(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/72 20060101AFI20230123BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20230123BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230123BHJP
【FI】
B60N2/72
B60N2/68
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2019135346
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】埜嵜 博之
(72)【発明者】
【氏名】秋元 紀人
(72)【発明者】
【氏名】本多 正明
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066971(JP,A)
【文献】特開2019-064561(JP,A)
【文献】特開2019-010902(JP,A)
【文献】特開2017-043131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/72
B60N 2/68
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、シートバックと、を有し、
前記シートクッションは、
クッションフレームと、
前記クッションフレームの上に設けられたパッドと、を有し、
前記クッションフレームは、
サイドフレームと、
前記サイドフレームに取り付けられた前方パネルフレームと、
前記サイドフレームに取り付けられた後方パイプフレームと、
前記前方パネルフレームと前記後方パイプフレームとの間に設けられたばね部材と、
前記サイドフレームと前記ばね部材との間に設けられた支持部材と、を含み、
前記支持部材が取り付けられる前記サイドフレームの下側の部分は、前記支持部材が取り付けられていない部分と比較して、上側に湾曲した形状にされおり、
前記パッドの裏面は、前記サイドフレームと前記ばね部材との間において、前記支持部材によって支持される、
車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記支持部材は、第1端部と、第2端部と、前記第1端部に取り付けられた第1固定部と、前記第2端部に取り付けられた第2固定部と、を含み、
前記サイドフレームは、下部フランジと、上部フランジと、を含み、
前記第1固定部は、前記下部フランジに固定され、
前記第2固定部は、前記ばね部材に固定され、
前記支持部材は、前記サイドフレームの外側および前記上部フランジの上側を経由するように、前記下部フランジと前記ばね部材との間に設けられる、車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記支持部材は、細長い四角形の力布を含み、
前記力布の長手方向は、前記シートクッションの幅方向とされ、
前記力布の短手方向は、前記シートクッションの長さ方向とされ、
前記力布は、前記短手方向において、第1短辺と、前記第1短辺に対向する第2短辺と、を有し、
前記第1短辺が前記第1端部であり、前記第2短辺が前記第2端部である、車両用シート。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記支持部材は、上面視において、前記前方パネルフレームの後方部と前記後方パイプフレームとの間のほぼ中間の領域に配置される、車両用シート。
【請求項5】
請求項3に記載の車両用シートにおいて、
前記第1固定部および前記第2固定部のおのおのは、J型フックである、車両用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートにおいて、
前記クッションフレームは、さらに、
前記サイドフレームの後方に取り付けられたバックルと、
前記サイドフレームの後方に取り付けられたリクライニング機構と、を有し、
前記パッドは、
着座部面側パッドと、
前記リクライニング機構の上側および前記リクライニング機構と前記バックルとの間に設けられた垂れ部と、
前記着座部面側パッドと前記垂れ部との間に設けられた接続用パッドと、を有する、車両用シート。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用シートにおいて、
前記ばね部材は、複数のばね部材を含み、
前記支持部材の前記第2固定部は、前記複数のばね部材の内、前記サイドフレームに最も近いばね部材に固定される、車両用シート。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用シートにおいて、
前記クッションフレームは、さらに、
前記複数のばね部材に取り付けられた位置ずれ防止部材を含み、
前記支持部材の前記第2固定部は、前記複数のばね部材の内、前記サイドフレームに最も近いばね部材の前記位置ずれ防止部材が取り付けられた部分に固定される、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関し、特に、シートクッションの側面が薄型化された車両用シートに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートクッションパッド(60)の後方側部(60C)での沈込みに対する復元力を向上するために、シートクッションフレームのサイドフレームの上端部(32H)とシートクッションパッドの後方側部(60C)とに間にインナーカバー(52)を設ける構成が提案されている(特開2015-66970号公報を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、車両用シートにおいて、運転席側シートと助手席側シートとの間に幅の広いコンソールボックスを設置するため、コンソールボックスが配置される部分に対応するシートクッションの側面部の薄型化を検討し、シートクッションの側面部に対応するパッドの側面を部分的に削除する技術について考察を行った。この結果、パッドの側面を部分的に削除したことにより、着座面側からの負荷によってパッドの落ち込みが発生することが分かった。
【0005】
本発明の目的は、シートクッションの側面部が薄型化された場合であっても、パッドの落ち込みを防止することが可能な技術を提供することにある。
【0006】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0008】
車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、を有する。前記シートクッションは、クッションフレームと、前記クッションフレームの上に設けられたパッドと、を有する。前記クッションフレームは、サイドフレームと、前記サイドフレームに取り付けられた前方パネルフレームと、前記サイドフレームに取り付けられた後方パイプフレームと、前記前方パネルフレームと前記後方パイプフレームとの間に設けられたばね部材と、前記サイドフレームと前記ばね部材との間に設けられた支持部材と、を含む。前記パッドの裏面は、前記サイドフレームと前記ばね部材との間において、前記支持部材によって支持される。
【発明の効果】
【0009】
上記車両用シートによれば、パッドの落ち込みを防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施例に係る車両用シートの斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの車両用シートから表皮とパッドとを取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、比較例1に係る車両用シートを上から見た場合の概念的な構成を示す上面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA-A線に沿うシートクッションの断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の車両用シートの右側面部におけるパッドの構成を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、比較例2に係る車両用シートを上から見た場合の概念的な構成を示す上面図である。
【
図6】
図6は、
図5のB-B線に沿うシートクッションの断面図である。
【
図7】
図7は、
図5の車両用シートの右側面部におけるパッドの構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、実施例に係るシートクッションの断面図である。
【
図9】
図9は、実施例に係る車両用シートのシートクッションフレームを説明する上面図である。
【
図10】
図10は、
図9のシートクッションフレームにパッドを設けた状態を示す上面図である。
【
図13】
図13は、シートクッションフレームに取り付けられた支持部材の状態を立体的に示す図である。
【
図14】
図14は、
図9のシートクッションフレームの支持部材の取り付け部分を拡大して示す斜視図である。
【
図15】
図15は、
図9のシートクッションフレームの支持部材の取り付け部分を裏側から見た場合を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、図面において、矢印前は車両の前方を示し、矢印後は車両の後方を示し、矢印左は車両の左側方を示し、矢印右は車両の右側方を示し、矢印上は車両の上方を示し、矢印下は車両の下方を示している。また、以下の説明においては、特別に断らない限り、前、後や上、下、左、右については、車両に対しての前、後や上、下、左、右を意味するものとする。
【実施例】
【0013】
図1Aは、実施例に係る車両用シートの斜視図である。
図1Bは、
図1Aの車両用シートから表皮とパッドとを取り除いた状態を示す斜視図である。
【0014】
図1Aに示す車両用シート1は、一例として、車両の進行方向に対して、左側シート(たとえば、助手席側シート)の構成を示している。
図1Aに示す様に、車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、シートバック3の上部に設けられたヘッドレスト4と、を有する。シートクッション2は座面を構成し、シートバック3は背もたれを構成する。車両用シート1は、シートクッション2とシートバック3との角度調整を可能にするリクライニング機構を有し、リクライニング機構によりシートクッション2とシートバック3とが連結されている。シートクッション2は、車両用シート1の前後方向の位置調整を可能にするスライド機構を有している。
【0015】
図1A、
図1Bを参照し、シートクッション2は、シートクッションフレーム30と、シートクッションフレーム30に取り付けられた緩衝部材としてのパッド(不図示)と、パッドを覆う様に設けられた表皮9と、を含む。シートバック3は、シートバックフレーム80と、シートバックフレーム80に取り付けられた緩衝部材としてのパッド(不図示)と、パッドを覆う様に設けられた表皮9bと、を含む。表皮9,9bは、たとえば、皮、革、合成皮革、布、それらとの同等物、又はそれらを組み合わせた部材によって構成することができる。パッドは、着座者にクッション性を付与する部材、たとえば、発泡性の樹脂であるウレタンによって構成することができる。
【0016】
図1Aに示す様に、シートクッション2は、右側面部2SRと、左側面部2SLと、を含む。右側面部2SRは、シートクッション2の右側面部2SRに対応するパッドの側面が部分的に削除された構成とされている。これにより、シートクッション2の右側面部2SRが、左側面部2SLと比較して、薄型化されている。より具体的には、右側面部2SRは、後方側面を構成する後方部分5と、前方側面を構成する前方部分6と、後方部分5と前方部分6との間に位置し、中間側面を構成する中間部分7と、を含む。前方部分6は、後方部分5と比較して、シートクッション2の中央を示す線8との距離が短くされている。中間部分7は、シートクッション2を上から見た平面視において、後方部分5と前方部分6とを繋ぐように、斜めの面となっている。
【0017】
図1Bに示す様に、シートクッションフレーム30は、右サイドフレーム31、複数のばね部材32、前方パネルフレーム36、後方パイプフレーム37、左サイドフレーム38等を有する。前方パネルフレーム36は、シートクッションフレーム30の前方において、右サイドフレーム31と左サイドフレーム38との間に固定されている。後方パイプフレーム37は、シートクッションフレーム30の後方において、右サイドフレーム31と左サイドフレーム38との間に固定されている。複数のばね部材32は、パッドを支えるための役割を有し、金属によって構成される。複数のばね部材32は、前方パネルフレーム36と後方パイプフレーム37との間に設けられている。複数のばね部材32は、右側のばね部材32Rと、左側のばね部材32Lと、右側のばね部材32Rと左側のばね部材32Lとの間に設けられた中間のばね部材32Mと、を含む。
【0018】
シートバックフレーム80は、四角形の枠のように成形されたメインパイプフレーム81、右バックサイドフレーム82、左バックサイドフレーム83等を有する。右バックサイドフレーム82は、メインパイプフレーム81の右側の下方に取り付けられており、リクライニング機構40を介して、シートクッションフレーム30の右サイドフレーム31に取り付けられている。左バックサイドフレーム83は、メインパイプフレーム81の左側の下方に取り付けられており、リクライニング機構41を介して、シートクッションフレーム30の左サイドフレーム38に取り付けられている。
【0019】
なお、サイドフレーム(31,38,82,83)、パネルフレーム(36)やパイプフレーム(37、81)は、剛性の高い材料、例えば鋼材によって構成されている。
【0020】
図1Bに示す様に、支持部材10がシートクッションフレーム30に取り付けられている。支持部材10は、右サイドフレーム31の下部フランジ(不図示)と右側のばね部材32Rとの間に取り付けられている。支持部材10が取り付けられる右サイドフレーム31の下側の部分は、支持部材10が取り付けられていない部分と比較して、上側に湾曲した形状にされている。これにより、支持部材10を右サイドフレーム31の下部フランジに取り付けることができる。
【0021】
シートクッションフレーム30に取り付けられるパッド(不図示)は、上面視において、右サイドフレーム31、複数のばね部材32、前方パネルフレーム36、後方パイプフレーム37、左サイドフレーム38および支持部材10の上側を覆う様に設けられる。支持部材10は、右サイドフレーム31と右側のばね部材32Rとの間において、パッドの裏面を支えるために設けられている。支持部材10を設けることにより、パッドが右サイドフレーム31と右側のばね部材32Rとの間に落ち込むことを防止することができる。支持部材10の構成例、支持部材10のシートクッションフレーム30への取り付け方法等については、後述する。
【0022】
(課題の説明)
次に、図を用いて、課題を説明する。
【0023】
(比較例1)
図2は、比較例1に係る車両用シート1rを上から見た場合の概念的な構成を示す上面図である。
図3は、
図2のA-A線に沿うシートクッション2rの断面図である。
図4は、
図2の車両用シート1rの右側面部2SRrにおけるパッドの構成を示す斜視図である。
【0024】
図2に示す様に、車両用シート1rは、シートクッション2rと、シートバック3rと、ヘッドレスト4rと、を含む。シートクッション2rの幅、つまり、シートクッション2rの右側面部2SRrとシートクッション2rの左側面部2SLrとの間の距離は、L1とする。
【0025】
図3に示す様に、パッド20rの裏面BSは、シートクッションフレーム30の右サイドフレーム31の上部とシートクッションフレーム30の複数のばね部材32とに支えられるように、設けられる。右サイドフレーム31の下側は、図示されない部分において、シートレールのアッパシートレール33に接続されている。パッド20rは、右側面部2SRrにおいて、右サイドフレーム31の外側に設けられた凸部21r(パッド20rの垂れ部ともいう)を有している。
【0026】
表皮9rは、パッド20rの上面(表面)FSおよび凸部21rの側面SSrに沿うように、パッド20rを覆っている。表皮9rの端部9erは、縫合線70rにおいて、J型フック12rと縫い合わせされている。J型フック12rは、シートクッションフレーム30に設けられたトリムワイヤ35rに掛けられている。表皮9rの端部9erに設けたJ型フック12rをトリムワイヤ35rにはめ込むことで、表皮9rがパッド20rの上面(表面)FSおよび凸部21rの側面SSrに沿うように、張りつめられている。
【0027】
図4に示す様に、パッド20rの凸部21rが右サイドフレーム31よりも外側に設けられている。シートベルトのバックル50の上部は、パッド20rに設けられた開口部20oから露出するようの設けられており、バックル50の下部は右サイドフレーム31に固定されている。右サイドフレーム31の下には、シートレールのアッパシートレール33(
図4では、不図示)が接続されており、アッパシートレール33は、シートレールのロアシートレール34にスライド可能に取り付けられている。シートバック3とシートクッション2rとの間には、シートバック3とシートクッション2rとの角度調整を可能にするリクライニング機能40が設けられている。
【0028】
図3に示す様に、シートクッション2rの着座面側に、矢印で示す負荷Fが入力された場合、パッド20rが凸部21rを有しており、凸部21rが右サイドフレーム31の上端部に設けられた上部フランジ31fuによって支えられ、また、
図4に示す様に、パッド20rがバックル50によって支えられる。したがって、比較例1の構成では、着座面側に負荷が入力されても、パッド20rが、右サイドフレーム31と右側のばね部材32Rとの間に、落ち込む現象は発生しづらい構成となっている。
【0029】
(比較例2)
図5は、比較例2に係る車両用シート1を上から見た場合の概念的な構成を示す上面図である。
図6は、
図5のB-B線に沿うシートクッション2の断面図である。
図7は、
図5の車両用シート1の右側面部2SRにおけるパッドの構成を示す斜視図である。
【0030】
図5に示す様に、
図1と同様に、車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック3と、ヘッドレスト4と、を含む。
図5に示すシートクッション2は、
図3のシートクッション2rから削除部100が削除された構成である。シートクッション2の右側面部2SRは、後方部分5と、中間部分7と、前方部分6と、を有している。つまり、シートクッション2の右側面部2SRは、
図3のシートクッション2rの右側面部2SRrと比較して、前方部分6と中間部分7とにおいて、薄型化されている。
【0031】
シートクッション2の前方部分6と左側面部2SLとの間の幅(距離)L2は、シートクッション2rの右側面部2SRrとシートクッション2rの左側面部2SLrとの間の距離L1と比較して、狭くされている(L2<L1)。また、シートクッション2の中央を示す線8と前方部分6との間の距離L3は、線8と後方部分5と間の距離L4と比較して、短くされている(L3<L4)。また、線8と前方部分6との間の距離L3は、線8と左側面部2SLと間の距離L5と比較して、短くされている(L3<L5)。なお、距離L4と距離L5とは、特に制限されないが、ほぼ同じ値にされている。このようにして、シートクッション2の右側面部2SRは、シートクッション2の左側面部2SLと比較して、薄型化される。
【0032】
このようなシートクッション2の右側面部2SRの構成とするため、削除部100において、右側面部2SRに対応する部分のパッドが部分的に削除されている。
【0033】
図6に示すパッド20が
図3に示すパッド20rと異なる点は、
図6のパッド20は、
図3に示すパッド20rの凸部21rおよび凸部21rの上部に位置するパッド部分が削除された構成とされている点である。したがって、右サイドフレーム31の外側には、パッド20の凸部21rが設けられていない。
図6の他の構成は、
図3の構成と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0034】
図7が
図4と異なる点は、
図7において、右サイドフレーム31の外側にパッド20の凸部21rが設けられていない点である。そのため、バックル50を右サイドフレーム31に固定するための固定部51がパッド20から露出する構成になっている。
図7の他の構成は、
図4の構成と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0035】
図6において、シートクッション2の着座面側に、矢印で示す負荷Fが入力された場合、凸部21rが削除されたことにより、パッド20は、点線20fで示す様に、右サイドフレーム31の上端部に設けた上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に、落ち込む現象が発生する場合がある。また、パッド20が上部フランジ31fuと右側ばね部材32Rとの間に落ち込むと、パッド20が上部フランジ31fuの角部31fueに引掛かり、パッド20が点線20fで示す状態から元の状態に復元しない場合もある。
【0036】
また、
図7において、シートクッション2の着座面側に負荷が入力された場合、リクライニング機構40の上側、および、リクライニング機構40とバックル50および固定部51との間に位置するパッド20の垂れ部20tが、着座面側のパッド(着座面側パッド)20pからちぎれてしまう場合もある。つまり、垂れ部20tと着座面側パッド20pの間が細くなっているので、着座面側パッド20pが上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に落ち込むと、上部フランジ31fuの上側に位置し、かつ、垂れ部20tと着座面側パッド20pの間に位置する接続用パッド20sが切れてしまう場合がある。
【0037】
(支持部材10の構成例)
図8は、実施例に係るシートクッション2の断面図である。
図8は、
図6に対応するように、
図5のB-B線に沿う断面図として描かれている。
図8が
図6と異なる点は、
図8において、パッド20の裏面BSを支えるための支持部材10が右側面部2SR側に設けられている点である。
図8の他の構成は、
図6と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0038】
支持部材10は、一例では、可撓性のある、滑りやすい、伸縮性に乏しい材質、例えば、ポリエステル等の織物からなる力布を採用することができる。支持部材10は、第1端部10aと第2端部10bと、を有する。第1端部10aは、J型フックの様な第1固定部11aと第1固定線71において固定されている。第2端部10bは、J型フックの様な第2固定部11bと第1固定線72において固定されている。支持部材10に力布が用いられる場合、第1固定線71、第2固定線72は縫合線を示している。力布の第1端部10aと第1固定部11aとが縫合糸によって第1固定線(縫合線)71で縫合される。また、力布の第2端部10bと第2固定部11bとが縫合糸によって第2固定線(縫合線)72で縫合される。
【0039】
第1固定部11aは右サイドフレーム31の下部フランジ31fdに固定され、第2固定部11bは右側のばね部材32Rに固定される。支持部材10は、第1固定部11aから、下部フランジ31fdの下側、右サイドフレーム31の右側面31rsの外側(右側)、右サイドフレーム31の上部フランジ31fuの上側を通って、右側のばね部材32Rまで配置される。上部フランジ31fuにおいて、支持部材10は、上部フランジ31fuとパッド20の裏面BSとの間に設けられる。上部フランジ31fuの角部30fueから右側のばね部材32Rの間において、支持部材10は、パッド20の裏面BSの下側に設けられ、パッド20の裏面BSを支えるように構成されている。つまり、支持部材10は、パッド20の裏面BSの形状に沿う様に設けられて、パッド20の裏面BSを支えている。
【0040】
シートクッション2の着座面側に、矢印で示す負荷Fが入力された場合でも、上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rの間におけるパッド20の裏面BSは、支持部材10によって支持されることになる。そのため、
図6で説明した様な、パッド20が、上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に、落ち込む現象を防止することができる。また、支持部材10を設けたことにより、パッド20が上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に落ち込むことが無いので、上部フランジ31fuの角部31fueとパッド20の引掛かりが発生せず、パッド20が確実に復元できるようになる。
【0041】
図9は、
図2のシートクッションフレーム30を説明する上面図である。
図10は、
図9のシートクッションフレーム30にパッド20を設けた状態を示す上面図である。
【0042】
図9に示す様に、シートクッションフレーム30の後方において、右サイドフレーム31と左サイドフレーム38とに間には、丸いパイプ形状の後方パイプフレーム37が固定されて設けられる。シートクッションフレーム30の前方において、右サイドフレーム31と左サイドフレーム38とに間には、丸いパイプ形状とされた前方パイプフレーム(不図示)が固定されて設けられる。シートクッションフレーム30の前方において、右サイドフレーム31、左サイドフレーム38および前方パイプフレーム(不図示)の上側には、前方パネルフレーム36が固定されて設けられる。前方パネルフレーム36と後方パイプフレーム37との間には、複数のばね部材32が取り付けられている。複数のばね部材32は、右側のばね部材32Rと、左側のばね部材32Lと、右側のばね部材32Rと左側のばね部材32Lとの間に配置される中間のばね部材32Mと、を含む。
【0043】
複数のばね部材32(32R、32M、32L)は、前方パネルフレーム36の後方部36bと後方パイプフレーム37の間のほぼ中間の領域において、シートクッションフレーム30またはシートクッション2の幅方向に位置がずれないように、ワイヤやパネルなどから構成された位置ずれ防止部材39によって固定されている。
【0044】
シートクッションフレーム30には、リクライニング機構40、41、スライド機構42、シートベルトのバックルの取付け部43等が設けられる。シートクッションフレーム30は、リクライニング機構40、41を介して、シートバックフレーム80に接続されている。
【0045】
支持部材10は、右サイドフレーム31と右側のばね部材32Rに取り付けられている。支持部材10は、上面視において、シートクッション2の幅方向に細長い四角形の形状を有する。つまり、支持部材10は、上面視において、帯状または短冊の形状を有する。細長い四角形の支持部材10において、支持部材10の長手方向はシートクッション2の幅方向であり、支持部材10の短手方向はシートクッション2の幅方向と交差するシートクッション2の長さ方向である。
【0046】
支持部材10は、上面視において、前方パネルフレーム36の後方部36bと後方パイプフレーム37の間のほぼ中間の領域に配置されるように、右サイドフレーム31(の下部フランジ31fd)と右側のばね部材32Rとに取り付けられている。言い換えるならば、支持部材10は、右サイドフレーム31(の下部フランジ31fd)と右側のばね部材32Rの位置ずれ防止部材39が取り付けられた部分との間に設けられる。
【0047】
図10に示す様に、シートクッションフレーム30に設けたパッド20の右側面部2SRPにおいて、パッド20の垂れ部20tは、リクライニング機構40の上側を覆う様に設けられる。また、バックル50の取付け部43が露出するように、パッド20が設けられる。シートクッションフレーム30に設けたパッド20の左側面部2SLPにおいて、リクライニング機構41、スライド機構42が露出するように、パッド20が設けられる。垂れ部20tと着座面側のパッド20pの間が細くなっているが、支持部材10が設けられるので、着座面側のパッド20pが右サイドフレーム31の上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に落ち込む現象が発生しないので、垂れ部20tと着座面側のパッド20pの間に位置する細い接続用パッド20sが切れてしまうことが無い。
【0048】
図11は、
図9の支持部材10の近傍を拡大して示す上面図である。
図12は、
図11のC-C線に沿う断面図である。
図13は、シートクッションフレームに取り付けられた支持部材10の状態を立体的に示す図である。
図14は、
図9のシートクッションフレームの支持部材10の取り付け部分を拡大して示す斜視図である。
図15は、
図9のシートクッションフレームの支持部材10の取り付け部分を裏側から見た場合を拡大して示す斜視図である。
【0049】
図11、
図12に示す様に、支持部材10の第2端部10bには、第2固定部11bが設けられている。
図11、
図14および
図15に示す様に、第2固定部11bは、右側のばね部材32Rに固定されている。
図11、
図13に示す様に、第2固定部11bは、支持部材10の長手方向と交差する短手方向(幅方向)に沿って、支持部材10の第2端部10bに縫合糸などに固定されている。
【0050】
図12、
図13に示す様に、支持部材10の第1端部10aには、第1固定部11aが設けられている。
図12、
図15に示す様に、第1固定部11aは、右サイドフレーム31の下部フランジ31fdに固定されている。
図12、
図14および
図15に示す様に、支持部材10は、右サイドフレーム31の外側である右側面31rs、サイドフレーム31の上部フランジ31fuの上側を経由して、右側のばね部材32Rまで配置される。
図13に示す様に、第1固定部11aは、支持部材10の長手方向と交差する短身手方向(幅方向)に沿って、支持部材10の第1端部10aに縫合糸などに固定されている。なお、
図12の第2端部10bの部分には、右側のばね部材32Rが記載されていない。右側のばね部材32Rは、蛇行するように設けられるので、C-C線に沿う断面図では現れていない。
【0051】
図9、
図11、
図14、
図15に示されるように、支持部材10の第2固定部11bは、複数のばね部材の内、右サイドフレームに最も近い右側のばね部材32Rの位置ずれ防止部材39が取り付けられた部分に固定されている。
【0052】
図13を用いて、支持部材10に力布110を用いた場合の形状を説明する。支持部材10は、細長い四角形の力布110を含む。力布110の長手方向はシートクッション2の幅方向とされ、力布110の短手方向はシートクッション2の長さ方向(幅方向)とされる。力布110は、短手方向において、第1短辺111と、第1短辺111に対向する第2短辺112と、を有する。第1短辺111が支持部材10の第1端部10aに対応し、第2短辺112が支持部材10の第2端部10bに対応する。第1短辺111には、第1固定部11aとしての第1のJ型フックが縫合糸等を用いて固定されている。第2短辺112には、第2固定部11bとして第2のJ型フックが縫合糸等を用いて固定されている。
【0053】
上記実施例では、車両の進行方向に対して、左側シート(たとえば、助手席側シート)について説明したが、車両の進行方向に対して、右側シート(たとえば、運転席側シート)にも適用可能である。右側シート(たとえば、運転席側シート)の場合、シートクッション2の左側面部2SLが薄型化されることになるので、シートクッション2の左側面部2SLに、上記と同様に、後方部分5、中間部分7および前方部分6が設けられる。そして、右側シートにおいて、シートクッション2の左サイドフレーム(2SL)と複数のばね部材(32)の内の左サイドフレーム(2SL)に一番近い左側のばね部材(32L)との間に、支持部材10が設けられることになる。したがって、シートクッション2の左側面部2SLが薄型化された右側シートとシートクッション2の右側面部2SRが薄型化された左側シートとを並べることで、右側シートの前方部分6と左側シートの前方部分6との間が、右側シートの後方部分5と左側シートの後方部分5との間と比較して、広くできる。その結果、幅の広いコンソールボックスを右側シートの前方部分6と左側シートの前方部分6との間に配置することができる。しかも、左側シートのシートクッションと右側シートのシートクッションの両方に、支持部材10が設けられる。左側シートでは、パッド20が右サイドフレーム31の上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に落ち込むことが無い。右側シートでは、パッド20が左サイドフレーム38の上部フランジと左側のばね部材(32L)との間に落ち込むことが無い。なお、左側シートまたは右側シートの一方のシートの対応する側面部(左側シートの場合は右側面部2SR、右側シートの場合の左側面部2SL)が薄型化され構成でもよい。この場合、薄型化された側面部に対応するサイドフレームと複数のばね部材32の内の対応するサイドフレームに最も近いばね部材32との間に支持部材10が設けられる。または、薄型化された側面部に対応するサイドフレームと複数のばね部材32の内の対応するサイドフレームに隣接するばね部材32との間に支持部材10が設けられる。
【0054】
実施例によれば、以下の効果を得ることができる。
【0055】
1)右サイドフレーム31と右側のばね部材32Rとに間に支持部材10を設ける。これにより、パッド20が右サイドフレーム31の上部フランジ31fuと右側のばね部材32Rとの間に落ち込むことが無い。
【0056】
2)上記1)により、右サイドフレーム31の上部フランジ31fuの角部31fueとパッド20の引掛かりが発生せず、パッド20が確実に復元できる。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1:車両用シート
2:シートクッション
2SR:シートクッションの右側面部
2SL:シートクッションの左側面部
3:シートバック
4:ヘッドレスト
5:後方部分
6:前方部分
7:中間部分
9、9b:表皮
9e:表皮の端部
10:支持部材
10a:支持部材の第1端部
10b:支持部材の第2端部
11a:第1固定部
11b:第2固定部
20、20r:パッド
20t:パッドの垂れ部
20p:着座席側パッド
20s:接続用パッド
30:シートクッションフレーム
31:右サイドフレーム
31fu:上部フランジ
31fue:上部フランジの角部
31fd:下部フランジ
32、32R、32M、32L:ばね部材
33:アッパシートレール
34:ロアシートレール
35:トリムワイヤ
36:前方パネルフレーム
37:後方パイプフレーム
38:左サイドフレーム
39:位置ずれ防止部材
40、41:リクライニング機構
42:スライド機構
43:バックルの取付け部
50:バックル