(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】電磁ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 17/04 20060101AFI20230123BHJP
【FI】
F04B17/04
(21)【出願番号】P 2018161173
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000241267
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトフルードパワーシステム
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宣尚
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-065307(JP,U)
【文献】実開昭56-117518(JP,U)
【文献】実開昭60-153508(JP,U)
【文献】特開2003-063600(JP,A)
【文献】特開2007-234801(JP,A)
【文献】特開2008-260522(JP,A)
【文献】特開2015-016069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 17/00-19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプにおいて、ピストンを駆動する駆動部と、駆動部で作動するポンプ部とを備え、駆動部は、コイルを巻回した略円筒形状のボビンと、略円筒形状の固定鉄心と、コイルへの通電により固定鉄心に吸引される略円柱形状の可動鉄心と、ピストンを摺動する貫通孔を貫通形成した軸受部材と、ボビンの外周面側および軸方向両端面側を覆って磁気回路を形成する磁性部材と、可動鉄心を固定鉄心への吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材とを有し、固定鉄心と可動鉄心は、ボビンの径方向内方に配置し、可動鉄心は、自身の外径を固定鉄心の内径よりも小さく設定して固定鉄心への吸引で自身の外周面を固定鉄心の内周面と対向して位置し、軸受部材は、固定鉄心の径方向内方に配置すると共に、固定鉄心の内周面と略直交して可動鉄心と対向する一端面を形成し、磁性部材は、ボビンの固定鉄心側の一端面と対向する対向面を有し、軸受部材の一端面は、磁性部材の対向面よりも可動鉄心から軸方向へ離間して配置し、
軸受部材の一端面には、凸部を突出形成し、凸部は外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成し、磁性部材は、略四角形状の平板部と、平板部の対向する両側端に略直交して立設した2つの側板部で形成した略コ字形状のコ字状部材を2個用いて構成し、一方のコ字状部材の平板部と他方のコ字状部材の平板部を対向して配置し、一方のコ字状部材の2つの側板部の間に他方のコ字状部材の2つの側板部をそれぞれ配置して略直方体形状の筐体とし、2個のコ字状部材は、2つの側板部の間で平板部にそれぞれ凹部を窪み形成すると共に、2つの側板部の先端部にそれぞれ凸部を突出形成し、一方のコ字状部材の凹部に他方のコ字状部材の凸部を嵌合すると共に、他方のコ字状部材の凹部に一方のコ字状部材の凸部を嵌合したことを特徴とする電磁ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁ポンプは、略円盤形状の固定鉄心と、コイルへの通電で固定鉄心に吸引される可動鉄心を有している。可動鉄心は、固定鉄心への吸引で自身の外周面を固定鉄心の貫通孔の内周面に対向する。そして、コイルへの通電で可動鉄心が軸方向下方へ移動し、可動鉄心の外周面と固定鉄心の内周面との対向面積が増加する。この対向面積の増加に伴い、可動鉄心と固定鉄心との間を流れる磁束の中で、可動鉄心の外周面と略直交する方向に流れる磁束が増加し、吸引力が漸次低下する。そして、ポンプ本体は、径方向内方に軸受部材(第1軸受部材)を配置した凸部を固定鉄心の貫通孔に嵌合し、凸部は可動鉄心の一端面と対向して配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、かかる従来の電磁ポンプでは、ポンプ本体の凸部の先端面と、固定鉄心のボビンとの対向面とが軸方向の略同一位置に配置されているため、ポンプ本体を磁性材で形成すると、ポンプ本体の凸部が磁気回路を形成する。そして、コイルへの通電で可動鉄心が固定鉄心に吸引され可動鉄心の一端面とポンプ本体の凸部の先端面とが接近すると、可動鉄心とポンプ本体の凸部との間に吸引力が生じる。このため、可動鉄心の吸引状態で、コイルを非通電にして復帰作動する際に、吸引力が残留して、可動鉄心の復帰作動の応答性を向上できないという問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、可動鉄心の復帰作動時に残留する吸引力を低減し、復帰作動の応答性を向上し得る電磁ポンプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は次の手段をとった。即ち、
ピストンを往復作動して流体を吸入吐出する電磁ポンプにおいて、ピストンを駆動する駆動部と、駆動部で作動するポンプ部とを備え、駆動部は、コイルを巻回した略円筒形状のボビンと、略円筒形状の固定鉄心と、コイルへの通電により固定鉄心に吸引される略円柱形状の可動鉄心と、ピストンを摺動する貫通孔を貫通形成した軸受部材と、ボビンの外周面側および軸方向両端面側を覆って磁気回路を形成する磁性部材と、可動鉄心を固定鉄心への吸引方向と対向する方向へ付勢するばね部材とを有し、固定鉄心と可動鉄心は、ボビンの径方向内方に配置し、可動鉄心は、自身の外径を固定鉄心の内径よりも小さく設定して固定鉄心への吸引で自身の外周面を固定鉄心の内周面と対向して位置し、軸受部材は、固定鉄心の径方向内方に配置すると共に、固定鉄心の内周面と略直交して可動鉄心と対向する一端面を形成し、磁性部材は、ボビンの固定鉄心側の一端面と対向する対向面を有し、軸受部材の一端面は、磁性部材の対向面よりも可動鉄心から軸方向へ離間して配置し、軸受部材の一端面には、凸部を突出形成し、凸部は外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成し、磁性部材は、略四角形状の平板部と、平板部の対向する両側端に略直交して立設した2つの側板部で形成した略コ字形状のコ字状部材を2個用いて構成し、一方のコ字状部材の平板部と他方のコ字状部材の平板部を対向して配置し、一方のコ字状部材の2つの側板部の間に他方のコ字状部材の2つの側板部をそれぞれ配置して略直方体形状の筐体とし、2個のコ字状部材は、2つの側板部の間で平板部にそれぞれ凹部を窪み形成すると共に、2つの側板部の先端部にそれぞれ凸部を突出形成し、一方のコ字状部材の凹部に他方のコ字状部材の凸部を嵌合すると共に、他方のコ字状部材の凹部に一方のコ字状部材の凸部を嵌合した。
【発明の効果】
【0008】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明は、固定鉄心と可動鉄心は、ボビンの径方向内方に配置し、可動鉄心は、自身の外径を固定鉄心の内径よりも小さく設定して固定鉄心への吸引で自身の外周面を固定鉄心の内周面と対向して位置し、軸受部材は、固定鉄心の径方向内方に配置すると共に、固定鉄心の内周面と略直交して可動鉄心と対向する一端面を形成し、磁性部材は、ボビンの固定鉄心側の一端面と対向する対向面を有し、軸受部材の一端面は、磁性部材の対向面よりも可動鉄心から軸方向へ離間して配置した。このため、可動鉄心に対向して配置した軸受部材を耐久性を向上するために磁性材から形成しても、軸受部材の一端面は、磁性部材の対向面よりも可動鉄心から軸方向へ離間しているから、軸受部材は磁気回路を形成しない。そして、コイルへの通電で可動鉄心が固定鉄心に吸引された状態で、可動鉄心と軸受部材の一端面との間に吸引力は発生しないから、可動鉄心の復帰作動時の残留する吸引力を低減し、復帰作動の応答性を向上することができる。
【0009】
また、請求項1に記載の発明は、磁性部材は、略四角形状の平板部と、平板部の対向する両側端に略直交して立設した2つの側板部で形成した略コ字形状のコ字状部材を2個用いて構成し、一方のコ字状部材の平板部と他方のコ字状部材の平板部を対向して配置し、一方のコ字状部材の2つの側板部の間に他方のコ字状部材の2つの側板部をそれぞれ配置して略直方体形状の筐体とした。このため、磁性部材は、同一のコ字状部材を2個用いて構成し、部品の種類数を低減することができるから、コストの低減および組立性を向上することができる。また、軸受部材の凸部は、外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成した。このため、可動鉄心と軸受部材の凸部の先端稜部とが径方向に離間するから、可動鉄心から軸受部材の凸部に漏れる磁束を低減することができ、可動鉄心の通電時における吸引力の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態を示した電磁ポンプの概略図である。
【
図3】
図1の電磁ポンプの吸引特性を示した吸引力―移動距離の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
図1および
図2において、1は駆動部2とポンプ部3とから構成する電磁ポンプで、駆動部2でポンプ部3を作動して流体を吸入吐出する。
【0012】
まず、駆動部2の構成について詳細に説明する。
4は、コイル5を巻回する略円筒形状のボビンで、樹脂材から形成し、軸方向中心に挿通孔4Aを貫通形成している。6は、略円筒形状のカバー部材で、樹脂材から形成し、ボビン4に外嵌してコイル5の外周面5Aを閉塞している。
【0013】
7は、磁性部材としての略直方体形状の筐体で、内部にボビン4およびカバー部材6を収容し、磁性材からなる同一形状の2個のコ字状部材8、9を用いて構成している。一方のコ字状部材8は、ボビン4の軸方向下方の一端面4B側に配置し、略長方形状の板の短辺の両側端を垂直方向に屈曲して、略四角形状の平板部10と、平板部10の対向する両側端に2つの側板部11、12とを有する略コ字形状に形成している。一方のコ字状部材8の平板部10は、中心にボビン4の挿通孔4Aと略同径の貫通孔10Aを貫通形成すると共に、2つの側板部11、12の間にそれぞれ1個の凹部10B、10Cを窪み形成している。一方のコ字状部材8の2つの側板部11、12は、先端部にそれぞれ1個の凸部11A、12Aを突出形成している。
【0014】
他方のコ字状部材9は、ボビン4の軸方向上方の他端面4C側に配置し、一方のコ字状部材8と同様に、略長方形状の板の短辺の両側端を垂直方向に屈曲して、略四角形状の平板部13と、平板部13の対向する両側端に2つの側板部14、15とを有する略コ字形状に形成している。他方のコ字状部材9の平板部13は、中心にボビン4の挿通孔4Aと略同径の貫通孔13Aを貫通形成すると共に、2つの側板部14、15の間にそれぞれ1個の凹部13B、13Cを窪み形成している。他方のコ字状部材9の2つの側板部14、15は、先端部にそれぞれ1個の凸部14A、15Aを突出形成している。
【0015】
筐体7は、一方のコ字状部材8の平板部10と他方のコ字状部材9の平板部13と対向して配置し、一方のコ字状部材8の2つの側板部11、12の間に他方のコ字状部材9の2つの側板部14、15をそれぞれ配置している。このとき、一方のコ字状部材8の平板部10の凹部10B、10Cに他方のコ字状部材9の2つの側板部14、15の凸部14A、15Aを嵌合すると共に、他方のコ字状部材9の平板部13の凹部13B、13Cに一方のコ字状部材8の2つの側板部11、12の凸部11A、12Aを嵌合している。そして、一方のコ字状部材8の平板部10をポンプ部3のポンプ本体16上に載置し、1個のボルト部材7Aで筐体7をポンプ本体16に固定している。このとき、両方のコ字状部材8、9の貫通孔10A、13Aとボビン4の挿通孔4Aは同一軸心上に配置されている。また、筐体7はボビン4の一端面4Bを一方のコ字状部材8の平板部10で、ボビン4の他端面4Cを他方のコ字状部材9の平板部13で、ボビン4の外周面4D側を両方のコ字状部材8、9の側板部11、12、14、15でそれぞれ覆う。
【0016】
17は、略円筒形状のヨークで、筐体7の貫通孔13Aおよびボビン4の挿通孔4Aを挿通し、軸方向へ小径孔17A、中径孔17B、大径孔17Cを連設している。ヨーク17の小径孔17Aは一側面に開口すると共に、ヨーク17の大径孔17Cは他側面に開口している。
【0017】
18は、略円柱形状の可動鉄心で、ヨーク17の大径孔17Cに軸方向へ摺動自在に嵌挿している。可動鉄心18は、軸方向へ小径孔18A、大径孔18Bを連設している。可動鉄心18の小径孔18Aは一側面に開口すると共に、可動鉄心18の大径孔18Bは他側面に開口している。19は、棒状のピストンで、一端を可動鉄心18の小径孔18Aに圧入固定し、可動鉄心18と一体的に軸方向へ摺動する。
【0018】
20は、耐久性を向上するために磁性材から形成した略円柱形状の軸受部材で、可動鉄心18と対向して配置し、ポンプ本体16の上面16Aに窪み形成した収容孔16Bに収容している。軸受部材20を形成する磁性材は、JIS G4051:2016(機械構造用炭素鋼鋼材)に示す炭素鋼(S45C)や、JIS G4053:2016(機械構造用合金鋼鋼材)に示すクロムモリブデン鋼(SCM415、SCM435)等から成る。軸受部材20は、軸方向上方の一端面20Aに凸部20Bを突出形成すると共に、軸心にピストン19を摺動する貫通孔20Cを貫通形成している。軸受部材20の一端面20Aは、ボビン4の一端面4Bと対向する他方のコ字状部材9の平板部13の対向面13Bよりも、可動鉄心18から軸方向へ離間して配置している。軸受部材20の凸部20Bは、外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成している。軸受部材20は、駆動部2内部のドレンを外部へ流出する連通孔20Dを貫通孔20Cの径方向外方へ、複数形成している。また、軸受部材20は、各連通孔20Dを接続する環状孔20Eを軸受部材20の一端面20Aと対向する他端面20Fに窪み形成している。21Aは、軸受部材20の他端面20Fに配置したOリングで、環状孔20Eの径方向内方に配置し、他端面20Fとポンプ本体16との間を密封している。21Bは、軸受部材20の他端面20Fに配置したOリングで、環状孔20Eの径方向外方に配置し、他端面20Fとポンプ本体16との間を密封している。
【0019】
22は、略円筒形状の固定鉄心で、可動鉄心18を軸方向下方へ吸引し、軸心に貫通孔22Aを貫通形成している。固定鉄心22は、貫通孔22Aの内径を可動鉄心18の外径よりも大きく設定し、可動鉄心18を吸引した状態で、貫通孔22Aの内周面23を可動鉄心18の外周面18Cと対向する。また、固定鉄心22は、軸方向の一端を筐体7の貫通孔10Aおよびボビン4の挿通孔4Aに挿通すると共に、軸方向の他端をポンプ本体16に螺合して固定している。固定鉄心22は、貫通孔22Aの軸方向の他端側から軸受部材20を挿通し、貫通孔22Aの内周面23に軸受部材20を螺合して固定している。このとき、固定鉄心22の内周面23と、軸受部材20の一端面20Aは略直交している。24は、軸受部材20に外嵌したOリングで、軸受部材20の外周面と固定鉄心22の貫通孔22Aの内周面23との間を密封している。そして、可動鉄心18を固定鉄心22に吸引する磁気回路を、筐体7、固定鉄心22、可動鉄心18およびヨーク17で形成している。
【0020】
25は、非磁性材からなる略円筒形状の連結部材で、ヨーク17と固定鉄心22とを連結する。26は、ヨーク17の中径孔17Bに収容した補助ばね部材で、ヨーク17の中径孔17Bに収容したばね受け部材27と可動鉄心18の一端面との間に介装し、可動鉄心18を軸方向下方に付勢する。28は、補助ばね部材26のばね力を調整自在にする調整ねじで、ヨーク17の小径孔17Aに螺合して先端をばね受け部材27に当接し、外部からの回動操作により軸方向へ進退自在にして補助ばね部材26のばね力を調整自在にする。28Aは調整ねじ28のロックナットである。29は、可動鉄心18の大径孔18Bに収容したばね部材で、可動鉄心18の小径孔18Aと大径孔18Bとの連接段部と、軸受部材20の一端面20Aとの間に介装し、可動鉄心18を固定鉄心22への吸引方向と対向する方向である軸方向上方に付勢する。そして、可動鉄心18は、補助ばね部材26の弾性力とばね部材29の弾性力とが対向作用し、補助ばね部材26とばね部材29の弾性力の平衡位置で停止する。
【0021】
図3において、線Bは駆動部2の吸引力特性を示し、可動鉄心18の平衡位置から吸引方向への移動距離Sが増加すると、吸引力Fが漸次低下する。すなわち、コイル5への通電で可動鉄心18が軸方向下方へ移動し、可動鉄心18の外周面18Cと固定鉄心22の内周面23との対向面積が増加するにつれて、可動鉄心18と固定鉄心22との間を流れる磁束の中で、可動鉄心18の外周面18Cと略直交する方向に流れる磁束が増加し、吸引力が漸次低下する。
【0022】
次に、ポンプ部3について詳細に説明する。
図2および
図4において、30は、ピストン19の軸方向下方に区画形成したポンプ室で、ポンプ本体16の収容孔16Bに連設している。31は、図示しない低圧側からポンプ室30に流体を吸入する吸入流路で、ポンプ本体16の第1側面16Cに開口し、
図4上下方向に穿設している。32は、吸入チェック弁33を収容する第1収装孔で、一端を吸入流路31に接続し、他端をポンプ本体16の第1側面16Cと対向する第2側面16Dに開口している。第1収装孔32は、内周面にポンプ室30を略直交して接続している。
【0023】
吸入チェック弁33は、吸入弁体34、吸入栓部材35、吸入ばね部材36、吸入弁座37から構成し、吸入弁体34を吸入ばね部材36の弾性力で付勢して吸入弁座37に着座している。吸入弁体34は、一端に凸部34Aを形成した略キノコ形状で、吸入流路31とポンプ室30を接続する第1収装孔32の吸入接続部32Aに配置している。吸入栓部材35は、吸入弁体34と対向する一端面に吸入弁体34の凸部34Aを摺動する凹部35Aを窪み形成すると共に、凹部35A内部の流体を第1収装孔32へ排出する2個の連通孔35B、35Cを径方向に貫通形成している。また、吸入栓部材35は第1収装孔32に挿通した状態で、固定部材38を第1収装孔32に螺合して吸入栓部材35を固定している。35Dは、吸入栓部材35に外嵌したOリングで、吸入栓部材35と第1収装孔32との間を密封している。吸入ばね部材36は、吸入弁体34と吸入栓部材35との間に介装している。吸入弁座37は、吸入接続部32Aの吸入流路31との接続箇所の開口端に形成している。吸入チェック弁33は、吸入弁体34が吸入弁座37から離間して吸入流路31からポンプ室30への流体の流れを許容し、吸入弁体34が吸入弁座37に着座してポンプ室30から吸入流路31への流体の流れを阻止する。
【0024】
39は、吐出チェック弁40を収容する第2収装孔で、一端をポンプ室30に接続し、他端をポンプ本体16の下面16Eに開口している。41は、ポンプ室30から図示しない負荷側に流体を吐出する吐出流路で、
図2左右方向に穿設し、一端を第2収装孔39の内周面に接続すると共に、他端をポンプ本体16の第1側面16Cおよび第2側面16Dと直交する第3側面16Fに開口している。
【0025】
吐出チェック弁40は、吐出弁体42、吐出栓部材43、吐出ばね部材44、吐出弁座45から構成し、吐出弁体42を吐出ばね部材44の弾性力で付勢して吐出弁座45に着座している。吐出弁体42は、一端に凸部42Aを形成した略キノコ形状で、ポンプ室30と吐出流路41とを接続する第2収装孔39の吐出接続部39Aに配置している。吐出栓部材43は、吐出弁体42と対向する一端面に吐出弁体42の凸部42Aを摺動する凹部43Aを窪み形成すると共に、凹部43A内部の流体を第2収装孔39へ排出する2個の連通孔43B、43Cを径方向に貫通形成している。また、吸入栓部材43は第2収装孔39に挿通した状態で、ポンプ本体16の下面16Eに弾性材からなる蓋部材46を接合し、第2収装孔39に吐出栓部材43を圧着固定している。43Dは、吐出栓部材43に外嵌したOリングで、吐出栓部材43と第2収装孔39との間を密封している。吐出ばね部材44は、吐出弁体42と吐出栓部材43との間に介装している。吐出弁座45は、吐出接続部39Aのポンプ室30との接続箇所の開口端に形成している。吐出チェック弁40は、吐出弁体42が吐出弁座45から離間してポンプ室30から吐出流路41への流体の流れを許容し、吐出弁体42が吐出弁座45に着座して吐出流路41からポンプ室30への流体の流れを阻止する。
【0026】
47は、駆動部2内部のドレンを外部に排出する連通孔で、ポンプ本体16の
図2上下方向(
図4奥行方向)に穿設し、一端を軸受部材20の環状孔20Eに接続し、他端をポンプ本体16の下面16Eに開口している。46Aは、蓋部材46に貫通形成した貫通孔で、ポンプ本体16の連通孔47に接続している。そして、駆動部2内部のドレンは、軸受部材20の連通孔20Dおよび環状孔20E、ポンプ本体16の連通孔47、蓋部材46の貫通孔46Aを通って外部へと排出される。
【0027】
次に、かかる構成の作動を説明する。
図2および
図4は、コイル5の非通電状態を示し、可動鉄心18は補助ばね部材26とばね部材29の弾性力の平衡位置で停止している。吸入チェック弁33および吐出チェック弁40は閉じている。
【0028】
この状態で、コイル5へ通電すると、可動鉄心18はばね部材29の弾性力に抗して軸方向下方へ移動して固定鉄心22に吸引される。これにより、ピストン19がポンプ室30の流体を加圧し、吐出チェック弁40が開き、ポンプ室30から吐出流路41を介して流体を図示しない負荷側へ吐出する。このとき、吸入チェック弁33は、閉じ状態を維持している。
【0029】
この状態で、コイル5を非通電にすると、可動鉄心18はばね部材26の弾性力で可動鉄心18の残留吸引力に抗して軸方向上方へ復帰作動して、固定鉄心22から離間する。これにより、ポンプ室30はピストン19が上方へ摺動し負圧になる。そして、吸入チェック弁33は開き、吐出チェック弁40は閉じて、図示しない低圧側から吸入流路31を介して流体をポンプ室30に吸入する。そして、再びコイル5を通電状態にし、可動鉄心18はばね部材29の弾性力に抗して軸方向下方へ移動して固定鉄心22に吸引され、以後同様に通電、非通電を高速で繰り返し、吸入吐出を繰り返す。
【0030】
かかる作動において、固定鉄心22と可動鉄心18は、ボビン4の径方向内方に配置し、可動鉄心18は、自身の外径を固定鉄心22の内径よりも小さく設定して固定鉄心22への吸引で自身の外周面18Cを固定鉄心22の内周面23と対向して位置し、軸受部材20は、固定鉄心22の径方向内方に配置すると共に、固定鉄心22の内周面23と略直交して可動鉄心18と対向する一端面20Aを形成し、筐体7は、ボビン4の固定鉄心22側の一端面4Bと対向する対向面13Bを有し、軸受部材20の一端面20Aは、筐体7の対向面13Bよりも可動鉄心18から軸方向へ離間して配置した。このため、可動鉄心18に対向して配置した軸受部材20を強度向上のために磁性材から形成しても、軸受部材20の一端面20Aは、筐体7の対向面13Bよりも可動鉄心18から軸方向へ離間しているから、軸受部材20は磁気回路を形成しない。そして、コイル5への通電で可動鉄心22が固定鉄心18に吸引された状態で、可動鉄心22と軸受部材20の一端面20Aとの間に吸引力は発生しないから、可動鉄心18の復帰作動時の残留する吸引力を低減し、復帰作動の応答性を向上することができる。
【0031】
また、磁性部材は、略四角形状の平板部10、13と、平板部10、13の対向する両側端に略直交して立設した2つの側板部11、12、14、15で形成した略コ字形状のコ字状部材8、9を2個用いて構成し、一方のコ字状部材8の平板部10と他方のコ字状部材9の平板部13を対向して配置し、一方のコ字状部材8の2つの側板部11、12の間に他方のコ字状部材9の2つの側板部14、15をそれぞれ配置して略直方体形状の筐体7とした。このため、筐体7は、同一のコ字状部材8、9を2個用いて構成し、部品の種類数を低減することができるから、コストの低減および組立性を向上することができる。
【0032】
また、可動鉄心18を軸方向下方に付勢する補助ばね部材26を、ヨーク17の中径孔17Bに収容したばね受け部材27と可動鉄心18の一端面との間に介装した。このため、補助ばね部材26が緩衝材となるから、可動鉄心18の復帰作動時に、可動鉄心18の一端面がヨーク17の中径孔17Bと大径孔17Cとの連接段部へ衝突することを防止し、騒音を低減できる。また、軸受部材20の凸部20Bは、外周面を先端面に向けて漸次縮径するテーパー状に形成した。このため、可動鉄心18と軸受部材20の凸部20Bの先端稜部とが径方向に離間するから、可動鉄心18から軸受部材20の凸部20Bに漏れる磁束を低減することができ、可動鉄心18の通電時における吸引力の低下を防止できる。
【0033】
なお、前述の一実施形態では、固定鉄心22と軸受部材20は別体で形成したが、一体形成してもよい
。また、コ字状部材8、9は略長方形状の板の短辺の両側端を垂直方向に屈曲して形成したが、別体で形成した平板部10、13および側板部11、12、14、15を接合して形成してもよい。また、コ字状部材8、9の側板部11、12、14、15には軸方向(
図2上下方向)へ延在するスリットを幅方向(
図2奥行方向)に複数形成してもよい。この構成で、コイル5を非通電にして可動鉄心18を復帰作動する際に、コ字状部材8、9の側板部11、12、14、15に生じる渦電流を低減でき、可動鉄心18の復帰作動の応答性をより一層向上できる。
【符号の説明】
【0034】
1: 電磁ポンプ
2:駆動部
3:ポンプ部
4:ボビン
4B:一端面
4C:他端面
4D:外周面
5:コイル
7:筐体(磁性部材)
8、9:コ字状部材
10、13:平板部
13B:対向面
11、12、14、15:側板部
18:可動鉄心
18C:外周面
19:ピストン
20:軸受部材
20A:一端面
20C:貫通孔
22:固定鉄心
23:内周面
29:ばね部材