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特許7214307不正検知シール、及び、不正検知シールセット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】不正検知シール、及び、不正検知シールセット
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/03 20060101AFI20230123BHJP
   G09F 3/10 20060101ALI20230123BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
G09F3/03 E
G09F3/10 A
G02B3/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018121182
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020003573
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000142034
【氏名又は名称】株式会社共和
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】下村 享嗣
(72)【発明者】
【氏名】尾植 秀和
【審査官】富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-146679(JP,U)
【文献】特開2012-218171(JP,A)
【文献】特開2012-068280(JP,A)
【文献】特開2007-078897(JP,A)
【文献】特開2003-165289(JP,A)
【文献】特開2009-086041(JP,A)
【文献】特開2002-351290(JP,A)
【文献】特開2003-345255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0243391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00-5/04
B42D 15/02、25/00-25/485
G02B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を有するシール支持体と、
前記シール支持体の表側に積層されて、真贋判定用のパターンが形成された真贋判定層と、
前記シール支持体の裏側に部分的に積層された剥離層と、
前記シール支持体の裏側において前記剥離層間の領域を埋めるように、前記シール支持体及び前記剥離層に直接的に積層されたインキ層(ただし、粘着剤を含む着色層を除く。)と、
前記シール支持体の裏側において前記剥離層及び前記インキ層を被覆する粘着剤層とを備え、
被着体に前記粘着剤層を貼り付けた後に前記シール支持体を剥がす時に、前記剥離層の形成領域では前記剥離層の境界部又は内部で剥離が生じ、
前記シール支持体が剥がされた状態で前記シール支持体側又は前記被着体側に一体化された前記粘着剤層が露出することで、該露出した粘着剤層によって被着体への再貼り付けが可能な、不正検知シール。
【請求項2】
前記真贋判定層は、インキにより前記真贋判定用のパターンが形成された印刷層により構成されている、請求項1に記載の不正検知シール。
【請求項3】
前記印刷層の解像度は4000dpi以上である、請求項2に記載の不正検知シール。
【請求項4】
被着体に前記粘着剤層を貼り付けた後に前記シール支持体を剥がす時に、前記剥離層の形成領域では前記シール支持体と前記剥離層との境界部で剥離が生じ、前記剥離層間の領域では前記粘着剤層と前記被着体との境界部で剥離が生じる、請求項1乃至3の何れか1つに記載の不正検知シール。
【請求項5】
前記インキ層の色は白色系である、請求項1乃至4の何れか1つに記載の不正検知シール。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の不正検知シールと、
前記真贋判定層を利用した真贋判定に用いる光学シートとを備えた、不正検知シールセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改ざんなどの不正行為の有無を検知するための不正検知シールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国際的に模倣品の流通が拡大しつつある。模倣手段は、製品のコピー、製品に関する属性情報の改変・改ざん、及び、容器の不正な再利用などの不正行為に分類される。このような不正行為の有無を検知するための不正検知技術・製品として、文字や図柄などのデザインが剥離の痕跡として表れるセキュリティシール(例えば特許文献1,2)や、ホログラム等の光の干渉を利用した真贋判定技術(例えば特許文献3,4)が知られている。
【0003】
また、複数の不正検知技術を組み合わせることが考えられている。特許文献5には、複数の不正検知技術を組み合わせたセキュリティラベルが開示されている。このセキュリティラベルは、a)支持基板、b)反射層または高屈折率を有する層、c)部分剥離塗料層、d)全面接着コーティングを有し、層c)及び層d)の間に粘着媒介層が位置している。また、層a)及び層b)の間には、光学特性、光学活性特性、回折特性、電気伝導特性、及び/又は磁気特性を有する、1つまたは複数の更なる層が位置することができる。このラベルは、剥がして改ざんしようと試みた場合、粘着媒介層は、部分剥離塗料層c)が存在しない部位で支持基板a)に対する層b)の粘着を破壊し、かつ、部分剥離塗料層c)が存在しない領域の支持基板a)から層b)が分離される。また、ラベルの改ざんが試みられた後に、引き裂かれた表面だけでなく、セキュリティを施すべき対象物に残ったラベルの部分も乾燥されて、接着性でなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-316271号公報
【文献】特開2003-345255号公報
【文献】特許第4685101号公報
【文献】特許第3338860号公報
【文献】特許第5492292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の不正検知技術が用いられた不正検知シールは、不正行為を企図する者にとって、それぞれの不正検知技術に対応する必要があるため、不正行為の予防に効果的である。しかし、従来のこの種の不正検知シール(特許文献5に記載のラベル)は、剥がした際に接着性でなくなるため、箱体などの物品収容体に再び貼り付けることができず、正規のユーザにとって利便性が高くない。例えば、正規のユーザは、物品収容体から不正検知シールを剥がして物品収容体内の物品を確認した後に、その物品をすぐに使わずに物品収容体内に戻して管理したい場合がある。このような場合に、物品収容体内に埃の侵入を防ぐなど物品を適切に管理するために物品収容体を閉じた状態に戻すには別途にシールが必要となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数の不正検知技術が用いられた不正検知シールにおいて、被着体から剥がした後に再貼り付けが可能に構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、基材を有するシール支持体と、シール支持体の表側に積層され、真贋判定用のパターンが形成された真贋判定層と、シール支持体の裏側に部分的に積層された剥離層と、シール支持体の裏側において剥離層間の領域を埋めるように積層されたインキ層と、シール支持体の裏側において剥離層及びインキ層を被覆する粘着剤層とを備え、被着体に粘着剤層を貼り付けた後にシール支持体を剥がす時に、剥離層の形成領域では剥離層の境界部又は内部で剥離が生じ、シール支持体が剥がされた状態でシール支持体側又は被着体側に一体化された粘着剤層が露出する、不正検知シールである。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、真贋判定層は、インキにより真贋判定用のパターンが形成された印刷層により構成されている。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、印刷層の解像度は4000dpi以上である。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、被着体に粘着剤層を貼り付けた後にシール支持体を剥がす時に、剥離層の形成領域ではシール支持体と剥離層との境界部で剥離が生じ、剥離層間の領域では粘着剤層と被着体との境界部で剥離が生じる。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第4の何れか1つの発明において、インキ層の色は白色系である。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの不正検知シールと、真贋判定層を利用した真贋判定に用いる光学シートとを備えた、不正検知シールセットである。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、被着体からシール支持体(不正検知シール)を剥がした状態で、シール支持体側又は被着体側に一体化された粘着剤層が露出する。そのため、不正検知シールを再び被着体に貼り付けることができる。
【0014】
また、本発明では、被着体から不正検知シールを剥がす時に、剥離層の形成領域において剥離層の境界部又は内部で剥離が生じる。従って、改ざん者が不正検知シールを剥がした場合、剥離層の形成領域に痕跡が残るため、不正行為の検知が可能である。また、真贋判定層を利用することでも、不正行為の検知が可能である。本発明では、少なくとも2つの不正検知技術が用いられているため、不正行為を有効に防止することができる。
【0015】
また、本発明では、真贋判定層がシール支持体の表側に積層されている。ここで、不正検知シールを剥がした際に、剥離しやすい剥離層の形成領域と、他の領域(剥離層間の領域)とでは表側に作用する応力が異なる。そのため、シール支持体の裏側に真贋判定層を積層した場合、真贋判定層を保護する構造を設けなければ、真贋判定層の機能(以下、「真贋判定機能」という。)が損なわれる虞がある。それに対し、本発明では、不正検知シールを剥がす際に加わる応力に対し、シール支持体により真贋判定層が保護される。簡素な構造により、不正検知シールを剥がした後も真贋判定機能を維持することができる。
【0016】
また、本発明では、正規のユーザの利便性を考慮して、被着体から剥がした後に再貼り付け可能としている。ここで、不正行為を予防するという観点から見ると、特許文献5に記載のセキュリティラベルのように、剥がした後に再貼り付けできない構成は有効である。それに対し、本発明では、不正検知シールを剥がした後、再貼り付けをしたとしても不正行為の検知が可能なため、再貼り付けができる構成であっても不正行為を十分予防可能である。また、不正行為をする者が不正検知シールを剥がした後に、外観が似た別のシールに取り換えて貼り付けし直すことも十分想定され得る。そのような場合においても、正規の不正検知シールに使用されている真贋判定機能の有無を確認することによって、不正行為が行われたか否かを容易に確認できるため、より正確に不正行為の検知が可能である。
【0017】
第3の発明では、印刷層の解像度が4000dpi以上である。このレベルの解像度を得るために必要なCTP(Computer To Plate)セッターは、限られた企業しか保有しておらず、不正行為を企図する者にとってCTPセッターの入手が困難である。第3の発明によれば、不正検知シールの偽造を抑制することができる。
【0018】
第5の発明では、インキ層の色が白色系であるため、真贋判定層の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態に係るセキュリティシールの断面構造を示す概略図である。
図2図2(a)は、セキュリティシールの真贋判定層とレンズシートとの各々の断面構造を示す概略図であり、図2(b)は、レンズシートにおけるレンズ集合体の一部を表す拡大平面図である。
図3図3は、セキュリティシールを被着体から剥がした状態の断面構造を示す概略図である。
図4図4は、セキュリティシールを被着体から剥がした後の基材を表側から見た概略図である。
図5図5は、真贋判定時に見える虚像を説明するための概略図である。
図6図6は、その他の実施形態に係るセキュリティシールの断面構造を示す概略図である。
図7図7(a)は、その他の実施形態に係るセキュリティシールであって図6とは別形態のテープについて、剥離前の断面構造を示す概略図であり、図7(b)は、剥離後の断面構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図7を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0021】
[セキュリティシールの構造]
不正検知シール10の一例として、ロール状に巻かれたセキュリティシール10(「セキュリティテープ」若しくは「セキュリティラベル」とも言う。)について説明する。セキュリティシール10は、不正検知手段として、裏面側の剥離構造部16に加え、表面側に光の干渉を利用した真贋判定層12が設けられたシールである。セキュリティシール10は、表側から順番に、真贋判定層12、基材15を有するシール支持体14、剥離構造部16、粘着剤層19、及び、セパレーター20を備えている。
【0022】
シール支持体14は、帯状で長尺の基材15により構成されている。基材15には、透明又は半透明のフィルムが用いられる。基材15の厚さは、20μm以上80μm以下(例えば38μm)であり、好ましくは30μm以上50μm以下である。なお、シール支持体14は、1枚の基材15だけにより構成してもよいし、一体化された複数枚の基材15により構成してもよい。また、シール支持体14は、基材15の表面又は裏面に一体化された層(例えば下塗り層)をさらに備えていてもよい。
【0023】
基材15の材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的に、基材15には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムなどを用いることができる。
【0024】
剥離構造部16は、被着体30からセキュリティシール10を剥がした時に剥離が生じて所定のデザイン(文字、図柄、又は模様などのデザイン)を、剥離の痕跡として発現させる。剥離構造部16は、基材15(シール支持体14)の裏側に所定のデザインで部分的に積層された剥離層17と、基材15の裏側において剥離層17間の領域を埋めるように積層されたインキ層18とを備えている。剥離層17は基材15の裏面に接する。また、インキ層18は、剥離層17間の領域だけでなく、剥離層17の形成領域も被覆している。インキ層18は、剥離層17間の領域では基材15の裏面に接し、剥離層17の形成領域では剥離層17に接する。なお、インキ層18は、剥離層17間の領域だけに設けられていてもよい。
【0025】
剥離層17は、基材15との接着強度が低い層である。剥離層17は、例えば剥離剤を含有し、必要に応じて着色剤、樹脂成分、溶剤又は各種添加剤を混合して調整されたインクを用いて、基材15の裏面に印刷することにより形成される。剥離剤としては、シリコーン、フッ素化合物、熱可塑性エラストマー、長鎖アルキル系ポリマー又はワックス類などを用いることができる。剥離層17の厚みは、例えば0.1μm~5μmである。
【0026】
インキ層18は、基材15及び剥離層17の各々に対して、基材15と剥離層17との接着強度より強い接着強度で密着する層である。インキ層18は、剥離層17が印刷された後にベタ印刷を行うことにより形成される。インキ層18のインクとしては、例えば白色系のインクを用いることができる。この場合、インキ層18の色は白色系となり、真贋判定層12の視認性が向上する。なお、インキ層18のインクとしては、透明のインクなど白色系以外のものを用いてもよい。インキ層18の厚み(剥離層17間の領域での厚み)は、例えば0.2μm~5.1μmである。
【0027】
粘着剤層19は、基材15の裏側において剥離層17及びインキ層18を被覆する層であり、被着体30にセキュリティシール10を貼り付ける際に被着体30に接着される。粘着剤層19は、ほとんど色がついておらず、半透明の層である。粘着剤層19は、インキ層18に粘着剤を塗布することにより形成される。粘着剤としては、耐久性や耐候性などの安定性及びダイカット性に優れたアクリル系粘着剤を用いることができる。但し、ゴム系、ウレタン系、又はシリコーン系などの他の種類の粘着剤を用いてもよい。 粘着剤層19の厚みは、例えば10μm~40μmである。なお、粘着剤層19の色について、透明を採用してもよいし、また真贋判定層12の視認性を向上させるために白色を採用してもよい。
【0028】
セパレーター20は、セキュリティシール10が巻回された状態で上側シールの粘着剤層19が下側シールの真贋判定層12に引っ付くことを防止するために、粘着剤層19を被覆する部材である。セパレーター20には、例えば剥離紙を用いることができる。セパレーター20としては、重剥離のものを用いた場合には剥離層17が剥がれて文字浮き不良が生じる虞があるため、比較的軽い力で剥がれる軽剥離なものを用いる。セパレーター20は、セキュリティシール10を被着体30に貼り付ける際に剥がされる。
【0029】
真贋判定層12は、後述するレンズシート(光学シート)25を通して虚像29(図5参照)として視認できる繰り返し模様部32(真贋判定用のパターン)が形成された層である。真贋判定層12は、基材15の表側に形成されている。真贋判定層12は、高解像度の印刷(高精細印刷)を行うことにより形成される。真贋判定層12の解像度は、例えば4000dpi以上(例えば4800dpi)である。真贋判定層12を利用した真贋判定では、虚像29を確認できるか否かで不正行為の有無が判定される。
【0030】
真贋判定層12及びレンズシート25の一例として、例えば特許文献3に記載された技術を採用することができる。以下に、当該技術の概要を説明する。
【0031】
まず、レンズシート25から説明する。レンズシート25は、図2(a)に示すように、複数の微細な凸レンズ27を集合させた凸レンズ集合体24により構成されたシートである。凸レンズ集合体24には、透明な材料(例えば、アクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸メチル樹脂などの合成樹脂)を用いることができる。各凸レンズ27の焦点は、セキュリティシール10の表側面にレンズシート25を当接して重ねた使用状態で、真贋判定層12における印刷形成面(基材15の表側面)に位置する。レンズシート25は、図2(a)において上側が表側となる。凸レンズ集合体24では、上述の使用状態においてモアレ効果により繰り返し模様部32における各模様単位31が浮き上がり又は沈み込んで観察されるように、多数の凸レンズ27が配列されている。凸レンズ27の配列としては、図2(b)に示すように、正六角形の各区画に1つの凸レンズ27が設けられたハニカム配列を採用することができる。なお、ハニカム配列以外に、格子における各区画に1つの凸レンズ27が設けられたマトリクス配列などの他の配列を採用してもよい。例えば凸レンズ27は各区画の中心に配置される。
【0032】
続いて、真贋判定層12は、基材15の表側に印刷された繰り返し模様部32により構成されている。繰り返し模様部32は、複数の模様単位31が、凸レンズ27の配列間隔及び配列方向と相違するように配列されている。具体的に、繰り返し模様部32は、模様単位31の配列間隔が、任意の隣接する模様単位3個を選択したときに式1の関係を満たすように規則的に変化し、模様単位31の配列方向が、式2の関係を満たすように規則的に変化する連続変形模様部を含む。
式1:0.95≦DN~N+1/DN+1~N+2≦1.05
式2:-1≦θ≦+1
【0033】
式1において、DN~N+1は、N番目の模様単位Nとそれに隣接するN+1番目の模様単位N+1との間隔であり、DN+1~N+2は、N+1番目の模様単位N+1とそれに隣接するN+2番目の模様単位N+2との間隔である。また、式2において、θは、N番目の模様単位Nとそれに隣接するN+1番目の模様単位N+1とを結ぶ直線の延長線と、N+1番目の模様単位N+1とそれに隣接するN+2番目の模様単位N+2とを結ぶ直線との交差角である。
【0034】
[セキュリティシールの使用方法及び不正行為の検知機能等]
図3~5を参照しながら、セキュリティシール10とレンズシート25とを備えた不正検知シールセットの使用方法、及び、不正行為の検知機能について説明する。
【0035】
セキュリティシール10は、様々な物品を梱包する箱体や封筒(物品収容体)を被着体30として、被着体30の開封部に貼り付けられて使用される。そして、所定期間(例えば1日程度の期間)の経過後に、被着体30からシール支持体14を剥がす時に、図3に示すように、剥離層17の形成領域では剥離層17の表側(境界部)で剥離が生じる。そして、シール支持体14が剥がれた状態で、シール支持体14側に一体化された粘着剤層19が露出する。具体的に、平面視における剥離層17の形成領域では基材15と剥離層17との境界部で剥離が生じ、平面視における剥離層17間の領域では粘着剤層19と被着体30との境界部で剥離が生じる。剥離層17の形成領域では、厚さ方向に隣り合う層の境界部のうち基材15と剥離層17との境界部の接着強度が最も小さい。また、剥離層17間の領域では、厚さ方向に隣り合う層の境界部のうち粘着剤層19と被着体30との境界部の接着強度が最も小さい。
【0036】
これにより、図4に示すように、基材15の裏側から剥離層17が剥がれた箇所のデザイン(例えば「開封済」の文字)が、基材15の表側から視認できるようになる。このデザインは、剥離の痕跡として基材15に残る。そのため、改ざん者などがセキュリティシール10を剥がした場合、不正行為の検知が可能である。
【0037】
ここで、上述したように、改ざん者ではない者にとって、箱体などの物品収容体からセキュリティシール10を剥がして開封した後に、物品収容体を再び閉じた状態に戻したい場合がある。例えば、医薬品など衛生的に管理したい商品は、箱体を閉じた状態に戻すことで、保管中に箱体内に埃が侵入することを防ぐことができる。また、使用後の商品を箱体内に戻して捨てる場合にも、商品によっては箱体が開かないように閉じる必要がある。このような場合に、本実施形態では、被着体30からシール支持体14が剥がされた状態で、シール支持体14側に一体化された粘着剤層19が露出する。そのため、セキュリティシール10を再び被着体30に貼り付けることができ、別途にシールを準備することなく箱体を閉じることができる。
【0038】
また、本実施形態では、レンズシート25を用いた真贋判定を行うことによっても、不正行為の検知が可能である。具体的に、真贋判定において検査者は、セキュリティシール10の表側にレンズシート25を当接させて重ね合わせ、レンズシート25を通して真贋判定層12を目視する。上述した式1及び式2を満足するように複数の模様単位31が設けられた正規品の場合、検査者は、左右の目から入る図柄の位置が若干異なることにより、図柄が浮かび上がる又は沈み込んでいるように脳が認識するため、虚像29が見える(図5参照)。一方、正規品ではない場合、虚像29は見えない。このように、本実施形態では、レンズシート25を利用した真贋判定により、不正行為の検知が可能である。そして、本実施形態では、2つの不正検知手段が用いられているため、不正行為を有効に防止することができる。
【0039】
また、本実施形態では、セキュリティシール10に高解像度の真贋判定層12が形成されている。真贋判定層12は、4800dpiのCTPセッターを用いて印刷されている。このレベルの高解像度のCTPセッターは、限られた企業しか保有していない。そのため、不正行為を企図する者にとってはCTPセッターの入手が困難である。本実施形態によれば、セキュリティシール10の偽造を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、真贋判定層12がシール支持体14の表側に積層されているため、セキュリティシール10を剥がす際に加わる応力に対しシール支持体14により真贋判定層12が保護される。従って、被着体30からセキュリティシール10を剥がした後も真贋判定層12による真贋判定機能を維持することができる。そして、仮に不正行為として再貼り付けがなされた場合であっても、真贋判定層12により不正行為の検知が可能である。また、不正行為をする者が不正検知シール10を剥がした後に、外観が似た別のシールに取り換えて貼り付けし直した場合においても、正規の不正検知シール10に使用されている真贋判定機能の有無を確認することによって、不正が行われたか否かを容易に確認することができるため、より正確に不正行為の検知が可能である。
【0041】
なお、本実施形態に係るセキュリティシール10は、不正行為を防止する目的で様々な用途に使用することができる。例えば、校正された精密機器、測定器具、これらに付随する小物器具(分銅等)を梱包箱等に使用できる。また、生体に使用される薬剤、再利用ができない医療器具(使い捨ての医療器具など)の梱包箱等に使用できる。さらに、機密データを保管する媒体や、それに付随する小物(ワンタイムパスワード用のカードなど)、化学薬品、危険物の梱包箱等に使用できる。本実施形態によれば、このような物品の梱包の開封部に使用されることで、不正行為を有効に防止することができる。
【0042】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、不正検知シール10は、例えば特許文献1,2に記載の改ざん防止ラベルのように、被着体30から剥がした後に被着体30に粘着剤層19が残らないように構成されていてもよい。この場合、真贋判定層12及びシール支持体14間の接着強度I-a、シール支持体14及び剥離層17間の接着強度I-b、シール支持体14及びインキ層18間の接着強度I-c、剥離層17及びインキ層18間の接着強度I-d、インキ層18及び粘着剤層19間の接着強度I-e、粘着剤層19及び被着体30間の接着強度I-f、粘着剤層19及びセパレーター20間の接着強度I-gと表した場合(図6参照)に、接着強度I-a、接着強度I-c、及び接着強度I-eから選択された少なくとも一つは接着強度I-fよりも大きく、且つ、I-g<I-b<I-f<I-dの力関係を満足するように、不正検知シール10を形成することができる。
【0043】
上述の実施形態において、不正検知シール10は、図6とは別の形態にて、被着体30から剥がした後に被着体30に粘着剤層19が残らないように構成されていてもよい。この場合、図7(a)に示すように、インキ層18と粘着剤層19との間に、クッション性と皮膜性を有するクッション層21を介在させることができる。図7(b)は、剥離後の不正検知シール10を示す。この不正検知シール10は、被着体30に粘着剤層19を貼り付けた後に不正検知シール10を剥がす時に、粘着剤層19全体が被着体30から剥がれる。その際に、不正検知シール10が湾曲することで、剥離層17の形成領域において剥離層17の表側(境界部)で内部剥離Xが生じる。また、シール支持体14が剥がされた状態では、シール支持体14側に一体化された粘着剤層19が露出する。なお、クッション層を設ける代わりに、粘着剤層19自体がクッション性を有していてもよい。また、内部剥離Xは、剥離層17の裏側で生じるようにしてもよいし、剥離層17の内部で生じるようにしてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態において、不正検知シール10は、シール支持体14が剥がされた状態で被着体30側に一体化された粘着剤層19が露出するように構成してもよい。
【0045】
また、上述の実施形態において、不正検知シール10を剥がす際に粘着剤層19の内部で剥離が生じるようにしてもよい。この場合、シール支持体14が剥がされた状態で、シール支持体14側に一体化された粘着剤層19が露出すると共に、被着体30側に一体化された粘着剤層19も露出する。
【0046】
また、上述の実施形態において、被着体30に粘着剤層19を貼り付けた後に不正検知シール10を剥がす時に、剥離層17の形成領域において剥離層17の裏側(境界部)で剥離が生じるように不正検知シール10を構成してもよいし、剥離層17の内部(厚さ方向の中間部分)で剥離が生じるように不正検知シール10を構成してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態において、不正検知シール10は、テープ状ではなく、所定形状のラベル状に形成されていてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態において、不正検知シール10は、真贋判定層12の表側を被覆する保護層をさらに備えていてもよい。保護層の材料には、シリコーンなどを用いることができる。この場合、セパレーター20を省略してもよい。
【0049】
また、上述の実施形態において、真贋判定層12における真贋判定用のパターンとして、カメラなどの撮像装置で読み取ることで電子情報に変換できるパターンを印刷してもよい。このパターンとしては、例えばQRコード(登録商標)などのバーコードを採用することができる。不正検知シール10は、シール支持体14と、当該パターンを備えた真贋判定層12とを備えている。
【0050】
また、上述の実施形態において、真贋判定層12における真贋判定用のパターンとして、セキュリティシール10の表側にレンズシート25を当接させて重ね合わせ、レンズシート25を通して真贋判定層12を目視するときに、レンズシート25を当接した状態で回転するようにずらすことで、特定の回転角度で浮かび上がる模様が他の角度の場合とは異なって見えるパターンを印刷してもよい。
【0051】
また、上述の実施形態において、真贋判定層12の印刷に用いるインクとして、暗所で光るインク(蛍光塗料を含むインクなど)を使用してもよい。
【0052】
また、上述の実施形態において、真贋判定層12は、例えば特許文献4に記載の点描画模様など他の形態のものを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、改ざんなどの不正行為の有無を検知するための不正検知シール等に適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 セキュリティシール(不正検知シール)
12 真贋判定層
14 シール支持体
15 基材
17 剥離層
18 インキ層
19 粘着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7