(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230123BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20230123BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/40
B60N2/64
(21)【出願番号】P 2019069952
(22)【出願日】2019-04-01
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 真之亮
(72)【発明者】
【氏名】谷口 彰紀
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210145(JP,A)
【文献】特開平8-392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/40-48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとヘッドレストとを備えた車両用シートであって、
前記シートバックは、
前記シートクッションに着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部と、
前記着座した搭乗者の背中を両側で支える
左右一対の土手部と
、
前記背もたれ部を構成するウレタンパッドと前記左右一対の土手部を構成するウレタンパッドとを支持する前記左右一対の土手部に対応する左右一対の直線部分を備えたフレームと、
前記フレームの前記左右一対の直線部分に固定された左右一対の金属製のプレートとを備え、
前記土手部を構成するウレタンパッドは前記背もたれ部を構成するウレタンパッドに対して前方に突出した形状に形成されており、前記土手部を構成する前記ウレタンパッドの前記前方に突出した形状に形成された部分の裏面側は前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドの裏面側に対して凹形状に形成されており、前記土手部を構成する前記ウレタンパッドの裏面側の前記凹形状に形成された部分には、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドの裏面側と同じ高さの面を有して前記凹形状に形成された部分に伸び
て前記金属製のプレートに当接する突起部が形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1記載の車両用シートであって、前記土手部は前記背もたれ部の両側に一対形成されており、前記ウレタンパッドの裏面側と同じ面を有して前記凹形状に形成された部分に伸びる前記突起部が前記背もたれ部の両側に一対形成された前記土手部に対応して対になって形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2記載の車両用シートであって、前記突起部が複数対形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用シートであって、前記突起部は、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドよりも硬い材料で形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用シートであって、前記突起部と前記土手部を構成する前記ウレタンパッドとは、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドよりも硬い材料で形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
シートクッションとシートバックとヘッドレストとを備えた車両用シートであって、
前記シートバックは、
前記シートクッションに着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部と、
前記着座した搭乗者の背中を両側で支える左右一対の土手部と、
前記背もたれ部を構成するウレタンパッドと前記左右一対の土手部を構成するウレタンパッドとを支持する前記左右一対の土手部に対応する左右一対の直線部分を備えたフレームと、
前記フレームの前記左右一対の直線部分に固定された左右一対の金属製のプレートと、
前記左右一対の金属製のプレートに懸架されて前記背もたれ部を支持するバネと、
前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドを前方に押し出すランバープレートと、
を備え、
前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドには、前記フレームに固定された前記左右一対の金属製のプレートに当接する左右一対の突起部が形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項6記載の車両用シートであって、前記左右一対の突起部が、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドの複数の個所に形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項7記載の車両用シートであって、前記左右一対の突起部は、前記ランバープレートで前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドを前方に押し出したときに、前記フレームに固定された前記左右一対の金属製のプレートに当接することにより、前記左右一対の土手部が外側に広がるのを阻止することを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1項に記載の車両用シートであって、前記左右一対の突起部は、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドよりも硬い材料で形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項10】
請求項6乃至8の何れか1項に記載の車両用シートであって、前記左右一対の突起部と前記土手部を構成する前記ウレタンパッドとは、前記背もたれ部を構成する前記ウレタンパッドよりも硬い材料で形成されていることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に、内部にランバーサポート機構を備えたシートバックを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートバックは座部と背当て部とから構成されて、背当て部の両側縁にサイドサポートが,また背当て部の中央下部にランバーサポートが、それぞれ備えられている自動車用シートが採用されている。
【0003】
このような自動車用シートのシートバックとして、特許文献1には、背当て部の両側縁にサイドサポートをまた背当て部の中央下部にランバーサポートをそれぞれ備え、サイドサポートの芯材を形成するサイドワイヤが、その下端にて背当て部を構成するフレームの両側縁に対して揺動可能に取り付けられており、ランバーサポートの芯材を形成するランバーサポート板が、双方のサイドワイヤの間でサイドワイヤに対して一体的に固定されているように構成した自動車用シートが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、枠状パックフレームの左右両側部に、前方に突設した再度サポートワイヤを設けると共に左右両端部に渉ってばね材を張架し、且つ該ばね材上より両サイドサポートワイヤ上に一枚状の発泡材製パッドを載置して左右に隆起状の再度サポートワイヤを有する車両用シートにおいて、前記サイドサポートワイヤの内側に位置するバットの左右に、クッション性調節用の切り各部を設けてなることを特徴とする車両用シートについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平06-000187号公報
【文献】実開昭59-052972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているシートバックの構成において、通常、シートバックの背あて部は、その両側の側部に対して後退した状態にある。この状態から、ランバーサポートを前方に突き出させてシートバックの背あて部を搭乗者の背中に押し当てると、シートバックの背あて部が前方に押し出されるが、背あて部の両側の側部が両側に広がって、シートバックが大きく変形してしまう。
【0007】
一方、特許文献2には、シートバックのパットの中央部左右に切り欠き部を設けて、パパッドの中央部と着座者の側部を支持するパットの側部との一体性を小にして、パットの中央部を動きやすくしてクッション性を良くした構造が記載されているが、ランバーサポートを設けた構成には記載されていない。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、内部にランバーサポート機構を備えたシートバックを有する車両用シートにおいて、ランバーサポート機構を作動させてシートバックの背あて部を搭乗者の背中に押し当てた状態であっても背あて部の左右の側部が両側に広がらずに、シートバックの変形を抑えることができるシートバックを備えた車両用シートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明では、シートクッションとシートバックとヘッドレストとを備えた車両用シートにおいて、シートバックは、シートクッションに着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部と、着座した搭乗者の背中を両側で支える土手部と、背もたれ部を構成するウレタンパッドと左右一対の土手部を構成するウレタンパッドとを支持する左右一対の土手部に対応する左右一対の直線部分を備えたフレームと、フレームの左右一対の直線部分に固定された左右一対の金属製のプレートとを備え、土手部を構成するウレタンパッドは背もたれ部を構成するウレタンパッドに対して前方に突出した形状に形成されており、土手部を構成するウレタンパッドの前方に突出した形状に形成された部分の裏面側は背もたれ部を構成するウレタンパッドの裏面側に対して凹形状に形成されており、土手部を構成するウレタンパッドの裏面側の凹形状に形成された部分には、背もたれ部を構成するウレタンパッドの裏面側と同じ高さの面を有して凹形状に形成された部分に伸びて金属製のプレートに当接する突起部を形成した。
【0010】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、シートクッションとシートバックとヘッドレストとを備えた車両用シートにおいて、シートバックは、シートクッションに着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部と、着座した搭乗者の背中を両側から支える左右一対の土手部と、背もたれ部を構成するウレタンパッドと土手部を構成するウレタンパッドとを支持する左右一対の土手部に対応する一対の直線部分を備えたフレームと、フレームの一対の直線部分に固定された一対の金属製のプレートと、一対の金属製のプレートに懸架されて背もたれ部を支持するバネと、背もたれ部を構成するウレタンパッドを前方に押し出すランバープレートとを備え、背もたれ部を構成するウレタンパッドには、フレームに固定された一対の金属製のプレートに当接する突起部を形成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ランバーサポート機構を備えたシートバックを有する車両用シートにおいて、ランバーサポート機構を作動させてシートバックの背あて部を搭乗者の背中に押し当てた状態であっても背あて部の左右の側部が両側に広がるのが抑制されるので、シートバックの変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用シートの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る車両用シートのシートバックのパイプを折り曲げて形成したフレームの外観を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る車両用シートの
図1におけるA-A断面矢視図である。
【
図4】本発明の実施例に係る車両用シートの
図3におけるB部の断面の拡大図である。
【
図5】本発明の実施例に係る車両用シートの
図4におけるC-C断面矢視図である。
【
図6】本発明の実施例に係る車両用シートの
図3におけるD-D断面矢視図である。
【
図7】本発明の実施例に係る車両用シートのランバープレートの部分における断面矢視図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る車両用シートのシートバックの板状部材を加工して形成したフレームの外観を示す斜視図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る車両用シートの
図8におけるD-D断面矢視図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る車両用シートの
図9におけるE部の断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、内部にランバーサポート機構を備えたシートバックを有する車両用シートにおいて、ランバーサポート機構を作動させてシートバックの背あて部を搭乗者の背中に押し当てた状態であっても、背あて部の左右の側部が両側に広がるのを阻止する構成にして、シートバックの変形を抑えることができるようにしたシートバックを備えた車両用シートである。
【0014】
より具体的には、シートバックのウレタンパッドに、サイドフレームに突き当たる部分を形成して、ランバーサポート機構を作動させてシートバックの背あて部を搭乗者の背中に押し当てた状態であっても、背あて部の左右の側部が両側に広がるのを阻止する構成にしたものである。
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。下記に説明する実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明するものであり,必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係る車両用シート100の外観を示す斜視図である。車両用シート100は、搭乗者が着座するシートクッション110、シートクッション110に着座した搭乗者が背中をもたれかけるシートバック120、シートクッション110に着座した搭乗者の頭部を保護するヘッドレスト130を備えている。
【0017】
シートクッション110は、着座部111と、着座部111の両側に形成されたシートクッション側の土手部112を備えている。一方、シートバック120は、シートクッション110に着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部121と、背もたれ部121の両側に形成されたシートバック側の土手部122を備えている。
【0018】
図2には、シートバック120を支えるシートバック側フレーム140の外観を示す。シートバック側フレーム140はU字型の金属製のパイプで形成され、U字型の左右の直線部分の間には、シートバック側フレーム140に装着されるシートバック側のウレタンパッドを押さえるバネ141が複数(
図2の場合は3個)懸架されている。バネ141は、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の直線部分に溶接などにより固定された左右一対の金属製のプレート143により支持されている。
【0019】
142はランバープレートで、図示していない駆動機構により、前後(
図2の状態では上下)に押し出され、シートバック側のウレタンパッドを部分的に前後させる。ランバープレート142は、テフロン(登録商標)などの樹脂で形成されている。
【0020】
144は、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の先端部付近を接続する接続プレートであり、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の先端部付近に溶接されて固定されている。シートバック側フレーム140は、U字型のパイプの左右の先端部付近が接続プレート144で接続されることにより、高い剛性を保つことができるので、シートバック側フレーム140に外力が加わっても、シートバック側フレーム140変形せずに一定の形状を保つことができる。
【0021】
図3は、車両用シートの
図1におけるA-A断面矢視図であり、シートバック120の背もたれ部121と両側に形成されたシートバック側の土手部122とで、シートバック側フレーム140を包み込むように成形されている状態を示す。シートバック120は、実際には、ウレタンパッドの表面が表皮でおおわれた構造を有しているが、本実施例においては、説明を簡単にするために、表皮部分を省略して表示する。
【0022】
図3において、背もたれ部121を形成するウレタンパッド(以下、背もたれ部のウレタンパッド121と記す)の裏側の面1211には、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の側に固定された左右一対の金属製のプレート143の間に懸架されているバネ141が当接しており、シートバック120に背中をもたれかけた搭乗者による負荷を支えるようになっている。
【0023】
図3において、123には背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211の側に形成した突起部で、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の側に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接するように、左右一対の金属製のプレート143に対応して左右に対になって形成されている。
【0024】
この突起部123が、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の側に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接している状態の拡大図を
図4に示す。
図4は、
図3の円Bで囲んだ部分の拡大図を示す。シートバック側の背もたれ部のウレタンパッド121に接続する土手部122は、背もたれ部のウレタンパッド121の、搭乗者が背をもたれかける側である表皮でおおわれている側と反対側の、シートバック側フレーム140に面する裏側の面1211に接続する土手部122は、シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の側に固定された左右一対の金属製のプレート143と干渉しないように、土手部122の内側の面1221は、背もたれ部のウレタンパッド121に対して線1212の位置から湾曲して、凹形状の面1221を形成している。
【0025】
これに対して、背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211の側に形成した突起部123は、端面1231が金属製のプレート143に当接しており、
図4で右方向への動きが規制されている。このように、突起部123が、金属製のプレート143に当接していることにより、突起部123が形成されている背もたれ部のウレタンパッド121は、
図4で右方向へ動くことができず、シートバック側の土手部122も
図4で右側に広がることがなくなる。
【0026】
即ち、本実施例においては、
図4に示したように、土手部122を構成するウレタンパッド(以下、土手部のウレタンパッド122と記す)は背もたれ部のウレタンパッド121に対して前方に突出した形状に形成されており、土手部のウレタンパッド122の前方に突出した形状に形成された部分の裏面側は背もたれ部のウレタンパッド121の裏面側に対して凹形状に形成されており、土手部のウレタンパッド122との裏面側の凹形状に形成された部分には、背もたれ部のウレタンパッド121の裏面側1211と同じ高さの面を有して凹形状に形成された面1221に伸びる突起部123が形成されている。
【0027】
図5には、背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211の側に形成した突起部123を
図4のC-C断面に沿った矢印の方向から見た図を示す。土手部のウレタンパッド122の内側の湾曲した面1221に、背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211から平坦に伸びた状態の突起部123が、シートバック側フレーム140に溶接などにより固定された金属製のプレート143に懸架されている複数のバネ141との干渉を避けるために、離散的に形成されている。
【0028】
背もたれ部のウレタンパッド121の突起部123の端面1231は、
図4に示すように、シートバック側フレーム140に溶接などにより固定された金属製のプレート143に当接して、端面1231が金属製のプレート143を超えて、それよりも外側に広がるのが抑えられている。
【0029】
図6には、
図3におけるD-D断面矢視図を示す。
図6に示した状態は、
図2に示したシートバック側フレーム140を、
図2の紙面(画面)の反対側から見た状態になる。
【0030】
シートバック側フレーム140のU字型のパイプの左右の側に固定された一対の金属製のプレート143の間に懸架されているバネ141とランバープレート142とは、背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211に当接している。この状態で、背もたれ部のウレタンパッド121の裏側の面1211から延びる突起部123は、その端面1231がシートバック側フレーム140に溶接などにより固定された左右一対の金属製のプレート143に当接しており、端面1231が
図6で左右方向に広がるのが抑えられている。
【0031】
シートバック120をこのような構成とすることにより、ランバープレート142を図示していない機構で前方(
図6で紙面の裏側の方向)に押し出すような力が背もたれ部のウレタンパッド121にかかり、
図7に示すように背もたれ部のウレタンパッド121の中央部分が前方に押し出されるような矢印方向の力Fがかかった場合、背もたれ部のウレタンパッド121に突起部123が形成されていなかった場合には、土手部のウレタンパッド122の内側に形成された湾曲した面1221がシートバック側フレーム140に溶接などにより固定された左右一対の金属製のプレート143に沿ってずり上がり、土手部のウレタンパッド122が外側に広がってしまう。
【0032】
これに対して、本実施例では、背もたれ部のウレタンパッド121に突起部123を形成したので、背もたれ部のウレタンパッド121の中央部分が前方に押し出されるような矢印方向の力Fがかかった場合に、突起部123の端面1231が、シートバック側フレーム140に溶接などにより固定された左右一対の金属製のプレート143に強く当接するだけで、それ以上外部に広がれないので、土手部のウレタンパッド122が外側に広がってしまうことが避けられる。
【0033】
すなわち、本実施例に係る車両用シート100のシートバック120においては、シートクッション110に着座した搭乗者が背中をもたれかける背もたれ部と、着座した搭乗者の背中を両側で支える左右一対の土手部と、背もたれ部を構成するウレタンパッド121と土手部を構成するウレタンパッド122とを支持する左右一対の土手部に対応する左右一対の直線部分を備えたシートバック側フレーム140と、シートバック側フレーム140の左右一対の直線部分に固定された左右一対の金属製のプレート143と、左右一対の金属製のプレート143に懸架されて背もたれ部121を支持するバネ141と、背もたれ部のウレタンパッド121を前方に押し出すランバープレート142とを備え、背もたれ部のウレタンパッド121には、シートバック側フレーム140に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接する左右一対の突起部123を形成したものである。
【0034】
本実施例によれば、背もたれ部のウレタンパッド121に形成した突起部123がシートバック側フレーム140に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接することにより、ランバー機構が作用して背もたれ部のウレタンパッド121が前方に押し出されたときに、背もたれ部のウレタンパッド121に接続する土手部のウレタンパッド122が外側に広がるのを防ぐことができ、シートバック120の変形を防止することができる。
【0035】
また、本実施例によれば、ランバー機構が作用して背もたれ部のウレタンパッド121が前方に押し出されたときに、背もたれ部のウレタンパッド121に接続する土手部のウレタンパッド122が外側に広がるのを防ぐために新たな部品を設ける必要がなく、シートバック120の構成をシンプルな構成にしたままで、土手部のウレタンパッド122が外側に広がってシートバック120の外観が変化するのを防止することができる。
【0036】
なお、上記に説明した実施例においては、シートバック側フレーム140をパイプで形成して、それに左右一対の金属製のプレート143を溶接して固定した構成について説明したが、シートバック側フレーム140を板材で形成して、左右一対の金属製のプレート143と一体に形成する構成としてもよい。
【0037】
[変形例1]
実施例1の第1の変形例として、背もたれ部のウレタンパッド121に形成した突起部123を、背もたれ部のウレタンパッド121よりも硬い材質で形成する。外形形状は実施例1で説明したものと同じであるので、図示を省略する。
【0038】
この場合、着座した搭乗者の背中が触れる部分の背もたれ部のウレタンパッド121と土手部のウレタンパッド122は、実施例1の場合と同様に柔軟な材料で形成されているので、着座した搭乗者に対しては、実施例1の場合と同様な快適性を提供することができる。
【0039】
その一方で、背もたれ部のウレタンパッド121の部分よりも硬い材料で形成された突起部123がシートバック側フレーム140に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接することにより突起部123の変形量を少なくすることができる。
【0040】
これにより、ランバー機構が作用して背もたれ部のウレタンパッド121が前方に押し出されたときに、背もたれ部のウレタンパッド121に接続する土手部のウレタンパッド122が外側に広がるのを防ぐことができ、実施例1に場合と比べて、更にシートバック120の変形を防止することができる。
【0041】
[変形例2]
実施例1の第2の変形例として、背もたれ部のウレタンパッド121に形成した突起部123と土手部のウレタンパッド122とを、背もたれ部のウレタンパッド121よりも硬い材質で形成する。外形形状は実施例1で説明したものと同じであるので、図示を省略する。
【0042】
この場合、着座した搭乗者の背中が触れる部分の背もたれ部のウレタンパッド121は実施例1の場合と同様に柔軟な材料で形成されているので、着座した搭乗者に対しては、実施例1の場合と同様な快適性を提供することができる。一方、土手部のウレタンパッド122は、背もたれ部のウレタンパッド121よりも硬い材料で形成されることになるが、土手部のウレタンパッド122は着座した搭乗者がメインに触れる部分ではないので、着座した搭乗者の快適性を損なうことはない。
【0043】
本変形例によれば、ランバー機構が作用して背もたれ部のウレタンパッド121が前方に押し出されたときに、背もたれ部のウレタンパッド121の部分よりも硬い材料で形成された突起部123がシートバック側フレーム140に固定された左右一対の金属製のプレート143に当接することにより、突起部123の変形量を少なくすることができ、これにより突起部123と同じ硬い材料で形成された土手部のウレタンパッド122が外側に広がるのを防ぐことができ、実施例1に場合と比べて、更にシートバック120の変形を防止することができる。
【実施例2】
【0044】
本発明の第2の実施例について、
図8乃至
図10を用いて説明する。実施例1と同じ部分に手いては同じ番号を付して説明の重複を避ける。実施例1と異なる点は、シートバック側フレームである。すなわち、実施例1においては、
図2に示したようなU字型の金属製のパイプでシートバック側フレーム140を形成していたのに対して、本実施例では、
図8に示すように、一対の板状部材から加工したサイドフレーム240を板状部材241と242とで接続した構造を有している。なお、
図8に示した構成では、実施例1で
図2に示したバネ141、ランバープレート142の表示を省略してある。
【0045】
図8の構成で、243は、
図1に示したシートクッション110の背もたれ部121の両側に形成されたシートバック側の土手部122を内部で支持するワイヤである。
【0046】
図9は、実施例1における
図3に対応する図で、車両用シートの
図1におけるA-A断面矢視図に相当する。シートバック120の背もたれ部121と両側に形成されたシートバック側の土手部122とで、サイドフレーム240を包み込むように成形されている状態を示す。シートバック120は、実際には、ウレタンパッドの表面が表皮でおおわれた構造を有しているが、本実施例においては、説明を簡単にするために、表皮部分を省略して表示する。
【0047】
図8においては、サイドフレーム240の側面を平坦な状態に示したが、実際には
図9にその断面を示すように、凹凸が形成されて、サイドフレーム240の強度が補強された構造を有している。
【0048】
図9において、123は背もたれ部のウレタンパッド121の裏側に形成した突起部で、サイドフレーム240に当接するように、左右一対のサイドフレーム240に対応して左右に対になって形成されている。
【0049】
この突起部123が、サイドフレーム240に当接している状態の拡大図を
図10に示す。
図10は、
図9の円Eで囲んだ部分の拡大図を示す。背もたれ部のウレタンパッド121の裏側に形成した突起部123は、端面1231がサイドフレーム240に当接しており、
図10で右方向への動きが規制されている。このように、突起部123が、サイドフレーム240に当接していることにより、実施例1の場合と同様に、突起部123が形成されている背もたれ部のウレタンパッド121は、
図10で右方向へ動くことができず、シートバック側の土手部122もワイヤ243でサポートされて
図10で右側に広がることがなくなる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
100・・・車両用シート 110・・・シートクッション 120・・・シートバック 121・・・背もたれ部 122・・・土手部 123・・・突起部 130・・・ヘッドレスト 140・・・シートバック側フレーム 141・・・バネ 142・・・ランバープレート 143・・・金属製のプレート 144・・・接続プレート 240・・・サイドフレーム 243・・・ワイヤ。