(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】スラリー燃料噴射弁用の燃料供給弁
(51)【国際特許分類】
F02M 67/14 20060101AFI20230123BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20230123BHJP
F02M 57/02 20060101ALI20230123BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F02M67/14
F02M61/10 M
F02M61/10 Q
F02M57/02 320Z
F02M51/06 K
(21)【出願番号】P 2019550643
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2018056278
(87)【国際公開番号】W WO2018167085
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-02
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502209039
【氏名又は名称】エー・ピー・モラー-マースク エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】インペラート,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴ,ティム
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176473(JP,A)
【文献】特開2003-172229(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03070322(EP,A1)
【文献】特開2002-227741(JP,A)
【文献】特表平05-500392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー燃料噴射弁用の燃料供給弁であって、
スラリー燃料リザーバと流体連通するための燃料入口と、
前記燃料噴射弁のノズルと流体連通するための燃料出口と、
前記燃料噴射弁のポンプ室と流体連通するためのポンプ室ポートと、
前記燃料入口が第1のスラリー燃料流路に沿って前記ポンプ室ポートと流体連通している第1の位置と、前記燃料出口が第2のスラリー燃料流路に沿って前記ポンプ室ポートと流体連通している第2の位置との間で可動の弁ゲートと
弁作動液室と、
を含み、
前記弁ゲートは、エンジンからの弁作動液によって動作可能であ
り、
弁作動液は、前記弁ゲートを前記第1の位置と前記第2の位置との間で駆動するように前記弁ゲートに力を働かせるために前記弁作動液室内に受取可能であり、
前記弁作動液室は、前記ポンプ室ポートから分離されている、燃料供給弁。
【請求項2】
弁作動液は、前記弁ゲートを前記第2の位置に向かって駆動するように前記弁ゲートに力を働かせるために前記弁作動液室内に受取可能である、請求項
1に記載の燃料供給弁。
【請求項3】
弁体および弁穴を含み、
前記弁体は、前記弁ゲートを含み、前記弁穴内で可動であり、
前記弁体は、前記弁穴内での前記弁体の移動を潤滑するために前記弁体と前記弁穴との間に前記弁作動液を受けるためにその中に少なくとも1つの溝を有する、請求項
1又は2に記載の燃料供給弁。
【請求項4】
前記弁作動液室への前記弁作動液の入力を制御する制御弁を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の燃料供給弁。
【請求項5】
前記制御弁は、電気的または電子的に制御可能である、請求項
4に記載の燃料供給弁。
【請求項6】
前記制御弁は、前記弁作動液室との流体連通のための第1のポートと、弁作動液の供給源との流体連通のための第2のポートと、ドレイン管との流体連通のための第3のポートとを有し、
前記制御弁は、前記第2のポートおよび前記第3のポートのどちらが前記第1のポートと流体連通するのかを選択するためのものである、請求項
4または
5に記載の燃料供給弁。
【請求項7】
前記弁ゲートは、前記第1の位置と前記第2の位置との間で直線的に可動である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の燃料供給弁。
【請求項8】
前記弁ゲートは、前記弁ゲートが前記第1の位置にある時に、前記スラリー燃料が前記燃料入口から前記ポンプ室ポートに流れることを許容し、
前記弁ゲートは、前記弁ゲートが前記第2の位置にある時に、前記スラリー燃料が前記燃料入口から前記ポンプ室ポートに流れることを妨げまたは防止する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の燃料供給弁。
【請求項9】
前記ポンプ室ポートは、前記弁ゲートが前記第1の位置にある時および前記弁ゲートが前記第2の位置にある時に、前記燃料出口と流体連通している、請求項1から
8のいずれか一項に記載の燃料供給弁。
【請求項10】
スラリー燃料のための燃料噴射弁であって、
スラリー燃料がそれを介してエンジンの燃焼室に向かって前記噴射弁を出ることのできるノズルと、
ハウジングおよび前記ハウジング内のポンプキャビティと、
前記ポンプキャビティをポンプ室および作動室に分割するポンプ要素と、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の燃料供給弁であって、前記ポンプ室を当該燃料供給弁の前記燃料入口と流体連通した状態に選択的に配置するための燃料供給弁と
を含む、燃料噴射弁。
【請求項11】
前記ポンプ要素は、流体作動可能である、請求項
10に記載の燃料噴射弁。
【請求項12】
前記ポンプ要素は、シャトルピストンを含む、請求項
10または
11に記載の燃料噴射弁。
【請求項13】
前記シャトルピストンは、
前記ポンプ室内に摺動可能に取り付けられ、前記スラリー燃料に力を働かせるように配置されたポンプピストンと、
前記ポンプピストンに結合され、前記ポンプピストンに力を伝達するように配置された作動ピストンと
を含む、請求項
12に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、好ましくは2ストローク船舶用機関の燃料供給弁および燃料噴射弁に関する。具体的には、本発明は、スラリー燃料またはエマルション燃料などの非ニュートン燃料用の燃料供給弁および燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル・エンジン内の現在の噴射技術は、液体炭化水素から導出されたオイル・ベースのニュートン燃料を使用する。これは、従来のディーゼル、船舶用ディーゼル・オイル、船舶用ガス・オイル、および、重油を含むことができるが、これに限定はされない。
【0003】
燃料が燃焼するためには、燃料は、燃料弁または燃料供給弁とも称する噴射器内の室に、高圧で注入される必要がある。従来の燃料システムは、高圧ポンプおよびコモンレール技術を使用して、1000バールまでの高圧燃料を燃料噴射器に送達する。したがって、ある体積の燃料が、従来の燃料系統内で高圧に維持される。従来のディーゼル・エンジンは、ニュートン性を有する相対的に低粘性の燃料の圧力噴霧を使用する。
【0004】
重油に関して、燃料粘性は、エンジンの高圧噴射ポンプに入る前に、加熱によって10~20mPa.sに制御される。高圧燃料は、燃料系統の供給ポンプによって相対的に高い一定の圧力で噴射ポンプに供給される。いくつかの従来の燃料系統では、高圧ポンプおよびコモンレール技術が、1000バールまでの高圧燃料を噴射器に送達するのに使用される。船舶用コモンレール4ストローク・エンジンなどの他のエンジンでは、圧力は、1500バールもの高さにされ得る。したがって、ある体積の燃料が、高圧で維持される。
【0005】
重油を、重油と比較して大幅に異なる特性を有するスラリー燃料またはエマルション燃料に置換することが既知である。スラリー燃料は、炭質水性スラリー燃料とすることができる。それは、水中の、石炭または固化ビチューメンなどの炭素粒子の懸濁である。エマルション燃料は、ビチューメンなどの炭化水素の液化粒子および水のエマルションとすることができる。炭質水性スラリー燃料は、より高い粘性を有し、非ニュートン流動学を有し、霧化がより困難である可能性がある。炭質水性スラリー燃料の固体炭素粒子は、スラリー燃料が流れていない時に堆積する傾向を有する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの炭質水性スラリー燃料の燃焼、輸送、貯蔵、および利用は、複数の技術的問題を引き起こす可能性がある。スラリーを形成する炭質固体粒子は、タンクおよび燃料ライン内で固まる可能性があり、エンジン動作中と停止時との両方で燃料噴射機器のより小さいオリフィスを閉鎖する場合がある。
【0007】
実験は、スラリー燃料が、圧力差にまたがる安定性および流動学に関して特性を変化させ得ることを示した。いくつかの事例で、スラリー燃料は、長い時間帯にわたって高圧にさらされた時に、否定的に反応する。たとえば、スラリー燃料は、圧力逃がし弁および絞り弁を介して経験され得るものなどの高いせん断条件またはキャビテーション条件に対して有害に振る舞う可能性がある。粒子が、溶液から沈澱する場合があり、かつ/または粒子が、燃料系統内の様々な位置で凝集する場合があることが観察された。これは、欧州特許第3070322号明細書に示されたものなどの従来の燃料噴射器が、スラリー燃料に関して有効に機能せず、あるいは全く機能しない可能性があることを意味する。
【0008】
スラリー燃料を使用する既知の燃料噴射システムが、米国特許第4,782,794号明細書および米国特許第5,056,469号明細書に開示されており、ここで、スラリー燃料は、燃料噴射システム内で高圧で噴射される。既知の燃料噴射システムに関する問題は、スラリー燃料内の固体燃料成分の凝集および沈澱が、燃料系統内のどこにおいても発生する可能性があることである。これは、水性スラリーの霧化の感受性を劣化させる。これは、増大した点火遅延および不完全燃焼を引き起こす可能性があり、エンジンの不点火、リング損傷、およびエンジン寿命の短縮の一因となる可能性がある。
【0009】
本発明の実施形態は、前述の問題に対処することを目指すものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、スラリー燃料噴射弁用の燃料供給弁は、スラリー燃料リザーバと流体連通するための燃料入口と、燃料噴射弁のノズルと流体連通するための燃料出口と、燃料噴射弁のポンプ室と流体連通するためのポンプ室ポートと、燃料入口が第1のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポートと流体連通している第1の位置と、燃料出口が第2のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポートと流体連通している第2の位置との間で可動の弁ゲートとを含み、弁ゲートは、エンジンからの弁作動液によって動作可能である。
【0011】
スラリー燃料が、弁ゲートを動作させるのに使用される必要がないので、スラリー燃料の圧力を、相対的に低くすることができる。これは、燃料供給弁の中および付近でのスラリー燃料からの固体粒子の凝集を回避するのを助ける。
【0012】
任意選択で、燃料供給弁は、弁作動液室を含み、弁作動液は、弁ゲートを第1の位置と第2の位置との間で駆動するように弁ゲートに力を働かせるために弁作動液室内に受取可能である。
【0013】
任意選択で、弁作動液は、弁ゲートを第2の位置に向かって駆動するように弁ゲートに力を働かせるために弁作動液室内に受取可能である。
【0014】
任意選択で、弁作動液室は、ポンプ室ポートから分離されている。
【0015】
任意選択で、燃料供給弁は、弁体および弁穴を含み、弁体は、弁ゲートを含み、弁穴内で可動であり、弁体は、弁穴内での弁体の移動を潤滑するために弁体と弁穴との間に弁作動液を受けるためにその中に少なくとも1つの溝を有する。
【0016】
任意選択で、燃料供給弁は、弁作動液室への弁作動液の入力を制御する制御弁を含む。
【0017】
任意選択で、制御弁は、電気的または電子的に制御可能である。
【0018】
任意選択で、制御弁は、弁作動液室との流体連通のための第1のポートと、弁作動液の供給源との流体連通のための第2のポートと、ドレイン管との流体連通のための第3のポートとを有し、制御弁は、第2のポートおよび第3のポートのどちらが第1のポートと流体連通するのかを選択するためのものである。
【0019】
任意選択で、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で直線的に可動である。
【0020】
任意選択で、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で摺動可能に可動である。
【0021】
任意選択で、弁ゲートは、弁ゲートが第1の位置にある時に、スラリー燃料が燃料入口からポンプ室ポートに流れることを許し、弁ゲートは、弁ゲートが第2の位置にある時に、スラリー燃料が燃料入口からポンプ室ポートに流れることを妨げまたは防止する。
【0022】
任意選択で、ポンプ室ポートは、弁ゲートが第1の位置にある時および弁ゲートが第2の位置にある時に、燃料出口と流体連通している。
【0023】
任意選択で、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で回転可能である。任意選択で、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で可動の少なくとも1つのポンプ室を含む。任意選択で、弁ゲートは、複数のポンプ室を含み、ポンプ室のそれぞれは、第1の位置および/または第2の位置に順次回転可能に配置される。任意選択で、各ポンプ室は、ポンプ室内に摺動可能に取り付けられたポンプピストンであって、ポンプピストンがポンプ室ポートに向かって移動する時にスラリー燃料をノズルに駆り立てるように配置されたポンプピストンを含む。任意選択で、各ポンプ室は、ポンプ室がフラッシュ液ポートに整列される第3の位置に回転可能に可動である。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、スラリー燃料噴射弁用の燃料供給弁は、スラリー燃料リザーバと流体連通するための燃料入口と、燃料噴射弁のノズルと流体連通するための燃料出口と、燃料噴射弁のポンプ室と流体連通するためのポンプ室ポートと、弁室内で、燃料入口が第1のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポートと流体連通している第1の位置と、燃料出口が第2のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポートと流体連通している第2の位置との間で可動の弁ゲートとを含み、弁ゲートは、弁ゲートが第2の位置と第1の位置との間および/または第1の位置と第2の位置との間で移動する時に、弁室へのスラリー燃料の流れに対抗する力を実質的に働かせないように配置される。
【0025】
これは、スラリー燃料が、燃料供給弁内で高圧にさらされないことを意味する。燃料系統内の他所では、スラリー燃料がより低圧で処理され、スラリー燃料は、予測できない形で振る舞う可能性がより低くなる。
【0026】
好ましくは、燃料供給源を横切るスラリー燃料の圧力は、6バールと15バールとの間である。これは、スラリー燃料が常に低圧にあることを意味する。
【0027】
好ましくは、弁ゲートを第1の位置と第2の位置との間および/または第2の位置と第1の位置との間で移動するための力は、0Nと100Nとの間、または100N未満である。スラリー燃料が、たとえば燃料供給弁内の堅いばねに反して働く必要を回避することによって、スラリー燃料の圧力をより低くすることができる。これは、燃料供給弁の中およびその付近での固体粒子の凝集を回避する。
【0028】
好ましくは、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で回転可能である。好ましくは、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で可動の少なくとも1つのポンプ室を含む。好ましくは、弁ゲートは、複数のポンプ室を含み、ポンプ室のそれぞれは、第1の位置および/または第2の位置に順次回転可能に配置される。好ましくは、各ポンプ室は、ポンプ室内に摺動可能に取り付けられたポンプピストンであって、ポンプピストンがポンプ室ポートに向かって移動する時にスラリー燃料をノズルに駆り立てるように配置されたポンプピストンを含む。好ましくは、各ポンプ室は、ポンプ室がフラッシュ液ポートに整列される第3の位置に回転可能に可動である。好ましくは、弁ゲートは、燃料噴射弁のエンジンからのサーボ液と共に動作可能である。サーボ液は、弁作動液の例である。
【0029】
これは、弁ゲートが、液体の流れの方向に関して横に移動することを意味する。弁ゲートがスラリーの流れに関して横に移動する時に、スラリー燃料に働く力は、最小化される。
【0030】
好ましくは、弁ゲートは、第1の位置と第2の位置との間で摺動可能に可動である。好ましくは、弁ゲートは、燃料入口からのスラリー燃料の流れと係合する入口表面と、ポンプ室内のスラリー燃料と係合する室表面とを含む。好ましくは、室表面の表面積は、入口表面の表面積より大きい。好ましくは、弁ゲートは、弁ゲートを第2の位置に付勢するばねに結合される。
【0031】
摺動する弁ゲートは、スラリー燃料自体の圧力を使用する。この形で、スラリー燃料圧力は、燃料供給弁を作動させるために高められる必要がない。
【0032】
好ましくは、燃料供給弁は、可動弁ゲートに隣接する密封液導管を含む。これは、スラリー燃料の堅い摩耗させる粒子が、燃料供給弁の可動部分を摩耗させ、損傷を与えるのを防ぐ。密封液は、燃料供給弁を密封し、潤滑する。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、スラリー燃料のための燃料噴射弁は、スラリー燃料がそれを介してエンジンの燃焼室に向かって噴射弁を出ることのできるノズルと、ハウジングおよびハウジング内のポンプキャビティと、ポンプキャビティをポンプ室および作動室に分割するポンプ要素と、ポンプ室を本発明の第1または第2の態様による燃料供給弁の燃料入口と流体連通した状態に選択的に配置するための燃料供給弁とを含む。
【0034】
任意選択で、ポンプ要素は、流体作動可能である。任意選択で、ポンプ要素は、シャトルピストンを含む。任意選択で、シャトルピストンは、ポンプ室内に摺動可能に取り付けられ、スラリー燃料に力を働かせるように配置されたポンプピストンと、ポンプピストンに結合され、ポンプピストンに力を伝達するように配置された作動ピストンとを含む。
【0035】
好ましくは、燃料噴射弁は、可動弁ゲートと流体連通している密封液貯蔵器を含み、密封液は、弁ハウジングに対して可動弁ゲートを密封するように配置される。好ましくは、密封液貯蔵器は、密封液をノズル内の密封液と混合するために、燃料噴射弁のノズルと流体連通している。好ましくは、密封液貯蔵器は、ノズル内のニードル弁座と流体連通している。
【0036】
本発明の実施形態が、これから、添付図面を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図2】一実施形態に係る燃料噴射弁を示す断面概略側面図である。
【
図3】一実施形態に係る燃料噴射弁のノズルを示す部分断面側面図である。
【
図4】一実施形態に係る燃料噴射弁を示す別の部分断面側面図である。
【
図5】一実施形態に係る燃料噴射弁および燃料供給弁の部分断面を含む斜視図である。
【
図6】
図6a~
図6cは、第1の位置と第2の位置との間で移動する燃料供給弁のそれぞれの順次ステップを示す、一実施形態に係る燃料噴射弁の燃料供給弁を示す断面側面図である。
【
図7】燃料噴射弁のノズルを示す部分断面側面図である。
【
図8】別の実施形態による燃料噴射弁を示す断面概略側面図である。
【
図9】
図8の燃料噴射弁の燃料供給弁を示す断面概略側面図である。
【
図10】エンジン・クランク角に対してスラリー燃料圧力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、下で議論される燃料噴射弁102および燃料供給弁122を含むエンジン100の斜視図を示す。
【0039】
いくつかの実施形態で、エンジン100は、大型低速ターボチャージ式2ストローク・ディーゼル・エンジンである。いくつかの実施形態で、エンジンは、2ストローク船舶用機関である。他の実施形態では、エンジン100は、別のタイプおよび/またはサイズのエンジンとすることができる。
図1の実施形態に示された例では、エンジン100は、直列の6気筒を有する。大型低速ターボチャージ式2ストローク・ディーゼル・エンジンは、通常、エンジンフレームによって担持される、直列の4個と14個との間の気筒を有する。いくつかの実施形態のエンジン100は、別の同一のエンジンと連結して使用され得る。エンジン100は、外航船内で主エンジンまたは主エンジンのうちの1つとして使用され得る。エンジン100は、船のプロペラシャフトに結合され得る。代替案では、エンジンは、発電所内の発電機を動作させる定置エンジンとすることができる。エンジンの総出力は、たとえば、1000kWから110000kWまでの範囲にわたることができる。
【0040】
いくつかの実施形態で、エンジン100は、1つまたは複数の燃料噴射弁102を有する。
図1に示されたエンジン100は、気筒の個数に対応する6つの燃料噴射弁を有する。もちろん、燃料噴射弁の個数は、エンジン100内に存在する気筒の個数に応じて変化する。代替実施形態では、1気筒あたり複数の燃料噴射弁102がある。以下では、明瞭さおよび簡潔さのために、1つの燃料噴射弁102だけが、図面を参照して議論される。
【0041】
既知の燃料噴射器とは対照的に、重油またはディーゼルなどの燃料は、スラリー燃料に置換される。スラリー燃料は、重油または他の油ベースの炭化水素燃料と比較して、異なる特性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、スラリー燃料は、炭質水性スラリー燃料とすることができる。いくつかの実施形態では、スラリー燃料は、micronized refined carbon(MRC)燃料である。代替案では、スラリー燃料は、石炭-水スラリー(CWM)と呼ばれる場合がある。それは、水中の石炭または固化ビチューメンなどの炭素粒子の懸濁である。他の実施形態では、燃料は、ビチューメンなどの炭化水素の液体粒子と水とのエマルションとすることができる。さらなる実施形態では、スラリー燃料は、溶液内の固体燃料粒子成分または異なる液体成分内の液体燃料小滴成分を含む。
【0043】
炭質水性スラリー燃料は、より高い粘性を有し、非ニュートン流動学を有することができ、霧化がより難しい。炭質水性スラリー燃料の固体炭素粒子は、スラリー燃料が流れていない時に堆積する傾向を有する可能性がある。以下では、簡潔さのために、用語「スラリー燃料」は、炭質水性スラリー燃料、他のスラリー燃料、およびエマルション燃料を組み込む。
【0044】
燃料噴射弁102を、これから
図2を参照してより詳細に議論する。
図2は、燃料噴射弁102の概略断面表現を示す。燃料噴射弁102は、細長く、縦軸A-Aに沿って延びる。燃料噴射弁102は、第1の端部104および第2の端部106を有する。燃料噴射弁102は、全体的に、第2の端部106から第1の端部104へと断面において先細りになっている。燃料噴射弁102は、全体的に形状において円筒形または円錐形である。燃料噴射弁102は、燃料噴射弁102をエンジンまたはエンジン100に近接する他の適切な構造に取り付けるためのハウジング110を含む。ハウジング110は、燃料噴射弁102の内部部品を囲み、保護する。
【0045】
ノズル108は、燃料噴射弁102の第1の端部104に取り付けられる。
【0046】
ハウジング110は、密封液入口ポート112および作動液入口ポート114を設けられる。作動液は、燃料噴射弁102を作動させ、燃料噴射弁102内のスラリー燃料をエンジンの燃焼室300(たとえば、
図4参照)に駆り立てるためのものである。作動液配置は、下でより詳細に議論する。
【0047】
密封液は、潤滑と、燃料噴射弁102の他の部分からスラリー燃料を分離するためのものである。密封液は、いくつかの実施形態では密封油である。用語密封液は、本明細書では、今後、燃料噴射弁102の諸部分を密封し、潤滑する液体を指すのに使用される。密封液は、下でより詳細に議論する。いくつかの実施形態では、作動液は、密封液にも使用され、これは、作動液に関して下でさらに詳細に議論する。
【0048】
ハウジング110は、炭質スラリー燃料の第1の貯蔵器118と流体連通するための燃料入口ポート116を設けられる。第1の貯蔵器118は、燃料噴射弁102から離れて配置され得る燃料タンクである。第1の貯蔵器118は、1つまたは複数の燃料ライン130によって燃料入口ポート116と流体連通している。
【0049】
任意選択で、燃料入口ポート116は、たとえば、燃料噴射弁102が第1の貯蔵器118内に貯えられた燃料の主供給源と第2の貯蔵器128内に貯えられた燃料の副供給源との間で切り替えることを可能にする三方弁126によって、燃料の1つまたは複数の供給源に接続され得る。第2の貯蔵器128は、1つまたは複数の燃料ライン130を介して燃料入口ポート116と流体連通している。第2の貯蔵器128は、燃料噴射弁102から離れて配置され得る燃料タンクでもある。
【0050】
燃料の主供給源および副供給源は、燃料の異なる供給源を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の貯蔵器118は、スラリー燃料を含み、第2の貯蔵器128は、硫黄含有量が0.1%未満の、たとえば船舶用ディーゼル油(MDO)である、低硫黄炭化水素燃料系統などの非スラリー燃料などの異なる燃料を含むことができる。重油(HFO)燃料系統などの代替の燃料を使用することができる。代替案では、第2の貯蔵器128は、第1の貯蔵器118と同一タイプの燃料を含むことができる。
【0051】
第1の貯蔵器118および第2の貯蔵器128からの燃料は、1つまたは複数の燃料ポンプ(図示せず)によって燃料入口ポート116に注入される。燃料ポンプは、第1の貯蔵器118および第2の貯蔵器128内の燃料を加圧し、燃料を第1の貯蔵器118および第2の貯蔵器128から燃料噴射弁102に駆動する。異なる燃料は、異なる圧力で加圧され得る。
【0052】
第2の貯蔵器128は、必要ではないが、エンジン100が異なる特性を有する異なるタイプの燃料を燃焼させることを要求される場合に、燃料系統に追加の弾力性を提供する。たとえば、エンジン100は、ある種の地理的区域内で排出物質を減らすためまたは燃料系統からスラリー燃料をフラッシュするために、スラリー燃料の燃焼から別のタイプの燃料に切り替えられ得る。
【0053】
燃料噴射弁102は、燃料噴射弁102をフラッシュするためのエンジン100のシャット・ダウンの前に、スラリー燃料とは異なる燃料を使用して運転され得る。これは、HDOまたはMDOなど、炭化水素固体粒子を含まない燃料が、燃料パイプおよび燃料系統の他の部分をフラッシュして炭化水素粒子なしにするのに使用され得ることを意味する。この形で、燃料噴射弁102の周期的保守が実行され得、粒子の堆積が減らされ、かつ/または除去され得る。しかし、大量のMRC燃料がいったん固体になれば、MRC燃料は、流れない可能性があり、フラッシュによって噴射器チャネルから除去するのが難しくなる可能性がある。
【0054】
燃料入口ポート116は、燃料供給弁122を介して弁ハウジング110内のポンプ室120に接続する。燃料供給弁122は、下でさらに詳細に議論する。ポンプ室120は、ノズル燃料導管124を介してノズル108と流体連通している。いくつかの実施形態では、ノズル燃料導管124は、燃料供給弁122を迂回し、その結果、燃料は、燃料供給弁122を通過せずにポンプ室120からノズル108に流れられるようになる。他の実施形態では、ノズル燃料導管は、燃料供給弁122からノズル108まで延びることができ、その結果、燃料は、燃料供給弁122を介してポンプ室120からノズル108へ流れられるようになる。ノズル燃料導管124は、軸A-Aに沿って縦に延びる。いくつかの実施形態では、ノズル燃料導管124は、複数のノズル燃料導管124(図示せず)を含むことができる。複数の燃料ノズル導管124は、ノズル108に送達されるスラリー燃料の流量を増やすのに使用される。いくつかの実施形態では、ポンプ室120とノズル108との間で流体連通している2つのノズル燃料導管124がある。これは、より低い燃料エネルギ密度を有する可能性があるスラリー燃料がノズル108でより大量に供給され得ることを意味する。
【0055】
ノズル108を、これから
図3に関してより詳細に議論する。
図3は、燃料噴射弁102の先端の断面側面図を示す。上で述べたように、ノズル108は、燃料噴射弁102のハウジング110の第1の端部104に取り付けられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ノズル108は、ハウジング110の第1の端部104に取り付けられる別々の要素である。他の実施形態では、ノズル108は、ハウジング110と一体である。ノズル108は、1つまたは複数の燃料出口穴140を有する。燃料出口穴は、軸A-Aに軸方向に整列され得る。その代わりにまたはそれに加えて、ノズル108は、ノズル108にわたって半径方向および/または軸方向に分布する複数のノズル穴(図示せず)を含む。
【0057】
燃料噴射弁102のハウジング110は、縦穴132を含む。縦穴132は、燃料噴射弁102の第1の端部104から第2の端部106に向かって延びる。縦穴132は、軸A-Aに軸方向に整列される。
【0058】
可動弁ニードル134が、縦穴132内に取り付けられる。いくつかの実施形態では、可動弁ニードル134は、縦穴132内に摺動可能に受けられる。可動弁ニードル134は、縦軸A-Aおよび可動弁ニードル134の縦軸に沿って閉位置と開位置との間で可動である。可動弁ニードル134の移動の方向は、
図3では両方向矢印によって示されている。
図3は、開位置の可動弁ニードル134を示す。閉位置の可動弁ニードル134のゴースト化された表現が、
図3では点線によって示されている。
【0059】
閉位置では、可動弁ニードル134の先端136は、ニードル弁座138に当接する。すなわち、閉位置では、弁ニードル134は、ニードル弁座138に乗る。可動弁ニードル134は、ばね142(
図2に図示)によって閉位置に向かって付勢される。ニードル燃料室144が、可動弁ニードル134の先端136を囲む。
【0060】
ニードル燃料室144は、ノズル燃料導管124と流体連通している。可動弁ニードル134が開位置にある時に、ニードル燃料室144は、縦ノズル穴146と流体連通している。縦ノズル穴146は、縦軸A-Aおよび縦穴132に軸方向に整列される。これは、可動弁ニードル134が開位置にある時に、スラリー燃料がニードル燃料室144から縦穴146に流れられることを意味する。
【0061】
対照的に、可動弁ニードル134が閉位置にある時には、ニードル先端136は、ニードル弁座138に密封され、ニードル燃料室144は、縦ノズル穴146から密封される。したがって、可動弁ニードル134が閉位置にある時には、スラリー燃料は、ノズル燃料導管124およびニードル燃料室144から縦ノズル穴146に流れることができない。
【0062】
図2に戻って、可動弁ニードル134は、ニードル・ピストン148に結合される。ばね142は、ばね室150内でニードル・ピストン148とばね肩部分152との間に取り付けられる。ばね142は、コイルばねであり、ニードル・ピストン148および可動弁ニードル134を第1の端部104および閉位置に向かって駆り立てる。他の実施形態では、ばね142は、他のタイプのばねまたは可動弁ニードル134を閉位置に向かって駆り立てる任意の適切な手段とすることができる。
【0063】
作動液配置を、これからさらに詳細に議論する。燃料噴射ピストン200が、第1の穴202内に設けられる。燃料噴射ピストン200は、実質的に円筒形であり、第1の穴202は、相反的な形状を有する。燃料噴射ピストン200および第1の穴202は、軸A-Aに軸方向に整列される。燃料噴射ピストン200は、第1の穴202内で可動である。燃料噴射ピストンは、第1の穴202内で軸方向に摺動可能である。燃料噴射ピストン200の下面204は、ポンプ室120内のスラリー燃料に隣接し、これに接触する。燃料噴射ピストン200は、第1の穴202内で移動し、ノズル燃料導管124を介してスラリー燃料をノズル108に向かって駆り立てるように配置される。燃料噴射ピストン200の機能性を、下でさらにより詳細に議論する。
【0064】
燃料噴射ピストン200は、第2の穴208内に配置された作動ピストン206に結合される。
図2に示された燃料噴射ピストン200および作動ピストン206は、同一のシャトルピストン205の一部である。シャトルピストン205は、第1の穴202および第2の穴208内で摺動可能に移動する単一の一体の要素である。
【0065】
いくつかの実施形態で、作動ピストン206は、第2の穴208内に設けられる。いくつかの実施形態で、第1の穴202および第2の穴208は、同一である。作動ピストン206および第2の穴208は、軸A-Aに軸方向に整列される。作動ピストン206は、第2の穴208内で可動である。作動ピストン206は、第2の穴208内で軸方向に摺動可能である。いくつかの実施形態で、作動ピストン206および燃料噴射ピストン200は、一体であるか、機械的に一緒に結合される。他の実施形態では、作動ピストン206は、ピストン200、206が別々の可動要素になるように、燃料噴射ピストン200から離され得る。
【0066】
作動ピストン206の上面210は、作動室212内の作動液に隣接し、これに接触する。作動液は、作動液貯蔵器216を有する高圧油圧系の一部である。作動室212は、作動液供給導管214を介して作動液入口ポート114と流体連通している。高圧作動液の供給は、作動制御弁218を用いて制御される。作動制御弁218は、作動室212への作動液の流れを選択的に制御する。作動液の貯蔵器216は、高い脈動圧の作動液を供給するための、コモン・レール・システムまたはカムシャフト・システムなどの既存の供給源とすることができる。この形で、作動制御弁218は、高圧作動液が作動室212に入り、燃料噴射ピストン200を第1の端部104に向かって駆り立てる時を制御する。
【0067】
作動ピストン206が、第2の端部106に向かって上向きに移動する時に、作動液は、作動室212から出て低圧ドレイン・ライン(図示せず)を介して作動液貯蔵器216に戻る。これは、作動液が、後続の噴射サイクルのためにリサイクルされ、再利用されることを意味する。
【0068】
他の実施形態では、作動系は、燃料噴射ピストン200に力を働かせる任意の適切な手段とすることができる。いくつかの実施形態では、作動液は、密封液でもある。これは、密封液貯蔵器220がなく、密封液貯蔵器が、作動液貯蔵器216でもあることを意味する。一実施形態(
図2には図示せず)では、密封制御弁222は、作動液貯蔵器216に結合される。これは、密封制御弁222が、作動液を密封液入口ポート112に送達することを意味する。代替案では、導管(図示せず)が、密封液入口ポート112に結合され、作動液貯蔵器216、作動液制御弁218、および/または作動液入口ポート114などの作動液系の構成要素と流体連通している。そのような配置では、密封液の機能性は、密封液が作動液であることを除いて、前に議論したものと同一である。
【0069】
燃料噴射ピストン200は、作動ピストン206に高圧または力を働かせる高圧作動液のおかげでポンプ室120内のスラリー燃料を加圧するように配置される。
【0070】
スラリー燃料は、燃料噴射弁102を摩耗させ、損傷を与える堅い摩耗させる粒子を含む。したがって、密封配置が、スラリー燃料を含む燃料系統を燃料噴射の他の部分から密封するために設けられる。密封液が、スラリー燃料を分離し、隔離すると同時に移動部品を潤滑するのに使用される。密封液配置は、
図2および
図3を参照してさらに詳細に議論する。
【0071】
石炭-水スラリー燃料は、通常は油を含まず、これによって、石炭-水スラリー燃料の密封特性および潤滑特性は、通常は標準未満であるか存在しない。任意選択で、いくつかの実施形態では、密封液が、潤滑のためおよび燃料噴射弁102内の固体粒子の移動を防ぐために、移動部品に供給される。密封液は、スラッジの蓄積および堆積物内の炭質粒子の蓄積を防ぐこともできる。
【0072】
密封液は、密封油貯蔵器220から密封制御弁222を介して密封液入口ポート112に供給される。密封液入口ポート112は、密封ピストン導管226を介して燃料噴射ピストン200上の溝224と流体連通している。溝224は、燃料噴射ピストン200の外側の周囲の円筒形の表面の回りに配置される。いくつかの実施形態では、溝224は、円周溝である。いくつかの実施形態では、それぞれが燃料噴射ピストン200を潤滑し、密封するために密封液を受ける、複数の円周溝224がある場合がある。密封液は、ハウジング110内の第1の穴202および/または第2の穴208と燃料噴射ピストンもしくはポンプピストン200および/または作動ピストン206との間の隙間を充填する。これは、ポンプ室120と作動液室212との間の隙間を密封する。
【0073】
燃料噴射弁102の第1の端部104に向かうポンプピストン200の上部の隙間よりわずかに大きいポンプピストン200の下部の上記の隙間を選択することによって、密封液のほとんどが、隙間を介してポンプ室120に向かって流れる。過剰な密封液は、ポンプ室120内のスラリー燃料と混合し、燃焼される。
【0074】
密封液入口ポート112は、ノズル密封液導管230を介して可動弁ニードル134の回りの少なくとも1つの円周溝228とも流体連通している。ノズル108の周囲の密封配置は、
図3に関してさらに詳細に議論する。
【0075】
図3に戻って、ノズル密封液導管230は、密封液ノズル出口232と流体連通している。密封液ノズル出口232は、可動弁ニードル134上の少なくとも1つの円周溝228と流体連通している。いくつかの実施形態では、可動弁ニードル134上に複数の円周溝228a、228b、228c、228dがある。
図3に示された実施形態では、4つの円周溝228a、228b、228c、228dがある。いくつかの実施形態では、任意の個数の円周密封溝があるものとすることができる。密封液は、密封液ノズル出口232から可動弁ニードル134の外面の隙間と縦穴132の表面との間を移動する。
【0076】
円周溝228a、228b、228c、228dは、縦穴132に直接に接触しまたは直接に面する可動弁ニードル134の面上で可動弁ニードル134内に曲げられて面する長方形または円形とすることができる。
【0077】
複数の円周溝228a、228b、228c、228dは、可動弁ニードル134の中間部分234に配置される。中間部分234は、縦穴132のうちでニードル燃料室144に最も近い部分に実質的に一致する。円周溝228a、228b、228c、228dは、中間部分234にわたって実質的に等距離の間隔を置かれる。
【0078】
密封液を有する円周溝228a、228b、228c、228dの提供の配置は、可動弁ニードル134が弁座138に関して中央の同軸位置に維持されるという効果を有し、したがって、可動弁ニードル134の面と縦穴132との間の隙間への密封液の提供は、この隙間が圧縮不能な密封液によって占められることを容易にし、したがって、可動弁ニードル134が縦軸A-Aに整列された位置から逸脱することを防ぐ。
【0079】
任意選択で、可動弁ニードル134と縦穴132との間の密封を高めるために、密封液の圧力は、ニードル燃料室144への密封液の流れを促進するのに十分なものとすることができる。この形で、密封液は、円周溝228a、228b、228c、228dからニードル弁座138へ流れ去る。これは、密封液にニードル燃料室144内のスラリー燃料と混合させる。いくつかの実施形態では、密封液は、スラリー燃料より簡単に燃焼する、ディーゼル油などの液体炭化水素油である。したがって、燃料室144に流れ去る密封液は、燃焼室300内のスラリー燃料の燃焼を促進することができる。
【0080】
図7に移り、さらなる実施形態をこれから議論する。
図7は、燃料噴射弁102のノズル108の部分断面を開示する。任意選択で、ニードル弁座138およびノズル密封液導管230と流体連通している追加の導管700がある。密封液をニードル弁座138内のスラリー燃料に追加することによって、密封液は、スラリー燃料が燃焼室300に噴射される前のまさに最後の瞬間にスラリー燃料に追加される。これは、密封液が、スラリー燃料に悪影響する最小限の時間を有することを意味する。たとえば、ディーゼル油は、micronized refined carbon(MRC)スラリー燃料に悪影響し、不安定にする可能性がある。
【0081】
それに加えてまたはその代わりに、追加の導管700は、ニードル燃料室144と流体連通している。追加の導管700とニードル燃料室144との間の接続は、図示されていない。この形で、追加の導管700は、ノズル密封液導管230をニードル燃料室144に接続する。これは、ノズル密封液導管230が、密封液をニードル弁座138および/またはニードル燃料室144に供給することを意味する。
図7には1つの追加の導管700が示されているが、他の実施形態では、複数の追加の導管700が、ノズル密封液導管230とニードル弁座138、ニードル燃料室144、および/またはノズル108の任意の他の部分との間の流体連通のために設けられる。
【0082】
上で述べたように、密封液は、通常、スラリー燃料より簡単に燃焼する、より軽い炭化水素である。これは、密封液が、スラリー燃料の可燃性を改善するためのパイロット燃料として使用され得ることを意味する。この形で、密封液の供給源220によって供給される密封液は、潤滑および点火性能を改善するのに使用され得る。その結果、潤滑不足に起因してニードル弁座138に対してすり減らされる可動弁ニードル134および先端136の摩耗が制限される。
【0083】
いくつかの実施形態では、ニードル燃料室144および/またはニードル弁座138への密封液の流速は、変更され、制御され得る。これは、パイロット燃料として使用される密封液の量が、スラリー燃料の特性に応じて調整され得ることを意味する。
【0084】
燃料噴射弁102内で使用される燃料供給弁122を、これから
図4に関してさらに詳細に議論する。
図4は、燃料噴射弁102の概略表現である。明瞭さのために、密封液ならびに対応する弁および導管は示されていない。可動弁ニードル134およびノズル108内の対応する構造的特徴も、明瞭さのために省略されている。
【0085】
燃料供給弁122は、燃料噴射弁102へのスラリー燃料の流れを制御する。いくつかの実施形態では、燃料供給弁122は、燃料噴射弁102の内部に取り付けられる。他の実施形態では、燃料供給弁122は、燃料リザーバ118とポンプ室120との間に取り付けられる。いくつかの実施形態では、燃料供給弁122は、一方向弁である。これは、スラリー燃料が、燃料噴射弁102に流れることだけができることを意味する。代替案では、燃料供給弁122は、二方向弁であるが、燃料供給弁122は、ポンプ室120内の圧力が燃料入口ポート116内のスラリー燃料の圧力未満である時に限って開くように選択的に制御される。
【0086】
燃料供給弁122は、燃料入口ポート116とポンプ室120との間で流体連通している。いくつかの実施形態では、燃料入口ポート116は、燃料供給弁122内に配置される。代替案では、燃料入口ポート116は、燃料供給弁122から離れている。
【0087】
スラリー燃料は、いくつかの実施形態で、1バールから20バールまでの圧力で加圧される。他の実施形態では、スラリー燃料は、6バールから15バールまでの圧力にある。燃料噴射弁102に供給される3つの別々の液体があることに留意されたい。密封液、作動液、およびスラリー燃料は、すべてが異なる圧力にある。異なる圧力は、密封液、作動液、およびスラリー燃料の異なる機能に対処するために提供され得る。
【0088】
燃料供給弁122は、燃料入口ポート116を介して燃料リザーバ118と流体連通している供給弁燃料入口302を含む。供給弁燃料入口302は、スラリー燃料に燃料供給弁122に流れさせるように配置される。燃料供給弁122は、燃料噴射弁102のノズル108と流体連通している供給弁燃料出口304をさらに含む。しかし、上で注記したように、いくつかの実施形態では、ノズル燃料導管は、燃料供給弁122を迂回し、その結果、燃料は、燃料供給弁122を通過せずにポンプ室120からノズル108に流れることができるようになり、したがって、供給弁燃料出口304は省略され得る。燃料供給弁122は、燃料噴射弁102のポンプ室120と流体連通しているポンプ室ポート306をも含む。
【0089】
燃料供給弁122は、燃料供給弁ハウジング310内の弁室内に取り付けられた供給弁可動要素308を含む。供給弁可動要素308は、いくつかの実施形態では可動弁ゲート308である。可動弁ゲート308は、燃料供給弁122内に1つまたは複数のスラリー燃料流路を画定するように選択的に配置され得る。いくつかの実施形態では、弁ゲート308は、可動スラリー燃料流路を有する導管を含む。他の実施形態では、弁ゲート308は、第1のスラリー燃料経路と第2のスラリー燃料経路との間でスラリー燃料の流れをそらす固体要素である。
【0090】
弁ゲート308は、弁室内で、供給弁燃料入口302が第1のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポート306と流体連通している第1の位置と、供給弁燃料出口304が第2のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポート306と流体連通している第2の位置との間で可動である。
【0091】
この形で、弁ゲート308は、供給弁燃料入口302からポンプ室120へのスラリー燃料の流れを選択的に制御する。さらに、燃料供給弁122は、ポンプ室120が燃料入口ポート116または燃料噴射弁102のノズル108のどちらに接続されるのかを選択的に制御する。第1の位置では、燃料供給弁122は、燃料入口ポート116に関して開かれ、スラリー燃料がポンプ室120に流れることを可能にする。第2の位置では、燃料供給弁122は、燃料入口ポート116に関して閉じられ、スラリー燃料は、ポンプ室120に流れることを許されない。
【0092】
燃料供給弁122の機能性をこれから議論する。第1の充填フェーズでは、弁ゲート308は、第1の位置にあり、スラリー燃料は、燃料供給弁122を介してポンプ室120に流れる。スラリー燃料の圧力は、燃料噴射ピストン200を第2の端部106に向かって上向きに押すのに十分である。燃料噴射ピストン200および作動ピストン206は、第2の端部106に向かって上向きに押され、作動室212内の作動液の一部は、作動液貯蔵器216に流れて戻る。
【0093】
第2の弁遮断フェーズでは、ポンプ室120は、スラリー燃料で満杯になる。この段階で、燃料供給弁122の弁ゲート308は、第1の位置から第2の位置に移動する。燃料入口ポート116は、もはやポンプ室120と流体連通していない。供給弁可動要素308が第1の位置と第2の位置との間で移動する時に、可動要素は、ポンプ室120へのスラリー燃料の流れに対抗する力を実質的に働かせない。これは、スラリー燃料が低圧に維持され得ることと、燃料供給弁122の開閉の活動がスラリー燃料への圧力を増加させないこととを意味する。これは、燃料供給弁122が、スラリー燃料に対して最小限の追加の圧力を働かせ、非ニュートン・スラリー燃料の沈澱または固体燃料粒子の凝集の機会を制限することを意味する。これは、燃料供給弁122またはポンプ室120内のスラリー燃料の詰まりに起因して燃料供給弁122が不点火を引き起こすのを回避する。
【0094】
いくつかの実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、170N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、150N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する可動要素308の対抗する力は、100N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、50N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、25N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、10N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する可動要素308の対抗する力は、5N未満である。さらなる実施形態では、スラリー燃料の流れに対する弁ゲート308の対抗する力は、約0Nまたは0Nと等しい。
【0095】
第3の噴射フェーズでは、作動液制御弁218が開き、高圧の作動液が、作動室212に素早く流れる。作動液が、ポンプ室120内のスラリー燃料よりはるかに高い圧力にあるので、力が、燃料噴射ピストン200を第1の端部104に向かって素早く駆り立てる。これは、スラリー燃料を加圧させ、ニードル燃料室144に押し込ませる。いくつかの実施形態では、これは、スラリー燃料の沈澱または凝集の機会を制限するために、スラリー燃料が高圧にさらされる唯一の時である。スラリー燃料の圧力は、ニードル・ピストン148を後退させ、可動ニードル弁134を開位置に移動させる。その後、スラリー燃料は、燃焼室300に押し込まれる。
【0096】
第4の弁開きフェーズでは、ばね142が、ニードル・ピストン148および可動弁ニードル134を閉位置に駆り立てる。燃料供給弁122の弁ゲート308は、第1の位置に移動する。その後、サイクルが、再び第1の充填フェーズから始まる。
【0097】
いくつかの実施形態では、燃料供給弁は、モーターおよび電子制御系を用いて作動させられる。他の実施形態では、燃料供給弁は、エンジン・タイミングに結合され、同期化された歯車装置を用いて作動させられる。他の実施形態では、燃料供給弁は、弁ゲート308を作動させ移動する、任意の適切な手段を用いて作動させられる。
【0098】
ここで
図5に移り、燃料噴射弁500の燃料供給弁502の別の実施形態をこれから議論する。
図5は、燃料噴射弁500の部分断面を含む斜視図である。
【0099】
燃料噴射弁500は、前の実施形態を参照して議論した燃料噴射弁102に類似する。燃料噴射弁500は、燃料供給弁502の異なる構造を含み、これをこれからさらに詳細に議論する。
【0100】
燃料噴射弁500は、可動カートリッジ504を含む。可動カートリッジ504は、弁ゲートを含むと考えることができる。いくつかの実施形態で、可動カートリッジ504は、燃料噴射弁500の縦軸B-Bの回りで回転可能である。回転可能カートリッジ504は、回転可能カートリッジ504の回りで円周状に分散された複数の室506を含む。
図5は、軸B-Bの回りで間隔を置かれた3つの室506を示す。しかし、他の実施形態では、カートリッジ504内に任意の個数の室を設けることができる。たとえば、2つの室506または4つの室506を設けることができる。
【0101】
回転可能カートリッジ504は、相反するカートリッジ室520内の軸受表面(図示せず)上に回転可能に取り付けられる。カートリッジ室520は、その中での回転可能カートリッジ504の自由回転を可能にする。カートリッジ室520は、ハウジング110の側壁522によって画定される。カートリッジ室520の上面524は、噴射器燃料弁キャップ516によって提供される。カートリッジ室504の下面526は、中間壁528によって画定される。回転可能カートリッジ504の軸受表面は、それぞれ下面526および上面524上に配置される。
【0102】
各室506は、軸B-Bに実質的に平行な縦穴508を含む。縦穴508は、いくつかの実施形態で、開かれた穴であり、スラリー燃料が下側から穴に入ることができ、作動液が上から穴に入ることができるようになっている。燃料噴射ピストン510および作動ピストン512が、各縦穴508内に設けられる。燃料噴射ピストン510および作動ピストン512は、同一のシャトルピストン518の一部であり、縦穴内に摺動可能に配置される。室506、燃料噴射ピストン510、および作動ピストン512のそれぞれの配置は、前の実施形態に関して議論した燃料噴射弁102と同一である。この形で、室506は、同様に、ポンプ室120および作動室212であると考えることができる。
【0103】
前の実施形態と同様に、任意選択で、密封液が、ポンプ室120および作動室212を潤滑し、密封するために提供される。さらに、1つまたは複数の回転カートリッジ密封液導管が、回転可能カートリッジ504を潤滑し、密封するために提供され得る。1つまたは複数の回転カートリッジ密封液導管は、下面526および上面524上の軸受表面に設けられる。これは、密封液が、回転カートリッジ504上の各ポンプ室120の周辺のリップの周囲に供給され、スラリー燃料が回転カートリッジの回転機構を汚染するのを防ぐことを意味する。
【0104】
作動ピストン512は、作動液ポート514を介して高圧作動貯蔵器216と流体連通している。作動液ポート514は、噴射器燃料弁キャップ516内に配置される。噴射器燃料弁キャップ516は、ハウジング110上に取り付け可能である。作動液の機能性および配置は、前に議論した実施形態と同一である。
【0105】
回転可能カートリッジ504は、作動液ポート514、供給弁燃料入口、および供給弁燃料出口に関して異なる相対位置で各室506を回転し、順次位置決めする。供給弁燃料入口、供給弁燃料出口、および燃料弁噴射器500を介するそのそれぞれの流体接続は、前に説明した燃料弁噴射器102と同一である。
【0106】
第1の回転位置で、回転可能カートリッジ504は、ポンプ室120が供給弁燃料入口と流体連通するように位置決めされる。燃料入口ポート116は、燃料リザーバ118から燃料を受け取り、燃料入口ポート116は、供給弁燃料入口と流体連通している。
【0107】
スラリー燃料は、スラリー燃料が回転カートリッジ504の第1の室506のポンプ室120に流れる時に低圧に維持される。スラリー燃料は、スラリー燃料が燃料供給弁502に入る時に、6バールと15バールとの間の圧力に保たれる。
【0108】
第2の回転位置で、回転可能カートリッジ504は、回転カートリッジ504の第1の室506のポンプ室120が供給弁燃料出口に整列されるように回転する。それと同時に、作動室212は、作動液ポート514に整列される。第2の位置で、燃料噴射弁は、ポンプ室120内のスラリー燃料を発火させてノズル108に駆動する準備ができている。ノズル108の配置は、前の実施形態を参照して説明したものと同一である。
【0109】
いくつかの実施形態では、回転カートリッジ504の第1の室506は、その後、回転されて第1の回転位置に戻り、その結果、ポンプ室120は、再び充填される準備ができるようになる。
【0110】
任意選択で、回転カートリッジは、回転カートリッジ504の第1の室506を第3の回転位置に移動する。第3の回転位置では、回転可能カートリッジは、フラッシュポート(図示せず)に整列される。フラッシュポートは、第2の位置と第1の位置との間でポンプ室120および作動室212をフラッシュするフラッシュ媒体系(図示せず)に接続される。フラッシュ媒体系は、フラッシュ液を回転可能カートリッジ504に送達する。言い換えると、フラッシュ・ステージは、充填ステージと噴射ステージとの間に発生する。
【0111】
これは、燃料が室の内部に蓄積し、閉塞を引き起こす可能性を軽減する。フラッシュ系は、シャトルピストン518の最上部と最下部との両方にフラッシュ媒体を送達する。
【0112】
いくつかの実施形態では、フラッシュ液は、まずポンプ室120内のシャトルピストン518に供給され、シャトルピストン518を上死点位置に押しやる。室506上またはその最上部の残りの作動液は、収集され、作動液貯蔵器216に送られる。作動液の収集は、前の実施形態に関して議論したプロセスに類似する。その後、フラッシュ媒体は、上の室に注入され、ピストンを下死点に押しやり、フラッシュ媒体を下側の室から排出する。
【0113】
図5に示された回転カートリッジ504は、3つのそれぞれの回転ピストンを有する3つの室506を含む。しかし、より多数の回転ピストンおよび室506があってもよい。これは、たとえば、ポンプ室120への低圧スラリーの充填が噴射プロセスの最低速のステップである場合に、有利である可能性がある。
【0114】
いくつかの実施形態で、回転するカートリッジ504は、エンジン100からのサーボ油系(図示せず)からの油圧油を使用して回転される。この形で、回転可能カートリッジ504のタイミングは、エンジン100の速度によって駆動される。平歯車(図示せず)に接続された油圧ピストン(図示せず)が、回転カートリッジ504が軸B-Bの回りで回転することを可能にする。歯車装置(図示せず)は、室506が、第1、第2、および第3の回転位置でそのそれぞれの充填ポートおよび燃料出口ポートと整列することを保証する。さらに、歯車装置は、よい密封が維持されることを保証することができる。
【0115】
回転可能カートリッジ504の回転は、スラリー燃料が各室506内で選択的に制御されることを保証する。回転可能カートリッジ504の回転は、ポンプ室へのスラリー燃料の流れの方向に対して実質的に横向きである。回転可能カートリッジ504の回転は、スラリー燃料の流れを横切って回転する。これは、スラリー燃料に対して回転可能カートリッジ504を回転する力が最小限であることを意味する。
【0116】
代替実施形態では、回転可能カートリッジ504は、他の手段、たとえば別個のモーターおよび電子制御系を用いて回転される。回転可能カートリッジは、異なる位置の間でカートリッジ504を回転する、任意の他の適切な手段を用いて動作させられ得る。
【0117】
別の実施形態を、これから
図6a~
図6cを参照して議論する。
図6a~
図6cは、燃料噴射弁102の燃料供給弁122の部分断面側面図である。
図6a~
図6cは、第1の位置と第2の位置との間で移動する燃料供給弁122の順次ステップである。
【0118】
燃料噴射弁102は、燃料供給弁122およびポンプ室120の形態を除いて、
図2に示されたものと同一である。
【0119】
燃料供給弁122は、燃料噴射弁102のハウジング110と一体である。燃料供給弁122およびポンプ室120の構造は、変更されており、これを、これからさらに詳細に議論する。
【0120】
図6aでは、燃料供給弁122は、燃料入口ポート116および供給弁燃料入口302がポンプ室120と流体連通しておらず、供給弁燃料出口304がノズル108と流体連通している第2の位置にある。可動要素308は、燃料供給弁座600に着座し、これが、ポンプ室120から燃料入口ポート116(および、いくつかの実施形態では供給弁燃料出口304)を遮断する。すなわち、いくつかの実施形態では、供給弁燃料出口304は、燃料供給弁122が第2の位置にある時にポンプ室120と流体連通しており、いくつかの実施形態では、供給弁燃料出口304は、燃料供給弁122が第2の位置にある時にポンプ室120と流体連通していない。可動要素308は、スラリー燃料が弁ゲート308を押すことができるようにするために、最小限の静摩擦および動摩擦を生成するように配置される。
【0121】
弁ゲート308は、入口表面602および室表面604を含む。入口表面602の表面積は、室表面604の表面積より小さい。したがって、燃料供給弁122は、面積差を利用した弁である。
【0122】
スラリー燃料は、燃料入口ポート116で燃料供給弁122に入る。ポンプ室120は、
図6aでは空である。これは、入口表面602に働く燃料の圧力P
fuelが、ポンプ室120内の室表面604に働く圧力P
chamberより高いことを意味する。したがって、スラリー燃料の圧力は、
図6aに示された矢印の方向に力を働かせる。
【0123】
図6bでは、入口表面602に対するスラリー燃料の圧力P
fの結果の力は、弁ゲート308を弁座600から離れて移動させる。これは、燃料供給弁122が第2の位置から第1の位置に移動することを意味する。今は、燃料入口ポート116および供給弁燃料出口304は、ポンプ室ポート306と流体連通している。スラリー燃料は、ポンプ室120に流れる。
【0124】
スラリー燃料は、ポンプ室120に、およびスプール弁導管606にも流れる。スプール弁導管606は、可動要素308の一部および室表面604を収容し、ポンプ室120と流体連通している。したがって、ポンプ室120がスラリー燃料で充たされる時に、スプール弁導管606も、スラリー燃料で充たされる。
【0125】
可動弁要素308の 上の 結果の力Rは、入口表面602に働く力
Finlet=Pfuel×Ainlet
と、室表面604に働く力
Fchamber=Pchamber×Achamber
とによって決定される。これは、Finlet>Fchamberである時に、結果の力が、スラリー燃料がポンプ室120に入ることを燃料供給弁が許す第1の位置に弁ゲート308を駆り立てることを意味する。
【0126】
ポンプ室120が一杯になる時に、スラリー燃料は、供給弁燃料入口302とポンプ室120とスプール弁導管606との両方に存在する。圧力が弁ゲート308の両側で等しくなる時には、
Finlet<Fchamber
である。
【0127】
したがって、弁ゲート308への結果の力は、弁ゲート308に、
図6cに示されているように第1の位置から第2の位置へ移動させる。移動する弁ゲート308の慣性は、弁ゲート308が燃料供給弁座600に着座し、燃料スラリーの流れを遮断することを保証する。いくつかの実施形態では、任意選択で、柔らかいばね(図示せず)が、可動要素を第2の位置に向かって駆り立てるために設けられ得る。柔らかいばねは、ゲートを
図6aおよび
図6cに示された元の位置に戻すためにゲート308に弱い力を働かせるように構成される。
【0128】
ポンプ室120は、今や、スラリー燃料で満杯であり、供給弁燃料出口304およびノズル108は、ポンプ室120と流体連通している。これは、ポンプピストン200が、燃焼の準備ができているノズル108にスラリー燃料を噴射できることを意味する。
【0129】
これは、スラリー燃料の圧力が、燃料供給弁122を作動させるのに使用され得ることを意味する。これは、スラリー燃料が、ノズル108から駆動される時にのみ燃料噴射弁102内の高圧にさらされることを意味する。これは、非ニュートン・スラリー燃料が燃料系統内で有害に振る舞う機会を制限する。
【0130】
燃料噴射弁102の他のステップおよび燃料噴射弁102の構造的特徴は、前の実施形態に関して前に議論したものと同一である。
【0131】
図8は、別の実施形態による燃料噴射弁の断面概略側面図を示す。
図8の燃料噴射弁800は、スラリー燃料噴射弁であり、それ自体が本発明の実施形態である燃料供給弁822が組み込まれている。燃料供給弁822の断面概略側面図が、
図9に示されている。燃料噴射弁800の概要をまず提供し、その後、その構成部品のより 詳細な説明を提供する。
【0132】
燃料噴射弁800は、
図2の燃料噴射弁102に類似し、ここでの議論は、簡潔さのために、主にこの2つの間の相違に焦点を合わせる。
【0133】
燃料噴射弁800は、それを介してスラリー燃料が使用中のエンジンの燃焼室に向かって噴射弁800を出るノズル808を含む。エンジンは、船舶用機関など、上で議論したタイプのエンジンのいずれかとすることができる。
【0134】
燃料噴射弁800は、ハウジング810、ハウジング810内のポンプキャビティ860、およびポンプキャビティ860をポンプ室820および作動室812に分割する流体作動可能ポンプ要素805をも含む。ポンプ室820は、燃料供給弁822からスラリー燃料を受け取るためのものである。作動室812は、スラリー燃料をポンプ室820から使用中のノズル808に注入するためにポンプ要素805に作用するために作動液を受けるためのものである。これらのプロセスを、下でより詳細に説明する。
【0135】
流体作動可能ポンプ要素805は、シャトルピストン805であり、このシャトルピストン805は、ポンプキャビティ860内で摺動可能に可動である。シャトル密封油が、ポンプキャビティ860内に開いたシャトル密封油入口809からシャトルピストン805とポンプキャビティ860の表面との間の隙間に送達される。シャトル密封油は、シャトルピストン805を潤滑し、作動室812をポンプ室820から分離するのを助ける。
【0136】
シャトルピストン805は、ポンプ室820内に摺動可能に取り付けられ、使用中のスラリー燃料に力を働かせるように配置されたポンプピストン801と、ポンプピストン801に結合され、使用中のポンプピストン801に力を伝達するように配置された作動ピストン807とを含む。この実施形態では、ポンプピストン801および実際にはシャトルピストン805全体がそれに沿って移動する軸は、噴射器800の縦軸からオフセットされている。いくつかの実施形態で、流体作動可能ポンプ要素805は、シャトルピストン以外とすることができ、ポンプキャビティ860内で摺動可能に可動ではない場合がある。たとえば、いくつかの実施形態で、ポンプ要素805は、ダイヤフラム・ポンプのダイヤフラムとすることができる。いくつかの実施形態で、ポンプ要素805は、機械式ドライバによって作動可能など、流体作動可能以外とすることができる。
【0137】
燃料噴射弁800は、ポンプ室820を燃料供給弁822の燃料入口802と流体連通した状態に選択的に配置するために燃料供給弁822をさらに含む。燃料供給弁822を、これから
図8の参照を継続して、より詳細に説明する。
【0138】
燃料供給弁822は、燃料入口802を含み、燃料入口802は、スラリー燃料リザーバとの流体連通用である。スラリー燃料リザーバは、
図8には示されていないが、たとえば、スラリー燃料リザーバ(1つまたは複数)の上で説明した配置のいずれをも使用することができる。
【0139】
燃料供給弁822は、燃料噴射弁800のノズル808との流体連通のための燃料出口804をも含む。この実施形態では、燃料出口804は、1つまたは複数のノズル燃料導管824を介してニードル燃料室844と流体連通している。MRCが相対的に低い発熱特性を有するので、ある量の出力を生成するのに、相対的により多くの燃料が必要である。複数のノズル燃料導管824の提供は、より多くのMRCがノズル808に達することを可能にし、したがって、噴射サイクルあたりのエネルギを増加させる。1つのエンジン内での複数の燃料噴射弁800の提供も、より多くのMRCが燃料噴射弁800のそれぞれのノズル808に達することを可能にし、したがってエンジンのサイクルあたりのエネルギを増加させることができる。
【0140】
ニードル燃料室844およびノズル燃料導管(1つまたは複数)824の配置は、
図2の燃料噴射弁102の配置に実質的に対応し、したがって、簡潔さのために説明はしない。
【0141】
燃料供給弁822は、ポンプ室820との流体連通のためのポンプ室ポート806をも含む。この実施形態では、ポンプ室ポート806は、ポンプ室820と永久に流体連通しているが、他の実施形態では、ポンプ室ポート806とポンプ室820との間の流体の流れを制御するために、弁を設けることができる。
【0142】
燃料噴射弁800は、それを介して作動液が作動室812内に受けられ、これによってポンプ室820から使用中のノズル808にスラリー燃料を注入するためにポンプ要素805に作用する、作動液入口850を有する。燃料噴射弁800は、スラリー燃料によるポンプ室820の充填およびポンプ要素805の移動の際に作動室812の体積が減少する時に、作動液がそれを介して燃料噴射弁800から放出され得る作動液出口852をも有する。燃料噴射弁800は、縦穴832と縦穴832内に着座する弁ニードル834との間の隙間に作動室812を流体的に接続する作動液導管854をさらに有する。ニードル弁834は、ニードル燃料室144およびノズル808から使用中のエンジンの燃焼室に向かうスラリー燃料の流れを制御するために、縦穴832に対して相対的に可動である。
【0143】
燃料供給弁822は、燃料入口802が第1のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポート806と流体連通している第1の位置と、燃料出口804が第2のスラリー燃料流路に沿ってポンプ室ポート806と流体連通している第2の位置との間で可動の弁ゲート875を含む。この実施形態では、燃料供給弁822は、燃料入口802に弁座803を含み、弁ゲート875は、弁座803と協力する弁頭875である。しかし、他の実施形態では、燃料供給弁822、および具体的には弁ゲート875は、本明細書で説明されるものとは異なる形態をとることができる。
【0144】
弁ゲート875は、
図8に示された第1の位置と第2の位置との間での弁座803に対する相対的な移動のために取り付けられる。この実施形態では、移動は直線移動である。この実施形態では、移動は滑動移動である。より具体的には、この実施形態の燃料供給弁822は、弁ゲート875を含み、燃料供給弁822の弁穴880内で摺動可能に可動な弁体870を有する。さらに、この実施形態では、弁体870は、弁穴880内で自由に移動できる。したがって、いくつかの実施形態で、燃料供給弁822は、流体作動可能なポペット弁と考えることができる。しかし、他の実施形態では、燃料供給弁822は、ポペット弁以外とすることができ、かつ/または弁ゲートの移動は、回転移動もしくは回転移動と並進移動との組み合わせ、たとえばピボット回転移動もしくはカム移動など、直線移動以外もしくは滑動移動以外とすることができる。
【0145】
第1の位置で、弁ゲート875は、スラリー燃料が燃料入口802からポンプ室ポート806へおよびポンプ室820に向かって流れることを可能にするために、弁座803から間隔を置かれる。その一方で、第2の位置では、弁ゲート875は、スラリー燃料が燃料入口802からポンプ室ポート806へおよびポンプ室820に向かって流れるのを妨げまたは防止するために、弁座803に当接する。すなわち、燃料入口802は、弁ゲート875が第2の位置にある時に、ポンプ室ポート806およびポンプ室820と流体連通していないか、実質的に流体連通していない。したがって、燃料供給弁822は、燃料供給弁822および燃料噴射弁800全体へのスラリー燃料の流れの制御用である。
【0146】
この実施形態では、ポンプ室ポート806は、弁ゲート875が第1の位置にある時および弁ゲート875が第2の位置にある時に、燃料出口804と流体連通している。しかし、他の実施形態では、弁が、燃料出口804を選択的に閉鎖するように構成され得る。たとえば、弁ゲート875は、第1の位置にある時に燃料出口804を封鎖することができる。
【0147】
燃料供給弁822の弁ゲート875は、流体作動可能である。より具体的には、弁ゲート875は、エンジンからの弁作動液によって動作可能である。エンジンは、燃料噴射弁800がスラリー燃料をその燃焼室に噴射するために設置されるエンジンとすることができる。具体的には、燃料供給弁822は、弁作動液室872を含み、弁作動液室872には、弁作動液が、第1の位置と第2の位置との間で弁ゲート875を駆動するために弁ゲート875に力を働かせるために受け取られ得る。より具体的には、弁作動室872は、弁座803から弁ゲート875の反対側にある。したがって、弁作動室872に弁作動液を供給することは、第2の位置に向かう弁ゲート875の移動を引き起こす。弁作動液は、サーボ油などの油とすることができる。
【0148】
この実施形態では、弁作動液室872は、ポンプ室ポート806から分離される。より具体的には、弁ゲート875自体が、弁作動液室872とポンプ室ポート806との間の流路を閉鎖する。これは、スラリー燃料が弁作動液によって汚染されるのを回避するのを助け、スラリー燃料が弁作動液を汚染し、燃料供給弁822を劣化させるのを回避するのを助ける。
【0149】
この実施形態では、弁体870は、弁穴880内の弁体870の移動を潤滑するため、かつ、弁作動液からスラリー燃料を密封するのをさらに助けるために、弁体870と弁穴880との間に弁作動液を受けるために、その中に1つまたは複数の溝871を有する。溝(1つまたは複数)871は、弁作動室872と流体連通しており、その結果、弁作動液は、弁作動室872から溝(1つまたは複数)871に流れられるようになる。1つまたは複数の溝871は、弁体870の円周に沿って完全に延びる円周溝とすることができる。
【0150】
燃料供給弁822は、弁作動室872への弁作動液の入力を制御するための制御弁892を含む。より具体的には、燃料供給弁822は、弁作動液がそれを介して弁作動室872に出入りして流動可能な弁作動液導管890を含み、制御弁892は、弁作動液導管890を介する弁作動液の流れを制御するためのものである。他の実施形態では、弁作動液は、弁作動室872から弁作動液導管890以外の経路によって流動可能とすることができ、この経路は、制御弁892または別の弁によって制御され得る。
【0151】
制御弁892は、弁作動液室872との流体連通のための第1のポート、弁作動液の供給源894との流体連通のための第2のポート、およびドレイン管896との流体連通のための第3のポートを有し、制御弁892は、第2のポートおよび第3のポートのどちらが第1のポートと流体連通するのかを選択するためのものである。弁作動液の供給源894は、その中に燃料噴射弁800が設置されるエンジンなどのエンジンのサーボ油系とすることができる。他の実施形態では、制御弁892は、異なる個数のポートを有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、組みわされた供給源894およびドレイン管896を設けることができ、その結果、第3のポートは省略され得るようになる。
【0152】
この実施形態では、制御弁892は、エンジン制御ユニット(ECU)によるなど、電気的または電子的に制御可能である。しかし、他の実施形態では、他の形態の制御が使用され得る。
【0153】
図8の燃料供給弁822の動作を、これから
図10を参照して説明するが、
図10は、1つのエンジンサイクル中のエンジン(その中に燃料噴射弁800が設置され 使用中)のクランク角に対するポンプ室820内のスラリー燃料の圧力のグラフを示す。
図10は、エンジンサイクル中の異なる時の弁ゲート875の位置をも示す。この実施形態では、制御弁892は、弁ゲート875がエンジンサイクル内の種々の時に適切に位置決めされることを保証するために、エンジンのクランク角に依存して制御される。
【0154】
弁ゲート875が
図8に示されているように第1の位置にあり、エンジンが
図10に示されているようにクランク角A
1を有する状態で、スラリー燃料は、燃料供給弁822を介して燃料入口802からポンプ室ポート806へおよびポンプ室820に向かって流れる。スラリー燃料の圧力は、相対的に低いが、ポンプ室820を拡大するために燃料ポンプピストン801を押すには十分である。スラリー燃料の圧力は、たとえば、30バール未満または任意選択で20バールと30バールの間とすることができる。ポンプピストン801および作動ピストン807がそのように押される時に、作動室812内の作動液の一部が、作動液出口852を介して燃料噴射弁800から流れる。
【0155】
ポンプ室820が、スラリー燃料を充填され終えた時に、弁作動液が、制御弁892の制御の下で弁作動液導管890を介して弁作動室872に駆動される。これは、エンジンのクランク角A
2で燃料入口802を閉じるために、弁ゲート875を第1の位置(
図10のP
1)から第2の位置(
図10のP
2)に駆動する。弁作動室872内の弁作動液は、好ましくは、燃料入口802内のスラリー燃料より高い圧力にある。たとえば、弁作動液は、180バールと200バールとの間など、100バール超の圧力にあるものとすることができる。
【0156】
弁ゲート875が第2の位置に来た後に、高圧作動液は、作動液入口850を介して作動室812に素早く流れさせられる(エンジン制御ユニットによるなど)。作動液は、ポンプ室820内のスラリー燃料よりはるかに高い圧力にあるので、作動液は、
図10のグラフに示されているように、ポンプ室820内のスラリー液を加圧させ、ノズル燃料導管824を介してニードル燃料室844に押しやらせるために、ポンプ要素805に力を働かせる。これは、スラリー燃料が燃料噴射弁800から出てエンジン燃焼室に向かって押し出されることを可能にするために、可動弁ニードル834に、開位置に移動させる。それと同時に、隙間に蓄積している可能性がある炭質のまたは他の堅い摩耗させる粒子を取り除きまたはフラッシュするのを助けるために、作動液の一部は、作動液導管854に沿って縦穴832とその中に配置された弁ニードル834との間の隙間に向かって駆動される。
【0157】
弁ゲート875が、噴射器のこの作動の間に第2の位置にあるので、スラリー燃料は、ポンプ室820から燃料入口802に押し出され得ない。これをよりよく保証するために、弁ゲート875がエンジンのクランク角A
2において第2の位置に達することと、高圧作動液がエンジンの後続のクランク角A
3において作動室812に素早く流されることとの間に、少なくとも50msまたは少なくとも100msなど、所定の遅延(
図10のTなど)があってもよい。
【0158】
噴射器800のこの作動のタイミングは、エンジン燃焼室内のピストンがおおむね上死点(TDC)(
図10のエンジンのクランク角A
4)にある時に、ポンプ室820内のスラリー燃料がピーク圧力を経験するようなものとすることができる。しかし、いくつかの実施形態では、TDCとピーク圧力との間に小さいタイミング・オフセットがあってもよい。燃焼室へのスラリー燃料の噴射は、TDCに先行しまたはTDCに遅れることができる。いくつかの実施形態では、タイミング・オフセットは、エンジン制御ユニットによってまたは操作員がエンジン制御ユニットを適切に動作させることによってなど、選択可能または変更可能である。
【0159】
その後、作動室812への高圧作動液の流れは、止められ(エンジン制御ユニットによるなど)、その結果、燃料噴射弁800から出る、ニードル燃料室844からのスラリー燃料の流れを防止しまたは妨げるために、他の実施形態を参照して前に説明したように、ニードル弁834は、ばね842の付勢力の下で閉位置に移動する。
【0160】
さらに、弁作動室872への弁作動液の流れは、エンジン制御ユニットによるなど、制御弁892の操作を介して止められる。その後、燃料入口802内のスラリー燃料の相対的に低い圧力は、燃料入口802を開き、もう一度サイクルを開始するために、エンジンのクランク角A5で第2の位置から第1の位置へ弁ゲート875を駆動するのに十分である。弁ゲート875のこの移動中に、弁作動液の少なくとも一部が、弁作動液導管890および制御弁892を介して弁作動室872からドレイン管896に放出される。したがって、スラリー燃料は、弁ゲート875が第1の位置に移動することに対する大きい抵抗を経験しない。ドレイン管896は、弁作動液の供給源894に弁作動液を戻すことができる。
【0161】
この実施形態では、弁ゲート875を第1の位置に向かって駆り立てるばねまたは他の付勢デバイスはない。しかし、そのような付勢デバイスは、他の実施形態に存在することができる。
【0162】
図6a~
図6cの流体作動可能な燃料供給弁122とは対照的に、弁ゲート875を第1の位置から第2の位置に駆動するのに使用されるのが、スラリー燃料ではなく別の流体であることを了解されたい。弁ゲート875を第1の位置から第2の位置に移動するためにスラリー燃料が弁ゲート875に作用する必要を回避することによって、スラリー燃料の圧力を相対的に低くすることができる。これは、燃料供給弁の中または付近でのスラリー燃料からの固体粒子の凝集を回避するのを助ける。
【0163】
さらに、いくつかの実施形態では、第1の位置から第2の位置への弁ゲート875の移動中に、弁ゲート875は、燃料入口802からのスラリー燃料の流れに対抗する力を実質的に働かせない。別の実施形態に関して前に説明したように、これは、スラリー燃料が相対的に低い圧力に維持され得、したがって、非ニュートン・スラリー燃料の沈澱または固体燃料粒子の凝集の機会が減らされることを意味する。しかし、他の実施形態では、第1の位置から第2の位置への弁ゲート875の移動中に、弁ゲート875は、燃料入口802からのスラリー燃料の流れに対抗する力を働かせる。
【0164】
別の実施形態では、上で説明した実施形態のうちの1つまたは複数が組み合わされる。ある実施形態の特徴を、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。
【0165】
本発明の実施形態が、図示の例を特に参照して議論された。しかし、本発明の範囲内で、説明された例に対して変形形態および修正形態を作ることができることを了解されたい。