(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/08 20060101AFI20230123BHJP
【FI】
E04G21/08
(21)【出願番号】P 2018241257
(22)【出願日】2018-12-25
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】高川 智之
(72)【発明者】
【氏名】有須田 朋子
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-133081(JP,A)
【文献】特開2004-183280(JP,A)
【文献】特開2018-040231(JP,A)
【文献】実開昭61-187855(JP,U)
【文献】特開2011-137318(JP,A)
【文献】特開平8-254098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/08
E02D 5/38
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設後のフレッシュコンクリートを締固めるために用いられるコンクリート締固め装置であって、
打設後のフレッシュコンクリートに挿入して用いられ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するバイブレータと、このバイブレータを上下動自在に上方から吊持する吊持手段とを備え
、
前記吊持手段は、揚重装置に昇降自在に吊持される吊り架台と、この吊り架台の中央部を境とするその一方側と他方側にそれぞれ接続されて下方に延びるワイヤロープとを有する吊天秤によって構成され、前記バイブレータは、前記ワイヤロープの下端に配置されるとともに、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋同士の間の隙間に挿入可能に構成されることを特徴とするコンクリート締固め装置。
【請求項2】
前記吊り架台には、前記ワイヤロープを固定するための孔が平面的に異なる複数の位置に設けられており、前記ワイヤロープは複数の前記孔のうちいずれかの前記孔に挿通固定され、前記バイブレータを吊持することを特徴とする請求項1に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項3】
前記バイブレータの周囲に配置され、バイブレータ振れ止め用のさや管をさらに備え、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋への
前記バイブレータの絡み付きを防止するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート締固め装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のコンクリート締固め装置を用いて打設後のフレッシュコンクリートを締固めるコンクリート締固め方法であって、
打設後のフレッシュコンクリートの上方から、
前記吊持手段を介して
前記バイブレータをフレッシュコンクリートの内部に挿入するステップと、
前記吊持手段を介して
前記バイブレータを所定の深さ位置に配置するとともに、
前記バイブレータを振動させ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するステップとを備えることを特徴とするコンクリート締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法に関し、特に、橋脚などの柱状コンクリート構造物を構築するために大型の型枠に打設される打設高さの高いコンクリートの締固め作業に好適なコンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート打設工事の締固め作業では、打設直後のフレッシュコンクリートにバイブレータなどの振動棒を挿入し、コンクリートに振動を与えることで、コンクリートを締固めている(例えば、特許文献1を参照)。コンクリートの打設深さが比較的大きい場合には、作業員がバイブレータを人力で上げ下げすることで、バイブレータからの振動を深さ方向に均等に与え、コンクリートの締固め具合が深さ方向に均等になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、橋脚などの柱状構造物のコンクリートを打設する場合には、通常、コンクリート打設領域を高さ方向に複数層に分割し、下層から上層に向けて順次コンクリートを打設する。例えば、柱状構造物の高さHが15m程度の場合には、
図7(1)に示すように、高さ5m程度(H/3程度)の型枠1、2、3を高さ方向に積層配置し、各型枠の内側の空間に対して、型枠1、2、3の順に複数回(図の例では3回)に分けてコンクリートを打設する。
【0005】
このような方法に対して、
図7(2)に示すように、高剛性大型型枠4を用いて、高さ方向に複数層に分けずに1回のコンクリート打設で済ませる方法がある。この方法によれば、上記の
図7(1)の方法に比べて、型枠の組払いと養生期間を削減でき、施工コストを低減することが可能である。
【0006】
しかし、このような打設高さが大きいコンクリートの締固め作業において、コンクリート中に深く挿入したバイブレータを作業員が人力で上げ下げすることは、作業員にとって過酷な労働となるとともに、締固め不足を誘発して所望のコンクリート品質を確保できないおそれがある。また、バイブレータがフレキシブルなタイプである場合は、バイブレータがコンクリート周囲の配力筋に絡み付いて抜けなくなるおそれがある。このため、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができるとともに、その作業の省力化を図れる技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができるとともに、作業の省力化を図ることのできるコンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るコンクリート締固め装置は、打設後のフレッシュコンクリートを締固めるために用いられるコンクリート締固め装置であって、打設後のフレッシュコンクリートに挿入して用いられ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するバイブレータと、このバイブレータを上下動自在に上方から吊持する吊持手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置は、上述した発明において、吊持手段は、揚重装置に昇降自在に吊持される吊り架台と、この吊り架台の中央部を境とするその一方側と他方側にそれぞれ接続されて下方に延びる吊持部材とを有する吊天秤によって構成され、バイブレータは、各吊持部材の下端に配置されており、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋同士の間の隙間に各バイブレータを挿入可能としたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置は、上述した発明において、バイブレータの周囲に配置され、バイブレータの振れ止め用のさや管をさらに備え、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋へのバイブレータの絡み付きを防止するようにしたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るコンクリート締固め方法は、上述したコンクリート締固め装置を用いて打設後のフレッシュコンクリートを締固めるコンクリート締固め方法であって、打設後のフレッシュコンクリートの上方から、吊持手段を介してバイブレータをフレッシュコンクリートの内部に挿入するステップと、吊持手段を介してバイブレータを所定の深さ位置に配置するとともに、バイブレータを振動させ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート締固め装置によれば、打設後のフレッシュコンクリートを締固めるために用いられるコンクリート締固め装置であって、打設後のフレッシュコンクリートに挿入して用いられ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するバイブレータと、このバイブレータを上下動自在に上方から吊持する吊持手段とを備えるので、打設高さが高いコンクリートであっても、吊持手段を介してバイブレータを上げ下げすることで、コンクリートの締固め具合を高さ方向に均等にすることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができ、所望のコンクリート品質を確保することができる。また、人力でバイブレータを上げ下げしないので、締固め作業の省力化を図ることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置によれば、吊持手段は、揚重装置に昇降自在に吊持される吊り架台と、この吊り架台の中央部を境とするその一方側と他方側にそれぞれ接続されて下方に延びる吊持部材とを有する吊天秤によって構成され、バイブレータは、各吊持部材の下端に配置されており、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋同士の間の隙間に各バイブレータを挿入可能としたので、コンクリートの内部の複数の箇所を同時に締固めることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置によれば、バイブレータの周囲に配置され、バイブレータの振れ止め用のさや管をさらに備え、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋へのバイブレータの絡み付きを防止するようにしたので、コンクリートの内部に配置された配力筋などの鉄筋にバイブレータが絡み付く事態を未然に防止することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係るコンクリート締固め方法によれば、上述したコンクリート締固め装置を用いて打設後のフレッシュコンクリートを締固めるコンクリート締固め方法であって、打設後のフレッシュコンクリートの上方から、吊持手段を介してバイブレータをフレッシュコンクリートの内部に挿入するステップと、吊持手段を介してバイブレータを所定の深さ位置に配置するとともに、バイブレータを振動させ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するステップとを備えるので、打設高さが高いコンクリートであっても、吊持手段を介してバイブレータを上げ下げすることで、コンクリートの締固め具合を高さ方向に均等にすることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができ、所望のコンクリート品質を確保することができる。また、人力でバイブレータを上げ下げしないので、締固め作業の省力化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法の実施の形態を示す概略側断面図である。
【
図3】
図3は、バイブレータの有効範囲を示す平断面図である。
【
図4】
図4は、さや管を配置した場合の部分斜視図である。
【
図7】
図7は、柱状コンクリート打設用の型枠の配置例を示す側断面図であり、(1)は一般的な型枠の場合、(2)は高剛性大型型枠の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るコンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(コンクリート締固め装置)
まず、本発明に係るコンクリート締固め装置の実施の形態について、ラーメン高架橋の橋脚コンクリート工事の締固め作業に適用する場合を例にとり説明する。
【0019】
図1に示すように、地中Gから地上にかけて構築された橋脚コンクリート用の型枠10の内部に、フレッシュコンクリートCが1回で打設されているものとする。この型枠10には、上記の
図7(2)で説明した高剛性大型型枠を用いている。型枠10は、上面が正方形に開口した角筒状に配置されており、その内部には、鉄筋Sが所定間隔で縦横に配筋されているものとする。なお、
図1の例では、鉄筋Sの一部を概略的に図示している。
【0020】
型枠10の高さ、つまりコンクリートの1回の打設高さHは、15m程度を想定している。ただし、本発明の打設高さHはこれに限るものではなく、これ以外の打設高さであってもよい。コンクリートを1回で打設する本方法によれば、通常の型枠を用いた場合に比べて、型枠の組払いと養生期間を削減でき、施工コストを低減することが可能である。
【0021】
この型枠10によって、高さ15m程度の鉄筋コンクリートの角柱が構築されることになる。角柱の断面形状は、一辺1.5m程度の正方形状を想定している。このため、締固め対象のコンクリートCの上面の形状は、一辺1.5m程度の正方形状である。ただし、本発明はこれに限るものではなく、これ以外の断面形状・寸法の柱状コンクリートであってもよい。
【0022】
本実施の形態に係るコンクリート締固め装置100は、打設直後のフレッシュコンクリートCを締固めるために用いる。このコンクリート締固め装置100は、地上に配置されたクレーン車12(揚重装置)と、クレーン車12のブーム14の先端に吊り下げられた吊り架台16(吊持手段)と、吊り架台16から下に垂れたワイヤロープ18(吊持部材)と、このワイヤロープ18の下端に取り付けられたバイブレータ20とを備える。
【0023】
吊り架台16およびワイヤロープ18は、バイブレータ20を上方から上下動自在に吊持する吊天秤(吊持手段)として機能する。吊り架台16は、クレーン車12のブーム14の先端から下に延びるワイヤロープ22の下端のフック24に、ワイヤロープ26を介して昇降自在に吊持される。ワイヤロープ26は、吊り架台16の四隅部とフック24とを接続する。また、ワイヤロープ18は、吊り架台16の下面の中央部を境とするその一方側と他方側に接続されて下方に垂れている。
【0024】
吊り架台16について、より具体的に説明する。
図2は、地上に仮置きした吊り架台16の概略斜視図である。下面側が上を向いている。この図に示すように、吊り架台16は、鋼製の正方形板状の架台本体28と、架台本体28の下面30に突設されたリブ32と、リブ32に開けられた孔34を備える。
【0025】
架台本体28の平面形状・寸法は、締固め対象のコンクリートCの上面の形状・寸法に応じて適宜選択できる。本実施の形態では、締固め対象のコンクリートCの上面を一辺1.5m程度の正方形状に設定しており、
図3に示すようにバイブレータは鉄筋の内側に配置されるため、架台本体28の平面形状・寸法は締固め対象のコンクリートCの上面よりやや小さい1.2m程度の正方形状に設定している。
【0026】
リブ32は、架台本体28の中心部36から四隅部38に向けてと、中心部36から四辺の各辺を等分する縁部40に向けてそれぞれ延在している。孔34は、架台本体28の中心部36から離れた側のリブ32において、リブ32の延在方向に間隔をあけて複数の箇所に設けられる。つまり、リブ32の四隅部38付近と、縁部40付近にそれぞれ複数の孔34が設けられる。各孔34には、ワイヤロープ18を挿通して固定可能である。ワイヤロープ18を固定する孔34の位置は、締固め対象のコンクリートCの上面の形状や、鉄筋Sの位置などに応じて適宜選択することができる。
【0027】
吊った状態のバイブレータ20を使用する場合には、鉄筋S間への挿入が困難となるおそれがある。そこで、本実施の形態では、四隅部38と縁部40の付近に複数の孔34を備えた吊り架台16を用いている。鉄筋Sの配置形状などに応じてワイヤロープ18を繋ぐ孔34を選択すれば、各バイブレータ20の平面配置を簡単に変えることができる。これにより、鉄筋S同士の間の隙間にバイブレータ20を挿入することが容易となる。
【0028】
本実施の形態のワイヤロープ18は、下端に取り付けたバイブレータ20が、締固め対象のコンクリートCに挿入可能で、鉄筋Sなどに干渉しないような位置の孔34に固定されている。より具体的には、リブ32の四隅部38付近と、縁部40付近に設けた複数の孔34のうち各一つの孔34にワイヤロープ18を挿通固定している。したがって、吊り架台16からは、8本のワイヤロープ18を介して、8本のバイブレータ20が鉛直下方に垂らされることになる。
【0029】
図3は、バイブレータ20を挿入した場合のコンクリートCの平断面図である。この図に示すように、8本のバイブレータ20が、鉄筋Sに干渉することなく平面的に離間してコンクリート内に略均等配置されている。各バイブレータ20の振動による締固め作用が有効となる範囲Rは、コンクリートCを平面的にほぼカバーできている。ただし、図の例では、バイブレータ20の径はφ50(50mm)を想定している。これらのバイブレータ20によって、コンクリートCを平面的に効率よく均等に締固めることが可能である。
【0030】
バイブレータ20は、フレッシュコンクリートCに締固め用の振動を付与するためのものである。
図1に示すように、このバイブレータ20は、上下方向に延びた棒状のものであり、その上端はワイヤロープ18に取り付いている。バイブレータ20の上下方向の長さ、径は締固め対象のコンクリートCの性状、形状、寸法などの条件に応じて適宜選択できるが、本実施の形態では長さ40cm程度、径φ50(50mm)を想定している。また、バイブレータ20は、可撓性のフレキシブル型バイブレータ、非可撓性のバイブレータなど様々なタイプを用いることができるが、本実施の形態では、フレキシブル型バイブレータを想定している。
【0031】
フレキシブル型バイブレータを用いる場合は、フレッシュコンクリートCの内部に配置された配力筋などの鉄筋Sにバイブレータ20が絡み付くおそれがある。そこで、
図4に示すように、バイブレータ20の振れ止め用のさや管42をバイブレータ20の周囲に配置してもよい。このようにすれば、バイブレータ20の振れ変形、角度はさや管42によって規制されるので、バイブレータ20が鉄筋Sなどに絡み付く事態を未然に防止することができる。さや管42は、バイブレータ20の振れ変形を防止可能な剛性を有する管状物であればいかなる管材でもよく、例えば塩化ビニル管を用いてもよい。また、さや管42は、バイブレータ20の周囲だけでなく、その上方のワイヤロープ18の周囲に跨って配置してもよい。
【0032】
上記構成の動作および作用について説明する。
図1および
図5に示すように、まず、クレーン車12のブーム14を操作して、打設直後のフレッシュコンクリートCの直上に吊り架台16を配置する。この場合、吊り架台16の四隅部38とコンクリートCの上面の四隅部がそれぞれ同一鉛直線上に位置して、バイブレータ20が所望の位置に挿入可能なように位置合わせを行う。位置合わせが済んだら、ブーム14を停止状態とし、ワイヤロープ22を下げて吊り架台16を下降させる。
図6に示すように、各バイブレータ20をフレッシュコンクリートCの内部に挿入する。各バイブレータ20の平面位置は、
図3に示したように、コンクリートCに挿入可能で鉄筋Sなどに干渉しない所定の位置に合わせられているので、コンクリートCにスムーズに入り込む。
【0033】
次に、
図1に示すように、ワイヤロープ22を上下方向に操作して、バイブレータ20をコンクリートC中の所定の深さ位置に配置するとともに、バイブレータ20からの振動を周囲のコンクリートCに付与する。これにより、当該深さ位置のコンクリートCが締固められる。一定時間経過後、ワイヤロープ22を上下方向に操作して、バイブレータ20を別の深さ位置に配置するとともに、バイブレータ20からの振動を周囲のコンクリートCに付与する。これにより、当該深さ位置のコンクリートCが締固められる。以後、この工程を繰り返すことにより、コンクリートCの深さ方向全域に対して締固めを行う。なお、各深さ位置の締固めにおいて、クレーン車12のブーム14の先端を若干動かし、コンクリートCの上面に対するバイブレータ20の平面的な相対位置を若干変えて締固めを行ってもよい。締固め作業を終了した後は、ワイヤロープ22を上げて、バイブレータ20をコンクリートCから引き上げる。
【0034】
本実施の形態のコンクリート締固め装置100によれば、打設高さが高いコンクリートCであっても、クレーン車12のワイヤロープ22、吊り架台16、ワイヤロープ18を介してバイブレータ20を上げ下げすることで、コンクリートCを高さ方向に均等に締固めることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができる。これにより、所望のコンクリート品質を確保することができる。
【0035】
また、本実施の形態のコンクリート締固め装置100では、クレーン車12のような重機を使用してバイブレータ20を上げ下げする。作業員などが人力でバイブレータ20を上げ下げする必要がないので、締固め作業の省力化を図ることができる。さらに、複数本のバイブレータ20を同時に上げ下げすることができるので、コンクリートCの内部の複数の箇所を同時に締固めることができる。このため、締固めに係る作業コストを低減することが可能である。
【0036】
なお、上記の実施の形態においては、8本のバイブレータ20を吊り架台16に対して平面的に離間配置した場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、バイブレータ20の本数はこれ以外であってもよい。すなわち、8本のうち一部のバイブレータ20を省略してもよいし、別のバイブレータ20を追加配置して、8本を超える本数としてもよい。
【0037】
また、バイブレータ20の長さ、径、能力、平面配置などについては、事前の試験施工を通じて、締固め効果を確認しておき、この結果に基づいて設定することが望ましい。
【0038】
また、上記の実施の形態においては、バイブレータ20のみでコンクリートCの締固めを行う場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、型枠10の下端側に対しては、型枠バイブレータによる締固めを併用してもよい。
【0039】
(コンクリート締固め方法)
次に、本発明に係るコンクリート締固め方法の実施の形態について説明する。
【0040】
図1に示すように、本実施の形態に係るコンクリート締固め方法は、上記のコンクリート締固め装置100を用いて打設直後のフレッシュコンクリートCを締固めるものである。
【0041】
図1および
図5に示すように、まず、クレーン車12のブーム14を操作して、打設直後のフレッシュコンクリートCの直上に吊り架台16を配置し、上述したように位置合わせを行う。位置合わせが済んだら、ブーム14を停止状態とし、ワイヤロープ22を下げて吊り架台16を下降させる。
図6に示すように、各バイブレータ20をフレッシュコンクリートCの内部に挿入する。各バイブレータ20の平面位置は、
図3に示したように、コンクリートCに挿入可能で鉄筋Sなどに干渉しない所定の位置に合わせられているので、コンクリートCにスムーズに入り込む。
【0042】
次に、
図1に示すように、ワイヤロープ22を上下方向に操作して、バイブレータ20をコンクリートC中の所定の深さ位置に配置するとともに、バイブレータ20からの振動を周囲のコンクリートCに付与する。これにより、当該深さ位置のコンクリートCが締固められる。一定時間経過後、ワイヤロープ22を上下方向に操作して、バイブレータ20を別の深さ位置に配置するとともに、バイブレータ20からの振動を周囲のコンクリートCに付与する。これにより、当該深さ位置のコンクリートCが締固められる。以後、この工程を繰り返して、コンクリートCの深さ方向全域に対して締固めを行う。なお、各深さ位置の締固めにおいて、クレーン車12のブーム14の先端を若干動かし、コンクリートCの上面に対するバイブレータ20の平面的な相対位置を若干変えて締固めを行ってもよい。締固め作業を終了した後は、ワイヤロープ22を上げて、バイブレータ20をコンクリートCから引き上げる。
【0043】
本実施の形態のコンクリート締固め方法によれば、打設高さが高いコンクリートCであっても、クレーン車12のワイヤロープ22、吊り架台16、ワイヤロープ18を介してバイブレータ20を上げ下げすることで、コンクリートCを高さ方向に均等に締固めることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができる。これにより、所望のコンクリート品質を確保することができる。
【0044】
また、本実施の形態のコンクリート締固め方法では、クレーン車12のような重機を使用してバイブレータ20を上げ下げする。作業員などが人力でバイブレータ20を上げ下げする必要がないので、締固め作業の省力化を図ることができる。さらに、複数本のバイブレータ20を同時に上げ下げすることができるので、コンクリートCの内部の複数の箇所を同時に締固めることができる。このため、締固めに係る作業コストを低減することが可能である。
【0045】
以上説明したように、本発明に係るコンクリート締固め装置によれば、打設後のフレッシュコンクリートを締固めるために用いられるコンクリート締固め装置であって、打設後のフレッシュコンクリートに挿入して用いられ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するバイブレータと、このバイブレータを上下動自在に上方から吊持する吊持手段とを備えるので、打設高さが高いコンクリートであっても、吊持手段を介してバイブレータを上げ下げすることで、コンクリートの締固め具合を高さ方向に均等にすることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができ、所望のコンクリート品質を確保することができる。また、人力でバイブレータを上げ下げしないので、締固め作業の省力化を図ることができる。
【0046】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置によれば、吊持手段は、揚重装置に昇降自在に吊持される吊り架台と、この吊り架台の中央部を境とするその一方側と他方側にそれぞれ接続されて下方に延びる吊持部材とを有する吊天秤によって構成され、バイブレータは、各吊持部材の下端に配置されており、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋同士の間の隙間に各バイブレータを挿入可能としたので、コンクリートの内部の複数の箇所を同時に締固めることができる。
【0047】
また、本発明に係る他のコンクリート締固め装置によれば、バイブレータの周囲に配置され、バイブレータの振れ止め用のさや管をさらに備え、フレッシュコンクリートの内部に配置された鉄筋へのバイブレータの絡み付きを防止するようにしたので、コンクリートの内部に配置された配力筋などの鉄筋にバイブレータが絡み付く事態を未然に防止することができる。
【0048】
また、本発明に係るコンクリート締固め方法によれば、上述したコンクリート締固め装置を用いて打設後のフレッシュコンクリートを締固めるコンクリート締固め方法であって、打設後のフレッシュコンクリートの上方から、吊持手段を介してバイブレータをフレッシュコンクリートの内部に挿入するステップと、吊持手段を介してバイブレータを所定の深さ位置に配置するとともに、バイブレータを振動させ、周囲のフレッシュコンクリートに締固め用の振動を付与するステップとを備えるので、打設高さが高いコンクリートであっても、吊持手段を介してバイブレータを上げ下げすることで、コンクリートの締固め具合を高さ方向に均等にすることができる。したがって、打設高さが高いコンクリートを確実に締固めることができ、所望のコンクリート品質を確保することができる。また、人力でバイブレータを上げ下げしないので、締固め作業の省力化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係るコンクリート締固め装置およびコンクリート締固め方法は、橋脚などの柱状コンクリート構造物を構築するために大型の型枠に打設される打設高さの高いコンクリートの締固め作業に有用であり、特に、打設高さの高いコンクリートを確実に締固めるとともに、締固め作業の省力化を図るのに適している。
【符号の説明】
【0050】
10 型枠
12 クレーン車(揚重装置)
14 ブーム
16 吊り架台(吊持手段)
18,22,26 ワイヤロープ
20 バイブレータ
24 フック
28 架台本体
30 下面
32 リブ
34 孔
36 中心部
38 四隅部
40 縁部
42 さや管
C フレッシュコンクリート
S 鉄筋
100 コンクリート締固め装置