(配列番号05)と少なくとも95%同一のポリペプチド配列と、
b.ヒトp40の配列(配列番号06)と少なくとも95%同一のポリペプチド配列と
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記非アゴニストCTLA-4抗体が、CTLA-4と結合するγ免疫グロブリンであり、かつ/または
前記非アゴニストPD-1抗体が、PD-1と結合するγ免疫グロブリンである、
請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記IL-12ポリペプチドをコードする配列を含む核酸発現ベクターが腫瘍内注射用の剤形として提供される、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記T細胞阻害遮断薬が静脈内注射用の剤形として提供される、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記核酸発現ベクターがIL-12ポリペプチドをコードする核酸配列をヒト腫瘍細胞で作動可能なプロモーター配列の制御下に含むDNA発現プラスミドである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記核酸発現ベクターがアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスまたはヘルペスウイルスである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
多形性膠芽腫または黒色腫の療法において使用するための医薬組成物の製造における、IL-12の生物活性を有するIL-12ポリペプチドをコードする配列を含む核酸発現ベクターと、非アゴニストCTLA-4抗体および非アゴニストPD-1抗体から選択されるT細胞阻害遮断薬の使用であって、前記核酸発現ベクターが腫瘍への、腫瘍の近傍への、または腫瘍に関連するリンパ節への投与のための剤形として提供される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効用量の、IL-12の生物活性を有するポリペプチドとT細胞ダウンレギュレーターの非アゴニストリガンド、特に、CTLA-4および/またはProgrammed 1(PD-1)に対する非アゴニストリガンドとを投与することによる、癌を治療するための組成物および方法、特に、神経膠腫などの悪性腫瘍性疾患の免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
多形性膠芽腫(GBM)は、最も悪性度の高い星状細胞腫瘍である。GBMは浸潤性かつ破壊的な増殖パターンを示し、ヒトにおいて最も多く、最も急速進行性の悪性原発脳腫瘍であり、全頭蓋内腫瘍の20%を占める。
ほとんどの欧州諸国および北米では、GBM罹患率は、年間10万人に3~3.5人の新症例という範囲である。この疾患の臨床歴は通常短く(症例の50%超で3か月未満)、GBMと診断された患者は、侵襲的手術、放射線療法、および化学療法を行っても、生存期間中央値は14~18か月である。神経膠腫の従来の治療計画に対する抵抗力は、現代の神経腫瘍学の最大の挑戦の1つである。
【0003】
インターロイキン(IL)-12は、主として炎症特性を有するヘテロ二量体型サイトカインの一群のプロトタイプである。IL-12は、TH1表現型を採るようにナイーブヘルパーT細胞を分極し、細胞傷害性T細胞およびNK細胞を刺激する。
IL-12は、IL-12R-β1とIL-12R-β2により形成されるヘテロ二量体型受容体であるIL-12受容体(IL-12R)と結合する。この受容体複合体は主としてT細胞により発現されるが、他のリンパ球亜集団もIL-12に応答性があることが分かっている。
【0004】
種々の腫瘍存在におけるIL-12の治療適用が示唆されてきた。しかしながら、全身適用は有効用量で、死亡を含む重大な有害事象を引き起こしたことから、癌患者での臨床試験は中止しなければならなった。近年の研究では、IL-12の様々な投与経路に主として焦点が当てられてきたが、IL-12がその腫瘍抑制特性を発揮する正確な機序については、なお未解決な問題が残っている。
【0005】
CTLA-4およびPD-1はともに、T細胞レギュレーターの拡張CD28/CTLA-4ファミリーのメンバーである。PD-1は、活性化されたT細胞、B細胞およびマクロファージの表面で発現される。PD-1(CD279;Uniprot Q15116)は、B7ファミリーのメンバーであるPD-L1(B7-H1、CD274)とPD-L2(B7-DC、CD273)の、2つのリガンドを有する。
【0006】
CTLA-4(Uniprot ID No P16410)はTヘルパー細胞の表面で発現され、Tリンパ球に阻害シグナルを伝達する。CTLA-4およびCD28は、抗原提示細胞上のCD80(B7-1)およびCD86(B7-2)に結合する。CTLA-4はT細胞に阻害シグナルを伝達し、一方、CD28は刺激シグナルを伝達する。全身的抗CTLA-4処置は臨床用途に承認されており、臨床利益を示す。この処置はさらに他の種々の固形癌に対しても試験されている(非特許文献1;非特許文献2)。CTLA-4に対する市販の抗体は、一般名イピリムマブとして入手可能である(Yervoyとして販売されている)。
【0007】
種々の抗PD-L1抗体(例えば、MDX-1105/BMS-936559)および抗PD-1抗体は現在、臨床試験下にある(例えば、MDX-1106/BMS-936558/ONO-4538またはMK-3475/SCH900475またはAMP-224)。
【0008】
糖タンパク質免疫グロブリンG(IgG)は、ヒトにおける体液性免疫応答の主要なエフェクター分子である。IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と呼ばれるヒトIgGの4つの異なる亜群が存在する。
これら4つのサブクラスは、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に95%を超える相同性を示すが、ヒンジ領域の構造および柔軟性に関して異なり、特に、このドメイン内の重鎖内ジスルフィド結合の数が異なる。IgGサブクラス間でのこれらの構造的な違いは、パパイン、プラスミン、トリプシンおよびペプシンなどのタンパク質分解酵素に対するそれらの感受性にも反映される。
【0009】
ヒトIgG4のアイソフォームは1つだけ知られている。ヒトIgG1、IgG2およびIgG3とは対照的に、ヒトIgG4は補体を活性化しない。さらに、IgG4は、IgG2およびIgG3に比べてタンパク質分解酵素に対する感受性が低い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hodi et al., N Engl J Med 363, 711-723 (2010)
【文献】Graziani et al., Pharmacol Res (2012) Jan;65(1):9-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の基礎にある課題は、固形癌、特に、神経膠腫を処置するための改良された手段および方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
関連の齧歯類モデルでの進行した段階のGBMにおけるIL-12の臨床治療能に焦点を当てた試験の過程で、驚くことに、IL-12と、抗CTLA-4抗体による共阻害シグナルの遮断との組合せが、進行した病期であってもほぼ完全な腫瘍根絶と治癒をもたらすことが見出された。同様に、IL-12と、抗PD-1抗体による共阻害シグナルの遮断との組合せは腫瘍退縮をもたらす。
【0013】
本発明の第一の態様によれば、固形腫瘍、特定の脳腫瘍、特に、神経膠腫の療法において使用するための医薬組成物が提供され、前記医薬組成物は、
IL-12ポリペプチドと、
非アゴニストCTLA-4リガンドおよび非アゴニストPD-1またはPD-L1またはPD-L2リガンドから選択されるT細胞阻害遮断薬と
を含む。
【0014】
本発明の文脈において、IL-12ポリペプチドは、p35の配列(Uniprot ID29459、配列番号05)またはその機能的ホモログを含み、かつ、p40の配列(Uniprot ID29460、配列番号06)またはその機能的ホモログを含むアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
一実施形態では、IL-12ポリペプチドは、p35およびp40両方の配列またはそのホモログを含むアミノ酸配列を同じ連続するアミノ酸鎖の一部として有する。別の実施形態では、IL-12ポリペプチドは、2本の異なるアミノ酸鎖を含み、一方はp35配列を含み、他方はp40配列を含む。用語「IL-12ポリペプチド」は、本明細書に記載のIL-12配列に融合された非IL-12配列、例えば、免疫グロブリン配列およびそのフラグメントの存在を排除しない。
【0015】
IL-12ポリペプチドは、IL-12の生物活性を有する。本発明の文脈においてIL-12の生物活性は、前記IL-12ポリペプチドによるNK細胞またはT細胞の刺激、最も著しくは、パーフォリンか介して作用するTエフェクター細胞の刺激である。
【0016】
医薬組成物の一実施形態では、前記IL-12ポリペプチドは、ヒトp35の配列(配列番号05)と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチド配列と、ヒトp40の配列(配列番号06)と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一のポリペプチド配列とを含む。
【0017】
本発明の文脈において同一性は、位置毎の配列比較の結果を表す単一の量的パラメーターである。配列比較の方法は当技術分野で公知であり、公的に利用可能なBLASTアルゴリズムが一例である。
【0018】
一実施形態では、前記IL-12ポリペプチドは、組換えヒトIL-12である。一実施形態では、前記IL-12ポリペプチドは、合成ヒトIL-12である。一実施形態では、前記IL-12ポリペプチドは、ヒト免疫グロブリンの結晶性フラグメント(Fc領域)を含む融合ペプチドである。一実施形態によれば、前記IL-12ポリペプチドは、ヒト免疫グロブリンGの結晶性フラグメントを含む。
本発明の文脈において結晶性フラグメントは、IgG分子の第二および第三の定常ドメインを意味する。結晶性フラグメント領域(Fc領域)は、細胞表面受容体(Fc受容体)および補体系のタンパク質と相互作用する免疫グロブリン抗体のテール領域である。IgG抗体アイソタイプでは、Fc領域は、その抗体の2本の重鎖の第二および第三の定常ドメインに由来する、2つの同一のタンパク質フラグメントから構成される。
【0019】
一実施形態によれば、前記IL-12ポリペプチドは、ヒト免疫グロブリンG4の結晶性フラグメントを含む。一実施形態によれば、前記IL-12ポリペプチドは、配列番号01の配列を有するか、または含む。別の実施形態によれば、前記IL-12ポリペプチドは、配列番号01の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を含む。
【0020】
IL-12ポリペプチド鎖が免疫グロブリンFcフラグメントに融合された実施形態は、いくつかの適用に関して利益を付与し得る組換えサイトカインとは異なる薬物動態挙動を示す。
【0021】
一実施形態では、本医薬組成物のIL-12ポリペプチド成分は、局所(腫瘍内)投与または送達用の剤形として提供される。このような局所(腫瘍内)投与用の剤形は、前記IL-12ポリペプチドが数時間~数週間にわたって放出される徐放型またはデポー型であり得る。
一実施形態では、本医薬組成物のIL-12ポリペプチド成分は、対流増加送達(convection enhanced delivery)(CED)またはその変形形態、例えば、US2011137289(A1)(参照により本明細書に組み入れる)に示されているデバイスによって投与される。
【0022】
一実施形態では、前記IL-12ポリペプチドは、全身的CTLA-4/PD-1/PD-L1/PD-L2遮断とともに全身投与される。全身的CTLA-4遮断(i.p.)とともに全身適用されたヘテロ二量体型組換えIL-12(peprotech社)は、単独で投与された各薬剤に比べて生存の有意な改善を達成した(
図11参照)。
【0023】
本発明の文脈において、非アゴニストCTLA-4リガンドは、CTLA-4の生理学的リガンドのいずれか、特にCD80および/またはCD86とのCTLA-4相互作用の生物学的作用を誘発することなく、末梢血に一般的な条件下でCTLA-4と選択的に結合する分子である。
【0024】
本発明の文脈において、非アゴニストPD-1リガンドは、PD-1と、PD-1の生理学的リガンドのいずれか、特に、PD-L1またはPD-L2との相互作用の生物学的作用を誘発することなく、末梢血に一般的な条件下でPD-1と選択的に結合する分子である。
非アゴニストPD-L1(PD-L2)リガンドは、PD-L1(PD-L2)と、その生理学的リガンドのいずれか、特にPD-1との相互作用の生物学的作用を誘発することなく、末梢血に一般的な条件下でPD-L1(またはPD-L2)と選択的に結合する分子である。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記非アゴニストCTLA-4リガンドは、CTLA-4と結合するポリペプチドである。いくつかの実施形態では、前記非アゴニストPD-1リガンドは、PD-1と結合するポリペプチドである。
【0026】
本発明の意味において非アゴニストCTLA-4リガンドは、少なくとも10-7
M、10-8
Mまたは10-9
Mの解離定数でCTLA-4と結合することができ、かつ、その各標的の生物活性を阻害する分子を意味する。本発明の意味において非アゴニストPD-1リガンドまたは非アゴニストPD-L1(PD-L2)リガンドは、少なくとも10-7
M、10-8
Mまたは10-9
Mの解離定数でPD-1(PD-L1、PD-L2)と結合することができ、かつ、その各標的の生物活性を阻害する分子を意味する。
【0027】
非アゴニストポリペプチドリガンドは、抗体、抗体フラグメント、抗体様分子またはオリゴペプチドであり得、これらはいずれもそれぞれCTLA-4、PD-1またはPD-L1(PD-L2)に結合することにより、それらを阻害する。
【0028】
抗体フラグメントは、抗体のFabドメインもしくはFvドメイン、または一本鎖抗体フラグメントであり得、この一本鎖抗体はペプチドリンカーにより連結された抗体の軽鎖および重鎖の可変領域からなる融合タンパク質である。
阻害剤はまた、重鎖または軽鎖から単離された可変ドメインからなるシングルドメイン抗体であってもよい。さらに、抗体はまた、ラクダ科動物に見られる抗体などの、重鎖のみからなる重鎖抗体であってもよい。抗体様分子は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(Molecular Partners, Zurich)などのリピートタンパク質であってもよい。
【0029】
本発明の上記態様によるオリゴペプチドは、CTLA-4、PD-1またはPD-L1またはPD-L2の生理学的リガンドの認識部位に由来するペプチドであり得る。このようなオリゴペプチドリガンドは、それぞれCTLA-4、PD-1またはPD-L1またはPD-L2との結合に関して生理学的リガンドと競合する。
【0030】
特に、非アゴニストCTLA-4リガンドまたは非アゴニストPD-1リガンドまたは非アゴニストPD-L1リガンドまたは非アゴニストPD-L2リガンドは、T細胞の表面上のそれぞれCTLA-4、PD-1、PD-L1またはPD-L2と結合した際に、T細胞活性の減弱をもたらさない。
特定の実施形態では、用語「非アゴニストCTLA-4リガンド」または「非アゴニストPD-1リガンド」とは、CTLA-4またはPD-1のアンタゴニストとCTLA-4またはPD-1シグナル伝達に対してニュートラルであるリガンドの両方を包含する。
いくつかの実施形態では、本発明において使用される非アゴニストCTLA-4リガンドは、CTLA-4と結合した際に、CTLA-4とその結合相手CD80および/またはCD86との相互作用を立体的に遮断することができ、本発明において使用される非アゴニストPD-1リガンドは、PD-1と結合した際に、PD-1と、その結合相手PD-L1および/またはPD-L2との相互作用を立体的に遮断することができる。
【0031】
一実施形態では、前記非アゴニストCTLA-4リガンドは、CTLA-4とその結合相手CD80および/またはCD86との相互作用の生理学的応答を誘発することなく、CTLA-4と結合するγ免疫グロブリンである。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記非アゴニストPD-1リガンドは、PD-1とその結合相手PD-L1および/またはPD-L2との相互作用の生理学的応答を誘発することなく、PD-1と結合するγ免疫グロブリンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記非アゴニストPD-L1(PD-L2)リガンドは、PD-1とその結合相手PD-L1および/またはPD-L2との相互作用の生理学的応答を誘発することなく、PD-L1(PD-L2)と結合するγ免疫グロブリンである。
【0034】
CTLA-4リガンドの限定されない例として、臨床承認済みの抗体トレメリムマブ(CAS 745013-59-6)およびイピリムマブ(CAS No.477202-00-9;Yervoy)がある。
【0035】
PD-1/PD-L1またはPD-L2リガンドの限定されない例として、現在臨床開発下にある抗体MDX-1105/BMS-936559、MDX-1106/BMS-936558/ONO-4538、MK-3475/SCH900475またはAMP-224がある。
【0036】
本明細書において用語「γ免疫グロブリン」は、完全な免疫グロブリン分子およびその機能的フラグメントの両方を包含することを意図し、その機能は上記で展開したようにCTLA-4、PD-1またはPD-L1(PD-L2)との結合である。
【0037】
一実施形態では、本併用療法は2つの異なる剤形を含み、前記IL-12ポリペプチドは腫瘍内送達または腫瘍近傍への局所送達用の剤形として提供され、前記非アゴニストCTLA-4リガンドまたは非アゴニストPD-1リガンドは全身送達、特に静脈内注射による全身送達用の剤形として提供される。しかしながら、前記非アゴニストCTLA-4リガンドまたは非アゴニストPD-1リガンドは、IL-12ポリペプチドと同様に局所適用してもよい。別の実施形態によれば、IL-12ポリペプチドは、腫瘍所属リンパ節に直接適用される。
【0038】
別の実施形態によれば、本併用療法は一剤形を含み、それにより、前記IL-12ポリペプチドは、例えば注射による頭蓋内送達用に提供される。
【0039】
本発明の別の態様によれば、医薬組成物は、悪性腫瘍性疾患、特に、固形癌性病変の療法において使用するために、上記で示したように提供される。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は神経膠腫である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は二次脳腫瘍(脳の外部で生じた腫瘍性病変の脳転移)である。
一実施形態では、前記疾患は多形性膠芽腫である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は髄膜腫である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は黒色腫である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は膵臓癌である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は肺癌である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は前立腺癌である。一実施形態では、前記悪性腫瘍性疾患は膀胱癌である。
【0040】
癌性病変は、それらの起源に応じて、隣接組織ならびに身体の異なる部位に拡がる傾向を持つ。全ての癌の20~40%は脳転移を起こし、中でも肺癌、乳癌および皮膚癌(黒色腫)が、最も多い脳転移源である(Sofietti et al., J Neurol 249, 1357-1369 (2002))。原発性悪性脳腫瘍と同様に、脳転移は処置を行っても予後が不良であり、急速に死に至る。
T細胞は、IL-12を介した脳の腫瘍排除に重要なエフェクター細胞集団である。IL-12と抗CTLA-4、抗PD-1、抗PD-L1または抗PD-L2との併用処置は、特にT細胞に働きかけてそれらを活性化し、再分極させる。脳転移は原発性脳腫瘍と同じ免疫コンパートメントで増殖するので、二次脳腫瘍に罹患している患者もこの併用処置から利益を受ける。
【0041】
一実施形態では、本医薬組成物は、ヒトp40のアミノ酸、ヒトp35のアミノ酸配列およびヒトIgG4の結晶性フラグメントを含む融合タンパク質として提供される、IL-12の生物活性を有するIL-12ポリペプチドを含み、前記IL-12ポリペプチドは腫瘍内送達用の剤形として調剤される。
この実施形態によれば、医薬組成物は、全身送達用の剤形として調剤された、非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドとしての、CTLA-4またはPD-1に対して作製された免疫グロブリンGをさらに含む。この実施形態によれば、医薬組成物は、悪性腫瘍性疾患、特に、神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、黒色腫、膵臓癌、肺癌、前立腺癌または膀胱癌の処置のために提供される。
【0042】
本発明のさらに別の態様によれば、IL-12の生物活性を有するIL-12ポリペプチドと非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドは、悪性腫瘍性疾患、特に神経膠腫、および他の固形組織腫瘍、例えば、多形性膠芽腫、髄膜腫、黒色腫、膵臓癌、肺癌、前立腺癌または膀胱癌の療法において使用するための医薬組成物の製造において使用される。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、悪性腫瘍性疾患、特に神経膠腫、および他の固形組織腫瘍に罹患している患者を処置するための方法が提供され、前記患者へのIL-12の生物活性を有するIL-12ポリペプチドと非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドの投与を含む。
【0044】
本発明の別の態様によれば、併用療法は、IL-12の生物活性を有するコード化IL-12ポリペプチドをコードするIL-12核酸発現ベクターと、
非アゴニストCTLA-4リガンドおよび
非アゴニストPD-1またはPD-L1またはPD-L2リガンド
から選択されるT細胞阻害遮断薬とを含む。
【0045】
CTLA-4リガンドおよび非アゴニストPD-1リガンドは、上記で示したように、ポリペプチド、特に抗体により具現化される。コード化IL-12ポリペプチドの限定されない例としては、免疫グロブリンGフラグメントとIL-12構成ポリペプチド鎖、ヒトIL-12またはその機能的等価物との融合物である。
1つの限定されない例が、
図1に示されるように短いアミノ酸配列により連結されたIL-12の構成ポリペプチドを有する融合構築物であり、そのアミノ酸配列は配列番号01として示され、コード核酸配列は配列番号07として示される。
【0046】
本発明のさらに別の態様によれば、
a.ヒトp35の配列(配列番号05)と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、および
b.ヒトp40の配列(配列番号06)と少なくとも95%同一のポリペプチド配列、および
c.ヒト免疫グロブリンGサブグループ4結晶性フラグメント
を含むポリペプチドペプチドが提供される。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号01と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%同一であるか、または配列番号01である配列を含むか、または前記配列から本質的になる。
【0048】
組換えサイトカインよりもむしろサイトカインと免疫グロブリンの結晶性フラグメントとの融合タンパク質を使用することの利点は、薬物動態の向上である(Belladonna et al., J Immunol 168, 5448-5454 (2002); Schmidt, Curr Opin Drug Discov Devel/ 12, 284-295 (2009); Eisenring et al., Nat Immunol 11, 1030-1038 (2010))。
【0049】
本発明のこの態様によるIL-12核酸発現ベクターは、限定されない例として、例えば頭蓋内注射により腫瘍に送達するための、IL-12ポリペプチドをコードする核酸配列をヒト腫瘍細胞で作動可能なプロモーター配列の制御下に含む「裸の」DNA発現プラスミドであり得る。このIL-12核酸発現ベクターは、同様に、ウイルスベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスまたはヘルペスウイルスであってもよい。
【0050】
このようなIL-12核酸発現ベクターは、上記で示したようなタンパク質非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドと組み合わせて腫瘍内送達用の剤形として提供してもよい。同様に、本発明の範囲は、悪性腫瘍性疾患、特に神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、黒色腫、膵臓癌、肺癌、前立腺癌または膀胱癌の療法において使用するための医薬組成物の製造方法における、非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドと組み合わせたこのようなIL-12核酸発現ベクターの使用も包含する。
同様に、悪性腫瘍性疾患、特に神経膠腫、または他の固形組織腫瘍に罹患している患者を処置するための方法が提供され、前記患者へのIL-12の生物活性を有するIL-12核酸発現ベクターと非アゴニストCTLA-4リガンドおよび/または非アゴニストPD-1リガンドの投与を含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1a】配列番号01で示される融合タンパク質の構造および配列を示す。IL-12のサブユニットp40およびp35を長方形で示す。これらのサブユニットはリンカー(G
4S)
3により連結されている。免疫グロブリンの結晶性フラグメントのサブユニットCH2、CH3およびCH1の最後の6個のアミノ酸を長楕円で示す。
【
図1b】配列番号01で示される融合タンパク質を示し、左の画像は、HRP結合ポリクローナル抗ヒトFc抗体で可視化した、還元条件を用いた免疫ブロットを示し、右の画像は、非還元条件下(DTT-)および還元条件下(DTT+)での融合タンパク質の銀染色を示す。
【
図1c】酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により評価した際のヒト末梢血単核細胞(PBMC)のIFN-γ生産を示す。細胞は、CD3に対する抗体の存在下、市販のヘテロ二量体型組換えヒトIL-12(rhIL-12)または配列番号01で示される精製融合タンパク質(hIL-12Fc)のいずれかで刺激した(ポリクローナルT細胞刺激)。非刺激:IL-12刺激も抗CD3刺激も無し(ベースライン対照)。実験は3反復で行い、エラーバーは3回の独立した実験の代表的なs.e.m.データを表す。
【
図2】2×10
4 Gl261 IL-12FcまたはGl261 Fc細胞による刺激から5週間後に同系C57/Bl6マウスから得たホルマリン固定腫瘍切片をF4/80に対する抗体で染色し、ヘマトキシリンで対比染色を行った免疫組織化学を示す(代表例、各群マウスn=6個体)。スケールバーは2mmを示し、矢印は残存するGl261 IL-12Fc(配列番号02)腫瘍を示す。
【
図3】キタアメリカホタル(photinuspyralis)ルシフェラーゼを構成的に発現し、IL-12とマウスの免疫グロブリンG3の結晶性フラグメントとの融合タンパク質(Gl261 IL-12FC(配列番号02))または対照としてのFc単独(Gl261 Fc)を放出する2×10
4 Gl261細胞の移植後の同系C57/Bl6マウス(各群マウスn=5~6個体)におけるマウス神経膠腫の非侵襲的生物発光イメージング(BLI)を示す。上のパネル:改変型神経膠腫細胞の注射後の日数に対する関心領域(ROI)内の光子束(p/s)と相関する腫瘍成長の定量。下のパネル:カプラン・マイヤー生存分析。データは2回の独立した実験の代表的なものである。
【
図4】キタアメリカホタル・ルシフェラーゼを構成的に発現し、IL-12とマウス免疫グロブリンG3の結晶性フラグメントとの融合タンパク質(Gl261 IL-12Fc(配列番号02))を放出する2×10
4 Gl261細胞の移植後のWT動物および種々のマウス突然変異体(各群マウスn=5~7個体)におけるマウス神経膠腫の非侵襲的生物発光イメージング(BLI)を示す。上のパネル:改変型神経膠腫細胞の注射後の日数に対するBLI法による腫瘍成長の定量。下のパネル:カプラン・マイヤー生存分析。A)Gl261 IL-12Fcを、T細胞およびB細胞を欠くマウス(Rag1
-/-)またはNK細胞を欠くマウス(Il-15ra
-/-)またはT細胞、B細胞、NK細胞とリンパ系組織インデューサー様細胞の両方を欠くマウス(Rag2
-/- Il2rg
-/-)に移植した。B)Gl261 IL-12Fcを、それぞれCD4陽性T細胞またはCD8陽性T細胞を欠くMHCII欠陥マウス(Ia(b)
-/-)およびMHCI欠陥マウス(β2m
-/-)(マウスn=5~8個体/群)に移植した。データは2回の独立した実験の代表的なものである。
【
図5】2×10
4 Gl261 IL-12Fc(配列番号02)細胞で従前に刺激した生存wt動物におけるT細胞記憶形成を示す。ナイーブwt動物に比べ、Gl261 Fc細胞で再刺激した生存wt動物の脳から発せられる生物発光の例を示す(上のパネル、再刺激1日、7日および21日後を示す)。さらに、改変型神経膠腫細胞の注射後の日数に対するこれらの腫瘍の生物発光を、関心領域(ROI)内の光子/秒(p/s)で示す(下のパネル)。生存wt動物における対照腫瘍の急速な排除が見られた。1日目に測定された発光はこれらの2群間で同一の接種量を示唆したが、ナイーブマウスだけが7日目以降に測定可能なシグナルを示し、このことは、この場合には異所発現された炎症誘発性サイトカイン(すなわち、IL-12Fc(配列番号02))とは独立に抗神経膠腫記憶応答を迅速かつ効果的に消去することを示唆する(マウスn=4~6個体/群)。データは2回の独立した実験の代表的なものである。
【
図6】キタアメリカホタル・ルシフェラーゼを構成的に発現し、IL-12とマウス免疫グロブリンG3の結晶性フラグメントとの融合タンパク質(Gl261 IL-12Fc(配列番号02))を放出する2×10
4 Gl261 Fc細胞の移植後の種々のマウス突然変異体(各群マウスn=4~8個体)におけるマウス神経膠腫の非侵襲的生物発光イメージング(BLI)を示す。A)wt(白丸)およびIFNγ
-/-(黒丸)動物。B)wt(白丸)およびパーフォリン
-/-(黒丸)動物。改変型神経膠腫細胞の注射後の日数に対する関心領域(ROI)内の光子束(p/s)と相関する腫瘍成長の定量を示す(上のパネル)。下のパネル:カプラン・マイヤー生存分析。データは2回の独立した実験の代表的なものである。
【
図7】2×10
4 Gl261 Fc細胞を接種したwtマウスにおける腫瘍成長を示す。処置は21日目に開始した(矢印)。IL-12Fc(配列番号02)(またはPBS)を腫瘍に送達する浸透圧ミニポンプを神経膠腫担持動物に移植した。22日目に開始して、動物にαCTLA-4遮断抗体またはPBSのi.p.注射を施した後、図に示すように注射を行った。上のグラフ:示された処置を受けた腫瘍担持wt動物のROI光子束の定量。下のグラフ:上記動物のカプラン・マイヤー生存分析;PBS/PBS対IL-12Fc/αCTLA-4 p=0.0045、PBS/PBS対IL-12Fc/PBS p=0.3435、PBS/αCTLA4対IL-12Fc/αCTLA-4 p=0.0101;ログランク(マンテル-コックス)検定。データは各群2~5個体を用いた3回の独立した実験の代表的なものである。
【
図8】21日目にGl261 Fc細胞で刺激した後、および実施例5に記載のように全身的CTLA-4遮断と組み合わせたIL-12Fc(配列番号02)の局所投与後に、同系C57/Bl6マウスから得られた腫瘍切片の免疫組織化学を示す。これらの切片をヘマトキシリンおよびエオジンで染色した。スケールバーは2mmを示す。
【
図9】2×10
4 Gl261 Fc細胞を接種したwtマウスにおける腫瘍成長を示す。処置は21日目に開始した(矢印)。IL-12Fc(配列番号02)を腫瘍に送達する浸透圧ミニポンプを神経膠腫担持動物に移植した。22日目に開始して、動物にαPD-1遮断抗体またはアイソタイプ対照抗体のi.p.注射を施した後、図に示すように注射を行った。上のグラフ:示された処置を受けた腫瘍担持wt動物のROI光子束の定量。下のグラフ:上記動物のカプラン・マイヤー生存分析;PBS/アイソタイプ対IL-12Fc/αPD-1 p=0.0064、ログランク(マンテル-コックス)検定。データは各群5~6個体を用いた1回の実験の代表的なものである。
【
図10】50個のB16-F10細胞を接種したwtマウスにおける腫瘍成長を示す。処置は5日目に開始した(矢印)。IL-12Fc(配列番号02)を腫瘍に送達する浸透圧ミニポンプを神経膠腫担持動物に移植した。6日目に開始して、動物にαCTLA-4遮断抗体またはPBSのi.p.注射を施した後、図に示すように注射を行った。カプラン・マイヤー生存分析;PBS/PBS対IL-12Fc/αCTLA-4 p=0.0028、ログランク(マンテル-コックス)検定。データは各群6個体を用いた1回の実験の代表的なものである。
【
図11】組換えヘテロ二量体型IL-12の全身投与とwtマウスの右線条体へのCTLA4遮断2×10
4 Gl261 Fc細胞の注射の組合せを示し、腫瘍成長を90日間追跡した。全身処置:21日目に(矢印)、担癌動物をまず200μgのαCTLA-4マウスIgG2b(9D9)(薄いグレーの三角、n=8)、200ngの組換えヘテロ二量体型IL-12(rIL-12)(濃いグレーの三角、n=9)または両方の組合せ(黒い三角、n=9)の腹腔内(i.p.)注射で処置した。対照群にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を施した(白い三角、n=7)。実験の終了まで、100μgのαCTLA-4または100ngのrIL-12または両方の組合せで3回/週、処置を継続した。上のグラフ:示された処置を受けた担癌wt動物のROI光子束の定量。下のグラフ:上記動物のカプラン・マイヤー生存分析;ログランク(マンテル-コックス)検定を用いて、示されたp値を算出した;2回の独立した実験からプールしたデータ。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(実施例)
方法
動物
C57BL/6マウスはJanvierから入手した;b2m-/-、Ia(b)-/-、Il12rb2-/-、Rag1-/-、Rag2-/-Il2rg-/-、Prf1-/-およびIfng-/-マウスはJackson Laboratoriesから入手した。Il15ra-/-マウスはS.Bulfone-Pausにより提供された。動物は全て、所内にて、特定病原体不在条件下、12時間明/暗周期で、食物と水を自由に与えて維持した。動物実験は全て、スイス連邦獣医局(Swiss Cantonary veterinary office)(16/2009)により承認されたものである。
【0053】
マウス腫瘍細胞株
C57/Bl6ネズミ神経膠腫(Gl261)細胞(チューリッヒ大学実験免疫学のA.Fontanaにより厚意により提供された)をpGl3-ctrl(Promega)およびpGK-Puro(ミュンヘン工科大学のT.Buchにより厚意により提供された)でトランスフェクトした。線状化した構築物を、エッペンドルフ・マルチポレーターを用いて10:1の比でエレクトポレーションにより導入した後、0.8μg/mlのピューロマイシン(Sigma-Aldrich)で選択し、ルシフェラーゼ安定Gl261細胞を作出した。単一のクローンを限界希釈により単離し、頭蓋内腫瘍接種によりin vivoで継代培養し、4週間後に腫瘍を分離し、0.8μg/mlのピューロマイシンで再選択した。
次に、細胞にpCEP4-mIgG3、pCEP4-mIl-12mIgG3(配列番号09)およびpCEP4-mIl-23mIgG3(配列番号08)(Eisenring et al,2010)をエレクトポレーションにより導入し、0.8μg/mlピューロマイシンおよび0.23mg/mlハイグロマイシン(Sigma-Aldrich)でバルク選択を行った。
サイトカイン生産はELISA(OptEIA Il-12/23p40、BD Pharmingen)およびrt-PCR(IgG3fw:ACACACAGCCTGGACGC(配列番号03) IgG3rev:CATTTGAACTCCTTGCCCCT(配列番号04))によって検出した。Gl261細胞および誘導細胞株は、37℃および10%CO2にて、上記で示した選択抗生物質の存在下、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したダルベッコの改変イーグル培地(Gibco、Invitrogen)で維持した。B16-F10ネズミ黒色腫細胞はATCCから購入した。
【0054】
IL-12Fcの発現および精製
IL-12Fc(配列番号02)は、標準プロトコールに従った、45μgのベクターDNA(pCEP4-mIL-12IgG3、配列番号09)/15cm組織培養プレートを用いたリン酸カルシウム媒介トランスフェクション後の293T細胞において発現された。トランスフェクション3日後および6日後に上清を採取し、濾過除菌し、PBS中に1:1希釈した。タンパク質を、精製装置(AktaPrime)を用い、0.1MグリシンpH2で溶出するプロテインGカラム(1ml、HiTrap、GE Healthcare)にて精製し、PBS pH7.4中で一晩透析した。
IL-12Fc(配列番号02)の濃度および純度は、ELISA(OptEIA Il-12/23p40、BD Pharmingen)およびSDS-PAGEとその後の銀染色および免疫ブロット法により測定した。IL-12Fcは、ラット抗マウスIL-12p40抗体(C17.8、BioExpress)およびヤギ抗ラットHRP結合抗体(Jackson)で検出した。ヒトIL-12Fc(配列番号01、07)の発現にも同じ手順を用いた。
【0055】
ヒトIL-12Fcの特性決定
ヒトIL-12Fc(配列番号01)の濃度および純度は、ELISA(ヒトIL-12(p70)、Mabtech、#2455-1H-6)およびSDS-PAGEとその後の銀染色および免疫ブロット法により測定した。ヒトIgG4タグは、HRP結合ヤギ抗ヒトIgG抗体(#A0170、Sigma)で検出した。ヒトIL-12Fc(配列番号01)の機能的特性決定のために、チューリッヒ大学の倫理ガイドラインに従って取得したPBMCを、96ウェルプレートの、10%ウシ胎児血清(FCS)を添加したRPMI培地中に100,000細胞/ウェルで播種し、組換えヒトIL-12(Peprotech)またはヒトIL-12Fc(配列番号01)のいずれかで刺激した。
両サイトカインを、ヒトIL-12p70EL ISA(Mabtech、#2455-1H-6)から導き出された濃度に従って互いにノーマライズした。PBMCを、1μg/mlのマウスIgG2a抗ヒトCD3抗体(OKT3、Bio-X-cell)の存在下で刺激した。5%CO2および37℃で2日間培養した後、上清を採取し、抗ヒトIFN-γELISA(Mabtech、#3420-1H-6)を行った。
【0056】
正所性神経膠腫接種
簡単に述べると、6~10週齢のマウスにフルニキシン(Biokema、5mg/kg体重)をi.p.注射した後、誘導室にて3~5%イソフルラン(Minrad)で麻酔した。電気ヘアトリマーで頭の毛を剃った。定位フレーム(David Kopf Instruments)に固定した後、動物の頭皮を10%ヨウ素溶液で消毒し、正中に沿って皮膚を切開した。
定位フレーム上での麻酔は、ノーズアダプター(David Kopf Instruments)から送達される3%イソフルランで維持した。次に、鈍端シリンジ(Hamilton、75N、26s/2”/2、5μl)をマイクロインジェクションポンプの操作アームに取り付け、プレグマの側位1.5mm、前位1mmに置いた。針を、手動で開けた穿頭孔の中を硬膜表面から4mmの深さに下ろし、1mm後退させて小さなリザーバーを作った。
マイクロインジェクションポンプ(UMP-3、World Precision Instruments Inc.)を用い、2×104細胞を、容量2μl、1μl/分で注入した。針をその場に2分間残した後、1mm/分で後退させた。穿頭孔をボーンワックス(Aesculap、Braun)で塞ぎ、頭皮の創傷を組織グルー(Indermil、Henkel)で封止した。
【0057】
in vivo生物発光イメージング
腫瘍担持マウスを注意深く秤量し、イソフルラン(2~3%)で麻酔し、D-ルシフェリン(150mg/kg体重、CaliperLifesciences)を注射した。動物をXenogen IVIS 100(CaliperLifesciences)イメージングシステムの暗室に移し、麻酔を、ノーズコーンを介した2%イソフルランで維持した。注射10分後、発光を記録した。次に、データを、Living Image 2.5ソフトウエア(CaliperLifesciences)を用いて分析した。動物の頭の周りに円形の関心領域(ROI;1.46cmφ)を規定し、この領域の光子束を読み取り、プロットした。
【0058】
確立された神経膠腫の処置
神経膠腫細胞の移植後21日目に、腫瘍担持動物をそれらのROI光子束に基づいて実験群に均等に分配した。ROI光子束が1×105 p/s未満の動物を非担持個体とみなして除外した。移植40~48時間前(処置開始の2日前)に、浸透圧ポンプ(モデル 2004、0.25μl/h;Alzet)にマウスIL-12Fc(配列番号02、PBS中8.33ng/μl)またはPBS単独を充填し、PBS中、37℃でプライミングした。
手術直前に、マウスにフルニキシンのi.p.注射を行った(Biokema、5mg/kg体重)。マウスを3~5%イソフルランで麻酔し、頭皮を消毒し、正中切開を行った。従前の神経膠腫注射の穿頭孔を探し当て、ボーンワックスおよび骨膜を除去し、動物の背部に形成した皮膚嚢にポンプを入れた。注入カニューレを穿頭孔から腫瘍の推定中心へ3mm下ろした。このカニューレをシリコンチューブでポンプ(脳注入キットIII 1~3mm、Alzet)に接続し、シアノアクリレート接着剤で適正な位置に保持した。皮膚を4-0ナイロン糸で縫合した。
手術後、マウスを飲用水中0.1%(v/v)Borgal(Intervet)で3日間処置した。49日目にポンプを取り出した。5種類の用量の抗マウス-CTLA-4マウス-IgG2b抗体(クローン9D9、bio-X-cell;Peggs et al.; J Exp Med 206, 1717-1725 (2009))または等量のPBSを22日目(200μg)、26日目(100μg)、29日目(100μg)、35日目(100μg)および42日目(100μg)にi.p.注射した。
【0059】
あるいは、
図9に示される実験のために、動物に抗マウス-PD-1ラットIgG2a(クローンRMP1-14、bio-X-cell)またはラットIgG2aアイソタイプ対照抗体(クローン2A3、bio-X-cell)を施した。投与計画および適用経路は
図7に示す実験と同様であった。
確立されたB16-F10由来脳腫瘍の処置のために、注射5日後にポンプを移植し、抗マウス-CTLA-4マウス-IgG2b抗体(クローン9D9、bio-X-cell;Peggs et al.; J Exp Med 206, 1717-1725 (2009))または等量のPBSを6日目(200μg)、11日目(100μg)、13日目(100μg)および19日目(100μg)にi.p.注射した。
【0060】
腫瘍担持動物の生存分析
腫瘍担持動物を、神経膠腫の接種後21日目まで、BLIによりモニタリングし、神経学的症状を確認し、毎週秤量した。21日目に1×105 p/s未満のROI光子束を示すGl261 Fc動物は非腫瘍担持体または成長の遅い腫瘍担持体とみなし、生存分析から除外した(5~10%)。21日以降は、動物を毎日確認した。無気力、重度の猫背および/またはピーク体重の20%を超える体重減として症状を示した動物は安楽死させた。B16-F10腫瘍担持マウスも、同じスキームに従い、5日から開始して実験の終了まで毎日スコアをとった。
【0061】
組織学
組織学のために、動物をCO2で安楽死させ、氷冷PBSで経心的に潅流し、断頭した。全脳を注意深く単離し、4%ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、3μm切片をHE染色および/または免疫組織化学向けに処理し、F4/80(BM8;BMA biomedicals)を検出した。一次抗体をセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体で検出した。
染色はHRP基質としての3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)で可視化した。画像はオリンパス(登録商標)ColorViewllluカメラを備えたオリンパスBX41光学顕微鏡およびオリンパスcell^B画像取得ソフトウエアを用いて作製した。全脳切片の全体像を、Adobe Photoshop(登録商標) CS3を用いてトリミングした。
【0062】
統計分析
カプラン・マイヤー生存曲線の統計分析では、ログランク(マンテル-コックス)検定を用いて各図に示されたp値を算出した。0.05未満のp値を統計学的に有意とみなした。分析はMac OSX用GraphPad Prismバージョン5.0a(GraphPad Software Inc)を用いて行った。
【0063】
実施例1: IL-12Fcの腫瘍内発現は実験的神経膠腫の排除を促進する
本発明者らは、フレキシブルペプチドリンカーを介してp35サブユニットに連結されたヒトIL-12のp40サブユニットからなる融合タンパク質を設計し、クローニングした。次に、この一本鎖構築物をヒトIgG4重鎖の定常領域と融合させた(
図1A)。
本発明者らはこのヒト一本鎖融合タンパク質をIL-12Fc(配列番号01)と呼称した。本発明者らは、このタンパク質をHEK293ヒト胎児腎臓細胞で発現させ、天然条件下で二量体型ならびに単量体型を検出した。還元条件下では、単量体型のみが検出可能である(
図1B)。IL-12Fc(配列番号01)は、市販のヘテロ二量体型IL-12(Peprotechから購入)と同様の機能的特性を有する。IL-12Fc(配列番号01)が神経膠腫により誘導された局所的免疫抑制環境に打ち勝つのに好適であり得るかどうかを判定するため、および関与するエフェクター機構を明らかにするために、本発明者らは、このサイトカインのマウス型(Belladonna et al., J Immunol 168, 5448-5454 (2002),IL-12Fc(配列番号02))をGl261マウス神経膠腫細胞で発現させた。
頭蓋内の腫瘍成長を生物発光イメージング(BLI)により非侵襲的に測定するために、本発明者らはまず、キタアメリカホタル・ルシフェラーゼを構成的に発現するGl261株を作出した。本発明者らは、この細胞株をGl261-lucと呼称した。
本発明者らは、次に、この細胞株を、IL-12とマウス免疫グロブリンG3の結晶性フラグメントとの融合タンパク質(IL-12Fc;配列番号02、09)または対照としてのFc(配列番号08)単独を絶えず放出するように改変した(それぞれ「Gl261 IL-12Fc」および「Gl261 Fc」と呼称)。この融合構築物の選択されたマウスタンパク質配列はヒト変異体(配列番号01)と相同であり、リンカー(G4S)
3により連結されたIL-12のサブユニットp40とp35、ならびにIgG3の結晶性フラグメントのサブユニットCH2、CH3およびCH1の最後の6個のアミノ酸からなる(ただし、CH1とCH2はヒンジ領域により連結されている)。
対照フラグメントおよびIL-12融合構築物の発現のためのベクターはそれぞれ配列番号08および09に示される。組換えサイトカインよりもむしろ融合タンパク質を使用する意味は、それらが薬物動態の改善を示すかどうかを知るということであった。本発明者らは、サブユニットp40およびp70に関するELISAによりIL-12Fc(配列番号02)の分泌を確認した。本発明者らはさらに、RT-PCRによりFcテールの発現を確認した。頭蓋内の右線条体に移植したところ、発光測定値と立体解析学的方法により評価される腫瘍体積は強い相関を示した(データは示されていない)。
【0064】
次に、本発明者らは、同系C57Bl/6マウスの右線条体にGl261 IL-12FcおよびFcを移植し、非浸襲性生物発光イメージング(BLI)により腫瘍成長を追跡した。初期の発光増強の後、全ての群が注射後14日前後に低下を示した。
Fc発現腫瘍を担持する動物はBLIに急増を示し、すぐに、場合によっては注射後35日前であっても、中止基準に達した。これに対し、IL-12Fc発現Gl261腫瘍を注射した動物のBLI測定値は、21日目以降に検出限界付近のレベルまで低下した(データは示されていない)。この所見と一致して、本発明者らはこの群の一部の動物に残存腫瘍が検出できたに過ぎなかったが、Fc対照を注射した動物は、組織学的に分析した際に、著しい腫瘍形成を示した(
図2)。
Gl261 IL-12FcまたはGl261 Fc細胞を移植した動物を90日まで追跡したところ、本発明者らは、初期確立の後、IL-12Fc分泌腫瘍を担持するマウスの高い割合で腫瘍の排除を認めた(
図3)。
【0065】
実施例2: T細胞はIL-12Fcを介した神経膠腫排除の主要なエフェクター細胞種である
Gl261 IL-12FcによるIL-12Fcの分泌が腫瘍細胞自体よりもむしろ宿主に作用することを確認するために、本発明者らは、IL-12に対する受容体を欠くマウスにおいてGl261 IL-12FcとGl261 Fcの増加が同等であることを確認した。
IL-12rβ2
-/-動物におけるGl261 IL-12の制御されない増加は、IL-12Fcがレシピエントマウスである細胞種に特異的に作用することを示す(データは示されていない)。T細胞およびNK細胞は、最も顕著なIL-12応答性白血球に属す。IL-12Fcを介したこれらの細胞の流入の機能的妥当性を体系的に調べるために、本発明者らは、一連のマウス突然変異体を頭蓋内Gl261 IL-12Fcで刺激した。本発明者らは、Gl261 IL-12Fc細胞を、T細胞およびB細胞を欠くマウス(Rag1
-/-)または従来のNk細胞を欠くマウス(Il-15ra
-/-)またはT細胞、B細胞、Nk細胞とリンパ系組織インデューサー様細胞の両方を欠くマウス(Rag2
-/-Il2rg
-/-)に移植した(
図4A)。
初期誘導期から注射後14日目の後、全ての群が28日目まで、発光の強い増強を示し、これは強い腫瘍成長を反映している。28日目~42日目の間に、ほとんどの動物は腫瘍により死に至った。wtマウスとIl-15ra
-/-マウスだけが腫瘍を制御することができ、Rag2
-/-Il2rg
-/-およびRag1
-/-動物に比べて有意な生存延長を示す。T細胞またはB細胞はIL-12Fcを介した神経膠腫排除に極めて重要であると思われるが、Il-15ra
-/-マウスのGl261 IL-12排除能は、NK細胞は大抵の場合犠牲にできたことを示す。
【0066】
次に、本発明者らは、MHCII欠陥マウス(Ia(b)
-/-)およびMHCI欠陥マウス(β2m
-/-)を用いて、CD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞の寄与を検討した。wtマウスとは対照的に、CD4 T細胞を欠くIa(b)
-/-マウスはGl261 IL-12Fc腫瘍を制御することができず、β2m
-/-マウスはその後間もなく神経膠腫から死に至った(
図4B)。
両突然変異群とも野生型群に比べて生存期間は短かった。これらのデータは、IL-12Fcを介した腫瘍排除がヘルパーT細胞およびCTLを含むT細胞の活性に依存することを明らかに示している。
【0067】
実施例3: 抗腫瘍記憶応答は異所発現されるIL-12FCに依存しない
T細胞依存的腫瘍制御の特徴をさらに調べるために、本発明者らは、Gl261 IL-12Fc細胞で従前に刺激した生存wt動物をT細胞記憶形成に関して調べた(
図5)。これらの動物は
図3/実施例1に記載のとおりに処置した。一次刺激とは対照的に、本発明者らは、この場合には、生存個体またはナイーブwt動物の反対側の半球にGl261 Fc細胞を注射した。
本発明者らは、数日内に対照腫瘍の速やかな排除を確認した。1日目に測定された発光はこれらの2群間で同一の接種量を示唆したが、ナイーブマウスだけが7日目以降に測定可能なシグナルを示し、このことは、この場合には異所発現された炎症誘発性サイトカインとは独立に抗神経膠腫記憶応答を迅速かつ効果的に消去することを示唆する。
【0068】
実施例4: CTLはIL-12Fcを介した神経膠腫排除の主要なエフェクター細胞である
IL-12は、T
H1表現型を採るようにナイーブT細胞を分極させるということは、十分に確認されている(Trinchieri, Nat Rev Immunol 3, 133-146 (2003))。IL-12により誘導される実験的神経膠腫の排除の基礎にある機構的理解をさらに明らかにするため、本発明者らは、T
H1の特徴的サイトカインIFN-γに欠陥があるマウス(Ifng
-/-)をIL-12Fc発現Gl261細胞で刺激した(
図6A)。これらの動物は
図3/実施例1に記載のとおりに処置した。
驚くべきことに、本発明者らは、wt動物の場合と同様の腫瘍排除を確認し、このことは、この排除機構がIFN-γに依存しないことを示唆する。逆に、IL-12はまたCTLの細胞傷害活性も刺激する。CD8
+ CTLおよびNk細胞上で主として発現される細胞溶解性分子であるパーフォリンの役割を分析した際、本発明者らは、生存曲線に明らかな相違を見出した(
図6B)。
パーフォリンは、CD8
+ CTLおよびNK細胞により主として発現され、CD4
+
T細胞によっても発現される細胞溶解性分子である。IL-12Fcにより誘導される神経膠腫排除の機構をさらに検討するために、パーフォリン欠損マウス(prf1
-/-)をIL-12Fc発現Gl261細胞で刺激した。Ifng
-/-とは対照的に、パーフォリン欠損動物(prf1
-/-)は腫瘍を制御できなかった。このことはさらに、CTLがIL-12Fcを介した神経膠腫排除の主要なエフェクター細胞であることの裏付けとなる。wtとprf1
-/-の生存曲線には明らかな相違が見られた。
【0069】
実施例5: IL-12Fcの局所投与と全身的CTLA-4遮断の組合せは進行した段階の実験的神経膠腫に対して有効である
T細胞の活性化表現型をさらに増強および延長するために、本発明者らは、次の一連の実験で、中和抗体により共阻害分子CTLA-4を遮断した。進行した段階の腫瘍を有するマウスにIL-12を局所投与した。21日前にGl261 Fcで刺激し、強い生物発光シグナルをすでに示している(進行した段階の神経膠腫成長を示す)動物に処置を行った。
局所処置:21日目に、腫瘍に50ng IL-12Fc/日(またはPBS)を送達する浸透圧ミニポンプを神経膠腫担持動物に移植した。28日後(腫瘍注射から49日後)に、生存動物から空のポンプを取り出した。全身処置:22日目に、腫瘍担持動物に200μgのαCTLA-4マウスIgG2b(9D9)またはPBS i.p.を施した。26日目、29日目、35日目および42日目に100μgのαCTLA-4で処置を持続した(
図7)。IL-12Fcも抗CTLA-4も単独では有意な生存利益を付与しなかった。注目すべきことに、腫瘍部位への直接的な局所的IL-12Fc投与と全身的CTLA-4遮断の組合せは、腫瘍の完全緩解をもたらした(
図8)。
接種90日後、生存動物の脳組織の組織学的評価は、脱髄または浸潤物のいずれの徴候も示さなかった。局所的IL-12Fc投与と全身的PD-1遮断の組合せはまた、生存動物の有意な増加ももたらしたが、その頻度は全身的CTLA-4遮断の場合よりも低かった(
図9)。上記の併用療法(
図7)は、B16-F10同系マウス黒色腫細胞の頭蓋内成長の場合であっても有意な生存利益を付与する(
図10)。これは転移形成の様々な段階を飛ばしているので、二次脳腫瘍の完全なモデルではない。このように、より急速進行性の場合であっても、本併用処置は生存期間を延長する。
【0070】
前臨床モデルにおける腫瘍の予防的処置は、免疫機構おsよび腫瘍細胞と腫瘍微小環境の間の相互作用についての研究を可能とし得る。しかしながら、予防的療法は、言い換えれば、癌患者を治療するためには臨床的関連が限定されるということである。よって、本発明者らは、進行性および悪性度の高い疾患モデルにおいて、介入に極めて遅い時点を選択することにした。
臨床状況を密接に模倣するために、本発明者らは、腫瘍をヒトにおいて有意な神経学的症状を引き起こす可能性の高い大きさまで進行させた。ここで、局所適用(腫瘍内)IL-12による単剤療法は、有意ではあるが最小の生存効果しか持たなかった。
本発明者らは、すでに、全身的IL-12処置と全身的CTLA-4遮断を組み合わせた際に弱い相乗作用を見出した。局所的IL-12注射を全身的CTLA-4遮断と組み合わせると、抗神経膠腫効果は顕著であった。
【配列表】