(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤のコハク酸塩形態および組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 401/14 20060101AFI20230123BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230123BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230123BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230123BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230123BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230123BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/506
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/00
A61P37/08
A61P37/02
(21)【出願番号】P 2019524117
(86)(22)【出願日】2017-01-06
(86)【国際出願番号】 US2017012637
(87)【国際公開番号】W WO2018017153
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2019-12-25
(32)【優先日】2016-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年 7月 7日、https://stnweb.cas.org/?_ga=2.197775279.1641690580.1551320160-1086354442.1551320160にてオンライン公開
(73)【特許権者】
【識別番号】519022849
【氏名又は名称】バイオジェン エムエー インク.
【氏名又は名称原語表記】BIOGEN MA INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】519022850
【氏名又は名称】スネシス ファーマシューティカルズ,インク.
【氏名又は名称原語表記】SUNESIS PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】マカフィー ジェイ. マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン リンダ エル.
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518903(JP,A)
【文献】特表2013-503905(JP,A)
【文献】第十六改正 日本薬局方,2011年,pp.64-68,2070
【文献】STEPHEN M BERGE; LYLE D BIGHLEY; DONALD C MONKHOUSE,PHARMACEUTICAL SALTS,JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES,米国,AMERICAN PHARMACEUTICAL ASSOCIATION,1977年01月,VOL:66, NR:1,PAGE(S):1 - 19,http://dx.doi.org/10.1002/jps.2600660104
【文献】C.G.WERMUTH編,「最新 創薬化学 下巻」,pp.347-365,株式会社 テクノミック,1999年
【文献】BYRN S,PHARMACEUTICAL SOLIDS: A STRATEGIC APPROACH TO REGULATORY CONSIDERATIONS,PHARMACEUTICAL RESEARCH,米国,KLUWER ACADEMIC PUBLISHERS,1995年07月01日,V12 N7,P945-954
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/14
A61K 31/506
A61P 43/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 29/00
A61P 19/02
A61P 17/00
A61P 37/08
A61P 37/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1およびコハク酸を含む、化合物2の固体形態であって、
【化1】
(a)前記固体形態が形態1であり、5.33±0.2、7.59±0.2、9.75±0.2、
11.61±0.2、13.69±0.2、
16.26±0.2、17.91±0.2、18.14±0.2、20.12±0.2、または24.73±0.2度2θにあるピーク
を持つ粉末X線回折パターン
を有する、又は
(b)前記固体形態が形態2であり、6.76±0.2、8.77±0.2、9.06±0.2、12.00±0.2、13.53±0.2、
15.47±0.2、18.13±0.2
、20.07±0.2
、24.46±0.2、または25.07±0.2度2θにあるピーク
を持つ粉末X線回折パターン
を有する、
前記化合物2の固体形態。
【請求項2】
前記固体形態が結晶性固体であり、前記固体形態は少なくとも95重量%の化合物2が存在する、請求項1に記載の固体形態。
【請求項3】
前記結晶性固体は、少なくとも95重量%の結晶性固体形態の化合物2が存在する、請求項2に記載の固体形態。
【請求項4】
前記固体形態が形態1であり、5.33±0.2、7.59±0.2、9.75±0.2、
11.61±0.2、13.69±0.2、
16.26±0.2、17.91±0.2、18.14±0.2、20.12±0.2、または24.73±0.2度2θにあるピーク
を持つ粉末X線回折パターン
を有する、
請求項2に記載の固体形態。
【請求項5】
前記固体形態が、下記
図1に示すものと同様のXRPDを有する、
請求項2に記載の固体形態。
[
図1]
【請求項6】
前記固体形態が形態2であり、6.76±0.2、8.77±0.2、9.06±0.2、12.00±0.2、13.53±0.2、
15.47±0.2、18.13±0.2
、20.07±0.2
、24.46±0.2、または25.07±0.2度2θにあるピーク
を持つ粉末X線回折パターン
を有する、
請求項2に記載の固体形態。
【請求項7】
前記固体形態が、下記
図5に示すものと同様のXRPDを有する、
請求項2に記載の固体形態。
[
図5]
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む組成物。
【請求項9】
(a)癌および前癌状態からなる群から選択される障害;または(b)病態がB細胞の異常な活性を特徴とする病状、疾患もしくは障害;を治療する方法において使用するための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態、
または請求項
8に記載の組成
物であって、前記方法が、前記固体形態または組成物の有効量を、対象に投与することを含む、前記固体形態、
または組成
物。
【請求項10】
(a)自己免疫障害および炎症性障害からなる群から選択される障害;または(b)病態がB細胞の異常な活性を特徴とする病状、疾患もしくは障害;を治療する方法において使用するための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態、
または請求項
8に記載の組成
物であって、前記方法が、前記固体形態または組成物の有効量を対象に投与することを含む、前記固体形態、
または組成
物。
【請求項11】
さらに、薬学的に許容される担体または賦形剤を含
む、
請求項
9~10のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項12】
前記
固体形態または組成物が経口投与される、
請求項
9~11のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項13】
前記化合物2の有効量が25mg~300mgである、
請求項
9~12のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項14】
前記化合物2の有効量が、50mg~300mgである、
請求項
13に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項15】
前記化合物2の有効量が、25mg、50mg、100mg、200mg、または300mgである、
請求項
9~14のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項16】
前記障害が、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、白血病およびリンパ腫から選択される、請求項
9~15のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項17】
前記障害が白血病、リンパ腫、またはB細胞悪性腫瘍である、
請求項
9~10のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項18】
前記固体形態、
または組成
物が、1日に1回、2回、もしくは2回より多い回数投与される、請求項
9~17のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項19】
ブルトンのチロシンキナーゼ(BTK)の阻害に応答する障害を治療する方法に使用するための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態、または、請求項
8に記載の組成物であって、前記方法が、前記固体形態、または前記組成物の有効量を対象に投与することを含む、前記固体形態、または組成物。
【請求項20】
請求項
19に記載の固体形態または組成物であって、BTKの阻害に応答する前記障害が、イブルチニブに耐性である、前記固体形態、または組成物。
【請求項21】
BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法に使用するための請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態、または請求項
8に記載の組成物であって、前記対象が第1のBTK阻害剤で治療され、そして前記第1のBTK阻害剤の活性を損なう機能的BTK Cys481突然変異を獲得しており、前記方法が、有効量の前記固体形態、または組成物を前記対象に投与することを含む、前記固体形態、または組成物。
【請求項22】
BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法に使用するための請求項1~
7のいずれか一項に記載の固体形態、または請求項
8に記載の組成物であって、前記方法が、
(a)前記対象から血液または組織試料を採取し、そこからDNAを抽出すること;
(b)BTK、PLCγ2、またはそれらの組み合わせに特徴的な1つ以上の遺伝子配列を同定するために前記DNAを分析し、前記第1のBTK阻害剤のBTK阻害活性に影響を及ぼすBTKまたはPLCγ2中の後天的突然変異の存在を決定すること、
(c)任意でステップ(a)および(b)を繰り返すこと;ならびに
(d)治療有効量の前記固体形態、または組成物を、BTKまたはPLCγ2に後天的突然変異を有する前記対象に投与することを含み、任意でステップ(a)の前に、第1のBTK阻害剤の治療的有効量を含む組成物が前記対象に投与されている、前記固体形態、または組成物。
【請求項23】
第1のBTK阻害剤が、イブルチニブ(PCI-32765)、アカララブルチニブ、またはスペブルチニブである、請求項
21または22に記載の使用するための固体形態、または組成物。
【請求項24】
前記固体形態、または組成物の有効量が25mg~300mgである、請求項
21~23のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、または組成物。
【請求項25】
前記固体形態、または組成物の有効量が、25mg、50mg、100mg、200mg、または300mgである、請求項
21~24のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、または組成物。
【請求項26】
前記対象が、BTK Cys481突然変異または機能的BTK Cys481突然変異である、請求項
9~18または
21~25のいずれか一項に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項27】
前記突然変異がC481S、C481F、C481G、またはC481Tで
ある、請求項
26に記載の使用のための固体形態、
または組成
物。
【請求項28】
前記障害が、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症、またはマントル細胞リンパ腫である、請求項17に記載の使用のための固体形態、または組成物。
【請求項29】
前記突然変異が、C481Sである、請求項27に記載の使用のための固体形態、または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年7月21日に出願された米国仮特許出願第62/365,353号および2016年9月8日に出願された米国仮特許出願第62/385,202号の優先権を主張し、それらの各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、腫瘍学、神経学および免疫学において多数のヒト疾患の発症および治療において重要な役割を果たす500を超えるタンパク質からなる大きな多重遺伝子族である。Tecキナーゼは、5つのメンバー(Tec(肝細胞癌で発現されるチロシンキナーゼ)、Btk(ブルトン型チロシンキナーゼ)、Itk(インターロイキン-2(IL-2)-誘導性T細胞キナーゼ)、EmtまたはTskとしても知られる)、Rlk(静止リンパ球キナーゼ、Txkとしても知られる)およびBmx(X染色体上の骨髄チロシンキナーゼ遺伝子、Etkとしても知られる))からなる非受容体型チロシンキナーゼであり、BmxおよびTecの発現については内皮細胞および肝細胞で検出されているが、主に造血細胞において発現される。Tecは内皮細胞および肝細胞において検出されている。Tecキナーゼ(Itk、RlkおよびTec)はT細胞において発現され、そしてすべてT細胞受容体(TCR)の下流で活性化される。Btkは、B細胞活性化、増殖、および分化の調節に関与するB細胞受容体(BCR)シグナル伝達の下流メディエーターである。より具体的には、Btkはホスファチジルイノシトール(3,4,5)-トリスリン酸(PIP3)に結合するPHドメインを含む。PIP3結合はBtkがホスホリパーゼC(PLCγ)をリン酸化するのを誘導し、それが次にPIP2を加水分解して2つの二次メッセンジャー、イノシトール三リン酸(IP3)およびジアシルグリセロール(DAG)を生成し、それらはプロテインキナーゼPKCを活性化し、それがさらにB細胞シグナル伝達を誘導する。Btk酵素活性を無効にする変異は、一次免疫不全症であるXLA症候群(X連鎖無ガンマグロブリン血症)を引き起こす。TecキナーゼがB細胞シグナル伝達およびT細胞シグナル伝達の両方において果たす重要な役割を考えると、Tecキナーゼは自己免疫障害の対象となる標的である。
【0003】
その結果、当該技術分野において、Btkの有効な阻害剤に対する大きな必要性がある。本発明はこれらおよび他の必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の新規な形態およびその組成物が、1つ以上のプロテインキナーゼの阻害剤として有用であり、それに対して望ましい特徴を示すことが今回見出された。一般に、そのような形態およびその薬学的に許容される組成物は、本明細書に詳細に記載されているように様々な疾患または障害の重症度を治療または軽減するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】化合物2の形態1のXRPDパターンを示す。
【
図2】化合物2の形態1(幾分かの化合物2の形態2が存在する場合)のDSCデータを示す。
【
図5】化合物2の形態2のXRPDパターンを示す。
【
図9】化合物2の形態2の
1H NMRスペクトルを示す。
【
図11】共有結合性BTK阻害剤および化合物2の遊離塩基の活性に対するCys481Ser変異の効果を示す。
【
図12】化合物2を投与したヒトへの単回投与試験における化合物1の平均血漿中濃度対時間を示す。
【
図13】化合物2を投与したヒトへの単回投与試験におけるBTK阻害パーセント対時間を示す。
【
図14】化合物2を投与する単回投与ヒト試験におけるBTK阻害パーセント対化合物1の血漿中濃度を示す。
【
図15】化合物2の濃度(ng/mL)およびBTK阻害パーセント対時間を示す。化合物2の50mgは、BTK阻害%を示さなかった。
【
図16】下記の第1段階+第3段階(化合物2の25mg単独)投与からの化合物2の投与後の、BTK阻害%と化合物1の血漿中濃度(x軸、ng/mL)との間の相関関係を示す。
【
図17】HEK293細胞において過剰発現されたC481 BTK(WT)およびC481S BKT変異体に対する化合物1およびイブルチニブ活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の態様の一般的な説明:
その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT特許公開第2013/185084号(2013年6月7日に出願されたPCT出願第PCT/US13/44800号(「‘800出願」))は、特定のBtk阻害剤化合物を記載している。このような化合物には、(3R、3’R、4’S)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミドが含まれる。
【化1】
【0007】
遊離塩基である化合物1は、‘800出願において化合物番号I-1として示されている。化合物1の合成は、‘800出願の実施例2に詳細に記載されており、参照を容易にするためにこれを本明細書に再現する。
【0008】
化合物1は、BTK阻害のアッセイにおいてBTKに対して効力を示した(例えば、‘800出願の実施例11~13参照)。例えば、‘800出願は、化合物1がインビトロBtkキナーゼアッセイにおいて測定されるように0.73nMのIC50を有することを報告している。したがって、化合物1は、BTKの活性に関連した1つ以上の障害を治療するのに有用である。
【0009】
改善された水溶性、安定性、吸収性、生物学的利用能、ならびに製剤および単離の容易さなどの特性を付与する化合物1の固体形態を提供することが望ましいであろう。したがって、本発明は、そのような特定の特徴を提供する化合物1のコハク酸形態を提供する。
【0010】
化合物2(コハク酸×化合物1)
一実施形態によれば、本発明は、化合物1およびコハク酸を含む化学種化合物2を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、化合物2は、
【化2】
として表される。
【0012】
化合物2は様々な固体形態で存在し得ると考えられる。化合物2が固体形態であるとき、前記化合物は、非晶質、結晶質、またはそれらの混合物であり得る。例示的な固体形態は、以下により詳細に記載される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明は、不純物を実質的に含まない化合物2を提供する。本明細書で使用されるとき、用語「実質的に不純物を含まない」は、化合物が有意量の異物を含まないことを意味する。このような異物は、過剰なコハク酸、過剰な化合物1、残留溶媒、または化合物2の調製および/または単離から生じ得る他の任意の不純物を含み得る。特定の実施形態では、少なくとも約95重量%の化合物2が存在する。本発明のさらに他の実施形態において、少なくとも約99重量%の化合物2が存在する。
【0014】
一実施形態によれば、化合物2は少なくとも約97、97.5、98.0、98.5、99、99.5、99.8重量パーセントの量で存在し、ここでパーセントは組成物の総重量に基づく。別の実施形態によれば、化合物2は、HPLCクロマトグラムの総面積に対して、約3.0面積パーセントHPLC以下の総有機不純物、および約1.5面積パーセントHPLC以下の総有機不純物を含有する。他の実施形態では、化合物2は、約1.0%以下の面積パーセントHPLCを含む単一不純物を含み、HPLCクロマトグラムの総面積に対して、約0.6面積パーセント以下の任意の単一不純物のHPLC、および特定の実施形態において、約0.5面積パーセント以下の任意の単一不純物のHPLCを含む。
【0015】
化合物2について示した構造はまた、化合物2のすべての互変異性型を含むことを意味する。さらに、本明細書で示した構造はまた、1個以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素または三重水素による水素の置換、または13Cまたは14Cに富む炭素による炭素の置換を除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0016】
化合物2は様々な固体形態で存在し得ることが見出された。例示的なそのような形態は、本明細書に記載されているものなどの多形体を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、化合物2は非晶質である。いくつかの実施形態では、化合物2は非晶質であり、結晶性化合物2を実質的に含まない。
【0018】
特定の実施形態において、化合物2は結晶性固体である。他の実施形態において、化合物2は、非晶質化合物2を実質的に含まない結晶性固体である。本明細書で使用される「実質的に非晶質化合物2を含まない」という用語は、化合物が有意な量の非晶質化合物2を含まないことを意味する。特定の実施形態において、少なくとも約95重量%の結晶性化合物2が存在する。本発明のさらに他の実施形態において、少なくとも約99重量%の結晶性化合物2が存在する。
【0019】
いくつかの実施形態では、化合物2は、(化合物1):(コハク酸)約1:1である化学量論を有する。
【0020】
化合物2は少なくとも2つの異なる固体形態で存在し得ることが見出された。
【0021】
化合物2の形態1
特定の実施形態において、化合物2の形態1の粉末X線回折パターンは、
図1に提供されるXRPDと実質的に同様である。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、以下の表Aに列挙されたピークから選択される少なくとも1、2、3、4または5のスペクトルピークを有する。
【表1】
【0022】
いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される1つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される2つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される3つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される4つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される5つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される6つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される7つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態1は、それが約5.33、約7.59、約9.75、約13.69、約17.91、約18.14、約20.12、または約24.73度2θにあるピークから選択される8つすべてのピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。本明細書で使用される、度2θ値に関連して使用されるときの「約」という用語は、述べられた値±0.2度2θを指す。
【0023】
化合物2の形態1を調製する方法は以下に記載されている。
【0024】
化合物2の形態2
特定の実施形態において、化合物2の形態2の粉末X線回折パターンは、
図5に提供されるXRPDと実質的に同様である。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、以下の表Bに列挙されるピークから選択される少なくとも1、2、3、4または5のスペクトルピークを有する。
【表2】
【0025】
いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される1つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される2つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される3つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される4つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される5つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される6つ以上のピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。いくつかの実施形態において、化合物2の形態2は、それが約6.76、約8.77、約9.06、約12.00、約13.53、約18.13、または約20.07度2θにあるピークから選択される7つすべてのピークをその粉末X線回折パターンに有することを特徴とする。
【0026】
化合物2の形態2を調製する方法は以下に記載されている。
【0027】
化合物を提供する一般的な方法
化合物1は、‘800出願に詳細に記載されている方法に従って調製される。
【0028】
本明細書に記載されるように、化合物2およびその形態は、化合物1をコハク酸と組み合わせて生成物化合物2を形成することにより化合物1から調製される。化合物1およびコハク酸の化学量論は変えることができる。したがって、本発明の別の態様は、化合物2、およびその形態を調製するための方法を提供する。
【0029】
上に一般的に記載したように、いくつかの実施形態において、本発明は、化合物2を調製するための方法であって、
【化3】
化合物2を形成するのに適した条件下で、化合物1を
【化4】
コハク酸、および場合により適切な溶媒と組み合わせる工程を含む方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明は、化合物2の形態1である、化合物1およびコハク酸を含む固体形態を作製する方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明は、化合物2の形態2である、化合物1およびコハク酸を含む固体形態を作製する方法を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明は、非晶質である、化合物1およびコハク酸を含む固体形態を作製する方法を提供する。
【0033】
適切な溶媒は、化合物1および/またはコハク酸が可溶性であるか、または少なくとも部分的に可溶性である任意の溶媒系(例えば、1つの溶媒または溶媒の混合物)であり得る。
【0034】
本発明において有用な適切な溶媒の例としては、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、適切な溶媒は、エーテル、エステル、アルコール、ケトン、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、溶媒は1つ以上の有機アルコールである。
【0035】
特定の実施形態では、適切な溶媒はメタノール、エタノール、2-プロパノール、またはアセトンであり、ここで前記溶媒は無水であるかまたは水と組み合わせたものである。いくつかの実施形態において、適切な溶媒としては、アセトン、シクロヘキサノン、メチルt-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メタノール、エタノール、2-プロパノール、または水が挙げられる。いくつかの実施形態では、適切な溶媒はエタノールである。いくつかの実施形態において、適切な溶媒は無水エタノールである。いくつかの実施形態では、適切な溶媒はエタノールと水の混合物である。いくつかの実施形態では、適切な溶媒はエタノールと酢酸エチルの混合物である。
【0036】
いくつかの実施形態において、本発明は、溶媒を除去する工程および/または溶媒を添加する工程を含む、化合物2を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態において、添加された溶媒は、除去された溶媒と同じである。いくつかの実施形態において、添加された溶媒は、除去された溶媒とは異なる。溶媒除去の手段は、合成および化学技術分野において公知であり、そして本明細書および以下の実施例に記載されるもののいずれかを含むが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態において、化合物2を調製する方法は、調製物を加熱および/または冷却する工程を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、化合物2を調製する方法は、調製物をかき混ぜるおよび/または撹拌する工程を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、化合物2を調製する方法は、化合物1の溶液またはスラリーにコハク酸を添加する工程を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、化合物2を調製するための方法は、加熱する工程を包含する。
【0041】
特定の実施形態において、化合物2は混合物から沈殿する。いくつかの実施形態において、化合物2は混合物から結晶化する。いくつかの実施形態において、化合物2は、溶液の播種(すなわち、化合物2の結晶を溶液に添加する)後に溶液から結晶化する。
【0042】
化合物2は反応混合物から沈殿するか、または蒸発、蒸留、濾過(例えば、ナノ濾過、限外濾過)、逆浸透、吸収および反応などの方法を介して溶媒の一部または全部を除去することによって、ヘプタンのような貧溶媒を加えることによって、冷却することによって、もしくはこれらの方法の異なる組み合わせによって生成することができる。
【0043】
上記に一般的に記載されているように、化合物2は場合により単離される。化合物2は、当業者に知られている任意の適切な物理的手段によって単離することができることが理解されよう。特定の実施形態において、沈殿した固体化合物2は、濾過により上清から分離される。他の実施形態において、沈殿した化合物2は、上清をデカントすることによって上清から分離される。
【0044】
特定の実施形態において、化合物2は、濾過によって上清から分離される。
【0045】
特定の実施形態において、単離された化合物2は空気中で乾燥される。他の実施形態において、単離された化合物2は減圧下で、任意に高温で乾燥される。
【0046】
本明細書に記載されるように、化合物2は非晶質固体であり得る。非晶質固体は当業者に周知であり、とりわけ凍結乾燥、溶融、沈殿(例えば超臨界流体からの)、機械的処理(例えばミリング)、急冷、脱溶媒和、回転蒸発、沈殿、および噴霧乾燥などの様々な方法によって調製することができる。
【0047】
用途、製剤化および投与
多くの種類の血液癌の中で、B細胞リンパ性悪性腫瘍は、リンパ節、そしてしばしば血液、骨髄、脾臓、および肝臓などの臓器におけるモノクローナルの新生物性Bリンパ球の蓄積から生じる。これらの癌の変異型には、例えば、非ホジキンリンパ腫(NHL)-慢性リンパ性白血病/小リンパ性リンパ腫(CLL/SLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレームマクログロブリン血症(LPL/WM)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が含まれる。これらの障害は、リンパ節症および脾腫を特徴とし、そして最終的に生命を脅かす臓器機能不全を誘発し得る。患者はまた、全身症状(発熱、寝汗、および/または体重減少)および疲労を有することもある。LPL/WMを有する患者は、免疫グロブリン(Ig)M産生形質細胞の過剰産生を有し、そして血漿過粘稠度を発症し得る。
【0048】
これらの疾患に対する治療の目的は、疾患に関連する合併症を抑制しそして潜在的に寿命を延ばすために、腫瘍退縮を誘導するかまたは腫瘍進行を遅らせることである。治療を必要とする患者には、通常化学療法薬および/または免疫療法薬が投与される。前線と再発の両方の疾患に対して、より多くの非化学療法の選択肢が利用可能であり、イブルチニブ(ibrutinib)、ベネトクラックス(venetoclax)、およびイデラリシブ(idelasib)が含まれる。前線への併用療法は、長期寛解を提供するのに効果的であり得るが、ほとんどの患者は最終的に疾患の再発を経験するであろう。これらの癌のいずれについても、疾患の発現を抑制するためにさらなる治療法が与えられている。機序が異なる薬剤を使用しているにもかかわらず、治療に対する漸進的耐性が頻繁に発生する。難治性または多発性再発進行性疾患(PD)患者は予後不良であり、最終的にこれらの癌で死亡する可能性がある。疾患の進行を経験したBリンパ性悪性腫瘍患者に追加の治療選択肢を提供するためには、新しい機序が必要である。
【0049】
ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)は、B細胞、骨髄細胞、肥満細胞、血小板などの造血系起源の細胞間で発現するTECキナーゼファミリーの非受容体酵素であり、増殖、分化、アポトーシス、細胞遊走を含む複数の細胞プロセスを調節する。BTK活性化はいくつかのB細胞悪性腫瘍の病因に関与している(Buggy JJ,Elias L.Int Rev Immunol.2012;31(2):119-32、Herman SE,Gordon AL,Hertlein E,et al.Blood.2011;117(23):6287-96、Kil LP,de Bruijn MJ,van Hulst JA,Langerak AW,Yuvaraj S,Hendriks RW.Am J Blood Res.2013;3(1):71-83、Tai YT,Chang BY,Kong SY,et al.Blood.2012;120(9):1877-87、Woyach JA,Bojnik E,Ruppert AS,et al.Blood.2014;123(8):1207-13)。
【0050】
イブルチニブ(PCI-32765、IMBRUVICA(登録商標))は、腫瘍学での使用が承認された最初の治療用BTK阻害剤である。この経口送達された、低分子の不可逆的なBTKの阻害剤は、B細胞悪性腫瘍の治療のために開発された。重度の前治療を受けたFL、MCL、CLL、およびLPL/WMを有する対象において、イブルチニブは実質的な抗腫瘍活性を示し、リンパ節症および脾腫の永続的な後退を誘導した。これらの研究に基づき、イブルチニブは、MCL、CLL、およびLPL/WMの治療に、米国、欧州連合(EU)、およびその他の地域の規制当局によって承認されている。
【0051】
これらのデータは、癌への治療的アプローチとしてのBTK阻害の概念を支持している。しかしながら、イブルチニブに対する耐性が診療所で観察され、再発または疾病管理の喪失をもたらし、患者に治療選択肢をほとんど与えない。腫瘍進行の機序の中で、イブルチニブ-BTK結合部位でのC481の後天的変異が、CLL、MCL、およびWMにおける腫瘍制御の喪失の原因として報告されている(Woyach JA,Bojnik E,Ruppert AS,et al.2014)。耐性を生じる患者はまた、他のBTK変異またはBTKの下流の変異、例えばホスホリパーゼCガンマ2(PLCγ2)のR665WまたはL845F変異によってもそうなり得る。BTKおよびPLCγ2の両方における変異の存在もまた観察されている(Woyach、2014)。さらに、第1相の経験では、イブルチニブ療法は用量制限毒性(DLT)と関連していなかったが、この薬は慢性的な使用で有害事象(AE)を引き起こす可能性がある。これらの影響は、複数のキナーゼのその不可逆的なオフターゲット阻害に関連している可能性がある。一般的な副作用には、軽度から中等度の下痢および発疹が含まれており(IMBRUVICA(登録商標)US Package Insert,2016)、上皮成長因子受容体(EGFR)のオフターゲット阻害によって潜在的に引き起こされる(Gao W,Wang M,Wang L,et al.J Natl Cancer Inst.2014;106(9))。時折深刻な出血を伴うあざの傾向が高まることが注目されており(IMBRUVICA(登録商標)US Package Insert、2016)、そのような影響は血管損傷に応答した安定した止血栓の形成におけるTECキナーゼの関与と相関し得、そしてデータは、イブルチニブによるBTKおよび他のTECキナーゼの同時阻害が血小板活性化を損なうことを示す。心房細動は、慢性的なイブルチニブ療法を受けている試験参加者の3.5~6.5%に見られ、実験データは、この心臓への影響の潜在的な原因として、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)-AKT活性に対するイブルチニブの影響を示唆している。
【0052】
本発明は、イブルチニブとは異なり、BTKとの相互作用や独自の薬物動態との相互作用にC481は必要とせず、イブルチニブ不応性疾患を有する患者の耐病性を回避する可能性があり、他のキナーゼに対するBTKの選択性を変えることにより、患者に改善された治療プロファイルを提供し得る、強力阻害剤の開発という認識を包含する。
【0053】
特定の実施形態において、本発明の化合物は医学における使用のためのものである。いくつかの実施形態において、本発明は、Tecキナーゼファミリー(例えば、Tec、Btk、Itk、Txk、Lck、およびBmx)中のキナーゼの酵素活性を低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、そのような方法は、Tecキナーゼファミリーのキナーゼを有効量のTecキナーゼファミリー阻害剤と接触させることを含む。したがって、本発明はさらに、Tecキナーゼファミリーメンバーを本発明のTecキナーゼファミリー阻害剤と接触させることによってTecキナーゼファミリー酵素活性を阻害する方法を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「Tecキナーゼファミリーメンバー」とは、Tecキナーゼファミリー中の任意の非受容体型チロシンキナーゼをいう。いくつかの実施形態において、Tecキナーゼファミリーメンバーは、Tec、Btk、Itk、Txk、Lck、およびBmxである。
【0054】
いくつかの態様において、本発明はBtk酵素活性を低下させる方法を提供する。いくつかの実施形態では、そのような方法は、Btkを有効量のBtk阻害剤と接触させることを含む。したがって、本発明はさらに、Btkを本発明のBtk阻害剤と接触させることによってBtk酵素活性を阻害する方法を提供する。
【0055】
不可逆的BTK阻害剤であるイブルチニブおよびアカラブルチニブ(acalabrutinib)は、様々なB細胞悪性腫瘍において有効性を示したが(Advani RH,et al.J Clin Oncol.2013;31:88-94;Byrd JC,et al.N Engl J Med.2016;374:323-32)、しかしながら、キナーゼ活性部位上のCys481Ser変異に起因するイブルチニブに対する獲得耐性が報告されており、その結果実質的に活性が低下した(Binnerts ME,et al.Mol Cancer Ther.2015;14(12 Suppl 2)、Woyach JA,et al.N Engl J Med.2014;370:2286-94)。第1/2相臨床試験に参加した患者について報告されているように、C481耐性変異の発生もアカラブルチニブ曝露に応答して予想される(Byrd、2016)。
【0056】
化合物1は、ナノモル未満の濃度でBTK活性を阻害し、共有結合性BTK阻害剤とは異なり、活性のためにキナーゼ活性部位上のCys481との相互作用を必要としない。化合物1はまた、BTKの下流(例えば、CD69発現、ホスホリパーゼCγ[PLCγ]リン酸化、およびCD63のFcεR媒介発現)の阻害を示した。化合物2(遊離塩基)の活性は、イブルチニブおよびアカラブルチニブとは対照的に、Cys481Ser変異による影響を受けない。
図11を参照されたい。倍数変化(fold change)は、WT BTKに対する化合物のIC
50で割ったC481S-BTKに対する化合物のIC
50として表される。
【0057】
これらの知見は、C481 BTK(野生型)またはC481S BTK(変異体)のいずれかを過剰発現するようにトランスフェクトされたヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞を用いる細胞ベースのアッセイシステムに拡大された(
図17参照)。C481 BTKおよびC481S BTKの化合物1による阻害は類似していた。しかしながら、イブルチニブの効力は>100倍減少した。これらのデータは、C481S変異に対するイブルチニブ媒介BTK阻害の感受性、および化合物1阻害活性に対するこの変異の最小の影響を確認する。
【0058】
さらに、化合物1は、イブルチニブとは異なり、上皮成長因子受容体(EGFR)をそれほど阻害せず、そして制限されたキナーゼ選択性プロフィールを有する(456のキナーゼおよびキナーゼ変異型のパネルに対する活性が評価された)。化合物1は9個のキナーゼを阻害し、Kmおよび/またはIC50および/またはKdは25nM未満であった。インビトロキナーゼアッセイにおいて、化合物1は、それぞれ0.4nM、24nM、および19nMのIC50値でBTK、ITK、およびTECを阻害し、そしてBMXおよびTXKに対して有意な活性を示さなかった(Kd≧200nM)。化合物1のキナーゼ選択性プロフィールは、これらの選択性の違いのために既存のBTK阻害剤よりも改善された安全性および耐容性をもたらし得る。
【0059】
本明細書中で使用される場合、Btk酵素活性は、Btkキナーゼ酵素活性をいう。例えば、Btk酵素活性が低下すると、PIP3結合および/またはPLCγのリン酸化が低下する。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤の最大半量阻害濃度(IC50)は、1μM未満である。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は500nM未満である。いくつかの実施形態では、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は100nM未満である。いくつかの実施形態では、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は10nM未満である。いくつかの実施形態では、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は1nM未満である。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は、0.1nMから10μMである。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は、0.1nMから1μMである。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は、0.1nMから100nMである。いくつかの実施形態において、Btkに対するBtk阻害剤のIC50は、0.1nMから10nMである。
【0060】
いくつかの実施形態では、そのようなTecキナーゼの阻害剤は、1つまたは複数のTecキナーゼの酵素活性を阻害する(すなわち低下させる)ことによって軽減され得る疾患および障害の治療に有用である。本発明の化合物は、Tecファミリーキナーゼの有効な阻害剤であり、したがって1種以上のTecファミリーキナーゼの活性に関連する疾患を治療するのに有用であろう。用語「疾患」は、疾患、症候群、または疾患の症状を意味する。したがって、本発明は、それを必要とする対象において自己免疫障害、炎症性障害、癌、および前癌状態を治療する方法を提供する。本発明はさらに、ブルトンのチロシンキナーゼの阻害に反応する疾患を治療する方法を提供する。そのような方法は、治療有効量のTec、Btk、Itk、Txk、Lck、および/またはBmxキナーゼの阻害剤を対象に投与することを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、本発明は、患者がBTK Cys481変異を有する、BTKの阻害に応答する障害を有する患者を治療する改善された方法を提供する。いくつかの実施形態において、患者は機能的BTK Cys481変異を有する。いくつかの実施形態では、機能的BTK Cys481変異はC481S、C481F、C481GまたはC481Tから選択される。いくつかの実施形態では、機能的BTK Cys481変異はC481Sである。いくつかの実施形態において、そのようなBTK Cys481変異を有する患者は、以前にBTK阻害剤による治療を受けている。いくつかの実施形態では、BTK Cys481変異を有する患者は、Cys481変異を有さないBTKと比べて、Cys481変異を有するBTKに対してより低い活性を有するBTK阻害剤による治療を以前に受けている。いくつかの実施形態では、BTK Cys481変異を有する患者は、以前にイブルチニブまたはアカラブルチニブによる治療を受けている。いくつかの実施形態では、本発明は、BTKがイブルチニブに耐性がある、BTKの阻害に反応性の障害を有する患者を治療する方法を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明は、1回、2回、またはそれ以上の以前の治療を受けた患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも1回の以前の治療はBTK阻害剤であった。いくつかの実施形態では、以前の治療用BTK阻害剤は、イブルチニブまたはアカラブルチニブであった。
【0063】
別の態様では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する患者を治療する方法であって、前記患者が以前の化学療法薬で治療され、以前の化学療法薬の活性を損なう変異を獲得しており、患者に有効量の提供される化合物を投与することを含む。
【0064】
WO2016/054627 A1は、対象における血液癌の治療方法を開示しており、その方法は、BTKまたはPLCγ2における後天的変異の存在についてモニタリングするステップを含み、ここでBTK阻害剤活性に影響を及ぼすBTKまたはPLCγ2における後天的変異の存在は、対象がBTK阻害剤に対して抵抗性になりつつあることの指標である。
【0065】
別の態様では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する患者を治療する方法であって、前記患者が第1のBTK阻害剤で治療され、そして第1のBTK阻害剤の活性を損なう変異を獲得しており、有効量の提供された化合物を患者に投与することを含む方法を提供する。
【0066】
別の態様では、本発明は、BTKの阻害に応答性する障害を有する患者を治療する方法であって、前記患者が、第1のBTK阻害剤で治療され、そして第1のBTK阻害剤の活性を損なう機能的BTK Cys481変異を獲得しており、有効量の提供された化合物を患者に投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用されるとき、用語「第1のBTK阻害剤」は、非限定的な例として、イブルチニブ(PCI-32765)、アカララブルチニブ(acalarabrutinib)、BGB-3111、GS-4059、ARQ531、RDX06961、およびスペブルチニブ(spebrutinib)を含む任意の公知のBTK阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、第1のBTK阻害剤はBTKの共有結合阻害剤である。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法であって、
(a)治療有効量の第1のBTK阻害剤を含む組成物を対象に投与することと、
(b)対象から血液または組織試料を採取し、そこからDNAを抽出することと、
(c)DNAを分析して、第1のBTK阻害剤にBTK阻害剤耐性を付与する1以上の遺伝子配列を同定することと、
(d)任意に、工程(b)および(c)を繰り返して、第1のBTK阻害剤に対してBTK阻害剤耐性を付与する後天的変異の存在についてモニターすることと、
(e)治療有効量の提供された化合物を含む組成物を、第1のBTK阻害剤に対してBTK阻害剤耐性を付与する後天的変異を有する対象に投与することと、を含む方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法であって、
(a)治療有効量の第1のBTK阻害剤を含む組成物を対象に投与することと、
(b)対象から血液または組織試料を採取し、そこからDNAを抽出することと、
(c)DNAを分析して、BTK、PLCγ2、またはそれらの組み合わせに特徴的な1つ以上の遺伝子配列を同定することと、
(d)任意に、工程(b)および(c)を繰り返して、第1のBTK阻害剤のBTK阻害活性に影響を及ぼすBTKまたはPLCγ2中の後天的変異の存在についてモニターすることと、
(e)治療有効量の提供された化合物を含む組成物を、BTKまたはPLCγ2の後天的変異を有する対象に投与することと、を含む方法を提供する。
【0069】
いくつかの実施形態では、BTK阻害に応答する障害は血液癌、または他の障害である。いくつかの実施態様において、血液癌はB細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施態様において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ性白血病、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Waldenstrom’s macroglobulinemia)、またはマントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法であって、
(a)対象から血液または組織試料を採取し、そこからDNAを抽出することと、
(b)DNAを分析して、BTK阻害剤耐性を付与する1以上の遺伝子配列を同定することと、
(c)治療有効量の提供される化合物を含む組成物を、BTK阻害剤耐性を付与する後天的変異を有する対象に投与することと、を含む方法を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明は、BTKの阻害に応答する障害を有する対象を治療する方法であって、
(a)対象から血液または組織試料を採取し、そこからDNAを抽出することと、
(b)DNAを分析して、BTK、PLCγ2、またはそれらの組み合わせに特徴的な1つ以上の遺伝子配列を同定し、BTK阻害活性に影響を及ぼすBTKまたはPLCγ2中の後天的変異の存在を決定することと、
(c)治療有効量の提供される化合物を含む組成物を、BTKまたはPLCγ2に後天的変異を有する対象に投与することと、を含む方法を提供する。
【0072】
本明細書に記載の提供された化合物を使用する方法に関して、本発明はそのような方法における化合物1の使用を包含することが理解されよう。
【0073】
用語「自己免疫障害」は、天然抗原に対する不適切な免疫応答を伴う疾患または障害、例えば急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、円形脱毛症、抗リン脂質抗体症候群(APS)、溶血性貧血、自己免疫性肝炎、水疱性類天疱瘡(BP)、セリアック病、皮膚筋炎、1型糖尿病、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギランバレー症候群(GBS)、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、エリテマトーデスまたは全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、インヒビター保有血友病、悪性貧血、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、シェーグレン症候群、側頭動脈炎およびウェゲナー肉芽腫症が含まれる。用語「炎症性障害」は、アレルギー、喘息(例えば、アレルギー性喘息)、アトピー性皮膚炎、前立腺炎、糸球体腎炎、骨盤内炎症性疾患(PID)、炎症性腸疾患(IBD、例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎)、再灌流障害、関節リウマチ、移植拒絶反応(陽性の交差適合を有する移植患者を含む)および血管炎、などの急性または慢性の炎症を伴う疾患または障害を含む。特定の実施形態において、本発明は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、RA、ウェゲナー肉芽腫症(WG)および顕微鏡的多発性血管炎(MPA)を含む、リツキシマブ(CD20に対するモノクローナル抗体)による治療が承認されている疾患、障害、または状態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示されている化合物を使用して、関節リウマチ(RA)、SLE、またはアトピー性皮膚炎を治療する方法を提供する。
【0074】
用語「癌」は、神経膠腫、甲状腺癌、乳癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、胃癌、胃腸間質腫瘍、膵臓癌、胆管癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、腎臓細胞癌、リンパ腫(例えば、未分化大細胞リンパ腫)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞白血病、慢性リンパ性白血病)、多発性骨髄腫、悪性中皮腫、悪性黒色腫、マントル細胞リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および結腸癌(例えば、マイクロサテライト不安定性が高い大腸癌(microsatellite instability-high colorectal cancer))などの異常な細胞成長および/または増殖を伴う疾患または障害を含む。いくつかの実施形態では、癌は、B細胞、例えばB細胞悪性腫瘍の異常な活性によって特徴付けられる。
【0075】
別の態様では、本発明は血液癌である癌を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態において、提供される方法は、治療有効量の提供される化合物を対象に投与することを含む。用語「血液癌」は、血液由来の腫瘍、ならびにリンパ腫、白血病、および骨髄腫などの造血起源の組織における異常な細胞成長および/または増殖を伴う疾患または障害を含む。本発明に従って治療することができる血液癌には、例えば、未分化大細胞型リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫(例えば、ABCびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、GCBびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、T細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、組織球性リンパ腫、T細胞性白血病、慢性リンパ性白血病(CLL)、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、小リンパ性リンパ腫(SLL)、リンパ芽球性リンパ腫(LPL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性骨髄芽球性白血病、形質細胞性白血病、およびワルデンストレームマクログロブリン血症(WM、リンパ形質細胞性リンパ腫としても知られる)が含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明は、Bリンパ系(B細胞)悪性腫瘍を治療する方法を提供する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明は、急性骨髄性白血病(再発性または難治性AMLなど)または骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明は、C481S、C481F、C481G、C481TのようなCys481変異の獲得による不可逆的BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ)に耐性のある自己免疫障害または癌または前癌状態を有する患者を治療する方法を提供する。
【0079】
用語「前癌状態」は、癌性になる傾向があるかまたはそうになりそうな状態、異常な組織成長、および病変を含む。前癌状態としては、例えば、光線性角化症、結腸腺腫性ポリープ、子宮頸部異形成、および骨髄線維症、再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、真性赤血球増加症、および骨髄異形成症候群などの先行する血液疾患が含まれる。
【0080】
他の態様では、本発明は、自己免疫障害、炎症性障害、および癌から選択される障害の治療のための医薬の調製における化合物2の固体形態の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、アトピー性皮膚炎、白血病、またはリンパ腫の治療のための医薬の調製における固体形態の使用を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、急性骨髄性白血病または慢性リンパ性白血病の治療のための医薬の調製における固体形態の使用を提供する。
【0081】
本明細書で使用される用語「対象」は、薬学的組成物が投与される哺乳動物を指す。例示的な対象としては、ヒト、ならびにウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、および水生哺乳動物などの獣医学的動物および実験動物が挙げられる。
【0082】
選択された適応症とB細胞阻害
上記のように、提供される化合物は、RAおよびSLEを含む疾患の治療に有用である。以下により詳細に記載されるように、これらの疾患はB細胞と関連している。したがって、本開示は、提供された化合物がこれらおよび他の適応症のための治療薬として有用であるという認識を包含する。したがって、一態様では、本発明は、病状がB細胞の異常な活性を特徴とする病状(medical condition)、疾患(disease)、または障害(disorder)を治療する方法であって、有効量の本発明の化合物またはその組成物を対象に投与することを含む。
【0083】
免疫系の調節不全は、RAの病因の中心である(Panayi GS,et al.Rheum Dis Clin North Am.2001,27:317-334)。滑膜内の浸潤白血球のほとんどはTリンパ球(主に活性化CD4+T細胞)および単球/マクロファージ起源の細胞(IL-1、TNF-α、IL-6などの炎症性サイトカイン、コラゲナーゼやメタロプロテイナーゼなどのタンパク質分解酵素を放出する)であるが、B細胞および形質細胞も滑液中に見られる(Zhang Z,Bridges SL.Rheum Dis Clin North Am.2001;27:335-353)。RAにおけるB細胞およびそれらに関連するエフェクター機能の明確な役割は、RAの治療に承認されている選択的B細胞枯渇治療薬であるリツキシマブの有効性によって実証されている(Cohen SB,et al.;REFLEX Trial Group.Arthritis Rheum.2006 Sep;54(9):2793-806)。
【0084】
SLEの病因は完全には理解されていないが、病原性自己抗体および免疫複合体の沈着は広範囲にわたる組織損傷の発生に決定的に重要であると考えられている(Klippel JH,et al.Primer on the rheumatic diseases.Atlanta:Arthritis Foundation;2001)。自己抗体および免疫複合体媒介活性化は、Fc受容体を介して刺激されたマクロファージによるマクロファージ活性化の阻害を測定することによって研究することができる(例示-一次ヒトマクロファージのFcγR活性化を参照)。自己抗原に対する寛容性の喪失は、最終的には、B細胞を刺激して、しばしば核または細胞質成分に対する自己抗体を産生させる。核成分に対する抗体(抗核抗体[ANA])は、DNA(典型的には二本鎖DNA[dsDNA])、RNA、ヒストンおよび核内低分子リボ核タンパク質を含む核抗原を標的とする。これらの抗体は自己抗原と結合して組織内に沈着する免疫複合体を形成し、炎症反応を誘発し、そして組織損傷をもたらす。病原性自己抗体産生におけるそれらの役割に加えて、B細胞はT細胞に対する抗原提示細胞(APC)としても機能し、したがって抗原特異的応答の開始において役割を果たす。SLEの病因における免疫系の体液性腕の中心的役割を考えると、B細胞またはB細胞経路が望ましい治療標的を表す。SLEについて最近承認されたモノクローナル抗体であるベリムマブは、B細胞を発現しているその受容体へのBAFFの結合を遮断する。これらの受容体は、ベリムマブによる治療後に観察される循環B細胞の減少と一致して、B細胞の生存を活性化および増強するのに役立つ。Chan OT,et al.Immunol Rev.1999b;169:107-121、Navarra SV,et al.Lancet.2011 Feb 26;377(9767):721-31、Furie R,et al.Arthritis Rheum.2011 Dec;63(12):3918-30も参照されたい。SLEなどの自己免疫疾患におけるB細胞および骨髄系統細胞の役割は、マウスを小分子不可逆性Btk阻害剤で処置したときの前臨床SLE動物モデルにおける有効性を記載している最近の刊行物によってさらに支持される(Honigberg,LA PNAS.2010;107:13075)。
【0085】
組み合わせ
特定の実施形態において、本発明の化合物は他の薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、RAを治療するために有用であり、限定するものではないが、メトトレキサート、アバタセプト、アザチオプリン、セルトリズマブ、クロロキンおよびヒドロキシクロロキン、シクロスポリン、D-ペニシラミン、アダリムマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、金塩(オーラノフィンおよび金チオリンゴ酸ナトリウムを含む)、インフリキシマブ、レフルノミド、ミノサイクリン、リツキシマブ、スルファサラジン、トシリズマブ、またはそれらの組み合わせを含む疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、NSAIDまたはコルチコステロイドと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、本発明の化合物はSLEを治療するのに有用であり、限定するものではないがコルチコステロイド、抗マラリア薬、ベリムマブ、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはミコフェノール酸ナトリウム、アザチオプリンまたはそれらの組み合わせを含むSLE治療薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、アトピー性皮膚炎の治療に有用であり、限定するものではないが、局所ステロイド、タクロリムス、メトトレキサート、モメタゾンフロエート(MMF)、アザチオプリン、レチノイド、またはそれらの組み合わせを含むアトピー性皮膚炎の治療のための局所薬剤と組み合わせて投与される。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明の化合物またはその組成物と少なくとも1つの追加の活性薬剤またはその組成物との組み合わせによる癌の治療方法を提供する。
【0087】
提供される化合物と組み合わせて第2の活性剤として使用され得る化学療法抗癌剤の例としては、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、イホスファミド)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート)、オーロラキナーゼ阻害剤(例えば、ZM447439、ヘスペリジン、VX-680 AZD1152)、プリンアンタゴニストおよびピリミジンアンタゴニスト(例えば、6-メルカプトプリン、5フルオロウラシル(5-FU)、シタラビン(Ara-C)、ゲムシタビン)、紡錘体毒(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、パクリタキセル)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、イリノテカン、トポテカン)、抗生物質(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン)、ニトロソウレア(例えばカルムスチン、ロムスチン)、無機イオン(例えば、シスプラチン、カルボプラチンなどの白金錯体)、酵素(例えば、アスパラギナーゼ)、ホルモン(例えば、タモキシフェン、ロイプロリド、フルタミド、およびメゲストロール)、トポイソメラーゼII阻害剤または毒、EGFR(Her1、ErbB-1)阻害剤(例えば、ゲフィチニブ)、抗体(例えば、ベバシズマブ、リツキシマブ)、IMID(例えば、サリドマイド、レナリドマイド)、様々な標的薬剤(例えば、ボリノスタットなどのHDAC阻害剤)、Bcl-2阻害剤、VEGF阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、サイクリン依存性キナーゼ(cdk)阻害剤(例えば、セリシクリブ(seliciclib))、キノロン誘導体(例えば、ボサロキシン)、およびデキサメタゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
他の実施形態において、提供された化合物は、PDK1阻害剤、例えば、GSK2334470(GlaxoSmithKline)、BX-795、BX-912、およびBX-320(Berlex)、Akt阻害剤、例えばMK-2206(Merck)、PI3K阻害剤、例えばGDC-0941(ピクチリシブ、Genentech)、イデラリシブ(Gilead)、BTK阻害剤(例えば、GS-4059(Gilead))との併用療法において使用され得る。
【0089】
血液学的腫瘍および固形腫瘍の治療において、第2の薬剤は、PD 1/PD-L1の阻害剤、例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、およびMPDL328OA、CTLA-4阻害剤、例えば、イピリムマブおよびトレメリムマブ、ならびにホスファチジルセリン阻害剤、例えば、バビツキシマブを含み得る。
【0090】
急性骨髄性白血病の治療において、第2の薬剤には、例えば、シタラビン(ara-C)、低メチル化剤(例えば、アザシチジン、デシタビン)、ダウノルビシン、およびボサロキシンが含まれる。
【0091】
慢性リンパ性白血病の治療において、第2の薬剤には、例えば、BTK阻害剤(例えば、イブルチニブ(PCI-32765)、アラカラルチニブ、スペブチニブ)、CD20アンタゴニスト、例えば抗CD20抗体(例えば、オフマツマブ(Genmab(商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(商標))、リツキシマブ(Rituxan(商標))、イブリツモマブ チウキセタン(Zevalin(商標))、トシツマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ(OCREVUS(商標))、ベルツズマブ)、B細胞リンパ腫-2(Bcl-2)タンパク質阻害剤(例えばベネトクラックス(Venclexta(商標))、PI3K阻害剤(例えば、ピクチリシブ、イデラリシブ(Zydelig(商標))、デュベリシブ)、抗CD74抗体(例えば、ミラツズマブ)、およびアルキル化剤(例えば、クロラムブシル)が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、例えば、CD20アンタゴニストとBcl-2阻害剤(例えば、リツキシマブとベネトクラックス)との組み合わせなどの第2の薬剤の組み合わせを使用することができる。
【0093】
製剤
本発明の化合物は、多種多様の経口投与形態、非経口投与形態、および局所投与形態で調製および投与することができる。したがって、本発明の化合物は注射(例えば、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内)によって投与することができる。また、本明細書に記載の化合物は、吸入によって、例えば鼻腔内に投与することができる。さらに、本発明の化合物は経皮投与することができる。複数の投与経路(例えば、筋肉内、経口、経皮)が本発明の化合物を投与するために使用され得ることもまた想定される。したがって、本発明はまた、薬学的に許容される担体または賦形剤および1種以上の本発明の化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0094】
本発明の化合物から薬学的組成物を調製するためには、薬学的に許容される担体は固体または液体のいずれであってもよい。固形調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても作用し得る1つ以上の物質であってよい。
【0095】
散剤では、担体は、微粉化有効成分との混合物中の微粉化固体である。錠剤では、有効成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、そして所望の形状およびサイズに圧縮される。
【0096】
散剤および錠剤は、好ましくは5%~70%の活性化合物を含有する。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバターなどである。用語「調製物」は、他の担体を含むかまたは含まない有効成分が担体に囲まれており、したがって、それに関連しているカプセルを提供している担体としてのカプセル化材料を含む活性化合物の製剤を含むことを意図する。同様に、カシェ剤およびトローチ剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびトローチ剤は、経口投与に適した固形の剤形として使用することができる。
【0097】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ワックスを最初に溶融し、有効成分を撹拌などによってその中に均一に分散させる。次に、溶融した均質混合物を都合の良い大きさの型に注ぎ込み、冷却させ、それによって固化させる。
【0098】
液状調製物としては、溶液、懸濁液、および乳濁液、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液が含まれる。非経口注射のためには、液体調製物はポリエチレングリコール水溶液中の溶液で製剤化することができる。
【0099】
非経口投与が必要または望ましい場合、本発明の化合物に特に適した混和剤は、注射可能な滅菌溶液、好ましくは油性または水性溶液、ならびに懸濁液、エマルジョン、または座薬を含むインプラントである。特に、非経口投与用の担体としては、デキストロース、生理食塩水、純水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、落花生油、ゴマ油、ポリオキシエチレンブロックポリマーなどの水溶液が挙げられる。アンプルは便利な単位投与量である。本発明の化合物はまた、リポソームに取り込まれるか、または経皮ポンプまたはパッチを介して投与され得る。本発明での使用に適した薬学的混和剤としては、例えば、Pharmaceutical Sciences(17th Ed.,Mack Pub.Co.,Easton,PA)およびWO96/05309に記載されているものが挙げられ、これらの両方の教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
経口使用に適した水溶液は、有効成分を水に溶解し、そして必要に応じて適切な着色剤、香味剤、安定剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、天然または合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および他の周知の懸濁剤のような粘性材料とともに微粉化有効成分を水中に分散させることによって製造することができる。
【0101】
使用直前に経口投与用の液状調製物に変換することを意図した固形調製物も含まれる。そのような液状形態は、溶液、懸濁液、および乳濁液を含む。これらの調製物は、有効成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含み得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、薬学的組成物は、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、または坐剤として、単位剤形(unit dosage form)で提供される。そのような形態では、組成物は適切な量の有効成分を含有する単位用量に細分され、単位剤形は、包装された組成物、例えば、包装された散剤、バイアル、アンプル、プレフィルドシリンジまたは液体を含む小袋であり得る。単位剤形は、例えば、カプセル剤または錠剤自体であり得るか、またはパッケージ形態の適切な数の任意のそのような組成物であり得る。このような単位剤形は、例えば、約0.01mg/kg~約250mg/kgを含み得、そして単回投与または2回以上の分割投与で与えられ得る。投与量の変動は必然的に治療を受けている患者の種、体重、状態、そして患者の薬剤に対する個々の反応によって異なる。
【0103】
単位用量調製物中の有効成分の量は、特定用途および有効成分の効力に応じて、0.1mg~10000mg、より典型的には1.0mg~1000mg、最も典型的には10mg~500mgに変動または調整することができる。組成物は、所望であれば、他の適合性のある治療薬も含み得る。
【0104】
いくつかの化合物は、水中での溶解度が制限されている可能性があり、したがって組成物中に界面活性剤または他の適切な共溶媒を必要としてよい。そのような共溶媒には、Polysorbate 20、60、および80、Pluronic F-68、F-84、およびP-103、シクロデキストリンおよびポリオキシル35ヒマシ油が挙げられる。そのような共溶媒は、典型的には約0.01重量%から約2重量%の間のレベルで使用される。
【0105】
単純な水溶液の粘度よりも大きい粘度は、製剤を分配する際の変動性を減少させるため、製剤の懸濁液またはエマルジョンの成分の物理的分離を減少させるため、および/またはそうでなければ製剤を改良するために望ましい。そのような粘度上昇剤(viscosity building agent)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、硫酸コンドロイチンおよびその塩、ヒアルロン酸およびその塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。そのような薬剤は、典型的には、約0.01重量%~約2重量%のレベルで用いられる。
【0106】
本発明の組成物は、持続放出および/または快適さを提供するための成分をさらに含み得る。そのような成分には、高分子量のアニオン性ムコミメティック(mucomimetic)ポリマー、ゲル化多糖類、および微粉化薬物担体物質が含まれる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号、第5,403,841号、第5,212,162号および第4,861,760号にさらに詳細に論じられている。これらの特許の全内容は、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本開示はまた、薬学的組成物を含むキットを提供する。特定の実施形態において、そのようなキットは化合物2を含む。キットは、薬を処方するための説明書を任意に含む。特定の実施形態では、キットは複数回投与を含む。特定の実施形態では、キットは投与用の装置を含む。キットは、1週間、2週間、3週間、4週間、または数ヶ月間対象を治療するのに十分な量の各成分を含み得る。キットは、治療の全サイクルを含み得る。
有効投与量
【0108】
本発明によって提供される薬学的組成物は、有効成分が治療有効量、すなわちその意図する目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。特定の用途に有効な実際の量は、とりわけ、治療されている状態に依存するであろう。例えば、癌を治療するための方法で投与されるとき、そのような組成物は所望の結果(例えば、対象における癌細胞の数を減少させる)を達成するのに有効な量の有効成分を含むであろう。
【0109】
投与される化合物の投与量および頻度(単回または複数回投与)は、投与経路;レシピエントの、サイズ、年齢、性別、健康状態、体重、ボディマス指数、および食事;治療されている疾患(例えば、Btk阻害に応答する疾患)の症状の性質および程度;他の疾患や他の健康関連の問題の存在;同時治療の種類;ならびに任意の疾患または治療計画からの合併症、を含む様々な要因によって、変更可能である。他の治療計画または薬剤を本発明の方法および化合物とともに使用することができる。
【0110】
本明細書に記載のいずれかの化合物について、治療有効量は最初に細胞培養アッセイから決定することができる。標的濃度は、例えば記載の方法を用いて測定した場合にキナーゼ酵素活性を低下させることができる活性化合物の濃度であろう。
【0111】
ヒトにおける使用のための治療有効量は動物モデルから決定され得る。例えば、ヒトに対する用量は、動物において有効であることが見出されている濃度を達成するように製剤化することができる。ヒトにおける投与量は、上記のように、キナーゼ阻害をモニターし、そして投与量を上方または下方に調節することによって調節することができる。特定の実施形態では、投与量は、1日1回、2回、または2回超のいずれかで、1日あたり約10mg~約1000mgの範囲である。
【0112】
いくつかの実施形態では、投与量は約25mg~300mgである。いくつかの実施形態において、投与量は、約50mg~約300mgである。いくつかの実施形態では、投与量は300mg超、例えば400mgまたは500mgである。いくつかの実施形態において、投与量は、約50mg~約300mgであり、1日1回、2回、または2回を超えて投与される。いくつかの実施形態において、投与量は、約25mg~約300mgであり、1日1回、2回、または2回を超えて投与される。いくつかの実施形態において、投与量は、約300mg~約500mgであり、1日1回、2回、または2回を超えて投与される。いくつかの実施形態では、投与量は、約50mg、約100mg、約200mg、または約300mgである。いくつかの実施形態では、投与量は、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、または約500mgである。いくつかの実施形態では、投与量は、約50mg、約100mg、約200mg、または約300mgであり、1日に1回、2回、または2回を超えて投与される。いくつかの実施形態では、投与量は、約25mg、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、または約500mgであり、1日に1回、2回、または2回を超えて投与される。いくつかの実施形態では、投与量は化合物2の量に基づく。いくつかの実施形態では、投与量は化合物1の量に基づく。
【0113】
投与量は、患者の要求および使用されている化合物に応じて変更できる。本発明の文脈において、患者に投与される用量は、経時的に患者において有益な治療応答をもたらすのに十分であるべきである。用量の大きさもまた、有害な副作用の存在、性質、および程度によって決定されるであろう。一般に、治療はより少ない投与量で開始され、それは化合物の最適投与量より少ない。その後、状況下で最適な効果が得られるまで投与量を少しずつ増加させる。いくつかの実施形態では、投与量範囲は0.001%~10%w/vである。いくつかの実施形態では、投与量範囲は0.1%~5%w/vである。
【0114】
投与量および投与間隔は、治療されている特定の臨床適応症に有効な投与化合物のレベルを提供するために個々に調整することができる。これは個体の病状の重症度に見合った治療計画を提供するだろう。
【0115】
本明細書に記載の発明をより完全に理解することができるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は説明目的のためだけであり、そして本発明を限定するものとして決して解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0116】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【表3】
【0117】
器具および方法
A.NMR
NMR分析用の試料は、約0.75mLのNMR溶媒(D2O-d6)中に適切な量の物質を完全に溶解させることによって調製した。1H NMRスペクトルは、Varian ATBプローブを備えたVarian INOVA 400MHz NMR分光計のいずれかを用いて25℃で記録した。
標準取得パラメータを使用して、可変数のスキャン(16~256)を適用した。NMR定量化を実施するときはいつでも、取得前遅延を10秒に設定した。スペクトルの処理において適切な位相補正およびベースライン補正を適用した。
【0118】
B.XRPD
XRPDスペクトルは、標準Aptuit法を用いて、X’celerator検出器を備えたPanalytical X’pert Pro機器にて透過モードで収集した。HighScore Plusソフトウェアを使用してデータを評価した。使用した機器パラメータは以下の通りである。
【表4】
【0119】
C.TGAおよびDSC
TGA分析は、TA Q5000機器で実行した。DSC分析は、TA Q2000 MDSC機器で実行した。DSCおよびTGA法の詳細を以下に示す。
【表5】
【0120】
D.HPLC
HPLC実施は以下を用いて行った。
カラムPhenomenex Luna C18(50×2mm、3μm)、カラム温度40℃
移動相A:0.05%TFA/水、B:0.05%TFA/アセトニトリル
勾配0分100%A~8分95%B
流量1.0mL/分
検出器UV DAD 220nmにて
【0121】
E.GVS
GVS分析は、Hiden AnalyticalによるIGA Sorp機器で実施した。方法パラメータを以下に示す。
【表6】
【0122】
実施例1:化合物1の調製
化合物1の合成は、‘800出願の実施例2に詳細に記載されており、これは参照を容易にするために本明細書にて再現する。
【化5】
【0123】
トランス-1’-tert-ブチル-4’-エチル-3-ヨード-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’,4’-ジカルボキシレートの合成。乾燥トルエン(10mL)中のトランス-1’-tert-ブチル4’-エチル2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’,4’-ジカルボキシレート8(141mg、2.58mmol、1.0当量)の溶液へ0℃でTMEDA(0.89g、7.7mmol、3.0当量)およびTMSCl(0.6mg、1.0mmol、2.0当量)をN2下で連続して加えた。0.5時間後、I2(0.98g、3.87mmol、1.5当量)を少しずつ注意深く加えた。反応溶液を0℃~室温で16時間撹拌した。混合物をEtOAc(100mL)で希釈し、飽和Na2S2O3(20mL×2)およびブライン(20mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして真空中で濃縮した。粗生成物9(2.2g、Y:81%)をさらに精製することなく次の工程に直接使用した。ESI-MS(M+H-56)+:424.9。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:4.78-4.73(m,1H),4.19-4.04(m,4H),3.55-3.30(m,4H),3.24-3.16(m,2H),2.73-2.60(m,1H),2.22-2.14(m,2H),1.96-1.78(m,2H),1.70-1.60(m,1H),1.44(s,9H),1.25(t,J=7.2Hz,3H)。
【0124】
トランス-1’-tert-ブチル4’-エチル3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’,4’-ジカルボキシレートの合成。THF中のリチウムビス(トリメチルジシリル)アミドの1.0M溶液(13mL、12mmol、2.0当量)を10~15℃で滴下漏斗を通してTHF(13mL)中の3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)アニリンの溶液(15g、78mmol、1.2当量)に加えた。混合物を室温で20分間撹拌させ、THF(13mL)中の粗製トランス-1’-tert-ブチル-4’-エチル-3-ヨード-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’,4’-ジカルボキシレート9(3.7g、65mmol、1.0当量)を10~15℃で30分かけて添加漏斗を通して添加した。添加後、反応物をその温度で30分間撹拌させた。完了したら、反応物を5℃に冷却し、温度を20℃未満に保ちながら水(10mL)でゆっくりクエンチした。クエンチした反応物をEtOAcで抽出した(2×30mL)。合わせた有機層を飽和ブライン(30mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、そして真空中で濃縮した。得られた粗生成物をヘプタン中10%から75%のEtOAcの勾配で溶出するシリカゲルにより精製して、所望の生成物10を得た。ESI-MS(M+H-56)+:463.1。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:6.92(s,1H),6.71-6.69(m,2H),4.17-4.06(m,4H),3.78-3.68(m,2H),3.46-3.36(m,3H),3.23-3.07(m,2H),2.73-2.65(m,1H),2.44-2.37(m,1H),2.03-1.85(m,3H),1.71-1.61(m,2H),1.46(s,9H),1.27-1.19(m,3H)。
【0125】
トランス-1’-(tert-ブトキシカルボニル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボン酸の合成。EtOH(5mL)中のトランス-1’-tert-ブチル4’-エチル3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’,4’-ジカルボキシレート10(180mg、0.33mmol、1.0当量)の溶液に、にNaOH(40mg、0.99mmol、3.0当量)を加え、溶液を80℃で1時間撹拌した。溶媒を真空で濃縮し、残渣を水(10mL)に懸濁し、HCl(4N)でpH=6に調整した。沈殿物を濾過して、(トランス)-1’-(tert-ブトキシカルボニル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボン酸11を黄色の固体として得て(150mg、Y:82%)、これをさらに精製することなく次の工程に使用した。ESI-MS(M+H-85)+:463.1。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:6.85(s,1H),6.82(s,1H),6.78(s,1H),4.12-3.96(m,4H),3.53-3.37(m,2H),3.11-3.04(m,2H),2.75-2.67(m,1H),2.24-2.18(m,1H),1.98-1.89(m,3H),1.71-1.58(m,2H),1.44(s,9H)。
【0126】
トランス-tert-ブチル4’-カルバモイル-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’-カルボキシレートの合成。DMF(2mL)中のトランス1’-(tert-ブトキシカルボニル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボン酸11の溶液(70mg、0.14mmol、1.0当量)に、NH4Cl(22mg、0.41mmol、3.0当量)、HBTU(103mg、0.270mmol、2.0当量)およびDIPEA(52mg、0.41mmol、3.0当量)を加えた。反応溶液を室温で16時間撹拌し、EtOAc(10mL)で希釈し、水(5mL)およびブライン(5mL)で洗浄した。有機相を分離し、真空中で濃縮して粗油状物を得、これを分取HPLC(移動相として0.05%TFAを含むMeOH/H2O)によって精製して、化合物(トランス)-tert-ブチル-4’-カルバモイル-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’-カルボキシレート12を明色の固体として得た(60mg、収率:86%)。ESI-MS(M+H-56)+:463.1。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ:6.87-6.86(m,1H),6.84-6.83(m,1H),6.80(s,1H),4.11-4.03(m,3H),3.53-3.35(m,2H),3.20-3.08(m,2H),2.77-2.74(m,1H),2.25-2.18(m,1H),1.99-1.88(m,3H),1.70-1.60(m,2H),1.46(s,9H)。
【0127】
トランス-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミドの合成。CH2Cl2(1.0mL)中のトランス-tert-ブチル4’-カルバモイル-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-1’-カルボキシレート12の溶液(60mg、0.11mmol)に室温でCF3CO2H(1.0mL)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌し、真空中で濃縮して所望の生成物13(43mg、90%)を得、これをさらに精製することなく次の工程に直接使用した。ESI-MS(M+H)+:419.0。
【0128】
トランス-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミドの合成。1-ブタノール(2mL)中のトランス-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド13(42mg、0.10mmol、1.0)の溶液に、6-クロロ-5-フルオロピリミジン-4-アミン(18mg、0.12mmol、1.2当量)を加えた、DIPEA(26mg、0.20mmol、2.0当量)。反応溶液を120℃で16時間撹拌した。混合物をEtOAc(20mL)で希釈し、H
2O(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、そして真空中で濃縮した。粗生成物を分取HPLC(移動相として0.05%TFAを含むMeOH/H
2O)によって精製して、化合物(トランス)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド14を黄色固体として得た(44mg、収率:83%)。ESI-MS(M+H)
+:530.0。HPLC:(214nm:100%,254nm:100%)。
1H NMR(400MHz,CD
3OD)δ:7.97(s,1H),6.84(s,1H),6.81(s,1H),6.76(s,1H),4.58-4.52(m,2H),4.09-4.03(m,1H),3.52-3.35(m,3H),3.29-3.27(m,4H),3.12-3.05(m,1H),2.24-2.17(m,1H),2.02-1.91(m,3H),1.80-1.63(m,2H)。
【化6】
【0129】
(3R、3’R、4’S)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド。化合物14の4つのジアステレオマーの混合物をSFC(IA(2×15cm)、30%EtOH(0.1%DEA)/CO
2、100bar、60mL/分)によって3つのピークに分離し、標記化合物はピーク3に対応した。LCMS(Agilent460、254nm):ES(+)MS m/e=530.1(M+1)@1.20分。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.77(d,J=2.01Hz,1H),7.38(br.s.,1H),6.94(s,2H),6.75-6.87(m,2H),6.41-6.66(m,3H),4.29(br.s.,1H),4.23(d,J=13.05Hz,1H),3.96-4.18(m,2H),3.44(td,J=6.15,12.30Hz,1H),3.24-3.33(m,1H),3.10(br.s.,1H),2.88(br.s.,1H),2.82(t,J=12.30Hz,1H),2.13(qd,J=5.94,12.30Hz,1H),1.74-1.93(m,3H),1.58-1.74(m,1H),1.41-1.58(m,1H)。
【化7】
【0130】
(3S、3’R、4’S)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド。化合物14の4つのジアステレオマーの混合物をSFC(IA(2×15cm)、30%EtOH(0.1%DEA)/CO
2、100bar、60mL/分)によって3つのピークに分離し、標記化合物はピーク2に対応した。LCMS(Agilent460、254nm):ES(+)MS m/e=530.1(M+1)@1.19分。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.77(d,J=1.76Hz,1H),7.39(br.s.,1H),6.98(s,1H),6.96(s,1H),6.72-6.88(m,2H),6.57(s,2H),6.54(d,J=7.78Hz,1H),4.05-4.33(m,4H),3.37(t,J=6.27Hz,2H),3.11(br.s.,1H),2.94(br.s.,1H),2.82(t,J=12.30Hz,1H),2.02-2.16(m,1H),1.75-1.92(m,3H),1.57-1.74(m,1H),1.36-1.54(m,1H).
【化8】
【0131】
(3S、3’S、4’R)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド。化合物14の4つのジアステレオマーの混合物をSFC(IA(2×15cm)、30%EtOH(0.1%DEA)/CO
2、100バール、60mL/分)によって3つのピークに分離した。3つ中のピーク1をSFC(AD-H(2×15cm)、30%iPrOH(0.1%DEA)/CO
2、100bar、60mL/分)さらに精製し、標記化合物を得た。LCMS(Agilent 460、254nm):ES(+)MS m/e=530.1(M+1)@1.20分。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.77(d,J=1.76Hz,1H),7.38(br.s.,1H),6.94(s,2H),6.83(s,1H),6.80(s,1H),6.42-6.66(m,3H),4.18-4.47(m,2H),3.95-4.18(m,2H),3.39-3.52(m,1H),3.24-3.31(m,1H),3.10(br.s.,1H),2.88(br.s.,1H),2.82(t,J=12.30Hz,1H),2.13(qd,J=5.91,12.39Hz,1H),1.73-1.92(m,3H),1.58-1.73(m,1H),1.42-1.58(m,1H)。
【化9】
【0132】
(3R、3’S、4’R)-1’-(6-アミノ-5-フルオロピリミジン-4-イル)-3-((3-クロロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)-2-オキソ-[1,3’-ビピペリジン]-4’-カルボキサミド。化合物14の4つのジアステレオマーの混合物をSFC(IA(2×15cm)、30%EtOH(0.1%DEA)/CO2、100バール、60mL/分)によって3つのピークに分離した。3つ中のピーク1をSFC(AD-H(2×15cm)、30%iPrOH(0.1%DEA)/CO2、100bar、60mL/分)さらに精製し、標題化合物を得た。LCMS(Agilent 460、254nm):ES(+)MS m/e=530.1(M+1)@1.20分。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:7.77(d,J=1.76Hz,1H),7.39(br.s.,1H),6.98(s,1H),6.96(s,1H),6.73-6.88(m,2H),6.57(s,2H),6.54(d,J=7.78Hz,1H),4.05-4.35(m,4H),3.37(t,J=6.15Hz,2H),3.12(br.s.,1H),2.94(br.s.,1H),2.82(t,J=12.30Hz,1H),2.09(sxt,J=5.80Hz,1H),1.74-1.92(m,3H),1.56-1.73(m,1H),1.36-1.52(m,1H)。
【0133】
実施例2:化合物2の調製
13.4gの化合物1に、50mLのEtOHを加えた。得られたスラリーを60℃に温めて透明な溶液を得た。この溶液に、50mLのEtOH中のコハク酸(4.5g、1.5当量)のスラリーを添加し、得られた混合物を加熱還流して透明な溶液を得た。温度を2時間かけて20~25℃に下げ、混合物をその温度で3時間撹拌した。次にスラリーを濾過し、湿ったケーキを10mLの冷EtOH(約4℃)で洗浄した。固体をハウス真空下50℃で12時間乾燥し、1.4%DMAP(出発物質中の12%DMAPからの残留物)を含有する13.0gの化合物2を白色固体として得た(収率約90%)。
【0134】
実施例3:化合物2の多形体
化合物2について多形体スクリーニングを実施して結晶形を生成しそして特徴付けた。多形体を生成するために、それらの化学的多様性および化合物2との適合性を考慮して一連の溶媒系を選択した。溶媒/水の組み合わせもまた、水和物形態の存在を評価するために使用した。
【0135】
長期スラリー(LT)
表1に報告された溶媒中に約200mgの化合物2を秤量し、0.5mLの溶媒中にその固体を懸濁し、そして過剰の固体が溶解しないままであることを確認することによってスラリーを設定した。調製した試料はまた、使用した溶媒系中の化合物2の溶解度を計算するために用いた。
【0136】
化合物2の溶解度
長期スラリー実験用に調製したスラリーを20℃で1日後にサンプリングして、使用した溶媒系中の化合物2の溶解度を測定した。溶解度データは、アセトニトリル/メタノール40/60に既知の濃度で溶解した化合物2の6つの試料を調製しHPLCに注入した、応答係数に関し、HPLCによって得られた。得られたHPLC面積を用いて、化合物2のHPLC応答係数を計算した(データ示さず)。溶解度計算の結果を表1に報告する。
表1:種々の溶媒中の化合物2の溶解度
【表7】
【0137】
溶解度計算後、スラリーを20℃で15日間撹拌した。XRPDおよびPLM分析の前に、得られた固体を濾過し、室温で約3時間真空乾燥した。特定の試料について熱分析を実施した。表2はXRPDの結果を表す。長期スラリー試料の大部分は、出発物質と一致するXRPDパターンを有する形態2物質を示した。酢酸エチルおよび酢酸イソプロピル試料は出発物質の形態1への変換を示した。水試料は部分的に非晶質物質への変換を示した。エタノール/水90/10試料は、形態2から形態1への部分的な変換を示した。DSCデータは、これら2つの形態の存在を確認した。
【表8】
【0138】
温度サイクル
表1に報告された溶解度データを考慮して、上記に報告された溶媒系中にスラリーを設定した。スラリーを、温度を20℃から40℃へ温度を切り替え、およびその逆に切り替えて48時間撹拌した(各温度で2時間)。一晩スラリーを20℃で撹拌した。スラリーを濾過して残渣を単離し、単離した固体を、XRPDおよびPLM分析の前に、室温で約3時間真空乾燥した。特定の試料について熱分析を実施した。表3はXRPDの結果を表す。大部分の温度サイクル試料は、出発物質と一致するXRPDスペクトルパターンを有する形態2物質を示した。
【0139】
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびエタノールの試料は、出発物質から形態1への部分的な変換を示した。DSCデータは、形態1と形態2の混合物の存在を確認した。
【0140】
シクロヘキサノン試料は、形態2と新しい結晶形態の混合物と呼ぶことができるXRPDパターンを示した。DSCデータは、形態2物質の存在を確認し、そして135℃で吸熱事象を示し、それは新しい形態の融解に関連し得る。室温で10日間貯蔵した後にXRPDによって分析したシクロヘキサノン試料は、形態2に変換する傾向を示した。
【表9】
【0141】
蒸発
飽和溶液を上記に報告された溶解度データに基づいて設定した。溶液を0.45mmのPTFEフィルターを通して濾過し、そして濾液を窒素流下室温で、ドライボックス中で蒸発乾固させた(RH <10%)。得られた固体をXRPDおよびPLMにより分析した。特定の試料について熱分析を実施した。表4はXRPDの結果を表す。蒸発試料の大部分は、出発物質と一致するXRPDパターンを有する形態2物質を示した。
【0142】
シクロヘキサノン試料は、温度サイクリングシクロヘキサノン試料と同様のXRPDパターンを示した。DSC分析は、3つ以上の結晶形の存在を示唆する複数の事象の存在を示した。
【0143】
エタノールおよびエタノール/水90/10の試料は、出発物質の1型への部分変換を示した。
【0144】
1,4-ジオキサン試料は新しいXRPDパターンを示した。DSCは2つの異なる形態の存在を示唆する2つの融解事象を示した。
【表10】
【0145】
密封飽和溶液
飽和溶液は、上に報告された溶解度データに基づいて設定された。溶液を0.45mmのPTFEフィルターを通して濾過しそして濾液を集めた。ろ液を密封バイアルに保ち、室温で固体形成について定期的に視覚的に検査した(15日間)。固体形成を示さなかった試料は、最初に4℃(14日)で貯蔵され、次いで必要ならば-20℃(7日)で貯蔵された。得られた固体を上澄み除去によって単離し、そしてXRPDおよびPLMによる分析の前に真空オーブン中室温で乾燥した。特定の試料について熱分析を実施した。表5はXRPDの結果を表す。密封飽和溶液試料は、形態2のXRPDパターンまたは形態2と他の形態との混合物を示した。シクロヘキサノン試料は、温度サイクリングおよび蒸発シクロヘキサノン試料と同様のXRPDパターンを示した。
【表11】
【0146】
蒸気拡散
上記で報告された溶解度データを考慮して、飽和溶液をある範囲の溶媒中に設定した。得られた溶液を0.45μmのPTFEフィルターを通して濾過し、
図10に示すように貧溶媒の多い環境に置いた。
【0147】
溶液を定期的に固体形成について目視検査した。ピペットで上清を除去することによって固形分を単離し、XRPDおよびPLMによる分析の前に、真空オーブン中室温で約3時間乾燥させた。特定の試料について熱分析を実施した。表6は、実験および結果を設定するために使用された溶媒/貧溶媒対を報告する。
【0148】
貧溶媒としてジイソプロピルエーテルを使用して生成された試料は、形態2物質であると思われるXRPDパターンを示した。いくつかの追加のXRPDピークの存在は、試料中の他の形態の存在を示唆し得る。DSCトレースは、形態2に関連した単一の融解事象を示した。
【0149】
貧溶媒として酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルを使用して生成された試料は、形態1物質または形態1と形態2の混合物の存在を示した。
【0150】
貧溶媒としてヘプタンを使用することによって生成された固体試料は、典型的な形態2のXRPDパターンを示した。
【表12】
【0151】
スケールアップ
1gの化合物2を反応管中で秤量した。出発物質を15mLの酢酸イソプロピルに懸濁した。スラリーを20℃で15日間撹拌した。その後、生成物を濾過して白色固体を得た。乾燥前に固体をXRPDによって分析して、形態1の存在およびいくつかの未知のピークを観察した。物質を真空オーブン中40℃で一晩乾燥した。乾燥した物質をXRPDにより分析して形態1の物質の存在を示した。
図1は乾燥物質のXRPDスペクトルを示す。スペクトルは形態1の典型的なパターンと一致する。
【0152】
得られた物質は、DSC、GVS、HPLC、NMRおよびPLMによっても特徴付けられた。DSCトレースは、XRPDによって検出されないわずかな量の2型物質の存在を示した。DSC試料中の形態2の存在は、DSC加熱勾配の間に形態2に変換された非晶質物質に起因し得る(
図2)。
【0153】
GVSパターンは、物質の吸湿性の増加を強調していない(
図3参照)。NMRスペクトルは化合物2の構造と一致した。コハク酸化学量論は1:1と評価された。
【0154】
実施例4:ヒトB細胞刺激のためのプロトコル
ヒトB細胞を150mLの血液から精製する。簡潔には、血液をPBSで1/2に希釈し、そしてFicoll密度勾配を介して遠心分離することができる。B細胞は、Milenyi(Auburn、CA)からのB細胞単離キットIIを用いたネガティブ選択によって単核細胞から単離することができる。次いで、1ウェルあたり50,000個のB細胞を、96ウェルプレート中で、10μg/mLのヤギF(ab’)2抗ヒトIgM抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove,PA)で刺激することができる。化合物をDMSOで希釈して細胞に添加することができる。DMSOの最終濃度は0.5%である。増殖は、Promega CellTiter-Glo(Madison、WI)を用いて3日後に測定することができる。
【0155】
実施例5:インビトロBTKキナーゼアッセイ:BTK-POLYGAT-LSアッセイ。
BTKインビトロアッセイの目的は、IC50の測定を介してBTKに対する化合物の効力を決定することである。活性BTK酵素(Upstate 14-552)、ATP、および阻害剤の存在下でフルオレセイン標識ポリGATペプチド(Invitrogen PV3611)のリン酸化量をモニターした後、化合物阻害を測定することができる。BTKキナーゼ反応は黒色96ウェルプレート(costar3694)中で行うことができる。典型的なアッセイのために、キナーゼ緩衝液(10mM Tris-HCl pH7.5、10mM MgCl2、200μM Na3PO4、5mM DTT、0.01%Triton X-100、および0.2mg/mLカゼイン)中のATP/ペプチドマスターミックス(最終濃度;ATP 10μM、ポリGAT 100nM)の24μLアリコートを各ウェルに添加することができる。次に、4倍の、100%DMSO溶媒中の40X化合物タイトレーションの1μLを添加し、続いて1Xキナーゼ緩衝液中のBTK酵素混合物15μL(最終濃度0.25nM)を添加することができる。アッセイは、28μLの50mM EDTA溶液で停止する前に30分間インキュベートすることができる。キナーゼ反応のアリコート(5μL)を低容量白色384ウェルプレート(Corning 3674)に移し、そして5μLの2X検出緩衝液(4nMのTb-PY20抗体を含むInvitrogen PV3574、Invitrogen PV3552)を加えることができる。プレートを覆い、室温で45分間インキュベートすることができる。時間分解蛍光(TRF)をMolecular Devices M5(332nm励起、488nm発光、518nmフルオレセイン発光)において測定することができる。IC50値は、DMSO対照から決定された100%酵素活性とEDTA対照からの0%活性に適合する4つのパラメータを用いて計算することができる。
【0156】
実施例6:ヒトにおける第1a相単回投与試験
最初のヒト第1a相無作為化二重盲検プラセボ対照単回投与試験を3段階で実施した:第1段階では、8人の対象の4つの連続コホートを無作為に割り当てて、50、100、200、および300mgの用量での化合物2の次第に高くなる単回経口投与(コホート当たりn=6、男性3人および女性3人)またはプラセボ(コホート当たりn=2、男性1人および女性1人)を受けた。
【0157】
第2段階では、化合物2の薬物動態に対する食物の影響を評価した。この段階では、新たに登録された12人の対象(男性6人、女性6人;コホート6)に、絶食状態または摂食状態で、2回の投与の間に72時間以上の期間をおいて化合物2を2回投与した。化合物2の用量レベルは200mgであった。12人の対象を無作為化し、6人の対象(男性3人、女性3人)が一晩の絶食後に化合物2の投与を受け、6人の対象(男性3人、女性3人)が標準化高脂肪食摂取後に化合物2の投与を受けた。約4日後、最初の期間に食物なしで化合物2の投与を受けた人々が食物と一緒に薬物の投与を受ける一方、最初の期間に食物と一緒に化合物2を摂取した人々に食物なしで薬物の投与を受けるように対象を交差させた。
【0158】
第3段階では、試験の第2段階ですでに化合物2の投与を受けていたコホート6の12人の対象を評価した。25mgの用量の化合物2を1日目に絶食状態で1回投与し、そして対象を安全性、PKおよびPD評価について追跡した。4日目、次に対象は、摂食状態(7日目の朝の用量を除く)で4~9日目まで1日2回200mgの用量で投与をされるイトラコナゾール(強力なCYP3A4阻害剤)の投与を受けた。7日目の朝に、対象は、イトラコナゾールを200mgの用量で投与を受け、その後すぐに化合物2を25mgの用量で投与された(両方の薬物が絶食状態で投与された)。次に、7、8、9、および10日目に、安全性、PKおよびPD評価について対象を追跡した。1日目に化合物2を単独で投与した後に観察されたPK結果を、7日目にイトラコナゾールとともに化合物2を投与した後にこれらの同じ対象において観察された結果と比較した。
【0159】
安全性の主要評価項目は、有害事象(AE)、臨床検査値の異常、および心臓所見(ECG)をモニタリングすることによって評価した。副次的評価項目には、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)、最大血漿中濃度(Cmax)、最高濃度到達時間(Tmax)、見かけの分布容積(Vd/F)、消失半減期(t1/2)、消失速度定数(λz)、および見かけのクリアランス(Cl/F)のPKパラメータ、ならびに全血におけるBTK阻害の寿命のPDパラメータの評価を含む。
【0160】
化合物2はコハク酸塩である。遊離塩基(化合物1)の血漿中濃度を測定し、そしてPKパラメータの推定および濃度/PD関係の作成のために使用した。
【0161】
BTK阻害は、リン酸化BTK(pBTK)および総BTK(totBTK)に基づいて計算した。すべての投与後の血液試料と1つの投与前の試料を、プロテアーゼとホスファターゼ阻害剤(PPi)の存在下で溶解し、達成可能なpBTKの最大減少を推定するために、PPiなしで第2の投与前試料を溶解した。PPiなしの各pBTK/totBTKからPPiなしの前投与量pBTK/totBTKの比を引いて、pBTK対投与量%を計算した。
【式1】
【0162】
【0163】
次いでBTK阻害%を計算した:
【式2】
【0164】
【0165】
結果
個体群統計
化合物2の投与を受けた24人の対象の平均年齢は55歳(範囲:22~64歳)であった。プラセボの投与を受けた8人の対象のうち、年齢の中央値は42.5歳であった(範囲:29~65歳)。化合物2の投与を受けた対象の大多数は白人であった(95.8%)。コホート1の1人の対象だけがアメリカインディアン/アラスカ出身であった(4.2%)。
【0166】
安全性に関する調査結果
化合物2の投与を受けた8人の対象(33%)およびプラセボの投与を受けた3人の対象(38%)について、試験治療下での発現(Treatment-emergent)AE(TEAE)が報告された。化合物2の投与を受けた6人(25%)の対象は、プラセボの投与を受けた3人(38%)の対象と比較して治療関連のTEAEを有した。
【0167】
化合物2の投与を受けた対象では、治療関連のTEAEには頭痛、吐き気、上室性頻拍が含まれ、さらに報告されたTEAEには、便秘、気管支炎、疲労、および起立性低血圧が含まれていた。用量依存毒性の明白なパターンは観察されなかった。プラセボ群では、すべてのTEAEが治療関連とみなされ、頭痛、吐き気、下痢が含まれていた。
【0168】
グレード2の頭痛および疲労を経験した1人の対象(300mgの化合物2の投与を受けた)を除いて、AEはすべてグレード1として報告された。グレード3以上のAeは報告されなかった。SAEは報告されなかった。報告されたAE、実験室異常、またはECGまたは遠隔測定所見のいずれも臨床的に意味があるとみなされなかった。
【0169】
PK/PDの結果
中央値Tmax=1時間(範囲:0.5~3.0)で、化合物は急速に吸収された。すべての用量コホートにわたる平均t1/2値は7.43~17時間の範囲であった。
図12に示すように、化合物1の濃度は多相的に減少した。各コホートの平均PKパラメータを表7に示す。総曝露量(AUCおよびCmax)は用量にほぼ比例して増加した。
図13に示すように、化合物はすべての用量レベルでpBTKの急速で大きい(~100%)そして長期の阻害を示した。
【表13】
【0170】
異なる血漿中濃度におけるpBTK阻害の程度を
図14に示す。臨床的有効性についてのpBTK阻害の具体的な目標レベルはまだ報告されていないが、約85%の阻害が一般に臨床活性に十分であると予想される(Byrd JC,et al.N Engl J Med.2016;374:323-32)。
【0171】
食物の影響
摂食および絶食状態の12人の対象に200mgの化合物2を経口投与した後、化合物2の薬物動態に対する食物の影響を評価した。摂食状態における化合物2の吸収速度は減少し、Tmaxは2時間遅延し、Cmaxは約30%減少したが、しかしながら、化合物2の吸収の程度(AUC)および消失の程度(T1/2)には影響がなかった。同様に、見かけの全身クリアランスおよび分布容積は両方の食物条件において同程度であった。全体として、結果は、化合物2が食物の有無にかかわらず与えられ得ることを示す。
【0172】
薬物間相互作用(CYP3A4阻害の影響)
25mgの化合物2の経口投与の薬物動態に対する強力なCYP3A4阻害剤、イトラコナゾールの影響を12人の対象において評価した(表7a)。イトラコナゾールを化合物2と同時投与した場合、それぞれ約2倍および6.3~7.0倍の化合物1血漿中曝露量(CmaxおよびAUC)の増加が観察された。これらの結果は、化合物1がCYP3A4に対する感受性の基質であることを示している(すなわち、CYP酵素阻害の存在下で曝露において≧5倍の増加を示す)。これらのデータに基づいて、中等度または強力なCYP3A4阻害剤または誘発剤である薬物の同時投与を必要とする対象の登録に対する制約があり得、そしてプロトコル治療中そのような薬物の使用に対する制限があり得る。
【表14】
【0173】
薬物動態学/薬力学的関係
第1段階(100、200、および300mg)および第3段階(25mgのみ)についてのPKおよびPD測定値(化合物1の血漿中濃度対BTK阻害%)の間の相関関係を時点ごとに(
図15)および全体として(LOESS回帰曲線および95%信頼区間による散布図、
図16)示す。PKとPDとの間に明確な相関関係が観察された。化合物1の血漿中濃度が100ng/mLより低いかまたはそれに近いとき、BTK阻害%は75%以下であった。化合物1の血漿中濃度が200ng/mL以上の場合、85%以上のpBTKの阻害が観察された。濃度が増加するにつれて阻害が増加し、それほど変動しなかった。ほとんどの対象にとって、1000ng/mLを超える血漿中濃度では85%を超える阻害が発生し、ほぼ100%が阻害された。
【0174】
結論
化合物2は健康な対象において好ましい安全性およびPK/PDプロファイルを示した。最低投与量50mgでの平均暴露量は、それぞれの推奨投与量で投与した場合、イブルチニブ(Binnerts ME,et al.Mol Cancer Ther.2015;14(12 Suppl 2); IMBRUVICA(登録商標)(イブルチニブ)カプセル,経口投与用[処方情報]).Sunnyvale,CA:Pharmacyclics LLC.; 2016;Center for Drug Evaluation and Research.205552 Clinical pharmacology review(Imbruvica(商標)).July 30,2013)とアカラブルチニブ(Byrd JC,et al.N Engl J Med.2016;374:323-32)の両方で報告された報告された曝露量を上回った(表8)。
【表15】
【0175】
これらの結果は、化合物2がこれらの共有結合阻害剤を超えてバイオアベイラビリティおよび半減期を含む改善されたPK特性を有することを示している。化合物2の薬学的特性は、BTKの持続的阻害を提供するのに十分な血清中濃度の維持を可能にし、潜在的な臨床的利益をもたらすことが期待される。
【0176】
安全性プロファイル、化合物2曝露の程度、およびpBTK阻害期間は有望である。これらのデータは、BTK Cys481変異の有無にかかわらず進行性B細胞悪性腫瘍を有する患者を対象に計画された第1b相/第2相試験における安全性と活性を評価する1日2回の投与を支持する。
【0177】
実施例7:化合物2の薬物動態
化合物2の単回経口投与および単回静脈内(IV)投与後の化合物2の血漿PKを調べるために、一連の単回投与PK試験をラット、イヌおよびサルで行った。結果を表9にまとめ、以下詳細に記載する。
【表16】
【0178】
1mg/kgの化合物2の単回IV投与および5mg/kgの単回経口投与後に、雄のSprague Dawleyラット(n=3)において化合物2のPKプロファイルを評価した。各投与後、一連の血液試料を投与後0(投与前)、0.08、0.25、0.5、0.75、2、5、10、および24時間に採取した。PKパラメータを表9に報告する。
【0179】
懸濁液としてまたはカプセル中の固体として製剤化された化合物2のPKを評価するために試験を行った。雄のビーグル犬(n=3)は、注射用に滅菌水中の0.5%w/vのK15Mおよび0.2%w/vのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中の懸濁液として、またはカプセル中の粉末として35および200mg/kg(DRN105-0001)の単回経口強制胃管投与を受けた。各用量レベルについて3匹の異なるイヌを使用した。35mg/kgの経口投与に使用されたイヌは、次に、クエン酸緩衝液pH4.5中の10%w/vのヒドロキシプロピルβシクロデキストリン中に製剤化された5mg/kgの化合物2の単回IVボーラス投与を受けた。化合物2遊離塩基血漿中全身曝露における動物間変動は、製剤にかかわりなく、IVおよび経口投与後に観察された。表9を参照されたい。
【0180】
1mg/kgの化合物2の単回IV投与および5mg/kg(DRN105-0042)の単回経口投与の後に、雄のカニクイザル(n=3)において化合物2のPKを調べた。各投与後、一連の血液試料を投与後0.08、0.25、0.5、1、2、4、7、16、および24時間に採取した。非コンパートメントPK分析(WinNonlin)を使用してデータを分析し、そしてPKパラメータを表9に報告する。
【0181】
実施例8:化合物1は、イブルチニブに対する耐性を克服するC481S変異したブルトン型チロシンキナーゼを阻害する。
イブルチニブに対する獲得耐性の問題に取り組むために、この実施例は、慢性リンパ性白血病(CLL)の前臨床モデルにおけるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤化合物1を特徴付ける。
【0182】
方法:初代CLL B細胞を同意した患者の全血からFICOLL密度遠心分離およびrosette-sepネガティブセレクションにより単離した。アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムフローサイトメトリーを用いて患者のCLL細胞生存率を測定し、7AADを用いて間質共培養における生存率を測定した。CD40およびCD86の発現を、持続的な3.2μMのCpG刺激に続いてフローサイトメトリーによって評価した。初代CLL細胞におけるBCRシグナル伝達を、XLA細胞株中での1時間の処理および化合物1との1時間または24時間のインキュベーションに続く免疫ブロットによって調べた。MTS値は、24時間の薬物インキュベーション後に読み取った。抗CD3および抗CD28で刺激し、そして化合物1とともに1時間インキュベートした後、免疫ブロットによりITK阻害を調べた。特に断りのない限り、化合物1は前臨床試験において1μMの濃度で使用した。ヒト組換えWT BTKまたはC481S BTKにおけるキナーゼ活性の測定は、FRETキナーゼアッセイにおいて行った。
【0183】
結果:WTまたはC481S BTKでトランスフェクトしたXLA細胞のBTKおよびERKリン酸化の免疫ブロットは、化合物1の阻害がWT BTK中のイブルチニブのそれに匹敵し、C481S BTK中のイブルチニブのそれよりも大きいことを実証した。組換えキナーゼアッセイを使用して、WT BTKに対する化合物1のIC50は4.6nMであり、C481S BTKは1.1nMであることが見出され、これは化合物1が変異BTK変異型においてより有効であることを示唆する。さらに、化合物1は、C481S BTKに対して、イブルチニブよりも6倍強力であり、かつアカラブルチニブよりも640倍強力であることが見出された。
【0184】
化合物1は、BTKリン酸化についてのイムノブロットを介した、イブルチニブに匹敵する初代患者CLL細胞におけるBTKの用量依存的阻害を示す。0.1μM、1.0μM、および10.0μMの化合物1で48時間処理した初代患者細胞の生存率は、未処理の状態の生存率のそれぞれ96.7%、96.1%、および88.1%であると測定された。48時間で、化合物1は、HS5間質保護の存在下で初代CLL細胞の生存率を5.5%減少させた。化合物1は、CpG誘導CD40およびCD86発現をそれぞれ8.7%および15.7%減少させることが見出された。抗CD3および抗CD28刺激Jurkat細胞の免疫ブロットは、化合物1が、ITKの阻害を意味するERKのリン酸化を減少させることを明らかにした。
【0185】
結論:イブルチニブとは異なり、化合物1はC481S BTKにおけるBTKリン酸化を減少させる。化合物1は、初代患者のCLL細胞においてB細胞活性化マーカー、生存率、および間質細胞保護を減少させ、そしてITKを阻害することが示された。
【0186】
本開示をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は以下の特許請求の範囲内にある。