(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】糖液の精製装置および精製方法
(51)【国際特許分類】
C13B 20/14 20110101AFI20230123BHJP
B01J 49/09 20170101ALI20230123BHJP
【FI】
C13B20/14
B01J49/09
(21)【出願番号】P 2018192512
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩浦 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】八尾 英也
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-295500(JP,A)
【文献】特開2004-147541(JP,A)
【文献】特開昭53-123383(JP,A)
【文献】実開昭61-092300(JP,U)
【文献】特開平08-173705(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111714(WO,A1)
【文献】第4章 イオン交換樹脂の応用,イオン交換樹脂その技術と応用(実用編) ,オルガノ株式会社(機能材事業グループ),p207-228
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C13B 20/14
B01J 49/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖液の精製を行うための糖液精製装置であって、
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して形成された混床層の上方に接して、カチオン交換樹脂の単床層が充填されている樹脂塔
と、
糖液の精製後に、前記樹脂塔内で、前記単床層のカチオン交換樹脂および前記混床層のカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層と、前記混床層のアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層とを分離して形成する分離手段と、
前記カチオン交換樹脂層のカチオン交換樹脂および前記アニオン交換樹脂層のアニオン交換樹脂を再生する再生手段と、
前記再生された再生カチオン交換樹脂を含む再生カチオン交換樹脂層と前記再生された再生アニオン交換樹脂を含む再生アニオン交換樹脂層とが分離した状態から、前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、前記再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する再構成手段と、を備え
、
前記再構成手段は、
前記再生カチオン交換樹脂を貯留するための樹脂貯留槽と、
前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送する移送手段と、
を備え、
前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送し、前記樹脂塔に残留している前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とにより前記再生混床層を構成し、前記樹脂貯留槽から前記再生混床層の上方に接するように前記再生カチオン交換樹脂を充填して前記再生単床層を構成し、
前記移送手段は、
前記樹脂塔の下部に設けられた樹脂移送口を備え、
前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、比重の軽い前記再生アニオン交換樹脂を前記樹脂移送口より上方に浮遊させ、比重の重い前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、または、
前記移送手段は、
前記樹脂塔の下部であって、前記再生カチオン交換樹脂層内に設けられた樹脂移送口を備え、
前記樹脂塔の下部から水を抜出した後、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する
、
ことを特徴とする糖液精製装置。
【請求項2】
糖液の精製を行うための糖液精製方法であって、
カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して形成された混床層の上方に接して、カチオン交換樹脂の単床層が充填されている樹脂塔を用い
、
糖液の精製後に、前記樹脂塔内で、前記単床層のカチオン交換樹脂および前記混床層のカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層と、前記混床層のアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層とを分離して形成する分離工程と、
前記カチオン交換樹脂層のカチオン交換樹脂および前記アニオン交換樹脂層のアニオン交換樹脂を再生する再生工程と、
前記再生された再生カチオン交換樹脂を含む再生カチオン交換樹脂層と前記再生された再生アニオン交換樹脂を含む再生アニオン交換樹脂層とが分離した状態から、前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、前記再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する再構成工程と、
を含み、
前記再構成工程は、
前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から樹脂貯留槽へ移送する移送工程を含み、
前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送し、前記樹脂塔に残留している前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とにより前記再生混床層を構成し、前記樹脂貯留槽から前記再生混床層の上方に接するように前記再生カチオン交換樹脂を充填して前記再生単床層を構成し、
前記移送工程は、
前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、比重の軽い前記再生アニオン交換樹脂を前記樹脂塔の下部に設けられた樹脂移送口より上方に浮遊させ、比重の重い前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、または、
前記移送工程は、
前記樹脂塔の下部から水を抜出した後、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂塔の下部であって、前記再生カチオン交換樹脂層内に設けられた樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送することを特徴とする糖液精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖液の精製装置および精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖液の製造工程における脱塩、脱色等の精製工程では、カチオン交換樹脂の単床からなる樹脂塔(以下、「K塔」と呼ぶ場合がある)、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合した混床からなる樹脂塔(以下、「MB塔」と呼ぶ場合がある)の順に原料糖液を供給することで原材料や製造工程由来のイオン性の物質を取り除く方法が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この方法では、樹脂塔としてK塔とMB塔の2塔が必要であり、設備費の低減が求められている。
【0004】
また、糖液の精製工程においてイオン交換樹脂を使用する場合、イオン交換反応を効率よく生じるためにイオン交換樹脂を水で湿潤させた状態で使用し、なおかつイオン交換樹脂を樹脂塔に充填した際は、充填したイオン交換樹脂の層よりも所定の高さで水位が高くなるように保つことが一般的に行われている。
【0005】
しかし、この場合、樹脂塔それぞれについて水位を高く保つ必要があり、設備立上げのときに樹脂塔の水を糖液に置き換える工程において、製品とするのが困難な薄い濃度の糖液(以下、「甘水」と呼ぶ場合がある)が多量に発生し、製品の歩留りが悪化する上に、設備立上げが遅くなり、排水量が多くなるため環境負荷が高いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、発生する甘水の量を低減し、設備費を低減することができる糖液の精製装置および精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、糖液の精製を行うための糖液精製装置であって、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して形成された混床層の上方に接して、カチオン交換樹脂の単床層が充填されている樹脂塔と;糖液の精製後に、前記樹脂塔内で、前記単床層のカチオン交換樹脂および前記混床層のカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層と、前記混床層のアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層とを分離して形成する分離手段と;前記カチオン交換樹脂層のカチオン交換樹脂および前記アニオン交換樹脂層のアニオン交換樹脂を再生する再生手段と;前記再生された再生カチオン交換樹脂を含む再生カチオン交換樹脂層と前記再生された再生アニオン交換樹脂を含む再生アニオン交換樹脂層とが分離した状態から、前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、前記再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する再構成手段と;を備え、前記再構成手段は、前記再生カチオン交換樹脂を貯留するための樹脂貯留槽と;前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送する移送手段と;を備え、前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送し、前記樹脂塔に残留している前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とにより前記再生混床層を構成し、前記樹脂貯留槽から前記再生混床層の上方に接するように前記再生カチオン交換樹脂を充填して前記再生単床層を構成し;前記移送手段は、前記樹脂塔の下部に設けられた樹脂移送口を備え、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、比重の軽い前記再生アニオン交換樹脂を前記樹脂移送口より上方に浮遊させ、比重の重い前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、または、前記移送手段は、前記樹脂塔の下部であって、前記再生カチオン交換樹脂層内に設けられた樹脂移送口を備え、前記樹脂塔の下部から水を抜出した後、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、糖液精製装置である。
【0013】
また、本発明は、糖液の精製を行うための糖液精製方法であって、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して形成された混床層の上方に接して、カチオン交換樹脂の単床層が充填されている樹脂塔を用い;糖液の精製後に、前記樹脂塔内で、前記単床層のカチオン交換樹脂および前記混床層のカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層と、前記混床層のアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層とを分離して形成する分離工程と;前記カチオン交換樹脂層のカチオン交換樹脂および前記アニオン交換樹脂層のアニオン交換樹脂を再生する再生工程と;前記再生された再生カチオン交換樹脂を含む再生カチオン交換樹脂層と前記再生された再生アニオン交換樹脂を含む再生アニオン交換樹脂層とが分離した状態から、前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、前記再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する再構成工程と;を含み、前記再構成工程は、前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から樹脂貯留槽へ移送する移送工程を含み、前記再生カチオン交換樹脂のうちの一部を前記樹脂塔から前記樹脂貯留槽へ移送し、前記樹脂塔に残留している前記再生カチオン交換樹脂と前記再生アニオン交換樹脂とにより前記再生混床層を構成し、前記樹脂貯留槽から前記再生混床層の上方に接するように前記再生カチオン交換樹脂を充填して前記再生単床層を構成し;前記移送工程は、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、比重の軽い前記再生アニオン交換樹脂を前記樹脂塔の下部に設けられた樹脂移送口より上方に浮遊させ、比重の重い前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、または、前記移送工程は、前記樹脂塔の下部から水を抜出した後、前記樹脂塔の下部から移送水を供給することで、前記再生カチオン交換樹脂を前記樹脂塔の下部であって、前記再生カチオン交換樹脂層内に設けられた樹脂移送口から前記樹脂貯留槽に移送する、糖液精製方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、発生する甘水の量を低減し、設備費を低減することができる糖液の精製装置および精製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の一例を示す概略構成図であり、糖液の精製装置の運転方法の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の運転方法の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の運転方法の一例を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の運転方法の一例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の運転方法の一例を示す概略図である。
【
図6】実施例1および比較例1における、通液倍量に対するBrix値(%)を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施形態に係る糖液の精製装置の一例の概略を
図1に示し、その構成について説明する。
【0022】
糖液の精製装置1は、糖液の精製を行うための装置であって、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混合して形成された混床層14の上方に接して、カチオン交換樹脂の単床層12が充填されている樹脂塔10を備える。糖液の精製装置1は、さらに樹脂貯留槽24を備える。
【0023】
図1の精製装置1において、樹脂塔10の液入口には、配管16が接続され、液出口には、配管18が接続されている。樹脂塔10の内部の所定の位置に、樹脂層内の液を外部へ排出するための排出手段としてコレクタ20が設置され、コレクタ20には配管22が接続されている。樹脂塔10の下部の側面には、樹脂移送口26が設けられており、樹脂移送口26と樹脂貯留槽24の入口とは、樹脂移送配管28により接続されている。樹脂貯留槽24の出口と樹脂塔10の上部の側面の樹脂出口とは、樹脂移送配管30により接続されている。
【0024】
本実施形態に係る糖液の精製方法および精製装置1の動作について説明する。
【0025】
図1の精製装置1において、精製処理対象である糖液は、配管16を通して樹脂塔10の上部から供給され、カチオン交換樹脂の単床層12、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混床層14の順に通液され、配管18を通して樹脂塔10の下部から精製糖液として回収され、脱塩、脱色等の精製が行われる(精製工程)。
【0026】
本実施形態に係る糖液の精製方法および精製装置1では、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混床層14の上方に接する形でカチオン交換樹脂の単床層12を充填することにより、K塔、MB塔の順に糖液を供給する装置と同様の精製を1塔で実施することができる。精製を1塔で実施することができるため、発生する甘水の量を低減し、設備費を低減することができる。樹脂塔を1塔に削減することで発生する甘水の量を低減し、排水量を低減し、設備立上げを短縮し、製品の歩留りを改善することができる。
【0027】
このようなカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混床層14の上方に接する形でカチオン交換樹脂の単床層12を充填した糖液の精製装置を準備する際、イオン交換樹脂の再生工程後に再びカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混床層14の上方に接する形でカチオン交換樹脂の単床層12を充填することは従来の技術では困難であった。これに対して、本実施形態に係る糖液の精製方法および精製装置1では、以下に説明する通り、精製処理後のカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を分離再生し、再生カチオン交換樹脂の一部を樹脂塔10の外部に移送し、樹脂塔10内に残った再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂を再度混合して再生混床層を構成し、樹脂塔10の外部に移送した再生カチオン交換樹脂を再生混床層の上方に接する形で再充填して再生単床層を構成することにより、イオン交換樹脂の再利用が可能となった。
【0028】
また、K塔を削減したことにより、後述するように、イオン交換樹脂の再生において樹脂塔の内部をアルカリ性にすることができるため、酸に耐性を有する微生物による樹脂塔の汚染を抑制できる。
【0029】
精製工程終了後は、樹脂塔10の上部から配管16を通して洗浄水を供給し、樹脂塔10の下部から配管18を通して排出させて、樹脂塔10内の糖液を水に置換する。次に、
図2に示すように、樹脂塔10内で、
図1の単床層12のカチオン交換樹脂および混床層14のカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層34と、
図1の混床層14のアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層32とを分離して形成する(
図2参照、分離工程)。例えば、樹脂塔10の下部から配管18を通して洗浄水(逆洗水)をカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が流動するように供給し、配管16を通して排出することにより、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂が撹拌され、比重の重いカチオン交換樹脂を含むカチオン交換樹脂層34の上方に接する形で、比重の軽いアニオン交換樹脂を含むアニオン交換樹脂層32が形成される。この洗浄水(逆洗水)による洗浄により、樹脂塔10の内部に残存している糖液、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂に付着している糖液等が除去される。ここで、樹脂塔10内には、コレクタ20がアニオン交換樹脂層32とカチオン交換樹脂層34の分離面より下になるように設置されている。
【0030】
なお、逆洗水を供給する配管18等が、糖液の精製後に樹脂塔10内でカチオン交換樹脂層34とアニオン交換樹脂層32とを分離して形成する分離手段として機能することになる。
【0031】
分離工程終了後は、カチオン交換樹脂層34のカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂層32のアニオン交換樹脂を再生する(再生工程)。
図2において、例えば、アニオン交換樹脂再生剤を、配管16を通して樹脂塔10の上部からアニオン交換樹脂層32を通るように供給し、コレクタ20から配管22を通して排出する。このとき、カチオン交換樹脂層34にアニオン交換樹脂再生剤ができるだけ接触しないように配管18を通して樹脂塔10の下部から水を供給し、アニオン交換樹脂再生剤と共にコレクタ20から配管22を通して排出する。その後、配管18を通して樹脂塔10の下部から水を供給したまま、配管16を通して樹脂塔10の上部から洗浄水を供給し、コレクタ20から配管22を通して排出することによって、アニオン交換樹脂層32に残ったアニオン交換樹脂再生剤を除去する。次に、カチオン交換樹脂再生剤を、配管18を通して樹脂塔10の下部からカチオン交換樹脂層34を通るように供給し、コレクタ20から配管22を通して排出する。このとき、アニオン交換樹脂層32にカチオン交換樹脂再生剤ができるだけ接触しないように配管16を通して樹脂塔10の上部から水を供給し、カチオン交換樹脂再生剤と共にコレクタ20から配管22を通して排出する。次に、樹脂塔10の上部から配管16を通して、底部から配管18を通して洗浄水、逆洗水をそれぞれ通水し、コレクタ20から配管22を通して排出して、水洗する。
【0032】
再生工程において、イオン交換樹脂の再生において樹脂塔10の内部をアニオン交換樹脂再生剤によりアルカリ性にすることができるため、酸に耐性を有する微生物による樹脂塔の汚染を抑制できる。
【0033】
なお、アニオン交換樹脂再生剤を供給する配管16、カチオン交換樹脂再生剤を供給する配管18等が、カチオン交換樹脂層34のカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂層32のアニオン交換樹脂を再生する再生手段として機能することになる。
【0034】
このようにして、
図3に示すように、再生された再生カチオン交換樹脂を含む再生カチオン交換樹脂層38の上方に接する形で、再生された再生アニオン交換樹脂を含む再生アニオン交換樹脂層36が形成された状態となる。
【0035】
再生工程終了後は、再生カチオン交換樹脂層38と再生アニオン交換樹脂層36とが分離した状態から、再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する(再構成工程)。
図3において、例えば、樹脂塔10の下部から配管18を通して移送水を供給することで、比重の軽い再生アニオン交換樹脂を樹脂塔10の下部の側面に設置した樹脂移送口26より上方に浮遊させ、再生カチオン交換樹脂層38の比重の重い再生カチオン交換樹脂の一部を樹脂移送口26から樹脂移送配管28を通して樹脂貯留槽24に移送する(移送工程)。または、樹脂塔10の下部から配管18を通して内部の水を抜出した後、樹脂塔10の下部から配管18を通して移送水を供給することで、再生カチオン交換樹脂層38の再生カチオン交換樹脂の一部を、樹脂塔10の下部であって、再生カチオン交換樹脂層38内に設けられた樹脂移送口26から樹脂移送配管28を通して樹脂貯留槽24に移送する(移送工程)。移送終了後、さらに樹脂塔10の下部から配管18を通して撹拌水や、空気等の気体等を再生カチオン交換樹脂層38の再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂層36の再生アニオン交換樹脂が流動するように供給し、配管16を通して排出することにより、再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂が撹拌され、
図4に示すように、移送工程後に樹脂塔10に残った再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂を含む再生混床層40が形成される(混合工程)。再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂の撹拌は、振動や、撹拌装置を用いた撹拌等によって行ってもよい。一方、樹脂貯留槽24には、
図3で移送した再生カチオン交換樹脂42が充填されている。
【0036】
次に、
図4において、樹脂貯留槽24から再生カチオン交換樹脂42を再生混床層40の上方にポンプ(図示せず)等により樹脂移送配管30を通して移送し、再生混床層40の上方に充填する(充填工程)。これにより、
図5に示すように、再生混床層40の上方に接して、再生カチオン交換樹脂の再生単床層44が充填されている状態に再構成し、
図1に示した精製装置1と同様の状態とする。または、
図4において、再生混床層40の上面より上方に樹脂貯留槽24を設置して、樹脂貯留槽24から再生カチオン交換樹脂42を再生混床層40の上方に樹脂移送配管30を通して移送し、再生混床層40の上方に充填してもよい。
【0037】
なお、樹脂貯留槽24、樹脂移送口26、樹脂移送配管28,30、移送水、撹拌水、気体を供給する配管18、ポンプ等が、再生カチオン交換樹脂層と再生アニオン交換樹脂層とが分離した状態から、再生カチオン交換樹脂と再生アニオン交換樹脂とを混合して形成された再生混床層の上方に接して、再生カチオン交換樹脂の再生単床層が充填されている状態に再構成する再構成手段として機能することになる。そして、樹脂移送口26、樹脂移送配管28、移送水を供給する配管18等が、再生カチオン交換樹脂のうちの一部を樹脂塔10から樹脂貯留槽24へ移送する移送手段として機能することになる。
【0038】
混床層で用いられるアニオン交換樹脂としては、強塩基性アニオン交換樹脂または弱塩基性アニオン交換樹脂が挙げられるが、糖液が澱粉糖液の場合には、異性化等の点から、弱塩基性アニオン交換樹脂を用いることが好ましく、糖液が澱粉糖液以外の糖液の場合には、強塩基性アニオン交換樹脂または弱塩基性アニオン交換樹脂を用いればよい。
【0039】
強塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト(登録商標、以下同様)IRA900、IRA400、IRA402BL、IRA404J、IRA458RF、ダイヤイオン(登録商標)SA10A、SA11A、SA12A、PA406、PA408、PA306、PA308等のI形強塩基性アニオン交換樹脂等が挙げられる。弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトXE583、アンバーライトFPA95、FPA96等が挙げられる。
【0040】
混床層および単床層で用いられるカチオン交換樹脂としては、強酸性カチオン交換樹脂または弱酸性カチオン交換樹脂が挙げられるが、貫流容量や再生効率等の点から、強酸性カチオン交換樹脂が好ましい。
【0041】
強酸性カチオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライト120B、200CT、FPC10、FPC20、ダイヤイオンSK1B、SK110、PK216、PK212等が挙げられる。弱酸性カチオン交換樹脂としては、例えば、アンバーライトIRC76、FPC76J、ダイヤイオンWK10、WK11、ダウエックスMAC-3等が挙げられる。
【0042】
アニオン交換樹脂再生剤としては、水酸化ナトリウム水溶液等が用いられる。
【0043】
カチオン交換樹脂再生剤としては、塩酸、硫酸等の酸が用いられる。
【0044】
コレクタ20は、樹脂層内の液を外部へ排出できる構成のものであればよく、特に制限はない。コレクタ20の設置位置は、分離工程後に、アニオン交換樹脂層32とカチオン交換樹脂層34の分離面より下になるように設置されていればなおよい。
【0045】
精製の対象となる糖液(原料糖)は、ぶどう糖、異性化糖、水あめ等の澱粉糖液、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、乳糖含有糖液、蔗糖液の他、各種オリゴ糖液等が挙げられる。本実施形態に係る糖液の精製方法および精製装置は、澱粉糖液の精製に好適に適用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<実施例1>
ここでは装置立上げのときの甘水量が従来技術(比較例1)と比較してどの程度削減できるかを検討した。
【0048】
強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC20)10mLと弱塩基性アニオン交換樹脂(アンバーライトXE583)40mLの混床に接する形で上部から強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC20)20mLを充填したカラム(φ1.5cm×H100cm)を用意した。なお、液面高さは15cmとし、強酸性カチオン交換樹脂のイオン型はH型、弱塩基性アニオン交換樹脂のイオン型はFB型とした。
【0049】
このカラムを40℃で加温し、Brix値30%の澱粉糖液を160mL/hで供給し、カラム出口液を回収し、カラム出口液のBrix値を、Brix屈折計(株式会社アタゴ製、RX-5000i)を用いて測定した。結果を
図6に示す。
【0050】
なお、Brix値は、20℃の蔗糖溶液の質量百分率に相当する値で定められており、蔗糖1gのみを溶質として含む水溶液100gをBrix屈折計で測定したときの示度Brix値が1%である。つまり、質量分率30%の蔗糖溶液(100g水溶液中に蔗糖30g、水70g)では、Brix値が30%になる。しかし、蔗糖以外の固形成分を含む溶液では、Brix値は固形成分濃度の目安として用いられ、必ずしも質量分率を表す値ではないことに注意しなければならない。
【0051】
<比較例1>
強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC20)20mLを充填したカラムaと、強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC20)10mLと弱塩基性アニオン交換樹脂(アンバーライトXE583)40mLを充填したカラムbを用意し、カラムaの出口とカラムbの入口をシリコンチューブで接続した。
【0052】
カラムa、カラムbを40℃で加温し、Brix値30%の澱粉糖液を160mL/hで供給し、カラム出口液を回収し、カラム出口液のBrix値を測定した。結果を
図6に示す。
【0053】
図6に示したように、実施例1ではBrix値が通液倍量0.3から検出されたのに対し、比較例1では通液倍量1までBrix値は検出されなかった。また、実施例1では通液倍量2.5でカラム出口液のBrix値が供給した澱粉糖液のBrixと等しくなったことに対し、比較例1では通液倍量3までかかっている。以上の結果より、実施例1の精製装置は、比較例1の従来の精製装置と比較して甘水量が削減できることが分かった。
【0054】
このように、実施例1のような構成の精製装置により、発生する甘水の量を低減し、設備費を低減することができた。
【符号の説明】
【0055】
1 精製装置、10 樹脂塔、12 単床層、14 混床層、16,18,22 配管、20 コレクタ、24 樹脂貯留槽、26 樹脂移送口、28,30 樹脂移送配管、32 アニオン交換樹脂層、34 カチオン交換樹脂層、36 再生アニオン交換樹脂層、38 再生カチオン交換樹脂層、40 再生混床層、42 再生カチオン交換樹脂、44 再生単床層。