(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】移動装置を制御するための方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
A63C 17/12 20060101AFI20230123BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A63C17/12
A61B5/11 230
(21)【出願番号】P 2020521859
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 US2018041345
(87)【国際公開番号】W WO2019014154
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2017-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521220714
【氏名又は名称】シフト ロボティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Shift Robotics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シュンジエ
(72)【発明者】
【氏名】カパディア,アナンド
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/092443(WO,A2)
【文献】特開2013-111118(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0093144(US,A1)
【文献】米国特許第6059062(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63C 17/12
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が電気モータを備えている1対の移動装置を制御する方法であって、
第1の移動装置の少なくとも1つの慣性測定ユニットと、第2の移動装置の少なくとも1つの慣性測定ユニットとから
、ジャイロスコープデータを含む動的な歩容データを受け取る工程と、
前記
動的な歩容データに基づいて、前記第1の移動装置及び前記第2の移動装置の立脚/遊脚フェーズを検出する工程と、
歩容軌跡
ベクトルを計算する工程であって、前記歩容軌跡
ベクトルは
足速度を含んでいる、工程と、
前記第1の移動装置及び前記第2の移動装置の平均速度に基づい
てユーザの歩容を決定して、決定された歩容を用いて、
前記第1の移動装置の電気モータと前記第2の移動装置の電気モータとについて動作指令を生成する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記
動的な歩容データは、加速度、角速度、向き
、及び四元数データ
のうちの少なくとも一つを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
立脚フェーズにある場合、前記歩容の歩容軌跡
ベクトルはゼロに設定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
歩容軌跡
ベクトルの足速度を計算する工程は、
慣性測定ユニットから提供される加速度を積分
する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の移動装置と前記第2の移動装置の間で前記動作指令を相互認証する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動作指令を相互認証する工程は、
前記第1の移動装置の前記動作指令が前記第2の移動装置の前記動作指令と同様な場合、前記動作指令をモータ駆動信号に変換する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動作指令を相互認証する工程は、
前記第1の移動装置の前記動作指令が前記第2の移動装置の前記動作指令と同様でない場合、前記動作指令をブレーキング信号に変換する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
リモートコントローラからのユーザ入力を確認する工程と、
前記ユーザ入力に基づいて前記動作指令を取り消す工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記歩容軌跡
ベクトルに基づくユーザの歩容の決定は、前記歩容軌跡
ベクトルの足速度を速度範囲と比較する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記歩容軌跡
ベクトルは、歩幅、向き、及び高さからなる群から選択された少なくとも1つのパラメータを更に含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、35 U.S.C.§119に基づいて、2017年7月8日に出願された米国仮出願第62/530,177号の利益を主張し、当該出願は、参照により本明細書の一部となる。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載>
なし。
【0003】
本発明は、移動装置に関する。より詳細には、本発明は、電動機を有する移動装置を制御する制御システム及び方法に関しており、当該移動装置は、移動支援を提供するためにユーザの足に装着される。
【背景技術】
【0004】
通勤者やその他の移動者は、彼らが車、バス、電車、又はその他の手段で移動したか否かに拘わらず、大抵の場合、移動の最終区間を歩く必要がある。距離に依存するが、行程の最後の区間を完了するために要する時間は、行程の総所要時間のかなりの部分を占めることがある。自転車やスクーターを使用できるものの、それらはかさばっており、そして、運転するためにはスキルと最低限の体力とを必要とする。動く歩道などの動力システムには、機動性に欠ける欠点がある。その他の移動手法にも同じ欠点があり、特定のユーザに適応する能力がない。故に、特別な技能やユーザ訓練を必要とせずに、特定のユーザの個々のニーズに適応できる移動装置用の制御システムを開発することは有益であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、一対の移動装置を制御するシステム及び方法であって、移動装置はユーザの各足に装着される。各移動装置のセンサは、ユーザの歩容に関するデータを取得して、そのデータをプロセッサに送る。プロセッサはユーザの歩容を分析し、歩容データを用いて各移動装置への動作指令を発生する。各移動装置は、モータ、伝動機構、及び車輪を備えてよい。ユーザの足に装着されると、移動装置は、特定の歩調及び歩幅で、移動装置なしの速度と比較して増加した速度でユーザを歩行できるようにする。更に、制御システムは、ユーザが学習やその他の制御入力を要しないようにユーザに適応する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、一実施形態に基づいており、コントローラが埋め込まれた移動装置を示す。
【0007】
【
図2】
図2は、一実施形態に基づく制御システムのブロック図である。
【0008】
【
図3】
図3は、
図2に示すコントローラを用いた制御方法のステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示されているように、一実施形態に基づく移動装置100は、複数の車輪101を備えており、それら車輪101の少なくとも1つは電気モータ102に接続されている。
図1に更に示されているのは、内蔵コントローラ111と任意選択的なリモートコントローラ112である。典型的な使用においては、ユーザは、2つの移動装置100を各足に1つずつ着用する。移動装置100は、歩行者が通常の歩行ペースよりも速く歩くことを、足に装着された移動装置100の地面と接触する車輪101にトルクを加えることによって可能にする。このようにして、ユーザは、動く歩道を歩くことと同じような効果を受ける。より具体的には、本発明の制御システム110は、モータ102の制御をユーザの動きに適合させることにより、ユーザが通常の歩行運動を維持することを可能にする。より詳細に説明されるように、モータ102によって加えられるトルクを通じて車輪101が回転する速度は、一つにはユーザの歩容を分析することによって制御される。
【0010】
図2は、内蔵コントローラ111の構成要素を示しており、当該構成要素は、少なくとも1つの慣性測定ユニット113と、プロセッサ114と、モータドライバ115と、無線通信モジュール116とを含んでいる。各移動装置(つまり、ユーザの各足に1つ)が内蔵コントローラ111を収容することから、
図2には2つの内蔵コントローラ111が示されている。代替的な実施形態では、制御システム110はまた、各内蔵コントローラ111に指令を送れるリモートコントローラ112を含んでよい。この特定の実施形態では、左右の移動装置100の両方が、リモートコントローラ112から指令速度を受け取る。リモートコントローラ112は、携帯コントローラ、コンピュータ、又は携帯電話の形態であってよく、指定された指令速度で移動装置を作動させる。
【0011】
制御システム110は、データを収集してユーザの歩容を分析するために使用される。一対の移動装置100がユーザによって着用されると、各移動装置100は制御システム110を有することになる。例えば、内蔵プロセッサ114は、歩容の動的データを読み出す。当該データは、慣性測定ユニット113からの各移動装置100の加速度、角速度、向き、ジャイロスコープデータ、又は四元数データを含んでよい。一実施形態では、両方の内蔵コントローラ111は、歩容の動的データをリモートコントローラ112に送り、返信として、リモートコントローラ112から動作指令を受け取る。動作指令には、例えば、設定速度への加速、ブレーキング、設定速度への減速や一定速度での保持が含まれる。別の実施形態では、更なるデータが動作指令に含められてよい。動作指令を受け取ると、内蔵プロセッサ114はモータドライバ115とともに、動作指令をモータ駆動信号に変換してモータシステム102を駆動する。これにより、車輪101の速度に変化がもたらされる。一実施形態では、モータドライバ115は、速度指令を受け取ると、フィードバックループ制御を介して指令速度でモータ102を駆動する。
【0012】
図3に示すフロー図は、一実施形態に基づいた歩容ベースの動作制御の方法を示しており、歩容の動的データを受け取るステップ301と、立脚/遊脚フェーズを検出するステップ302と、歩容の軌跡ベクトルを計算するステップ303と、ユーザの歩容を決定するステップ304と、動作指令を決定するステップ305とを含む。
【0013】
ステップ301において、制御システム110は、両方の内蔵コントローラ111から歩容の動的データを受け取る。歩容の動的データは、各移動装置100の慣性測定ユニット113から収集されたデータを含む。次に、ステップ302において、制御システム110は、各移動装置100の状態を「立脚」(即ち、地上)又は「遊脚」(即ち、空中)として決定する。次に、ステップ303では、移動装置100が立脚フェーズにある場合、歩容の軌跡ベクトルはゼロに設定される。歩容の軌跡ベクトルは、パラメータの中でもとりわけ、推定された足の速度、歩幅、向き、及び高さを含んでよい。例えば、x方向の加速度を一定期間にわたって積分することで、前進速度が決定される。同じようにして、z方向の加速度を用いて高さが導出される。更なる例としては、高さが正の場合、これはユーザが階段を登っていることを示し得る。負の高さは、ユーザが階段を下りていることを示し得る。y方向(即ち、左右方向)の加速度を用いて向きを導き出すことが可能であって、これはユーザによる回転運動を示し得る。移動装置100が遊脚フェーズにある場合、歩容の速度及び軌跡ベクトルが、歩容の動的データに基づいて計算される。例えば、一実施形態では、慣性測定ユニット113から取得された加速度データが積分されて、各移動装置100の速度がもたらされる。両方の移動装置100の速度の平均を使用して、ユーザの全体的な速度が計算できる。
【0014】
次に、ステップ304において、歩容の速度及び軌跡ベクトルが、予め構成された歩容モデル(又は、プロファイル)と比較される。歩容モデルは、歩行中の速度範囲と、歩行の間、坂を登っている間、又は階段を踏んでいる間における種々の高さ範囲とを含む。比較の結果に基づいて、ユーザの歩容が決定される。歩容が決定されると、ステップ305で、決定された歩容に基づいて動作指令が生成される。例えば、2つの移動装置100の平均速度が1.2m/sであると計算される場合には、歩容は、「ミドル」(又は、平均速度に基づいて割り当てられたその他のプロファイル)であると判断されて、0.8m/sの車輪速度の動作指令を要する。より遅い平均速度は、車輪速度がより遅い速度指令を要してよい。
【0015】
しかしながら、任意選択的なステップ306では、リモートコントローラ112は、ユーザ入力が登録されているか否かを確認する。ユーザ入力は、ボタンを押す、又は特定の軌跡でリモートコントローラ112を動かす等のような種々の形態であってよい。例えば、ユーザ入力は、ユーザが前方への動きを望んでいることを示すボタンを押してもよい。故に、ユーザから受け取った前方動作指令は、コントローラ112又は内蔵プロセッサ111が与えた動作指令を取り消してよい。ステップ306にてユーザ入力を確認した後、動作指令が生成されて、リモートコントローラ112によって両方の内蔵コントローラ111に送られる。しかしながら、ステップ306からユーザ入力が受け取られると、最終動作指令は、内蔵コントローラ111に送られる前にユーザ入力に置き換えられる。
【0016】
別の実施形態では、各内蔵コントローラ111は、ステップ304で歩容を決定し、ステップ305にて動作指令を生成する。各内蔵コントローラ111からの相容れない指令を防ぐために、各内蔵コントローラ111は、相互認証のためにステップ307にて動作指令信号を他方に送る。動作指令には、設定速度への加速、ブレーキング、設定速度への減速、及び一定速度での保持が含まれる。動作指令を認証すると、プロセッサ114はモータドライバ115と共に、動作指令をモータ駆動信号に変換し、モータシステムを駆動する。言い換えると、ステップ307では、相互認証は、2つの移動装置100の各々で生成された動作指令を比較する。例えば、モータドライバ115は、両方の指令が同様な場合にのみモータ速度を命令し、速度指令が整合していない場合にはブレーキをかける。
【0017】
本発明をその特定の実施形態に関して詳細に説明したが、実施形態の精神と範囲から逸脱することなく様々な変更及び変形ができることは当業者には明らかであろう。故に、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある限りにおいて、本発明の変更例及び変形例を含んでいる。