(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】改良された義歯接着剤
(51)【国際特許分類】
A61K 6/35 20200101AFI20230123BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20230123BHJP
A61C 13/23 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61K6/35
A61K6/60
A61C13/23
(21)【出願番号】P 2019551942
(86)(22)【出願日】2018-03-23
(86)【国際出願番号】 US2018023918
(87)【国際公開番号】W WO2018175826
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2017-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ドラガノイ, エレナ エス.
(72)【発明者】
【氏名】モロニ, アントニオ
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/030360(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00555019(EP,A1)
【文献】特表2016-504373(JP,A)
【文献】米国特許第06294594(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
義歯接着剤組成物であって、
(a)カルボマーホモポリマー、カルボマーコポリマー、およびカルボマーインターポリマーから選択される、全体組成の10~14重量パーセントの架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーと、
(b)(i)全体組成の18~24重量パーセントのカルボキシメチルセルロース成分
および(ii)アルギン酸ナトリウムを含む、全体組成の18~約45重量パーセントの接着促進成分、を含む追加成分と、を含み、
成分(b)と成分(a)との重量比が5:1~1:5である、義歯接着剤組成物。
【請求項2】
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NF、Carbopol(登録商標)974P NF、Carbopol(登録商標)Ultrez 10NF、Carbopol(登録商標)ETD 2020NF、Carbopol(登録商標)980NF、Pemulen(登録商標)TR-1もしくはTR-2
NF、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項3】
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)974P NFを含む、請求項1または2に記載の義歯接着剤組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1~3のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項5】
前記カルボキシメチルセルロース成分が、Aqualon(商標)7H3SF、Aqualon(商標)7HF、Aqualon(商標)7MF、Aqualon(商標)9M31XF、Aqualon(商標)CMC 9M8F PH、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~4のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項6】
前記接着促進成分がポリ(エチレン)オキシドを含む、請求項1~5のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項7】
前記組成物の残部が媒体を含み、前記媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物である、請求項1~6のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項8】
前記組成物が媒体をさらに含み、前記媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物である、前記媒体が、約14~約50重量パーセントの量で存在する、請求項1~6のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項9】
(a)の前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NFを含み、
(b)(i)の前記カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、
(b)(ii)の前記接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ
前記組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、請求項1~8のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項10】
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、前記全体組成中に約10~約14重量パーセントで存在するCarbopol(登録商標)974P NFを含み、
前記カルボキシメチルセルロース成分が、存在する場合、約18~約24重量パーセントで存在するカルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、
前記接着促進成分が、約18~約45重量パーセントで存在するアルギン酸ナトリウムを含み、
前記組成物が、約30~約34重量パーセントで存在するワセリンをさらに含み、
前記組成物が、約12~約16重量パーセントで存在する鉱油をさらに含む、請求項1~
9のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【請求項11】
前記組成物がアルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマーおよびその塩を含まず、かつ
前記組成物が亜鉛を含まない、請求項1~1
0のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示されている技術は、義歯で使用する改良された接着剤組成物を提供する。これらの改良された組成物は、(a)架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーを、(b)カルボメチルセルロース(CMC)成分および/または(c)接着促進成分と組み合わせて含む。組成物は、亜鉛を必要とせずに、接着力および分注粘度を含む効果的な義歯接着剤の多くの相反する目標を並立させる。
【背景技術】
【0002】
米国だけで約3,700万人が自然歯を失っている(Mojon P,Thomason JM,Walls AWG.The impact of falling rates of edentulism.Int J Prosthodont 2004;17:434-40参照)。高齢者人口が増加するにつれて、この数は近い将来に増加すると予想される。これに加えて、多数の消耗した欠陥のある補綴物を交換する必要があるため、推定で少なくとも6,100万の新しい義歯が必要になる(Douglass CW,Shih A,Ostry L.Will there be a need for complete dentures in the United States in 2020?J Prosthet Dent 2002;87:5-8参照)。発展途上国の多数の人々が長生きし、歯科補綴物を購入するのに十分な裕福になるため、世界中でこの数はさらに増加すると予想される。
【0003】
義歯接着剤は、米国だけで500万人を超える義歯装着者によって使用されている(Young R,Weikel M.An appraisal of denture adhesive powders.Contact Point 1945;23:247-9参照)。義歯接着剤の使用は、保持を改善し、炎症を起こした歯茎を消炎し、不適合な義歯の使用を助けるために、特に深刻に吸収された残存歯槽堤を有する患者において、米国および欧州でますます一般的になっている(Grasso JE.Denture Adhesives:changing attitudes.J.Am Dent Assoc 1996;127:90-6参照)。実際、義歯接着剤は、口内での望ましくない義歯の移動量を減らし、保持を促進し、咬合力を増加させ(Kapur KK.A clinical evaluation of denture adhesives.J Prosthet Dent 1967;127:90-6参照)、より速く、より完全で自然な咀しゃくを促進し、安全かつ効果的である(Shay K.Denture Adhesives.Choosing the right powders and pastes.J Am Dent Assoc 1991;122:70-6参照)。義歯接着剤の満たされていないニーズには、より迅速な接着力の開発、より高い咬合力、クッション性、および終日保持が含まれる。炎症の軽減につながる刺激、心地よいさわやかな味覚の口への送達が望ましく、ならびに特に開発途上国では、接着剤のコスト削減も望ましい。
【0004】
義歯接着剤は、唾液の存在下で膨潤し、水が吸収されると粘性および粘着性になる。カラヤ、トラガカント、アカシア、ペクチンなどの天然ゴム、およびPolyoxおよびカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムなどの材料は、過去に接着剤として使用されてきたが、これらは、主にこの目的のために開発され、一般にCMCナトリウムまたは/およびPolyoxなどの他のガムと組み合わせた、無水マレイン酸/メチルビニルエーテル(MA/MVE)コポリマーの様々な塩で構成されている、より長持ちし、より効果的な合成ポリマーに置き換えられている。数日間続く非常に強力な保持が望まれる特定のケースでは、ポリ酢酸ビニル(別名PVA)をベースにした接着剤が使用されるが、これらの製品はチューブから絞り出すのが非常に難しく、取り外すのが難しく、粘膜表面に良くない。
【0005】
最新の義歯接着剤は、クリーム、ストリップ、パウダー、クッションなど、様々な物理的形態で入手可能であり、様々な顧客の好みを満たす。しかし、歯科専門家はクリームタイプの義歯接着剤を推奨する可能性が最も高く、これらが市場シェアの大部分を占めている(Kororis S,Pizatos E,Polyzois G,Lagouvardos P.Clinical evaluation of three denture cushion adhesives by complete denture wearers.Gerodontology 2012;29:161-169、およびAdisman IK.The use of denture adhesives as an aid to denture treatment.J Prosthet Dent 1989;62:711-715参照)。義歯接着剤には、有効成分と非有効成分との両方が含まれており、接着特性を付与する有効成分には上記のすべての材料が含まれるが、非有効成分は、ワセリン(petrolatum)と鉱油との混合物で、ガム/ポリマー粒子を懸濁し、分注を容易にし、正しい配置を支援し、義歯を配置しようとする際の早期接着を防ぐために使用される。唾液にさらされると、油性成分が洗い流され、接着剤が水和によって活性化され、その結果、接着特性が発現する。
【0006】
改良された義歯接着剤組成物を開発するために、長年にわたって相当な努力がなされてきた。特定の欠陥を減らすために、合成および天然のポリマーとガムとの両方が、単独で、組み合わせて、および様々な接着剤や他の材料と組み合わせて使用されてきた。これらの欠陥には、不十分な保持力、および口と義歯から残留接着剤を除去する厄介さおよび難しさが含まれる。また、食物が義歯と着用者の口腔との間に閉じ込められる可能性がある。さらに、特定の成分は、着用者にあまり望ましくない味を与える可能性がある。
【0007】
義歯接着剤組成物における使用には、アルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマーおよびその塩が当技術分野で知られている。そのような開示には、1961年10月10日に発行されたGermannらの米国特許第3,003,988号、1990年12月25日に発行されたKumarらの米国特許第4,980,391号、1991年12月17日に発行されたHolevaらの米国特許第5,073,604号、1999年5月4日に発行されたProsiseらの米国特許第5,900,470号、1991年8月6日に発行されたTaziらの米国特許第5,037,924号、1992年1月21日に発行されたTaziらの米国特許第5,082,913号、1996年6月11日に発行されたClarkeの米国特許第5,525,652号、が挙げられる。さらに、ストリップまたはインサート義歯接着剤も知られている。上記の技術および他の多くの技術にもかかわらず、改良された義歯安定化組成物の必要性が依然として存在する。
【0008】
接着力および分注粘度は、義歯接着剤の最も重要な特性である。理想的な義歯接着剤は、再適用を必要とする前にその接着特性を12~16時間保持し、初期保持力を迅速に発現させ(2~5分、最大保持力は2~4時間の時間枠内で達成される)、チューブから簡単に分注できるものでなければならない。歯茎の色に似た色、心地よい風味、そして最終的には抗菌、抗刺激、鎮静作用は、義歯接着剤が有し得る他の有益な性質である。
これらのニーズのバランスを取り、これらのすべての領域にわたって良好な性能を提供する改良された義歯接着剤組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第3,003,988号明細書
【文献】米国特許第4,980,391号明細書
【文献】米国特許第5,073,604号明細書
【文献】米国特許第5,900,470号明細書
【文献】米国特許第5,037,924号明細書
【文献】米国特許第5,082,913号明細書
【文献】米国特許第5,525,652号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
開示されている技術は、改良された義歯接着剤組成物、そのような組成物の製造方法、およびその使用方法を提供する。
【0011】
開示されている技術は、(a)架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーと、(b)(i)カルボキシメチルセルロース(CMC)成分、(ii)接着促進成分、または(iii)(i)および(ii)の両方を含む追加成分と、を含む。組成物はまた、そのような組成物で使用するための分野で知られている1つ以上の他の成分および/または添加剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、ワセリン、鉱油、またはその両方をさらに含む。
【0012】
架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーは、全体組成中に約9~約27重量パーセント、またはさらに10~20、10~14、またはさらに約12重量パーセントで存在し得る。
【0013】
カルボキシメチルセルロース成分は、全体組成中に約0~約43重量パーセント、約20~約43重量パーセント、またはさらに20~41または20~30、または20~25、または20~21、またはさらに約20.5重量パーセントで存在してもよい。
【0014】
接着促進成分は、アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレン)オキシド、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施形態では、接着促進成分はアルギン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、接着促進成分はポリ(エチレン)オキシドである。
【0015】
接着促進成分は、全体組成中に約20~約42重量パーセント、またはさらに15~25、または18~22、またはさらに約20重量パーセント、またはさらに35~45または36~44、または40~42、または約41重量パーセントで存在してもよい。
【0016】
存在する場合、鉱油は様々なレベルで存在してもよいが、いくつかの実施形態では、鉱油は、全体組成中に約20~約40重量パーセント、またはさらに25~35、または30~34、またはさらに約32重量パーセントで存在してもよい。
【0017】
存在する場合、ワセリンは様々なレベルで存在してもよいが、いくつかの実施形態では、ワセリンは、全体組成中に約10~約20重量パーセント、またはさらに12~16、または13~15、またはさらに約14重量パーセントで存在してもよい。
【0018】
さらに、いくつかの実施形態では、成分(b)対成分(a)の重量比は、5:1~1:5、または4:1~1:4、またはさらに4:1~1:1、または2:1~1:1であることが見出された。
【0019】
開示の技術はさらに、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、カルボマーホモポリマー、カルボマーコポリマー、カルボマーインターポリマー、ポリカルボフィルまたはこれらの混合物である、記載の義歯接着剤を提供する。
【0020】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、ホモポリマー、コポリマー、またはインターポリマーである、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0021】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NF、Carbopol(登録商標)974P NF、Carbopol Ultrez 10NF、Carbopol ETD 2020NF、Carbopol 980NF、Pemulen TR-1もしくはTR-2 NFまたはこれらの任意の組み合わせを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0022】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーがCarbopol(登録商標)974P NFを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0023】
開示の技術は、カルボキシメチルセルロース成分がカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0024】
開示の技術は、カルボキシメチルセルロース成分が、置換度7、高い粘度グレード、粘度約3000cpsの粘度、滑らかな流動性、微細な粒径を有し、かつ少なくとも食品グレード基準で作られた、カルボキシメチルセルロースを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0025】
開示の技術は、カルボキシメチルセルロース成分が、Aqualon(商標)7H3SF、Aqualon(商標)7HF、Aqualon(商標)7MF、Aqualon(商標)9M31XF、Aqualon(商標)CMC 9M8F PH、またはこれらの任意の組み合わせを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0026】
開示の技術は、接着促進成分がアルギン酸ナトリウムを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0027】
開示の技術は、接着促進成分がポリ(エチレン)オキシドを含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0028】
開示の技術は、組成物が媒体をさらに含み、該媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物を含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0029】
開示の技術は、組成物が媒体をさらに含み、該媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物を含み、この媒体が約14~約50重量パーセントの量で存在する、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0030】
開示の技術は、組成物が、成分(a)と、(b)(i)と、(b)(ii)と、を含み、(a)の架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーがCarbopol(登録商標)971P NFを含み、(b)(i)のカルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、(b)(ii)の接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0031】
開示の技術は、組成物が、成分(a)と、(b)(ii)と、を含み、(a)の該架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NFを含み、(b)(ii)の該接着促進成分が、ポリ(エチレン)オキシドを含み、かつ組成物が、鉱油、ワセリン、またはそれらの混合物をさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0032】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NF、Carbopol(登録商標)974P NF、Carbopol Ultrez 10NF、Carbopol ETD 2020NF、Carbopol 980NF、Pemulen TR-1もしくはTR-2 NF、またはこれらの任意の組み合わせを含み、カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、かつ組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する
【0033】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが約10~約14重量パーセントのCarbopol(登録商標)974P NFを含み、カルボキシメチルセルロース成分が、約0~約24重量パーセントで存在するナトリウムカルボキシメチルセルロースを含み、接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムまたはポリ(エチレン)オキシドを含み、約18~約45重量パーセントで存在し、組成物が、約30~約34重量パーセントで存在する鉱油をさらに含み、かつ組成物が、約12~約16重量パーセントで存在するワセリンをさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0034】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NF、Carbopol(登録商標)71G NF、Carbopol(登録商標)974P NF、またはこれらの任意の組み合わせを含み、カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、かつ組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0035】
開示の技術は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが約10~約14重量パーセントのCarbopol(登録商標)974P NFを含み、カルボキシメチルセルロース成分が、約18~約24重量パーセントで存在するカルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムまたはポリ(エチレン)オキシドを含み、約18~約45重量パーセントで存在し、組成物が、約30~約34重量パーセントで存在する鉱油をさらに含み、かつ組成物が、約12~約16重量パーセントで存在するワセリンをさらに含む、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【0036】
開示の技術は、組成物がアルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマーおよびその塩を含まない、記載の義歯接着剤をさらに提供する。開示の技術は、組成物が亜鉛を含まない記載の義歯接着剤をさらに提供する。開示の技術は、組成物がアルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマーおよびその塩を含まず、かつ亜鉛も含まない、記載の義歯接着剤をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
様々な好ましい特徴および実施形態が、非限定的な例示として以下に説明される。
【0038】
開示の技術は、改良された義歯接着剤組成物、そのような組成物の製造方法、およびその使用方法を提供する。
【0039】
架橋ポリ(アクリル)酸ポリマー
本明細書に開示される薬物組成物は、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーを含む。架橋ポリアクリル酸ポリマーは、カルボマーホモポリマー、カルボマーコポリマー、カルボマーインターポリマー、ポリカルボフィル、またはこれらの混合物であり得る。
【0040】
架橋ポリアクリル酸は、1つ以上のカルボマー、1つ以上のポリカルボフィル、アクリル酸とアクリル酸アルキルとの1つ以上のコポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせから選択することができる。
【0041】
本明細書で使用されるポリアクリル酸またはアクリル酸ポリマーという用語は、ペンダントカルボン酸基またはポリカルボン酸の無水物を有する重合性モノマーの高い割合を中に含む様々なポリマーを包含するために使用される。これらの化合物は、米国特許2,798,053号、同第3,915,921号、同第4,267,103号、同第5,288,814号、および同第5,349,030号に詳細に記載されており、これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ポリアクリル酸という用語はまた、繰り返し単位の少なくとも50または75モルパーセントがペンダントカルボン酸基またはジカルボン酸基の無水物を有する様々なホモポリマー、コポリマー、およびインターポリマーを含むように使用される。アクリル酸はポリアクリル酸を形成するために使用される最も一般的な主要なモノマーであるが、用語はそれに限定されず、米国特許第5,349,030号に記載されているように、一般にカルボン酸ペンダント基またはジカルボン酸の無水物を有するすべてのアルファ-ベータ不飽和モノマーを含む。
【0042】
適切な架橋ポリアクリル酸には、ポリカルボフィル、カルボマー、Carbopol(登録商標)ポリマー、Carbopolホモポリマー、Carbopolコポリマー、Carbopolインターポリマー、アクリル酸とアルキルアクリレートとのコポリマー、またはこれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。U.S.P Pharmacopeia 30 NF 25のカルボマーモノグラフに記載されている、医薬品用途に承認されたポリアクリル酸は、ポリアルケニルエーテルで架橋されたポリアクリル酸である。
【0043】
いくつかの実施形態では、記載の組成物で使用されるポリ(アクリル)酸ポリマーは、アリルエーテル架橋剤、ジビニルグリコール、またはこれらの組み合わせにより架橋されている。いくつかの実施形態では、記載の組成物で使用されるポリ(アクリル)酸ポリマーは、アリルエーテル架橋剤により架橋されている。いくつかの実施形態では、記載の組成物で使用されるポリ(アクリル)酸ポリマーは、ジビニルグリコールにより架橋されている。
【0044】
いくつかの実施形態において、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーには、Carbopol 971P NF、Carbopol 974P NF、Carbopol Ultrez 10NF、Carbopol ETD 2020NF、Carbopol 980NF、Pemulen TR-1もしくはTR-2 NFまたはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態では、架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーには、Carbopol 974P NFが含まれる。
【0045】
カルボキシメチルセルロース成分
本明細書の組成物は、接着剤組成物の約0~約43重量パーセント、または約20~約43重量パーセント、またはさらに10、15、17、またはさらに20重量パーセント~最大43、41、30、25、21重量パーセント、またはさらに20重量パーセントのカルボキシメチルセルロースを含有する。
【0046】
一実施形態では、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。本明細書で有用なカルボキシメチルセルロース材料には、少なくとも200,000ダルトンの分子量を有するものが含まれる。いくつかの実施形態において、カルボキシメチルセルロースは、約200,000~約1,000,000、あるいは約500,000~900,000、または約600,000~約800,000ダルトンの分子量を有する。本明細書で有用な市販のカルボキシメチルセルロースの例には、パンフレットの材料あたり約700,000ダルトンの典型的な分子量を有するAqualonから入手可能な7Hシリーズのカルボキシメチルセルロースが含まれる。有用なカルボキシメチルセルロースの他の例には、両方がAqualon/Herculesから市販されている7H3SX8Fおよび7H3SXF、ならびにC.P.Kelco/Noviant/HuberからのCEKOL30,000Pが含まれる。
【0047】
いくつかの実施形態では、記載の組成物で使用されるカルボキシメチルセルロースは7H3SXFである。
【0048】
接着促進成分。
本発明の組成物は、接着促進成分を含む。接着促進成分は、アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレン)オキシド、またはこれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、接着促進成分はアルギン酸ナトリウムである。いくつかの実施形態では、接着促進成分はポリ(エチレン)オキシドである。
【0049】
アルギン酸ナトリウムは、FMC BioPolymerから市販されている多糖類である。ポリ(エチレン)オキシドは、Polyox(商標)ブランドでダウケミカルを含む様々な商業ソースから入手できる。
【0050】
ポリ(エチレン)オキシドまたはポリオキシエチレン(POE)は、工業生産から医薬品まで多くの用途を有するポリエーテル化合物であり、多くの医薬品の賦形剤として使用される。低分子量のバリアントは、経口液剤およびソフトカプセルの溶媒として使用され、一方固体のバリアントは、軟膏基剤、錠剤バインダー、フィルムコーティング、および潤滑点眼剤を含む潤滑剤として使用される。POE(W301グレード)は、結合力(cohesive strength)に欠けるが粘着性があるため、従来の義歯接着剤の主な接着促進剤として使用されている。現在、POEは、他の材料と相乗的に作用する最新の義歯接着剤配合物の共接着剤として使用されている。本明細書に記載のPOEと架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーとの組み合わせは、記載の組成物の利点のいくつかをもたらすと考えられている。
【0051】
アルギン酸は、アルギンまたはアルギン酸塩とも呼ばれ、褐藻類の細胞壁に広く分布するアニオン性多糖類であり、水との結合により粘性のあるガムを形成する。これは、抽出された形で、水をすぐに吸収し、水でそれ自体の重量の200~300倍を吸収することができる。多くの場合、アルギン酸は、食品、捺染、医薬品が含まれる、様々な産業で広く使用されている材料である、アルギン酸ナトリウムとして一般的に知られている原料に変換される。歯科用印象材は、そのゲル化の手段としてアルギン酸塩を利用している。アルギン酸塩は食品と皮膚の両方に安全である。本明細書に記載のアルギン酸ナトリウムと架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーとの組み合わせは、記載の組成物の利点のいくつかをもたらすと考えられている。
【0052】
接着促進成分は、全体組成中に約20~約42重量パーセント、またはさらに15~25、または18~22、またはさらに約20重量パーセント、またはさらに35~45または36~44、または40~42、またはさらに約41重量パーセントで、存在し得る。
【0053】
追加の添加物と成分。
開示の組成物は、1つ以上の追加の成分および/または添加物を含んでもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、開示の組成物は担体を含む。担体は様々なレベルで存在し得るが、いくつかの実施形態では、記載の組成物は、約2%~約80%、または約30%~約70%の水不溶性液体、ゲル、熱可塑性固体、またはこれらの組み合わせ担体を含む。
【0055】
一般に、鉱油とワセリンとの水不溶性混合物は、組成物を懸濁液にするための担体として使用できる。液体/ゲルビヒクル/担体中の固体粒子のこの懸濁液は、義歯接着剤のクリームまたはペーストとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、本組成物は、安全かつ有効な量の水不溶性成分(water insoluble component(wic))を含む。一実施形態では、この成分は、組成物の約2、5、10、20、25、30、35重量%~約45、50、60、70、90重量%の量で、またはそれらの任意の組み合わせの量で存在する。追加の実施形態では、水不溶性成分は、組成物の約20重量%~約70重量%、約25重量%~約60重量%、または約35重量%~約60重量%の量で存在する。さらに別の実施形態では、水不溶性成分は実質的に水中で非膨潤性である。いくつかの実施形態では、非膨潤性の水不溶性成分は、水中で約10%、5%、2%、または1%未満で膨潤する。
【0056】
一実施形態では、水不溶性成分は、液体、ゲル、またはこれらの混合物を含む。一実施形態において、水不溶性成分は、天然ロウ、合成ロウ、ワセリン、ポリ酢酸ビニル、天然油、合成油、脂肪、シリコーン、シリコーン誘導体、ジメチコン、シリコーン樹脂、炭化水素、炭化水素誘導体、精油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態において、水不溶性成分は、ワセリン、ポリ酢酸ビニル、天然油、合成油、脂肪、シリコーン、シリコーン誘導体、ジメチコン、シリコーン樹脂、炭化水素、炭化水素誘導体、ポリブテン、オレイン酸、ステアリン酸、精油、またはこれらの組み合わせを含む。
【0057】
天然油の例には、植物油(トウモロコシ油など)、大豆油、綿実油、パーム油、ヤシ油、鉱油、動物油(魚油など)などが含まれるが、これらに限定されない。合成油の例には、シリコーン油などが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、水不溶性成分は天然油を含む。追加の実施形態では、水不溶性成分はワセリンを実質的に含まない。別の実施形態では、水不溶性成分はワセリンをさらに含む。他の実施形態では、水不溶性成分は、ミネラルゼリー、例えば、Calumet Specialty Productsのミネラルゼリー番号4、5、10、15、または20を含んでもよい。
【0058】
さらなる実施形態では、天然油は鉱油を含む。一実施形態では、鉱油は約30%~約50%の量で組成物中に存在し、別の実施形態では約35%~約45%の量で存在する。いくつかの実施形態では、鉱油は、白色、淡色、または工業用であり得る。軽鉱油は、例えば、Drakeol 5、10、13、または15であり得る。白色鉱油は、例えば、Drakeol 19、21、34、35、または600である。
【0059】
いくつかの実施形態では、水不溶性成分はロウを含む。ロウは一般に、炭化水素(通常または分岐アルカンおよびアルケン)、ケトン、ジケトン、一級および二級アルコール、アルデヒド、ステロールエステル、アルカン酸、テルペン(スクアレン)およびモノエステル(ロウエステル)を含む様々な物質で構成されている。様々な種類のロウには、動物および昆虫ロウ(蜜ロウ、中国ロウ、シェラックロウ、鯨ロウ、ラノリン)、植物ロウ(ベーベリーロウ、カンデリラロウ、カルナウバロウ、ヒマシロウ、エスパルトロウ、木ロウ、ホホバ油、オウリキュリーワックス(ouricury wax)、米ぬかワックス)、鉱物ロウ(クレシン(cresin)ロウ、モンタンワロウ、オゾセライト、ピートロウ)、石油ロウ(パラフィンロウまたはマイクロクリスタリンワックス)、および合成ロウ(ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、化学修飾ワックス、置換アミドワックス、重合したα-オレフィン)が含まれる。
【0060】
一実施形態では、水不溶性成分は天然または合成ロウを含む。さらなる実施形態では、天然ロウは、動物ロウ、植物ロウ、鉱物ロウ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、動物ロウには、蜜ロウ、ラノリン、シェラックロウ、中国ロウ、およびこれらの組み合わせが含まれる。別の実施形態では、植物ロウには、カルナウバ、カンデリラ、ベーベリー、サトウキビ、およびこれらの組み合わせが含まれ、また、鉱物ロウには、鉱ロウまたは土ロウ(オゾセライト、セレシン、モンタン)、石油ロウ、例えばパラフィンおよびマイクロクリスタリンワックス、およびこれらの組み合わせが含まれる。一実施形態では、本明細書のロウは、蜜ロウ、カンデリラ、カンデラ、カルナウバ、パラフィン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される天然ロウである。様々な実施形態において、ロウは、約1、2、5、8%~約5、10、20、30%、またはこれらの任意の組み合わせの量で存在することができる。
【0061】
別の実施形態では、天然ロウはパラフィンロウを含む。本明細書で有用なパラフィンロウは、一般に、約65℃~約80℃、別の実施形態では約70℃~約75℃の融点範囲を有することができる。別の実施形態では、本明細書で有用なマイクロクリスタリンワックスは、約65℃~約90℃、別の実施形態では約80℃~約90℃の融点を有することができる。一実施形態では、本明細書で有用な蜜ロウは、約62℃~約65℃の融点および242℃の引火点を有することができる。別の実施形態では、本明細書で有用なカンデリラロウは、約68℃~約72℃の融点を有することができる。追加の実施形態では、本明細書で有用なカルナウバロウは、約83℃~約86℃の融点を有することができる。一実施形態では、本明細書で有用なフィッシャートロプシュワックスは、約95℃~約120℃の融点を有することができる。蜜ロウ、カンデリラ、およびカルナウバロウの合成グレードも、天然グレードと同様の特性で入手できる。
【0062】
一実施形態では、水不溶性成分はワセリンを含む。Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 13th Edition、John Wiley & Sons、1997によれば、ワセリンは「パラフィンベースの石油留分の蒸留により得られた炭化水素の混合物」であり、また、The United States Pharmacopia 2005によれば、ワセリンは「石油から得られる半固体炭化水素の精製混合物」である。これは「天然ワセリン」とも呼ばれる。ワセリンの融解範囲は、The United States Pharmacopia 2005によれば38℃~60℃、The Merck Index,10th Edition,1983によれば38~54Cであると述べられている。ワセリンは、Sonneborn Inc製品パンフレットに従ってASTM D-937を使用して測定した「コーン針入度値」が180~約245の様々なグレードで利用できる。
【0063】
一実施形態では、水不溶性成分は約60℃より高い融点を有する。いくつかの実施形態では、水不溶性熱可塑性成分は、約35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃~約110℃、120℃、150℃、175℃、200℃の融点、および/またはこれらの任意の組み合わせを有して、範囲、開始点、および/または終了点を形成する。別の実施形態では、組成物は、融点が約75℃を超える水不溶性熱可塑性成分を実質的に含まない。
【0064】
いくつかの実施形態では、担体はマイクロクリスタリンワックスを含む。マイクロクリスタリンワックスは、精製され、および/または実質的に純粋であってもよい。追加の実施形態では、ワセリンはマイクロクリスタリンワックスに寄与しない。参照により本明細書に組み込まれる、“Encyclopedia of Polymer Science and Engineering”,2nd Edition,Vol.17,page 788は、マイクロクリスタリンワックスの分子量が450~800の範囲であると述べている。参照により本明細書に組み込まれる、“Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology”,5th Edition,vol.26,page 216は、マイクロクリスタリンワックスが以下の典型的な特性:引火点、密閉カップ、260℃、98.9℃での粘度、10.2~25mm2/s、融解範囲、60℃~93℃、98.9℃での屈折率、1.435~1.445、平均分子量、600~800、分子あたりの炭素原子、30~75、および固体ワックスの延性/結晶化度、延性プラスチックから強脆性、を有すると述べており、および一実施形態では、粘度指数向上剤はこれらの特定の特性を有する。
【0065】
別の実施形態では、マイクロクリスタリンワックスは、約50℃~約100℃の範囲の融点を有する。さらなる実施形態では、マイクロクリスタリンワックスは、約50℃、55℃、60℃、65℃、70℃~約70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃の範囲、またはこれらの任意の組み合わせの融点を有する。特定の一実施形態では、マイクロクリスタリンワックスは、約75℃~約85℃の範囲の融点を有する。
【0066】
別の実施形態において、マイクロクリスタリンワックスは、Crompton,Sonneborn(Witco)によって製造され、商標Mutiwax(登録商標)W-835で参照され、販売されている。このロウは、約73.9℃~約79.4℃の融点範囲(ASTM D-127を使用して測定)を有し、約60~約80の25℃での針入度(ASTM D-1321を使用して測定)を有し、約75~約90セイボルトユニバーサル秒の98.9℃での動粘度(ASTM D-2161を使用して測定)を有し、少なくとも約246℃の引火点COC(クリーブランドオープンカップ)(ASTM D-92を使用して測定)を有し、約68℃~約77℃の凝固点(ASTM D-938を使用して測定)を有する。
【0067】
別の実施形態では、マイクロクリスタリンワックスは、Crompton,Sonneborn(Witco)によって製造され、商標Mutiwax(登録商標)180Wで参照され、販売されている。このロウは、約79℃~約87℃の融点範囲(ASTM D-127を使用して測定)を有し、約15~約22の25℃での針入度(ASTM D-1321を使用して測定)を有し、少なくとも約75セイボルトユニバーサル秒の98.9℃での動粘度(ASTM D-2161を使用して測定)を有し、少なくとも約277℃の引火点COC(クリーブランドオープンカップ)(ASTM D-92を使用して測定)を有し、約75℃~約82℃の凝固点(ASTM D-938を使用して測定)を有する。
【0068】
別の実施形態では、マイクロクリスタリンワックスは、Crompton,Sonneborn(Witco)によって製造され、商標Mutiwax(登録商標)W445で参照され販売されている。このロウは、約77℃~約82℃の融点範囲(ASTM D-127を使用して測定)を有し、約25~約35の25℃での針入度(ASTM D-1321を使用して測定)を有し、約75~約90セイボルトユニバーサル秒の98.9℃での動粘度(ASTM D-2161を使用して測定)を有し、少なくとも約277℃の引火点COC(クリーブランドオープンカップ)(ASTM D-92を使用して測定)を有し、約72℃~約77℃の凝固点(ASTM D-938を使用して測定)を有する。
【0069】
マイクロクリスタリンワックスとパラフィンロウとはどちらも石油ロウであるが、両者には特定の違いがある。マイクロクリスタリンワックスは、石油精製プロセスから特定の画分を脱油することにより生成される、固体の飽和脂肪族炭化水素の精製混合物である。大部分が分岐していないアルカンを含むより馴染みのあるパラフィンロウとは対照的に、マイクロクリスタリンワックスはイソパラフィン(分岐)炭化水素およびナフテン系炭化水素の割合が高くなる。パラフィンロウの大きな結晶とは対照的に、その結晶の細かさが特徴である。それは高分子量の飽和脂肪族炭化水素で構成されている。それは一般に、パラフィンロウよりも色が濃く、粘性が高く、密度が高く、粘着性があり、弾力性があり、より高い分子量および融点を有する。マイクロクリスタリンワックスの弾性および接着特性は、含まれる非直鎖成分に関連している。典型的なマイクロクリスタリンワックスの結晶構造は小さくて薄いため、パラフィンロウよりも柔軟である。
【0070】
“Encyclopedia of Polymer Science and Engineering”Volume 17 page 788、1989 John Wiley & Sons)によると:パラフィンロウの分子量は約280~560(C20~C40)の範囲であり、マイクロクリスタリンワックスの分子量は、450~800(C35~C60)の範囲である。パラフィンロウ中のn-アルカンの量は通常75%を超え、100%にも高くなり得、マイクロクリスタリンワックスは、主にイソパラフィン系およびナフテン系の飽和炭化水素と、いくつかのn-アルカンとで構成されている。
【0071】
Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、John Wiley & Sons、2005によると:パラフィンロウの数平均分子量は350~420で、分子あたりの炭素数は20~36であり、マイクロクリスタリンワックスの数平均分子量は600~800で、分子あたりの炭素数は30~75である。パラフィンロウは微結晶性で脆く、40~90%がノルマルアルカン、残りがC18~C36イソアルカンおよびシクロアルカンで構成されている。パラフィンロウは、主に通常のアルカンからなる石油ロウである。マイクロクリスタリンワックスは、通常のアルカンに加えて、かなりの割合の分岐および環状飽和炭化水素を含む石油ロウである。ASTM D-938で決定されたロウの屈折率および凝固点に基づく分類システムが開発されている。パラフィンロウは98.9℃で1.430~1.433の屈折率を有し、また、マイクロクリスタリンワックスは98.9℃で1.435~1.445の屈折率を有する。パラフィンロウは結晶質から脆いものである。マイクロクリスタリンワックスは、延性プラスチックから強脆性である。パラフィンロウは、油に対してほとんど親和性がなく、マイクロクリスタリンワックスは、油に対して非常に親和性がある。パラフィンロウとは異なり、油はマイクロクリスタリンワックスの結晶格子にしっかりと保持され、表面に移行しない。パラフィンロウは、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 13th Edition,John Wiley & Sons,1997によれば、約47~65℃の融点を有し、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology、John Wiley & Sons、2005によれば、46~68℃であると述べられている。マイクロクリスタリンワックスの融点は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 13th Edition,John Wiley & Sonsによれば、約63~88℃の融点を有し、Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons、2005によれば60-93℃であると述べられている。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明で使用される水不溶性熱可塑性および/または粘度指数向上剤は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60~約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、250の範囲を形成する数値の任意の組み合わせ(量は約1/10mmの単位である)の針入度値を有する。
【0073】
いくつかの実施形態において、水不溶性熱可塑性成分および/またはマイクロクリスタリンワックスなどの粘度指数向上剤は、ワセリンの平均分子量よりも高い平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、水不溶性成分および/または粘度指数向上剤は、ワセリンと組み合わせた鉱油のブレンドよりもMWが高く、分岐が多く、より柔軟で、より強く、より強靭な、より高い融解、および/またはより結晶性である。
【0074】
いくつかの実施形態では、記載の組成物は、非接着性自己支持層も含み得る。
【0075】
開示の組成物は、少なくとも1つの非接着性自己支持層を任意に含む。非接着性自己支持層は、水および/または唾液の存在下で接着剤組成物に強度を維持し、完全性を提供する能力によって特徴付けられる。非接着性自己支持層には、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、酢酸セルロース、非接着性セルロース誘導体、布、繊維状フリース、紙、プラスチック、革、マイクロクリスタリンワックス、合成繊維、天然繊維、およびこれらの混合物などの材料が含まれ得る。いくつかの実施形態は、非接着性セルロース誘導体、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、布、紙、マイクロクリスタリンワックス、またはそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態は、ポリエステル、ポリプロピレン、レーヨン、ナイロン、布、および/または紙を含んでもよい。
【0076】
非接着性自己支持層は、本接着剤組成物に強度および/または完全性を提供するのに適した任意の物理的形態であってもよい。そのような物理的形態には、不織布、織布、連続、細断、およびそれらの組み合わせが含まれる。加えて、非接着性自己支持層は、当技術分野で一般的に知られている任意のプロセスによって形成されてもよい。そのようなプロセスには、非接着、スプレー接着、スパンボンド、ニードルパンチ、カーディング、熱接着水流交絡、メルトブローン、アパーチャ印刷接着、ニードル、ウェットレイ、ドライレイ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0077】
記載の組成物はまた、1つ以上の他の接着剤成分を含んでもよい。これらの接着剤成分は、存在する場合、安全で効果的な接着剤の量で使用される。一般に、他の接着剤成分は、組成物の約0重量%、10重量%、20重量%、30、または40重量%~約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、または90重量%の範囲の任意の組み合わせのレベルで存在し得る。
【0078】
適切な接着剤成分には、湿気にさらされると膨潤して粘液塊を形成する性質を有する水溶性の親水性コロイドまたはポリマーが含まれる。そのような接着剤材料には、天然ゴム、合成高分子ゴム、アルキルビニルエーテル-マレイン酸(AVE/MA)コポリマー酸、AVE/MAコポリマー無水物、アルキルビニルエーテル-マレイン酸-イソブチレン(AVE/MA/IB)、合成ポリマー、粘膜接着性ポリマー、親水性ポリマー、糖類誘導体、他のセルロース誘導体、および義歯安定化組成物に一般的に使用され、本発明の主題のポリマーと適合する接着材料、およびこれらの混合物が含まれる。そのような材料の例には、カラヤガム、グアーガム、ゼラチン、アルギン、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、キトサン、ポリエチレングリコール、アクリルアミドポリマー、カルボポール、ポリビニルアルコール、ポリアミン、ポリ第四級化合物、ポリブテン、シリコーン、エチレンオキシドポリマー、ポリビニルピロリドン、カチオン性ポリアクリルアミドポリマーが含まれる。
【0079】
いくつかの実施形態では、そのような材料は、他のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、カラヤガム、アルギン酸ナトリウム、キトサン、ポリビニルアルコール、またはそれらの混合物であり得る。他の実施形態では、材料は、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの混合物などの他のセルロース誘導体であってもよい。
【0080】
他の実施形態では、本発明の組成物は、上記のセクションに記載されたもの以外の他の接着剤成分を含まない(すなわち、記載の組成物は、上記段落[0044]~[0048]に記載された接着剤のいずれかまたはすべてを含まなくてもよい。
【0081】
記載の組成物はまた、1つ以上の追加の成分を含んでもよい。
【0082】
例えば、組成物が非接着性自己支持層を含むいくつかの実施形態では、層は、乾燥義歯に粘着性であり、存在する場合は義歯接着剤組成物の片側に配置されるコーティングも含み得る。このタイプの接着層としての使用に適した組成物には、ポリブテン、シリコーン、ゴム、ワセリン、天然ポリマー、合成ポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。接着剤層は、組成物の約0重量%~約70重量%、いくつかの実施形態では約0.5重量%~約20重量%のレベルで存在してもよい。
【0083】
他の適切な成分には、着色料、メチルパラベンやプロピルパラベンなどの防腐剤二酸化ケイ素、ポリエチレングリコールなどの増粘剤、液体ワセリン、ワセリン、鉱油、グリセリンなどのビヒクルが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、および/またはワセリンが含まれてもよい。着色剤、防腐剤、増粘剤およびビヒクルは、組成物の約0重量%~約20重量%のレベルで存在してもよい。
【0084】
本発明の組成物はまた、風味、芳香、および/または感覚の利益(加温剤または冷却剤)を提供する1つ以上の成分を含んでもよい。適切な成分には、天然または人工甘味料、メントール、乳酸メンチル、ウィンターグリーン油、ペパーミント油、スペアミント油、青葉アルコール、クローブつぼみ油、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア(cassia)、酢酸1-メンチル、セージ、オイゲノール、パセリ油、オキサノン、アルファ-イリゾン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、チモール、リナロール、CGAとして知られるシンナムアルデヒドグリセロールアセタール、およびそれらの混合物、ならびに冷却剤が含まれる。
【0085】
冷却剤は、多種多様な材料のいずれかである。そのような材料には、カルボキサミド、メントール、ケタール、ジオール、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの実施形態では、本組成物中の冷却剤は、「WS-3」として商業的に知られているN-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、「WS-23」として知られている、N-2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミドおよびこれらの混合物などのパラメンタンカルボキシアミド剤であってもよい。追加の冷却剤は、メントール、Takasago製TK-10として知られている3-1-メントキシプロパン-1,2-ジオール、Haarmann and Reimer製MGAとして知られているメントングリセロールアセタール、およびHaarmannとReimer製Frescolat(登録商標)として知られている乳酸メンチルからなる群から選択できる。本明細書で使用されるメントールおよびメンチルという用語は、これらの化合物の右旋性および左旋性異性体、ならびにそれらのラセミ混合物を含む。TK-10は、1984年7月10日に発行されたAmanoらの米国特許第4,459,425号に記載されている。WS-3およびその他の薬剤は、1979年1月23日に発行されたWatsonらの米国特許第4,136,163号に記載されている。これらの薬剤は、組成物の約0重量%~約50重量%のレベルで存在し得る。
【0086】
用途および適用。
本明細書に記載の組成物は、義歯接着剤として使用され、かつ/または粘膜組織、創傷、口腔粘膜などの湿潤組織上の生体接着剤として使用され得る。本接着剤組成物は、粘膜または湿組織への局所投与に適した1つ以上の治療活性物質を送達するために使用することができる。本明細書で使用される「治療活性物質」という語句は、口腔、創傷などの体の湿潤組織または粘膜表面から吸収されるか、または皮膚の表面に適用されると薬理学的に活性な薬剤を説明する。治療活性物質は、組成物の約0重量%~約70重量%のレベルで存在してもよい。
【0087】
本発明の組成物において有用な治療活性物質には、ヨウ素、スルホンアミド、ビスビグアニド、またはフェノールなどの抗菌剤、テトラサイクリン、ネオマイシン、カナマイシン、メトロニダゾール、またはクリンダマイシンなどの抗生物質、アスピリン、アセトアミノフェン、ナプロキセンおよびその塩、イブプロフェン、ケトロラク、フルルビプロフェン、インドメタシン、オイゲノール、またはヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム、またはフッ化ナトリウムなどの象牙質脱感作剤、リドカインやベンゾカインなどの麻酔薬、抗真菌剤、樟脳、ユーカリ油、香料、芳香料、または感覚剤(加温剤または冷却剤)などの芳香族化合物、およびベンズアルデヒドなどのアルデヒド誘導体、インスリン、ステロイド、および抗腫瘍薬、が含まれ得る。特定の治療形態では、最適な効果を得るために、同じ送達システムでのこれらの薬剤の組み合わせが有用である可能性があることが認識されている。したがって、例えば、抗菌剤と抗炎症剤を単一の送達システムに組み合わせて、組み合わせた有効性を提供することができる。
【0088】
記載されている各化学成分の量は、特に断りのない限り、市販の材料に通常存在する可能性のある溶媒を除いて、つまり活性化学ベースで示されている。ただし、特に明記しない限り、本明細書で言及する各化学物質または組成物は、異性体、副生成物、誘導体、および商業グレードに存在すると通常理解される他のそのような材料を含む可能性がある商業グレードの材料であると解釈されるべきである。
【0089】
上記の材料のいくつかは最終的な配合組成で相互作用する可能性があり、その結果、最終的な配合組成の成分は最初に添加されるものと異なる場合があることが知られている。例えば、金属イオンは他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動する可能性がある。本明細書に記載の技術の組成物をその意図された用途に使用する際に形成される生成物を含む、それにより形成される生成物は、簡単に説明できない場合がある。それにもかかわらず、すべてのそのような改変および反応生成物は、本明細書に記載の技術の範囲内に含まれる。本明細書に記載の技術は、上記の成分を混合することにより調製された組成物を包含する。
【実施例】
【0090】
本明細書で説明される技術は、以下の非限定的な例を参照することにより、よりよく理解され得る。
【0091】
一連の義歯接着剤組成物を調製し、試験する。義歯接着剤組成物例を、表1に示す以下の手順を使用して調製する。
【表1】
【0092】
義歯接着剤組成物例は、以下の試験方法を使用して試験される。
【0093】
Turbiscan機器を使用して視覚的および測定された分離安定性試験。義歯接着剤試料をシンチレーションバイアルに入れて、気泡を避けて上面が平らになるように、均一な方法でこれらの約3/4を充填する。バイアルを、一定の40℃の温度のオーブンに保管する。上部の油層の形成は、少なくとも15日間、可能であれば21日間、または必要に応じてそれ以上の時間間隔で測定する必要がある。油層は1mm以下、理想的には1~3mmの境界線が許容されるはずであり、3mmを超える油層の厚さは許容されない。逆に、周期的な層の厚さの測定を線と適合させることにより測定される分離速度は、0.04mm/日より低くなければならない。
【0094】
Lubrizolで開発されたバイブロ接着剤(引張)強度試験(15、16、17、および18に由来する)。この試験は非常に新しく、試験4~6に取って代わることができる。これは、一般的に義歯の製造に使用される2つのステンレス鋼またはLucitone 199アクリル樹脂からなる特別な固定具、pH7の生理食塩水リン酸緩衝液に沈められたプレートを備えたInstronマシンを使用して実行され:(a)既知量の義歯接着剤をプレートの間に入れ、通常は1mlのシリンジを使用して0.2ml入れ、(b)水浴を持ち上げて接着剤を覆うことにより、接着剤を水和させ、(c)上部プレートを下げて、接着剤の上部に接触させ、(d)機械をつり合わせ、(e)試験が開始され、プレートを定義された力まで圧縮し、1Hzで少なくとも5サイクル、最大荷重で振動させて咀しゃくをシミュレートし、5分間休ませ、(f)プレートを再び定義された力まで圧縮させ、引き離し、分離力を測定され、(g)最大1.5時間、または接着力が10Nを下回るまでサイクルを繰り返し、(h)得られたデータ(少なくとも3回)を平均化し、次いでプロットして、粘着力がどのように増加し、最大値に達し、その後減衰するかを示す曲線を生成できる。
【0095】
調製された組成物に加えて、いくつかの市販の義歯接着剤が比較の目的で含まれている。これらの市販の比較例は、14日後に上記のテスト手順を使用して各サンプルで測定された分離安定性とともに以下の表にまとめられている。接着力もまた、以下に報告されるピーク接着力で試験された。
【表2】
【0096】
結果は、市販製品の分離安定性が大幅に異なることを示している。市販の義歯接着剤製剤はまた、短期間(C5)から、開始時の力が強いより長い期間(C3)までの幅広い接着プロファイルを有する。これらの発見は、ほとんどのユーザーが知覚するもの、すなわち、C5は強力な保持を有するが、作用の持続時間は短く、C3は一般に長く強力な保持を有するが、亜鉛の存在が原因で味が悪くなる場合があるという主張に対応する。
【0097】
以下の義歯接着剤組成物例を準備し、試験した。以下の表は、実施例の配合組成、および14日後の分離安定性の結果を収集し、接着についてコメントし、まとめたものである。
【表3】
【0098】
さらに多くの義歯接着剤組成物例を調製し、試験する。次の表は、実施例の配合組成をまとめたものである。
【表4】
【0099】
全体として、(i)架橋ポリ(アクリル)酸ポリマー、例えばCarbopol 974と、カルボキシメチルセルロース成分、例えばNa CMCと、アルギン酸ナトリウム、例えばProtanal 8223 CRとの組み合わせ、または(ii)架橋ポリ(アクリル)酸ポリマー、例えばCarbopol 974と、ポリ(エチレン)オキシド、例えばPoly(ox.)WR-301との組み合わせを使用した実施例は、最高の接着曲線および分離安定性能を示した。
【0100】
上記で言及された文書のそれぞれは、優先権が主張される上記に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、いずれかの先行出願を含んで参照により本明細書に組み込まれる。いずれかの文書の言及は、そのような文書が先行技術としての資格を有すること、またはあらゆる管轄の当業者の一般知識を構成することの承認ではない。実施例を除き、または明示的に示されている場合を除き、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数などを指定するこの説明のすべての数値は、「約」という単語によって修正されるものと理解される。本明細書に記載の量、範囲、および比率の上限および下限は、独立して組み合わせることができることを理解されたい。同様に、本明細書に記載の技術の各要素の範囲および量は、他の要素のいずれかの範囲または量とともに使用することができる。
【0101】
以下に説明するように、上記の材料の分子量は、ポリスチレン標準を使用するGPC分析などの既知の方法を使用して決定された。ポリマーの分子量を決定する方法はよく知られている。方法は、例えば、(i)P.J.Flory,“Principles of star polymer Chemistry”,Cornell University Press 91953),Chapter VII,pp266-315または(ii)“Macromolecules,an Introduction to star polymer Science”,F.A.Bovey and F.H.Winslow,Editors,Academic Press(1979),pp296-312に記載される。本明細書で使用されるように、記載された材料の重量平均および数重量平均分子量は、希釈剤、不純物、結合していない星型ポリマー鎖および他の添加剤に関連するピークを除き、対象の材料に対応するピーク下の面積を積分することにより得られる。
【0102】
本明細書で使用される「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義の移行性用語「含む(comprising)」は、包括的または無制限であり、追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。しかし、本明細書の「含む(comprising)」の各列挙において、用語は、代替実施形態として、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という語句も包含することを意図しており、「からなる」は、指定されていない要素またはステップを除外し、「から本質的になる」は、考慮されている組成物または方法の基本的および新規の特性に実質的に影響を与えない追加の引用されていない要素またはステップを含めることを可能にする。すなわち「から本質的になる」は、検討中の組成物の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えない物質を含めることを可能にする。
【0103】
本明細書に記載の主題技術を説明する目的で特定の代表的な実施形態および詳細を示したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。これに関して、本明細書に記載される技術の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるものとする。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
義歯接着剤組成物であって、
(a)架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーと、
(b)(i)カルボキシメチルセルロース成分、(ii)アルギン酸ナトリウム、ポリ(エチレン)オキシド、もしくはこれらの組み合わせを含む接着促進成分、または(iii)(i)および(ii)の両方、を含む追加成分と、を含み、
成分(b)と成分(a)との重量比が5:1~1:5である、義歯接着剤組成物。
(項2)
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、カルボマーホモポリマー、カルボマーコポリマー、カルボマーインターポリマー、ポリカルボフィル、またはこれらの混合物である、上記項1に記載の義歯接着剤組成物。
(項3)
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NF、Carbopol(登録商標)974P NF、Carbopol Ultrez 10NF、Carbopol ETD 2020NF、Carbopol 980NF、Pemulen TR-1もしくはTR-2 NF、またはこれらの任意の組み合わせを含む、上記項1~2のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項4)
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)974P NFを含む、上記項1~3のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項5)
前記カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、上記項1~4のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項6)
前記カルボキシメチルセルロース成分が、置換度7、高い粘度グレード、粘度約3000cpsの粘度、滑らかな流動性、微細な粒径を有し、かつ少なくとも食品グレード基準で作られた、カルボキシメチルセルロースを含む、上記項1~5のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項7)
前記カルボキシメチルセルロース成分が、Aqualon(商標)7H3SF、Aqualon(商標)7HF、Aqualon(商標)7MF、Aqualon(商標)9M31XF、Aqualon(商標)CMC 9M8F PH、またはこれらの任意の組み合わせを含む、上記項1~6のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項8)
前記接着促進成分がアルギン酸ナトリウムを含む、上記項1~7のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項9)
前記接着促進成分がポリ(エチレン)オキシドを含む、上記項1~8のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項10)
前記組成物の残部が媒体を含み、前記媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物を含む、上記項1~9のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項11)
前記組成物が媒体をさらに含み、前記媒体が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物を含み、前記媒体が、約14~約50重量パーセントの量で存在する、上記項1~9のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項12)
前記組成物が、成分(a)と、(b)(i)と、(b)(ii)と、を含み、
(a)の前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)97
1P NFを含み、
(b)(i)の前記カルボキシメチルセルロース成分が、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、
(b)(ii)の前記接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ
前記組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、上記項1~11のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項13)
前記組成物が、成分(a)と、(b)(ii)と、を含み、
(a)の前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、Carbopol(登録商標)971P NFを含み、
(b)(ii)の前記接着促進成分が、ポリ(エチレン)オキシドを含み、かつ
前記組成物が、鉱油、ワセリン、またはこれらの混合物をさらに含む、上記項1~11のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項14)
前記架橋ポリ(アクリル)酸ポリマーが、全体組成中に約10~約14重量パーセントで存在するCarbopol(登録商標)974P NFを含み、
前記カルボキシメチルセルロース成分が、存在する場合、約18~約24重量パーセントで存在するカルボキシメチルセルロースナトリウムを含み、
前記接着促進成分が、アルギン酸ナトリウムまたはポリ(エチレン)オキシドを含み、約18~約45重量パーセントで存在し、
前記組成物が、約30~約34重量パーセントで存在するワセリンをさらに含み、
前記組成物が、約12~約16重量パーセントで存在する鉱油をさらに含む、上記項1~13のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。
(項15)
前記組成物がアルキルビニルエーテル-マレイン酸コポリマーおよびその塩を含まず、かつ
前記組成物が亜鉛を含まない、上記項1~14のいずれかに記載の義歯接着剤組成物。