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特許7214276プラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】プラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20230123BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20230123BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230123BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230123BHJP
   C01B 33/42 20060101ALI20230123BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230123BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C09C3/10
C09C3/06
C09D201/00
C09D7/62
C01B33/42
B32B9/00 A
C08L101/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022067998
(22)【出願日】2022-04-18
【審査請求日】2022-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595029244
【氏名又は名称】サンヨー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】澤 正明
(72)【発明者】
【氏名】澤 篤哉
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-063127(JP,A)
【文献】特開平10-316882(JP,A)
【文献】特表2006-517602(JP,A)
【文献】特表2006-516154(JP,A)
【文献】特開2001-316609(JP,A)
【文献】特開平06-016964(JP,A)
【文献】特開平11-286563(JP,A)
【文献】特開2010-241856(JP,A)
【文献】特開2012-224858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C,C09D,C01B,B32B,C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の表面に形成される着色層とからなるプラスチック成形品用柄材であって、
前記基材は、薄片状の雲母よりなり、
前記着色層は、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料と樹脂と溶剤とを少なくとも含有する塗料により形成され、
前記雲母の大きさは、0.01mm~20mmであり、
前記酸化チタン被覆雲母の粒径は、5μm~200μmであるプラスチック成形品用柄材。
【請求項2】
熱可塑性樹脂に請求項1記載のプラスチック成形品用柄材を配合した柄入りプラスチック成形品。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂である請求項2記載の柄入りプラスチック成形品。
【請求項4】
請求項1記載のプラスチック成形品用柄材の製造方法であって、
薄片状の雲母と、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料と樹脂と溶剤を少なくとも含有する塗料とを攪拌混合し、前記雲母の表面に前記塗料により前記着色層を形成するプラスチック成形品用柄材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法に関する。さらに詳しくは、基材と前記基材の表面に形成される着色層とからなるプラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加熱溶融された熱可塑性樹脂に柄材を混入することで、柄入りプラスチック成形品を成形することは行われており、例えば特許文献1に示す如き人造大理石の製造方法が知られている。しかし、同文献段落0015に示すように、柄材には、成形品と同じ種類の樹脂を用いることが一般的であり、高温での成形に用いることができる耐熱性を有する柄材が望まれていた。
また、例えば特許文献2に示す如き樹脂成形品の製造方法も知られている。この方法では、着色剤が皮膜により覆われて内部に封入されたカプセルを成形材料中に含有させておき、プレス成形時の熱により皮膜を破包させることで、着色剤を成形材料中で流動させて多様な柄模様を形成する。係る場合、着色剤が成形時の熱によって退色、変色し、柄の意匠性が低下する場合があった。
【0003】
加えて、住宅設備等で用いられるシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)等の成形材料は、通常、100~180℃で加熱、硬化されるものであり、高温での成形を想定していない場合が多く、熱による柄材の変色や退色は考慮されていない。よって、高温成形によって着色層に退色等の変化が生じることなく、意匠性が損なわれない耐熱性を有する柄材を製造可能となれば、新たな用途が生まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-95723号公報
【文献】特開2018-34333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、意匠性を損なうことなく耐熱性を有するプラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るプラスチック成形品用柄材の特徴は、基材と前記基材の表面に形成される着色層とからなる構成において、前記基材は、薄片状の雲母(マイカ)よりなり、前記着色層は、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料(パール顔料)と樹脂と溶剤とを少なくとも含有する塗料により形成され、前記雲母の大きさは、0.01mm~20mmであり、前記酸化チタン被覆雲母の粒径は、5μm~200μmであることにある。
【0007】
上記構成によれば、基材は薄片状の雲母であるので、例えば300℃以上の高温であっても、基材としての雲母の熱変形が抑制され、意匠性が低下することもない。しかも、着色層は、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料を含有する塗料により形成される。顔料の発色(着色)は、通常、顔料粒子自体の光の吸収及び散乱によるが、パール顔料の発色は、雲母粒子の表面の酸化チタン層での光の多重反射及びこれによる干渉による。そのため、光や熱等の外部環境の影響を受けにくく、酸化チタン被覆雲母は、物理的にも化学的にも安定している。よって、薄片状の雲母の基材表面にパール顔料を主成分として含有する塗料により着色層を形成することで、300℃以上の高温であっても柄材の変色や退色が抑制されると考えられる。さらに、発明者らは、雲母の基材表面からパール顔料を含有した着色層は剥がれることもなく、強固に接着することも見いだした。これは、基材と着色層の主成分(材料)が雲母で同一の材料であるので、収縮率・膨張率が同じであり、成形等の大きな温度環境の変化が発生しても、接地面の密着性が保たれるためと考えられる。さらに、前記雲母の大きさは、0.01mm~20mmである。この数値範囲内であれば、柄材としての機能を低下させることなく使用できる。しかも、前記酸化チタン被覆雲母の粒径は、5μm~200μmである。この数値範囲内であれば、柄材として機能(意匠性)が低下すること無く耐熱性を確保することができる。このように、高温であっても柄材として機能(意匠性)が低下すること無く使用することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るプラスチック成形品用柄材を配合した柄入りプラスチック成形品の特徴は、熱可塑性樹脂に上記構成のいずれかに記載のプラスチック成形品用柄材を配合したことにある。係る場合、例えば、前記熱可塑性樹脂は、ABS樹脂又はポリカーボネート樹脂であってもよい。上述したように、プラスチック成形品用柄材は耐熱性を有しているので、高温での成形等の加工が必要なABS樹脂やポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂に利用することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るプラスチック成形品用柄材の製造方法の特徴は、薄片状の雲母と、主成分としての薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料と樹脂と溶剤を少なくとも含有する塗料とを攪拌混合し、前記雲母の表面に前記塗料により前記着色層を形成することにある。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明に係るプラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法の特徴によれば、意匠性を損なうことなく耐熱性を向上させることが可能となった。
【0013】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るプラスチック成形品用柄材を配合した柄入りプラスチック成形品の拡大写真である。
図2】プラスチック成形品用柄材を模式的に示す断面図である。
図3】本発明に係るプラスチック成形品用柄材の着色工程を説明する図である。
図4a】実施例1の試験前の柄材の部分拡大写真である。
図4b】比較例1の試験前の柄材の部分拡大写真である。
図4c】比較例2の試験前の柄材の部分拡大写真である。
図4d】比較例3の試験前の柄材の部分拡大写真である。
図5a】実施例1の耐熱試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図5b】比較例1の耐熱試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図5c】比較例2の耐熱試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図5d】比較例3の耐熱試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図6a】実施例1の退色耐久性試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図6b】比較例1の退色耐久性試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図6c】比較例2の退色耐久性試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図6d】比較例3の退色耐久性試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
図7】実施例1の更なる退色耐久性試験後の柄材の状態を示す部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係るプラスチック成形品用柄材1(以下、単に「柄材」と称する)は、大略、図1,2に示すように、基材2と基材2の表面に形成される着色層3とからなる。この柄材1は、熱可塑性樹脂に配合され、柄入りプラスチック成形品に加工される。なお、図1に例示する柄入りプラスチック成形品(板状体)の横幅は、約10cmである。
【0016】
本発明に係る柄材1は、後述するように300℃程度の耐熱性を有するので、例えばABS樹脂やポリカーボネイト樹脂等の成形温度が比較的高温の熱可塑性樹脂に配合し成形することができる。成形時の熱で柄材としての機能(意匠性)が消失せず、プラスチック成形品において柄が明瞭に発現する。もちろん、上述のABS樹脂やポリカーボネイト樹脂等の熱可塑性樹脂に限らず、これらの樹脂材料よりも低温で成形可能な熱可塑性樹脂にも柄材1を適用することは可能である。
【0017】
(基材)
基材2は、図2に示すように、薄片状を呈し、天然の雲母(マイカ)や合成マイカよりなる。この基材となる薄片状の雲母2(以下、薄片マイカ2と称する)の大きさは、例えば一片の長さ(最長部の長さ)が0.01mm~20mm程度である。又は、薄片マイカ2は、JIS試験篩いメッシュ換算で、4メッシュ~166メッシュ程度の粒度であるとよい。これらの下限を下回ると、プラスチック成形品に配合した際に柄を明瞭に発現しにくい。他方、これらの上限を上回ると、熱可塑性樹脂に混合し成形する際に、互いに十分に混合されず、成形品としての仕上がりが低下する。
【0018】
(着色層)
着色層3は、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料(以下、「パール顔料」と称することもある。)4より形成される。このパール顔料4の粒径は、5μm~200μm程度である。この下限を下回ると、プラスチック成形品に配合した際に柄を明瞭に発現しにくい。他方、これらの上限を上回ると、熱可塑性樹脂に混合し成形する際に、互いに十分に混合されず、成形品としての仕上がりが低下する。
【0019】
ここで、一般的な顔料の発色(着色)は、顔料粒子自体の光の吸収及び散乱によるものであるので、顔料自体が外部環境の影響を受けて、変色や退色が発生しやすい。一方で、上記のパール顔料は、雲母粒子の表面の酸化チタン層での光の多重反射及びこれによる干渉によって発色するものであるので、光や熱等の外部環境の影響を受けにくい。また、酸化チタン被覆雲母は、物理的にも化学的にも安定している。よって、パール顔料は、熱による変色や退色が生じにくいと考えられる。
【0020】
(製造方法)
本発明に係る柄材1は、上述の大きさに分級された薄片マイカ2をパール顔料4で着色する。
着色工程では、攪拌機(タンブラー)10のドラム11内に薄片マイカ2と塗料を投入し、羽根12及びドラム11により回転攪拌混合を行う。ここで、塗料は樹脂、主成分としてのパール顔料4及び溶剤を少なくとも含有してなり、薄片マイカ2に対し2重量%以上20重量%以下の割合で配合される。下限値を下回ると、薄片マイカ2に対し塗料が少なくなり、各々の薄片マイカ2に塗料が行き渡らずに十分に着色できず、色ムラが生じる。一方、上限値を上回ると、塗料が多くなり過ぎ、着色層3の形成(特に乾燥)に時間が掛かり生産効率が低下する。また、薄片マイカ2同士がくっつきダマ(ブロック)が形成されやすくなり、粒径が不均一となる。なお、塗料は、ディスパーでパール顔料4を分散させ、さらにガラスビーズを投入してより一層分散させた後、そのパール顔料4を樹脂及び溶剤に混ぜ、ディスパーで攪拌させて製造される。
【0021】
塗料には、樹脂が20重量%以上49.5重量%以下含有してある。下限値を下回ると、バインダーとして十分に機能せず、顔料を薄片マイカ2に定着・維持することが困難となり、耐溶剤性が低下すると共に色落ちしやすくなる。一方、上限値を上回ると、樹脂が薄片マイカ2同士を接着させてブロック(塊)を形成してしまい、薄片マイカ2各々を分散させて着色することが困難となる。
【0022】
また、塗料には、パール顔料4を0.5重量%以上20重量%以下含有してある。下限値を下回ると、十分な発色を確保できない。一方、上限値を上回ると、顔料が多くなり過ぎ、樹脂によって薄片マイカ2表面に定着できなかった顔料が溶出(色落ち)してしまう。
【0023】
また、塗料には、溶剤を30重量%以上75重量%以下含有してある。下限値を下回ると、パール顔料4及び樹脂を塗料中で十分に分散させて存在させることが困難となり、薄片マイカ2に着色しずらくなり、色ムラが生じやすい。一方、上限値を上回ると、塗料の一部がタンブラーの底に溜まってしまい、薄片マイカ2にパール顔料4を定着させにくくなる。また、着色層3の形成(特に乾燥)に時間が掛かり生産効率も低下する。なお、溶剤には、酢酸エチル、トルエン、アセトン、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル等を用いる。
【0024】
この着色工程により、十分な加熱を行うことで、薄片マイカ2の外周面の表面への塗料中のパール顔料4の定着(硬化)を促進させる。ここで、薄片マイカ2及びパール顔料4は、耐熱性を有する。
【0025】
また、薄片マイカ2はドラム42内で移動(攪拌)しながら着色されるので、薄片マイカ2同士がくっつきダマとなることも防止される。しかも、回転攪拌混合によって、薄片マイカ2の外面全てにパール顔料4を含む塗料を行き渡らせることができ、薄片マイカ2の全ての外面上にパール顔料4による着色層3(塗膜)が形成され着色される。その後、攪拌機40から取り出されて乾燥させ溶剤を揮発させ、柄材1となる。
【0026】
ここで、発明者らは、本発明の有効性を確認するために、下記の実施例及び比較例1~3について、耐熱性及び退色耐久性を確認する実験を行った。
実施例は、薄片マイカ2を主成分としてパール顔料4を含有する塗料で着色した柄材であり、図4aに示す。また、比較例1は、薄片マイカ2を有機顔料の1つであるジスアゾ系顔料を主成分として含有する塗料で着色した柄材であり、図4bに示す。比較例2は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂よりなる基材を主成分としてパール顔料4を含有する塗料で着色した柄材であり、図4cに示す。比較例3は、PET樹脂よりなる基材を有機顔料の1つであるジスアゾ系顔料で着色した柄材であり、図4dに示す。実施例及び比較例1~3は、いずれも上記着色工程で着色している。なお、図4a~dに示す各写真の拡大率は、約280倍である。
【0027】
まず、発明者らは、放射温度計にてリアルタイムで柄材の表面温度を計測しながら、作製した実施例1及び比較例1~3を鉄板の上で常温から250℃まで加熱し、その後の状態を目視にて観察した。観察結果(写真)を図5a~dに示す。これらの図(写真)に示すように、基材にPET樹脂を用いた比較例2,3は基材自体が溶けて収縮してしまい、柄材として機能していない。一方、基材を薄片マイカ2とした実施例1及び比較例1は、加熱前から状態の変化はほとんど見られず、柄材として機能している。なお、図5a~dに示す各写真の拡大率は、約280倍である。
【0028】
次に、発明者らは、放射温度計にてリアルタイムで柄材の表面温度を計測しながら、作製した実施例1及び比較例1~3を鉄板の上で常温から300℃まで加熱し、その後の状態を目視にて観察した。観察結果(写真)を図6a~dに示す。これらの図(写真)に示すように、有機顔料を用いた比較例1及び比較例3では、顔料自体が変色、退色し、柄材の機能(意匠性)が低下している。このような通常の有機顔料の発色(着色)は、顔料粒子自体の光の吸収及び散乱によるものであるため、顔料自体が熱の影響を受け、光の吸収及び散乱に変化が生じたものと思われる。また、パール顔料を用いた比較例2では、顔料の変色は確認できなかったが、PET樹脂の基材自体が黄色く変色し、柄材の機能(意匠性)が低下している。一方、パール顔料で着色した実施例では、顔料の変色もなく、柄材として機能している。パール顔料の発色は、雲母粒子の表面の酸化チタン層での光の多重反射及びこれによる干渉によるものであるので、熱等の外部環境の影響を受けにくく、退色しなかったものと思われる。なお、実施例について、320℃で5分間上記と同様に加熱したが、図7に示すように、基材も顔料も加熱前からほとんど変化せず柄材として機能することを確認した。なお、図6a~cに示す各写真の拡大率は、約280倍である。図6d及び図7に示す各写真の拡大率は、約70倍である。
【0029】
このように、基材2を薄片マイカ2で構成し、その表面をパール顔料4で着色することで、意匠性を損なうことなく耐熱性を向上させることができる。しかも、マイカは透過性(透光性)が高く、パール顔料は反射率も高いので、他の基材の材料と顔料との組み合わせと比較し、意匠性を向上させることもできる。また、薄片マイカ2(基材)とパール顔料4(着色層)とは、主成分が雲母で共通しているので、収縮率・膨張率が同じであり、成形等の大きな温度環境の変化が発生しても、密着性が保たれ、意匠性が低下することもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば壁紙、床材、化粧材、クロス等の内装材や建材等のシート状物に限らず、人造大理石や、各種日用品や電気製品等のプラスチック成形品用の柄材として利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:柄材、2:基材(マイカ)、3:着色層、4:パールマイカ(パール顔料)、10:攪拌機(タンブラー)、11:ドラム、12:羽根
【要約】
【課題】 意匠性を損なうことなく耐熱性を有するプラスチック成形品用柄材及びこれを配合した柄入りプラスチック成形品並びにプラスチック成形品用柄材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 基材2と基材2の表面に形成される着色層3とからなる。基材2は、薄片状の雲母よりなり、着色層3は、薄板状の雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆した酸化チタン被覆雲母を主成分とする顔料4と樹脂と溶剤とを少なくとも含有する塗料によって形成される。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図5d
図6a
図6b
図6c
図6d
図7