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  • 特許-アルギニン含有錠剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】アルギニン含有錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230123BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230123BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230123BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230123BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K9/20
A61K9/14
A61K47/44
A61P9/00
A61P5/00
A61P3/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019034078
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020138918
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】清水 篤史
(72)【発明者】
【氏名】福原 慎司
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270111(JP,A)
【文献】特開2010-254580(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010487(WO,A1)
【文献】特開2010-200853(JP,A)
【文献】特開2011-088838(JP,A)
【文献】特開2006-102558(JP,A)
【文献】国際公開第00/054752(WO,A1)
【文献】特開2007-105705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性物質により乾式コーティングされた、実質的に水を含有しないアルギニン粉末。
【請求項2】
疎水性物質がナタネ硬化油脂である請求項に記載のアルギニン粉末。
【請求項3】
請求項またはに記載のアルギニン粉末を打錠成形するアルギニン含有錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性にすぐれた、アルギニンを高含有錠剤及びこれを調製する目的に適したアルギニン粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
アルギニンは、塩基性アミノ酸に分類される非必須アミノ酸である。しかし、非必須アミノ酸であるにも関わらず、アルギニンは、成長ホルモン分泌促進、血流改善、基礎代謝の上昇などの効果を有していることから、サプリメント等として積極的に摂取することが推奨されている。
アルギニン製剤は、カプセル剤や粒剤が一般的に知られている。しかし、アルギニン含有量がカプセル剤や顆粒剤では少ないため、薬理効果を期待できる量をカプセル剤や粒剤で摂取するには、大量に摂取する必要がある。特に、カプセル剤では圧縮工程を経ていないので、一粒の含有量を高めると必然的にカプセルのサイズが大きくなり、これを多量に摂取することは困難である。粒剤の場合は、アルギニンの味、臭いが問題となって、摂取しにくい。このため、アルギニンを摂取する製剤形態としては錠剤が好ましい。
【0003】
しかし、フリー体のアルギニンを錠剤全量に対して一定量以上含有させた錠剤は、空気中や加湿条件下において、錠剤に亀裂や崩壊が発生することが知られている。これはアルギニンによる吸水性(吸湿性)が原因である。このような問題発生を抑制するため、錠剤のコーティングが提案されている。特許文献1には、吸水性アミノ酸であるプロリン、リジン、ヒスチジン、システイン、オルニチン、グルタミン酸、アルギニンを高含有する錠剤を糖衣錠とし、さらにアラビアゴムでコーティングする技術が記載されている。また、特許文献2には、アルギニンを含む錠剤をヒドロキシプロピルセルロース、タルク、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含有し、プロピレングリコールとポリエチレングリコールの配合質量比率が75:25~98:2である組成物でコーティングする技術が記載されている。しかしコーティングするためには、専用の装置や設備が必要となる。
【0004】
特許文献3には、アルギニン1質量部に対して硬化油などの疎水性物質を0.3質量部添加した組成物を打錠成形することで、コーティングが不要なアルギニン高含有錠剤を得ることが記載されている。この錠剤は、保存中の崩壊がなく、錠剤中のアルギニン含有量を16.9質量%以上にすることができる。
特許文献4には、水分含有量が2.7質量%以上の水分を含むアルギニンを含有する打錠用粉体を打錠したアルギニン高含有錠剤が記載されている。これは予めアルギニンを吸水(吸湿)させて膨潤させ、これを打錠成形することで、成形後の製剤の膨張や崩壊を抑制するものである。特許文献5には、L-アルギニン1モル当たり、少なくとも約1.5モルの結晶化水を含むアルギニン(少なくとも38~40%のr.h./25℃まで選択的に水分調節されたアルギニン)を用いて、硬度、物理的安定性、耐久性及び/又は有効期間が改善された製剤を調製できることが記載されている。しかし、吸湿させたアルギニンや結晶水を持ったアルギニンを製剤化したとき、含有される水分や結晶水が、長期保存したときどのような影響を製剤に与えるのかはっきりしない。
【0005】
特許文献6には、噴霧乾燥法により乾燥したフリー体のアルギニンを圧縮成形することにより、フリー体のアルギニンを錠剤の全量に対し5質量%以上の高含有量で含有する錠剤が記載されている。このアルギニン錠剤は、アルギニンを5質量%以上含有しながら、吸湿による亀裂や崩壊が抑制されており、さらに保存安定性に優れ、かつ簡便に製造することができることが記載されている。この噴霧乾燥法により得られるアルギニン粉末には、水分が1~4%含有されている。したがって、この含有される水がアルギニンの分解など製剤に影響を及ぼす危険を排除できない。
【0006】
一方、粉体の粒子設計技術が注目されている。粉体の粒子設計とは、粉体の化学的性質を変えることなく、粉体の性質を望ましい性質に、改変し、新しい粉体物性を創製することである(非特許文献1)。すなわち、粒子の物理的な性質(粒径、形状、存在状態=分散⇔凝集など)を制御することにより、新たな機能を引き出すことが可能となる。
全く水を使用しないで、ミクロンサイズの粉体の粒子表面を異なる特性のナノサイズの微小粒子でコーティングする技術は、粒子設計技術の一つであって、乾式コーティング或いは乾式プロセス技術と呼ばれている。この乾式コーティングによって、親水性薬物の粒子表面を疎水性のナノ粒子でコーティングする技術が特許文献7に記載されている。特許文献8には薬効成分の粉体表面を軽質無水ケイ酸で表面改質し、直接打錠可能な流動性の向上した表面改質粉体を得る技術が記載されている。特許文献9には、イミダフェナシンを三二酸化鉄及び帯電防止剤により乾式コーティングした粒子を直接打錠することを特徴とする口腔内崩壊錠とその製造方法が記載されている。特許文献10には、核粒子及び乾式バインダー(ラウリン酸、ミリスチン酸など)を含有する原料を二軸混練機にて混練することによって、核粒子表面に乾式バインダーが乾式コーティングされた乾式バインダー粒子を製造する方法が記載されている。
このように乾式コーティングは、医薬品の製造技術として広く利用されているが、乾式コーティングをアルギニン粉末やアルギニン含有錠剤に応用した先行技術は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-298373号公報
【文献】特開2007-001873号公報
【文献】特開2010-270111号公報
【文献】特開2010-254580号公報
【文献】国際公開第2014/056942号
【文献】国際公開第2017/010487号
【文献】特開2006-102558号公報
【文献】国際公開第00/54752号
【文献】特開2010-229076号公報
【文献】特開2007-105705号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】粉砕 No.53、80-90、(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アルギニンを高含有する打錠成形して製造された錠剤は、上記に述べたように、安定性において様々な問題があった。特に保存期間中の錠剤の変形や崩壊の発生は避けることができなかった。
本発明は、打錠成形に適した、アルギニンを高含有する粉末を提供することを課題とする。また、本発明は、アルギニンを10質量%以上含有する、保存安定性の高いアルギニン含有錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)アルギニンを10質量%以上含有する打錠成形錠剤であって、実質的に水を含有しない錠剤。
(2)疎水性物質により乾式コーティングされた、実質的に水を含有しないアルギニン粉末。
(3)疎水性物質がナタネ硬化油脂である(2)に記載のアルギニン粉末。
(4)(2)または(3)に記載のアルギニン粉末を打錠成形するアルギニン含有錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、アルギニンを10質量%以上含有する打錠成形錠剤が提供される。このため錠剤の小型化が可能となる。
また、本発明の錠剤は、実質的に水を含有していないにもかかわらず、アルギニンの吸湿に伴って発生する膨張、ひび割れ、崩壊が抑制され、長期間安定である。また非密封条件であっても、錠剤の膨張、ひび割れ、崩壊が発生しない。さらにまた、アルギニンを10質量%以上含有しているため、アルギニンの高容量摂取が容易である。
本発明により、疎水性粒子により乾式コーティングされた、実質的に水を含有しないアルギニン粉末が提供される。本発明のアルギニン粉末は、実質的に水を含有しないため、含有されるアルギニンが安定である。また吸湿性もない。このため長期間アルギニンが安定である。
また、本発明のアルギニン粉末は、打錠成形性が良く、そのまま、直接打錠成形することができる。或いは少量の賦形剤の添加で打錠成形可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アルギニン粉末及び乾式コーティング(ノビルタ処理)を施した粉末粒子の走査型電子顕微鏡観察画像である。
図2】実施例1~6、比較例2、比較例3の錠剤を40℃75%RHの環境下に2時間放置後の錠剤の形態変化を撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アルギニンを10質量%以上含有する打錠成形錠剤であって、実質的に水分を含有しない錠剤に関する。以下本発明に使用する成分について説明する。
<アルギニン>
アルギニン(5-グアニジノ-2-アミノペンタン酸)は、塩基性を示すアミノ酸であるが、本発明の錠剤ではフリー体、すなわち塩を形成していない遊離の形態のものを用いる。
本発明に用いるアルギニンとしては、ゼラチンや脱脂大豆などの酸加水分解物から抽出分離する方法、オルニチンを原料とする化学合成法、Brevibacterium flavumの2-チアゾールアラニン耐性+グアニン要求株等を用いた発酵法等、自体公知の製造方法により製造されたものを制限なく用いることができる。発酵法により製造されたものが好ましい。
また、フリー体のアルギニンは、上記公知の製造方法に従って製造して用いてもよいが、たとえば、協和発酵バイオ株式会社等より提供されている市販の製品を用いてもよい。
さらに、アルギニンは、D-体、L-体及びDL-体のいずれをも用いることができるが、L-体が好ましい。
なお、本発明に用いるアルギニンは、含有される水の影響を排除するため実質的に水を含まない粉末を用いる。本発明でいう実質的に水を含まないとは、乾燥減量が、1質量%以下をいう。このようなアルギニン粉末は、食品用または医薬品用L-アルギニン結晶粉末(乾燥減量0.3%以下:協和発酵バイオ株式会社)が販売されておりこれを用いることが好ましい。またアルギニン粉末を公知の乾燥装置を用いて、乾燥させて水分含量を低下させた後、本発明に用いても良い。
【0014】
<疎水性物質>
乾式コーティングに使用する疎水性のコーティング物質としては、ステアリン酸、カプリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ウンデカン酸等の脂肪酸および脂肪酸塩類、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ウンデカノール等の高級アルコール、ステアリン、ミリスチン、パルミチン、ラウリン等のグリセリン脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸テトラグリセリン、ペンタステアリン酸テトラグリセリン等のポリグリセリン脂肪酸エステル等を含む高級脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、硬化油、さらにカルナバロウ、サラシミツロウ、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類が挙げられ、これらを混合して用いることも可能である。なかでも、硬化油が好ましく、特に硬化ナタネ油(ナタネ硬化油脂)が好ましい。なお、乾式コーティングに用いる疎水性物質は、乾式コーティングされたアルギニン粉末に対し、5~90質量%である。
【0015】
<乾式コーティング操作と装置>
乾式コーティングは、公知の粒子表面改質に用いる装置を使用することで実施できる。このような装置として、精密混合装置、精密混合・複合化・コーティング装置を例示することができる。これらの装置は、衝撃、圧縮、せん断の繰り返しによって微小粒子を調製しながら同時に複合化する機能を有しており、乾式複合化装置の名称で市販されている。このような装置としては、ホソカワミクロン株式会社製の「ノビルタNOB(製品名)」、「ナノキュラ(製品名)」、「メカノフュージョン(製品名)」、「ファカルティ(製品名)」などを例示することができる。なかでも「ノビルタ」が好ましい。ノビルタNOBは、混合容器内でロータが高速回転しながら、原料に衝撃、圧縮、せん断の力を作用させ、原料を微細化し、この微細化粒子の表面形状を加工しながら自動的に複合粒子を製造する装置である(特開2010-180099号公報参照)。
これらの装置にアルギニンと疎水性物質を投入し、運転することで自動的にアルギニンの粒子表面に疎水性のナノ粒子が複合体化されてコーティングされる。すなわち、アルギニン粒子の表面全面に疎水性物質からなるコーティング層が形成されていても良いし、粒子全面ではなく、疎水性物質からなる微粒子がアルギニン粒子表面に複数付着した状態となっていてもよい。
コーティングは、適宜サンプリングを行い、粒子の形状と表面状態を観察して、コーティングの完了を確認する。
【0016】
<疎水性物質によるアルギニン粉末の乾式コーティング方法>
本発明の錠剤のためのコーティング粉末は、上記した乾式複合化装置により調製され、これを篩い分けすることによって所望の粒径を有する粉末あるいは顆粒として得ることができる。
また、通常の造粒法により再度造粒して用いることもできる。
打錠法による製剤の原料とするためには、粒径が10~750μmになるように篩い分けして分級し、アルギニン以外の他の薬効成分と、その他の賦形剤等の成分を添加・混合し、打錠して必要な硬度を有する錠剤を得ることができる。
打錠は、錠剤の製造に用いるロータリー式打錠機など一般的な打錠成形装置であれば良い。なお直径8~9mmの錠剤の場合、打錠する際の打錠圧は、1000kgfが望ましい。なお、本発明の複合粉末を配合した錠剤は、生産時にキャッピング等の打錠障害が発生しない。
【実施例
【0017】
以下、本発明を、実施例、比較例を示しながら、さらに具体的に説明する。
<疎水性物質により乾式コーティングされた、実質的に水を含有しないアルギニン粉末の製造>
1.使用原料
L-アルギニン(「L-アルギニン協和」協和発酵バイオ株式会社製)、疎水性物質として次の表1の物質を選択した。
【0018】
【表1】
【0019】
2.使用装置
ホソカワミクロン株式会社製、乾式複合化装置「ノビルタ ミニ」(実験用装置)
【0020】
3.乾式コーティング方法
アルギニン90質量%と疎水性物質の10質量%混合物20gを、ノビルタミニを用いて乾式コーティングを行った。ノビルタミニはモーター負荷300Wに設定し、室温で10分間処理を行なった。
【0021】
4.粒子の構造
<走査型電子顕微鏡による構造観察>
上記で得られた硬化ナタネ油がコーティングされたアルギニンの粒子(ノビルタ処理品)、および原料のアルギニン粒子(アルギニン未処理物)を走査型電子顕微鏡S-3400(日立ハイテクノロジーズ株式会社製)で観察し、その構造を観察した。図1にそれぞれの粒子の50倍、500倍、5000倍の観察画像を示す。
図から明らかなように、硬化ナタネ油がコーティングされたアルギニンの粒子(ノビルタ処理品)は、アルギニンの結晶表面に硬化ナタネ油が乾式コーティングされたことで、アルギニンの表面にある凹凸が消失し、滑らかな粒子が形成されている。すなわち、アルギニンは疎水性物質である硬化ナタネ油で均質にコーティングされていた。
また、同様にショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ・ジベヘネートで乾式コーティングを行ったアルギニン粒子も同様の滑らかな粒子表面を有していた。
【0022】
<打錠適性試験>
上記で得た疎水性物質で乾式コーティングされたアルギニン粉末を用いて打錠適性試験を行った。それぞれを実施例1~6とした。
なお比較のため、比較例として比較例1:アルギニン単独、比較例2:アルギニンと硬化ナタネ油混合物(アルギニン粉末90質量%と硬化ナタネ油粉末10質量%の混合物)、比較例3:アルギニン粉末90質量%と硬化ナタネ油粉末10質量%の混合物をピンミル粉砕機で粉砕した粉砕物。それぞれ打錠試験を行った。
1.打錠条件
疎水性物質による乾式コーティング粒子及び混合粉末を、そのまま打錠試料として用いて錠剤(実施例1~6、比較例1~3)を調製した。錠剤の打錠成形は、単発式打錠機N-30E(岡田精工株式会社製)により、錠剤形状8mm、錠剤重量200mg、打錠圧力1000kgfにて実施した。
【0023】
2.錠剤硬度の測定
得られた錠剤は、スピードチェッカーTS-75N(岡田精工株式会社製)を用いて錠剤硬度を測定した。
【0024】
錠剤硬度の測定結果を下記の表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
実施例1~6の錠剤はいずれも賦形剤を配合しなくとも錠剤として成形可能であった。またキャッピングなどの成形不適となるようなトラブルは発生しなかった。特に実施例1は、賦形剤を配合しないにも関わらず、錠剤硬度9.3kgfを示した。これは錠剤として流通するためには十分な錠剤硬度を有していた。
【0027】
<吸湿性試験>
実施例1~6、打錠成形が可能であった比較例2、比較例3の錠剤を40℃75%RHに調整したインキュベーター中に2時間静置し、錠剤の変形を観察した。
実施例1、2、5、6の錠剤は変形やひび割れは発生しなかった。実施例3、4の錠剤は軽度のひび割れが観察された。
一方比較例2及び比較例3の錠剤は、崩壊した。
この試験から、本発明のアルギニン90質量%を含有する実施例1~6の錠剤は、吸湿性が抑制され錠剤の変形が抑制されているか、或いは全く発生しないことが明らかである。このような高濃度アルギニン含有の打錠錠剤が吸湿によって変形しないことは、従来の技術からは全く考えられないことである。この効果は、アルギニン粉末の粒子を疎水性の物質で乾式コーティングしたアルギニン粉末を使用したことによるものと考えられる。
【0028】
<アルギニン10質量%含有錠剤の調製と吸湿性試験の実施>
実施例1~6の錠剤を調製すると同様の打錠条件で、賦形剤として乳糖を用いてアルギニン10、20、30、40、50、60質量%を含有する錠剤を調製した。これをそれぞれ実施例7~12とした。またアルギニン粉末と結晶セルロースを粉混合し、打錠した比較例の錠剤(比較例4~9)を調製した。
得られた錠剤を、同様に40℃75%RHに調整したインキュベーター中に6時間静置し、錠剤の変形を観察した。実施例7~12の錠剤は全く変形やひび割れが発生しなかったが、比較例4~9の錠剤は、いずれも顕著なひび割れが観察された。
図1
図2