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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】リニア搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 54/02 20060101AFI20230123BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B65G54/02
H02K41/03 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018228441
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2019099385
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2017233985
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6155406(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0152516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176659(US,A1)
【文献】特開2010-132405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 54/02
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、
前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において直線状の走行軌道と、該直線状の走行軌道に連設された曲線状の走行軌道とを有しており、
前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、
前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状または直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状または曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔または張力を調整する際、
前記固定子における前記可動子の走行軌道上のあらかじめ記憶した複数の第1のポイントの位置に関する情報と、各第1のポイントから前記可動子の走行軌道の径方向外側または径方向内側に所定距離離れ、あらかじめ記憶した第2のポイントの位置に関する情報と、入力された第1のポイントまたは第2のポイントの位置から前記保持部材の位置までの距離に関する情報とに基づいて、隣り合う前記可動子の間隔または張力を制御することを特徴とするリニア搬送装置。
【請求項2】
リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、
前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において直線状の走行軌道と、該直線状の走行軌道に連設された曲線状の走行軌道とを有しており、
前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、
前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状または直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状または曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔または張力を調整する際、
前記保持部材が物品から受ける力の大きさに基づいて、隣り合う前記可動子の間隔を制御することによって前記保持部材の間隔または張力を調整することを特徴とするリニア搬送装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータにより可動子が固定子における所定の走行軌道を走行することにより物品を搬送するリニア搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、物品を搬送する装置として、リニアモータにより可動子が固定子における所定の走行軌道を走行することにより物品を搬送するリニア搬送装置が注目されている。具体的には、このリニア搬送装置は、複数の電磁石(コイルユニット)を連結してなるリニアモータの固定子と、永久磁石からなる複数のリニアモータの可動子と、可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、固定子における可動子の走行を制御する制御部とを備え、可動子が固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、保持部材に保持された物品を搬送するものである(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば、袋状部材等の物品を搬送する場合、隣り合う可動子の保持部材が物品の両側端部を保持したあと、可動子が固定子における走行軌道に沿って走行することによって、可動子の保持部材に保持された物品を搬送軌道に沿って搬送して、搬送中に物品に様々な処理が行われる。
【0004】
そして、このリニア搬送装置においても、他のベルト式等の搬送装置と同様、物品の搬送の効率化や省スペース化のため、物品の搬送軌道を直線状のみならず、所定の方向にカーブさせた曲線状にしたり、さらには閉じたループ状にすることが想定され、それに伴って可動子の固定子における走行軌道も、直線状の走行軌道のみならず、曲線状の走行軌道を有することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-132405号公報
【文献】特表2015-525176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可動子が固定子における直線状の走行軌道から曲線状の走行軌道を走行する場合、隣り合う可動子の間隔を直線状の走行軌道を走行しているときの間隔と同一にしても、隣り合う可動子に設けられた保持部材の間隔が変化するという問題があった。
【0007】
例えば、可動子に対して保持部材が走行軌道の径方向外側に所定距離離れた位置に設けられている場合、図9に示すように、隣り合う可動子が直線状の走行軌道A1を走行する際、隣り合う可動子の保持部材は搬送軌道Bにおいて互いに平行な状態を維持しているが、隣り合う可動子が曲線状の走行軌道A2を走行する際、隣り合う可動子の保持部材は搬送軌道Bにおいて互いに両側に広がる状態となる。このため、隣り合う可動子の保持部材の間隔が変化してしまい、保持部材に保持された物品に変形や破損が生じる虞があった。
【0008】
また、可動子が固定子における曲線状の走行軌道A2から直線状の走行軌道A3を走行する場合、隣り合う可動子の間隔を曲線状の走行軌道A2を走行しているときの間隔と同一にしても、隣り合う可動子に設けられた保持部材の間隔が変化するという問題もあった。
【0009】
このような問題は、可動子に対して保持部材が走行軌道Aの径方向内側に所定距離離れた位置に設けられている場合にも同様に生じるものである。なお、図9において、可動子の走行軌道A上における隣り合う可動子の間隔をW1、物品の搬送軌道B上における隣り合う保持部材の間隔をW2、物品の幅をWとして図示している。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、直線状と曲線状の走行軌道を有するリニア搬送装置において、物品を安全に搬送することができるリニア搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において直線状の走行軌道と、該直線状の走行軌道に連設された曲線状の走行軌道とを有しており、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を調整することを特徴とする。これによれば、隣り合う可動子が直線状の走行軌道から曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材の間隔を適正に調整することができる。
【0012】
また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも狭くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を一定にしてもよい。また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも広くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を一定にしてもよい。
【0013】
また、本発明は、リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において直線状の走行軌道と、該直線状の走行軌道に連設された曲線状の走行軌道とを有しており、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を調整することを特徴とする。これによれば、隣り合う可動子が直線状の走行軌道から曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品に生じる張力を適正に調整することができる。
【0014】
前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも狭くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を一定にしてもよい。また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の直線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも広くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を一定にしてもよい。
【0015】
また、前記制御部は、搬送方向の前方の前記可動子が曲線状の走行軌道に入った際、搬送方向の前方の前記可動子あるいは/および搬送方向の後方の前記可動子の速度を変化させることによって、隣り合う前記可動子の間隔を制御するとよい。これによれば、隣り合う可動子が曲線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材の間隔や、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品の張力を精度良く調整することができる。
【0016】
また、本発明は、リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において曲線状の走行軌道と、該曲線状の走行軌道に連設された直線状の走行軌道とを有しており、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を調整することを特徴とする。これによれば、隣り合う可動子が曲線状の走行軌道から直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材の間隔を適正に調整することができる。
【0017】
また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも広くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を一定にしてもよい。また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも狭くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材の間隔を一定にしてもよい。
【0018】
また、本発明は、リニアモータの固定子と、前記固定子に設けられた複数のリニアモータの可動子と、前記可動子に設けられ、物品を保持する保持部材と、前記固定子における前記可動子の走行を制御する制御部とを備え、前記可動子が前記固定子における所定の走行軌道に沿って走行することにより、前記保持部材に保持された物品を搬送するリニア搬送装置であって、前記固定子は、前記可動子の走行軌道上において曲線状の走行軌道と、該曲線状の走行軌道に連設された直線状の走行軌道とを有しており、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側または径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を調整することを特徴とする。これによれば、隣り合う可動子が直線状の走行軌道から直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品に生じる張力を適正に調整することができる。
【0019】
また、前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向外側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも広くすることにより、隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を一定にしてもよい。前記保持部材は、前記可動子の前記固定子における走行軌道に対して径方向内側に所定距離離れた位置に設けられ、前記制御部は、前記可動子が前記固定子における直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う前記可動子の間隔を直前の曲線状の走行軌道を走行しているときの間隔よりも狭くすることにより隣り合う前記可動子の前記保持部材に保持されている物品に生じる張力を一定にしてもよい。
【0020】
また、前記制御部は、搬送方向の前方の前記可動子が直線状の走行軌道に入った際、搬送方向の前方の前記可動子あるいは/および搬送方向の後方の前記可動子の速度を変化させることによって、隣り合う前記可動子の間隔を制御するとよい。これによれば、隣り合う可動子が直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材の間隔や、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品の張力を精度良く調整することができる。
【0021】
また、前記制御部は、前記固定子における前記可動子の走行軌道上の複数のポイントの位置に関する情報と、各ポイントの位置に対応する前記保持部材の位置に関する情報とに基づいて、隣り合う前記可動子の間隔を制御してもよい。これによれば、隣り合う可動子の保持部材の間隔や、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品の張力を迅速かつ確実に調整することができる。
【0022】
また、前記制御部は、前記固定子における前記可動子の走行軌道上の複数の第1のポイントの位置に関する情報と、各第1のポイントから前記可動子の走行軌道の径方向外側または径方向内側に所定距離離れた第2のポイントの位置に関する情報と、第1のポイントまたは第2のポイントの位置から前記保持部材の位置までの距離に関する情報とに基づいて、隣り合う前記可動子の間隔を制御してもよい。これによれば、物品によって保持部材の位置が異なる場合でも、隣り合う可動子の保持部材の間隔や、隣り合う可動子の保持部材に保持されている物品の張力を迅速かつ確実に調整することができる。
【0023】
前記制御部は、前記保持部材が物品から受ける力の大きさに基づいて、隣り合う前記可動子の間隔を制御することによって前記保持部材の間隔を調整してもよい。これによれば、保持部材が物品から受ける力によって、隣り合う可動子の保持部材の間隔を調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、隣り合う可動子が直線状の走行軌道から曲線状の走行軌道を走行する際、あるいは隣り合う可動子が曲線状の走行軌道から直線状の走行軌道を走行する際、隣り合う可動子の保持部材の間隔を適正に調整することができる。このため保持部材の間隔を一定にしたり、あるいは物品に生じる張力を一定にした場合、物品に変形または破損を生じさせることなく、物品を安全に搬送することができる。また、保持部材の間隔を狭めたり、あるいは物品に生じる張力を小さくした場合、物品を撓ませることにより物品の端部を開口させたりすることができる。また、保持部材の間隔を広げたり、あるいは物品に生じる張力を大きくした場合、物品を幅方向に引っ張ることにより物品の内部に異物が混入することを防止したりすることができる。而して、曲線状と直線状の走行軌道を有するリニア搬送装置において物品を安全に搬送することができるため、リニア搬送装置の効率化や省スペース化をより一層向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るリニア搬送装置の平面図である。
図2図1のリニア搬送装置の側面図である。
図3】可動子および保持部材の拡大平面図である。
図4】固定子の電気的構成を示すブロック図である。
図5】走行軌道における可動子と保持部材の間隔の状態を示す模式図である。
図6図1のリニア搬送装置の動作の過程を示す平面図である。
図7】保持部材が物品を保持している状態を示す斜視図である。
図8】他の実施形態に係るリニア搬送装置の走行軌道における可動子と保持部材の間隔の状態を示す模式図である。
図9】従来のリニア搬送装置の走行軌道における可動子と保持部材の間隔の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係るリニア搬送装置(以下、本装置という)の実施形態について図1図6を参照しつつ説明する。
【0027】
なお、本実施形態において「右」とは図2における「右」をいい、「左」とは図2における「左」をいい、「上」とは図2における「上」をいい、「下」とは図2における「下」をいい、「手前」とは図2における「手前」をいい、「奥」とは図2における「奥」をいうものとする。また、物品7として、上部が開口された幅Wの側面視矩形状の可撓性の袋状部材(例えば、パウチ)を想定して説明する。
【0028】
本装置は、図1図4に示すように、基台1と、基台1の上部に設けられたリニアモータの固定子2と、固定子2に設けられた複数のリニアモータの可動子3と、前記固定子2における前記可動子3の走行を制御する制御部6とを備える。なお、可動子3は、実際には2個1組のものが複数組存在するが、説明の便宜上、2個1組のものが1組だけ存在すると仮定して説明する。
【0029】
前記固定子2は、金属製等の平面視長円状に形成されており、側面にガイドレール21が設けられている。このガイドレール21は、固定子2の上面周縁部に設けられた金属製の上側ガイド部材21aと、固定子2の下面周縁部に設けられた金属製の下側ガイド部材21bと、上側ガイド部材21aと下側ガイド部材21bの間に設けられた高い磁性を有する中央ガイド部材21cとからなり、固定子2の形状に従って長円環状に形成されている。
【0030】
また、前記固定子2は、ガイドレール21の装置内部において、複数の電磁石22(コイルユニット)が周方向に沿って並んで配設されている。この電磁石22は、図4に示すように、制御部6により図示略の電源から供給される電流が変化することにより、極性が変化するようになっている。
【0031】
また、前記固定子2は、図1に示すように、ガイドレール21に沿う軌道が可動子3の走行軌道Aとなされており、ガイドレール21の奥側に直線状の走行軌道(以下、直線走行軌道A1という)、右側に曲線状の走行軌道(以下、曲線走行軌道A2という)、手前側に直線状の走行軌道(以下、直線走行軌道A3という)、左側に曲線状の走行軌道(以下、曲線走行軌道A4という)とからなる。
【0032】
前記可動子3は、金属製の直方体状に形成されており、前記固定子2のガイドレール21の周面に沿って走行可能な状態で設けられている。具体的には、可動子3は、上側部分が固定子2の上側ガイド部材21aに係止され、かつ下側部分が固定子2の下側ガイド部材21bに係止されるとともに、内側面がガイドレール21の中央ガイド部材21cの周面に所定の隙間を空けて対向する態様で固定子2の側面に設けられている。
【0033】
また、前記可動子3は、永久磁石31が内部に設けられており、該永久磁石31が固定子2の電磁石22の極性変化により引力や斥力を受ける。これにより、制御部6により固定子2の各電磁石22の極性変化を所定の方向に沿って繰り返していくと、それに伴って、可動子3の永久磁石31が固定子2の電磁石22の極性に順次引っ張られることにより可動子3が所定の方向に推進力を受けるため、可動子3が固定子2における走行軌道に沿って搬送方向または逆方向に走行する。このとき、制御部6により固定子2の各電磁石22の極性変化の時間間隔を変化させることによって、可動子3の走行速度を変化させることできる。
【0034】
また、前記可動子3は、物品7を保持する保持部材4が設けられている。この保持部材4は、可動子3の外側面に設けられた支持部材5を介して、可動子3の外側面から可動子3の走行軌道に対して径方向外側に所定距離Lだけ離れた位置に配置されている。このため、保持部材4に保持された物品7は、可動子3が固定子2における走行軌道Aに沿って走行すると、可動子3の走行軌道に対して径方向外側に所定距離Lだけ離れた搬送軌道Bに沿って搬送される。
【0035】
また、隣り合う一組の可動子3の保持部材4により物品7を保持するようになっており、物品7の搬送方向(本実施形態では図2の右方向)の前方の保持部材4が物品7の前方上側端部を挟着し、かつ可動子3の走行方向の後方の保持部材4が物品7の後方上側端部を挟着する。このため、隣り合う可動子3の間隔W1が狭くなると、それに伴って保持部材4の間隔W2が狭くなって、物品7を周方向に圧縮する一方、隣り合う可動子3の間隔W1が広くなると、それに伴って保持部材4の間隔W2が広くなって、物品7を周方向に引っ張る。
【0036】
また、支持部材5は、可動子3の走行軌道に対して径方向外側(法線方向外側)に直角に延びる態様で設けられている。このため、隣り合う可動子3の支持部材5は、直線走行軌道A1、A3を走行する際、互いに平行な状態となるため、隣り合う可動子3の保持部材4も互いに平行な状態となる。一方、隣り合う支持部材5は、曲線走行軌道A2、A4を走行する際、互いに扇状に広がる状態となるため、隣り合う可動子3の保持部材4も互いに周方向に広がる状態となる。
【0037】
なお、本実施形態では、可動子3の間隔W1は、図3に示すように、固定子2のガイドレール21の周面上における可動子3の周方向中央部aを基点とした間隔をいう。また、保持部材4の間隔W2は、図1に示すように保持部材が物品7を保持する部分の周方向中央部bを基点とした間隔をいう。
【0038】
次に、本装置の動作(物品7の搬送方法)について説明する。なお、本実施形態では、直線走行軌道A1において物品7に内容物を充填したあと、曲線走行軌道A2において物品7を反転させ、直線走行軌道A3において物品7を別工程に受け渡す一連の動作について説明する。
【0039】
まず、図6(a)に示すように、可動子3の固定子2における直線走行軌道A1の開始位置において、隣り合う一組の可動子3の保持部材4が物品7の前方上側端部および後方上側端部を保持する。このとき、制御部6により可動子3の間隔W1を物品7の幅Wと同一となるように制御すると、保持部材4の間隔W2も、可動子3の間隔W1と同様、物品7の幅Wと同一となって、図7(a)に示すように、物品7が自然な状態で保持される。
【0040】
次に、図6(b)に示すように、可動子3の固定子2における直線走行軌道A1の前半部分において、制御部6により固定子2の電磁石22の極性変化を順方向に繰り返していくと、それに伴って隣り合う一組の可動子3が固定子2における直線走行軌道A1に沿って搬送方向に走行する。このとき、制御部6により可動子3の間隔W1を物品7の幅Wより狭くなるように制御すると、保持部材4の間隔W2も、可動子3の間隔W1に従って狭くなっていくため、物品7は搬送中に周方向に圧縮されながら撓んでいき、図7(b)に示すように、物品7の上部が開口していく。そして、可動子3の固定子2における直線走行軌道A1の中央位置において、物品7の開いた上部から内部に内容物を充填する。
【0041】
次に、図6(c)に示すように、可動子3の固定子2のおける直線走行軌道A1の後半部分において、制御部6により電磁石22の極性変化を順方向に繰り返していくと、それに伴って隣り合う一組の可動子3が固定子2における直線走行軌道A1に沿って搬送方向に走行する。このとき、制御部6により可動子3の間隔W1を物品7の幅Wと同一になるまで広くなるように制御すると、保持部材4の間隔も、可動子3の間隔W1に従って広くなっていくため、物品7は搬送中に周方向に引っ張られることにより撓みが解消されていき、物品7の開口部が閉じられていく。そして、可動子3の固定子2における直線走行軌道A1の終了位置までには、保持部材4の間隔W2が物品7の幅Wと同一になって、図7(a)に示すように、物品7が自然な状態で保持される。
【0042】
次に、図6(d)に示すように、可動子3の固定子2のおける曲線走行軌道A2において、制御部6により電磁石22の極性変化を順方向に繰り返していくと、それに伴って隣り合う一組の可動子3が固定子2における曲線走行軌道A2に沿って搬送方向に走行する。このとき、仮に可動子3の間隔W1を直線走行軌道A1の終了位置の間隔(物品7の幅Wと同一)のままにしていると、図9に示すように、保持部材4の間隔W2が物品7の幅Wよりも周方向に広がった状態となってしまい、保持部材4に保持されている物品7の両側が互いに周方向に引っ張られることにより物品7が変形または破損する虞があった。このため、本発明では、図5に示すように、制御部6により可動子3の間隔W1を物品7の幅Wより狭くなるように制御することによって、保持部材4の間隔W2が物品7の幅Wと同一となって、図7(a)に示すように、物品7が自然な状態で保持される。
【0043】
なお、この制御部6による可動子3の間隔W1の制御については、例えば搬送方向の前方の可動子3が曲線走行軌道A2に入った際、前方の可動子3のみを減速させたり、あるいは搬送方向の後方の可動子3のみを加速させたり、両方の可動子3を減速または加速させることが挙げられる。
【0044】
次に、図6(e)に示すように、可動子3の固定子2における直線走行軌道A3において、制御部6により固定子2の電磁石22の極性変化を順方向に繰り返していくと、それに伴って隣り合う一組の可動子3が固定子2における直線走行軌道A3に沿って搬送方向に走行する。このとき、仮に可動子3の間隔W1を曲線走行軌道A2の間隔のままにしていると、保持部材4の間隔W2が物品7の幅Wよりも狭くなってしまい、保持部材4に保持されている物品7の両側が互いに周方向に圧縮されることにより開口部が開いてしまう虞があった。このため、制御部6により可動子3の間隔W1を物品7の幅Wと同一となるように再び広くなるように制御することによって、保持部材4の間隔W2が物品7の幅Wと同一となって、図7(a)に示すように、物品7が自然な状態で保持される。
【0045】
なお、この制御部6による可動子3の間隔W1の制御については、例えば前方の可動子3が直線走行軌道A3に入った際、前方の可動子3のみを加速させたり、あるいは後方の可動子3のみを減速させたり、両方の可動子3を加速または減速させることが挙げられる。
【0046】
而して、可動子3が直線搬送軌道A1、曲線搬送軌道A2および直線搬送軌道A3に亘って走行する際、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔が物品7の幅Wと同一程度に一定となるため、物品7に変形または破損を生じさせることなく、物品7を安全に搬送することができる。
【0047】
その後、可動子3の固定子2における直線走行軌道A3の所定箇所において、保持部材4が内容物が充填された物品7を別の工程に受け渡したあと、曲線走行軌道A4を走行して、図6(a)に示すように、直線走行軌道A1の開始位置に戻ってくる。
【0048】
なお、本実施形態では、閉じた平面視長円状のループ状の走行軌道Aについて説明したが、走行軌道Aはその他の形状であってもよい。
【0049】
また、前記可動子3を2個1組の場合について説明したが、3個以上を1組としてもよい。
【0050】
また、前記保持部材4は、可動子3の固定子2における走行軌道Aに対して径方向外側に所定距離離れた位置に設けられるものとしたが、径方向内側に所定距離離れた位置に設けられてもよい。
【0051】
また、前記制御部6は、可動子3が固定子2における曲線走行軌道A2を走行する際、隣り合う可動子3の間隔を直前の直線走行軌道A1を走行しているときの間隔よりも狭くすることにより、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔を一定にするものとしたが、隣り合う可動子3の間隔を直前の直線走行軌道A1を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔を調整してもよい。
【0052】
また、前記制御部6は、可動子3が固定子2における直線走行軌道A3を走行する際、隣り合う可動子3の間隔を直前の曲線走行軌道A2を走行しているときの間隔よりも広くすることにより、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔を一定にするものとしたが、隣り合う可動子3の間隔を直前の曲線走行軌道A2を走行しているときの間隔と異なるように制御することにより、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔を調整してもよい。
【0053】
また、前記制御部6は、可動子3が固定子2における曲線走行軌道A2または直線走行軌道A3を走行する際、隣り合う可動子3の間隔を直前の直線走行軌道A1または曲線走行軌道A2を走行しているときの間隔と異なるように制御することによって、隣り合う可動子3の保持部材4の間隔を調整するものとしたが、隣り合う可動子3の間隔を直前の直線走行軌道A1または曲線走行軌道A2を走行しているときの間隔と異なるように制御することによって、隣り合う可動子3の保持部材4に保持されている物品Wに生じる張力を制御してもよい。例えば、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力を一定にした場合、物品7に変形または破損を生じさせることなく、物品7を安全に搬送することができる。また、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力を小さくした場合、物品7を撓ませることにより物品7の端部を開口させたりすることができる。また、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力を大きくした場合、物品7を幅方向に引っ張ることにより物品7の内部に異物が混入することを防止したりすることができる。
【0054】
また、曲線走行軌道A2の曲率が一定の場合、可動子3が曲線走行軌道A2を走行する際、可動子3の間隔W1を一度制御すればよいが、曲線走行軌道A2の曲率が変化している場合、保持部材の間隔W2が一定となるように可動子3の間隔W1を随時制御するのが好ましい。
【0055】
この場合、本装置は、固定子2における可動子3の走行軌道上の複数のポイントの位置に関する情報と、各ポイントの位置に対応する前記保持部材4の位置に関する情報とをあらかじめ記憶しておき、可動子3が曲線走行軌道を走行する際、制御部6がそれらの情報に基づいて、保持部材4の間隔や、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力が所定値となるように可動子3の間隔W1を制御することが挙げられる。
【0056】
また、物品によって保持部材4の位置が可動子3の走行軌道に対して径方向に異なる場合、可動子3の走行軌道Aの第1のポイントの位置に関する情報と、第1のポイントから径方向外側または径方向内側に所定距離離れた第2のポイントの位置に関する情報とをあらかじめ記憶しておき、制御部6が、それらの情報と、第1のポイントの位置または第2のポイントの位置から保持部材4の位置までの距離(オフセット距離)とに基づき、保持部材4の間隔や、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力が所定値となるように可動子3の間隔W1を制御することが挙げられる。
【0057】
具体的に説明すると、図8に示すように、可動子3の走行軌道A上の複数の第1のポイントの位置aと、それに対応する複数の第2のポイントの位置cとがあらかじめ記憶されていれば、第1のポイントの位置aまたは第2のポイントの位置cから保持部材4までのオフセット距離の情報が入力されることによって、可動子3の走行軌道A上における第1のポイントの位置aと、それに対応する第2のポイントの位置cを結ぶ直線上に存在する保持部材4の位置bを算出することができる。このため、制御部6は、算出した保持部材4の複数の位置bに基づいて、隣り合う保持部材4の間隔や、保持部材4に保持されている物品7に生じる張力が所定値となるように、隣り合う可動子3の間隔を制御することができる。
【0058】
また、前記制御部6は、保持部材4が物品7から受ける力の大きさに基づいて、隣り合う可動子3の間隔を制御することによって保持部材4の間隔を調整してもよい。つまり、隣り合う可動子3が、曲線走行軌道A2あるいは直線走行軌道A3を走行する際、可動子3の間隔を直前の直線走行軌道A1あるいは曲線走行軌道A2と同じ間隔にすると、上述のように保持部材4の間隔が異なることから、保持部材4は物品7を引っ張ったりあるいは撓めようとする。このとき、保持部材4が物品7から受ける力(本実施形態では物品7の張力)も変化するため、この力を図示略のセンサ等により読み取って、制御部6が読み取った力の大きさに基づいて隣り合う可動子3の間隔を制御することによって保持部材4の間隔を調整する。
【0059】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…基台
2…固定子
21…ガイドレール
21a…上側ガイド部材
21b…下側ガイド部材
21c…中央ガイド部材
22…電磁石
3…可動子
31…永久磁石
4…保持部材
5…支持部材
6…制御部
7…物品
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9