(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】センサを備えた手術装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/46 20060101AFI20230123BHJP
A61F 2/38 20060101ALI20230123BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
A61F2/46
A61F2/38
A61B17/56
(21)【出願番号】P 2019570598
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 AU2018050209
(87)【国際公開番号】W WO2018161120
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】521450056
【氏名又は名称】ディーエスビー・シーオー・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マコーリフ
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・セビシュ-ニッツ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・フレンチ
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0094715(US,A1)
【文献】特表2014-531931(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0111790(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0199077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61F 2/38
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対する膝の手術中に外科医を補助するためのスペーサ装置であって、
軸を画定すると共に、外部表面および内部表面を有する横方向部材と、
前記横方向部材の前記内部表面のそれぞれの端部部分から軸方向かつ遠位に延びる、内向きに対向する各側壁部を備えた1対の側方部材とを含む
ハウジングであって、前記側壁部のそれぞれは、その遠位端部にあるいは前記遠位端部に向かって内側突出タブを備え、前記内部表面、前記側壁部および前記内側突出タブは、その間に1対のチャネルを画定する、ハウジング、
第1の端部部分および第2の端部部分を有する支持部分であって、前記第2の端部部分を前記ハウジングの前記側壁部の間に
少なくとも部分的に配置することができ、前記第1の端部部分が、第1の対の横方向突出部を含む、支持部分、ならびに
電子的力センサ
を備え、
前記電子的力センサ、前記横方向部材の前記外部表面、および/または前記支持部分の前記第1の端部が、
前記スペーサ装置が伸展した膝内に配置される場合には脛骨近位部骨切り面および大腿骨遠位部骨切り面の両方に当接し、かつ、前記スペーサ装置が屈曲した膝内に配置される場合には前記脛骨近位部骨切り面および大腿骨後面の両方に当接し、
前記支持部分の前記第2の端部部分が、前記側壁部の前記チャネルの対内に少なくとも部分的に配置されることおよび前記チャネルの対内で軸方向に摺動することが可能である第2の対の横方向突出部を備え、前記第2の対の横方向突出部は、前記ハウジングに対して前記支持部分の軸方向摺動を促進し、前記第1の対の横方向突出部と各側方部材との間に、1つまたは複数のスペーサ要素を内部に受けるための第1の空間および第2の空間を画定する、
スペーサ装置。
【請求項2】
前記電子的力センサが、前記横方向部材の前記外部表面、前記側方部材のうちの一方もしくは両方、前記第1の対の横方向突出部のうちの一方もしくは両方、および/または前記支持部分の前記第2の端部部分に、またはその中に設けられる、請求項1に記載のスペーサ装置。
【請求項3】
前記電子的力センサが、薄膜センサ素子、厚膜センサ素子、圧電センサ素子、歪みゲージセンサ素子、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるセンサ素子を備える、請求項1または2に記載のスペーサ装置。
【請求項4】
前記電子的力センサが、前記大腿骨遠位部骨切り面、前記大腿骨後面、および/または前記脛骨近位部骨切り面に接触する外側プレートを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項5】
前記電子的力センサが、1つまたは複数の伝達部材を備え、前記1つまたは複数の伝達部材は、与えられる力を関連付けられた前記センサ素子へと伝達する、請求項3または4に記載のスペーサ装置。
【請求項6】
前記電子的力センサが、前記センサ素子を内部に受けるための1つまたは複数の開口を有する支持部材をさらに備える、請求項3から5のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項7】
前記電子的力センサが、前記伝達部材、前記支持部材、および/または前記外側プレートを受ける基部部材をさらに備える、請求項4から6のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項8】
前記基部部材が、前記横方向部材の前記外部表面のチャネルの内部に設けられる、請求項7に記載のスペーサ装置。
【請求項9】
前記電子的力センサが、前記スペーサ装置の外側および内側のそれぞれに及ぼされる第1の力および第2の力を測定するように構成される、請求項1から8のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項10】
前記電子的力センサが、前記スペーサ装置の前側および後側のそれぞれに及ぼされる第3の力および第4の力を測定するように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項11】
前記電子的力センサが、前記電子的力センサによって測定された力を表示するように構成されたディスプレイを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項12】
前記1つまたは複数のスペーサ要素をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項13】
前記大腿骨後面が、骨切りされた大腿骨後面であるか、または骨切りされた大腿骨後面を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項14】
前記ハウジングに対する前記支持部分の軸方向摺動は、前記横方向部材の前記内部表面と前記第2の端部部分との間に、1つまたは複数のスペーサ要素を内部に受けるための内部空間をさらに画定する、請求項1から13のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項15】
前記大腿骨遠位部骨切り面、前記大腿骨後面、および/または前記脛骨近位部骨切り面の、必要とされるさらなる骨切りの程度を評価するためのガイド部材をさらに含む、請求項1から
14のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項16】
前記ガイド部材が、前記大腿骨遠位部骨切り面、前記大腿骨後面、および/または前記脛骨近位部骨切り面をさらに骨切りするために、骨切りされた大腿骨および/または骨切りされた脛骨に骨切り部材を配置することを容易にするためのものである、請求項
15に記載のスペーサ装置。
【請求項17】
前記ガイド部材が、前記スペーサ装置に可逆的に係合する係合部材、ガイド部分、および前記係合部材と前記ガイド部分を連結するための延出可能アームを備える、請求項
15または
16に記載のスペーサ装置。
【請求項18】
前記ハウジングは第1の部分および第2の部分を有し、前記第1の部分および前記第2の部分は、前記第2の部分に対する前記第1の部分の単独運動を可能とするように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項19】
前記第1の部分および前記第2の部分により、前記第1の部分を前記第2の部分に対して軸方向および/または矢状方向に動かすことが可能になる、請求項
18に記載のスペーサ装置。
【請求項20】
前記第1の部分および前記第2の部分が、摺動可能に互いに連結されている、請求項
18または19に記載のスペーサ装置。
【請求項21】
前記ハウジングは、その前記横方向部材から軸方向かつ遠位に延びる軸方向突出部をさらに備え、前記支持部分の前記第2の端部部分は、内部に前記軸方向突出部を摺動可能に受けるための中央チャネルを備える、請求項1から20のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項22】
前記支持部分の前記第1の端部と可逆的に係合された支え部分をさらに備える、請求項1から21のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項23】
前十字靭帯および/または後十字靭帯を内部に受けるための、前記ハウジングおよび前記支持部分に沿って軸方向に延びる、中央後方に位置決めされたチャネルをさらに備える、請求項1から22のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項24】
前記ハウジングは側面が開いている、請求項1から23のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項25】
前記支持部分はI字形状である、請求項1から24のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項26】
患者に対する膝の手術中に外科医を補助するための手術システムであって、
(a)
軸を画定すると共に、外部表面および内部表面を有する横方向部材を含むハウジングであって、
前記横方向部材の前記内部表面のそれぞれの端部部分から軸方向かつ遠位に延びる、内向きに対向する各側壁部を備えた1対の側方部材をさらに含
み、前記側壁部のそれぞれは、その遠位端部にあるいは前記遠位端部に向かって内側突出タブを備え、前記内部表面、前記側壁部および前記内側突出タブは、その間に1対のチャネルを画定する、ハウジングと、(b)第1の端部部分および第2の端部部分を有する支持部分であって、前記第2の端部部分を前記ハウジングの前記側壁部の間に
少なくとも部分的に配置することができ、前記第1の端部部分が、第1の対の横方向突出部を含む、支持部分と、(c)電子的力センサとを含む、スペーサ装置、ならびに
1つまたは複数のスペーサ要素
を備え、
前記電子的力センサ、前記横方向部材の前記外部表面、および/または前記支持部分の前記第1の端部が、
前記スペーサ装置が伸展した膝内に配置される場合には脛骨近位部骨切り面および大腿骨遠位部骨切り面の両方に当接し、かつ、前記スペーサ装置が屈曲した膝内に配置される場合には前記脛骨近位部骨切り面および大腿骨後面の両方に当接し、
前記支持部分の前記第2の端部部分が、前記側壁部の前記チャネルの対内に少なくとも部分的に配置されることおよび前記チャネルの対内で軸方向に摺動することが可能である第2の対の横方向突出部を備え、前記第2の対の横方向突出部は、前記ハウジングに対して前記支持部分の摺動を促進し、前記第1の対の横方向突出部と各側方部材との間に、前記1つまたは複数のスペーサ要素を内部に受けるための第1の空間および第2の空間を画定する、
手術システム。
【請求項27】
前記スペーサ装置が、請求項1から
25のいずれか一項に記載のものである、請求項
26に記載の手術システム。
【請求項28】
前記大腿骨後面が、骨切りされた大腿骨後面であるか、または骨切りされた大腿骨後面を含む、請求項
26または
27に記載の手術システム。
【請求項29】
前記大腿骨遠位部骨切り面、前記大腿骨後面、および/または前記脛骨近位部骨切り面の、必要とされるさらなる骨切りの程度を評価するためのガイド部材をさらに含む、請求項
26から
28のいずれか一項に記載の手術システム。
【請求項30】
前記ガイド部材が、前記大腿骨遠位部骨切り面、前記大腿骨後面、および/または前記脛骨近位部骨切り面をさらに骨切りするために、骨切りされた大腿骨および/または骨切りされた脛骨に骨切り部材を配置することを容易にするためのものである、請求項
29に記載の手術システム。
【請求項31】
前記ガイド部材が、前記スペーサ装置に可逆的に係合する係合部材、ガイド部分、および前記係合部材と前記ガイド部分を連結するための延出可能アームを備える、請求項
29または
30に記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝の手術において使用される装置に関する。詳細には、本発明は、骨の変位、および骨に及ぼされる1つまたは複数の力を電子的力センサによって測定することにより、最適に軟部組織のバランスを取ることを容易にする、対象に対する膝の手術、詳細には人工膝関節全置換術において使用されるスペーサ装置を対象とする。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節全置換手術は、ますます一般的に、かつ高額になってきている手技である。好結果は、主として、膝関節の屈曲ギャップと伸展ギャップを一致させられることにかかっている。正しいバランスは、適当な力が膝関節の内側面および外側面に印加されていること、ならびに膝関節の両側の軟部組織の可動性(excursion)の両方によって反映される。膝の置換手術後に軟部組織の過度の可動性が実現された場合、これらの概念が重要になる。このために、非動的状況では均等に分散することができていた力により、運動の動的部分中に、均等でない力が膝関節置換プロテーゼに印加される場合がある。同様に、軟部組織の可動性が過度に欠如している(すなわちきつい)場合、動的運動中に関節の片側に力が集中する恐れがある。別法として、膝関節内部の各力が、等しいかまたは最小限に異なっているが、小さすぎるかまたは大きすぎる場合がある。
【0003】
現在では、ロボット手術システム、コンピュータ支援手術、または力記録センサ(force registering sensor)の使用を伴うものなど、人工膝関節全置換手術においてバランスの取れた膝を実現する手段が存在している。通常、これらのシステムは複雑で高額である。さらに、こうしたシステムは、一般に、(a)膝の内側と外側の両方における屈曲ギャップおよび伸展ギャップの総幅を測定すること、ならびに(b)軟部組織を緊張下においたとき、膝関節の内側および外側に存在する力を測定することのどちらか一方しか実現しない。したがって、人工膝関節全置換手術においてこれらの目標の両方を達成するための、単純で、安価で、再現性のある手段が依然として求められている。上記のように、このことは、人工膝関節全置換術後に患者の最適な結果を実現するために重要であり、かつ手術を実施する比較的安価で費用対効果の大きい手段を提供することにより、医療制度全般にとって重要である。医療を提供するコストが上昇しているので、より複雑で高額なシステムは、費用対効果の面では必要な手術結果を実現しない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、概して、患者の膝の手術中、特にTKR中に外科医を補助するためのスペーサ装置を対象とする。スペーサ装置は、安価であり、簡単に製作されることが好ましい。スペーサ装置を使用して、膝の置換手術中に内側および/または外側の屈曲ギャップおよび/または伸展ギャップの幅を測定するだけでなく、屈曲時および/または伸展時の内側、外側、前側、および/または後側の力も評価することができる。これにより、膝関節の軟部組織エンベロープを適当に緊張させることが可能になり得る。本発明は、前記スペーサ装置を含む手術システム、および膝の手術においてスペーサ装置を使用する方法もさらに対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、患者に対する膝の手術中に外科医を補助するためのスペーサ装置であって、
外部表面および内部表面を有する横方向部材と、内向きに対向する各側壁部を備えた1対の側方部材とを含むハウジング、
第1の端部部分および第2の端部部分を有する支持部分であって、最初は第2の端部部分をハウジングの側壁部の間に配置することができ、第1の端部部分が、第1の対の横方向突出部を含む、支持部分、ならびに
電子的力センサを備え、
電子的力センサ、横方向部材の外部表面、および/または支持部分の第1の端部が、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面に隣接して位置決めされることになり、
支持部分が、ハウジングに対して軸方向に摺動して、第1の対の横方向突出部と各側方部材との間に、1つまたは複数のスペーサ要素を内部に受けるための第1の空間および第2の空間を画定するように構成される、スペーサ装置を対象とする。
【0006】
一実施形態では、電子的力センサは、横方向部材の外部表面、側方部材のうちの一方もしくは両方、第1の対の横方向突出部のうちの一方もしくは両方、および/または支持部分の第2の端部部分に、またはその中に設けられる。好ましい一実施形態では、電子的力センサは、横方向部材の外部表面に、またはその中に設けられる。
【0007】
一実施形態では、スペーサ装置は、1つまたは複数のスペーサ要素をさらに備える。
【0008】
電子的力センサは、薄膜センサ素子、厚膜センサ素子、圧電センサ素子、歪みゲージセンサ素子、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるセンサ素子を備えることが適当である。センサ素子は、薄膜センサ素子であるか、または薄膜センサ素子を備えることが好ましい。
【0009】
特定の実施形態では、電子的力センサは、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面に接触する外側プレートを備える。
【0010】
一実施形態では、電子的力センサは、1つまたは複数の伝達部材を備え、この1つまたは複数の伝達部材は、そこに与えられる力をそれらに関連付けられたセンサ素子へと伝達する。
【0011】
一実施形態では、電子的力センサは、センサ素子を内部に受けるための1つまたは複数の開口を有する支持部材をさらに備える。
【0012】
一実施形態では、電子的力センサは、伝達部材、支持部材、および/または外側プレートをそこに受ける基部部材をさらに備える。好ましい一実施形態では、基部部材は、横方向部材の外部表面のチャネルの内部に設けられる。
【0013】
電子的力センサは、電子的力センサによって測定された力を表示するように構成されたディスプレイを含むことが適当である。
【0014】
一実施形態では、電子的力センサは、スペーサ装置の外側および内側のそれぞれに及ぼされる第1の力および第2の力を測定するように構成される。別の実施形態では、電子的力センサは、スペーサ装置の前側および後側のそれぞれに及ぼされる第3の力および第4の力を測定するように構成される。
【0015】
大腿骨後面は、骨切りされた大腿骨後面であるか、または骨切りされた大腿骨後面を含むことが適当である。
【0016】
一実施形態では、スペーサ装置は、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面の、必要とされるさらなる骨切りの程度を評価するためのガイド部材をさらに含む。ガイド部材は、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面をさらに骨切りするために、骨切りされた大腿骨および/または骨切りされた脛骨に骨切り部材を配置することを容易にするためのものであることが適当である。ガイド部材は、スペーサ装置に可逆的に係合する係合部材、ガイド部分、および係合部材とガイド部分を連結するための延出可能アームを備えることが好ましい。
【0017】
この態様のスペーサ装置は、第3の態様の方法において使用されることが適当である。
【0018】
ハウジングは、第1の部分および第2の部分を備え、第1の部分および第2の部分により、第1の部分を第2の部分に対して軸方向および/または矢状方向に動かすことが可能になるのが適当である。第1の部分および第2の部分は、摺動可能に互いに連結されていることが好ましい。
【0019】
第2の態様では、本発明は、患者に対する膝の手術中に外科医を補助するための手術システムであって、
(a)外部表面および内部表面を有する横方向部材を含むハウジングであって、内向きに対向する各側壁部を備えた1対の側方部材をさらに含む、ハウジングと、(b)第1の端部部分および第2の端部部分を有する支持部分であって、最初は第2の端部部分をハウジングの側壁部の間に配置することができ、第1の端部部分が、第1の対の横方向突出部を含む、支持部分と、(c)電子的力センサとを含む、スペーサ装置、ならびに
1つまたは複数のスペーサ要素を備え、
電子的力センサ、横方向部材の外部表面、および/または支持部分の第1の端部が、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面に隣接して位置決めされることになり、
支持部分が、ハウジングに対して摺動して、第1の対の横方向突出部と各側方部材との間に、1つまたは複数のスペーサ要素を内部に受けるための第1の空間および第2の空間を画定するように構成される、手術システムを提供する。
【0020】
一実施形態では、電子的力センサは、横方向部材の外部表面、側方部材のうちの一方もしくは両方、第1の対の横方向突出部のうちの一方もしくは両方、および/または支持部分の第2の端部部分に、またはその中に設けられる。特定の一実施形態では、電子的力センサは、横方向部材の外部表面に、またはその中に設けられる。
【0021】
電子的力センサは、電子的力センサによって測定された力を表示するように構成されたディスプレイを含むことが適当である。
【0022】
一実施形態では、電子的力センサは、スペーサ装置の外側および内側のそれぞれに及ぼされる第1の力および第2の力を測定するように構成される。別の実施形態では、電子的力センサは、スペーサ装置の前側および後側のそれぞれに及ぼされる第3の力および第4の力を測定するように構成される。
【0023】
第1の態様および第2の態様に関連して、第2の端部は、第2の対の横方向突出部を備えることが適当である。
【0024】
第1の態様および第2の態様に関しては、側壁部のそれぞれは、1つまたは複数のスペーサ要素に接触する内側突出部をその遠位端部に備えることが適当である。
【0025】
第1の態様および第2の態様の本発明においては、大腿骨後面は、骨切りされた大腿骨後面であるか、または骨切りされた大腿骨後面を含むことが適当である。
【0026】
一実施形態では、手術システムは、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面の、必要とされるさらなる骨切りの程度を評価するためのガイド部材をさらに含む。ガイド部材は、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面をさらに骨切りするために、骨切りされた大腿骨および/または骨切りされた脛骨に骨切り部材を配置することを容易にするためのものであることが適当である。ガイド部材は、スペーサ装置に可逆的に係合する係合部材、ガイド部分、および係合部材とガイド部分を連結するための延出可能アームを備えることが好ましい。
【0027】
この態様のシステムは、第3の態様の方法において使用されることが適当である。
【0028】
この態様のスペーサ装置は、第1の態様に記載のものであることが適当である。
【0029】
第3の態様では、本発明は、患者に対する膝の手術中に外科医を補助する方法であって、
患者の膝関節の骨切りされた大腿骨および骨切りされた脛骨に隣接させてスペーサ装置を位置決めするステップであって、スペーサ装置が、(a)外部表面および内部表面を有する横方向部材を含むハウジングであって、内向きに対向する各側壁部を備えた1対の側方部材をさらに含む、ハウジングと、(b)第1の端部部分および第2の端部部分を有する支持部分であって、最初は第2の端部部分をハウジングの側壁部の間に配置することができ、第1の端部部分が、第1の対の横方向突出部を含む、支持部分と、(c)電子的力センサとを備え、電子的力センサ、横方向部材の外部表面、および/または支持部分の第1の端部が、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面に隣接して位置決めされることになる、ステップ、
支持部分をハウジングに対して摺動させて、第1の対の横方向突出部と各側方部材との間に第1の空間および第2の空間を画定するステップ、ならびに
第1のおよび/または第2の空間に1つまたは複数のスペーサ要素を挿入するステップを含む、方法を提供する。
【0030】
一実施形態では、スペーサ装置を位置決めするステップは、
(a)膝関節が伸展位置にあるとき、大腿骨遠位部骨切り面および脛骨近位部骨切り面に隣接するようにスペーサ装置を位置決めし、かつ/または
(b)膝関節が屈曲位置にあるとき、大腿骨後面および脛骨近位部骨切り面に隣接するようにスペーサ装置を位置決めするステップを含む。
【0031】
大腿骨後面は、骨切りされた大腿骨後面であるか、または骨切りされた大腿骨後面を含むことが適当である。
【0032】
特定の実施形態では、この方法は、骨切りされた大腿骨と骨切りされた脛骨との間の伸展ギャップおよび/または屈曲ギャップを測定するステップをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、この方法は、電子的力センサを使用して、骨切りされた大腿骨および骨切りされた脛骨がスペーサ装置に及ぼす力を測定するステップをさらに含む。
【0034】
一実施形態では、電子的力センサを使用して、スペーサ装置の外側および内側のそれぞれに及ぼされる第1の力および第2の力が測定される。別の実施形態では、電子的力センサを使用して、スペーサ装置の前側および後側のそれぞれに及ぼされる第3の力および第4の力が測定される。
【0035】
この態様の方法は、
(a)伸展ギャップおよび/もしくは屈曲ギャップの測定値、ならびに/または
(b)測定された力
を使用して、患者に対する膝の手術に関する方針を決定するステップをさらに含むことが適当である。方針には、大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/または脛骨近位部骨切り面のさらなる骨切りが含まれることが好ましい。より好ましくは、
(a)伸展ギャップおよび屈曲ギャップの測定値が実質的に等しくないとき、
(b)伸展ギャップの外側部分の測定値が、伸展ギャップの内側部分と実質的に等しくないとき、
(c)屈曲ギャップの外側部分の測定値が、屈曲ギャップの内側部分と実質的に等しくないとき、
(d)伸展位置での力の測定値が、屈曲位置での力と実質的に等しくないとき、ならびに/または
(d)伸展位置および/もしくは屈曲位置における第1の力および第2の力が実質的に等しくないとき、さらなる骨切りが方針となる。
【0036】
一実施形態では、この態様の方法は、スペーサ装置に連結されるガイド部材を使用して、(a)大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/もしくは脛骨近位部骨切り面の、必要とされるさらなる骨切りの程度を評価し、かつ/または(b)大腿骨遠位部骨切り面、大腿骨後面、および/もしくは脛骨近位部骨切り面をさらに骨切りするために、骨切りされた大腿骨および/もしくは骨切りされた脛骨に骨切り部材を配置することを容易にする、ステップをさらに含む。ガイド部材は、スペーサ装置に可逆的に係合する係合部材、ガイド部分、および係合部材とガイド部分とを連結するための延出可能アームを備えることが好ましい。
【0037】
スペーサ装置は、第1の態様に記載のものであることが適当である。
【0038】
不定冠詞「a」および「an」は、単数の不定冠詞として、または不定冠詞が指す2つ以上もしくは単一でない対象を除外するものとして読まれるべきではないことが理解されよう。
【0039】
本明細書において、文脈からそうでないことが要求されていなければ、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含んでいる(comprising)」という語は、記載された整数または整数の群の包含を意味するが、記載されていない任意の他の整数または整数の群の除外を意味するものではないことを理解されたい。
【0040】
本発明を容易に理解することができ、実際的な作用へと具体化できるように、次に添付の図を参照する。各図では、同様の参照符号を使用して同様の要素が示してある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】沈胴位置におけるスペーサ装置の一実施形態の斜視図である。
【
図2】牽引位置における
図1のスペーサ装置の別の斜視図である。
【
図3】伸展された膝の内部に挿入された、力センサと一緒になった
図1のスペーサ装置の斜視図である。
【
図4】
図1のスペーサ装置とともに使用するための骨切りガイド部材の斜視図である。
【
図5】沈胴位置におけるスペーサ装置の別の実施形態の斜視図である。
【
図7】スペーサ装置の別の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、伸展時および/または屈曲時の膝関節の適当な軟部組織バランスを決定するために、手術中、特にTKR/TKA中に使用されるスペーサ装置に関する。本明細書に記載のスペーサ装置は、TKR/TKAに使用されるのに特に適しているが、本発明は、あらゆるタイプの関節(たとえば肘、肩、手首、および指)、ならびに正確にギャップのバランスを取り、関節をアライメントし、かつ/または軟部組織のバランスを取ることが必要とされるそれらの置換手術に、概して適用可能である。
【0043】
適当に軟部組織のバランスを取るには、大腿骨およびその対応する脛骨を外科医が決定した所望のアライメントで配置するとき、膝の骨を囲みかつ/または相互連結する各軟部組織を、互いに対してほぼ等しいかまたは同等の緊張度で配置することが必要とされる。この緊張度は、静止時の元々の膝におけるこれら軟部組織の生理的緊張度とほぼ等しいかまたは同様であることが好ましい。膝の骨を囲み、かつ/または相互連結する軟部組織の非限定的な例には、内側側副靭帯および外側側副靭帯、前十字靭帯および後十字靭帯、後内側および後外側の靭帯構造、ならびに後方関節包が含まれる。
【0044】
本明細書に記載の原理は、ヒト用の手術装置を提供する方法をベースとするが、本発明は、限定はされないが、家畜などの他の哺乳動物(たとえばウシ、ヒツジ)、興行用の動物(たとえば競走馬)、および家庭内のペット(たとえばイヌ、ネコ)にも適用することができる。
【0045】
特定の実施形態によるスペーサ装置100は、TKA中に使用されて、大腿骨遠位部801の骨切り面802と脛骨近位部901の骨切り面902との間に適当な内側空間および/または外側空間を与えることにより、屈曲時および/または伸展時に膝関節700を厳密にリアライメントし、的確に軟部組織を緊張させるように構成される。このように、スペーサ装置100は、適当なサイズの膝関節置換プロテーゼが膝関節700の中に配置された後、膝関節700にわたって適当な力が加えられることになるように設計される。さらに、特定の実施形態では、スペーサ装置100は、特定の患者の置換インプラントにとって適切な空間が存在すること、ならびに脛骨近位部901の骨切り面と大腿骨遠位部801の骨切り面が冠状面および矢状面において実質的に平行であることを確実にするように構成される。
【0046】
上記のように、本発明の種々の実施形態は、TKA中に外科医を補助するためのスペーサ装置を提供する。各図、具体的には
図1を参照すると、TKA中に外科医を補助するためのスペーサ装置100が示してあり、このシステムは、概して、縦方向軸aを画定する、側面が開いたハウジング110と、その内部に設けられるI字形状の内側支持部分120とを含み、それにより、内側支持部分120は、ハウジング110に対して軸方向に摺動することができるように構成される。
【0047】
提示されている実施形態では、ハウジング110は、上面111aおよび下面111bを有する実質的に平坦な上壁部111を含む。
図1から観察できるように、上面111aは、大腿骨遠位部骨切り面802が上面111aに印加する力を受けるように、前記大腿骨遠位部骨切り面802に当接するかまたは受けるのに適した寸法になっている。ハウジング110は、まっすぐに対向する1対の側壁部112a~bをさらに備える。これら側壁部112a~bのそれぞれは、上壁部111の下面111bの各端部部分から軸方向かつ遠位に延在して、内側支持部分120を内部に受けるための1対のチャネル114a~bを形成する。各側壁部112a~bは、その遠位端部にそれぞれの内側突出タブ113a~bをさらに含み、この内側突出タブ113a~bは、ハウジング110の内部に配置された内側支持部分120を保持する助けとなる。
【0048】
図1~
図3に示すように、ハウジング110は、ほぼ等しい寸法の第1の部分110aおよび第2の部分110bから構成され、第1の部分110aおよび第2の部分110bは、第1の部分110aにはチャネル119aを備え、第2の部分110bには対向する突出部119bを備えるほぞ継ぎ連結部により、上壁部111の中央部分において可逆的に互いに係合しており、チャネル119aは、前記突出部119aを内部に受けるのに適した寸法になっている。玉継手や当技術分野で知られている他の手段など、第1の部分110aおよび第2の部分110bを可逆的または摺動可能に係合させる他の手段も企図される。このように、第1の部分110aおよび第2の部分110bのそれぞれは、上壁部111の一部と、側壁部112a~bのうちの一方とを含む。この構成により、ハウジング110の第1の部分110aおよび第2の部分110bは、第1の部分110aを第2の部分110bに対して単独で軸方向および/または半径方向に牽引することを可能にするだけではなく、膝関節700の冠状面および/または矢状面において、ハウジング110の第1の部分110aおよび第2の部分110bを動かすことも可能にするように構成される。第1の部分110aおよび第2の部分110bのそれぞれが牽引されるとき、少なくとも一部には、突出部119bおよびチャネル119aの各側壁部が互いに当接することにより、ハウジング110の安定性が保たれる。また、第1の部分110aおよび第2の部分110bの安定的な牽引を維持するために、必要に応じて、追加の支持要素(図示せず)が内部空間160に差し入れられ、または配置されてもよい。
【0049】
しかし、第1の部分110aを第2の部分110bに対してこのように移動または牽引することなくスペーサ装置100が利用される場合があることが、当業者には理解されよう。したがって、代替の実施形態では、スペーサ装置100のハウジング110は、単一の一体型構造である。
【0050】
内側支持部分120は、中央部分123によって連結される第1の端部部分121と第2の端部部分122とを有する。第2の端部部分122および中央部分123は、少なくとも部分的にはハウジング110の側壁部112a~bの間に設けられ、第2の端部部分122が半径方向に延在する第2の対のタブ125a~bを有することによってこの位置に保持されており、これら半径方向に延在する第2の対のタブ125a~bは、スペーサ装置100が牽引されると(すなわち、内側支持部分120がハウジング110に対して軸方向に動くと)、ハウジング110の、対向する各内側突出タブ113a~bに接触することができる。内側支持部分120の第1の端部部分121も、半径方向に延在する第1の対のタブ124a~bを含む。
図1から観察できるように、半径方向に延在する第1の対のタブ124a~bの寸法は、半径方向に延在する第2の対のタブ125a~bよりも長い。このために、半径方向に延在する第1の対のタブ124a~bは、使用する際、脛骨近位部骨切り面902に隣接または当接して位置決めされるように構成される。
【0051】
スペーサ装置100は、好ましくは
図1~
図3に提示した向きとは逆の向きでも機能し、したがって、別法として、ハウジング110の上面111aは脛骨近位部骨切り面902に隣接して位置決めされ、内側支持部分120の第1の端部部分121は大腿骨遠位部骨切り面802に隣接して位置決めされることが理解されよう。
【0052】
本明細書に記載のスペーサ装置100は、膝関節700が完全に伸展している(すなわち約180度の)ときに使用されるのが適当である。しかし、たとえば四肢の既存の疾患または変形の存在により、これがすべての患者において可能でない、または適していない場合があることが、当業者には理解されよう。一例として、膝の屈曲変形または拘縮がある患者は、膝を完全にまっすぐにする、または伸展させることが物理的に不可能な場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に提示されるスペーサ装置100は、膝関節700が完全に伸展していないときに使用される。
【0053】
本明細書において使用される用語「ほぼ」および「約」は、本明細書に挙げられる数値に関連する許容差または差異を示す。こうした許容差および差異の程度は、当業者にはよく理解されている。通常、こうした許容差および差異により、本明細書に記載の装置および方法の構造、機能、および/または実装形態は損なわれない。
【0054】
スペーサ装置100を挿入する前に、膝関節700を露出させ、大腿骨遠位部801および脛骨近位部901を骨切りし、それにより、
図3に示すように、膝関節700の適当な伸展ギャップ400を確立することが適当である。好ましくは、脛骨近位部901および/または大腿骨遠位部801を骨切りするには、たとえば伸展時および/または屈曲時のアライメントされた膝の3次元モデルにおいて、ジョイントラインを決定することが必要になる。容易に理解されるように、伸展された膝の大腿骨外顆および大腿骨内顆と、脛骨の上方表面との係合により、ジョイントラインが確立される。したがって、このような決定は、少なくとも部分的には、内顆の遠位部分、外顆の遠位部分、脛骨内側プラトーの近位部分、脛骨外側プラトーの近位部分、外側半月板の中央部分、および内側半月板の中央部分を含むがこれらに限定はされない、1つまたは複数の解剖学的な指標からなされ得る。
【0055】
次いで、
図3に示すように、沈胴した二部スペーサ装置100が伸展ギャップ400に挿入される。ほとんどの初回膝関節置換における伸展ギャップ400は約17mm~約22mmになり、より具体的には約19mm~約20mmになるが、これは当技術分野で知られている様々な膝手術システムの間で変動し得ることが理解されよう。したがって、伸展および/または屈曲した膝の内部に収まるように沈胴するスペーサ装置100の厳密な寸法は、使用される特定の膝手術システムに依存し得る。さらに、スペーサ装置100の寸法は、膝関節再置換手術に使用される場合にも変動し得るはずである。しかし、挿入を簡単にするために、スペーサ装置100の高さは、伸展ギャップ400および/または屈曲ギャップ(図示せず)よりも一般に小さくなる。したがって、本発明の特定の実施形態では、スペーサ装置100の高さは、大腿骨遠位部骨切り面802と脛骨近位部骨切り面との間の伸展ギャップ400に挿入することを可能にするように、沈胴位置にあるとき、約10mm~約16mm(たとえば約10mm、10.5mm、11mm、11.5mm、12mm、12.5mm、13mm、13.5mm、14mm、14.5mm、15mm、15.5mm、16mm、およびこれらの間の任意の範囲)である。同等の高さ寸法(たとえば沈胴位置において約10mm~約16mm)のスペーサ装置100が、屈曲時に膝関節700の屈曲ギャップ(図示せず)に挿入するのにも適しているはずであることは、当業者には明らかであろう。
【0056】
特定の一実施形態では、ほぞ継ぎ連結部、または当技術分野で知られている他の係合部材などを介して、内側支持部分120の第1の端部121に支え部分(foot portion)(図示せず)を可逆的に取り付け、または係合させることなどにより、スペーサ装置100の高さを調節することができる。この構成により、スペーサ装置100の高さを、その寸法にかかわらず、伸展ギャップ400および/または屈曲ギャップに対応するよう近づけることができ、次いで、スペーサ要素201、202を用いて、必要に応じてこの高さを微調整することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、スペーサ装置100の幅の寸法は約50mm~約80mmであり、厚みまたは深さの寸法は約50mm~約80mmである。したがって、スペーサ装置100は、大腿骨骨切り面802および脛骨骨切り面902の始端部(leading edge)と少なくとも同じ大きさになり得る。たとえば、スペーサ装置100の深さおよび幅は、大腿骨骨切り面802および脛骨骨切り面902の骨切りされた始端部に実質的に形状を合致させるために、約20mm~約50mmでもよい。当業者には容易に理解されるように、本明細書に記載のスペーサ装置100の寸法は、ある程度は、装置100を適用すべき膝関節700のサイズに依存することになる。
【0058】
スペーサ装置100の特定の実施形態は、人工膝関節単顆置換術において(すなわち膝関節700の外側701または内側702に)使用するように構成または寸法決定される場合があることが、さらに想定される。さらに、スペーサ装置100の実施形態は、両十字靭帯温存型人工膝関節全置換手術において使用されるように構成されてもよい。こうした一実施形態では、スペーサ装置100は、in-situでその内部に残されている十字靭帯を受けるように構成された後側チャネルを必要とすることになり、スペーサ装置100の内側と外側は、前側ブリッジ部によって連結されることになる。別法として、膝関節700の外側701および内側702に、2つの別々のスペーサ装置100が利用されてもよい。
【0059】
使用中、スペーサ装置100は、通常、脚が完全に伸展しているとき(
図3参照)、または約90度で屈曲しているとき(図示せず)、大腿骨遠位部801と脛骨近位部901の間に位置決めされる。したがって、この構成のとき、スペーサ装置100は、通常、患者の大腿骨800および脛骨900それぞれの骨切り面に隣接し、それらに直接接触(すなわち当接)する。このために、伸展された膝に位置決めされると、スペーサ装置100は、通常、脛骨近位部骨切り面902と大腿骨遠位部骨切り面802の両方に当接する。一方、屈曲した膝の中にあるとき、スペーサ装置100は、一般に、脛骨近位部骨切り面902と、既に骨切りされていてもよくまたはそうでなくてもよい大腿骨後面(図示せず)の両方に当接する。この点に関して、スペーサブロック100は、骨切りされた大腿骨800および骨切りされた脛骨900に隣接して位置決めされて、これらの間の適当な空間を決定し、続いて、牽引位置にあるときのスペーサ装置100に及ぼされる接触力および/または圧力を決定する。スペーサブロック100は、その後の骨切り、または置換インプラントの調節を実施するために、骨切りされた大腿骨800と骨切りされた脛骨900との間から(たとえば摺動によって)容易に取り外すことができるように構成されることが好ましい。
【0060】
膝関節700の内部に適当に位置決めされると、スペーサ装置100は、次に、その縦方向軸aに沿って延出または牽引され得る。一例として、スペーサ装置100は、ハウジング110の上壁部111と内側支持部分120の第2の端部部分122との間に挿入される1つまたは複数のラミナスプレッダ(laminar spreader)の作用によって牽引または延出されてもよい。内側支持部分120の前面125は、内側支持部分120に対する外側と内側両方でのハウジング110の牽引距離を外科医に示すために、ミリメートルグラデーション、または回転度数のグラデーションなどのグラデーションを含んでもよい。この点に関して、側壁部112a、112bの一方または両方の前面もやはり、または別法として、このように外科医を補助するために、こうしたグラデーションを含んでもよいことが理解されよう。
【0061】
図2および
図3から観察できるように、内側支持部分120をハウジング110に対して軸方向に動かすことによってスペーサ装置100を牽引または延出させると、第1の空間140および第2の空間150が形成され、これら空間は、側壁部112a~bの各内側突出タブ113a~bと、半径方向に延在する対向する第1の対のタブ124a~bとの間にそれぞれ位置付けられ、またはこれらによって画定される。
図2および
図3を参照すると、適当な寸法にされた第1のスペーサ要素201が第1の空間140に挿入され、適当な寸法にされた第2のスペーサ要素202が第2の空間150に挿入されて、スペーサ装置100を牽引位置に保持する。提示されている実施形態では、スペーサ要素201、202は、立方体形状、または立方体に近い形状のブロックである。しかし、スペーサ装置100の牽引または延出はラミナスプレッダなどの代替のスペーサ要素201、202によって実現されてもよいことが、当業者には理解されよう。
【0062】
上記のことに追加して、またはその別法として、スペーサ装置100を牽引位置に保持するために、スペーサ要素201、202の一方または両方が内部空間160に挿入されてもよいことが理解されよう。こうした構成は、たとえば、ハウジング110の上壁部111の上面111a、側壁部112a~bの一方もしくは両方の外部表面もしくは外側表面、および/または内側支持部分120の第1の端部121の外部表面もしくは下面に、またはこれらの中に電子的力センサが設けられ、またはこれらに電子的力センサが一体化されている実施形態において使用することができる。
【0063】
本明細書には示していない特定の一実施形態では、スペーサ要素201、202は、1つまたは複数の丸い部分を備え、この1つまたは複数の丸い部分は、内側支持部分120の半径方向に延在するタブ124a~bおよび/またはハウジング110の内側突出タブ113a~bの、対応する凹形表面の中に係合または当接するように構成される。スペース要素201、202が1つまたは複数の凹形表面を含み、半径方向に延在するタブ124a~bおよび/または内側突出タブ113a~bが、それと係合すべき、対応する丸い部分を備える、逆の構成も想定される。こうした構成により、必要に応じて、内側支持部分120をハウジング110に対して少なくとも部分的に回転させることが可能になる。
【0064】
好ましくは、側壁部112a~bの各内側突出タブ113a~bおよび半径方向に延在する第1の対のタブ124a~bによって画定される第1の空間140および/または第2の空間150に挿入するために本明細書に提供されるスペーサ要素201、202は、様々な寸法を有し、それにより、膝関節を適当なアライメントおよび/または適当な軟部組織バランスに戻すことを少なくともある程度まで可能にしようとする外科医に、スペーサ要素201の選択肢を与えることができる。一例として、スペーサ装置100のスペーサ要素201、202は、約4mm~約20mmなどの様々なサイズでもよく、通常は1ミリメートル刻みで大きくなり得る(たとえば約4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、およびこれらの間の任意の範囲)。外科医は、一般に、伸展ギャップ400および屈曲ギャップ(図示せず)の内側面と外側面の軟部組織が、最適な、好ましくは実質的に一致するかまたは等価の緊張度に到達するまで、第1の空間140および第2の空間150に、次第に大きくなるサイズのスペーサ要素201、202の挿入を続けることになる。この点に関して、膝関節700の外側701のバランスを取るために、膝関節700の内側702に使用される第2のスペーサ要素202とは異なるサイズの第1のスペーサ要素201が必要とされる場合がある。これは、たとえば核磁気共鳴画像法(MRI)またはコンピュータ断層撮影(CT)によって決定することができる個人の術前の膝の解剖学的構造、ならびに内反または外反などの解剖学的な変形および/または欠損の存在に依存し得る。
【0065】
一例として、
図2では、膝関節700のバランスを取るために、第1のスペーサ要素の高さは6mmであるが、第2のスペーサ要素の高さは4mmである。第1のスペーサ要素201および第2のスペーサ要素202の高さまたは寸法にこうしたずれがあることは、一般に、伸展および/または屈曲した膝関節700において実質的に平行になる大腿骨800と脛骨900の骨切り面を得るには、脛骨近位部901および/または大腿骨遠位部801をさらに骨切りすることが必要であるということを意味する。
【0066】
さらに、スペーサ装置100により、膝関節700の最大変位量、およびこの地点における1つまたは複数の力だけではなく、膝関節700の最大下変位量において存在する力も測定することが可能になる。一例として、内側702は膝関節プロテーゼの11mmのポリエチレン構成要素に対応し、外側701はそれに反して13mmのポリエチレン構成要素に対応することになることが、膝関節700の最大変位量から、スペーサ要素201、202を介して示される場合がある。次いで、11mmのポリエチレン構成要素に対応する寸法のスペーサ要素201、202を第1の空間140および第2の空間150に挿入することができ、膝関節700のこの程度の変位または牽引に関連付けられる力を測定することができる。したがって、最大の力またはピークの力がどれほどであり、特定のサイズのポリエチレンインサート、または実際の膝関節プロテーゼ自体に、どれほどの具体的な力が関連付けられることになるかが次いで知られることになる。こうした測定により、冠状面および矢状面での脛骨近位部901および大腿骨遠位部801の実質的に平行な骨切り面、ならびに膝関節700にわたる実質的に等価な軟部組織バランスまたは緊張度を得るために、脛骨近位部901および/または大腿骨遠位部801の現在の骨切り部を調節することが必要になるか否かを、外科的に決定することが可能になる。
【0067】
したがって、適当な軟部組織バランスが得られる(すなわち、膝関節における内側の力および外側の力が実質的に等しくなる)ようにスペーサ要素201、202を配置した後、次いで、外科医は、膝関節700の内側面702と外側面701の両方にまたがる伸展ギャップ400を評価することができる。したがって、これにより、最小限の適当な伸展ギャップ400を与えることが可能になるとともに、膝関節700の内側面702と外側面701との間での伸展ギャップ400のずれを判定することが可能になる。これにより、上壁部111の上面111aおよび/または内側支持部分120の第1の端部121の、それらがin situで接触または当接している大腿骨遠位部骨切り面802または脛骨近位部骨切り面902に対する傾きを外科医がさらに評価すること、ならびにスペーサ要素201、202に対するハウジング110および/または内側支持部分120の傾きを外科医がさらに評価することも可能になり得る。こうした評価により、脛骨近位部骨切り面902の、適当に整合した前後方向勾配が得られたかどうかが示されることが理解されよう。
【0068】
図2および
図3に示すように、スペーサ装置100が延出または牽引されると、ハウジング110の上壁部111の下面111bと内側支持部分120の第2の端部部分122との間に、内部空間160も生じる、または生み出される。
【0069】
提示されている実施形態では、スペーサ装置100は、電子的力センサ(図示せず)をさらに含み、この電子的力センサは、たとえば(a)内側支持部分120の半径方向に延在する第1の対のタブ124a~bのうちの一方もしくは両方の上面および/もしくは下面、(b)ハウジング110の側壁部112a~bの内側突出タブ113a~bのうちの一方もしくは両方の下面、(c)ハウジング110の上壁部111の上面111a、(d)側壁部112a~bのうちの一方もしくは両方の外部表面もしくは外側表面、ならびに/または(e)内側支持部分120の第1の端部121の外部表面もしくは下面に、またはこれらの中に設けられ、または連結される。このために、スペーサ装置100の外側表面および内側表面を含めたスペーサ装置100の任意の表面に、またはその中に、電子的力センサ(図示せず)が設けられ得ることが想定される。
【0070】
この実施形態に関連して、電子的力センサ(図示せず)により、第1の空間140および/もしくは第2の空間150、ならびに/または内部空間160にスペーサ要素201、202を挿入した際、電子的力センサに与えられる力を直接的に測定することが可能になる。この構成により、電子的力センサ(図示せず)は、スペーサ装置100の牽引中にたとえばハウジング110および内側支持部分120の上面および/または下面に及ぼされる軸方向または縦方向の力だけではなく、側副靭帯や十字靭帯など、スペーサ装置100のすぐ周りに、または隣接して位置する軟部組織からの圧力も測定することが可能になり得る。
【0071】
上記のことに関連して、力センサ(図示せず)によって測定または取得された力データは、外部の、または遠隔配置されたコンピュータ装置またはディスプレイ画面に、有線の任意の手段および/または無線で伝送され得る。通常の実施形態では、力データは、BlueTooth(登録商標)など、当技術分野で知られている従来のデータ伝送プロトコルによって伝送することができる。代替の一実施形態では、力センサ(図示せず)によって測定または取得された力データは、スペーサ装置100自体に、またはその中に設けられたディスプレイ画面に、有線および/または無線で伝送される。
【0072】
前述の構成により、スペーサ装置100を用いると、外科医がこの点に関して最適であると判断したスペーサ装置100の牽引位置における、伸展ギャップ400の両側(すなわち膝関節700の外側701と内側702の両方)で、その実際の寸法と軟部組織緊張度の両方の観点から、伸展ギャップ400を徹底して評価することが可能になる。
【0073】
これまでに説明し、
図3に示したように、伸展ギャップ400を評価した後、スペーサ装置100を使用して、屈曲ギャップ(図示せず)も評価することができる。本明細書に記載のスペーサ装置100を屈曲した四肢に使用することに関し、膝関節700は、約85~約95度(たとえば85度、86度、87度、88度、89度、90度、91度、92度、93度、94度、95度、およびこれらの間の任意の範囲)で屈曲していることが好ましい。特定の好ましい一実施形態では、膝関節700の屈曲は約90度である。しかし、Smith and NephewによるJourney TKRシステムなど、膝関節700の屈曲角度が約100~110度(たとえば100度、101度、102度、103度、104度、105度、106度、107度、108度、109度、110度、およびこれらの間の任意の範囲)であることを必要とする膝関節置換システムも存在する。しかし、本明細書に記載のスペーサ装置100は、いずれかの特定の膝関節置換手術システムまたは方法とともに使用されることにも限定はされないことが、当業者には容易に明らかになろう。したがって、いくつかの実施形態では、屈曲した膝にスペーサ装置100を使用する場合、膝関節700は、95度、95.5度、96度、96.5度、97度、97.5度、98度、98.5度、99度、99.5度、100度、100.5度、101度、101.5度、102度、102.5度、103度、103.5度、104度、104.5度、105度、105.5度、106度、106.5度、107度、107.5度、108度、108.5度、109度、109.5度、110度、またはこれらの間の任意の範囲を含むがこれらに限定はされない、約95~約110度で屈曲する。特定の好ましい一実施形態では、膝関節700の屈曲は約105度である。
【0074】
屈曲した膝関節にスペーサ装置100を挿入する前に、当技術分野で知られている標準的な手術技法に従って、大腿骨後顆などの骨の骨切りを行うことができる。次いで、脛骨近位部骨切り面902および骨切り後の大腿骨後面(図示せず)に隣接して位置決めされるように、スペーサ装置100を屈曲した膝関節に挿入する。次いで、伸展した膝関節700に関して上に述べた方法に従ってスペーサ装置100の牽引を実施し、それにより、屈曲ギャップの内側面および外側面における、寸法と軟部組織緊張度の両方の観点から、屈曲ギャップを評価することが可能になる。次いで、手術は、(a)伸展ギャップの各寸法と屈曲ギャップの各寸法との間の不一致、(b)屈曲時または伸展時の、関節の内側の軟部組織緊張度と外側の軟部組織緊張度との間の不一致で表される、必要に応じて行われる有意なずれの調節へと進むことができる。
【0075】
屈曲ギャップを評価するための代替の一実施形態では、大腿骨後顆を骨切りする前に、屈曲した膝関節にスペーサ装置100を挿入する。したがって、スペーサ装置100は、大腿骨800の後顆の下に延在するように、好ましくは、ある厚みまたは深さの寸法(たとえば約8mm~約10mm)になる。別法として、スペーサ装置100は、後顆の下に延在するパドル状の突出部を含んでもよい。次いで、より長いスペーサ要素201、202を使用して脛骨900と大腿骨800の後顆との間に緊張を与え、それにより、脛骨900に対して大腿骨800を牽引するのを可能にすることができる。さらに、大腿骨800の前面に接触するより小さい前側部分(図示せず)が、伸展ギャップ400に一致するように、残りの適当な量だけさらに牽引されてもよい。
【0076】
これにより、大腿骨後顆を骨切りする前にスペーサ装置100によって膝関節700を牽引し、軟部組織の緊張度を評価することが可能になるはずである。このために、屈曲した膝におけるスペーサ装置100の牽引の程度は、対応する伸展ギャップ400に関して前もって決定されたものと好ましくは一致し、または等価になることになる。スペーサ装置100によってこうした牽引位置が得られると、提案された大腿骨後方の骨切り面に印が付けられてもよく、力センサ(図示せず)によって取得または測定された力データは、提案された骨切りが内側と外側の両方で最適な屈曲力を生み出すことになるかどうか、ならびに伸展ギャップ400に関して既に測定されたものと実質的に一致することになるかどうかを評価するために、再び考察される。
【0077】
スペーサ装置100により、屈曲ギャップおよび/または伸展ギャップ400が実質的にバランスしていないことが示された場合(すなわち、伸展ギャップもしくは屈曲ギャップの一方の面もしくは一方の側が他方よりも狭いとき、および/または伸展ギャップもしくは屈曲ギャップのうちの一方が、その対応する屈曲ギャップもしくは伸展ギャップよりも寸法が小さいとき)、次いで、骨切りガイド部材130を利用して、それらの間の不一致を補正することができる。この点に関して、異なる寸法のスペーサ要素201、202がそれぞれ第1の空間140および第2の空間150に挿入されているとき、ハウジング110は、内側支持部分120に対して平行または直角ではない。
【0078】
図4に提示される実施形態では、骨切りガイド部材130は、その近位端部に平坦な係合部材131を含み、その遠位端部に調節可能ガイド134を含み、これらは延出可能アーム132によって連結される。係合部材131は、スペーサ装置100の内部空間160に挿入するのに適した寸法であり、それにより、係合部材131が安定する。クリップ、実矧ぎ連結部、はめ歯または歯車の連結部、摩擦連結部、磁気連結部、または押込み式に取り付けるの任意の他の手段によるものなど、ハウジング110およびその内側支持部分120を含めたスペーサ装置100に骨切りガイド部材130を係合させる他の手段が、本発明において想定されることが理解されよう。骨切りガイド部材130が係合部材131を含むことは必須ではなく、代わりに、代替の実施形態では、骨切りガイド部材130は、内側支持部分120の第2の端部部分122またはハウジング110の上壁部111など、スペーサ装置100に不可逆的に係合または連結されることが、当業者には理解されよう。しかし、簡単かつフレキシブルに使用するために、骨切りガイド部材130は、スペーサ装置100と可逆的に係合することができるように、係合部材131を含むことが好ましい。
【0079】
次いで、骨切りガイド部材130は、その遠位端部の調節可能ガイド134を、補正を必要とする特定の骨(すなわち大腿骨または脛骨)に近づけ(preference)、または隣接させるように配向される。たとえば、伸展ギャップ400が狭すぎる、またはきつすぎると考えられる場合、骨切りガイド部材130は、大腿骨遠位部801の方に方向付けられるかまたは隣接するように、スペーサ装置100の脛骨側に配置されることになる。骨切りガイド部材130のガイド133はガイド開口134をさらに含み、次いで、このガイド開口134は、外科医が最適な寸法であると考える伸展ギャップ400または屈曲ギャップ(図示せず)の高さに重なるように設定または調節され得る。
【0080】
図4に提示されている実施形態では、ガイド134の高さは、延出可能アーム132が係合部材131とガイド133の間で延出することにより、骨切りガイド部材130に対して調節可能である。このために、延出可能アーム132は、第2のアーム部分132bと伸縮式に係合する第1のアーム部分132aを含み、それによってこれらの間の摺動が可能になる。さらに、ガイド133は、外科医の必要に応じてガイド開口134の角度調節を可能にするために、アーム132に対して少なくとも部分的に回転可能でもよい。
図4から観察できるように、ガイド133は、第2のアーム部分132bとの係合点135を中心に枢動することができる。
【0081】
一例として、伸展ギャップ400および/または屈曲ギャップの内側が外側よりも狭かった、および/またはきつかった(すなわち、軟部組織の緊張度がより大きく、したがってスペーサ装置100によって測定される力がより強い)場合、外側よりも、内側から除去または骨切りされる骨のほうが多くなるはずである。除去される骨の量は、実質的に等しい寸法の伸展ギャップと屈曲ギャップを生み出すような量であることが好ましい。この点に関して、屈曲ギャップと伸展ギャップの間のわずかな不一致は許容できる場合がある。次いで、脛骨または大腿骨の標準的な骨切り部材を、骨切りガイド部材130のガイド133のガイド開口134の下に適切に配置または摺動させて、大腿骨800または脛骨900の定位置に留め、それにより、大腿骨遠位部骨切り面802、大腿骨後方の骨切り面、または脛骨近位部骨切り面902を再び骨切りするのを可能にすることができる。このために、脛骨または大腿骨の骨切り部材が定位置に留められている間、オステオトームブレード、または同等のものを使用して、脛骨または大腿骨の骨切り部材を所定の位置に保持することができる。次いで、標準的なやり方で大腿骨800または脛骨900の骨切りを進めるのを可能にするために、スペーサ装置100および骨切りガイド部材130を取り外すことができる。屈曲ギャップおよび/または伸展ギャップのバランスを取るこの機構を用いると、通常は、当技術分野で知られている特定のシステムとともに利用可能な通常の+2;+4タイプの骨切りの微調整ではなく、必要に応じて、骨切りまたは補正の任意の変形形態が可能になる。次いで、患者の膝関節700の伸展ギャップおよび屈曲ギャップならびに軟部組織バランスをスペーサ装置100によって再び評価して、これまでのその不均衡の補正を確認することができる。
【0082】
したがって、スペーサ装置100を使用した後、大腿骨遠位部の骨切り面は、膝関節700が伸展しているとき、脛骨近位部の骨切り面に対して好ましくは実質的に平行になり、したがって、遠位部および近位部の骨切りを実施した後、脛骨900から大腿骨800までの伸展ギャップ400は、実質的に長方形になる。さらに、屈曲時の膝関節700に関しては、脛骨近位部の骨切り面が大腿骨後方の骨切り面に対して好ましくは実質的に平行になり、したがって、近位部および後方部の骨切りを実施した後、脛骨900から大腿骨800までの屈曲ギャップは、実質的に長方形になる。さらに、伸展ギャップは、好ましくは屈曲ギャップと実質的に等しい寸法になる。
【0083】
さらに、スペーサ装置100により、屈曲時と伸展時の両方において、膝関節700における対象のジョイントラインの回復を助けることができることが理解されよう。一例として、これは、スペーサ装置100が牽引位置におかれた後、半月板本体および/またはその残異物を確認すること、ならびにそれらがスペーサ装置100の中央部分にほぼ対応しているかどうかを確認することによって実現することができる。
【0084】
図5には、スペーサ装置500の別の実施形態が提示してある。これまでに述べたスペーサ装置100の場合と同様に、スペーサ装置500は、膝の置換手術中に外科医を補助するためのものであり、このスペーサ装置500は、縦方向軸aを画定する、側面が開いたT字形状のハウジング510と、内側支持部分520とを含む。内側支持部分520は、中央部分523によって連結される第1の端部部分521と第2の端部部分522とを有する。
【0085】
ハウジング510は、ほぼ等しい寸法にされた第1の部分510aと第2の部分510bとに分けられ、これらは、実質的に平坦な上壁部511’、511”のうちのそれぞれの部分と、側壁部512a~bのうちの一方と、上壁部511’、511”のそれぞれの端部部分から軸方向かつ遠位にそれぞれ延在する第1の軸方向中央突出部517aおよび第2の軸方向中央突出部517bのうちの一方とを備える。
図5に示すように、第1の軸方向中央突出部517aおよび第2の軸方向中央突出部517bは、内側支持部分520の第2の端部522の、側面が開いた中央チャネル528の内部に配置されており、それにより、第1の軸方向中央突出部517aおよび第2の軸方向中央突出部517bを互いに対して、また内側支持部分520に対して軸方向に摺動させることが可能になるように構成されている。このために、側面が開いた中央チャネル528の内部に配置されると、第1の軸方向中央突出部517aおよび第2の軸方向中央突出部517bの各内部表面または内側表面は互いに当接するが、第1の軸方向中央突出部517aと第2の軸方向中央突出部517bとを摺動可能に互いに係合または連結させる、代替の構成も想定される。
【0086】
第1の部分および第2の部分510a~bのそれぞれが互いに対して牽引されるとき、少なくとも一部には、第1の軸方向中央突出部517aおよび第2の軸方向中央突出部517bの各側壁部が互いに、ならびに中央チャネル528の対向する各側壁部に当接することにより、ハウジング510の安定性が保たれる。
【0087】
この構成により、ハウジング510の第1の部分510aおよび第2の部分510bは、第2の部分510bに対して第1の部分510aを単独で軸方向および/または矢状方向に牽引または運動させることを可能にし、それによって外側内部空間(図示せず)および内側内部空間(図示せず)を生み出すことができるように構成される。
【0088】
ハウジング510の上壁部511’、511”は、第1の上面511a’および第2の上面511a”、ならびに第1の下面511b’および第2の下面511b”を有する。
図5から観察できるように、上面511a’、511a”は、それぞれセンサチャネル577a~bを含み、センサチャネル577a~bは、内部に設けられる各電子的力センサユニット570a~bを受けるのに適した寸法である。この点に関して、電子的力センサユニット570a~bのそれぞれは、前後方向に間隔を空けて配置された1対の円筒形カップ部分576a~dを有する基部575a~bを含み、基部575a~bは、その各センサチャネル577a~bの内部に収まってそれと係合するのに適した寸法である。力センサユニット570a~bは、円筒形の1対の伝達要素574a~dをさらに含み、伝達要素574a~dは、それらの各円筒形カップ部分576a~dの内部に嵌合するように配置または係合されるのに適した寸法または直径である。伝達要素574a~dは、平坦な上面を備えて、そこに与えられる力または荷重を、それらに関連付けられたセンサ素子590a~dへと制御された形で伝達する。
【0089】
図6に示すように、力センサユニット570a~bのそれぞれは、大腿骨遠位部骨切り面802または脛骨近位部骨切り面902に当接する上方プレート571a~bをさらに含んで、前記大腿骨遠位部骨切り面802または前記脛骨近位部骨切り面902がそこに印加する力を受け、下にある電子センサ素子590a~dにこの力を伝達する。力センサユニット570a~bのそれぞれには下方支持プレート572a~bも含まれ、下方支持プレート572a~bは、上方プレート571a~bとそれらの各基部575a~bとの間に設けられる。下方支持プレート572a~bのそれぞれは、前後方向に間隔を空けて配置された1対の細長いスロット573a~dを含み、これらの細長いスロット573a~dは、それらの各伝達要素574a~dの平坦な上面に重なり、それを内部に受けるように、互いに対して平行に位置決めされる。この実施形態では、センサ素子590a~dは、下方支持プレート572a~bの細長いスロット573a~dのそれぞれの内部に設けられた薄膜センサを備える。この構成により、スペーサ装置500は、膝関節700の特定の部分またはセグメントにわたる力を、内外方向においてだけでなく前後方向においても決定することができるように構成されており、それにより、膝関節700の全体にわたって軟部組織の力を測定し、したがってそれを等しくすることが可能になる。こうした構成により、スペーサ装置500の荷重測定性能を向上させることも可能になる。
【0090】
代替の実施形態では、厚膜センサや圧電抵抗センサなど、当技術分野で知られている様々なセンサ素子590a~dが本発明に含まれてもよいことが理解されよう。特定の一実施形態では、支持プレート572a~bの一方または両方は薄い金属プレートを備え、このプレートは、そこに設けられる1つまたは複数の歪みゲージを有する。
【0091】
上方プレート571a~bおよび支持プレート572a~bは、外側および内側に位置決めされて下方に突出する嵌合要素または突出部578a~f、579a~fをそれぞれ含み、これらは、側壁部512a~bの内側表面と外側表面の両方の上方部分に設けられた、対応する嵌合チャネル580a~f、581a~fの内部に嵌合して受けられるように構成される。これらの嵌合チャネル580a~f、581a~f、およびこれらに対応する嵌合突出部578a~f、579a~fは、使用中、力センサユニット570a~bの前述の構成要素を安定させ、位置合わせするように機能する。
【0092】
前に述べたように、ハウジング510は、まっすぐに対向する1対の側壁部512a~bを備える。側壁部512a~bのそれぞれは、上壁部511’、511”の下面511b’、511b”の各端部部分から軸方向かつ遠位に延在して、内側支持部分520を内部に受ける1対のチャネル514a~bを形成する。側壁部512a~bは、その遠位端部に各内側突出タブ513a~bをさらに含み、この内側突出タブ513a~bは、ハウジング510の内部に設置された内側支持部分520を保持する助けとなる。
【0093】
図5および
図6に示すように、またスペーサ装置100の場合と同様に、第2の端部部分522および中央部分523は、少なくとも部分的にはハウジング510の側壁部512a~bの間に設けられ、第2の端部部分522が半径方向に延在する第2の対のタブ525a~bを有することによってこの位置に保持されており、これら半径方向に延在する第2の対のタブ525a~bは、スペーサ装置500が牽引されると(すなわち、内側支持部分520がハウジング510に対して軸方向に動くと)、ハウジング510の対向する各内側突出タブ513a~bに接触することができる。内側支持部分520の第1の端部部分521も、半径方向に延在する第1の対のタブ524a~bを含む。
図5および
図6から観察できるように、半径方向に延在する第1の対のタブ524a~bの寸法は、半径方向に延在する第2の対のタブ525a~bよりも長い。このために、半径方向に延在する第1の対のタブ524a~bは、使用する際、脛骨近位部骨切り面902に隣接または当接して位置決めされるように構成される。
【0094】
膝関節700の内部に適当に位置決めされると、次に、スペーサ装置500のハウジング510の第1の部分510aおよび第2の部分510bは、その縦方向軸aに沿って、内側支持部分520に対して延出または牽引され得る。前の実施形態に関して述べたことと同様に、第1の部分510aおよび第2の部分510bを内側支持部分520に対して軸方向に動かすと、ハウジング510の上壁部511’、511”の各下面511b’、511b”、側壁部512a~bおよび軸方向中央突出部517a~b、ならびに内側支持部分520の第2の端部部分522によって画定される、外側および内側の内部空間(図示せず)が生み出される。さらに、このような軸方向の運動により、側壁部512a~bの各内側突出タブ513a~bと、対向する半径方向に延在する第1の対のタブ524a~bとの間にそれぞれ位置付けられ、またはこれらによって画定される、第1の空間(図示せず)および第2の空間(図示せず)が形成される。次いで、第1の空間および第2の空間(図示せず)、ならびに/または外側および内側の内部空間(図示せず)のそれぞれを利用して適当な寸法のスペーサ要素(図示せず)を受け、それによってスペーサ装置500を所望の牽引位置に保持し、また電子的力センサユニット570a~bの一方または両方によって軟部組織緊張度を測定し、ならびにスペーサ装置100に関して前に述べたように伸展ギャップおよび/または屈曲ギャップの寸法を評価することが可能になり得る。
【0095】
図5に示すように、スペーサ装置500は、中央後方に位置決めされた半円筒形のチャネル595をさらに含み、この半円筒形のチャネル595は、上方プレート571a~bから支持プレート572a~b、ハウジング510、および内側支持部分520を通って縦方向に延在して、前十字靭帯および/または後十字靭帯を内部に受けるように構成された空間をそこに画定する。
【0096】
やはり、1つまたは複数の別の電子的力センサユニット(図示せず)が、スペーサ装置500の1つまたは複数の追加の表面に、またはその中に設けられる場合があることが想定される。一例として、後十字靭帯に関する軟部組織緊張度を評価するために、別の電子的力センサユニット(図示せず)が、半円筒形のチャネル595、またはたとえば内側支持部分520の後方表面の内部に設けられてもよい。さらに、1つまたは複数の別の電子的力センサユニット(図示せず)が、そこに隣接する側副靭帯に関する軟部組織緊張度を評価することを可能にするために、側壁部512a~bなど、スペーサ装置500の外側表面のうちの1つまたは複数に、またはその中に設けられてもよい。
【0097】
図7には、スペーサ装置1000の代替の一実施形態が提示してある。これまでに述べたスペーサ装置100、500の場合と同様に、スペーサ装置1000は、膝の置換手術中に外科医を補助するためのものであり、このスペーサ装置1000は、縦方向軸aを画定する、側面が開いたT字形状のハウジング1010と、内側支持部分1020とを含む。内側支持部分1020は、中央部分1023によって連結される第1の端部部分1021と第2の端部部分1022とを有する。ハウジング1010は、軸方向中央突出部1017a~bを含み、この軸方向中央突出部1017a~bは、ハウジング1010の実質的に平坦な上壁部1011a~bから軸方向かつ遠位に延在し、また内側支持部分1020の第2の端部1022の、側面が開いた中央チャネル1028の内部に配置されて、内側支持部分1020に対してそれを軸方向に摺動させることを可能にするように構成される。
【0098】
図7に示すように、ハウジング1010は、ほぼ等しい寸法にされた第1の部分1010aおよび第2の部分1010bから構成され、これらは、第1の部分1010aにはチャネル1019aを備え、第2の部分1010bには対向する突出部1019bを備えるほぞ継ぎ連結部により、上壁部1011’、1011”の第1の部分および第2の部分の中央部分、ならびに軸方向中央突出部1017a~bにおいて可逆的に互いに係合しており、チャネル1019aは、前記突出部1019aを内部に受けるのに適した寸法になっている。当技術分野で知られている、第1の部分1010aと第2の部分1010bを可逆的に係合させる他の手段も、この実施形態に関して企図されることが理解されよう。このように、第1の部分1010aおよび第2の部分1010bのそれぞれは、上壁部1011’、1011”うちのそれぞれの部分と、側壁部1012a~bのうちの一方と、軸方向中央突出部1017a~bのうちの一部分とを含む。この構成により、ハウジング1010の第1の部分1010aおよび第2の部分1010bは、第2の部分1010bに対して第1の部分1010aを単独で軸方向および/または矢状方向に牽引または運動させることを可能にし、それによって外側内部空間1060aおよび内側内部空間1060bを生み出すことができるように構成される。このために、スペーサ装置1000を牽引位置に保持するために、1つまたは複数のスペーサ要素(図示せず)が外側内部空間1060aおよび内側内部空間1060bに挿入されてもよい。
【0099】
第1の部分1010aおよび第2の部分1010bのそれぞれが互いに対して牽引されるとき、少なくとも一部には、突出部1019bとチャネル1019aの各側壁部が互いに当接することにより、ハウジング1010の安定性が保たれる。これは、軸方向中央突出部1017a~bが中央チャネル1028の各側壁部に当接することによってさらに補助される。単に接触または当接するのではなく、別法として、軸方向中央突出部1017a~bは、中央チャネル1028の各側壁部と摺動可能に係合してもよいことが理解されよう。
【0100】
ハウジング1010の上壁部1011’、1011”は、第1の上面1011a’および第2の上面1011a”、ならびに第1の下面1011b’および第2の下面1011b”を有する。
図7から観察できるように、上面1011a’、1011a”は、大腿骨遠位部骨切り面802がそこに印加する力を受けるように、前記大腿骨遠位部骨切り面802に当接するかまたは受けるのに適した寸法になっている。ハウジング1010は、まっすぐに対向する1対の側壁部1012a~bをさらに備える。側壁部1012a~bのそれぞれは、上壁部1011’、1011”の下面1011b’、1011b”の各端部部分から軸方向かつ遠位に延在して、内側支持部分1020を内部に受けるための1対のチャネル1014a~bを形成する。側壁部1012a~bは、その遠位端部に各内側突出タブ1013a~bをさらに含み、この内側突出タブ1013a~bは、ハウジング1010の内部に設置された内側支持部分1020を保持する助けとなる。
【0101】
図7に示すように、またスペーサ装置100の場合と同様に、第2の端部部分1022および中央部分1023は、少なくとも部分的にはハウジング1010の側壁部1012a~bの間に設けられ、第2の端部部分1022が半径方向に延在する第2の対のタブ1025a~bを有することによってこの位置に保持されており、これら半径方向に延在する第2の対のタブ1025a~bは、スペーサ装置1000が牽引されると(すなわち、内側支持部分1020がハウジング1010に対して軸方向に動くと)、ハウジング1010の対向する各内側突出タブ1013a~bに接触することができる。内側支持部分1020の第1の端部部分1021も、半径方向に延在する第1の対のタブ1024a~bを含む。
図7から観察できるように、半径方向に延在する第1の対のタブ1024a~bの寸法は、半径方向に延在する第2の対のタブ1025a~bよりも長い。このために、半径方向に延在する第1の対のタブ1024a~bは、使用する際、脛骨近位部骨切り面902に隣接または当接して位置決めされるように構成される。
【0102】
内側支持部分1020の第1の端部1021は、遠位チャネル1029をさらに含む。このために、支え部分(図示せず)を遠位チャネル1029に可逆的に取り付け、または係合させることなどにより、スペーサ装置1000の高さを調節することができる。この構成の結果として、スペーサ装置1000の全体的な高さを、その寸法にかかわらず、伸展ギャップ400および/または屈曲ギャップに対応するよう近づけることができ、次いで、スペーサ要素(図示せず)を用いて、必要に応じてこの高さを微調整することができる。
【0103】
膝関節700の内部に適当に位置決めされると、次に、スペーサ装置1000のハウジング1010の第1の部分1010aおよび第2の部分1010bは、その縦方向軸aに沿って、内側支持部分1020に対して延出または牽引され得る。前に述べたように、第1の部分1010aおよび第2の部分1010bを内側支持部分1020に対して軸方向に動かすと、スペーサ要素(図示せず)を内部に受けるのに適し得る、外側および内側の内部空間1060a~bが生み出される。さらに、こうした軸方向の運動により、第1の空間1040および第2の空間1050が形成され、これら空間は、側壁部1012a~bの各内側突出タブ1013a~bと、対向する半径方向に延在する第1の対のタブ1024a~bとの間にそれぞれ位置付けられ、またはこれらによって画定される。次いで、第1の空間1040および第2の空間1050のそれぞれを利用して、適当な寸法のスペーサ要素(図示せず)を受けることができ、それによってスペーサ装置1000が所望の牽引位置に保持され、また軟部組織緊張度の測定、ならびにスペーサ装置100および500に関して前に述べたような伸展ギャップおよび/または屈曲ギャップの寸法の評価が可能になる。
【0104】
軟部組織緊張度の測定に関連して、スペーサ装置1000は、(a)内側支持部分1020の半径方向に延在する第1の対のタブ1024a~bのうちの一方もしくは両方の上面および/もしくは下面、(b)ハウジング1010の側壁部1012a~bの内側突出タブ1013a~bのうちの一方もしくは両方の下面、(c)ハウジング1010の上壁部1011の上面1011a、(d)側壁部1012a~bのうちの一方もしくは両方の外部表面または外側表面、ならびに/または(e)内側支持部分1020の第1の端部1021の外部表面もしくは下面に、またはその中に設けられる電子的力センサ(図示せず)をさらに備える。
【0105】
これまでに述べたスペーサ装置100、500および1000は、手術用グレードのプラスチックまたは金属(たとえば手術用グレードのステンレス鋼、チタン、またはコバルトクロム)など、大腿骨および脛骨によって印加される力に耐えることができ、また好ましくは生体適合性であり耐食性である手術用グレードの材料を含め、種々の材料から製作することができる。
【0106】
本明細書の全体を通して、その目的は、いずれかの一実施形態、または特徴の特定の集合に本発明を限定することなく、本発明の好ましい実施形態を説明することであった。したがって、本開示に照らして、本発明の範囲から逸脱しない限り、例示した特定の実施形態に種々の修正および変更が加えられてもよいことが、当業者には理解されよう。
【0107】
本明細書において参照されたすべてのコンピュータプログラム、アルゴリズム、特許、および学術的文献は、参考として本明細書に援用される。
【符号の説明】
【0108】
100 スペーサ装置
110 ハウジング
110a 第1の部分
110b 第2の部分
111 上壁部
111a 上面
111b 下面
112a~b 側壁部
113a~b 内側突出タブ
114a~b チャネル
119a チャネル
119b 突出部
120 内側支持部分
121 第1の端部部分
122 第2の端部部分
123 中央部分
124a~b 半径方向に延在する第1の対のタブ
125 前面
125a~b 半径方向に延在する第2の対のタブ
130 骨切りガイド部材
131 係合部材
132 延出可能アーム
132a 第1のアーム部分
132b 第2のアーム部分
133 ガイド
134 ガイド開口
135 係合点
140 第1の空間
150 第2の空間
160 内部空間
201 第1のスペーサ要素
202 第2のスペーサ要素
400 伸展ギャップ
700 膝関節
701 外側
702 内側
800 大腿骨
801 大腿骨遠位部
802 大腿骨遠位部骨切り面
900 脛骨
901 脛骨近位部
902 脛骨近位部骨切り面