(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】コイン搬送ユニットおよびそれを用いたコイン処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/10 20190101AFI20230123BHJP
【FI】
G07D11/10
(21)【出願番号】P 2019040837
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100192692
【氏名又は名称】谷 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】川原 豊
(72)【発明者】
【氏名】上村 和也
(72)【発明者】
【氏名】志原 開
(72)【発明者】
【氏名】渕 賢太
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-105780(JP,A)
【文献】特開2008-146291(JP,A)
【文献】特開2002-260047(JP,A)
【文献】特開2005-025673(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128041(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0203664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-3/16
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを搬送するコイン搬送ユニットであって、
前記コインを載置して搬送する無端環状式の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトのテンションを保持するように配置され、モータを用いて当該搬送ベルトを駆動させる少なくとも2つのプーリと、
前記少なくとも2つのプーリのうち1つのプーリに接続され、当該プーリの回転に伴って回転する回転板と、
前記回転板の回転に連動して回転する回転体と、
前記回転体の回転軸の中心から所定距離だけ外周側に離れた位置から、前記搬送ベルトの長手方向に沿って延びる棒と、
当該搬送ベルトに載置されたコインが当該搬送ベルトの領域外に出ないように、前記搬送ベルトの幅方向の両側に配置される側部壁と、
当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送路の始点近傍に、前記側部壁に略垂直に配置される底部壁とを備え、
前記少なくとも2つのプーリと前記回転体との回転方向は同一であり、
前記回転板と前記回転体との間に、少なくとも1つの他の回転板または回転体を、さらに備え、
前記回転体は、前記回転板の回転に伴って、前記少なくとも1つの他の回転板または回転体を介して連動し、
前記棒は、前記回転体との連結位置において、当該回転体に対して可回動に連結されており、前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作
し、
前記棒において前記連結位置と当該棒の先端との間を支持する支持部を、さらに備え、
前記支持部は、前記開口部の下端であることを特徴とするコイン搬送ユニット。
【請求項2】
前記開口部は、前記棒が突出する方向に向かって先細りのテーパー形状を有することを特徴とする請求項1に記載のコイン搬送ユニット。
【請求項3】
前記棒が前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作する際に、前記棒の先端は前記搬送ベルトから遠ざかる方向に動作するように構成されていることを特徴とする、請求項1
又は請求項2に記載のコイン搬送ユニット。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送方向に対して上方に傾斜していることを特徴とする、請求項1乃至請求項
3のいずれかに記載のコイン搬送ユニット。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、当該搬送ベルトに載置されたコインの滑落を防止する突起部を含むことを特徴とする、請求項
4に記載のコイン搬送ユニット。
【請求項6】
前記底部壁は、前記突起部を通過させる通過口を含むことを特徴とする、請求項
5に記載のコイン搬送ユニット。
【請求項7】
コインの投入および返却可能なコイン処理装置であって、コインを受け入れるコイン受入部と、
前記受入部によって受け入れられたコインを収納するコイン収納部と、
前記収納部に収納されたコインを送出するコイン送出部と、
前記コイン送出部によって送出されたコインを搬送するコイン搬送ユニットと、
前記コイン搬送ユニットを経由してコインを返却するコイン返却部と、を備え、
前記コイン搬送ユニットは、
前記コインを載置して搬送する無端環状式の搬送ベルトと、
前記搬送ベルトのテンションを保持するように配置され、モータを用いて当該搬送ベルトを駆動させる少なくとも2つのプーリと、
前記少なくとも2つのプーリのうち1つのプーリに接続され、当該プーリの回転に伴って回転する回転板と、
前記回転板の回転に連動して回転する回転体と、
前記回転体の回転軸の中心から所定距離だけ外周側に離れた位置から、前記搬送ベルトの長手方向に沿って延びる棒と、
当該搬送ベルトに載置されたコインが当該搬送ベルトの領域外に出ないように、前記搬送ベルトの幅方向の両側に配置される側部壁と、
当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送路の始点近傍に、前記側部壁に略垂直に配置される底部壁とを備え、
前記少なくとも2つのプーリと前記回転体との回転方向は同一であり、
前記回転板と前記回転体との間に、少なくとも1つの他の回転板または回転体を、さらに備え、
前記回転体は、前記回転板の回転に伴って、前記少なくとも1つの他の回転板または回転体を介して連動し、
前記棒は、前記回転体との連結位置において、当該回転体に対して可回動に連結されており、前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作
し、
前記棒において前記連結位置と当該棒の先端との間を支持する支持部を、さらに備え、
前記支持部は、前記開口部の下端であることを特徴とするコイン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ベルトを用いてコインを搬送する際に生じるコインブリッジ現象を解消するためのコイン搬送ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スロットマシン等の遊技機、自動販売機、硬貨識別(選別)機、および金融機関等に設置されている現金自動預け払い機(ATM)等、コインを投入し、それらを蓄蔵したり、返却したりするコイン処理装置がある。
【0003】
このようなコイン処理装置は、投入されたコインおよび返却するコインを搬送ベルトを用いて搬送する機構を含むが、一度に大量のコインが搬送ベルトに載置される場合等に、搬送ベルトの両側に配置される側壁部の間に、複数枚のコインが堆積することによってブリッジを形成してしまう。その結果、当該コインは、搬送ベルトの搬送路に載置されずに当該コイン処理装置内に残留してしまうという問題がある(コインブリッジ現象)。
【0004】
このような問題に対応するために、コインが載置される箇所を振動させて、ブリッジの発生を回避し、または発生してしまったブリッジを解消しようとする硬貨投出装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている硬貨投出装置は、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりする駆動モータを備えているため、当該駆動モータを駆動させるための駆動機構が別途必要となる。その結果、当該硬貨投出装置は、複雑な駆動機構を備え、大型化してしまうという問題点がある。
【0007】
それ故に、本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的の1つは、簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができるコイン搬送ユニットおよびそれを用いたコイン処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。なお、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために図面に示されている符号等を付記する場合があるが、本発明の各構成要素は、図面に示されているものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0009】
本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、コインを載置して搬送する無端環状式の搬送ベルトと、前記搬送ベルトのテンションを保持するように配置され、モータを用いて当該搬送ベルトを駆動させる少なくとも2つのプーリと、前記少なくとも2つのプーリのうち1つのプーリに接続され、当該プーリの回転に伴って回転する回転板と、前記回転板の回転に連動して回転する回転体と、前記回転体の回転軸の中心から所定距離だけ外周側に離れた位置から、前記搬送ベルトの長手方向に沿って延びる棒と、当該搬送ベルトに載置されたコインが当該搬送ベルトの領域外に出ないように、前記搬送ベルトの幅方向の両側に配置される側部壁と、当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送路の始点近傍に、前記側部壁に略垂直に配置される底部壁とを備え、前記棒は、前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、棒が搬送ベルトの駆動を利用するため、簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記棒が前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作する際に、前記棒の先端は前記搬送ベルトから遠ざかる方向に動作するように構成されていることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、棒の先端部が下から上に向かってコインをすくい上げるような動作をすることになるため、より効果的にブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0011】
また、好ましくは、前記回転板と前記回転体との間に、少なくとも1つの他の回転板または回転体を、さらに備え、前記回転体は、前記回転板の回転に伴って、前記少なくとも1つの他の回転板または回転体を介して連動することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、プーリから離れた位置であっても、簡易な構成で、プーリの回転を利用して前記棒を動作させることができる。
【0012】
また、好ましくは、前記棒は、前記回転体との連結位置において、当該回転体に対して可回動に連結されており、前記棒において前記連結位置と当該棒の先端との間を支持する支持部を、さらに備え、前記少なくとも2つのプーリと前記回転体との回転方向は同一であることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、前記棒が支持部に当接する点を支点として、当該棒の先端が跳ね上がるような動作をするため、より効果的にブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0013】
また、好ましくは、前記支持部は、前記開口部の下端であることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、開口部が支持部を兼ねることができるため、より簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0014】
また、好ましくは、前記搬送ベルトは、当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送方向に対して上方に傾斜していることを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、コインを返却するための返却口を利用者がコインを取り出し易い位置に設定することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記搬送ベルトは、当該搬送ベルトに載置されたコインの滑落を防止する突起部を含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、当該搬送ベルトの搬送路に載置されて搬送されるコインが滑落することを防止することができる。
【0016】
また、好ましくは、前記底部壁は、前記突起部を通過させる通過口を含むことを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットは、前記突起部をスムーズに前記底部壁を通過させることができる。
【0017】
また、本発明の一局面に係るコイン処理装置は、コインの投入および返却可能なコイン処理装置であって、コインを受け入れるコイン受入部と、前記受入部によって受け入れられたコインを収納するコイン収納部と、前記収納部に収納されたコインを送出するコイン送出部と、前記コイン送出部によって送出されたコインを搬送するコイン搬送ユニットと、前記コイン搬送ユニットを経由してコインを返却するコイン返却部と、を備え、前記コイン搬送ユニットは、前記コインを載置して搬送する無端環状式の搬送ベルトと、前記搬送ベルトのテンションを保持するように配置され、モータを用いて当該搬送ベルトを駆動させる少なくとも2つのプーリと、前記少なくとも2つのプーリのうち1つのプーリに接続され、当該プーリの回転に伴って回転する回転板と、前記回転板の回転に連動して回転する回転体と、前記回転体の回転軸の中心から所定距離だけ外周側に離れた位置から、前記搬送ベルトの長手方向に沿って延びる棒と、当該搬送ベルトに載置されたコインが当該搬送ベルトの領域外に出ないように、前記搬送ベルトの幅方向の両側に配置される側部壁と、当該搬送ベルトにおける前記コインの搬送路の始点近傍に、前記側部壁に略垂直に配置される底部壁とを備え、前記棒は、前記底部壁に設けられた開口部から突出するように動作することを特徴とする。
かかる構成により、本発明の一局面に係るコイン処理装置は、棒が搬送ベルトの駆動を利用するため、簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができるコイン搬送ユニットを搭載することができる。
【0018】
さらに、上述した本発明の一局面に係るコイン搬送ユニットおよびコイン処理装置が行うそれぞれの処理は、一連の処理手順を与えるコイン搬送方法およびコイン処理方法として捉えることができる。この方法は、一連の処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムの形式で提供される。このプログラムは、所定のサーバからダウンロードする形態で、プログラムが格納された所定のサーバにインターネット経由でアクセスする形態で、もしくはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された形態で、コンピュータに導入されてもよい。また、上述した本発明の一局面に係るコイン送出ユニットおよびコイン処理装置を構成する一部または全部の機能ブロックは、集積回路であるLSI(Large-Scale Integration)等として実現されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができるコイン搬送ユニットおよびそれを用いたコイン処理装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイン処理装置10を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコイン処理装置10の内部構造を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の内部構造を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の内部構造を、
図4とは異なる角度から示す斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700において、棒760が動作する様子を示す遷移図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700における、棒760の動作を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0022】
<コイン処理装置の概要>
図1は、本発明の一実施形態に係るコイン処理装置10を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係るコイン処理装置10の内部構造を示す図である。
図2において、コイン処理装置10は、コイン受入部100と、コイン識別部200と、コイン選別部300と、コイン保留部400と、コイン収納部500と、コイン送出部600と、コイン搬送部700と、コイン返却部800とを備える。
【0023】
本実施形態では、コイン処理装置10は、2種の硬貨(例えば、10円硬貨および100円硬貨)を処理対象とするが、処理対象の硬貨は2種に限定されるものではなく、例えば、1種でも3種以上であっても構わないし、日本国硬貨でなく中国硬貨またはユーロ硬貨であっても構わない。
【0024】
コイン受入部100は、利用者が投入するコインを受け入れる。例えば、駅で切符を購入する場合等を想定すれば、利用者は、種々の硬貨を複数枚投入するが、コイン受入部100は、それらの硬貨を一括して受け入れ可能な構成であっても構わないし、1枚ずつ順に受け入れ可能な構成であっても構わない。
【0025】
コイン受入部100に受け入れられたコインは、典型的には、立直状態を維持しながら、搬送ベルト等によって順に1枚ずつ搬送される。
【0026】
コイン識別部200は、利用者によって投入されて搬送されてくるコインについて、当該コイン処理装置10において利用可能なコインか否かを識別する。例えば、当該コイン処理装置10が駅に設置された自動券売機であって、10円硬貨および100円硬貨のみを利用可能としている場合、コイン識別部200は、コイン受入部100に受け入れられたコインが10円硬貨か、100円硬貨か、またはそれ以外かを識別する。
【0027】
コイン識別部200には、例えば、光学センサ、赤外線センサ、または磁気センサの少なくとも1種またはこれらの組み合わせによって構成される硬貨識別センサが用いられる。コイン識別部200は、コインの大きさ、形状、重さ、孔の有無、および磁気的性質等を分析することによって、硬貨の真偽および種類などを識別する。
【0028】
ここでは、コイン識別部200によって、コインが10円硬貨および100円硬貨であると識別された場合、コイン選別部300へ搬送され、それ以外であると識別された場合、例えば、ダクト等(図示せず)またはコイン搬送部700を介してコイン返却部800へ送られて、利用者へ返却される。
【0029】
換言すれば、利用者によって投入されたコインが、当該コイン処理装置10において利用不可能な場合、コイン返却部800を介して利用者の元にそのまま返却される。当該コイン処理装置10において利用不可能なコインとは、典型的には、他国の硬貨、偽硬貨、真正硬貨であっても取り扱い対象としていない硬貨、その他何らかの原因でコイン識別部200によって利用不可能と識別されたコイン等である。
【0030】
コイン選別部300は、コイン識別部200によって利用可能と識別されたコインについて、さらに種類毎に選別する。コイン選別部300は、典型的には、コインの大きさに応じて通過可否な孔を備えていたり、シャッタを開閉したりすることにより、コインを種類毎に選別する。
【0031】
具体的には、コイン処理装置10において利用可能とされているコインが10円硬貨および100円硬貨である場合、100円硬貨よりも大きく10円硬貨よりも小さい孔を配置すればよいが、選別手段はこれに限定されるものではない。例えば、コインの大きさ、形状、重さ、孔の有無、および磁気的性質等に基づいて、さらには、上述したコイン識別部200での分析結果との組み合わせよって、選別しても構わない。
【0032】
コイン保留部400は、コイン選別部300によって選別されたコインを一時的に保留する。
【0033】
例えば、当該コイン処理装置10が駅に設置された自動券売機で、利用者が切符を購入しようとする場合、利用者は、所望の切符を購入するために必要な分だけ硬貨を投入した後に、購入ボタンを押下することにより、切符の購入を決定する。一方、利用者は、硬貨を投入した後に切符の購入を中断する場合、返却ボタンを押下することにより、既に投入した硬貨の返却を要求する。
【0034】
利用者によって投入されたコインは、コイン受入部100によって受け入れられ、順に、コイン識別部200およびコイン選別部300を介してコイン保留部400まで送られてくる。それらのコインは、コイン収納部500に即時に収納されず、コイン収納部500の前段に配置されているコイン保留部400によって、利用者が最初の硬貨の投入を開始してから、購入するかまたは中断するかが決定されるまで、保留される。
【0035】
購入が決定された場合、コイン保留部400によって保留されていたコインは、コイン収納部500に収納され、中断(返却)が決定された場合、例えば、ダクト等(図示せず)またはコイン搬送部700を介してコイン返却部800へ送られて、利用者へ返却される。
【0036】
なお、コイン保留部400は、コイン選別部300によって選別されたコインが混在しないように保留しており、具体的には、選別されたコイン種類毎の領域を備えている。
【0037】
コイン収納部500は、コイン種類毎にコイン収納部を備えており、コイン保留部400から送られてくるコインを、コイン種類毎に収納する。ここでは、10円硬貨と100円硬貨をそれぞれの収納部において収納している。
【0038】
なお、自動販売機などにおいては、利用者へお釣りを返却する場合があるため、コイン収納部500にお釣り用の硬貨を事前に収納していても構わない。
【0039】
コイン送出部600は、コイン収納部500に収納されているコインを取り込んで送出する。典型的には、自動販売機などにおいて、利用者へお釣りを返却する場合、CPU等の制御部(図示せず)からの指示に基づいて、コイン収納部500に収納されている各硬貨について、それぞれ必要な枚数分だけ送出する。
【0040】
なお、コイン送出部600は、コイン収納部500に多数収納されているコインを、回転盤を用いて1枚ずつ取り込みながら、確実に1枚ずつ送出するようにコイン送出ユニットとして構成されている。
【0041】
コイン搬送部700は、コイン収納部500に収納されているコインをコイン返却部800まで搬送する。例えば、当該コイン処理装置10が駅に設置された自動券売機で、利用者が所望の切符を購入した際に、利用者の投入金額に対してお釣りを返却する場合がある。この場合、コイン収納部500に収納されている各硬貨について、それぞれ必要な枚数分(お釣り額)だけコイン送出部600を介して送出し、コイン搬送部700は、当該コインをコイン返却部800まで搬送する。コイン搬送部700は、典型的には、搬送ベルトを駆動することによって、当該搬送ベルトの搬送路に載置されたコインを途中で搬送が滞ることなく、確実に、コイン返却部800まで搬送するようにコイン搬送ユニットとして構成されている。コイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の詳細な構成については後述する。
【0042】
お釣りについては、例えば、CPU等の制御部(図示せず)が投入金額および購入金額に基づいて金額を算出し、コイン収納部500に収納されている各硬貨のうち、それぞれ必要な枚数を判断する。そして、制御部は、各硬貨について必要な枚数を送出するようにコイン送出部600を動作させ、さらには、各種センサ等を配置することによって、送出されるコインを管理および確認しても構わない。
【0043】
コイン返却部800は、典型的には、利用者がコインを取り出すための取出口として構成されている。ここで、コイン返却部800は、1つの取出口であっても構わないし、複数の取出口を設けていても構わない。
【0044】
例えば、投入されたコインがコイン識別部200によって利用不可能であると識別された場合、およびコイン保留部400によって保留されていたコインが返却される場合は、利用者が投入したコインをそのまま返却するため、1つの取出口とする。利用者にお釣りを返却する必要が生じてコイン収納部500に収納されているコインが返却される場合には、別途、異なる取出口を設けるようにしても構わない。
【0045】
<コイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の詳細について>
次に、本発明の一実施形態に係るコイン処理装置10におけるコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700について、より詳しく具体的に説明する。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の斜視図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の内部構造を示す図である。
【0047】
図4において、コイン搬送部(コイン搬送ユニット)700は、搬送ベルト710と、モータ720と、3つのプーリ730a~730cと、回転板740a~740cと、回転体750と、棒760と、側部壁770と、底部壁780とを備える。
【0048】
搬送ベルト710は、無端環状式のベルトであって、当該搬送ベルト710にコインが載置されて搬送される。
【0049】
モータ720は、搬送ベルト710を駆動させるが、具体的には、プーリ730aを回転させることによって搬送ベルト710が駆動する。
【0050】
3つのプーリ730a~730cは、搬送ベルト710のテンションを保持するように配置されており、上述したようにモータ720によってプーリ730aが回転し、搬送ベルト710が駆動する。そして、プーリ730bおよびプーリ730cも回転することによって搬送ベルト710がスムーズに駆動し、当該搬送ベルト710に載置されたコインがコイン返却部800まで搬送される。
【0051】
回転板740aは、プーリ730cと同軸に接続されており、当該プーリ730cの回転に伴って回転する。そして、回転板740aに外周が隣接するように配置される回転板740bは、当該回転板740aの回転に伴って回転し、回転板740bに外周が隣接するように配置される回転板740cは、当該回転板740bの回転に伴って回転する。典型的には、回転板740a~回転板740cは、それぞれが噛み合う歯車等である。
【0052】
ここで、回転板740aは、プーリ730cに接続されているため、プーリ730cの回転方向と同一の回転方向(搬送ベルト710の搬送方向)であり、回転板740bは、回転板740aの回転方向とは逆の回転方向であり、回転板740cは、回転板740aの回転方向と同一の回転方向である。
【0053】
回転体750は、回転板740cに同軸に接続されており、当該回転板740cの回転に伴って回転する。
【0054】
棒760は、回転体750の回転軸の中心から所定距離だけ外周側に離れた位置から、搬送ベルト710の長手方向に沿って延びるように形成されている。なお、棒760は、回転体750との連結位置Pにおいて、可回動に連結されている。棒760の動作についての詳細は、後述する。
【0055】
側部壁770は、搬送ベルト710に載置されたコインが当該搬送ベルト710の領域外に出ないように、搬送ベルト710の幅(短手)方向の両側に配置されている。
【0056】
底部壁780は、搬送ベルト710におけるコインの搬送路の始点近傍に、側部壁770に略垂直に配置されており、コイン送出部600を介して送られてくるコインを受け止めるように形成されている。
【0057】
また、回転体750は、搬送ベルト710のうちコインが載置される搬送路の領域外に配置されており、換言すれば、底部壁780の裏面(搬送ベルト710のコイン搬送路とは逆)側に配置されている。棒760は、回転体750に接続されていることから、当該棒も底部壁780の裏面側に配置されているが、底部壁780には、棒760の先端が突出可能なように開口部781が形成されている。
【0058】
本実施形態において、コイン返却部800は、利用者がコインを取り出し易い位置に設定されているため、搬送ベルト710は、コインの搬送方向に位置するコイン返却部800に対して上方に傾斜している。搬送ベルト710に載置されて搬送されるコインの滑落を防止するために、搬送ベルト710には、所定間隔毎に複数の突起部711が設けられている。また、搬送ベルト710は、例えば、ゴムなどの摩擦抵抗が大きい素材を用いることが好ましい。
【0059】
図5は、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700の内部構造を、
図4とは異なる角度から示す斜視図である。なお、
図5において、
図4に示した同一の構成については、同一の参照符号を付すことによって、詳細な説明は省略する。ここでは、主に、
図4を用いて詳しく説明できなかった構成について、詳しく説明する。
【0060】
底部壁780には、棒760を突出可能とするための開口部781、および搬送ベルト710が駆動して突起部711が底部壁780を通過するための通過口782が形成されている。
【0061】
搬送ベルト710およびプーリ730cの回転に伴って回転板740aが回転し、さらに回転板740bおよび740cを介して回転体750が回転することによって、当該回転体750に連結されている棒760も回転する。そして、棒760の回転に応じて、当該760の先端は、底部壁780の開口部781から突出するように動作する。
【0062】
このように、棒760の先端が、搬送ベルト710の回転に連動して、底部壁780の開口部781から突出するように動作することによって、搬送ベルト710における底部壁780近傍に送出されるコインを突くように当接する。
【0063】
これにより、搬送ベルト710の両側に配置される側部壁770の間に、複数枚のコインが堆積することによってブリッジが形成されてしまう状況であっても、ブリッジの発生を回避し、または発生してしまったブリッジを解消することができる。
【0064】
なお、ここでは、開口部781は、棒760の先端部分が通過可能なように棒760の先端部分の形状に応じて形成されているが、開口部781の形状はこれに限定されるものではなく、棒760の先端部分が通過可能となる構成であれば何でもよい。例えば、棒760を通過可能とするスリットのようなものであっても構わないし、棒760の先端部分が枝分かれ形状であれば、それを通過可能となる構成にすればよい。
【0065】
さらに開口部781の大きさは、棒760の軌道に応じて変化し、例えば、棒760が底部壁780をより大きな軌道を描いて突出する場合は、開口部781は当該軌道に応じて大きくなる。
【0066】
以下、棒760の動作について具体的に詳細に説明する。
図6は、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700において、棒760が動作する様子を示す遷移図である。
図6において、搬送ベルト710の駆動に伴って棒760が回転体750の外周を回転しながら、棒760の先端部が開口部781から突出するように動作している。
【0067】
図7は、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700における、棒760の動作を示す拡大図である。
図7において、回転体750が回転すると、当該回転体750との連結位置Pにおいて可回動に連結された棒760は、開口部781から当該棒760の先端を突出させながら、当該回転体750の回転軸を中心に回転する。
【0068】
より具体的には、棒760は、回転体750の回転軸の中心Oから所定距離だけ外周側に離れた連結位置Pで連結されており、当該連結位置において棒760は、回転体750に対して可回動に構成されている。これにより、回転体750の回転に伴って当該回転体750の外周を棒760は回転するが、ある程度、一定方向への突出運動に変換することができている。
【0069】
中心Oと連結位置Pとの距離は、回転体750の大きさ、棒760の長さ、棒760の突出距離などに応じて設定すればよいが、中心Oと連結位置Pとの距離を大きくすれば、棒760の突出の程度を大きくすることができる。
【0070】
棒760は、開口部781の下端である支持部Fに当接して、支持されながら突出運動を行う。例えば、棒760と回転体750との連結位置Pが回転体750の外周のうちの上端位置である場合、次に、回転体750が回転すると、当該回転体750の回転に伴って棒760も回転体750の外周を回転する。そして、連結位置Pは、当該下方向に変位しながら、開口部781に近づく方向に移動した後、離れる方向に移動する。
【0071】
この時、連結位置Pは、上述したように下方向に変位するが、当該連結位置Pにおいて、棒760は回転体750に対して可回動に連結されているため、支持部Fを介して連結位置Pの反対側である棒760の先端は、当該支持部Fを支点として、上方向に変位する。つまり、開口部781から突出される棒760の先端は、主に、搬送ベルト710から遠ざかる方向(上方)に動作するように構成されている。
【0072】
このように、棒760が開口部781から突出するように動作する際は、棒760の先端部が下から上に向かってコインをすくい上げるような動作をすることになる。その結果、搬送ベルト710に載置されるコインを押さえ付けることなく、より効果的にブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0073】
以上のように、本発明の一実施形態に係るコイン搬送部(コイン搬送ユニット)700によれば、棒760が搬送ベルト710の駆動を利用するため、簡易な構成で、ブリッジの発生を回避したり、発生したブリッジを解除したりすることができる。
【0074】
なお、本実施形態においてプーリは3つ設けられているが、プーリは、モータ720によって駆動するプーリ(本実施形態では730a)と、コイン搬送路の始点近傍に設けられるプーリ(本実施形態では730b)との少なくとも2つが設けられていればよい。一方、搬送ベルト710の長さ、幅、材質、およびコイン搬送路の配置に応じて、4つ以上のプーリが設けられても構わない。また、回転板の数によって、棒760の回転方向を所望の回転方向に設定すればよいし、さらに、回転板は、典型的には、歯車であり、当該歯車の歯数に応じて回転速度を調整することができる。
【0075】
また、本実施形態において、突起部711は、処理対象のコインの直径よりも小さい間隙を有して横並び(搬送ベルト710の幅方向)に、2つずつ設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、棒760の動作の妨げにならない配置であれば、1つでも構わないし、3つ以上、設けられても構わない。そして、底部壁780における通過口782も、当該突起部711の個数および形状に応じて構成すればよい。
【0076】
なお、本実施形態では、処理対象として硬貨等のコインを例に挙げて説明したが、処理対象はコインに限定されるものではなく、例えば、スロットマシン等の遊技機で使用されるメダル、および、カジノで使用されるチップ等であっても構わない。
【0077】
以上、本発明の各実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、スロットマシン等の遊技機、自動販売機、硬貨識別(選別)機、および金融機関等に設置されている現金自動預け払い機(ATM)等、コインを投入し、それらを蓄蔵したり、返却したりするコイン処理装置に利用可能であって、特に、コインのブリッジ現象を解消しつつコインを搬送するコイン搬送ユニット等に有用である。
【符号の説明】
【0079】
10 コイン処理装置
100 コイン受入部
200 コイン識別部
300 コイン選別部
400 コイン保留部
500 コイン収納部
600 コイン送出部
700 コイン搬送部(コイン搬送ユニット)
710 搬送ベルト
711 突起
720 モータ
730a~c プーリ
740a~c 回転板
750 回転体
760 棒
770 側部壁
780 底部壁
781 開口部
782 通過口
P 連結位置
O 回転体750の回転軸の中心
F 支持部
800 コイン返却部