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特許7214664タービンのための可変ガイド機構、排気ガス式過給機のためのタービン、及び排気ガス式過給機
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  • 特許-タービンのための可変ガイド機構、排気ガス式過給機のためのタービン、及び排気ガス式過給機 図1
  • 特許-タービンのための可変ガイド機構、排気ガス式過給機のためのタービン、及び排気ガス式過給機 図2
  • 特許-タービンのための可変ガイド機構、排気ガス式過給機のためのタービン、及び排気ガス式過給機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】タービンのための可変ガイド機構、排気ガス式過給機のためのタービン、及び排気ガス式過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20230123BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019570515
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018000388
(87)【国際公開番号】W WO2019034276
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】102017118794.4
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505448822
【氏名又は名称】アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】モデル,マックス
(72)【発明者】
【氏名】ワイス,マーク-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ,ウラジミール
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0260597(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102015215356(DE,A1)
【文献】国際公開第2016/199600(WO,A1)
【文献】特開2013-164040(JP,A)
【文献】特開2014-169640(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014203498(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンのための可変ガイド機構であって、複数枚のガイド翼(3)が取付けられた軸受リング(2)を備えており、前記ガイド翼(3)はガイド翼軸(5)を介して前記軸受リング(2)上に回転可能に支持されており、前記ガイド翼軸(5)に前記ガイド翼(3)の姿勢調節のための調節レバー部材(6)が装備されており、前記調節レバー部材(6)は該可変ガイド機構(1)の回転運動可能な回転リング(7)に係合可能に形成されている、タービンのための可変ガイド機構において、
前記可変ガイド機構(1)を前記タービンの排気流通部に組付けるための支持リング(9)を備え、
前記支持リング(9)は前記回転リング(7)を支持しており、
前記回転リング(7)は少なくとも1つの誘導要素(14)を介して径方向及び/又は軸方向に誘導されており、前記誘導要素(14)は前記支持リング(9)に取付けられており、前記誘導要素(14)はピンの形状に形成されている、ことを特徴とするタービンのための可変ガイド機構。
【請求項2】
前記支持リング(9)と前記回転リング(7)とが接触していることを特徴とする請求項1記載の可変ガイド機構。
【請求項3】
前記支持リング(9)に、前記誘導要素(14)が取付けられる少なくとも1つの支持要素(13)が付設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の可変ガイド機構。
【請求項4】
前記支持要素(13)は、前記支持リング(9)に付設されたスペーサー要素(17)を備えていることを特徴とする請求項3記載の可変ガイド機構。
【請求項5】
前記誘導要素(14)は前記支持リング(9)に、材料接合方式、及び/又は、締結方式、及び/又は、形状係合方式により結合されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の可変ガイド機構。
【請求項6】
前記誘導要素(14)は前記支持リング(9)に、圧入方式で結合されていることを特徴とする請求項5記載の可変ガイド機構。
【請求項7】
前記誘導要素(14)は少なくとも1つの段部(15)を備えていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の可変ガイド機構。
【請求項8】
前記支持リング(9)は変形加工により製作されたものであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の可変ガイド機構。
【請求項9】
排気ガス式過給機のためのタービンであって、前記排気ガス式過給機は、還流流路として構成された排気流通部と、前記排気流通部の羽根車チャンバの中に回転可能に収容されたタービン羽根車とを備え、前記排気流通部の中の前記タービン羽根車の上流側に可変ガイド機構(1)が配設されている、排気ガス式過給機のためのタービンにおいて、
前記可変ガイド機構(1)は請求項1乃至8の何れか1項記載のごとく構成されていることを特徴とする、排気ガス式過給機のためのタービン。
【請求項10】
請求項9記載のタービンを備えることを特徴とする排気ガス式過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載した種類のタービンのための可変ガイド機構、請求項9に記載した排気ガス式過給機のためのタービン、及び、請求項10に記載した排気ガス式過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、タービンのための可変ガイド機構が開示されている。この可変ガイド機構は、エンジンから排出されて、タービンの排気流通部に収容されているタービン羽根車へ流入する排気の、その流入時の流動状態を整える機構である。排気の流入時の流動状態を整えるために、この可変ガイド機構は複数枚の可変ガイド翼を備えており、それら複数枚のガイド翼は排気流通部に形成されたノズル部の中に配置される。ノズル部は、排気流通部に形成されたホイール室の上流側に設けられており、このホイール室に、タービン羽根車が回転可能に収容されている。この可変ガイド機構は、複数枚のガイド翼が取付けられた軸受リングを備えており、それらガイド翼は夫々にガイド翼軸を介して軸受リング上に回転可能に支持されている。基本的に、複数のガイド翼軸の夫々には調節レバー部材が装備され、それら調節レバー部材は回転リングに係合可能に形成されている。更に、回転リングは複数の調節レバー部材を収容する複数の開口部を備えている。
【0003】
回転リングは平板リング形状に形成されており、径方向及び軸方向に支持されている。この径方向及び軸方向の支持は、軸受リングにより行われている。回転リングと軸受リングとの間に働く摩擦力を低減するために、軸受リングに対向している回転リングの支持面に複数の開口部が形成されている。それら開口部を形成することにより、回転リングの表面と軸受リングの表面とが接触する面積を小さくし、それら表面の間に働く摩擦力に起因する摩擦損失を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第10 2014 203 498 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡素な手段を用いて摩擦損失を更に低減した可変ガイド機構を提供することにある。また更に、本発明の目的は、動作信頼性の高いタービンを提供すること、及び、効率を大幅に向上させた排気ガス式過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載した特徴を備えたタービンのための可変ガイド機構、請求項9に記載した特徴を備えたタービン、及び、請求項10に記載した特徴を備えた排気ガス式過給機により達成される。従属請求項は、本発明の好適且つ重要な構成上の特徴を備えた特に有利な実施の形態を記載したものである。
【0007】
本発明に係るタービンのための可変ガイド機構は、複数枚のガイド翼が取付けられた軸受リングを備えており、前記ガイド翼はガイド翼軸を介して前記軸受リング上に回転可能に支持されている。前記ガイド翼軸には前記ガイド翼の姿勢調節のための調節レバー部材が装備されており、前記調節レバー部材は該可変ガイド機構の回転運動可能な回転リングに係合可能に形成されている。該可変ガイド機構は該可変ガイド機構を前記タービンの排気流通部に組付けるための支持リングを備えており、前記支持リングは前記回転リングを支持している。本発明によれば、前記回転リングは少なくとも1つの誘導要素によって径方向及び/又は軸方向に誘導されており、前記誘導要素は前記支持リングに取付けられている。その利点とするところは、前記軸受リングの構造が簡素化されることにあり、この利点により、前記軸受リングが前記回転リングを直接的に支持する必要がなくなる。前記回転リングは前記支持リング上に支持されており、そして、前記支持リングは、通常は薄板材料から成る金属製リングに、通常は変形加工を施すことで製作されるため、容易に製作することができる。
【0008】
このように前記軸受リングの構造が簡素化されるため、前記軸受リングの製作材料の使用量が低減され、また、製作に手間がかからないことから製作に要する作業時間も短縮される。これらのことから、可変ガイド機構の低コスト化が達成される。
【0009】
前記支持リングと前記回転リングとが接触している構成とすることで、前記回転リングの誘導を確実なものとすることができる。更に、前記支持リングと接触することで軸方向の一方の側の支持が行われるため、前記誘導要素は、前記支持リングによって既に支持されている側とは反対側の、軸方向の他方の側の支持のみを確実に行える形状とするだけでよい。
【0010】
本発明に係る可変ガイド機構の別の1つの構成例によれば、前記支持リングに、前記誘導要素が取付けられる少なくとも1つの支持要素が付設されている。この構成とすることで、製作材料の使用量の低減を維持したまま、結果的に軽量な、前記支持リングを製作することができる。
【0011】
本発明に係る可変ガイド機構の別の1つの構成例によれば、前記支持要素は、前記支持リングに付設されたスペーサー要素を備えている。前記スペーサー要素を備えることで、前記支持要素の前記支持リングからの軸方向のスペースを、簡素な手段で保持することができる。前記支持要素は、摩擦力を低減するために、前記回転リングとの接触面積が可及的に小さなものとすべきである。このことを、前記支持要素と前記支持リングとが互いに異なる2つの軸平面に付設されるようにすることで達成しており、それらの間のスペースを、前記支持リングと前記支持要素との間に設ける前記スペーサー要素によって保持するようにしたものである。
【0012】
別の1つの構成例によれば、前記誘導要素は前記支持リングに、材料接合方式、及び/又は、締結方式、及び/又は、形状係合方式により結合されており、これによって信頼性の高い取付がなされている。
【0013】
前記可変ガイド機構をより低コストで製作できるものとするには、前記誘導要素が前記支持リングに、圧入方式で結合されているようにするとよい。
【0014】
別の1つの構成例によれば、前記誘導要素は少なくとも1つの段部を備えている。前記誘導要素は、回転体形状で且つ対称的形状のピンないしボルトの形状に形成されたものとすることが好ましく、また、そのピンないしボルトの外周部に、前記回転リングの軸方向の支持を行えるように形成した少なくとも1つの段部を備えたものとするのがよい。そうすることで、前記誘導要素と前記回転リングとの当接面積を可及的に小さくすることができる。この段部による軸方向の支持は、軸方向の一方の側を支持するものであり、なぜならば、この段部は、前記回転リングの軸方向の一方の側のストッパとして機能するように、前記誘導要素に形成されるものだからである。
【0015】
別の1つの構成例によれば、前記支持リングは変形加工により低コストで製作されたものである。
【0016】
本発明の別の1つの局面は、排気ガス式過給機のためのタービンに関するものであり、前記排気ガス式過給機は、貫流流路として構成された排気流通部と、前記排気流通部の羽根車チャンバの中に回転可能に収容されたタービン羽根車とを備えている。前記排気流通部の中の前記タービン羽根車の上流側に可変ガイド機構が配設されている。そして、前記可変ガイド機構は請求項1乃至8の何れか1項記載のごとく構成されている。かかるタービンの利点は、前記可変ガイド機構に働く摩擦力が低減されるために高い動作効率が得られることにある。
【0017】
また特に、本発明に係るタービンを備えて成る本発明に係る排気ガス式過給機は、摩擦損失が低減されているために極めて高効率であることを顕著な特質とする。そのため特に、本発明に係る排気ガス式過給機を車両に搭載されるエンジンに装備した場合には、その排気の排出量が低減されるという利点が得られる。なぜならば、当該排気ガス式過給機が高効率であるため、当該排気ガス式過給機とエンジンとが最適化された協働関係の中で機能するからである。
【0018】
本発明の更なる利点、特徴、及び細部構成については、以下に示す好適な例示となる実施の形態についての説明を参照し、また添付図面を参照することにより明らかとなる。以上の説明中で言及した様々な特徴及びそれら特徴の組合せ、並びに、添付図面に関連した以下の説明中で言及し、及び/または、図面中に示すところの、様々な特徴及びそれら特徴の組合せは、それら説明ないし図面に示した通りの組合せで利用し得るばかりでなく、それとは異なる組合せで利用することもでき、また、個々の特徴を単独で利用することも可能なものであって、そのように特徴を利用した場合でも本発明の範囲から逸脱するものではない。図面については下記の通りであり、互いに同等の構成要素ないし互いに機能的に同等の構成要素には同一の参照符号を付してある。明確性のため、一部の図においては参照符号が付いていない要素がある可能性があるが、これはその要素が同じように割り当てられなくなったことを意味しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る可変ガイド機構を斜め上方から見た斜視図である。
図2図1に示した可変ガイド機構の断面斜視図である。
図3図1に示した可変ガイド機構の支持リングを示した斜視図である。
図4図1に示した可変ガイド機構の軸受リングを斜め上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
排気ガス式過給機は、貫流流路として構成された排気流通部(不図示)を備えており、この排気流通部はエンジン(不図示)の排気系(不図示)の中に組み込まれている。ここでいうエンジンとは、例えばオットーエンジンやディーゼルエンジンなどである。更に、排気ガス式過給機は、貫流流路として構成された吸気流通部(不図示)と、軸受構造部(不図示)とを備えており、軸受構造部はエンジンの吸気系(不図示)の中に組み込まれている。
【0021】
排気ガス式過給機は、ロータアセンブリ(不図示)を備えており、このロータアセンブリは、燃焼用空気を吸入して圧縮するコンプレッサ羽根車(不図示)と、排気を膨張させるタービン羽根車(不図示)と、それら2つの羽根車を両者が一体回転するように互いに連結して、回転軸心を中心として回転する、シャフト(不図示)とを備えている。排気ガス式過給機の軸受構造部は、吸気流通部と排気流通部との間に配設されており、シャフトはこの軸受構造部において回転可能に支持されている。
【0022】
排気を排気流通部に導入するために、排気流通部には導入流路(不図示)が形成されている。この導入流路は、エンジンの運転中にタービン羽根車を回転させる排気の流動状態を整えるものである。タービン羽根車が回転するとシャフトを介してコンプレッサ羽根車も回転し、それによって燃焼用空気が吸入されて圧縮される。
【0023】
排気流通部の中の導入流路の下流側に、回転対称形の流れを作り出すための渦巻形流路(不図示)が形成されている。更に、この渦巻形流路は、導入流路とこの渦巻形流路の下流側のノズル部(不図示)とを接続する接続流路でもある。排気流通部は、ノズル部の下流側に形成されたホイール室(不図示)を備えている。このホイール室の中にタービン羽根車が回転可能に収容されている。排気流通部は更に、ホイール室の下流側に形成された排出流路(不図示)を備えている。この排出流路を介して排気流通部から排気が排出される。
【0024】
更に、排気流通部の中に、可変ガイド機構1が配設されている。この可変ガイド機構1は、エンジンが低負荷、低回転で運転されているときでも、また、高負荷、高回転で運転されているときでも、排気ガス式過給機の効率を可及的に高効率とし得るように、排気の流動状態を整えるものである。
【0025】
本発明に係る可変ガイド機構1は、図1に示したように構成されている。図2は本発明に係る可変ガイド機構1の断面斜視図である。可変ガイド機構1は、タービン羽根車の周囲を囲繞するリング形に構成されており、軸受リング2(図4参照)を備えている。軸受リング2には、流動状態を整えるための複数枚のガイド翼3が取付けられている。それらガイド翼3は回転可能に軸受リング2上に支持されている。
【0026】
軸受リング2は、複数枚のガイド翼3がノズル部の中に位置するようにして、排気流通部の中に配設される。軸受リング2に対向しているのは輪郭リング4であり、この輪郭リング4があることで、可変ガイド機構1を排気流通部の中にカセット方式で容易に組付けられるようになっている。また、輪郭リング4は、ガイド翼3を支持することにも寄与している。
【0027】
複数枚のガイド翼3が軸受リング2上に回転可能に支持されるようにするために、それらガイド翼3の各々が夫々にガイド翼軸5を備えている。ガイド翼軸5はガイド翼3に、それらが一体回転するように結合されている。また、ガイド翼軸5は支持孔部18に収容されることで、軸受リング2上に回転可能に支持されている。ガイド翼3を回転させるにはガイド翼軸5を回転させればよく、ガイド翼軸5を回転させるために、ガイド翼軸5はガイド翼3とは反対側の端部に調節レバー部材6を備えている。調節レバー部材6はガイド翼軸5に、それらが一体回転するように結合されている。
【0028】
複数枚のガイド翼3の回転運動は、回転リング7により発生される。回転リング7と軸受リング2とは、互いに同軸心的な位置関係をもって可変ガイド機構1に配設されている。回転リング7は、複数の調節レバー部材6が夫々に係合する複数の開口部8を備えている。各々の調節レバー部材6は、ガイド翼軸5に連結している端部とは反対側の端部が、対応する開口部8に係合可能な形状に形成されている。
【0029】
回転リング7を軸方向及び径方向に支持するために、可変ガイド機構1は支持リング9を備えている。この支持リング9は、可変ガイド機構1を排気流通部の中に装着するための部材でもある。即ち、本発明に係る実施形態では、支持リング9は回転リング7を支持するための部材として構成されており、そのためこの支持リング9は、可変ガイド機構1を排気流通部の中に装着するという本来の機能に加えて、回転リング7を支持する機能をも併せて提供するものとなっている。
【0030】
支持リング9は図3に斜視図で示した通りのものであり、この支持リング9は4つの結合手段10を介して軸受リング2に結合されている。それら結合手段10は、支持リング9を貫通して延在するネジ部材から成る形態のものであり、支持リング9に形成されている複数の固定用の開口11の夫々に収容されている。また、軸受リング2には、それら結合手段10が収容される複数の取付孔12が形成されている。尚、結合手段10は、例えば複数本のリベットから成る形態のものとしてもよく、軸受リング2と支持リング9とを互いに剛結合し得るものであるならば、考え得る限りのいかなる形態の結合手段であってもよい。
【0031】
支持リング9は複数の支持要素13を備えており、それら複数の支持要素13に、回転リング7を誘導するための複数の誘導要素14が取付けられている。本実施形態における誘導要素14は、支持リング9に固定して取付けられる誘導ピンの形状とされている。複数の支持要素13は、各々が円環の一部分を成す支持アーム形状とされている。かかる形状の複数の支持要素13に替えて、完全な1つの円環の形状の支持要素を用いることも可能ではあるが、ただし、そうした場合には、回転リング7と支持リング9との間に働く摩擦力が増大することになる。これは、回転リング7の軸方向の一方の側が支持リング9によって支持されているからである。
【0032】
回転リング7と支持リング9との間に働く摩擦力を低減するために、それら2つのリング7、9が互いに接触する領域を、比較的面積の小さな所定半径の領域、好ましくは線形である接触領域Bのみに限定することが好ましい。接触面積を、即ち接触領域Bの面積を、可及的に小さくするために、支持リング9に付設されている支持要素13はスペーサー要素17を備えている。このスペーサー要素17は、支持要素13の軸方向位置と支持リング9の軸方向位置とをずらす効果をもたらしている。
【0033】
支持要素13は、本実施形態では支持リング9に一体的に形成されており、そのため、例えば伸ばし加工などの変形加工を用いることで、低コストでの製作が可能となっている。同様に、支持リング9とは別体の部品として支持要素を形成した上で、その支持要素を支持リング9に接合するようにしてもよい。
【0034】
回転リング7は、複数の誘導要素14によって、径方向に支持されると共に軸方向における一方の側が支持されており、ここでいう軸方向の一方の側とは、回転リング7の、支持要素13とは反対の側である。複数の誘導要素14は支持リング9に固定して取付られている。図示した実施形態において、誘導要素14は、その縦断面が段付きであるボルトのごとき形状の要素として形成されている。誘導要素14の段部15が軸方向の誘導に寄与することにより、支持リング9による軸方向の誘導のための構造が簡素で低コストの構造となっている。尚、複数の誘導要素14は、支持リング9に形成された複数の取付孔16の夫々に取付けられている。
【0035】
不図示の別の実施形態では、回転リング7を径方向及び軸方向に支持するために、支持リング9上の固定位置に取付けた複数の誘導ローラを併用している。即ち、その実施形態は、回転リング7を径方向及び軸方向に確実に支持して誘導するために、更に複数の誘導ローラ(不図示)を備えている。尚、径方向の支持と軸方向の支持との各々を、いずれか1種類の誘導要素のみによって、即ち、図示した実施形態における誘導要素であるピン形状の誘導要素14、または、誘導ローラの形態の誘導要素の、いずれか一方のみによって行うようにしてもよい。また更に、それら2種類の誘導要素各々が、軸方向の支持と径方向の支持とのいずれか一方のみを行うようにしてもよい。
【0036】
誘導ローラは、ピン(不図示)と、このピンの軸心を中心として回転可能にこのピンに取付けられたスリーブ管(不図示)とを含む。スリーブ管には、例えば段部などを形成するのもよく、そうすれば、その段部によって、回転リング7の径方向の支持に加えて更に軸方向の少なくとも一方の側の支持をも行うことができる。
【0037】
誘導要素14を支持リング9に取付けるには、また、誘導ローラを支持リング9に取付けるには、例えばリベット方式、クランピング方式、ネジ止め方式、それに材料接合方式などの結合方法を用いて、それらを支持リング9に結合するとよい。また、誘導要素14ないし誘導ローラは、対称的な回転体形状のものとすることが好ましい。
図1
図2
図3
図4