(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】バルブ点火予室
(51)【国際特許分類】
F02B 19/02 20060101AFI20230123BHJP
H01T 13/54 20060101ALI20230123BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20230123BHJP
F02P 13/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F02B19/02
H01T13/54
F02B19/12 E
F02P13/00 302B
(21)【出願番号】P 2019537092
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(86)【国際出願番号】 FR2018050041
(87)【国際公開番号】W WO2018130772
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2017-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501211925
【氏名又は名称】ラビー,ヴィアニー
【氏名又は名称原語表記】RABHI Vianney
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラビー,ヴィアニー
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第01013455(FR,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0069250(US,A1)
【文献】特開平06-146890(JP,A)
【文献】特開平07-119467(JP,A)
【文献】特表2013-503447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00-23/10
F02P 1/00- 3/12
7/12-17/12
H01T 7/00-23/00
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主装填材料(30)を燃焼させることができる燃焼室(5)を形成するようにシリンダ(4)に蓋をするシリンダヘッド(3)を備えた内燃機関(2)用のバルブ点火予室(1)であって、
少なくとも1つのキャビティ(6)であって、一方では前記シリンダヘッド(3)内に配置され、ダクト(7)によって前記燃焼室(5)に接続され、他方では、圧縮手段(10)によって先に加圧されたパイロット装填材料(9)を直接的または間接的に前記キャビティ(6)に噴射することができるインジェクタ(8)を受け入れ、前記
パイロット装填材料(9)は火花によって容易に燃焼可能な燃焼剤-燃料混合物からなる、少なくとも1つのキャビティ(6)と、
前記キャビティ(6)内に開口し、前記パイロット装填材料(9)に点火することができる点火手段(11)と、
前記ダクト(7)の全部または一部を閉鎖することができ、一方では前記キャビティ(6)内のガスの圧力にさらされるキャビティ側の面(14)を露出し、他方では前記燃焼室(5)内のガスの圧力にさらされるチャンバ側の面(15)を露出するバルブ(13)であって、前記キャビティ内の前記圧力が前記燃焼室(5)内の圧力よりも低い場合、前記キャビティ(6)の方へ、または前記燃焼室内の圧力がキャビティ(6)内の圧力よりも低い場合、前記燃焼室(5)の方へ、前記ガスの圧力の影響下で前記ダクト(7)に対して平行移動することができる、バルブ(13)と、
前記キャビティ(6)に最も近い前記バルブ(13)の位置を決定する少なくとも1つのキャビティ側バルブストッパ(16)と、
前記燃焼室(5)に最も近い前記バルブ(13)の位置を決定する少なくとも1つのチャンバ側バルブストッパ(17)と
を備え、
前記チャンバ側バルブストッパ(17)が、前記ダクト(7)内にまたは前記ダクト(7)のいずれかの端部に配置されたバルブ開放シート(20)からなり、前記バルブ開放シート(20)と
チャンバ側バルブ支持面(21)とが互いに接触しているとき、前記バルブ(13)が、前記ダクト(7)とともに、一方では前記キャビティ(6)と、他方では前記燃焼室(5)と、少なくとも1つのガス放出孔(24)を介して同時に連通するトーチ点火予室(23)を形成することを特徴とする、バルブ点火予室(1)。
【請求項2】
前記バルブ(13)が、それが前記キャビティ(6)に最も近いときに前記ダクト(7)の全部または一部を閉鎖する一方で、それが前記燃焼室(5)に最も近くに位置付けられるときにより広い部分で前記ダクト(7)を開放することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項3】
前記キャビティ側バルブストッパ(16)が、前記ダクト(7)内にまたは前記ダクト(7)のいずれかの端部に配置されたバルブ閉鎖シート(18)からなり、前記
バルブ閉鎖シート(18)は前記バルブ(13)の周囲におよび/または端部に配置されたキャビティ側バルブ支持面(19)と協働することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項4】
前記バルブ閉鎖シート(18)および前記キャビティ側バルブ支持面(19)が、互いに接触しているときにシールを形成し、前記シールは、前記燃焼室(5)内の圧力が前記キャビティ(6)内の圧力よりも高いときにいかなるガス
の通過を
も防止することを特徴とする、請求項3に記載のバルブ点火予室。
【請求項5】
前記バルブ開放シート(20)および前記チャンバ側バルブ支持面(21)が、互いに接触しているときにシールを形成し、それによりいかなるガス
の通過を
も防止するようにすることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項6】
前記バルブ(13)が、前記ダクト(7)に対する前記バルブ(13)の軸方向位置に関わらず、前記バルブ(13)を前記ダクト(7)内のほぼ中央に、および前記ダクト(7)とほぼ同じ長手方向の向きに維持する案内手段(22)をその周囲に備えることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項7】
前記トーチ点火予室(23)の内周壁が円筒形である一方、前記バルブ(13)は円形の外周を有しかつ前記
トーチ点火予室(23)内に半径方向間隙で収容されることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項8】
前記ダクト(7)が、前記トーチ点火予室(23)を収容しかつそこから前記ガス放出孔(24)が開口する突出放出ドーム(25)の形態で前記燃焼室(5)内に突出して開口することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項9】
前記バルブ開放シート(20)が前記突出放出ドーム(25)内に配置されることを特徴とする、請求項8に記載のバルブ点火予室。
【請求項10】
前記バルブ(13)が前記燃焼室(5)の近くに配置されたとき、すなわちそれが協働する前記チャンバ側バルブストッパ(17)に近接してまたは接触して配置されたときに、前記バルブ(13)が、前記キャビティ(6)を前記燃焼室(5)と接続する少なくとも1つのガス放出孔(24)を露出することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項11】
前記点火手段(11)が、有孔接続管(26)の第1の端部を閉鎖するスパークプラグ(12)からなり、前記有孔接続管(26)は、前記キャビティ(6)の内部容積の全部または一部を通過し、かつその本体は、前記
有孔接続管(26)の内部を前記内部容積に接続する少なくとも1つの半径方向スロット(27)によって半径方向に横断され、一方で前記
有孔接続管(26)の第2の端部は前記ダクト(7)および前記バルブ(13)を受け入れ、一方で前記スパークプラグ(12)の中心電極(40)と接地電極(39)とが前記有孔接続管(26)内に収容されることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項12】
前記キャビティ側の面(14)が空力ドーム(29)を露出させることを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項13】
前記キャビティ側の面(14)が、スパークプラグ(12)に含まれる中心電極(40)に面する接地電極(39)を形成し、前記スパークプラグ(12)は点火手段(11)を構成することを特徴とする、請求項1に記載のバルブ点火予室。
【請求項14】
前記バルブ(13)が、前記キャビティ側バルブ支持面(19)と前記チャンバ側バルブ支持面(21)とを受け入れるその周縁部で、その中心部よりも軸方向に厚いことを特徴とする、請求項3に記載のバルブ点火予室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、火花によって点火されるパイロット装填材料によって内燃機関の燃焼室に導入される主装填材料を点火することを可能にするバルブ点火予室であり、上記予室は上記主装填材料を点火する上記パイロット装填材料の効率を最適化するように設計される。
【背景技術】
【0002】
最新技術による往復動内燃機関の最大効率および平均効率は比較的低い。自動車では、最大効率は、オットーサイクル火花点火エンジンでは約35%、ディーゼルサイクルエンジンでは約40%である。自動車エンジンの現在の使用における平均効率に関して、それはほとんどの場合、火花点火エンジンについては20パーセント未満であり、そしてディーゼルエンジンについては25パーセント未満である。
【0003】
上記エンジンでは、燃料の燃焼によって放出され有用な仕事に変換されないエネルギーの一部は、主に冷却システム内の熱および上記エンジンの排気の形で放散される。
【0004】
低い効率に加えて、自動車に使用される往復動内燃機関は、環境および健康に有害な汚染ガスおよび粒子を生成する。
【0005】
これらの不利な特性にもかかわらず、より良いエネルギー、環境、機能、そして経済的妥協を提供する他の解決策がないために、オットーサイクルまたはディーゼル内燃機関は世界中に流通するほぼすべての自動車に配備されている。
【0006】
この状況は、内燃機関のエネルギーと環境のバランスを何としてでも改善するためにエンジン製造業者によってなされた重要な研究および開発努力を説明する。これらの努力は、特に、上記エンジンを構成するテクノロジを完成させ、新しい戦略の実行を可能にする新しい機能をそれらに追加することを目的としている。
【0007】
これらの戦略の中には、中性ガスまたは酸素に富んだ新鮮な空気のいずれかによる往復動内燃機関の空気および燃料装填材料の希釈がある。
【0008】
本発明はこの希釈に関し、特にガソリンまたは天然ガスのいずれかをほとんどの場合に消費する火花点火による往復動内燃機関を対象とする。
【0009】
火花点火エンジンの装填材料を新鮮な空気でまたは予め冷却された排気ガスで希釈することにより、上記エンジンの平均および/または最大熱力学的効率を高めることが可能になる。これにより、同じ有用な仕事に対して燃料消費量が削減される。
【0010】
火花点火エンジンが部分的なトルクで作動するとき、その(それらの)シリンダに希釈された装填材料を導入することは、希釈されていない装填材料を導入するよりも少ないポンピング損失をもたらす。上記損失の減少は、希釈された装填材料が同じエネルギー含有量でより大きいという事実によるものである。したがって、上記シリンダ内に同量のエネルギーを導入するために、通常スロットル弁によって行われる上記エンジンの吸気時の絞りはそれほど顕著ではなく、上記吸気で発生するガスの圧力はより高い。加えて、同じエネルギーを火花点火エンジンのシリンダに導入すると、装填材料の希釈により、装填材料の質量および総熱容量が増加する。したがって、他の点ではすべて同じであるので、上記装填材料の燃焼はより低い温度で行われる。燃焼によって生成される窒素酸化物の量を減少させることに加えて、上記低温は、上記装填材料によるその熱の一部の上記壁への伝達の結果、生じるシリンダの壁での熱損失を減少させる。
【0011】
最後に、特に装填材料が酸素に乏しいかまたは酸素を含まない中性ガスで希釈されている場合、上記装填材料は空気-燃料混合物の制御されない自己着火に対して感受性が低い。上記自己着火はがたつきを発生させる原因となり、これは火花点火エンジンの性能を劣化させ、それらを構成する機械部品を損傷する爆発燃焼を特徴とする望ましくない現象である。装填材料の希釈によってもたらされるがたつきの減感は、上記エンジンがより高い圧縮比で動作すること、または性能の観点から可能な最も好ましい時期にトリガされる点火で動作すること、またはその両方を可能にする。
【0012】
希釈空気および燃料負荷のこの特定の文脈において、化学量論的量で作動する火花点火エンジンは、「希薄燃焼」とも呼ばれる過剰空気で作動する上記エンジンとは異なる。
【0013】
化学量論的量で作動するエンジンは、三元触媒、燃焼から生じる汚染物質を後処理するそれ自体公知の装置としか適合しない。上記触媒は、熱機関の燃焼室内で燃焼しなかった炭化水素を燃焼させる責を負う。この燃焼の生成物はすでに大気中に存在する水蒸気と二酸化炭素である。上記三元触媒はまた、汚染することで有名な一酸化炭素の酸化を完了させてそれを二酸化炭素に変換し、そして窒素酸化物を還元してそれらを地球の大気の約78%を構成し本来無公害である大気の二窒素に変換する。
【0014】
三元触媒による窒素酸化物の還元は、エンジンに導入される装填材料が化学量論的であること、すなわちそれが上記装填材料に含まれる炭化水素の燃焼に必要な正しい量の酸素を含むことを必要とする。
【0015】
過剰の酸素は三元触媒が窒素酸化物を還元することを不可能にする。したがって、三元触媒を用いて過剰の空気で運転するエンジンの排気ガス中に含まれる窒素酸化物を後処理することは不可能である。
【0016】
これは、-ますます厳しくなる環境規制を満たすために-過剰空気で作動するエンジンが、窒素酸化物トラップなどの窒素酸化物を還元するために特別に設計された装置または尿素による窒素酸化物の選択接触還元のための装置を受け入れる理由を説明する。上記装置は、一般に、未燃炭化水素を先に燃焼させ、かつ一酸化炭素、そしてますます多くの場合、粒子フィルタの酸化を完了させた二元酸化触媒の出口に配置される。
【0017】
ディーゼルエンジンが過剰な空気で自然に作動すると仮定すると、ヨーロッパでEuro VI規格が施行されて以来、ほとんどすべてのヨーロッパのディーゼル車は窒素酸化物を二窒素に変換するために後処理する装置を備えている。
【0018】
これらの装置の問題は、それらが高価で複雑であり、そしてそれらの大きさおよび維持の要求が、上記装置が実際上過剰な空気でのみ作動することができるディーゼルエンジンにほとんど専ら使用される点まで高いことである。
【0019】
火花点火エンジンに関する限り、エンジン製造業者は、それらが、さらに言えば単純で安価である三元触媒に対応したままであるようにそれらを化学量論で作動させるようにあらゆる努力をしている。
【0020】
窒素酸化物トラップまたは尿素による窒素酸化物の選択的接触還元のための装置の特別な経済的欠点を被る必要なしに火花点火エンジンの装填材料の希釈によって引き起こされる燃料消費の減少から利益を得るために、上記エンジンの上記装填材料を、酸素に富んだ空気ではなく、酸素を含まない中性ガスで希釈することが必要である。
【0021】
この後者のガスは通常、エンジン自体の排気ガスを再利用することによって得られ、上記ガスはもはや酸素を含まず、利用可能で豊富である。この戦略は「排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)」またはその頭字語「EGR」の名称で知られている。
【0022】
上記ガスは火花点火エンジンの排気口で高温で出て行くので、それらが上記エンジンに導入された装填材料を過熱するのを防ぐために、新鮮ガスと混合する前にそれらの温度を下げる必要がある。この戦略は「冷却されたEGR」として知られており、これは再循環される排気ガスが上記エンジンによって受け取られた新鮮なガスと混合される前に冷却されることを指定している。フランスのエンジン製造業者は、理解しやすく使いやすい「EGR refroidi」という「フレングリッシュ」用語を使用している。
【0023】
EGRガスの事前の冷却は少なくとも2つの目的のために必要とされる。
【0024】
第1に、火花点火エンジンによって受け取られるEGRガス/新鮮ガス混合物の温度が低いままであることが必要であり、その結果上記エンジンの体積効率は最大トルクで作動するとき高いままである。実際、所与の吸気圧に対して、上記エンジンのシリンダに導入される上記混合物の質量は、上記混合物が低温であることがいっそう重要になる。上記エンジンがターボチャージャまたは他の任意の手段によって過給される場合、EGRガスの予冷はさらに重要になる。
【0025】
第2に、EGRガス/新鮮ガス混合物が高温になればなるほど、がたつきの発生を引き起こし、これは上記エンジンの性能に有害である。
【0026】
問題は、冷却されたEGRで希釈された装填材料は酸素が少ないことである。装填材料が化学量論的でがたつきに対して抵抗性を保つことが特に求められる目標でもあるので、これは逆説的である。この酸素枯渇の結果は、上記装填材料が冷却されたEGRで希釈されていないときよりも燃焼の初期化が達成するのがより困難でありそしてその発展が遅いことである。
【0027】
火花点火エンジンでは、燃焼の初期化は、数十分の1ミリメートルだけ互いに離れた2つの電極間に高温の電気アークを発生させることによって行われる。
【0028】
空気-燃料装填材料が冷却されたEGRで著しく希釈されると、電気アークは酸素と燃料が大域的に乏しい混合物を通過する。実際に不均一性が燃焼室の3次元空間において不可避的に生じ、他のものよりも酸素および/または燃料に富むポケットを有するので、偶然にもスパークプラグのカソードとアノードとの間の数十分の1ミリメートルの空間が十分に燃焼可能なEGRガス/新鮮ガス混合物を含まない場合、不着火の危険性が高まる。
【0029】
燃焼が予想通りに初期化されると、装填材料に含まれる燃料エネルギーが熱として放出され始め、火炎が発達し始める。このプロセスを達成するために、上記火炎は連続するステップでその熱を周囲のEGRガス/新鮮ガス混合物に、すなわち可燃性層から後ろの可燃性層へと伝達する。各層は、前の層によってその着火温度にされ、燃焼し、そしてそれが次の層に伝達するなどの熱を放出する。連鎖反応の原理によれば、火炎は火花点火エンジンの燃焼室の三次元空間内を伝播する。
【0030】
冷却されたEGRの主な問題は、それが燃焼の初期化を困難にし、そしてその温度の全体的な低下のために、および火炎の経路における燃焼室の容積内に見出される燃焼剤および/または燃料の様々な程度の豊富さのために、後者の発達をかなり遅らせることである。
【0031】
さらに、実験的には、冷却されたEGR内の装填材料の含有量が多いほどエンジンが不安定になることが観察されている。ある特定の所与の含有量から、不着火が起こりそして効率(これまでは装填材料の冷却されたEGR含有量と共に増加する傾向があった)が減少する。上記EGRの特定の含有量を超えると、火花点火エンジンは停止し、燃焼は初期化できない。
【0032】
排ガスの未燃炭化水素および一酸化炭素含有量は、装填材料の冷却されたEGR含有量と平行して増加することもまた観察される。これは、混合物のポケットがその経路上の火炎によって適切に直面されて燃焼するには余りにも貧弱であること、およびエンジンの燃焼室の冷たい内壁の近くの境界層の火炎詰まりが厚くなることの両方が原因である。
【0033】
さらに実験的には、点火力が高ければ高いほど、エンジンの安定性を大きく変えることなく、装填材料の冷却されたEGR含有量をより多くすることが可能であることもまた観察される。
【0034】
このように、米国のサウスウェスト研究所などの多くの研究所は、装填材料の冷却されたEGR含有量のアクセス可能な限界を押し下げるためにますます強力な電気点火装置を開発してきた。この戦略の目的は、言うまでもないが、火花点火エンジンの効率を改善することである。
【0035】
電気点火の電力を増大させる問題は、それらの性能がそれらの電力と共に急速に低下することである。それ故、ますます少ない追加の点火力を得るためにより多くの電力が必要とされる。
【0036】
加えて、スパークプラグの電極が互いに離れて火花が燃焼可能なポケットを横切る可能性がより高い場合、または火花の持続時間が増加した場合、または火花が繰り返される場合、高電力が重要である。これはますます高い電圧および電力をもたらし、それはスパークプラグの電気絶縁の実現をより複雑にする一方、スパークプラグの寿命を劇的に短くする。
【0037】
装填材料を点火することが困難なのは、ターボチャージャ付き火花点火エンジンでは、がたつきに対する感度をどうしても減らすことが目的である場合に、冷却されたEGRの方がより関心の対象となることが原因でもある。しかし、ブースト圧力が高いほど、スパークの作動の瞬間にスパークプラグの電極間のEGRガス/新鮮ガス混合物の密度が高くなり、スパークを引き起こすためにより多くの電圧が必要とされる。それに基づいて、冷却されたEGRは、エンジンのシリンダに導入されたのと同じエネルギーで、電極間にあるガスの質量が着火に対する上記ガスの抵抗と共に増加するので、正しい方向には進まない。
【0038】
本出願人に属する特許FR第2 986 564号明細書は、これらの問題に対する強力な応答であることが注目される。上記特許で言及されている内燃機関のための火花点火および高圧積層装置は、火花プラグの中心にそして火花がトリガされる直前に、冷却されたEGRで希釈されていないので非常に可燃性で、そして潜在的にわずかに燃料が豊富な、ほぼ化学量論的なパイロット装填材料を高圧下に噴射することを提案している。
【0039】
上記装置によって噴射された後、上記装填材料パイロットは、上記電極間に電気アークが形成されるとすぐにスパークプラグの電極を浸し、上記装填材料は直ちに着火し、それに含まれるエネルギーを放出する。従って、上記装填材料それ自体がそれ自体を点火する手段であり、その電力はそれを点火することを許容した電気アークのそれより数百から数千倍大きい。電気的手段だけでこのような点火力を得ることは実際上不可能である。
【0040】
実際、経験上、単純に最も強力な電気点火装置ではほんの約30パーセントであることと比較して、このような装置では約50パーセントの冷却されたEGR率が可能であることが分かっている。
【0041】
特許FR第2 986 564号明細書で採用されているアプローチは、発明者Fred N. SauerおよびJ.Brian Barryの米国特許第4,319,552号明細書またはBosch Companyに属する特許DE第41 40 962 A1号明細書において関連する形態で見いだされることに留意されたい。
【0042】
いずれにせよ、Orbital Companyの米国特許第6564770号明細書は、この特許の目的が比較的低圧でできるだけ均一な主装填材料の構成を保証することであり、EGRで高度に希釈された主装填材料の点火目的のためパイロット装填材料を形成しないことから、このカテゴリーには該当しない。
【0043】
特許FR第2 986 564号明細書に記載された装置、およびそれらが今述べた関連特許に記載された装置の問題は、非常に効率的な燃焼の初期化ではなく、上記燃焼の発展にある。特に、主装填材料に含まれる燃料の燃焼割合が約50%に達すると、燃焼は進行するのに苦労し、それにより主装填材料のすべてを燃焼するのに必要な総時間は、冷却されたEGRで希釈された装填材料のすべてを燃焼するのに必要な時間より長くなる。
【0044】
結果として、冷却されたEGRの潜在的なエネルギー利得の一部は、非常にゆっくりと発展する燃焼のために失われる。
【0045】
しかしながら、火花点火エンジンを、一方で、冷却されたEGR含有量が50%程度である主装填材料で、他方で、同じ上記エンジンが希釈されていない装填材料を燃焼するときに同じ上記エンジンで見出されるものに匹敵する安定性および総燃焼期間で同時に運転することが可能であるならば、冷却されたEGRの最大の利益が見出されるであろう。
【0046】
その解決策はパイロット装填材料が導入され得る予室の使用によってもたらされることができ、上記予室はスパークプラグの電極を収容することができ、さらには米国特許第4,319,552号明細書に提案されているように上記スパークプラグの一体部分を形成することができる。
【0047】
このような予室の第1の利点は、それがパイロット装填材料をスパークプラグの電極にできるだけ接近させて潜在的に維持することであり、これは上記装填材料の点火前に火花点火エンジンの主燃焼室における上記装填材料の分散を制限できる。
【0048】
上記予室の第2の利点は、いったん点火されると、パイロット装填材料が上記予室を加圧し、該予室は上記予室に含まれる孔を介して火花点火エンジンの主燃焼室に高速でトーチを送ることである。
【0049】
このトーチによる主装填材料の点火は非常に有効である。それというのも、通常のスパークプラグ点火の場合のように燃焼室の中心から始まるのではなく、火炎は燃焼室の複数の場所で初期化されて燃焼室の周囲から燃焼室の中心に向かっておよび各トーチ間で接線方向に発生するからである。
【0050】
したがって、燃料のエネルギーは非常に短時間で放出され、これは火花点火エンジンの熱力学的効率にとって好ましい。それというのも、有用な仕事に関してトリガがより生産的であるだけでなく、そのような急速な燃焼の結果として生じるがたつきに対するもっともわずかな感度が、著しくより高い容積比でエンジンを運転することを可能にするからである。
【0051】
いずれにせよ、米国特許第4,319,552号明細書、または本出願人に属する特許FR第2,986,564号明細書または先に言及した関連特許で提案されている解決策は、予室に単独で燃料を注入するまたはしない、および空気と燃料の混合物でないことに関係する多数の特許と比較できない。
【0052】
これらの特許の中でもとりわけ、例えば、<Fluid Research Limited>からのGB第2 311 327 A号明細書、<Tice Technology Corp>からの米国特許第4,864,989号明細書、General Motorsからの米国特許第4,124,000号明細書、<Ford Motor Company>からの米国特許第4,239,023号明細書、発明者Dieter Kuhnertからの米国特許第4,892,070号明細書、発明者Radu OpreaおよびEdward Rakosiからの米国特許出願公開第2001/0050069 A1号明細書、または発明者William Attardからの米国特許出願公開第2012/0103302A1号明細書の下で知られるものが言及され、その原理に基づいて、「乱流ジェット点火」と呼ばれる点火システムが、フォーミュラ1エンジン用にドイツの会社<Mahle>によって開発された。
【0053】
実際、「希薄燃焼」火花点火エンジンに関連し、その唯一の目的は、装填材料が全体として燃料が少ないが酸素が豊富であるグランド上で着火点の周囲で燃料負荷を豊富にすることであるこれらの特許に記載された解決策と、冷却されたEGRで高度に希釈された装填材料で作動する火花点火エンジンを主に提案し、そして着火点の周囲で、装填材料が全体的に燃料と酸素が少ないグランド上で、燃料と酸素の豊富な混合物を構成することを目的とするFR第2 986 564号および関連特許に記載された解決策との間には基本的な差がある。
【0054】
この段階では、特許FR第2 986 564号に提案されているように、空気と燃料からなる燃焼性の高いパイロット装填材料を噴射してスパークプラグの電極を上記装填材料で包むことにより、EGRで強力に希釈された主装填材料を効果的に点火することが可能になることが分かる。
【0055】
上記主装填材料が点火されると、上記装填材料に含まれる燃料の総量の約50パーセントが燃焼するまで燃焼が急速に進行することも分かっている。上記50%を超えると、燃焼はよりゆっくりと発展するので、主装填材料のある特定のEGR含有量から、火花点火エンジンの熱力学的効率は予想されるように増加する代わりに減少する。
【0056】
米国特許第4,319,552号明細書に提案されるように、点火プラグの電極が収容されている予室にパイロット装填材料が噴射される場合、50%を超える燃焼発展の後者の問題は全体的または部分的に解決されるであろうと仮定された。
【0057】
確かに、上記予室はその穴を通して高速で活気づけられた高温ガスのトーチを放出し、それは着火点の周りの大きな半径方向長さにわたって燃焼を初期化するだけでなく、上記トーチに垂直な火炎の発展を促進するであろう火炎前面に折り目を付けるであろう。
【0058】
しかしながら、この最後の解決法は多くの理由で不満足であることを証明するかもしれず、そのうちのいくつかは、特に火花点火エンジンの状況において予室に基づく点火装置の放棄をもたらした。
【0059】
実際、効果的であるためには、予室は突出するドームを有さなければならず、ドームは、エンジンの燃焼室内に十分に貫通しており、それによって、上記ドームによって露出されかつそれを通して高温ガスが放出されてトーチを形成する孔が十分に上記燃焼室の内側に配置されるようにし、それにより上記トーチが上記エンジンの低温の内壁をなめないようにする。
【0060】
しかしながら、燃焼が予室内で初期化されるとすぐに、予室内に含まれるガスは急速に圧力が上昇し、上記孔を通して高速で排出される。そうすることで、上記ガスは上記ドームを加熱する。
【0061】
主装填材料の燃焼が初期化されると、エンジンの燃焼室内の圧力が急速に予室内の圧力を上回るので、高温ガスがドームの孔を反対方向に通過し、ドームを再び加熱する。
【0062】
火花点火エンジンのピストンによるガスの膨張中に、上記予室内の圧力は、エンジンの燃焼室内の圧力よりも大きくなる。その結果、予室内に含まれる高温ガスは上記孔を3回通過し、さらに上記ドームを過熱する。
【0063】
しかしながら、ある特定の温度から、突出ドームは、Stuart Herbert-Akroydによって発明され、1891年12月4日の特許CHD4226号に記載されている内燃機関の点火システムのような「ホットボール」のように振る舞う。そのようなホットスポットは、主装填材料の不注意による非火花制御の点火につながる恐れがある。それに続くかもしれないがたつきは火花点火エンジンを損傷するか、さらには破壊する可能性がある。
【0064】
解決策は、ドームがホットスポットにならないようにするために、上記ドームを大幅に冷却することであり得る。しかしながら、結果として生じる熱の放出が、一方では、その温度および速度が上記ドームの孔を通過する間に低下する高温ガストーチの効率を犠牲にして、他方では、火花点火エンジンの熱力学的効率を犠牲にして発生する。
【0065】
したがって、予室が前述のように「ホットボール」点火装置のように振る舞うことができないこと、または少なくとも主装填材料の燃焼の初期化が選択された時間に確実にトリガされ、制御されない時間に起こらないことが不可欠である。
【0066】
これは、自己着火をトリガすることができる上記予室の高温部分を冷却することを含むが、これは、主装填材料を含むエンジンの燃焼室の三次元空間に高温ガストーチを拡散させる上記予室の有効性を大きく損なうことなく行われなければならない。
【0067】
さらに、高圧化された空気-燃料パイロット装填材料の構成はエネルギー的に自由ではないことに留意されたい。最初に空気を圧縮し(これは火花点火エンジン自体によって駆動される圧縮機を必要とする)、次いで上記空気に燃料を噴射することが必要である。他の戦略は、前に構成された空気-燃料混合気を直接圧縮するものであり得る。
【0068】
したがって、無視できないエネルギーコストのために、同じ点火効率で、主装填材料のそれと比較してパイロット装填材料の質量および圧力が小さければ小さいほど、高いEGR率の下で作動する場合、火花点火エンジンの最終エネルギーバランスはより良くなる。したがって、装填材料に点火するためには、あらゆる可能な手段によって、パイロット装填材料に、そのパイロット装填材料の質量および圧力に対して最高の可能な比効率を与えることが必要である。
【0069】
言い換えれば、同じ点火効率では、パイロット装填材料は、以前に可能な限り最低の圧力下に置かれた、可能な限り少量の空気-燃料混合気を含まなければならない。
【0070】
したがって、パイロット装填材料がその点火前に主装填材料に分散されることをできるだけ避けることが必要である。それというのも、そのような分散は主装填材料を点火させるパイロット装填材料の比効率を低下させそして上記パイロット装填材料の質量を増大すること(これは火花点火エンジンの燃料効率を犠牲にして行われる)によってのみ相殺することができるからである。
【0071】
分散は、特に、主装填材料の圧力よりも必然的に大きい圧力下で上記パイロット装填材料の噴射を実行するためにパイロット装填材料を予室に導入するインジェクタによって必要とされる時間に起因する。
【0072】
パイロット装填材料の噴射圧力はほぼ一定のままであり、一方、主装填材料の圧力は、火花点火エンジンのピストンがその上死点に向かって上昇した後のその圧縮の影響下で増加することに留意されたい。パイロット装填材料の噴射の開始は、それ故、上記噴射の終了よりも大きい差圧の下で行われる。結果として、インジェクタによるパイロット装填材料の構成ガスの排出速度は、噴射の終了時よりも噴射の開始時の方が大きい。
【0073】
パイロット装填材料を噴射する前は、予室内の圧力はエンジンの圧縮チャンバ内の圧力よりも低い。したがって、主装填材料の一部は、上記装填材料が圧縮されているときに上記予室に最初に入る。
【0074】
次に、インジェクタはパイロット装填材料を予室内に注入し、そこでそれは高いEGR含有量を有しかつ上記予室内に以前に導入された主装填材料の一部と混合する。
【0075】
上記一部に起因する過剰なガス質量は、次いで、パイロット装填材料の一部と共に予室から排出され、それは予室の内外で高いEGR含有量のガスと混合される。
【0076】
したがって、空気、燃料およびEGRからなる混合物の燃焼性は、予室の容積内および予室の外で必然的に不均一である。パイロット装填材料が可能な限り早く点火することの有効性は、このようにして、主装填材料を点火するための高温ガストーチの効率と同様に減少する。
【0077】
この効率の低下は、パイロット装填材料の空気および燃料質量の増加によってのみ相殺することができ、これは火花点火エンジンの全体的なエネルギー効率を犠牲にして行われる。
【0078】
したがって、理想的には、パイロット装填材料の点火前にパイロット装填材料を主装填材料に分散させることは、いかなる可能な手段によっても回避されるべきである。
【0079】
これは、特許FR第2 986 564号明細書に記載された装置を改良することが非常に有利であり得るという事実を全く問題にしない。実際、上記装置は非常に高レベルの冷却EGRで燃焼を初期化するのに、および主装填材料に含まれる燃料の約50%の割合が燃焼するまで上記燃焼を発展させるのに有効であった。
【0080】
その目的は、上記燃料の少なくとも90%または100%の割合が燃焼するまで、非常に迅速に上記燃焼を発展させる能力を装置に与えることであろう。
【0081】
先に述べたように、これは米国特許第4,319,552号明細書に示唆されているような予室によって、しかしそのような上記予室の評判の悪い、場合により致命的な欠陥を回避することが可能であるという条件で、達成することができる。この目的のために、それが「ホットボール」のようにふるまうことを回避すること、パイロット装填材料が主チャンバ内に分散されることを防止すること、および上記パイロット装填材料を圧縮するのに必要なエネルギーの量を制限する一方で同じ点火効率を維持することを含む、上記予室の有効性を著しく改善することが必要である。
【発明の概要】
【0082】
これらの目的の全ては、本発明によるバルブ点火予室によって対処され、それは-特定の実施形態によれば-以下のことを可能にする:
・予室によって露出された突出ドームが受ける熱負荷を大幅に減少させること。これは、上記ドームの孔であって上記ガスが排出される孔を通る高温ガスの通過回数を約3で割ることによって達成され、それによって上記ドームは過度の温度にされることおよび主装填材料の不注意による自己着火を引き起こす可能性があるホットスポットになることから保護される。
・EGRで強く希釈された主装填材料の燃焼の初期化だけでなく、上記主装填材料のすべてが燃焼するまでの上記燃焼の急速な発展にも必要なパイロット装填材料の質量および圧力を最小にすること。
・この最後の目的を達成するために、予室へのパイロット装填材料の噴射中に主装填材料中のパイロット装填材料の分散を回避すること。
【0083】
これらの目的の全てを達成するために、本発明によるバルブ点火予室は以下のことを可能にする:
・突出ドームに設けられた孔であって上記予室が上記燃焼室と連通する孔を通る高温ガスの望ましくない前後の往復を回避するために、その内部の圧力が燃焼室内の圧力より低いとき、予室を閉鎖した状態に維持すること。
・パイロット装填材料の噴射時間の大部分の間予室を閉鎖したままにし、それにより上記パイロット装填材料のガスが主装填材料のガスと混合することができない密閉空間内で上記噴射が行われるようにすること。
・突出ドームの孔を通る高温ガスの高圧と排出速度を維持しながら、パイロット装填材料の質量および噴射圧力を低減すること。
【0084】
バルブ点火予室は、自動車を含むそれが意図されているほとんどの用途の経済的制約と両立したままであるように大量生産するのに安価であるように設計されている。
【0085】
本発明によるバルブ点火予室は、どのようなタイプであろうと、それが消費する燃料、気体、液体または固体の種類が何であれ、およびその主装填材料が冷却されたEGRによって、それが何であれいずれかの天然の中性ガスによって、または酸素に富むガスによってまたは任意の他の燃焼剤によって希釈されたまたはされない、いかなる火花点火ロータリーまたは線形内燃機関にも適用できることが理解される。
【0086】
本発明によるバルブ点火予室によって受け取られるパイロット装填材料は、燃料および/または燃料とは異なる燃焼剤および/または火花点火エンジンの主装填材料を構成する燃焼剤を含むことができることも理解される。
【0087】
本発明の他の特徴は、本記載に、および主請求項から直接的または間接的に依存する二次請求項に記載されている。
【0088】
本発明による点火予室バルブは、主装填材料を燃焼させることができる燃焼室を形成するようにシリンダに蓋をするシリンダヘッドを備えた内燃機関用に提供され、上記予室は、
・少なくとも1つの成層キャビティであって、一方ではシリンダヘッド内に配置され、積層ダクトによって燃焼室に接続され、他方では、圧縮手段によって先に加圧されたパイロット装填材料を直接的または間接的に上記キャビティに噴射することができる積層インジェクタを受け入れ、上記装填材料は火花によって容易に燃焼可能な燃焼剤/AF燃料混合物からなる、少なくとも1つの成層キャビティと、
・積層キャビティ内に開口し、パイロット装填材料に点火することができる点火手段と、
・積層ダクトの全部または一部を閉鎖することができ、一方では積層キャビティ内のガスの圧力にさらされるキャビティ側の面を露出し、他方では燃焼室内のガスの圧力にさらされるチャンバ側の面を露出する積層バルブであって、積層キャビティ内の上記圧力が燃焼室内の圧力よりも低い場合、積層キャビティの方へ、または燃焼室内の圧力が積層キャビティ内の圧力よりも低い場合、上記燃焼室の方へ、ガス圧力の影響下で上記ダクトに対して平行移動することができる、積層バルブと、
・積層キャビティに最も近い積層バルブの位置を決定する少なくとも1つのキャビティ側バルブストッパと、
・燃焼室に最も近い積層バルブの位置を決定する少なくとも1つのチャンバ側バルブストッパと
を備える。
【0089】
本発明によるバルブ点火予室は、それが積層キャビティに最も近いときに積層ダクトの全部または一部を閉鎖する一方で、それが燃焼室に最も近くに位置付けられるときにより広い部分で上記ダクトを開放する積層バルブを備える。
【0090】
本発明によるバルブ点火予室は、積層ダクト内にまたは上記ダクトのいずれかの端部に配置されたバルブ閉鎖シートからなるキャビティ側バルブストッパを備え、上記シートは積層バルブの周囲におよび/または端部に配置されたキャビティ側バルブ支持面と協働する。
【0091】
本発明によるバルブ点火予室は、互いに接触しているときにシールを形成するバルブ閉鎖シートとキャビティ側バルブシートとを備え、上記シールは、燃焼室内の圧力が積層キャビティ内の圧力よりも高いときにいかなるガスでも上記接触部を通過するのを防止する。
【0092】
本発明によるバルブ点火予室は、積層ダクト内にまたは上記ダクトのいずれかの端部に配置されたバルブ開放シートからなるチャンバ側バルブストッパを備え、上記シートは積層バルブの周囲におよび/または端部に配置されたチャンバ側バルブ支持面と協働する。
【0093】
本発明によるバルブ点火予室は、互いに接触しているときにシールを形成するバルブ開放シートおよびチャンバ側バルブシートを備え、それによりいかなるガスでも上記接触部を通過するのを防止するようにする。
【0094】
本発明によるバルブ点火予室は、積層バルブを備え、積層バルブは、上記ダクトに対する上記バルブの軸方向位置がどのような位置であっても、上記バルブを積層ダクト内のほぼ中央に、および上記ダクトとほぼ同じ長手方向の向きに維持する案内手段をその周囲に備える。
【0095】
本発明によるバルブ点火予室は、バルブ開放シートとチャンバ側バルブ支持面とが互いに接触しているとき、積層バルブが、積層ダクトとともに、一方では積層キャビティと、他方では、少なくとも1つのガス放出孔を介して燃焼室と同時に連通するトーチ点火予室を形成する。
【0096】
本発明によるバルブ点火予室は、円筒形のトーチ点火予室の内周壁を備える一方、積層バルブは円形の外周を有しかつ上記予室内に低い半径方向間隙で収容される。
【0097】
本発明によるバルブ点火予室は、トーチ点火予室を収容しかつそこからガス放出孔が開口する突出放出ドームの形態の燃焼室内に突出して開口する積層ダクトを備える。
【0098】
本発明によるバルブ点火予室は、突出放出ドーム内に配置されたバルブ開放シートを備える。
【0099】
本発明によるバルブ点火予室は、積層バルブが燃焼室の近くに配置されたとき、すなわちそれが協働するチャンバ側バルブストッパに近接してまたは接触して配置されたときに、上記バルブが、積層キャビティを燃焼室と接続する少なくとも1つのガス放出孔を露出することを提供する。
【0100】
本発明によるバルブ点火予室は、有孔接続管の第1の端部を閉鎖する点火スパークプラグからなる点火手段を備え、有孔接続管は、積層キャビティの内部容積の全部または一部を通過し、かつその本体は、上記管の内部を上記内部容積に接続する少なくとも1つの半径方向スロットによって半径方向に横断され、一方で上記管の第2の端部は積層ダクトおよび積層バルブを受け入れ、一方でスパークプラグの中心電極と接地電極とが有孔接続管内に収容される。
【0101】
本発明によるバルブ点火予室は、空力ドームを露出させるキャビティ側の面を備える。
【0102】
本発明によるバルブ点火予室は、点火スパークプラグに含まれる中心電極に面する接地電極を形成するキャビティ側の面を備え、点火スパークプラグは点火手段を構成する。
【0103】
本発明によるバルブ点火予室は、キャビティ側バルブ支持面とチャンバ側バルブ支持面とを受け入れるその周縁部で、その中心部よりも軸方向に厚い積層バルブを備える。
【0104】
非限定的な例として与えられる添付の図面を参照して以下に続く記載は、本発明、その特徴、およびそれが提供する可能性がある利点をより深く理解するのに役立つであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【
図1】内燃機関のシリンダヘッド内に設置することができるような、本発明によるバルブ点火予室の概略断面図である。
【
図2】本発明によるバルブ点火予室の概略断面図であり、その積層バルブは、上記積層バルブに含まれるキャビティ側バルブ支持面がそれが協働するバルブ閉鎖シートと接触するとき、積層ダクトを完全に閉じることができる一方、上記積層バルブは上記バルブがチャンバ側バルブストッパに載るとき、突出放出ドームに収容されたトーチ点火予室を形成する。
【
図3-8】本発明による、そして
図2に示される特定の構成によるバルブ点火予室の概略断面の部分拡大図であり、上記拡大図は、上記予室の様々な動作段階を示す。
【
図9】半径方向スロットによって横断された半径方向に穿孔された接続管が追加された
図2に示した主な特徴を組み込んだ本発明によるバルブ点火予室の概略断面図であり、上記管は積層キャビティの内部容積を通過し、点火スパークプラグと一体化され、一方で積層バルブのキャビティ側の面は上記スパークプラグに含まれる中心電極に面する接地電極を形成する。
【
図10】本発明による、そして
図9に示す実施形態によるバルブ点火予室の三次元図である。
【
図11】本発明による、そして
図9に示す変形実施形態によるバルブ点火予室の破断された長手方向部分の三次元図である。
【
図12】本発明による、そして
図9に示す代替実施形態によるバルブ点火予室の分解三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
図1~12は、バルブ点火予室1、その構成要素、その変形形態、およびその付属品の様々な詳細を示している。
【0107】
図1から、バルブ点火予室1が内燃機関2用に特別に設計されていることが分かる。内燃機関2は、主装填材料30を燃焼することができる燃焼室5をピストン31と共に形成するためにシリンダ4に蓋をするシリンダヘッド3を備える。
【0108】
図1~12において、本発明によるバルブ点火予室1は少なくとも1つの積層キャビティ6を備え、積層キャビティ6は、一方ではシリンダヘッド3内に配置されかつ積層ダクト7によって燃焼室5に接続され、他方では圧縮手段10によって予め圧縮されたパイロット装填材料9を上記キャビティ6内に直接的または間接的に噴射することができる積層インジェクタ8を受け入れることが注目される。
【0109】
本発明によれば、パイロット装填材料9は、火花によって容易に燃焼可能な燃焼剤-AF燃料混合物からなる。
【0110】
図1、2および9は、積層インジェクタ8は、本発明によるバルブ点火予室1に含まれ、直接または間接的に、インジェクタ出口ダクト28を介して、パイロット装填材料9を積層キャビティ6内に噴射できることを示している。
【0111】
積層インジェクタ8は制限なく任意のタイプのものとすることができ、上記装填材料9に含まれる燃焼剤-AF燃料混合物がガスまたは液体いずれかの別のインジェクタの可能な補助によってまたはそれ自体公知の気化器の補助によって上記積層インジェクタ8の上流で形成されようと下流で形成されようと、任意の動作手順によって積層キャビティ6内にパイロット装填材料9を導入することができる任意の装置からなることができる。
【0112】
さらに、積層キャビティ6および積層ダクト7は有利にはそれ自体既知の耐火材料で被覆することができる、または上記材料から作ることができる。あるいは、積層キャビティ6および/または積層ダクト7の少なくとも一部分と、これらの構成要素6、7を受け入れるシリンダヘッド3との間に空隙が残され、それにより上記構成要素6、7と上記シリンダヘッド3との間の熱交換を制限するようにしてもよい。
【0113】
同じく、
図1~12から、本発明によるバルブ点火予室1は、積層キャビティ6内に開口しかつパイロット装填材料9を点火することができる点火手段11を備え、上記手段11は場合によりそれ自体既知の点火スパークプラグ12からなることが分かる。
【0114】
同じく、
図1~12において、本発明によるバルブ点火予室1は、積層ダクト7の全部または一部を閉鎖することができる積層バルブ13であって、一方で積層キャビティ6内に存在するガスの圧力にさらされるキャビティ側の面14と、他方で燃焼室11内に存在するガスの圧力にさらされるチャンバ側の面15とを露出する積層バルブ13を含むことが注目される。
【0115】
上記積層バルブ13は、積層キャビティ6内の上記圧力が燃焼室5内に存在する圧力より低い場合に積層キャビティ6に向かって、または燃焼室5内に存在する圧力が積層キャビティ6内に存在する圧力よりも低い場合に上記燃焼室5に向かって、ガスの圧力の影響下に積層ダクト7に対して平行移動することができることに注目されたい。
【0116】
積層バルブ13はまた重力または加速の影響下に積層ダクト7内を移動することができるが、これは利点としても所望の動作モードとしてもみなされないことに留意されたい。
【0117】
積層バルブ13は、耐熱性超合金から作製しできるだけ軽量に保つことができる、または炭化ケイ素などのセラミック材料から作製することができることを強調することができる。
【0118】
今述べたことに加えて、本発明によるバルブ点火予室1は、積層キャビティ6に最も近い積層バルブ13の位置を決定する少なくとも1つのキャビティ側バルブストッパ16を含むことが注目される。これは、
図3~8において特に明らかである。
【0119】
さらに、本発明によるバルブ点火予室1は、燃焼室5に最も近い積層バルブ13の位置を決定する少なくとも1つのチャンバ側バルブストッパ17を備える。
【0120】
本発明によるバルブ点火予室1の変形として、積層バルブ13は、それが積層キャビティ6に最も近いときに積層ダクト7の全部または一部を閉鎖することができ、一方、それが燃焼室5に最も近くに位置するとき、上記ダクト7をより広い部分にわたって開放することが注目される。
【0121】
特に
図3~8において、キャビティ側バルブストッパ16は、積層ダクト7内または上記ダクト7のいずれかの端部に設けられたバルブ閉鎖シート18からなることができ、上記シート18は、積層バルブ13の周囲および/または端部に配置されたキャビティ側バルブ支持面19と協働することが注目される。
【0122】
また、バルブ閉鎖シート18とキャビティ側バルブ支持面19とは、それらが互いに接触しているときにシールを構成することができ、上記シールは、燃焼室5内の圧力が積層キャビティ6内の圧力よりも高いときにいかなるガスでも上記接触部を通過するのを防止することに注目されたい。
【0123】
別の変形例として、チャンバ側バルブストッパ17は、積層ダクト7内または上記ダクト7のいずれかの端部に設けられたバルブ開放シート20からなることができ、上記シート32は積層バルブ13の周囲および/または端部に配置されたチャンバ側バルブ支持面21と協働する。
【0124】
この場合、バルブ開放シート20およびチャンバ側バルブ支持面21は、それらが互いに接触しているときにシールを構成し、それによりいかなるガスでも上記接触部を通過するのを防止することができる。
【0125】
図3~8および
図12から明らかなように、積層バルブ13は、その周囲に案内手段22を備えてもよく、案内手段22は、上記バルブ13を積層ダクト7のほぼ中心に保持し、かつ、上記ダクト7に対する上記バルブ13の軸方向位置にかかわらず、上記ダクト7とほぼ同じ長手方向の向きに保持する。
【0126】
図2、3、6、8および9において、バルブ開放シート20とチャンバ側バルブ支持面21とが接触しているとき、積層バルブ13は積層ダクト7と共にトーチ点火予室23を形成することができ、トーチ点火予室23は、一方では積層キャビティ6と、他方では少なくとも1つのガス放出孔24を介して燃焼室5と同時に連通することに注目されたい。
【0127】
本発明による点火予室バルブ1のこの特定の文脈において、トーチ点火予室23の内周壁は円筒形であってもよく、一方、積層バルブ13は円形の周囲を有し、上記予室23内に小さい半径方向間隙で収容され、その結果、上記予室23に対する上記バルブ13の位置に関係なく、上記バルブ13と上記壁との間に小さな半径方向間隙が残され、上記小さな間隙は、積層キャビティ6と燃焼室5との間のガスの通過を遅くする制限通路を形成する。
【0128】
図1~12は、本発明によるバルブ点火予室1の特定の実施形態によれば、積層ダクト7が、トーチ点火予室23を収容しかつガス放出孔24がそこから開口する突出放出ドーム25の形態で燃焼室5内に開口し突出することができることを示す。
【0129】
ガス放出孔24は、多かれ少なかれ燃焼室5の方に向けられ、突出放出ドーム25の周縁において多かれ少なかれ接線方向に出ることができることが注目される。さらに、ガス放出孔24の形状は、上記孔24から出るガスの噴流が指向性であるようにまたは拡散性であるように設計されるかどうかに依存して変わり得る。例として、ガス放出孔24は、円筒形、円錐形であり得、または収束または発散を形成し得る。
【0130】
有利には、および
図1~12に示すように、バルブ開放シート20は突出放出ドーム25内に配置でき、突出放出ドーム25は、それ自体既知の摩擦防止材料および/または非粘着性材料および/または耐火材料で被覆することができる、または上記材料から作製することができる。
【0131】
一般的に、積層バルブ13が燃焼室5の近くに配置されると、すなわち、それが協同するチャンバ側バルブストッパ17の近くにまたはそれと接触して配置されると、上記バルブ13は、積層キャビティ6を燃焼室5に接続する少なくとも1つのガス放出孔24を露出させることができることが理解される。
【0132】
図9~12に示すように、点火手段11は、有孔接続管26の第1の端部を閉鎖するスパークプラグ12からなることができ、有孔接続管26は、積層キャビティ6の内部容積の全部または一部を通過し、かつその本体は、上記管26の内部を上記内部容積に接続する少なくとも1つの半径方向スロット27によって半径方向に横断され、上記管26の第2の端部は積層ダクト7および積層バルブ13を受け入れ、上記スパークプラグ12の中心電極40と接地電極39とが有孔接続管26内に収容される。
【0133】
図9~12において、有孔接続管26は、その座面をそれが延ばすスパークプラグ12の一部であってもよいことに注目されたい。この場合、スパークプラグ12は、その座面の外側円筒面上および/またはそれを延ばす有孔接続管26の外側円筒面上に形成されたねじ山によってシリンダヘッド3に直接ねじ込まれる。
【0134】
あるいは、スパークプラグ12は、上記管26がシリンダヘッド3にねじ込まれている一方で上記管26にねじ込まれてもよい。いずれの場合も、一方ではシリンダヘッド3と、他方ではスパークプラグ12および/または有孔接続管26との間に、上記スパークプラグ12および積層ダクト7の両方において、シールが形成される。
【0135】
図9~12は、キャビティ側の面14が空力ドーム29を露出させることができることを示し、これは、特に、ガスの流れを、可能な限り小さい抵抗を上記流れに提供することによって、そして上記流れの中で可能な限り少ない乱流を発生させることによって、ガス放出孔24に向けることを可能にする。
【0136】
図1~12は、本発明によるバルブ点火予室1の特定の実施形態によれば、キャビティ側の面14が、スパークプラグ12内に含まれる中心電極40に面する接地電極39を形成することができ、スパークプラグ12は点火手段11を構成し、高圧電流が上記中央電極40から上記接地電極39に流れるときに、上記接地電極39と上記中央電極40との間に電気アークが形成されることができることを示している。
【0137】
図1~12は、積層バルブ13がその中心部よりもキャビティ側バルブ支持面19およびチャンバ側バルブ支持面21を受けるその周辺部で軸方向に厚くてもよいことをさらに示している。
【0138】
この特徴は、上記バルブ13に、上記バルブ13の中心部からその周辺部に向かって徐々に増大する半径方向厚さを付与し、それにより上記バルブ13は、バルブ支持面19、21と、バルブ支持面19、21が協同するシート18、20との間の接触部において最も効果的に冷却することを保証しながら、可能な限り最も軽くかつ衝撃に対して可能な限り最も耐性を有する。
【0139】
本発明の動作モード
本発明によるバルブ点火予室1の動作モードは、
図1~12を参照すると容易に理解される。
【0140】
図1に示す本発明によるバルブ点火予室1の非限定的な適用例によれば、上記予室1は、主装填材料30を燃焼させることができる燃焼室5をピストン31と共に形成するためにシリンダ4に蓋をするシリンダヘッド3を備える内燃機関2内に実装されていることが分かる。
【0141】
ピストン31はコンロッド38を介してクランクシャフト37に接続されており、上記ピストン31がシリンダ4内で交互の並進運動によって駆動されると、上記ピストン31は上記クランクシャフト37に回転運動を付与することに注目されたい。
【0142】
図1はまた、燃焼室5が吸気バルブ34を介して吸気ダクト32と連通するように配置され得る一方、上記燃焼室5は排気バルブ35によって排気ダクト33と連通するように配置され得ることを示す。
【0143】
図1~8は、本発明によるバルブ点火予室1の動作モードを説明するためにここで例として取り上げられ、上記予室1がシリンダヘッド3と一体化されていることを示している。
図1~8はまた、点火手段11がここではそれ自体公知のスパークプラグ12からなり、その電極が積層キャビティ6内に開口していることを示している。インジェクタ出口ダクト28を介して積層キャビティ6にパイロット装填材料9を噴射することができる積層インジェクタ8を、
図1および2で見ることができる。
【0144】
図1において、積層インジェクタ8による噴射の前に、易燃性の燃焼剤-AF燃料混合物からなるパイロット装填材料9が、圧縮手段10を形成する積層圧縮機36によって加圧されていることが注目される。これはまた、本発明によるバルブ点火予室1の実施形態の非限定的な例であり、ここでは動作モードを説明するための一例として取り上げられている。
【0145】
本発明によるバルブ点火予室1の動作モードを説明するために、ここでは、内燃機関2の容積比が、バルブ点火予室1を除いて、14対1であると仮定する。この結果を得るために、ピストン31によって500立方センチメートルの体積が押し退けられるとき、燃焼室5の容積は38.5立方センチメートルである。
【0146】
さらに、および非限定的な例として、点火バルブ予室1の容積は、積層ダクト7の容積とインジェクタ出口ダクト28の容積とを含めて、ここでは0.5立方センチメートルである。
【0147】
図1~8に示される例示的実施形態は、本発明によるバルブ点火予室1の動作モードを詳細に記載するためにここで使用され、ここで、キャビティ側バルブストッパ16は積層ダクト7内に配置されたバルブ閉鎖シート18からなり、上記シート18は積層バルブ13の周囲に配置されたキャビティ側バルブ支持面19と協働することが見出される。
【0148】
ここでは、バルブ閉鎖シート18とキャビティ側バルブ支持面19とが互いに接触したときにシールを形成するように選択され、このシールは、燃焼室5内の圧力が積層キャビティ6内の圧力よりも高いときにいかなるガスでも上記接触部を通過することを防止する。
【0149】
本発明によるバルブ点火予室1の動作モードを説明するために、チャンバ側バルブストッパ17が、積層ダクト7に配置されたバルブ開放シート20からなることが同じく提供され、上記シート32は、積層バルブ13の周囲に配置されたチャンバ側バルブ支持面21と協働することが同じく注目される。この特定の構成は、
図3~8に明確に見て取れる。
【0150】
この特定の状況において、バルブ開放シート20とチャンバ側バルブ支持面21とが互いに接触したときにシールを提供して上記接触部におけるいかなるガスの通過も防止することが提供される。
【0151】
特に、
図2、
図3、
図6および
図8において、バルブ開放シート20とチャンバ側バルブ支持面21とが互いに接触しているとき、積層バルブ13は積層ダクト7と共に環状のトーチ点火予室23を形成し、上記予室23は、一方では積層キャビティ6と、他方では燃焼室5と、いくつかのガス放出孔24を介して同時に連通していることが注目される。
【0152】
トーチ点火予室23の内周壁は円筒形であり、一方、積層バルブ13は円形の周縁を有し、上記予室23内に小さい半径方向間隙で収容されているので、上記予室23に対する上記バルブ13の位置に関係なく、上記バルブ13と上記壁との間に小さい半径方向間隙が残り、上記小さい間隙は、上記小さい間隙を介した積層キャビティ6と燃焼室5との間のガスの通過を遅くする制限通路を形成することにも注目されたい。
【0153】
図1~8において、積層ダクト7は、突出放出ドーム25の形態で燃焼室5中に突出しながら開放し、突出放出ドーム25は、トーチ点火室23を収容し、この例によれば燃焼室5に向けられるガス放出孔24をそこから開口することが同じく注目される。バルブ開放シート20は突出放出ドーム25内に配置されていることが付随的に注目される。
【0154】
ちなみに、
図1~8において、積層バルブ13のキャビティ側の面14が空力ドーム29を露出し、空力ドーム29は、特に、上記流れに可能な限り最低の抵抗を提供しかつ上記流れの中に可能な限り最低の乱流を引き起こすことによってガス放出孔24に向かってガスの流れを向けることを可能にすることが見て取れる。
【0155】
積層バルブ13はその中心部よりもその周辺部で軸方向に厚くなっていることがまた注目される。この特徴は、バルブ支持面19、21と、上記バルブ支持面19、21が協働するシート18、20との間の接触部において可能な限り効果的に冷却することを保証しながら、上記バルブ13が可能な限り最も軽くかつ衝撃に対して可能な限り耐性を有することを可能にする。非限定的な例として、積層バルブ13は、機械的および熱的に高い耐性を有する超合金で作ることができる。
【0156】
図1~8に示され上記予室1の動作モードの説明としてここで取り上げられた本発明によるバルブ点火予室1の実施形態に関して、ガス放出孔24の直径が100分の12ミリメートルに等しい一方で、積層バルブ13がバルブ閉鎖シート18とバルブ開放シート20との間で移動することができる最大行程は100分の15ミリメートルに等しいと考えられる。
【0157】
本発明によるバルブ点火予室1の動作モードを理解するために、ここでは、その動作を
図3~8に関連して内燃機関2の4つの段階に分割することが有用である。
【0158】
内燃機関2は「冷却されたEGR」として知られる冷却された再循環排気ガスによって強く希釈されたほぼ化学量論的な空気-ガソリン主装填材料30で動作すると考える。したがって、上記装填材料30は点火に対して抵抗性であり、燃焼室5の三次元空間内でのその急速な燃焼の発展を決して助長しない。
【0159】
したがって、本発明によるバルブ点火予室1によって実施されるパイロット装填材料9は、主装填材料30の燃焼を初期化するためだけでなく、可能な限り最短時間で上記燃焼を発展させるために可能な限り最大の効率を有さなければならないことが予想される。これら2つの目的は、本発明によるバルブ点火予室1によって直接達成されることが理解される。
【0160】
ここでその動作モードを説明するために取り上げられる、本発明によるバルブ点火予室1の非限定的な実施形態によれば、パイロット装填材料9は、主装填材料30に含まれる燃料の1コンマ6パーセントを含むと仮定され、上記パイロット装填材料9は火花によって非常に燃焼可能な燃焼剤-AF燃料混合物からなる。
【0161】
ここでは、オットー/ボー・ド・ロシャスによって設計/着想された4ストロークサイクルを通常の順序に従って分解する。
【0162】
吸気段階では、内燃機関2のピストン31は、それが協働するシリンダ4内に下降し、これにより、吸気ダクト32から、開放状態に維持される吸気弁34を介して来る主装填材料30がシリンダ4に導入される。
【0163】
上記段階の間、燃焼室5内の圧力は、積層キャビティ6内の圧力よりも低い。結果として、および
図3に示すように、積層バルブ13は、それが協働するバルブ開放シート20に押し付けられたまま維持され、積層キャビティ6はトーチ点火予室23を介してガス放出孔24によって燃焼室5と連通した状態に置かれる。
【0164】
ピストン31がその下死点に到達すると、入口バルブ34は閉鎖し、ピストン31はシリンダ4内をその上死点まで上昇し始める。
【0165】
その際、上記ピストン31は主装填材料30を圧縮し、燃焼室5内の圧力は積層キャビティ6内の圧力よりも高くなる。
【0166】
上記燃焼室5と上記キャビティ6との間の圧力差は、一方ではガス放出孔24の断面積が小さく、他方では、上記予室23に対する上記バルブ13の位置に関係なく、積層バルブ13とトーチ点火予室23の内壁との間に小さな半径方向の間隙が残るので、一層急速に増大する。
【0167】
燃焼室5から積層キャビティ6へ行くために、主装填材料30の構成ガスは、ガス放出孔24以外の通路を実質的に有さない。
【0168】
ガス放出孔24は上記ガスに限定された通路部分のみを残すので、キャビティ側の面14に作用する圧力とチャンバ側の面15に作用する圧力との間の差が増大し、それは積層バルブ13を、それが協働するバルブ閉鎖シート18に押し付ける効果を有する。この状況は、
図4に明確に示されている。
【0169】
積層バルブ13が、一方でそれが協働するバルブ開放シート20と形成する接触を壊し、他方でバルブ閉鎖シート18と接触するのに必要な時間は、クランクシャフト37の数度の回転、または上記回転のほんの1度または2度に対応し、これらの値は情報としてのみ与えられる。
【0170】
そうすることで、積層バルブ13は積層ダクト7を閉鎖し、そして燃焼室5はもはや積層キャビティ6と連通しない。シリンダ4内のピストン31の上昇によって燃焼室5内で増大し続ける圧力は、積層キャビティ6内の圧力にもはや影響を及ぼさず、上記圧力は安定した状態に維持される。
【0171】
積層バルブ13が積層ダクト7を閉鎖した後の数度のクランクシャフトで、積層インジェクタ8はパイロット装填材料9を積層キャビティ6に噴射し始める。この状況は
図5に示されている。構成ガス上記装填材料9の温度は、この例によれば約80度である。
【0172】
積層バルブ13が積層ダクト7を閉鎖した後の数度のクランクシャフトで、積層インジェクタ8はパイロット装填材料9を積層キャビティ6に噴射し始める。この状況は
図5に示されている。上記装填材料9の構成ガスの温度は、この例によれば約80度である。
【0173】
インジェクタの流速は、積層キャビティ6内の圧力が燃焼室5内の圧力より常に低いままであるように計算され、それにより積層バルブ13はそのキャビティ側のバルブ支持面19を介して協働するバルブ閉鎖シート18から離れることはない。
【0174】
ピストン31の上死点前の数度のクランクシャフト37で、燃焼室5内のおよび主装填材料30がさらされる圧力はほぼ40バールに達する一方、積層キャビティ6内の圧力は20バールに達した。積層インジェクタ8はパイロット装填材料9の積層キャビティ6への噴射を停止する。
【0175】
図6に示されるように、ピストン31がその上死点の近くに到達すると、高電圧電流がスパークプラグ12の終端部に印加される。スパークプラグ12は積層キャビティ6内に保持されるパイロット装填材料9を点火する。
【0176】
さらに、上記キャビティ6内のわずか20バールの圧力がスパークプラグ12の終端部に中程度の電圧のみを印加することを可能にしたことが注目される。
【0177】
図6に示すように、パイロット装填材料9は易燃性の燃焼剤-AF燃料混合物からなり、スパークプラグ12によって初期化された炎はパイロット装填材料9内を非常に急速に伝播し、その温度は、積層キャビティ6内の圧力のように、同様に急速に上昇する。
【0178】
上記圧力が例えば45バール、すなわち燃焼室5内の圧力よりも5バール高い圧力に達するとき、積層バルブ13は100分の15ミリメートルをすでに移動している。そうすることで、上記バルブ13はバルブ閉鎖シート18との接触から離脱し、バルブ開放シート20の上に載る。この状況は同じく
図6に示されている。
【0179】
この過程において、積層バルブ13はガス放出孔24を徐々に露出し、高温ガス(例えば約2,000℃の温度まで加熱された)が、トーチ点火予室23を介しておよび突出放出ドーム25において、上記孔24を介してトーチの形態で積層キャビティ6から放出され始めた。本発明によるバルブ点火予室1によって提供されるこの効果は、
図6に示されている。
【0180】
積層キャビティ6内の圧力が上昇し続けるにつれて、上記キャビティ6内の圧力は燃焼室5内の圧力よりも20バール高くなる。その結果、高温ガスの圧力はガス放出孔24を通過する間に20バールだけ降下し、それによりそれらの温度は約1,300度まで低下する。引き換えに、上記ガスは高速で移動され、これはそれらが燃焼室5の容積内に深く浸透することを可能にする。
【0181】
そうすることで、上記高温ガスは主装填材料30を構成する周囲のガスを点火する。それらが含む燃料エネルギーを熱の中に放つのに加えて、上記周囲ガスは、上記高温ガスによって高い局所速度で移動され、上記速度は微小乱流の形で具体化される。上記微小乱流から生じる火炎前面の折り畳みは、燃焼の発展を促し、それは主装填材料30全体および燃焼室5の容積全体内に急速に伝播する。
【0182】
突出放出ドーム25の全周囲に形成された高温ガストーチが燃焼室5内の複数の場所で主装填材料30を点火するので、上記燃焼を発展させる上での本発明によるバルブ点火予室1の効率はかなり高いことが注目される。
【0183】
実際には、一旦燃焼室5の中心から周辺に向かって半径方向に初期化されると、上記装填材料30の燃焼は、第2の段階において、上記燃焼室5の周辺から上記燃焼室5の中心に向かって半径方向に、およびガス放出孔24を介して突出放出ドーム25から出る各高温トーチ間で接線方向に発展する。
【0184】
パイロット装填材料9を構成する燃焼剤-AF燃料混合物が完全に燃焼し、ガス放出孔24を介して高温ガス噴流の形態で大部分放出されると、燃焼室5内で燃焼が発展し、燃焼室5内の圧力は積層キャビティ6内の圧力よりも急速に高くなる。
【0185】
また、この状況に到達するとすぐに、積層バルブ13のチャンバ側の面15は、上記バルブ13のキャビティ側の面14に作用する圧力よりも大きい圧力を受ける。その後、積層バルブ13は積層キャビティ6に向かって100分の15ミリメートルを急速に移動し、それが協働する弁閉鎖シート18にしっかりと押し付けられる。この状況は
図7に示されている。
【0186】
主装填材料30の「冷却されたEGR」の含有量が高いにもかかわらず主装填材料30の燃焼が非常に迅速に生じるので、上記燃焼はピストン31が上死点に達した後のクランクシャフト37のわずか数度で完了する。したがって、内燃機関2の熱力学的効率はその最大レベルに達することができる、それというのも、膨張がほとんど開始されていない一方で、主装填材料30の構成燃料に含まれる全エネルギーがすでに放たれたからである。
【0187】
図7に示すように、積層バルブ13が閉鎖されたままである一方、ピストン31はその膨張行程を開始し、主装填材料30の高温で燃焼したガスの熱の大部分を有益な仕事に変換し始める。この仕事はコンロッド38を介して上記ピストン31によってクランクシャフト37に伝達される。
【0188】
そうすることで、燃焼室5内の圧力および温度は徐々に低下する。上記圧力が例えば60バールに達すると、積層キャビティ6内に残る圧力は燃焼室5内の圧力よりも高くなる。
【0189】
この状況の結果として、積層バルブ13のチャンバ側のバルブシート21は、
図8に示されるように、バルブ開放シート20との接触に戻る。積層バルブ13は再びガス放出孔24を完全に露出し、パイロット装填材料9の残留高温ガスは、主装填材料30の膨張が連続する間にピストン31によって膨張されるように、上記孔24を介して放出される。
【0190】
ピストン31が下死点に達すると、排気バルブ35が開放し、ガスは排気ダクト33内で膨張を終えた後、ピストン31がシリンダ4内を上死点に向かって上昇するとき、上記ピストン31によって上記ダクト33内に能動的に押し戻される。
【0191】
ピストン31の排気行程の間中、積層キャビティ6は、ガス放出孔24を介してパイロット装填材料9からの残留高温ガスを排出し終えることができる。この排出はまた、通常の順序によればオットー/ボー・ド・ロシャスによって設計/着想された新たな4ストロークサイクルの開始を示す吸気段階中も継続することができる。
【0192】
提示した説明全体を通して分かるように、最新技術による既知の装置とは異なり、本発明によるバルブ点火予室1はパイロット装填材料9の噴射圧力をほぼ20バールに制限することを許容する。
【0193】
この比較的低い圧力は、積層圧縮機36のエネルギー消費を制限することを可能にするだけでなく、単一の圧縮段階が上記圧力に達するのに十分であるという点でその複雑さを制限することを可能にした。
【0194】
さらに、主装填材料30に含まれる燃料のわずか1.6%が、上記装填材料30の強力な点火(従来の火花点火よりも約200倍強力)、ならびに、上記点火が燃焼室5の三次元空間内に均一に分布した複数の場所で発生することを保証するのに十分だった。
【0195】
一方ではパイロット装填材料9の低い圧縮圧力、および他方では上記装填材料9に含まれる少量の燃焼剤-AF燃料混合物の両方が、上記パイロット装填材料9を圧縮するために積層圧縮機36によって消費されるエネルギーを最小限に抑えるのに寄与する。
【0196】
したがって、これにより、積層圧縮機36が内燃機関2のクランクシャフト37に直接的または間接的に適用する仕事量を最小限に抑えることが可能になり、これは上記エンジン2の最終エネルギー効率を最大化するのに寄与している。
【0197】
さらに、積層インジェクタ8が積層キャビティ6内にパイロット装填材料9を噴射するのに許容される時間は、オットー/ボー・ド・ロシャスによって設計/着想された4ストロークサイクルによる内燃機関2の圧縮段階に割り当てられた時間とほぼ同等であることが注目される。これにより、一方では上記インジェクタ8に求められる動力学を制限し、他方では上記インジェクタ8の供給圧力を制限することが可能になった。これは特に上記インジェクタ8のコストおよび複雑さを低減する一方、より優れた信頼性および優れた耐久性をそれに付与することに寄与する。
【0198】
パイロット装填材料9の積層キャビティ6への噴射の全期間中、上記装填材料9はごく少量の残留燃焼ガスとしか混合されなかったことが注目される。火花点火前の上記装填材料9内の上記燃焼ガスの含有量は、ほんの約1000分の1であり、これは極めて低い。
【0199】
この結果として、パイロット装填材料9は最大可燃性を維持し、これは、スパークプラグ12が上記装填材料9を点火したときにたった20バールの圧力と組み合わされて、上記点火を得るために上記スパークプラグ12の終端部に印加される電圧を制限することを可能にした。これにより、上記スパークプラグ12に電力を供給するための電力消費が少なくなり、スパークプラグ12の耐久性が増す。
【0200】
図3~
図8までの連続したステップで示される一連の動作中に、突出放出ドーム25にかかる熱負荷が、最新技術による任意の点火予室(そのような予室は積層バルブ13を欠く)の3回と比較して、高温に上昇したガスがガス放出孔24を1回だけ通過するという点で、必要最小限まで低減されることが注目される。
【0201】
この特殊性により、上記ドームが過度に高い温度に上昇して、がたつきおよび内燃機関2の損傷またはさらには破壊さえも招く主装填材料の時機を得ずに制御されない点火を引き起こす傾向があるホットスポットを形成するのを防ぐことが特に可能になった。さらに、突出放出ドーム25が低温のままであることにより、がたつきの危険なしに、内燃機関2のための高い圧縮比を提供することが可能になる。
【0202】
したがって、本発明によるバルブ点火予室1は、内燃機関2の負荷および回転速度に関係なく、およびこれらの燃焼安定性を犠牲にすることなく、冷却されたEGRの高い比率の下で動作する火花点火内燃機関2を製造することを可能にする。
【0203】
EGRの上記高い比率の結果、上記内燃機関2の吸気圧は、冷却されたEGRなしで動作する同じ設計の内燃機関2のそれよりも部分負荷において当然高い。これにより、吸気圧による負荷の調整によって引き起こされるポンピング損失が低減され、上記調整は、例えばバタフライによって動作される。
【0204】
さらに、本発明によるバルブ点火予室1を受け入れる内燃機関2は、上記内燃機関2によって生成されるキロワット時当たりの窒素酸化物の量と同様に、熱損失を低減する。これは、上記装填材料30に高い割合で冷却されたEGRを導入するという本発明によるバルブ点火予室1によって提供される可能性のおかげで主装填材料30の燃焼がより低い平均温度で起こるという事実からもたらされる。
【0205】
この状況において、本発明によるバルブ点火予室1によって可能になる、内燃機関2の圧縮比は、がたつくことなく、冷却されたEGRなしに動作する上記同一エンジンの圧縮比よりも高いと予想することができる。これは上記内燃機関2の効率にとって好ましい。
【0206】
さらに、本発明によるバルブ点火予室1によってもたらされるポンピング損失および熱損失の減少は、過給を加えることにより、例えばターボチャージャによりISOトルクおよびISOパワーを有する内燃機関2の排気量を著しく減少させる必要性を低減することが注目される。実際、最新技術に比べて高いエネルギー性能を維持しながら、過給を減少させるまたは存在させないことも可能である。
【0207】
本発明によるバルブ点火予室1によって与えられるこの一連の特性および利点の結果として、手ごろな費用、低い燃料消費量、低い二酸化炭素排出量、およびその汚染物質の後処理が単純な三元触媒によって保証される内燃機関2を得ることが可能になる。
【0208】
本発明によるバルブ点火予室1が内燃機関以外の他の分野に適用され得ることが注目される。上記予室1は、例えばガス釘打機、小火器、または可能な限り最良の効率でパイロット装填材料による主装填材料の燃焼を必要とする任意の装置に適用することができる。
【0209】
本発明によるバルブ点火予室1の可能性は、記載した用途に制限されず、前述の記載は例としてのみ与えられたものであり、本明細書に記載された実施形態の代わりに使用される他の任意の等価実施形態を網羅するであろう上記発明の範囲を制限しないことも理解されなければならない。