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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20230123BHJP
   C02F 1/38 20230101ALI20230123BHJP
   B01D 53/92 20060101ALI20230123BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20230123BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C02F1/00 M ZAB
C02F1/00 S
C02F1/00 V
C02F1/38
B01D53/92 215
B01D53/92 331
F01N3/04 A
B63H21/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018002173
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019118903
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和久
(72)【発明者】
【氏名】平岡 直大
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇治
(72)【発明者】
【氏名】桶谷 尚史
(72)【発明者】
【氏名】羽染 昭範
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-006883(JP,A)
【文献】特開昭58-098121(JP,A)
【文献】特表2013-527788(JP,A)
【文献】実開昭62-079557(JP,U)
【文献】特開平11-197450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361727(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 1/38
B01D 53/14-53/18、53/78、53/92
B04B 11/02
F01N 3/04
B63H 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスをスクラバ水を用いて洗浄するスクラバに適用される水処理装置であって、
前記スクラバで前記排ガスの洗浄に使用された前記スクラバ水を回収するコレクティングタンクと、
前記スクラバ水を希釈するための清水を前記コレクティングタンクに補給する清水補給系統と、
前記コレクティングタンクから前記スクラバに向けて前記スクラバ水を送る循環管を有し、前記循環管を通じて前記コレクティングタンクと前記スクラバとの間で前記スクラバ水を循環させる循環系統と、
前記スクラバ水中の異物を除去する除去装置と、前記循環系統の前記循環管から前記スクラバ水を抽出し、抽出した前記スクラバ水を前記除去装置に導く第1の配管と、前記除去装置による異物除去後の前記スクラバ水を前記循環系統の前記循環管に戻すための第2の配管とを有する異物除去系統と、
前記異物除去系統の配管に設けられる分岐弁と、
前記異物除去系統の配管から前記分岐弁を介して分岐するスクラバ水排出管と、
前記異物除去系統から前記異物を排出するための異物排出管と、
前記異物排出管を通じて排出される前記異物を貯蔵する貯蔵タンクと、
前記第1の配管内を流通する前記スクラバ水の比重を測定する比重計と、
測定された前記比重が所定の基準値以上である場合、前記スクラバ水が前記異物除去系統から前記貯蔵タンクに排出されるように前記スクラバ水の流れを制御する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値以上である場合、前記スクラバ水が前記異物除去系統から前記スクラバ水排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出されるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記コレクティングタンク内の前記スクラバ水の液面レベルを検出するレベル検出器を備え、
前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記コレクティングタンクに対する清水の補給を開始するように前記清水補給系統を制御し、検出された前記液面レベルが所定の高レベル以上である場合、前記コレクティングタンクに対する清水の補給を停止するように前記清水補給系統を制御することを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記スクラバ水排出管を閉じるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値未満である場合、前記スクラバ水排出管を閉じるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記スクラバ水排出管の出口端は、前記異物排出管の中途部に接続され、
前記スクラバ水排出管内の前記スクラバ水は、前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出されることを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の水処理装置。
【請求項6】
前記第2の配管は、前記異物除去系統の配管のうち前記分岐弁が設けられる配管であることを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の水処理装置。
【請求項7】
前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値以上である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値未満である場合よりも増やすように、前記除去装置を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値以上である場合よりも減らすように、前記除去装置を制御することを特徴とする請求項2を引用する請求項に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値未満である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値以上である場合よりも減らすように、前記除去装置を制御することを特徴とする請求項に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記除去装置は、前記スクラバ水中の異物を前記スクラバ水との比重差を利用して除去する遠心分離機であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジンの排ガスの洗浄水を処理する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の分野においては、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスを洗浄するための排ガス洗浄装置(スクラバ)が公知である。一般に、スクラバは、排ガスに対して洗浄水を噴射し、これにより、排ガス中の硫黄酸化物(SOx)や煤塵等の微粒子(PM)といった異物を除去して、排ガスを洗浄する。このようなスクラバは、例えば、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減する一手法である排ガス再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)システムに設けられている。
【0003】
EGRシステムは、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスの一部をスクラバによって洗浄し、この洗浄後の排ガスを空気と混合して舶用ディーゼルエンジンに再循環する。これにより、EGRシステムは、舶用ディーゼルエンジンの燃焼室内での燃料の燃焼によるNOxの生成を抑制して、排ガス中のNOxの含有量(すなわちNOxの排出量)を低減する。
【0004】
一方、スクラバで排ガスの洗浄に使用される水(以下、スクラバ水と適宜いう)は、排ガスの洗浄後、pHの調整(中和)や異物の除去が行われながら、再び排ガスの洗浄に使用されることが一般的である(例えば特許文献1~3参照)。このため、スクラバには、これらpHの調整や異物の除去等の処理をスクラバ水に対して行う水処理装置が適用される。
【0005】
水処理装置において、スクラバ水のpHの調整は、例えばNaOH等のアルカリ価の高い薬液(以下、アルカリ液と適宜いう)をスクラバ水に注入することにより、行われる。また、スクラバ水からの異物の除去は、例えば遠心分離機を用い、スクラバ水と異物とをその比重差を利用して分離することにより行われる場合もあれば、例えば濾過装置を用い、スクラバ水と異物とをその比重差を利用せずに分離することにより行われる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5968954号公報
【文献】特許第5859463号公報
【文献】特許第5784719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スクラバ水のpHの調整では、アルカリ液の注入によるスクラバ水の中和反応によって、Na2SO4等の副生成物がスクラバ水中に生じる。この副生成物の増加に伴い、スクラバ水の比重が増大する。この比重の増大は、スクラバ水と異物との比重差を少なくすることから、遠心分離機によるスクラバ水と異物との分離能力の低下を招来する。これに起因して、水処理装置では、スクラバ水から異物を除去することが困難になるという問題が生じる。一方、スクラバ水と異物との比重差を利用せずに濾過装置等によってスクラバ水から異物を除去する場合であっても、スクラバ水の比重が増大するに伴い、スクラバ水中の副生成物の濃度が限界値(溶解度)を超えて、スクラバ水中にNa2SO4等の副生成物が溶解しきれず析出してしまう恐れがある。これに起因して、配管の内壁に副生成物(析出物)が付着してスクラバ水の流通が阻害される事態やスクラバの液体噴射部を詰まらせる事態等の問題が生じる。これらの問題を解消するためには、従来、比重が増大したスクラバ水を海等の船外に定期的に排出して、船内に残るスクラバ水に清水を補給し、これにより、スクラバで使用するスクラバ水の比重を下げる液比重制御が行われている。
【0008】
上記の液比重制御において、船外に排出する排出対象のスクラバ水は、所定の排出規制、例えば、pHが6.5以上であること、多環芳香族炭化水素(PAH)の含有濃度が2250μg/L以下であること、濁度が25NTU以下であること、を全て満足する必要がある。このためには、排出対象のスクラバ水から異物を除去する遠心分離処理を、1段階では足りず、複数の遠心分離機によって多段階(2段階以上)に行わなければならない場合がある。また、排出対象のスクラバ水が上記の排出規制を満足しているか否かを検査する検査装置が必要であり、さらには、これらの装置間あるいは船外に向けて排出対象のスクラバ水を流通させる配管等が必要である。
【0009】
一方、スクラバ水から除去された異物(残渣ともいう)は、その性状に関係なく、排出規制上、船外に排出することができない。このため、当該異物は、タンクに一時保管され、然るべきタイミングに陸揚げされて処分(例えば産業廃棄物扱いで廃棄処分)される。
【0010】
上述したように、従来技術では、船外に排出されるスクラバ水および陸揚げして廃棄される異物という、排出に必要な取扱いが相異する2種類の排出対象物が船舶内に生じてしまう。このため、船舶内という限られた空間に、スクラバ水の船外排出に必要な装置および配管と、陸揚げする異物の一時保管等に必要な装置および配管とを設けなければならず、これらの装置および配管の構成が煩雑になるという問題がある。延いては、船舶の製造コストが増大する。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、スクラバ水および異物の排出に必要な装置および配管を船舶内に簡易に構成することができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る水処理装置は、舶用ディーゼルエンジンから排出された排ガスをスクラバ水を用いて洗浄するスクラバに適用される水処理装置であって、前記スクラバで前記排ガスの洗浄に使用された前記スクラバ水を回収するコレクティングタンクと、前記スクラバ水を希釈するための清水を前記コレクティングタンクに補給する清水補給系統と、前記コレクティングタンクから前記スクラバに向けて前記スクラバ水を循環させる循環系統と、前記スクラバ水中の異物を除去する除去装置を有し、前記循環系統から前記スクラバ水を抽出し、抽出した前記スクラバ水中の異物を前記除去装置によって除去し、異物除去後の前記スクラバ水を前記循環系統に戻す異物除去系統と、前記異物除去系統から前記異物を排出するための異物排出管と、前記異物排出管を通じて排出される前記異物を貯蔵する貯蔵タンクと、前記スクラバ水の比重を測定する比重計と、測定された前記比重が所定の基準値以上である場合、前記スクラバ水が前記異物除去系統から前記貯蔵タンクに排出されるように前記スクラバ水の流れを制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記コレクティングタンク内の前記スクラバ水の液面レベルを検出するレベル検出器を備え、前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記コレクティングタンクに対する清水の補給を開始するように前記清水補給系統を制御し、検出された前記液面レベルが所定の高レベル以上である場合、前記コレクティングタンクに対する清水の補給を停止するように前記清水補給系統を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記異物除去系統の配管に設けられる分岐弁と、前記異物除去系統の配管から前記分岐弁を介して分岐するスクラバ水排出管と、を備え、前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値以上である場合、前記スクラバ水が前記異物除去系統から前記スクラバ水排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出されるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記スクラバ水排出管を閉じるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値未満である場合、前記スクラバ水排出管を閉じるように前記分岐弁の開度を制御することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記スクラバ水排出管の出口端は、前記異物排出管の中途部に接続され、前記スクラバ水排出管内の前記スクラバ水は、前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記異物除去系統は、前記循環系統から前記スクラバ水を抽出し、抽出した前記スクラバ水を前記除去装置に導く第1の配管と、前記除去装置による異物除去後の前記スクラバ水を前記循環系統に戻すための第2の配管と、を備え、前記第2の配管は、前記異物除去系統の配管のうち前記分岐弁が設けられる配管であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値以上である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値未満である場合よりも増やすように、前記除去装置を制御することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記制御装置は、検出された前記液面レベルが所定の低レベル未満である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値以上である場合よりも減らすように、前記除去装置を制御することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記制御装置は、測定された前記比重が前記基準値未満である場合、前記異物とともに前記除去装置から前記異物排出管を通じて前記貯蔵タンクに排出される前記スクラバ水の流量を、測定された前記比重が前記基準値以上である場合よりも減らすように、前記除去装置を制御することを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る水処理装置は、上記の発明において、前記除去装置は、前記スクラバ水中の異物を前記スクラバ水との比重差を利用して除去する遠心分離機であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る水処理装置によれば、スクラバ水および異物の排出に必要な装置および配管を船舶内に簡易に構成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る水処理装置によるスクラバ水の水処理の一処理手順を例示するフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態2に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態2に係る水処理装置によるスクラバ水の水処理の一処理手順を例示するフロー図である。
図5図5は、本発明の実施形態3に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態4に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態5に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態6に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る水処理装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0026】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る水処理装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。本発明の実施形態1に係る水処理装置10は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジン110の排ガスの洗浄水を処理するものであり、図1に示すように、排ガスの洗浄に使用されるスクラバ水を貯蔵するコレクティングタンク1と、スクラバ水を循環させるための循環系統2と、スクラバ水中の異物を除去するための異物除去系統3とを備える。また、水処理装置10は、スクラバ水の比重を測定する比重計4と、過度に比重が増大したスクラバ水を排出するためのスクラバ水排出管5と、異物除去系統3の配管とスクラバ水排出管5との間に介設される分岐弁6と、スクラバ水から除去された異物を排出するための異物排出管7と、異物排出管7での逆流を防止する逆止弁8と、異物等を貯蔵するスラッジタンク9とを備える。さらに、水処理装置10は、コレクティングタンク1に清水を補給する清水補給系統11と、スクラバ水のpHを調整するための薬液供給系統12と、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsを検出するレベル検出器13と、スクラバ水のpHを測定するpH計14と、制御装置15とを備える。
【0027】
また、図1に示すように、水処理装置10は、舶用ディーゼルエンジン110から排出された排ガスをスクラバ水を用いて洗浄するスクラバ101に適用されている。本実施形態1において、スクラバ101は、舶用ディーゼルエンジン110からの排ガスの一部を再循環ガスとして舶用ディーゼルエンジン110に再循環するEGRシステム100の一構成部である。以下、排ガスといえば、舶用ディーゼルエンジン110から排出された排ガスを意味する。
【0028】
なお、図1において、スクラバ水や排ガス等の流体の流通および配管は、実線矢印によって適宜図示される。電気信号線は、一点鎖線によって適宜図示される。このことは、以下においても同様である。
【0029】
コレクティングタンク1は、スクラバ水を回収するタンクである。図1に示すように、コレクティングタンク1は、EGRシステム100においてスクラバ101と連結されたデミスタ102よりも下方に配置され、回収管104を介してデミスタ102と連通している。コレクティングタンク1は、スクラバ101で排ガスの洗浄に使用されたスクラバ水を、デミスタ102から回収管104を通じて回収する。この際、使用後のスクラバ水は、例えば重力の作用により、スクラバ101からデミスタ102に流入し、回収管104を通じてコレクティングタンク1に流入する。コレクティングタンク1は、このように回収したスクラバ水を一時貯蔵する。
【0030】
循環系統2は、コレクティングタンク1からスクラバ101に向けてスクラバ水を循環させるための系統である。図1に示すように、循環系統2は、循環管2aと、循環ポンプ2bと、調整弁2cとを備える。
【0031】
循環管2aは、入口端がコレクティングタンク1の下部に接続され且つ出口端がスクラバ101の噴射配管101aの入口端に接続される。循環ポンプ2bは、循環管2aの中途部に設けられる。循環ポンプ2bは、コレクティングタンク1から循環管2aに流入したスクラバ水を、スクラバ101に向けて圧送する。これにより、循環ポンプ2bは、コレクティングタンク1側からスクラバ101側に向かうスクラバ水の流れを循環管2a内に発生させる。調整弁2cは、循環管2aの中途部であって循環ポンプ2bよりもスクラバ水の流通方向の下流側に設けられる。調整弁2cは、開度の制御により、循環管2a内を流通するスクラバ水の流量を調整する。この調整弁2cの開度は、制御装置15によって制御されてもよいし、別の制御装置(図示せず)によって制御されてもよいし、手動で制御されてもよい。
【0032】
このような構成を有する循環系統2において、循環管2aは、コレクティングタンク1内のスクラバ水を、循環ポンプ2bの作用によってスクラバ101の噴射配管101aに送る。噴射配管101aに送られたスクラバ水は、スクラバ101の噴射ノズル等の液体噴射部から噴射され、スクラバ101での排ガスの洗浄に使用(再利用)される。この排ガスの洗浄に使用されたスクラバ水は、排ガスから除去した異物(煤塵やSOx等)を含んだ状態でスクラバ101からデミスタ102に流入し、その後、回収管104を通じてコレクティングタンク1に回収される。このようにして、循環系統2は、コレクティングタンク1とスクラバ101との間でスクラバ水を繰り返し循環させる。
【0033】
異物除去系統3は、循環系統2からスクラバ水を抽出し、抽出したスクラバ水中の異物を除去し、異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すものである。このような異物除去系統3は、図1に示すように、分岐管3aと、出口管3bと、合流管3cと、遠心分離機3dとを備える。
【0034】
分岐管3aは、循環系統2からスクラバ水を抽出する配管(異物除去系統3における第1の配管)を構成する。図1に示すように、分岐管3aは、入口端が循環系統2の循環管2aに接続され且つ出口端が遠心分離機3dの入口部に接続される。本実施形態1において、分岐管3aは、循環ポンプ2bと調整弁2cとの間の位置で循環管2aから分岐して、循環管2aと遠心分離機3dとを連通させる。分岐管3aは、循環管2a内を流通するスクラバ水の一部を抽出し、この循環管2aから抽出したスクラバ水を遠心分離機3dに導く。
【0035】
出口管3bおよび合流管3cは、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための配管(異物除去系統3における第2の配管)を構成する。図1に示すように、出口管3bは、入口端が遠心分離機3dの出口部に接続され且つ出口端が分岐弁6に接続される。出口管3bは、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を、遠心分離機3dから受け入れ、受け入れたスクラバ水を分岐弁6へ導く。また、出口管3bは、分岐弁6を介して合流管3cおよびスクラバ水排出管5と連通可能に接続されている。すなわち、異物除去系統3における第2の配管(出口管3bおよび合流管3c)は、異物除去系統3の配管のうち分岐弁6が設けられる配管である。本実施形態1において、出口管3bから分岐弁6に導かれたスクラバ水は、分岐弁6を介して合流管3cまたはスクラバ水排出管5のいずれかに流入する。
【0036】
合流管3cは、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための配管である。図1に示すように、合流管3cは、入口端が分岐弁6に接続され且つ出口端が循環管2aの中途部(例えば調整弁2cよりもスクラバ水の流通方向の下流側)に接続される。合流管3cは、出口管3bから分岐弁6を介して異物除去後のスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水を循環管2aに合流させて戻す。
【0037】
遠心分離機3dは、異物除去系統3においてスクラバ水中の異物を除去する除去装置の一例である。本実施形態1において、遠心分離機3dは、循環管2aから分岐管3a(第1の配管)を通じて抽出されたスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水中の異物を除去する。この際、遠心分離機3dは、受け入れたスクラバ水に遠心力を作用させ、スクラバ水と異物との比重差を利用してスクラバ水から異物を分離除去する。遠心分離機3dは、異物除去後のスクラバ水を出口管3bに送出し、スクラバ水から除去した異物(残渣)を異物排出管7に送出する。
【0038】
比重計4は、スクラバ水の比重を測定するものである。本実施形態において、比重計4は、例えば図1に示すように、分岐管3aに設けられる。比重計4は、分岐管3a内を流通するスクラバ水(すなわち循環管2aから分岐管3aを通じて抽出されたスクラバ水)の比重を測定する。比重計4によるスクラバ水の比重の測定は、時系列に沿って連続的に行われてもよいし、所定の時間間隔で断続的に行われてもよいし、制御装置15によって測定指示された場合に行われてもよい。比重計4は、スクラバ水の比重を測定する都度、得られたスクラバ水の比重(測定値)を示す電気信号を制御装置15に送信する。
【0039】
スクラバ水排出管5は、比重が過度に増大したスクラバ水を排出するための配管であり、異物除去系統3の配管から分岐弁6を介して分岐する。本実施形態1では、図1に示すように、スクラバ水排出管5は、入口端が分岐弁6に接続され且つ出口端が異物排出管7の中途部に接続される。スクラバ水排出管5は、出口管3bから分岐弁6を介して異物除去後のスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水をスラッジタンク9に向けて流通させる。この際、スクラバ水排出管5内のスクラバ水は、スクラバ水排出管5から異物排出管7に合流し、異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出される。
【0040】
分岐弁6は、異物除去系統3の配管内のスクラバ水を循環管2a側またはスクラバ水排出管5側に流通させるための弁である。図1に示すように、分岐弁6は、三方弁等によって構成され、異物除去系統3の配管(本実施形態1では出口管3bおよび合流管3cによって構成される第2の配管)に設けられる。具体的には、分岐弁6が有する3つの開口部のうち、第1の開口部には出口管3bの出口端が接続され、第2の開口部には合流管3cの入口端が接続され、第3の開口部にはスクラバ水排出管5の入口端が接続される。分岐弁6は、出口管3bと合流管3cとの間における開度と、出口管3bとスクラバ水排出管5との間における開度とのうち、一方の開度を増加させるに伴い他方の開度を減少させる等して、これらの各開度を調整する。本実施形態1において、分岐弁6は、これらの各開度のうち、一方の開度を全開に調整することにより、他方の開度を全閉に調整する。この開度調整は制御装置15によって制御され、この制御に基づき、分岐弁6は、出口管3bからのスクラバ水の流通先を合流管3c(循環管2a側)とスクラバ水排出管5(スラッジタンク9側)とのいずれかに択一的に決定する。
【0041】
異物排出管7は、スクラバ水から除去された異物を異物除去系統3から排出するための配管である。図1に示すように、異物排出管7は、入口端が遠心分離機3dの残渣排出口部に接続され且つ出口端がスラッジタンク9に接続される。異物排出管7は、遠心分離機3dによってスクラバ水から除去された異物(例えばスラッジ状の残渣)を遠心分離機3dから受け入れ、受け入れた異物をスラッジタンク9に排出する。また、本実施形態1において、異物排出管7の中途部には、上述したようにスクラバ水排出管5が接続されている。異物排出管7は、このスクラバ水排出管5から流入されたスクラバ水をスラッジタンク9に排出する。
【0042】
逆止弁8は、異物およびスクラバ水等の排出対象物が異物排出管7内でスラッジタンク9側から遠心分離機3d側に流れること(すなわち逆流)を防止するための弁である。図1に示すように、逆止弁8は、異物排出管7の中途部であってスクラバ水排出管5と異物排出管7との合流部分よりも遠心分離機3d側の部分に設けられる。逆止弁8は、遠心分離機3dから異物排出管7に送出された異物が遠心分離機3d側に逆流すること、および、スクラバ水排出管5から異物排出管7に合流したスクラバ水が遠心分離機3d側に逆流することを防止する。
【0043】
スラッジタンク9は、異物排出管7を通じて排出される少なくとも異物を貯蔵する貯蔵タンクである。図1に示すように、スラッジタンク9は、遠心分離機3dよりも下方の位置に設けられ、上述したように異物排出管7が接続される。本実施形態1において、スラッジタンク9は、異物排出管7等を通じて排出された異物およびスクラバ水を、船舶から陸揚げされるまでの間、集約して貯蔵する。
【0044】
清水補給系統11は、スクラバ水を希釈するための清水をコレクティングタンク1に補給するための系統である。図1に示すように、清水補給系統11は、清水タンク11aと、補給管11bと、補給ポンプ11cとを備える。清水タンク11aは、清水を貯蔵するタンクである。清水タンク11aに貯蔵される清水としては、例えば、船外から積み込まれた清水、船内で造られた清水、舶用ディーゼルエンジン110から排出されるドレン水等が挙げられる。補給管11bは、清水タンク11aからコレクティングタンク1に清水を導く配管である。具体的には、補給管11bは、入口端が清水タンク11aに接続され且つ出口端がコレクティングタンク1に接続される。補給ポンプ11cは、補給管11bの中途部に設けられ、清水タンク11a側からコレクティングタンク1側に向かう清水の流れを補給管11b内に発生させる。
【0045】
このような構成を有する清水補給系統11は、補給ポンプ11cの作用により、清水タンク11aから補給管11bを通じてコレクティングタンク1に清水を補給する。これにより、コレクティングタンク1内のスクラバ水が増量されながら希釈されて、このスクラバ水の比重が低下する。本実施形態1において、清水補給系統11による清水の補給開始および補給停止の各タイミング(すなわち補給ポンプ11cの動作タイミング)は、制御装置15によって制御される。
【0046】
薬液供給系統12は、スクラバ水のpHを調整(中和)するための薬液をコレクティングタンク1に供給するための系統である。本実施形態1において、スクラバ水は、スクラバ101で排ガスの洗浄に使用される都度、排ガスから除去したSOx等の異物の含有量を増加させ、これにより、スクラバ水の酸性化が進む。このため、スクラバ水のpHを調整するための薬液としては、アルカリ価の高い薬液(アルカリ液)が用いられる。
【0047】
図1に示すように、薬液供給系統12は、アルカリ液タンク12aと、供給管12bと、供給ポンプ12cとを備える。アルカリ液タンク12aは、NaOH等のアルカリ液を貯蔵するタンクである。供給管12bは、アルカリ液タンク12aからコレクティングタンク1にアルカリ液を導く配管である。具体的には、供給管12bは、入口端がアルカリ液タンク12aに接続され且つ出口端がコレクティングタンク1に接続される。供給ポンプ12cは、供給管12bの中途部に設けられ、アルカリ液タンク12a側からコレクティングタンク1側に向かうアルカリ液の流れを供給管12b内に発生させる。
【0048】
このような構成を有する薬液供給系統12は、供給ポンプ12cの作用により、アルカリ液タンク12aから供給管12bを通じてコレクティングタンク1にアルカリ液を供給する。これにより、コレクティングタンク1内のスクラバ水がアルカリ液で中和されて、このスクラバ水のpHが上昇する。一方、これらスクラバ水とアルカリ液との中和反応の進行に伴い、スクラバ水中に生成されるNa2SO4等の副生成物の含有量が増大することから、このスクラバ水の比重は増大する。本実施形態1において、薬液供給系統12によるアルカリ液の供給開始および供給停止のタイミング(すなわち供給ポンプ12cの動作タイミング)は、制御装置15によって制御される。
【0049】
レベル検出器13は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsを検出するものである。例えばレベル検出器13は、図1に示すように、コレクティングタンク1の高さ方向における低レベルおよび高レベルの各位置に検出子を有する態様でコレクティングタンク1に設けられる。レベル検出器13は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベルの検出子よりも低い位置となった場合、液面レベルLsが低レベル未満であることを検出する。この場合、レベル検出器13は、液面レベルLsが低レベル未満であることを示す電気信号を制御装置15に送信する。一方、レベル検出器13は、液面レベルLsが高レベルの検出子以上に高い位置となった場合、この液面レベルLsが高レベル以上であることを検出する。この場合、レベル検出器13は、液面レベルLsが高レベル以上であることを示す電気信号を制御装置15に送信する。
【0050】
本実施形態1において、上記の低レベルおよび高レベルは、各々、コレクティングタンク1の設備仕様上の下限レベルと上限レベルとの間の範囲に予め設定される液面の閾レベルである。すなわち、低レベルは、コレクティングタンク1の下限レベル以上、上記の高レベル未満の閾レベルである。高レベルは、上記の低レベルより高く、コレクティングタンク1の上限レベル以下の閾レベルである。コレクティングタンク1内のスクラバ水が液面レベルLsを低レベル未満に低下させた状態から高レベル以上に上昇させた状態になるまで清水で増量(希釈)された場合、このスクラバ水の比重は、遠心分離機3dによるスクラバ水と異物との分離処理に支障を来さない程度に低くなる。これらの低レベルおよび高レベルは、上記の事象を実現し得るように予め設定される。
【0051】
pH計14は、スクラバ水のpHを測定するものである。図1に示すように、pH計14は、例えば、コレクティングタンク1の下部(例えば上記の低レベルよりも低い部分)に検出子を有する態様でコレクティングタンク1に設けられる。pH計14は、コレクティングタンク1内のスクラバ水中に浸された検出子を介して、このスクラバ水のpHを測定する。pH計14によるスクラバ水のpHの測定は、時系列に沿って連続的に行われてもよいし、所定の時間間隔で断続的に行われてもよいし、制御装置15によって測定指示された場合に行われてもよい。pH計14は、スクラバ水のpHを測定する都度、得られたスクラバ水のpH(測定値)を示す電気信号を制御装置15に送信する。
【0052】
制御装置15は、水処理装置10によるスクラバ水の水処理に必要な制御を行う装置である。本実施形態1では、水処理装置10によるスクラバ水の水処理として、例えば、スクラバ水の比重制御およびpH調整等が挙げられる。具体的には、制御装置15は、各種プログラムを実行するためのCPU、メモリおよびシーケンサ等によって構成される。制御装置15は、スクラバ水の比重制御およびpH調整の際に、比重計4、レベル検出器13およびpH計14の各々から電気信号を受信し、これらの電気信号に基づいて、分岐弁6、補給ポンプ11cおよび供給ポンプ12cを各々制御する。
【0053】
例えば、スクラバ水の比重制御において、制御装置15は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と予め設定された所定の基準値とを比較し、この比較結果に基づいて、スクラバ水の流れを制御する。本実施形態1において、制御装置15は、この測定されたスクラバ水の比重が上記基準値以上である場合、スクラバ水が異物除去系統3からスラッジタンク9に排出されるように、すなわち、スクラバ水排出管5を開けるように分岐弁6の開度を制御する。その後、制御装置15は、スクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満であることを、レベル検出器13が検出したことに基づいて、スクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する。また、制御装置15は、レベル検出器13によって検出されたスクラバ水の液面レベルLsに基づいて、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始または停止するように清水補給系統11(具体的には補給ポンプ11c)を制御する。なお、上述のように制御装置15に予め設定される基準値としては、例えば、遠心分離機3dによるスクラバ水と異物との分離処理に支障を来さないスクラバ水の比重範囲における上限値等が用いられる。以下、基準値といえば、特に説明がない限り、上述したようにスクラバ水の比重について予め設定された所定の基準値を意味する。
【0054】
また、スクラバ水のpH調整において、制御装置15は、pH計14によって測定されたスクラバ水のpHと予め設定されたpHの閾値とを比較し、この比較結果に基づいて、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を開始または停止するように薬液供給系統12を制御する。なお、上記pHの閾値は、例えば、水処理装置10においてスクラバ水と接触する配管等の各部材が腐食しない範囲、あるいは、スクラバ101でのSOxの除去性能を害さない範囲に設定される。
【0055】
一方、EGRシステム100は、船舶に搭載される舶用ディーゼルエンジン110から排出された排ガスの一部を再循環ガスとして舶用ディーゼルエンジン110に再循環し、これにより、排ガス中のNOxの含有量を低減するためのシステムである。図1に示すように、EGRシステム100は、スクラバ101と、デミスタ102と、EGRブロア103とを備える。
【0056】
スクラバ101は、舶用ディーゼルエンジン110から排出された排ガスの一部を再循環ガスとして使用するために洗浄するものであり、本実施形態1に係る水処理装置10が適用されている。図1に示すように、スクラバ101には、舶用ディーゼルエンジン110から配管等を通じて排ガスの一部が送給される。スクラバ101は、洗浄対象の排ガスに対してスクラバ水を噴射するノズル等の液体噴射部を備えている。この液体噴射部は、噴射配管101aを通じてスクラバ水が供給されるように構成されている。スクラバ101は、舶用ディーゼルエンジン110側から送給された排ガスの一部(再循環ガス)に対して、この液体噴射部からスクラバ水を噴射し、これにより、再循環ガスから煤塵およびSOx等の異物を除去して再循環ガスを洗浄する。なお、舶用ディーゼルエンジン110から排出された排ガスのうち、スクラバ101に送給されない残りの排ガスは、配管等を通じて煙突から船外へ排出される。
【0057】
デミスタ102は、中空矩形状の筐体であり、スクラバ101の出口部と接続されている。また、デミスタ102の下部(底部)には、上述したコレクティングタンク1に通じる回収管104が接続されている。このようなデミスタ102には、スクラバ101でスクラバ水の噴射によって洗浄された再循環ガスと、この再循環ガスの洗浄に使用されたスクラバ水とが流れ込む。デミスタ102は、洗浄後の再循環ガスと使用後のスクラバ水とを分離する。これらの再循環ガスおよびスクラバ水のうち、再循環ガスはデミスタ102のガス吐出口からEGRブロア103に送出され、スクラバ水はデミスタ102の下部から回収管104を通じてコレクティングタンク1に回収される。
【0058】
EGRブロア103は、図1に示すように、デミスタ102の上部に設けられる。EGRブロア103は、デミスタ102から送出された再循環ガスを、配管等を通じて舶用ディーゼルエンジン110に送り込む。EGRブロア103から送出された再循環ガスは、空気(新気)とともに舶用ディーゼルエンジン110の燃焼室に送給され、舶用ディーゼルエンジン110を運転する際の燃焼用ガスとして用いられる。
【0059】
つぎに、水処理装置10がスクラバ水に対して行う水処理の処理手順について説明する。図2は、本発明の実施形態1に係る水処理装置によるスクラバ水の水処理の一処理手順を例示するフロー図である。上述した水処理装置10(図1参照)は、図2に示されるステップS101~S107の各処理を行うことにより、スクラバ水の水処理の一つである比重制御を行う。
【0060】
詳細には、水処理装置10によるスクラバ水の比重制御において、図2に示すように、制御装置15は、まず、スクラバ水の比重が基準値以上であるか否かを判断する(ステップS101)。
【0061】
ステップS101において、制御装置15は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と基準値とを比較する。そして、制御装置15は、この比重の測定値が基準値以上である場合、スクラバ水の比重が基準値以上であると判断する。このことは、水処理装置10とスクラバ101との間で繰り返し循環しているスクラバ水の比重が基準値以上であることに相当する。
【0062】
測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合(ステップS101,Yes)、制御装置15は、スクラバ水排出管5を開くように分岐弁6の開度を制御する(ステップS102)。ステップS102において、制御装置15は、異物除去系統3からスクラバ水排出管5を通じてスクラバ水がスラッジタンク9に排出されるように分岐弁6の開度を制御する。この際、制御装置15は、分岐弁6のスクラバ水排出管5側を全開とし且つ合流管3c側を全閉とするように、分岐弁6の開度を制御する。この開度制御に基づいて、分岐弁6は、出口管3bからのスクラバ水の流通先を、合流管3c側からスクラバ水排出管5側に択一的に切り換える。
【0063】
このステップS102の段階では、循環管2a等を通じてコレクティングタンク1とスクラバ101との間でスクラバ水の循環が継続して行われている。これに並行して、循環管2aから分岐管3aに抽出された一部のスクラバ水は、合流管3cから循環管2aに戻らず、スクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に順次排出されている。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水の貯蔵量は減少し、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsは低下する。
【0064】
ステップS102の実行後、制御装置15は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満であるか否かを判断する(ステップS103)。ステップS103において、制御装置15は、レベル検出器13による液面レベルLsの検出結果をもとに、液面レベルLsが低レベル未満であるか否かを判断する。
【0065】
具体的には、制御装置15は、液面レベルLsが低レベル未満であることを示す電気信号をレベル検出器13から受信していない場合、液面レベルLsが低レベル未満ではない(低レベル以上である)と判断する(ステップS103,No)。この場合、制御装置15は、このステップS103の処理を繰り返す。
【0066】
一方、制御装置15は、液面レベルLsが低レベル未満であることを示す電気信号をレベル検出器13から受信した場合、液面レベルLsが低レベル未満であると判断する。検出された液面レベルLsが低レベル未満である場合(ステップS103,Yes)、制御装置15は、スクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する(ステップS104)。
【0067】
ステップS104において、制御装置15は、上述したスクラバ水排出管5を通じてのスクラバ水の排出を停止するように分岐弁6の開度を制御する。この際、制御装置15は、分岐弁6のスクラバ水排出管5側を全閉とし且つ合流管3c側を全開とするように、分岐弁6の開度を制御する。この開度制御に基づいて、分岐弁6は、出口管3bからのスクラバ水の流通先を、スクラバ水排出管5側から合流管3c側に択一的に切り換える。
【0068】
このステップS104の段階では、上述したコレクティングタンク1とスクラバ101との間でのスクラバ水の循環に並行して、循環管2aから分岐管3aに抽出された一部のスクラバ水は、遠心分離機3dによって異物が除去された後、スクラバ水排出管5から排出されずに、合流管3cを通じて循環管2aに戻る。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水の減量が抑制され、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsの低下が抑制される。
【0069】
続いて、制御装置15は、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように清水補給系統11を制御する(ステップS105)。ステップS105において、制御装置15は、レベル検出器13によって検出された液面レベルLsが低レベル未満であることをトリガーとして、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように補給ポンプ11cを制御する。この際、制御装置15は、起動を指示する電気信号を補給ポンプ11cに送信して、補給ポンプ11cを起動させる。この起動した補給ポンプ11cの作用により、清水タンク11a内の清水は、補給管11bを通じてコレクティングタンク1に補給され始める。この清水の補給は、制御装置15によって補給ポンプ11cが停止されるまで、継続して行われる。
【0070】
このステップS105の段階では、上述したコレクティングタンク1とスクラバ101との間でのスクラバ水の循環に並行して、スクラバ水排出管5からスラッジタンク9へのスクラバ水の排出が行われず、コレクティングタンク1内に清水が順次補給されている。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水が増量され、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsが上昇する。また、コレクティングタンク1内のスクラバ水が清水の補給によって希釈され、これに伴い、このスクラバ水の比重が低下する。
【0071】
ステップS105の実行後、制御装置15は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが高レベル以上であるか否かを判断する(ステップS106)。ステップS106において、制御装置15は、レベル検出器13による液面レベルLsの検出結果をもとに、液面レベルLsが高レベル以上であるか否かを判断する。
【0072】
具体的には、制御装置15は、液面レベルLsが高レベル以上であることを示す電気信号をレベル検出器13から受信していない場合、液面レベルLsが高レベル以上ではない(高レベル未満である)と判断する(ステップS106,No)。この場合、制御装置15は、このステップS106の処理を繰り返す。
【0073】
一方、制御装置15は、液面レベルLsが高レベル以上であることを示す電気信号をレベル検出器13から受信した場合、液面レベルLsが高レベル以上であると判断する。検出された液面レベルLsが高レベル以上である場合(ステップS106,Yes)、制御装置15は、コレクティングタンク1に対する清水の補給を停止するように清水補給系統11を制御する(ステップS107)。
【0074】
ステップS107において、制御装置15は、コレクティングタンク1に対する清水の補給を停止するように補給ポンプ11cを制御する。この際、制御装置15は、停止を指示する電気信号を補給ポンプ11cに送信して、補給ポンプ11cを停止させる。これにより、補給ポンプ11cの作用による上記清水の補給は停止される。
【0075】
このステップS107の段階では、コレクティングタンク1に対する清水の補給が停止しているため、コレクティングタンク1内のスクラバ水の増量(清水による希釈)が停止し、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsの上昇が停止する。ステップS107の実行後、制御装置15は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0076】
一方、上述したステップS101において、制御装置15は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値未満である場合、水処理装置10とスクラバ101との間で繰り返し循環しているスクラバ水の比重が基準値以上ではないと判断する(ステップS101,No)。この場合、制御装置15は、このステップS101の処理を繰り返す。
【0077】
他方、本実施形態1において、水処理装置10は、図2に示したステップS101~S107に例示されるスクラバ水の比重制御に並行して、スクラバ水の水処理の一つであるpH調整を行う。
【0078】
スクラバ水のpH調整において、制御装置15は、pH計14によって測定されたスクラバ水のpHと予め設定されたpHの閾値とを比較する。制御装置15は、pH計14によるpHの測定値が閾値未満である場合、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を開始するように薬液供給系統12を制御する。この際、制御装置15は、起動を指示する電気信号を供給ポンプ12cに送信して、供給ポンプ12cを起動させる。この起動した供給ポンプ12cの作用により、アルカリ液タンク12a内のアルカリ液は、供給管12bを通じてコレクティングタンク1に供給され始める。このアルカリ液の供給は、制御装置15によって供給ポンプ12cが停止されるまで、継続して行われる。
【0079】
一方、制御装置15は、pH計14によるpHの測定値が閾値以上である場合、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を停止するように薬液供給系統12を制御する。この際、制御装置15は、停止を指示する電気信号を供給ポンプ12cに送信して、供給ポンプ12cを停止させる。これにより、供給ポンプ12cの作用による上記アルカリ液の供給は停止される。この段階において、コレクティングタンク1内のスクラバ水は、供給されたアルカリ液によって十分に中和され、これにより、このスクラバ水のpHは、適度な値(例えば6.5~7.5程度)に調整されている。上述したようなスクラバ水のpH調整により、スクラバ水が流通する水処理装置10やEGRシステム100等の装置および配管の腐食を防止することができる。さらには、スクラバ101による排ガスからのSOxの除去性能が害される事態を防止することができる。
【0080】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る水処理装置10では、スクラバ101で排ガスの洗浄に使用されたスクラバ水をコレクティングタンク1内に回収し、回収したスクラバ水を、循環系統2によってコレクティングタンク1からスクラバ101に向けて循環させるとともに、異物除去系統3が、循環系統2から抽出したスクラバ水中の異物を除去して異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻し、除去された異物が、異物除去系統3から異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるようにし、また、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が所定の基準値以上である場合、スクラバ水が異物除去系統3からスクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に排出されるように、制御装置15が、異物除去系統3の配管とスクラバ水排出管5との間に介設された分岐弁6の開度を制御し、清水補給系統11が、スクラバ水を希釈するための清水をコレクティングタンク1に適宜補給している。
【0081】
上記の構成により、比重が基準値以上に増大したスクラバ水を海等の船外に排出せずにスラッジタンク9に貯蔵しながら、このスクラバ水の比重を基準値未満に低く制御することができる。このため、従来は船外に排出されていたスクラバ水を異物(残渣)とともにスラッジタンク9内に集約して貯蔵し、これらスクラバ水および異物といった排出対象物を船舶から陸揚げして排出処分することができる。この結果、スクラバ水を船外に排出するための装置(例えば、排出規制を満足するための高機能な浄化装置や検査・監視装置等)および配管を船舶内の限られた空間に設ける必要がなく、スクラバ水排出管5等のスクラバ水の排出用設備を陸揚げ処分される異物の排出用設備と組み合わせて構成できることから、スクラバ水および異物の排出に必要な装置および配管を船舶内に簡易に構成することができ、延いては、船舶の製造コストを低減することができる。
【0082】
また、本発明の実施形態1に係る水処理装置10では、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsをレベル検出器13によって検出し、検出された液面レベルLsが所定の低レベル未満である場合、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように制御装置15によって清水補給系統11を制御し、検出された液面レベルLsが所定の高レベル以上である場合、コレクティングタンク1に対する清水の補給を停止するように制御装置15によって清水補給系統11を制御している。このため、コレクティングタンク1内のスクラバ水を過度に減量または増量することを防止できるとともに、コレクティングタンク1内の比重が増大したスクラバ水に対して、比重の低下に必要な補給量の清水を、このスクラバ水を十分に減量した上で効率よく注入することができる。
【0083】
また、本発明の実施形態1に係る水処理装置10では、レベル検出器13によって検出されたスクラバ水の液面レベルLsが所定の低レベル未満である場合、スクラバ水排出管5を閉じるように、制御装置15によって分岐弁6の開度を制御している。このため、スクラバ水排出管5からスラッジタンク9へのスクラバ水の排出に伴ってコレクティングタンク1内のスクラバ水が過度に減量されることを防止できるとともに、コレクティングタンク1に対する清水の補給時に、上記スクラバ水の排出に伴う減量を無くして、コレクティングタンク1内のスクラバ水に清水を無駄なく補給することができる。
【0084】
また、本発明の実施形態1に係る水処理装置10では、スクラバ水排出管5の出口端を異物排出管7の中途部に接続し、スクラバ水が、スクラバ水排出管5から異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるように配管構成している。このため、異物をスラッジタンク9に排出するための異物排出管7を、スクラバ水をスラッジタンク9に排出するための排出経路の一部として共用することができる。この結果、スクラバ水の船外排出用の配管に代わるスクラバ水排出管5の規模を小さくできるとともに、スラッジタンク9に通じるスクラバ水および異物の排出用の配管構成を可能な限り簡易にすることができる。
【0085】
また、本発明の実施形態1に係る水処理装置10では、異物除去系統3が、循環系統2からスクラバ水を抽出する第1の配管(分岐管3a)と、第1の配管を通じて抽出されたスクラバ水中の異物を除去する遠心分離機3dと、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための第2の配管(出口管3bおよび合流管3c)と、を備えるようにし、スクラバ水排出管5が接続される分岐弁6を、第2の配管(具体的には出口管3bと合流管3cとの間)に設けるようにしている。このため、異物除去系統3の配管のうち、出口管3bおよび合流管3cの間から分岐弁6を介してスクラバ水排出管5が分岐するように配管構成することができる。これにより、遠心分離機3dに流入させるスクラバ水(遠心分離処理されるスクラバ水)の流量を過度に変動させることなく、スラッジタンク9に通じるスクラバ水排出管5内にスクラバ水を導くことができる。この結果、遠心分離機3dの安定した運転を確保しながら、比重が基準値以上に増大したスクラバ水を、スクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に排出することができる。
【0086】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2について説明する。上述した実施形態1では、スクラバ水の比重制御において、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満である場合に、スクラバ水排出管5を閉じてスラッジタンク9へのスクラバ水の排出を停止していたが、実施形態2では、スクラバ水の比重が基準値未満である場合に、スクラバ水排出管5を閉じてスラッジタンク9へのスクラバ水の排出を停止している。
【0087】
図3は、本発明の実施形態2に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図3に示すように、本実施形態2に係る水処理装置20は、上述した実施形態1に係る水処理装置10の制御装置15に代えて制御装置25を備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0088】
制御装置25は、スクラバ水の比重制御において、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と予め設定された所定の基準値とを比較し、この比較結果に基づいて、スクラバ水の流れを制御する、すなわち、スクラバ水排出管5を開閉するように分岐弁6の開度を制御する。制御装置25は、上記のスクラバ水の比重と基準値との比較結果に基づいて分岐弁6の開度を制御すること以外、上述した実施形態1における制御装置15と同様である。
【0089】
つぎに、水処理装置20がスクラバ水に対して行う水処理の処理手順について説明する。図4は、本発明の実施形態2に係る水処理装置によるスクラバ水の水処理の一処理手順を例示するフロー図である。水処理装置20(図3参照)は、図4に示されるステップS201~S207の各処理を行うことにより、スクラバ水の水処理の一つである比重制御を行う。
【0090】
詳細には、水処理装置20によるスクラバ水の比重制御において、図4に示すように、制御装置25は、まず、スクラバ水の比重が基準値以上であるか否かを判断する(ステップS201)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS101と同様に、ステップS201の処理を行う。
【0091】
制御装置25は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合(ステップS201,Yes)、スクラバ水排出管5を開くように分岐弁6の開度を制御する(ステップS202)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS102と同様に、ステップS202の処理を行う。
【0092】
このステップS202の段階では、上述した実施形態1におけるステップS102の段階と同様に、スクラバ水がスクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に順次排出されることから、コレクティングタンク1内のスクラバ水の貯蔵量は減少し、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsは低下する。
【0093】
ステップS202の実行後、制御装置25は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満であるか否かを判断する(ステップS203)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS103と同様に、ステップS203の処理を行う。
【0094】
すなわち、制御装置25は、液面レベルLsが低レベル未満ではない場合(ステップS203,No)、このステップS203の処理を繰り返す。一方、制御装置25は、液面レベルLsが低レベル未満である場合(ステップS203,Yes)、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように清水補給系統11を制御する(ステップS204)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS105と同様に、ステップS204の処理を行う。
【0095】
このステップS204の段階では、上述したコレクティングタンク1とスクラバ101との間でのスクラバ水の循環に並行して、循環管2aから分岐管3aに抽出された一部のスクラバ水は、継続的にスクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に排出されている。これと同時に、コレクティングタンク1内には、清水が順次補給されている。本実施形態2において、この清水の補給量は、スクラバ水排出管5からスラッジタンク9へのスクラバ水の排出量よりも多くなるように制御されている。このため、コレクティングタンク1内のスクラバ水は増量され、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsは上昇する。また、コレクティングタンク1内のスクラバ水は清水の補給によって希釈され、これに伴い、このスクラバ水の比重は低下する。
【0096】
ステップS204の実行後、制御装置25は、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが高レベル以上であるか否かを判断する(ステップS205)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS106と同様に、ステップS205の処理を行う。
【0097】
すなわち、制御装置25は、液面レベルLsが高レベル以上ではない場合(ステップS205,No)、このステップS205の処理を繰り返す。一方、制御装置25は、液面レベルLsが高レベル以上である場合(ステップS205,Yes)、コレクティングタンク1に対する清水の補給を停止するように清水補給系統11を制御する(ステップS206)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS107と同様に、ステップS206の処理を行う。
【0098】
このステップS206の段階では、コレクティングタンク1に対する清水の補給が停止しているため、コレクティングタンク1内のスクラバ水の増量(清水による希釈)が停止し、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsの上昇が停止する。ステップS206の実行後、制御装置25は、上述したステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0099】
一方、上述したステップS201において、制御装置25は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値未満である場合(ステップS201,No)、スクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する(ステップS207)。この際、制御装置25は、上述した実施形態1におけるステップS104と同様に、ステップS207の処理を行う。その後、制御装置25は、ステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。
【0100】
このステップS207の段階では、上述したコレクティングタンク1とスクラバ101との間でのスクラバ水の循環に並行して、循環管2aから分岐管3aに抽出された一部のスクラバ水は、遠心分離機3dによって異物が除去された後、スクラバ水排出管5から排出されずに、合流管3cを通じて循環管2aに戻る。この結果、コレクティングタンク1内のスクラバ水の減量が抑制され、これに伴い、このスクラバ水の液面レベルLsの低下が抑制される。
【0101】
他方、本実施形態2において、水処理装置20は、図4に示したステップS201~S207に例示されるスクラバ水の比重制御に並行して、スクラバ水の水処理の一つであるpH調整を行う。このスクラバ水のpH調整において制御装置25が実行する処理は、上述した実施形態1におけるスクラバ水のpH調整の場合と同様である。
【0102】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る水処理装置20では、スクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満である場合にスクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する代わりに、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値未満である場合、スクラバ水排出管5を閉じるように制御装置25によって分岐弁6の開度を制御するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、比重が基準値以上に増大したスクラバ水を、スクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に可能な限り排出して、比重の低下に伴い遠心分離処理による異物の除去が容易になったスクラバ水を、コレクティングタンク1とスクラバ101との間で効率よく循環させることができる。
【0103】
(実施形態3)
つぎに、本発明の実施形態3について説明する。上述した実施形態1では、スクラバ水排出管5の出口端を異物排出管7の中途部に接続し、スクラバ水排出管5から異物排出管7を通じてスクラバ水をスラッジタンク9に排出していたが、実施形態3では、異物排出管7とは独立したスクラバ水排出管をスラッジタンク9に接続し、この独立したスクラバ水排出管を通じて直にスクラバ水をスラッジタンク9に排出している。
【0104】
図5は、本発明の実施形態3に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図5に示すように、本実施形態3に係る水処理装置30は、上述した実施形態1に係る水処理装置10のスクラバ水排出管5に代えて独立したスクラバ水排出管35を備える。また、この水処理装置30において、異物排出管7には、上述した逆止弁8(図1参照)が設けられていない。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0105】
スクラバ水排出管35は、異物排出管7とは独立した配管であり、異物排出管7を介さず直にスラッジタンク9に通じるように構成される。具体的には、図5に示すように、スクラバ水排出管35は、入口端が分岐弁6に接続され且つ出口端がスラッジタンク9に接続される。スクラバ水排出管35は、出口管3bから分岐弁6を介して異物除去後のスクラバ水を受け入れ、受け入れたスクラバ水をスラッジタンク9に直に排出する。スクラバ水排出管35は、出口端がスラッジタンク9に接続された構成であること以外、上述した実施形態1におけるスクラバ水排出管5と同様である。
【0106】
以上、説明したように、本発明の実施形態3に係る水処理装置30では、スクラバ水排出管35の出口端をスラッジタンク9に接続して、比重が基準値以上に増大したスクラバ水を、異物排出管7を介さずスクラバ水排出管35を通じて直にスラッジタンク9に排出するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、異物排出管7とスクラバ水排出管35とを互いに独立した配管としてスラッジタンク9に各々接続しながらも、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0107】
(実施形態4)
つぎに、本発明の実施形態4について説明する。上述した実施形態1では、清水およびアルカリ液をポンプの作用によってコレクティングタンク1に適宜送り込んでいたが、実施形態4では、清水およびアルカリ液を重力の作用等によってコレクティングタンク1に適宜送り込んでいる。
【0108】
図6は、本発明の実施形態4に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図6に示すように、本実施形態4に係る水処理装置40は、上述した実施形態1に係る水処理装置10の清水補給系統11に代えて清水補給系統41を備え、薬液供給系統12に代えて薬液供給系統42を備える。清水補給系統41は、上述した実施形態1における清水補給系統11の補給管11bに代えて補給管41bを備え、補給ポンプ11cに代えて補給弁41cを備える。薬液供給系統42は、上述した実施形態1における薬液供給系統12の供給管12bに代えて供給管42bを備え、供給ポンプ12cに代えて供給弁42cを備える。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0109】
清水補給系統41は、スクラバ水を希釈するための清水を重力の作用等によってコレクティングタンク1に補給するものであり、上述したように、清水タンク11a(実施形態1と同様)と、補給管41bと、補給弁41cとを備える。補給管41bは、清水タンク11aからコレクティングタンク1に清水を導く配管であり、図6に示すように、清水タンク11aからコレクティングタンク1に向かって下るように傾斜している。補給管41bは、このように傾斜していること以外、実施形態1における補給管11bと同様に構成される。補給弁41cは、補給管41bを開閉する弁であり、図6に示すように、補給管41bの中途部に設けられている。補給弁41cは、開状態になって補給管41b内の清水の流通を可能とし、閉状態になって補給管41b内の清水の流通を不可とする。
【0110】
このような構成を有する清水補給系統41は、補給弁41cが開状態となった場合、重力の作用により、清水タンク11aから補給管41bを通じてコレクティングタンク1に清水を補給する。また、清水補給系統41は、補給弁41cが閉状態となった場合、このコレクティングタンク1に対する清水の補給を停止する。
【0111】
本実施形態4において、上述した補給弁41cの開度は、制御装置15によって制御される。すなわち、図2に示したステップS105、S107のうち、ステップS105では、制御装置15は、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように補給弁41cを制御する。この際、制御装置15は、補給弁41cを開状態(例えば全開)となるように開度制御し、これにより、補給管41bを開いた状態にしてコレクティングタンク1に対する清水の補給を開始させる。補給弁41cは、制御装置15によって閉状態に開度制御されるまで、この開状態を維持して、コレクティングタンク1に対する清水の補給を継続させる。一方、ステップS107では、制御装置15は、コレクティングタンク1に対する清水の補給を停止するように補給弁41cを制御する。この際、制御装置15は、補給弁41cを閉状態(例えば全閉)となるように開度制御し、これにより、補給管41bを閉じた状態にしてコレクティングタンク1に対する清水の補給を停止させる。
【0112】
薬液供給系統42は、スクラバ水のpHを調整するための薬液(アルカリ液)を重力の作用等によってコレクティングタンク1に供給するものであり、上述したように、アルカリ液タンク12a(実施形態1と同様)と、供給管42bと、供給弁42cとを備える。供給管42bは、アルカリ液タンク12aからコレクティングタンク1にアルカリ液を導く配管であり、図6に示すように、アルカリ液タンク12aからコレクティングタンク1に向かって下るように傾斜している。供給管42bは、このように傾斜していること以外、実施形態1における供給管12bと同様に構成される。供給弁42cは、供給管42bを開閉する弁であり、図6に示すように、供給管42bの中途部に設けられている。供給弁42cは、開状態になって供給管42b内のアルカリ液の流通を可能とし、閉状態になって供給管42b内のアルカリ液の流通を不可とする。
【0113】
このような構成を有する薬液供給系統42は、供給弁42cが開状態となった場合、重力の作用により、アルカリ液タンク12aから供給管42bを通じてコレクティングタンク1にアルカリ液を供給する。また、薬液供給系統42は、供給弁42cが閉状態となった場合、このコレクティングタンク1に対するアルカリ液の補給を停止する。
【0114】
本実施形態4において、上述した供給弁42cの開度は、制御装置15によって制御される。すなわち、スクラバ水のpH調整において、制御装置15は、pH計14によって測定されたスクラバ水のpHが閾値未満である場合、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を開始するように供給弁42cを制御する。この際、制御装置15は、供給弁42cを開状態(例えば全開)となるように開度制御し、これにより、供給管42bを開いた状態にしてコレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を開始させる。供給弁42cは、制御装置15によって閉状態に開度制御されるまで、この開状態を維持して、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を継続させる。一方、制御装置15は、pH計14によって測定されたスクラバ水のpHが閾値以上である場合、コレクティングタンク1に対するアルカリ液の供給を停止するように供給弁42cを制御する。この際、制御装置15は、供給弁42cを閉状態(例えば全閉)となるように開度制御し、これにより、供給管42bを閉じた状態にしてコレクティングタンク1に対するアルカリ液の補給を停止させる。
【0115】
以上、説明したように、本発明の実施形態4に係る水処理装置40では、清水補給系統41によるコレクティングタンク1への清水の補給開始および補給停止と、薬液供給系統42によるコレクティングタンク1へのアルカリ液の供給開始および供給停止とを、弁の開閉および重力の作用によって行うようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、コレクティングタンク1に対する清水の補給またはアルカリ液の供給にポンプの作用を必要とせず、これにより、ポンプの動力に必要な電力の消費を省くことができる。
【0116】
(実施形態5)
つぎに、本発明の実施形態5について説明する。上述した実施形態1では、スクラバ水排出管5を接続させる分岐弁6を、遠心分離機3dの出口側の配管(異物除去系統3における第2の配管)に設け、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水をスクラバ水排出管5からスラッジタンク9に適宜排出していたが、実施形態5では、この分岐弁6を、遠心分離機3dの入口側の配管(異物除去系統3における第1の配管)に設け、遠心分離機3dに流入する前のスクラバ水をスクラバ水排出管5からスラッジタンク9に適宜排出している。
【0117】
図7は、本発明の実施形態5に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図7に示すように、本実施形態5に係る水処理装置50は、上述した実施形態1に係る水処理装置10の異物除去系統3に代えて異物除去系統53を備え、制御装置15に代えて制御装置55を備える。異物除去系統53は、上述した実施形態1における異物除去系統3の出口管3bおよび合流管3cに代えて出口管53bを備える。また、本実施形態5において、分岐弁6は、異物除去系統53における第1の配管(すなわち分岐管3a)の中途部に設けられる。スクラバ水排出管5は、この分岐弁6を介して分岐管3aから分岐する。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0118】
異物除去系統53において、出口管53bは、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を循環系統2に戻すための配管(異物除去系統53における第2の配管)である。図7に示すように、出口管53bは、入口端が遠心分離機3dの出口部に接続され且つ出口端が循環管2aの中途部(例えば調整弁2cよりもスクラバ水の流通方向の下流側)に接続される。出口管53bは、遠心分離機3dによる異物除去後のスクラバ水を遠心分離機3dから受け入れ、受け入れたスクラバ水を循環管2aに合流させて戻す。
【0119】
制御装置55は、スクラバ水の比重制御の際、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合、上述したステップS102(図2参照)において、分岐弁6の開度を、スクラバ水排出管5側および分岐管3a側の双方が開状態となる中間開度に制御する。これにより、分岐管3a内のスクラバ水のうち、一部のスクラバ水がスクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9に排出されるとともに、残りのスクラバ水が分岐管3aを通じて遠心分離機3dに流入されて遠心分離処理(異物除去)される。また、制御装置55は、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値未満である場合、上述したステップS104(図2参照)において、スクラバ水排出管5側が全閉となり且つ分岐管3a側が全開となるように、分岐弁6の開度を制御する。これにより、分岐管3a内のスクラバ水は、スクラバ水排出管5からスラッジタンク9に排出されずに、遠心分離機3dに流入されて遠心分離処理(異物除去)される。制御装置55は、上述したように分岐弁6の開度を中間開度等に制御すること以外、実施形態1における制御装置15と同様である。
【0120】
以上、説明したように、本発明の実施形態5に係る水処理装置50では、異物除去系統53の配管のうち、循環系統2の循環管2aからスクラバ水を抽出する第1の配管(分岐管3a)に分岐弁6を設け、この分岐弁6を介して第1の配管からスクラバ水排出管5が分岐するように配管構成し、このスクラバ水排出管5を通じてスラッジタンク9にスクラバ水を排出する場合、分岐弁6の開度を、スクラバ水排出管5側と第1の配管側との双方が開状態となる中間開度に制御するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、遠心分離機3dによって異物除去される前のスクラバ水をスクラバ水排出管5からスラッジタンク9に排出し得るような配管構成でありながらも、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受することができる。
【0121】
(実施形態6)
つぎに、本発明の実施形態6について説明する。上述した実施形態1では、スクラバ水の比重が基準値以上である場合、スクラバ水排出管5を通じて当該スクラバ水をスラッジタンク9に排出していたが、実施形態6では、当該スクラバ水を、スクラバ水排出管5を介さず、遠心分離器3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出している。
【0122】
図8は、本発明の実施形態6に係る水処理装置の一構成例を示す模式図である。図8に示すように、本実施形態6に係る水処理装置60は、上述した実施形態1に係る水処理装置10の異物除去系統3に代えて異物除去系統63を備え、制御装置15に代えて制御装置65を備える。異物除去系統63は、上述した実施形態1における異物除去系統3の出口管3dおよび合流管3cに代えて実施形態5と同様の出口管53bを備える。また、異物除去系統63には、上述したスクラバ水排出管5および分岐弁6が設けられておらず、スクラバ水は、遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるように構成されている。その他の構成は実施形態1と同様であり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0123】
制御装置65は、スクラバ水の比重制御において、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重と予め設定された所定の基準値とを比較し、この比較結果に基づいて、スクラバ水の流れを制御する、すなわち、異物とともに遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を制御する。制御装置65は、スクラバ水の比重制御において上記のように遠心分離機3dからスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を制御すること以外、上述した実施形態1における制御装置15と同様である。
【0124】
本実施形態6において、制御装置65は、図2に示したステップS101~S107のうち、ステップS102、S104以外の各処理(ステップS101、S103、S105~S107の各処理)を実施形態1と同様に行う。
【0125】
ステップS102において、制御装置65は、上述したスクラバ水排出管5を開くように分岐弁6の開度を制御する代わりに、スクラバ水が遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるように当該スクラバ水の流量を制御する。詳細には、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合、制御装置65は、異物とともに遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を、上記スクラバ水の比重が基準値未満である場合よりも増やすように、遠心分離機3dを制御する。この際、制御装置65は、遠心分離機3dから一度に排出される異物の排出量を増やすことによって当該異物とともに排出されるスクラバ水の流量を増やしてもよいし、遠心分離機3dから排出される異物の排出頻度を増やすことによって当該異物とともに排出されるスクラバ水の流量を増やしてもよい。
【0126】
このステップS102を実行後の段階において、遠心分離機3dからは、出口管53bを通じて循環管2aに戻るスクラバ水よりも多量のスクラバ水が、異物とともに異物排出管7を通じてスラッジタンク9に順次排出される。この際、スクラバ水は、遠心分離機3dから排出されるスクラバ水の流量は、出口管53bから循環管2aへのスクラバ水の流量が零値となるように(循環管2aに戻らないように)制御されてもよい。
【0127】
一方、ステップS104において、制御装置65は、上述したスクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する代わりに、実施形態6における遠心分離機3dからスラッジタンク9へのスクラバ水の排出を停止するように、遠心分離機3dからのスクラバ水の流量を制御する。詳細には、レベル検出器13によって検出されたスクラバ水の液面レベルLsが所定の低レベル未満である場合、制御装置65は、異物とともに遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値以上である場合よりも減らすように、遠心分離機3dを制御する。この際、制御装置65は、遠心分離機3dから一度に排出される異物の排出量を減らすことによって当該異物とともに排出されるスクラバ水の流量を減らしてもよいし、遠心分離機3dから排出される異物の排出頻度を減らすことによって当該異物とともに排出されるスクラバ水の流量を減らしてもよい。
【0128】
このステップS104を実行後の段階において、遠心分離機3dからは、異物とともに異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水よりも多量のスクラバ水が、出口管53bを通じて循環管2aに順次戻る。
【0129】
他方、本実施形態6において、制御装置65は、図4に示したステップS201~S207とほぼ同様の処理を行ってもよい。すなわち、制御装置65は、ステップS201~S207のうち、ステップS202、S207以外の各処理(ステップS201、S203~S206の各処理)を実施形態2と同様に行ってもよい。
【0130】
ステップS202において、制御装置65は、上述したスクラバ水排出管5を開くように分岐弁6の開度を制御する代わりに、スクラバ水が遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるように当該スクラバ水の流量を制御する。このステップS202の処理は、上述した実施形態6におけるステップS102と同様である。
【0131】
また、ステップS207において、制御装置65は、上述したスクラバ水排出管5を閉じるように分岐弁6の開度を制御する代わりに、実施形態6における遠心分離機3dからスラッジタンク9へのスクラバ水の排出を停止するように、遠心分離機3dからのスクラバ水の流量を制御する。詳細には、比重計4によって測定されたスクラバ水の比重が基準値である場合、制御装置65は、異物とともに遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を、上記スクラバ水の比重が基準値以上である場合よりも減らすように、遠心分離機3dを制御する。このステップS207の処理は、上述した実施形態6におけるステップS104と同様である。
【0132】
なお、本実施形態6において、水処理装置60は、上述したスクラバ水の比重制御に並行して、スクラバ水の水処理の一つであるpH調整を行う。このスクラバ水のpH調整において制御装置65が実行する処理は、実施形態1におけるスクラバ水のpH調整の場合と同様である。
【0133】
以上、説明したように、本発明の実施形態6に係る水処理装置60では、スクラバ水の比重制御の際、遠心分離機3dから異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出されるスクラバ水の流量を制御するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、異物除去系統63にスクラバ水排出管5および分岐弁6を設ける必要がなく、過度に比重が増大したスクラバ水を、スクラバ水排出管5を介さず、遠心分離機3dから直に異物排出管7を通じてスラッジタンク9に排出することができる。
【0134】
なお、上述した実施形態1、3~5では、コレクティングタンク1内のスクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満である場合、スクラバ水排出管5、35を閉じるように分岐弁6の開度を制御(以下、スクラバ水排出の停止制御と適宜いう)し、その後、コレクティングタンク1に対する清水の補給を開始するように清水補給系統11、41を制御(以下、清水補給の開始制御と適宜いう)していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記スクラバ水の液面レベルLsが低レベル未満である場合、先ず、清水補給の開始制御を行い、その後、スクラバ水排出の停止制御を行ってもよいし、または、これらの制御を並行して(同時に)行ってもよい。
【0135】
また、上述した実施形態1~4では、スクラバ水をスラッジタンク9に排出する際、分岐弁6のスクラバ水排出管側を全開とし且つ合流管側(循環系統側)を全閉としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、スクラバ水をスラッジタンク9に排出する際、分岐弁6のスクラバ水排出管側および合流管側の双方を開(中間開度)としてもよい。
【0136】
また、上述した実施形態5では、スクラバ水をスラッジタンク9に排出する際、分岐弁6のスクラバ水排出管側および分岐管側の双方を開(中間開度)としていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、スクラバ水をスラッジタンク9に排出する際、分岐弁6のスクラバ水排出管側を全開とし且つ分岐管側を全閉として、遠心分離機3dへのスクラバ水の流入(スクラバ水の遠心分離処理)を一時停止してもよい。
【0137】
また、上述した実施形態1~6では、遠心分離機3dの入口側の配管(分岐管3a等)内のスクラバ水の比重を比重計4によって測定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、比重計4によるスクラバ水の比重測定は、遠心分離機3dの出口側の配管(出口管3b、53bまたは合流管3c等)において行われてもよい。あるいは、比重計4によるスクラバ水の比重測定は、循環管2a、回収管104またはコレクティングタンク1等、異物除去系統以外のスクラバ水の流通経路において行われてもよい。
【0138】
また、上述した実施形態3~5では、実施形態1と同様のスクラバ水の比重制御が行われていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態3~5では、実施形態2と同様のスクラバ水の比重制御(図4のステップS201~S207参照)が行われてもよい。すなわち、本発明に係る水処理装置は、上述した実施形態1~5を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0139】
また、上述した実施形態1~6では、本発明に係る水処理装置が適用されるスクラバの一例としてEGRシステム100のスクラバ101を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係る水処理装置は、EGRシステム以外の排ガス洗浄装置(スクラバ)に適用されてもよい。
【0140】
また、上述した実施形態1~6では、スクラバ水中の異物を除去する装置として遠心分離機3dを例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、スクラバ水中の異物を除去する除去装置は、スクラバ水と異物との比重差を利用してスクラバ水から異物を除去するものであってもよいし、スクラバ水と異物との比重差を利用せずにスクラバ水から異物を除去するもの(例えば濾過装置等)であってもよい。すなわち、本発明において、当該除去装置の種類は特に問われない。また、遠心分離機3dによるスクラバ水と異物との分離性能に影響を与えるスクラバ水の比重よりも、スクラバ水のpH調整時の副生成物が析出し始めるスクラバ水の比重の方が大きい。このため、当該除去装置がスクラバ水と異物との比重差を利用せずにスクラバ水から異物を除去するものである場合、スクラバ水をスラッジタンク9に排出するか否かを判断する際の基準値(上述したスクラバ水の比重制御における基準値)を、当該除去装置が遠心分離機3dである場合よりも高い値に設定してもよい。
【0141】
また、上述した実施形態1~5では、コレクティングタンク1内のスクラバ水のpHをpH計14によって測定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、pH計14によるスクラバ水のpH測定は、循環管2a、異物除去系統内の配管または回収管104等、コレクティングタンク1以外のスクラバ水の流通経路において行われてもよい。
【0142】
また、上述した実施形態1~6により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1~6に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0143】
1 コレクティングタンク
2 循環系統
2a 循環管
2b 循環ポンプ
2c 調整弁
3、53、63 異物除去系統
3a 分岐管
3b、53b 出口管
3c 合流管
3d 遠心分離機
4 比重計
5、35 スクラバ水排出管
6 分岐弁
7 異物排出管
8 逆止弁
9 スラッジタンク
10、20、30、40、50、60 水処理装置
11、41 清水補給系統
11a 清水タンク
11b、41b 補給管
11c 補給ポンプ
12、42 薬液供給系統
12a アルカリ液タンク
12b、42b 供給管
12c 供給ポンプ
13 レベル検出器
14 pH計
15、25、55、65 制御装置
41c 補給弁
42c 供給弁
100 EGRシステム
101 スクラバ
101a 噴射配管
102 デミスタ
103 EGRブロア
104 回収管
110 舶用ディーゼルエンジン
Ls 液面レベル
図1
図2
図3
図4
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図8