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特許7214354疾病予防支援方法、疾病予防支援装置及び疾病予防支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】疾病予防支援方法、疾病予防支援装置及び疾病予防支援システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/00 20180101AFI20230123BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20230123BHJP
   A61B 5/22 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
G16H10/00
A61B5/11 200
A61B5/22 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018047773
(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公開番号】P2019160006
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 菜月
(72)【発明者】
【氏名】山城 由華吏
(72)【発明者】
【氏名】須藤 元喜
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097401(JP,A)
【文献】国際公開第2010/146811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61B 5/11
A61B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の被験者が時間帯ごとに行った活動に関する複数日分の活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得工程と、
前記活動情報取得工程によって取得された複数日分の前記活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報、同一の時間帯に行った活動の前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記活動が行われた前記時間帯に関する時間帯情報を抽出する情報抽出工程と、
前記活動量情報、前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記時間帯情報の類似性に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類工程と、
前記分類工程において分類された群に対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力工程と、
を含む疾病予防支援方法。
【請求項2】
一の被験者が時間帯ごとに行った活動に関する複数日分の活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得部と、
前記活動情報取得部によって取得された複数日分の前記活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報、同一の時間帯に行った活動の前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記活動が行われた前記時間帯に関する時間帯情報を抽出する情報抽出部と、
前記活動量情報、前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記時間帯情報の類似性に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類部と、
前記分類部において分類された群に対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力部と、
を含む疾病予防支援装置。
【請求項3】
一の被験者が時間帯ごとに行った活動に関する複数日分の活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得装置と、
前記活動情報取得装置によって取得された複数日分の活動情報に基づいて、疾病の予防を支援する疾病予防情報を作成する疾病予防支援サーバ装置と、を含む疾病予防支援システムであって、
前記疾病予防支援サーバ装置は、
前記活動情報取得装置から通信回線を介して受信した複数日分の前記活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報、同一の時間帯に行った活動の前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記活動が行われた前記時間帯に関する時間帯情報を抽出する情報抽出部と、前記活動量情報、前記活動の量にかかる前記複数日の日ごとのばらつき度合いの高さ、および前記時間帯情報の類似性に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類部と、前記分類部において分類された前記群に対応する疾病予防支援情報を、前記通信回線を通じて前記活動情報取得装置に送信する情報出力部と、
を有する疾病予防支援システム。
【請求項4】
前記情報出力部は、前記疾病予防支援情報を、前記通信回線を介して予め定められた装置に送信する、請求項3に記載の疾病予防支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾病を事前に予防することを支援する疾病予防支援方法、疾病予防支援装置及び疾病予防支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生活リズムの乱れと健康との間に密接な関係があることが知られている。特に、高齢者にあっては、加齢により恒常性を保つ機能が低下するために生活リズムに変調をきたし易くなることが知られている。また、生活リズムの変調は、認知症や鬱症状との関連があることが明らかになっている。
以上のことから、生活リズム及びその変調を知ることによって被験者の健康状態を把握する技術がある。このような技術としては、例えば、特許文献1に記載の独居者の生活行動監視システムがある。この監視システムは、独居者(以下、「被験者」と記す)宅の複数箇所に圧力センサを有するケアマットを配置し、圧力センサによって被験者の動きを検知する。監視システムは、時系列の動きをセンタへ送信し、センタ側では受信した時系列のデータに基づいて被験者における異常の有無を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-57462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記監視システムは、被験者が自宅のケアマットを踏むことによって被験者が「動いた」と判断する。このため、上記監視システムは、被験者の屋内においての動きを検出することはできるが、屋外において移動したことを検知することはできない。このため、例えば、被験者が屋外において散歩をする、あるいは自宅以外の施設等においてする動作を検出することはできない。また、被験者の行動には移動を伴うものばかりでなく、その場で身体を動かす体操等も含まれる。このため、上記監視システムは、被験者が移動することなく行う動作を検出することができない。さらに、上記監視システムは時系列データから被験者の移動経路を検出しているが、生活リズムには、移動経路の他、移動をした時間帯の要素が含まれる。このようなことから、生活リズムから被験者の健康状態を検出する分野では、被験者の生活リズムの変調をより詳細に検出することが望まれている。
本発明は、上記の点に鑑みて行われたものであり、被験者の生活リズムをより高い精度で検出することができる疾病予防支援方法、疾病予防支援装置及び疾病予防支援システムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の疾病予防支援方法は、被験者が行った活動に関する活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得工程と、前記活動情報取得工程によって取得された活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報と、前記活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出工程と、前記活動量情報及び前記時間帯情報に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類工程と、
前記分類工程において分類された群に対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力工程と、を含む。
本発明の疾病予防支援方法は、被験者が行った活動に関する活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得工程と、前記活動情報取得工程によって取得された複数の前記活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報と、前記活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出工程と、複数の前記活動量情報及び前記時間帯情報の類似性に基づいて、複数の前記活動情報を複数の群に分類する分類工程と、前記分類工程において分類された複数の前記群と、前記群と関連する疾病予防支援情報とを対応つける対応付け工程と、を含む。
【0006】
本発明の疾病予防支援装置は、被験者が行った活動に関する活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得部と、前記活動情報取得部によって取得された活動情報から、活動の量に関する活動量情報と、前記活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出部と、前記活動量情報及び前記時間帯情報に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類部と、前記分類部において分類された群に対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力部と、を含む。
【0007】
本発明の疾病予防支援システムは、被験者が行った活動に関する活動情報を前記被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得装置と、前記活動情報取得装置によって取得された活動情報に基づいて、疾病の予防を支援する疾病予防情報を作成する疾病予防支援サーバ装置と、を含む疾病予防支援システムであって、前記疾病予防支援サーバ装置は、前記活動情報取得装置から通信回線を介して受信した前記活動情報から、前記活動の量に関する活動量情報と、前記活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出部と、前記活動量情報及び前記時間帯情報に基づいて、前記活動情報を予め設定されている複数の群のいずれかに分類する分類部と、前記分類部において分類された前記群に対応する疾病予防支援情報を、前記通信回線を通じて前記活動情報取得装置に送信する情報出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、被験者の生活リズムをより高い精度で検出することができる疾病予防支援方法、疾病予防支援装置及び疾病予防支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態の疾病予防支援装置を説明するための機能ブロック図である。
図2図2(a)~(d)は、図1に示したクラスタ記憶部に記憶されているクラスタ1、2、4および5を例示する図である。
図3】第一実施形態のクラスタについて、認知機能が健常であると判定された被験者の割合が最も高かったクラスタにおける認知症の疑いがある被験者の割合と認知症の疑いのある被験者の割合が最も高かったクラスタにおける被験者の割合を示したグラフである。
図4図1に示した出力部のディスプレイ画面に表示されるメッセージの表示例を示す図である。
図5】本発明の第一実施形態の疾病予防支援システムを説明するための機能ブロック図である。
図6図1等に示したクラスタ記憶部及びメッセージ記憶部に記憶されるデータを作成する処理を説明するためのフローチャートである。
図7図6に示した処理によって作成されたデータを使って疾病予防支援装置が行う処理を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の第二実施形態の疾病予防支援装置の機能ブロック図である。
図9図9(a)~(d)は、クラスタ1、2、4および5の活動情報の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第一実施形態、第二実施形態(以下、両者を総称して「本実施形態」とも記す)を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0011】
[概要]
本実施形態の疾病予防支援装置は、疾病予防のための情報を取得する対象となる者(以下、「被験者」と記す)の活動に関する情報(以下、「活動情報」と記す)を取得する。ここで、活動とは、被験者の位置の変化の有無に関わらず被験者が身体を動かすことを指す。活動にかかる情報とは、例えば、身体の動きの速度、動いている時間の情報及び活動が行われた時間帯を示す情報である。本実施形態は、身体が動く際には身体に加速度が作用することに着目し、被験者の身体に加速度センサを取付けて活動情報を取得するものとした。つまり、本実施形態は、被験者の身体に加わった加速度に基づく情報を活動情報として取得している。
【0012】
加速度に基づく情報を活動情報とする本実施形態では、活動情報の取得部が、被験者の身体に加わった加速度に基づく情報を取得する加速度センサを含んでいる。近年、スマートフォン(Smart Phone)等の携帯型の通信装置には、加速度センサが組み込まれているものも多いため、本実施形態では情報取得装置に加速度センサのアプリケーションがインストールされたスマートフォンを適用するものとした。スマートフォンを情報取得装置として使用する場合、スマートフォンは、例えば、被験者の腰や腕等、被験者の身体に加速度が加わったことを検出できる位置に取り付けられる。加速度センサは、一軸または三軸方向の加速度を例えば0.1秒ごとに検出する。また、加速度センサは、検出された加速度を時刻に対応付けて出力するデータロガーの機能を有するものであってもよい。さらに、本実施形態は、疾病予防支援装置に、加速度センサと共にCPU(Central Processing Unit)やメモリ装置、ディスプレイ画面及び音声発生機能といったスマートフォンの既存の機能を用いるものとした。
ただし、本実施形態は、このような構成に限定されるものでなく、例えば、加速度センサや疾病予防支援装置をそれぞれ専用の身体に装着可能な機器として構成することも可能である。このような機器としては、例えば、ウェアラブルセンサ等が考えられる。
さらに、本実施形態は、疾病予防支援装置の各機能のうち比較的演算量やデータ量の多い処理をサーバ装置で行い、結果を被験者側に送信してくる疾病予防支援システムとしても構成することができる。疾病予防支援システムについては後述する。
【0013】
[第一実施形態]
<疾病予防支援装置>
図1は、第一実施形態の疾病予防支援装置2を説明するための機能ブロック図である。疾病予防支援装置2は、被験者が行った活動に関する活動情報を被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得部21と、演算部4とを備えている。活動情報取得部21は、上記したようにスマートフォンに組み込まれた加速度センサ及びそれを動作させるためのアプリケーションを含んでいる。活動情報取得部21は、被験者が行った活動に関する活動情報を取得する。
また、疾病予防支援装置2は、演算部4を備えている。演算部4は、活動情報取得部21によって取得された活動情報から、活動の量に関する活動量情報と、活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出部41、活動量情報及び時間帯情報に基づいて、活動情報を予め設定されている複数の群(以下、「クラスタ」と記す)のいずれかに分類する分類部である実クラスタ作成部42及びクラスタ分類部43を有している。さらに、演算部4は、実クラスタ作成部42及びクラスタ分類部43において分類されたクラスタに対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力部であるメッセージ選択部44及び出力部5を備えている。なお、第一実施形態の「実クラスタ」とは、疾病予防支援の対象となる被験者から実測した活動情報を使って得たクラスタである。第一実施形態では、実クラスタの文言を用い、対象となる被験者から実測したクラスタと、クラスタの分類に用いられる保存データとしてのクラスタとを区別している。
【0014】
(活動情報)
活動情報は、活動量情報と時間帯情報とを含んでいる。活動量情報は、被験者が行った活動の回数及び強度の少なくとも一方に関する情報を含むものとすることができる。活動量情報が活動の回数を含むとは、例えば、所定の範囲の加速度が連続的に所定の回数繰り返し検出される場合、情報抽出部41がこれを被験者が歩行しているものと判断する。そして、情報抽出部41が、加速度に関する情報を所定の時間範囲における歩数に換算し、これを活動量情報に使用する。また、活動情報が活動の強度を含むとは、例えば、活動情報取得部21によって検出された加速度の値が大きいほど被験者の活動の強度が高いものとし、情報抽出部41が加速度の大きさを所定の時間範囲における活動の強度に換算し、これを活動量情報に使用することを指す。
【0015】
また、第一実施形態では、活動情報取得部21が一の被験者について所定の期間活動情報を取得し、活動量情報が所定の期間に取得された活動量のばらつきを含むようにすることができる。つまり、第一実施形態は、活動情報取得部21が一人の被験者が同一の時間帯において行った活動の活動情報を複数取得した場合、上記歩数や活動強度の所定の時間範囲における標準偏差(standard deviation, sd)等を対象データにして活動情報を分類することができる。さらに、第一実施形態は、標準偏差の他、歩数や活動強度の所定の時間範囲における平均値を対象データとして活動情報を分類することも可能である。
なお、活動情報取得部21は、加速度センサを使って活動情報を取得する構成に限定されるものでなく、例えばGPS(Global Positioning System)を使って被験者の活動情報を取得するものであってもよい。GPSによれば、被験者の移動方向、移動距離及び移動速度等が分かる。情報抽出部41は、このような情報によって被験者が乗り物(自転車を除く)に乗って移動しているか、歩行あるいは走行中であるかといった情報を抽出することもできる。なお、このような構成において、GPSは被験者が所有するスマートフォント等に付与された既存の構成を使用することができる。
【0016】
時間帯情報は、加速度が検出された時刻をいい、例えば連続して加速度が検出されている場合には加速度の検出開始時刻から検出終了時刻をいう。活動量情報と時間帯情報とを含む活動情報によれば、「何時にどれだけの活動量の活動が行われた」等の他、「日中の活動量が夜間の活動量に比べて大きい」等の相対的な情報をも得ることができる。
情報抽出部41は、活動情報取得部21の検出した加速度から活動情報を活動量情報と時間帯情報との関係として抽出する。なお、時間帯情報の取得は、例えば、疾病予防支援装置2に組み込まれた時計(図示せず)によって計時された時刻と、この時刻と活動量情報とを対応付けることによって可能になる。
【0017】
(分類部)
また、第一実施形態の疾病予防支援装置2は、活動情報取得部21が一の被験者について複数日に亘り、活動情報を取得する。そして、疾病予防支援装置2は、複数日に亘って取得された活動情報を蓄積するための活動情報蓄積部22を備えている。このため、活動情報取得の終了後、活動情報蓄積部22には複数日分の活動情報が蓄積される。実クラスタ作成部42は、活動情報蓄積部22に蓄積された活動情報の集合を、内的結合(internal cohesion)と外的分離(external isolation)が達成されるような部分集合に分割する。このような処理は、クラスタリング(clustering)、あるいはクラスタ分析(cluster analysis)と呼ばれる処理である。なお、実クラスタ作成部42によって実行されるクラスタリングは、一人の被験者の同一の時間範囲において複数回取得した活動情報から一つの実クラスタが得られるように行われる。本実施形態でいうクラスタは、クラスタリングによって作成された対象データの部分集合である。クラスタリングの手法は、観測された対象データだけを対象にして行われる、所謂教師なし学習法である。実クラスタ作成部42は、例えば、凝集型階層的クラスタリングによって複数回分の活動情報から一つの活動情報を表す実クラスタを作成する。第一実施形態の活動情報は、活動情報取得部21によって検出された加速度の強度と検出時刻とを含んでいる。加速度の強度と、検出時刻とを対応付けて表すことにより、活動情報は、図2(a)~(d)で示す曲線パターンで表される。
【0018】
実クラスタ作成部42は、対象データとなる複数の加速度の強度同士の非類似性を距離で表し、距離の近い対象データ同士でクラスタを作成する。そして、クラスタ同士の距離を算出し、最も距離が近い複数のクラスタを順次統合する。実クラスタ作成部42によるクラスタリングは、クラスタが一つになるまで行われる。このような処理により、第一実施形態は、複数回取得された活動情報を集約した一つの活動情報を作成することができる。
ただし、第一実施形態は、活動情報をクラスタ(群)に分類するにあたり、クラスタリングの手法を使用するものに限定されるものではない。複数の活動情報から一または複数の群を作成する手法は、複数の活動情報の類似性に基づいて活動情報のパターンを生成するものであればどのようなものであってもよい。なお、第一実施形態において、「類似性に基づく」とは、複数の活動情報を表す数値等のデータ同士、またはデータと基準となるデータとの類似、非類似及びその程度により一つの群を構成するデータが決まることをいう。
【0019】
第一実施形態の疾病予防支援装置2は、クラスタ記憶部6を備えている。クラスタ記憶部6は、複数のクラスタを記憶しているメモリと、このメモリからクラスタを読み出す、あるいはメモリに書き込むドライバとを有する構成である。クラスタ記憶部6に記憶されている複数のクラスタは、いずれも予め行われた調査等により作成された活動量情報と時間帯情報との関係を示すデータである。クラスタ分類部43は、実クラスタ作成部42によって作成された実クラスタをクラスタ記憶部6に記憶されているクラスタと比較する。そして、クラスタ分類部43は、作成された実クラスタとの類似性が予め定められた所定の範囲内にあるクラスタを選択する。実クラスタ作成部42によって作成された実クラスタは、選択されたクラスタに分類される。
【0020】
(クラスタ)
ここで、クラスタについて説明する。図2(a)~(d)は、クラスタ記憶部6に記憶されている複数のクラスタの内容を例示する図であって、縦軸に活動量情報として歩数を、横軸に0時から24時の24時間の時間帯が示されている。CL1からCL6を作成するために行われるクラスタリングは、例えば、k-means法、Ward(ウォード)法、最近隣法、群平均法等の分割最適化手法を用いて行われる。
【0021】
より具体的には、図2(a)~(d)に例示したクラスタは、例えば以下の方法によって作成される。先ず、第一実施形態では、多数の高齢者を対象にして各対象者から加速度センサによって検出された活動情報を取得する。取得された活動情報は、例えば、0.1秒ごとに検出された加速度の強度と検出時刻とが対応付けられたデータである。このとき、加速度センサは、0.1秒ごとの強度を例えば4秒ごとに区分し、各区分の積分値を閾値判定によって4秒間に対応する一つの値として記録することができる。記録された強度は、上記クラスタリングの結果CL1からCL6の6つのクラスタに分類される。CL1からCL6を表すデータは、図2(a)~(d)に例示した曲線パターン、あるいは曲線パターンを表す演算式としてクラスタ記憶部6に記憶される。このような処理は、疾病予防支援装置2によって行うことも可能であるが、対象者の数が多く演算量が多いため、より大型のコンピュータを使って予め行うものであってもよい。また、クラスタ記憶部6への記憶は、予めクラスタ記憶部6に記憶しておく他、サーバ装置等からクラスタ記憶部6にダウンロードして行うものであってもよい。
【0022】
図2(a)~(d)には、CL1からCL6の6つのクラスタのうち、CL1、CL2、CL4、CL5をそれぞれ例示している。図2(a)~(d)に示したように、それぞれのクラスタは、各々異なる形状を有する曲線パターンとして示される。なお、このようなCL1からCL6は、高齢者を対象として活動情報を取得した場合に得られるクラスタである。クラスタ記憶部6に記憶される複数のクラスタは、予め多数の被験者の活動情報を取得し、これをクラスタリングして作成されたものである。ただし、第一実施形態では、クラスタ記憶部6に高齢者に適用されるクラスタを記憶しているが、第一実施形態は高齢者に適用されることに限定されるものではない。第一実施形態は、どのような年齢や性別及びライフスタイルの対象者にも適用することができる。
【0023】
例えば、図2(a)に示したCL1は、被験者が午前中から夕方まで3時間当たり1000歩程度の歩行を行い、その前後においては活動量が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは、家での家事がメインで、日中に買い物等の外出をするというものである。図2(b)に示したCL2は、被験者が常に1000歩以下の歩行を行い、日中にやや歩数が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは終日家の中(自宅)で過ごし、日中に特に活動を行わない、というものである。CL3は、被験者が午前と午後に2000歩以上の歩行をし、昼頃にやや歩数が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは、日中に仕事等のため外出し、夕方に帰宅する、というものである。
【0024】
図2(c)に示したCL4は、被験者が午前中に1500歩以下、午後に1000歩程度の歩行を行い、以降の歩数が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは、午前中と午後に外出する、というものである。図2(d)に示したCL5は、被験者が午前中に1500歩以下、夕方に1800歩程度の歩行を行い、以降の歩数が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは、午前中と夕方とに外出する、というものである。CL6は、被験者が朝に2500歩程度、午前中から夕方にかけて1000歩から1300歩程度の歩行を行い、夕方以降の歩数が低下することを示している。このような被験者の生活リズムのイメージは、早朝から運動をし、以降も外出する、というものである。
【0025】
図3は、CL1からCL6について、認知機能が健常であると判定された被験者の割合が最も高かったCL3における認知症の疑いがある被験者の割合と認知症の疑いのある被験者の割合が最も高かったCL6における被験者の割合を示したグラフである。図3のグラフによれば、CL6はCL3の1.1倍、認知症の疑いのある被験者の割合が多いクラスタである。このように、第一実施形態は、被験者の活動情報をCL1からCL6のいずれかに分類することによって被験者の認知機能の低下の可能性に関する情報を得ることができるようになる。
【0026】
(情報出力部)
情報出力部の具体的な構成の説明に先立って、先ず、クラスタの種別(CL1からCL6)と、推定される被験者の疾病の状態との関係について説明する。表1は、CL1からCL6の各々について、1日の平均歩数、全被験者における割合(%)、腰痛がある被験者の割合(%)、膝痛がある被験者の割合(%)、尿漏れがある被験者の割合(%)、転倒経験がある被験者の割合(%)を示している。表1中、「*」の記号は有意差を示し、一つの*が付された数値よりも二つの**の記号が付された数値の有意差の方が大きい。表1によれば、CL1は、膝痛、尿漏れ及び転倒経験がある被験者が他のクラスタに比べて大きいクラスタである。CL2は、腰痛がある被験者が他のクラスタに比べて大きいクラスタである。CL4は、尿漏れがある被験者が全てのクラスタ中二番目に大きいクラスタである。CL5は、転倒経験がある被験者が全てのクラスタ中二番目に大きいクラスタである。
表1に示した結果から、第一実施形態では、例えば、活動情報がCL1に分類された被験者に膝痛、尿漏れ及び転倒経験があることが推測される。また、第一実施形態では、活動情報がCL4に分類された被験者に尿漏れがあることが推測される。したがって、第一実施形態のクラスタリングは、被験者の健康状態の推測に寄与することができる。
【0027】
【表1】
【0028】
メッセージ記憶部7は、CL1からCL6の各クラスタに対応する複数の疾病予防支援情報であるメッセージを記憶している。メッセージ選択部44は、クラスタ分類部43によって分類されたクラスタに対応するメッセージをメッセージ記憶部7から選択する。
ここで、クラスタに対応するメッセージについて例を示して説明する。第一実施形態のメッセージ選択部44は、クラスタ分類部43によって分類されたクラスタにおいて他のクラスタよりも割合が多い疾病の状態に関するメッセージを全て選択することができる。このようにすると、例えば、CL1においては腰痛、膝痛、尿漏れ及び転倒経験の全てについてのメッセージが選択される。また、例えば、CL2においては腰痛、膝痛及び尿漏れについてのメッセージが選択される。また、例えば、CL4においては腰痛、膝痛及び尿漏れについてのメッセージが選択され、例えば、CL5においては膝痛、尿漏れ及び転倒経験ありについてのメッセージが選択される。
【0029】
なお、第一実施形態は、メッセージ選択部44が上記のようにメッセージを選択するものに限定されるものではない。例えば、メッセージ選択部44は、クラスタ分類部43によって分類されたクラスタが全クラスタ中最も被験者が多い疾病の状態を含む場合、この疾病の状態に関するメッセージを選択することができる。このようにすると、例えば、CL1においては膝痛、尿漏れ及び転倒経験ありに関するメッセージが選択される。また、例えば、CL2においては腰痛に関するメッセージが選択される。さらに、メッセージ選択部44は、一つのクラスタにおいて、最も被験者が多い疾病の状態に関するメッセージを選択することができる。このようにすると、例えば、CL1においては尿漏れに関するメッセージが選択される。また、例えば、CL2においては腰痛に関するメッセージが選択される。さらに、CL4においては腰痛に関するメッセージが選択され、CL5においては腰痛に関するメッセージが選択される。
【0030】
表2は、膝痛、腰痛、尿漏れ及び転倒経験ありの各疾病の状態についてのメッセージを例示した図である。表2に示したメッセージは、「生活習慣の提案」と、「商品の提案」とを含んでいる。「生活習慣の提案」は、各疾病の状態を改善することに有効な生活習慣を提案する情報であり、「商品の提案」は、各疾病の状態を改善することに有効な商品を提案する情報である。
表2によれば、例えばCL1に対応する膝痛に関する生活習慣の提案は、「膝を支える筋肉を鍛える体操をする」であり、商品の提案は、「効率よく全身を温める入浴剤」である。また、例えばCL2に対応する腰痛に関する生活習慣の提案は、「腹筋や背筋を鍛える体操をする」であり、商品の提案は、「腰を温める温熱用品」である。
【0031】
また、例えばCL4に対応する尿漏れに関する生活習慣の提案は、「骨盤底筋を鍛える体操を行う」であり、商品の提案は、「外出時に使用する尿取パッド」である。また、例えばCL5に対応する転倒経験に関する生活習慣の提案は、「下半身の筋肉の衰えを防止するための片足立ち体操を行う」であり、商品の提案は、「足の動きをサポートして歩行機能の維持に役立つサプリメント」である。
【0032】
【表2】
【0033】
メッセージ選択部44に選択されたメッセージは、出力部5に送られる。第一実施形態の出力部5は、液晶等のディスプレイ画面と、ディスプレイ画面に画像を表示するためのドライバとを含んでいる。
図4は、出力部5のディスプレイ画面に表示されるメッセージの表示例を示す図である。ディスプレイ画面には、活動情報を示す実クラスタ(縦軸歩数、横軸時刻)と、この活動情報が属するクラスタに対応する生活習慣の提案及び商品の提案とが表示される。例えば、図4に示した表示例では、実クラスタと共に、実クラスタのピークが9時から12時と15時から18時の間にあるため、「午前・午後ややメリハリタイプ」のテキストデータが表示される。そして、被験者の疾病の状態として「このタイプの生活をしている人の3割が腰に痛みを持っています。」のメッセージが表示されている。また、生活習慣の提案として「午前と午後にメリハリのある生活ができていますね。6~9時、9~12時、18~21時に歩いて、よりメリハリのある生活をしてみましょう。体操で腹筋や背筋をきたえてみましょう。仰向けになり、ひざを伸ばしたり曲げたりすることで腹筋が鍛えられます。」のテキストデータが表示される。さらには、商品の提案として、「温熱用品等を使って腰を温めてみましょう。また、入浴することで全身を温めることができます。」のテキストデータが表示される。
【0034】
なお、第一実施形態は、上記したように、出力部5がディスプレイ画面を含み、テキストデータや画像を用いてメッセージを表示する構成に限定されるものではない。出力部5は、例えば音声でメッセージを出力するスピーカ及びそのドライバであってもよいし、メール等でメッセージを被験者の情報端末装置に送信する、あるいは紙媒体に印字されて出力されるように印刷機に送信する送信部であってもよい。
【0035】
<疾病予防支援システム>
第一実施形態は、以上説明したように、活動情報取得部21である加速度センサと一体化した疾病予防支援装置2を被験者に取り付ける構成に限定されるものではなく、活動情報取得装置とサーバ装置とを含む疾病予防支援システムとして構成するものであってもよい。図5は、疾病予防支援システム1を説明するための機能ブロック図である。
【0036】
図5に示すように、疾病予防支援システム1は、被験者が行った活動に関する活動情報を被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得装置3と、活動情報取得装置3によって取得された活動情報に基づいて、疾病の予防を支援する疾病予防情報を作成する疾病予防支援サーバ装置であるサーバ装置9と、を含んでいる。サーバ装置9は、演算部14を備え、演算部14は、情報抽出部41、実クラスタ作成部42及びクラスタ分類部43(分類部)を備え、さらにサーバ装置9は、実クラスタ作成部42及びクラスタ分類部43において分類されたクラスタに対応する疾病予防支援情報を、通信回線であるネットワークNを通じて活動情報取得装置3に送信する情報送信部55を備えている。
【0037】
このような第一実施形態の疾病予防支援システム1は、図1に示した疾病予防支援装置2の構成のうちの一部をサーバ装置9に持たせるため、被験者に取り付けられる活動情報取得装置3を小型、簡易化することに有利である。さらに、疾病予防支援システム1は、被験者が負担する活動情報取得装置3を小型、簡易化できるので、被験者のコストに係る負担を軽減することができ、疾病予防支援のサービスを受け易くすることができる。この点は、サービスの普及化、ひいては疾病予防支援の普及化に効果的である。
【0038】
また、疾病予防支援システム1では、出力部5がディスプレイ画面ばかりでなく、メッセージを、ネットワークNを介して予め定められた装置に送信することができる。このような場合、出力部5は、被験者の通信端末にメッセージをメールやチャットデータとして送信するばかりでなく、被験者の家族や医療機関等の通信端末装置にメッセージを送信することができる。このような構成は、特に被験者が高齢である場合、被験者の疾病の状態を正確に他者に伝えることに有効である。
【0039】
[疾病予防支援方法]
図6図7は、第一実施形態の疾病予防支援方法を説明するためのフローチャートである。図6に示したフローチャートは、図1等に示したクラスタ記憶部6及びメッセージ記憶部7に記憶されるデータを作成する処理を説明するためのものである。図7は、図6に示した処理によって作成されたデータを使って疾病予防支援装置2が行う処理を説明するためのフローチャートである。
【0040】
図6に示したフローチャートは、被験者が行った活動に関する活動情報を被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得工程(ステップS801)と、活動情報取得工程(ステップS801)によって取得された複数の活動情報から、活動の量に関する活動量情報と、活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出工程(ステップS802)と、複数の活動量情報及び時間帯情報の類似性に基づいて、複数の活動情報を複数の群に分類する分類工程(ステップS803)と、分類工程において分類された複数の群と、群と関連する疾病予防支援情報とを対応つける対応付け工程(ステップS804)と、を含んでいる。
【0041】
上記記載において、「類似性に基づく」とは、前記したように、複数の活動情報を表す数値等のデータ同士、またはデータと基準となるデータとの類似、非類似及びその程度により一つの群を構成するデータが決まることをいう。ここでは、複数設定された中心から各活動量情報(歩数)との距離(非類似性)により各クラスタに含まれるデータが決定する。
つまり、第一実施形態では、クラスタ記憶部6及びメッセージ記憶部7に記憶されるデータを作成するにあたり、複数の被験者から加速度に基づく活動情報を取得する(ステップS801)。ステップS801においては、後のクラスタリングの精度を高めるため、活動情報の取得対象となる対象者の数が大きいほど好ましい。ステップS802においては、取得された活動情報から活動量情報及び時間帯情報が抽出される。
【0042】
ステップS803においては、抽出された複数の活動量情報及び時間帯情報をクラスタリングして複数のクラスタに分類する。分類された複数のクラスタは、例えば、図2に示すクラスタのような曲線パターンによって表される。図1に示したクラスタ記憶部6には、分類された複数のクラスタを示す曲線パターンが画像、または演算式で記憶される。
ステップS804においては、実クラスタが示す活動情報の活動量と、活動量のピークに当たる時間帯等を考慮して被験者の生活リズムや疾病の状態を推定する。そして、推定される生活リズムや疾病の状態に応じた生活習慣の提案及び商品の提案を含むメッセージを、各クラスタに対応付ける。クラスタとメッセージとを対応付けたデータは、データベース(D・B)を構築する。このデータ・ベースの少なくとも一部が、図1に示すメッセージ記憶部7に記憶される。
【0043】
また、上記ステップS803においては、複数の活動情報を2以上、10以下の数のクラスタに分類する。このようにクラスタの数は、被験者の生活リズムのパターン分類の精度を従来よりも高め、かつ、各クラスタの相違に有意差を確保するのに望ましい範囲である。
以上説明した図6のフローチャートの処理は、一連の処理として行われるものであってもよいし、複数の処理を別々に行って統合するものであってもよい。また、処理は、自動的に行われるものであってもよいし、少なくとも一部が手動によって行われるものであってもよい。
【0044】
図7に示したフローチャートは、活動情報を被験者に加わった加速度に基づいて取得する活動情報取得工程(ステップS901)と、取得された活動情報から、活動の量に関する活動量情報と、活動が行われた時間帯に関する時間帯情報とを抽出する情報抽出工程(ステップS903)と、活動情報を予め設定されている複数のクラスタのいずれかに分類する分類工程(ステップS904、905)と、分類されたクラスタに対応する疾病予防支援情報を出力する情報出力工程(ステップS906、907)と、を含んでいる。さらに、図7に示したフローチャートは、ステップS901において取得された活動情報が7日間蓄積されたか否かを判定するステップS902を含み、7日分の活動情報が蓄積された後に活動情報の抽出が行われる。このような処理によれば、被験者の活動情報を複数日に亘って取得することにより、活動情報を示す実クラスタの精度を高めることができる。
【0045】
すなわち、第一実施形態では、例えば、図1に示した疾病予防支援装置2において、加速度センサを含む活動情報取得部21が、被験者に加わった加速度を活動情報として順次取得する(ステップS901)。取得された活動情報は、活動情報蓄積部22に時系列に蓄積されて、7日分蓄積された後(ステップ902:YES)、情報抽出部41によって活動量情報及び時間帯情報として抽出される(ステップ903)。また、ステップS902において、未だ7日分の活動情報が蓄積されていない場合(ステップ902:NO)、活動情報の取得が継続される。
7日分の活動情報が蓄積されると、実クラスタ作成部42は、抽出された活動量情報と時間帯情報との関係から一つの実クラスタを作成する(ステップ904)。実クラスタ作成部42における実クラスタの作成は、7日分の活動情報をクラスタリングすることによって実現することができる。
【0046】
続いて、図1に示すクラスタ分類部43は、作成された実クラスタをクラスタ記憶部6に記憶されている例えばCL1からCL6と比較する。そして、クラスタ分類部43は、CL1からCL6のうち、作成された実クラスタと最も類似度が大きいクラスタに実クラスタを分類する(ステップ905)。クラスタの分類の結果(クラスタの種別)は、図1に示すメッセージ選択部44に送られる。メッセージ選択部44は、クラスタ分類部43から受け取ったクラスタの種別に対応するメッセージをメッセージ記憶部7から読み出すことによって取得する(ステップ906)。そして、読み出されたメッセージを出力部5に出力する。出力部5は、出力されたメッセージを画像データ及びテキストデータとしてディスプレイに表示する(ステップ906)。あるいはテキストデータを音声データに変換し、テキストの内容を発話して被験者に出力する(ステップ906)。
【0047】
ただし、第一実施形態は、活動量情報を、CL1からCL6のように歩数で表すことに限定されるものではない。つまり、ステップS903の工程において抽出される活動量情報は、被験者が行った活動の回数及び強度の少なくとも一方に関する情報を含むものであればどのような情報であってもよい。活動の回数は、活動情報取得部21に加速度が検出された回数に基づいて決定される。第一実施形態では、所定の範囲の加速度が周期的に検出された場合に被験者が歩行を行っているものとし、加速度の検出回数を歩数に変換している。活動の強度は、活動情報取得部21に検出された加速度の値に基づいて決定される。
【0048】
第一実施形態は、一人の被験者について所定の期間(7日間)活動情報を取得した場合、抽出される活動情報が所定の期間に取得された活動量のばらつきを含むものであってもよい。具体的には、活動情報のばらつきを使って図6中のクラスタ分類を行い、結果をクラスタ記憶部6に記憶しておく。そして、図7に示した実クラスタの作成においては活動情報のばらつきを使って実クラスタを作成し、実クラスタをクラスタ記憶部6のクラスタと比較していずれかのクラスタに分類する。このような活動情報のばらつきとしては、前述したように、例えば標準偏差sdを用いることができる。また、活動情報のばらつきの他、第一実施形態は、活動情報の平均値を使って活動情報をクラスタに分類することもできる。
さらに、第一実施形態では、図6に示したステップS803において、活動情報を歩数、活動強度及び活動強度のばらつきといった複数の変数のそれぞれを使ってクラスタリングし、クラスタリングの結果得られた変数の異なるクラスタをそれぞれクラスタ記憶部6に保存しておくものであってもよい。そして、図7に示したステップS904においては変数を変えて複数回クラスタリングを行って実クラスタを作成し、保存されているクラスタから実クラスタとの類似度が最も高いクラスタが得られる変数を選択してクラスタ分類するものであってもよい。
【0049】
[第二実施形態]
第二実施形態の疾病予防支援装置は、以上説明した活動情報のクラスタリングを、一人の被験者について時間をおいて複数回行うことができる。そして、複数回行ったクラスタリングの結果得られたクラスタが等しいか、または変化したかによって被験者の状態の変化を検出することができる。
図8は、クラスタの経時変化を検出可能な第二実施形態の疾病予防支援装置20の機能ブロック図である。疾病予防支援装置20は、疾病予防支援装置2に含まれる機能の他、複数回行ったクラスタリングの結果得られたクラスタを時系列に記憶するクラスタ時系列記憶部10を備える点で疾病予防支援装置2と相違する。
図8に示した疾病予防支援装置20では、活動情報取得部21が一の被験者の活動情報を複数回取得する。実クラスタ作成部42及びクラスタ分類部43(分類部)は、複数回取得された活動情報をそれぞれ分類して複数のクラスタを作成する。クラスタ時系列記憶部10は、分類の結果である複数の群を一の被験者について時系列に記憶する。出力部5(情報出力部)は、クラスタ時系列記憶部10に時系列に記憶されている複数のクラスタの同異に基づくメッセージ(疾病予防支援情報)を出力する。
【0050】
上記した疾病予防支援装置20では、例えば、同じ被験者の活動情報のクラスタを一年に一度取得し、結果をクラスタ時系列記憶部10に時系列に記憶しておくことができる。メッセージ選択部44は、クラスタ分類部43を介してクラスタ時系列記憶部10に記憶されている複数のクラスタを読み出す。そして、直前に記憶されたクラスタと今回記憶されたクラスタとの異同を判断する。
また、第二実施形態では、メッセージ記憶部7に、直前に記憶されたクラスタと今回記憶されたクラスタとの異同に対応したメッセージが記憶されている。このようなメッセージは、例えば、活動量情報が全体的に低下したためにクラスタが変化したことに対応し、筋力の低下について注意喚起を行うものであってもよい。また、メッセージは、例えば、時間帯情報が変化したことによってクラスタが変化したことに対応し、不眠や生活リズムの乱れについて注意喚起を行うものであってもよい。
メッセージ選択部44は、直前に記憶されたクラスタと今回記憶されたクラスタとの異同及びクラスタの種別に対応するメッセージを選択し、出力部5に出力する。
以上説明した第二実施形態は、被験者の活動情報が分類されるクラスタの異同により、被験者の疾病状態に変化があったことを推測し、早期に注意を喚起することができる。
【0051】
以上説明したように、本発明の第一実施形態、第二実施形態は、いずれも活動量情報を歩行の歩数で示す例を説明したが、本実施形態の活動量情報は、歩数で表されるものに限定されるものではなく、例えば、活動強度や日常の歩行速度で表される。活動量情報を歩数以外の因子で表す例を図9(a)~(d)に示す。図9(a)~(d)は、活動量情報を活動強度で表した活動情報の例を示すグラフであり、それぞれCL1,CL2,CL4およびCL5の被験者の活動強度を示す。図9(a)~(d)に示すように、本実施形態は、活動量情報として使用される物理量によらず、活動情報を複数の群に分類することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・疾病予防支援システム
2、20・・・疾病予防支援装置
3・・・活動情報取得装置
4、14・・・演算部
5・・・出力部
6・・・クラスタ記憶部
7・・・メッセージ記憶部
9・・・サーバ装置
10・・・クラスタ時系列記憶部
21・・・活動情報取得部
22・・・活動情報蓄積部
41・・・情報抽出部
42・・・実クラスタ作成部
43・・・クラスタ分類部
44・・・メッセージ選択部
55・・・情報送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9