(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】端子及びそれを備えた二次電池並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/567 20210101AFI20230123BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20230123BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20230123BHJP
H01G 4/252 20060101ALI20230123BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20230123BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20230123BHJP
【FI】
H01M50/567
H01G11/84
H01G11/74
H01G4/252 Z
H01M50/557
H01M50/566
(21)【出願番号】P 2020155917
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390011198
【氏名又は名称】福井鋲螺株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 英一
(72)【発明者】
【氏名】中川 太希
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-011081(JP,A)
【文献】国際公開第2016/020996(WO,A1)
【文献】特開2005-285406(JP,A)
【文献】米国特許第04358518(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/543 - 567
H01G 11/84
H01G 11/74
H01G 4/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1導電部材と、
前記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材と、
前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部と、
を備え、
前記第2締結部は、平面視において、前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設けられている、
二次電池用端子。
【請求項2】
前記第1導電部材と前記第2導電部材とは、金属製であり、
前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを金属接合する金属接合部を備える、
請求項1に記載の
二次電池用端子。
【請求項3】
前記金属接合部は、溶接接合部である、
請求項2に記載の
二次電池用端子。
【請求項4】
前記金属接合部は、平面視において、前記第1締結部と前記第2締結部との間に位置している、
請求項2または3に記載の
二次電池用端子。
【請求項5】
前記第1導電部材は、貫通孔を有し、
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記貫通孔に挿入される凸部を有し、
前記第2締結部は、前記第1導電部材の前記貫通孔に前記第2導電部材の前記凸部が挿入されて構成されている、
請求項1から4のいずれか1つに記載の
二次電池用端子。
【請求項6】
前記第2締結部は、前記貫通孔の周縁部分に前記凸部の先端がかしめ加工されたかしめ部である、
請求項5に記載の
二次電池用端子。
【請求項7】
前記第1導電部材は、前記第2導電部材の前記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、
前記第1締結部は、前記第1導電部材の前記凹部の内壁が前記第2導電部材の前記凹部に収容された部分で固定されることによって構成されている、
請求項1から6のいずれか1つに記載の
二次電池用端子。
【請求項8】
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、
前記第1締結部は、前記第2導電部材の前記くびれ部と前記第1導電部材とが嵌合された嵌合部である、
請求項1から7のいずれか1つに記載の
二次電池用端子。
【請求項9】
前記くびれ部は、前記フランジ部の側面に連続的或いは間欠的に環状に形成されている、請求項8に記載の
二次電池用端子。
【請求項10】
前記第1導電部材は、略矩形状であり、
前記第1導電部材の長辺方向において、前記第1導電部材の中心の位置と、前記第2導電部材の前記フランジ部の中心の位置とが、ずれている、
請求項1から9のいずれか1つに記載の
二次電池用端子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の
二次電池用端子を備える、
二次電池。
【請求項12】
板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、前記第1導電部材と前記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部および第2締結部を形成する締結工程を含み、
平面視において、前記第2締結部を前記第1締結部よりも前記フランジ部の中心側に設ける、
二次電池用端子の製造方法。
【請求項13】
前記締結工程では、前記第1締結部を形成した後に前記第2締結部を形成する、
請求項12に記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項14】
前記第1導電部材と前記第2導電部材とが、金属製であり、
前記締結工程の後に、前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを金属接合して金属接合部を形成する金属接合工程、をさらに含む、
請求項12または13に記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項15】
前記金属接合工程では、前記第1導電部材と前記第2導電部材の前記フランジ部とを溶接して、溶接接合部を形成する、
請求項14に記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項16】
前記金属接合工程では、前記第1締結部と前記第2締結部との間に、前記金属接合部を形成する、
請求項14または15に記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項17】
前記第1導電部材は、貫通孔を有し、
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記貫通孔に挿入される凸部を有し、
前記締結工程では、前記第1導電部材の前記貫通孔に前記第2導電部材の前記凸部を挿入し、前記貫通孔の周縁部分に前記凸部の先端をかしめ加工することにより、前記第2締結部を形成する、
請求項12から16のいずれか1つに記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項18】
前記第1導電部材は、前記第2導電部材の前記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、
前記締結工程では、前記凹部に前記第2導電部材の一部を挿入し、前記第2導電部材の外形に沿って前記第1導電部材の前記凹部を変形させることにより、前記凹部の内壁を前記第2導電部材で固定して、前記第1締結部を形成する、
請求項12から17のいずれか1つに記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項19】
前記第2導電部材の前記フランジ部は、前記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、
前記締結工程では、前記第2導電部材の前記くびれ部に前記第1導電部材を嵌合して、前記第1締結部を形成する、
請求項12から18のいずれか1つに記載の
二次電池用端子の製造方法。
【請求項20】
請求項12から19のいずれか1つに記載
の製造方法で製造された
二次電池用端子を用いる、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子及びそれを備えた二次電池並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウムイオン二次電池等の電池は、電極を有する電極体と、電極体を収容する電池ケースと、を備える。この種の電池においては、電池ケースの内部で電極と電気的に接続された端子を電池ケースの外部に引き出した端子が知られている。かかる端子に関連する従来技術として、例えば特許文献1には、電池ケースの内部で電極と電気的に接続され、電池ケースの貫通孔を挿通して外部に突出したリベット部材と、当該リベット部材を挿通する第1貫通孔を有し、リベット部材と外部接続用の端子ボルトとを電気的に接続する引き抜き部材と、を備えた端子構造が開示されている。特許文献1には、引き抜き部材の第1貫通孔にリベット部材を挿通して先端部を上下方向にかしめることで、引き抜き部材の第1貫通孔を囲む周縁部分にリベット部材をかしめ固定すると共に、リベット部材と引き抜き部材とを電気的に接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上記技術には改善の余地が認められた。すなわち、電池の使用時には外部から電池に対して振動や衝撃等の外力が加わりうる。これにより、かしめ固定された部分がぐらついて、ひずみが生じ、リベット部材と引き抜き部材との間に隙間が生じることがありうる。その結果、端子の導通接続が不安定になったり、接続不良となったりする虞がある。したがって、端子の導通信頼性を向上することが求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、導通信頼性の向上した端子及びそれを備えた二次電池並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、板状の第1導電部材と、上記第1導電部材と電気的に接続されるフランジ部を有する第2導電部材と、上記第1導電部材と上記第2導電部材の上記フランジ部とを機械的に固定する第1締結部および第2締結部と、を備え、上記第2締結部は、平面視において、上記第1締結部よりも上記フランジ部の中心側に設けられている端子が提供される。
【0007】
上記端子は、フランジ部の中心からの距離が異なる2つの締結部を備えている。これにより、たとえ外部から振動や衝撃等が加わっても、ひずみが生じにくくなり、第1導電部材と第2導電部材とが密接した状態を維持しやすくなる。そのため、第1導電部材と第2導電部材との導通接続を安定して保つことができ、導通信頼性を向上することができる。
【0008】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第1導電部材と上記第2導電部材とは、金属製であり、上記第1導電部材と上記第2導電部材の上記フランジ部とを金属接合する金属接合部を備える。締結部と金属接合部とで、すなわち2種類の異なる接合方法を用いて、導電部材同士をつなぎ合わせることにより、端子の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0009】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記金属接合部は、溶接接合部である。溶接により、高強度の金属接合部を安定して形成することができる。
【0010】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記金属接合部は、平面視において、上記第1締結部と上記第2締結部との間に位置している。本発明者らの検討によれば、金属接合部は、締結部に比べて相対的に強度が低い(脆い)。このような金属接合部を、2つの締結部の間に配設することで、金属接合部を安定して維持し、長期にわたって端子の導通信頼性を高めることができる。
【0011】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第1導電部材は、貫通孔を有し、上記第2導電部材の上記フランジ部は、上記貫通孔に挿入される凸部を有し、上記第2締結部は、上記第1導電部材の上記貫通孔に上記第2導電部材の上記凸部が挿入されて構成されている。これにより、第2締結部の強度を向上することができる。
【0012】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第2締結部は、上記貫通孔の周縁部分に上記凸部の先端がかしめ加工されたかしめ部である。これにより、締結部を形成する際の作業性を向上することができる。
【0013】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第1導電部材は、上記第2導電部材の上記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、上記第1締結部は、上記第1導電部材の上記凹部の内壁が上記第2導電部材の上記凹部に収容された部分で固定されることによって構成されている。これにより、第1締結部の強度を向上することができる。
【0014】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第2導電部材の上記フランジ部は、上記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、上記第1締結部は、上記第2導電部材の上記くびれ部と上記第1導電部材とが嵌合された嵌合部である。第2導電部材がくびれ部を有することにより、例えば2つの導電部材が異種金属で構成されていても、これらを好適に固定することができる。また、締結部を形成する際の作業性を向上することができる。
【0015】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記くびれ部は、上記フランジ部の側面に連続的或いは間欠的に環状に形成されている。これにより、様々な角度から加えられる外力に対して高強度な第1締結部を形成することができ、端子の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0016】
ここに開示される端子の好適な一態様において、上記第1導電部材は、略矩形状であり、上記第1導電部材の長辺方向において、上記第1導電部材の中心の位置と、上記第2導電部材の上記フランジ部の中心の位置とが、ずれている。これにより、バスバーを介して複数の電池を相互に電気的に接続する場合に、第1導電部材にバスバーを取り付けやすくなり、組電池の導通信頼性を高めることができる。
【0017】
また、本発明により、上記端子を備える二次電池が提供される。これにより、二次電池の信頼性を向上することができる。
【0018】
また、本発明により、板状の第1導電部材と、第2導電部材のフランジ部とを、機械的に固定して、上記第1導電部材と上記第2導電部材とを電気的に接続する第1締結部および第2締結部を形成する締結工程を含み、平面視において、上記第2締結部を上記第1締結部よりも上記フランジ部の中心側に設ける、端子の製造方法が提供される。
【0019】
上記製造方法では、フランジ部の中心からの距離が異なる2つの締結部によって2つの導電部材を機械的に固定する。これにより、たとえ外部から振動や衝撃等が加わっても、端子にひずみが生じにくくなり、第1導電部材と第2導電部材とが密接した状態を維持しやすくなる。そのため、第1導電部材と第2導電部材との導通接続を安定して保つことができる。したがって、導通信頼性の向上した端子を好適に製造することができる。
【0020】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記締結工程では、上記第1締結部を形成した後に上記第2締結部を形成する。外周側に位置する第1締結部を内周側に位置する第2締結部よりも先に形成することで、第1導電部材と第2導電部材とをしっかりと固定することができ、安定して密接させることができる。そのため、端子の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0021】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記第1導電部材と上記第2導電部材とが、金属製であり、上記締結工程の後に、上記第1導電部材と上記第2導電部材の上記フランジ部とを金属接合して金属接合部を形成する金属接合工程、をさらに含む。第1導電部材と第2導電部材との間に金属接合部を形成することで、端子の導通信頼性をさらに向上することができる。また、締結工程の後に金属接合部を形成することで、形状の安定した金属接合部を精度よく形成することができる。
【0022】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記金属接合工程では、上記第1導電部材と上記第2導電部材の上記フランジ部とを溶接して、溶接接合部を形成する。溶接により、高強度の金属接合部を安定して形成することができる。
【0023】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記金属接合工程では、上記第1締結部と上記第2締結部との間に、上記金属接合部を形成する。2つの締結部の間に金属接合部を形成することで、接合時に接合箇所がずれにくくなり、作業性を向上することができる。また、溶接によって金属接合部を形成する場合には、溶接個所がぐらつきにくくなり、溶接性を向上することができる。
【0024】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記第1導電部材は、貫通孔を有し、上記第2導電部材の上記フランジ部は、上記貫通孔に挿入される凸部を有し、上記締結工程では、上記第1導電部材の上記貫通孔に上記第2導電部材の上記凸部を挿入し、上記貫通孔の周縁部分に上記凸部の先端をかしめ加工することにより、上記第2締結部を形成する。これにより、第2締結部の強度を向上するとともに、締結部を形成する際の作業性を向上することができる。
【0025】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記第1導電部材は、上記第2導電部材の上記フランジ部の少なくとも一部を収容する凹部を有し、上記締結工程では、上記凹部に上記第2導電部材の一部を挿入し、上記第2導電部材の外形に沿って上記第1導電部材の上記凹部を変形させることにより、上記凹部の内壁を上記第2導電部材で固定して、上記第1締結部を形成する。これにより、第1締結部の強度を向上することができる。
【0026】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記第2導電部材の上記フランジ部は、上記第1導電部材に嵌合するくびれ部を有し、上記締結工程では、上記第2導電部材の上記くびれ部に上記第1導電部材を嵌合して、上記第1締結部を形成する。第2導電部材がくびれ部を有することにより、例えば2つの導電部材が異種金属で構成されていても、これらを好適に固定することができる。また、締結部を形成する際の作業性を向上することができる。
【0027】
また、本発明により、上記端子の製造方法で製造された端子を用いる、二次電池の製造方法が提供される。これにより、端子の導通信頼性が向上した二次電池を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図3】負極端子の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図4】一実施形態に係る負極端子を模式的に示す平面図である。
【
図5】一実施形態に係る負極端子を模式的に示す下面図である。
【
図6】一実施形態に係る負極端子を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図4のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図8】一実施形態に係る組電池を模式的に示す斜視図である。
【
図9】変形例に係る負極端子の要部を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0030】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0031】
<電池100>
図1は、電池100の斜視図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う模式的な縦断面図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、U、Dは、左、右、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の長辺方向、上記長辺方向と直交する短辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0032】
図2に示すように、電池100は、電極体10と、電池ケース20と、正極端子30と、負極端子40と、を備えている。電池100は、ここに開示される正極端子30および/または負極端子40を備えることによって特徴付けられ、それ以外の構成は従来同様であってよい。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。図示は省略するが、電池100は、ここではさらに電解質を備えている。電池100は、電極体10と図示しない電解質とが電池ケース20に収容されて構成されている。
【0033】
電極体10は従来と同様でよく、特に制限はない。電極体10は、正極および負極(図示せず)を有する。電極体10は、例えば、帯状の正極と帯状の負極とが帯状のセパレータを介して絶縁された状態で積層され、捲回軸を中心として捲回されてなる扁平な捲回電極体である。ただし、電極体10は、方形状(典型的には矩形状)の正極と方形状(典型的には矩形状)の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。正極は、正極集電体11と、正極集電体11上に固着された正極合剤層(図示せず)と、を有する。正極集電体11は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極合剤層は、正極活物質(例えば、リチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。負極は、負極集電体12と、負極集電体12上に固着された負極合剤層(図示せず)と、を有する。負極集電体は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極合剤層は、負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。
【0034】
図2に示すように、電極体10の長辺方向Xの中央部分には、正極合剤層と負極合剤層とが絶縁された状態で積層された積層部分が形成されている。一方、電極体10の長辺方向Xの左端部には、正極合剤層の形成されていない正極集電体11の一部分(正極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。正極集電体露出部には、正極リード部材13が付設されている。正極リード部材13は、正極集電体11と同じ金属材料、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。また、電極体10の長辺方向Xの右端部には、負極合剤層の形成されていない負極集電体12の一部分(負極集電体露出部)が積層部分からはみ出している。負極集電体露出部には、負極リード部材14が付設されている。負極リード部材14の材質(金属種)は正極リード部材13と異なっていてもよい。負極リード部材14は、負極集電体12と同じ金属種、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっていてもよい。
【0035】
電解質は従来と同様でよく、特に制限はない。電解質は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水系の液状電解質(非水電解液)である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解質は固体状(固体電解質)で、電極体10と一体化されていてもよい。
【0036】
電池ケース20は、電極体10を収容する筐体である。電池ケース20は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)に形成されている。ただし、電池ケース20の形状は角形に限定されず、円柱等の任意の形状であってよい。電池ケース20の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース20は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の軽量で熱伝導性の良い金属材料で構成されている。
図2に示すように、電池ケース20は、開口部22hを有するケース本体22と、開口部22hを塞ぐ蓋体(封口板)24と、を備えている。電池ケース20は、ケース本体22の開口部22hの周縁に蓋体24が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。電池ケース20は、気密に封止(密閉)されている。
【0037】
ケース本体22は、平板状の底面22dを有する。蓋体24は、ケース本体22の底面22dに対向している。蓋体24は、ケース本体22の開口部22hを塞ぐようにケース本体22に取り付けられている。蓋体24は、ここでは略矩形状である。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0038】
図1に示すように、正極端子30および負極端子40は、電池ケース20の外部に突出している。正極端子30および負極端子40は、ここでは、電池ケース20の同じ面(具体的には蓋体24)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース20の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。正極端子30および負極端子40は、蓋体24の長辺方向Xの両端部分に配置されている。正極端子30および/または負極端子40は、ここに開示される端子の一例である。
【0039】
正極端子30は、電池ケース20の内部で正極リード部材13を介して電極体10の正極と電気的に接続されている。負極端子40は、電池ケース20の内部で、負極リード部材14を介して電極体10の負極と電気的に接続されている。正極端子30および負極端子40は、それぞれ、蓋体24に取り付けられている。正極端子30および負極端子40は、それぞれ、ガスケット50(
図3参照)とインシュレータ60(
図3参照)とを介して蓋体24とは絶縁されている。
【0040】
図3は、負極端子40の近傍を模式的に示す部分拡大断面図である。なお、以下では負極端子40の側の端子構造を例として詳しく説明するが、正極端子30の側の端子構造についても同様であってよい。その場合、以下の記載において、「負極」の個所を適宜「正極」と読み替えることができる。
【0041】
図3に示すように、蓋体24には、上下方向Zに貫通した端子引出孔24hが形成されている。平面視において、端子引出孔24hは、例えば環状(例えば円環状)である。端子引出孔24hは、後述する負極端子40のかしめ加工前の軸柱部42sを挿通可能な大きさの内径を有する。端子引出孔24hは、後述する負極端子40のフランジ部42fよりも小さく形成されている。
【0042】
負極リード部材14は、負極集電体12の負極集電体露出部に付設され、負極と負極端子40とを電気的に接続する導通経路を構成している。負極リード部材14は、蓋体24の内側の表面に沿って水平に広がった平板状部分14fを有する。平板状部分14fには、端子引出孔24hに対応する位置に、貫通孔14hが形成されている。貫通孔14hは、後述する負極端子40のかしめ加工前の軸柱部42sを挿通可能な大きさの内径を有する。負極リード部材14は、かしめ加工によって、インシュレータ60を介して絶縁された状態で蓋体24に固定されている。
【0043】
ガスケット50は、蓋体24の上面(外側の面)と負極端子40との間に配置される絶縁部材である。ガスケット50は、ここでは蓋体24と負極端子40とを絶縁すると共に、端子引出孔24hを閉鎖する機能を有する。ガスケット50は、電気絶縁性を有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等で構成されている。
【0044】
ガスケット50は、筒部51と基部52とを有する。筒部51は、蓋体24と負極端子40の軸柱部42sとの直接接触を防止する部位である。筒部51は、中空の円筒形状である。筒部51は、上下方向Zに貫通した貫通孔51hを有する。貫通孔51hは、かしめ加工前の負極端子40の軸柱部42sを挿通可能なように形成されている。筒部51は、蓋体24の端子引出孔24hに挿通されている。基部52は、蓋体24と、後述する負極端子40のフランジ部42fと、の直接接触を防止する部位である。基部52は、筒部51の上端に連結している。基部52は、筒部51の上端から水平方向に延びている。基部52は、蓋体24の端子引出孔24hを囲むように、例えば円環状に形成されている。基部52は、蓋体24の上面に沿って延びている。基部52は、負極端子40のフランジ部42fの下面42dと、蓋体24の上面との間に挟み込まれ、かしめ加工によって上下方向Zに圧縮されている。
【0045】
インシュレータ60は、蓋体24の下面(内側の面)と負極リード部材14との間に配置される絶縁部材である。インシュレータ60は、蓋体24と負極リード部材14とを絶縁する機能を有する。インシュレータ60は、蓋体24の内面に沿って水平に広がった平板状部分を有する。この平板状部分には、端子引出孔24hに対応する位置に貫通孔60hが形成されている。貫通孔60hは、負極端子40の軸柱部42sを挿通可能な大きさの内径を有する。インシュレータ60は、使用する電解質に対する耐性と電気絶縁性とを有し、弾性変形が可能な樹脂材料、例えば、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等で構成されている。インシュレータ60の平板状部分は、蓋体24の下面と負極リード部材14の上面との間に挟み込まれ、かしめ加工によって、上下方向Zに圧縮されている。
【0046】
<負極端子40>
負極端子40は、端子引出孔24hを挿通して電池ケース20の内部から外部へと延びている。後述するように、負極端子40は、2種類の導電部材、すなわち第1導電部材41と第2導電部材42とが機械的に固定および/または金属接合され、一体化されて構成されている。
図3に示すように、負極端子40は、かしめ加工によって、蓋体24とは絶縁された状態で、蓋体24の端子引出孔24hを囲む周縁部分にかしめられている。負極端子40の下端部には、鋲部40cが形成されている。負極端子40は、かしめ加工により、蓋体24に固定されると共に、負極リード部材14と電気的に接続されている。
【0047】
図4~
図6は、それぞれ、蓋体24に取り付けられる前の(すなわち、かしめ加工前の)負極端子40の模式図であり、
図4は平面図、
図5は下面図、
図6は側面図である。また、
図7は、
図4のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図であって、負極端子40の要部を模式的に示す縦断面図である。
図7に示すように、負極端子40は、第1導電部材41と、第2導電部材42と、第1締結部43と、第2締結部44と、金属接合部45と、を備える。第1導電部材41と第2導電部材42とは、第1締結部43と、第2締結部44と、金属接合部45と、を介して一体化され、相互に電気的に接続されている。ただし、金属接合部45は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0048】
第1導電部材41は、電池ケース20の外部に配置される部材である。第1導電部材41は、ここでは金属製である。第1導電部材41は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第1導電部材41は、ここではアルミニウム製である。第1導電部材41は、正極リード部材13と同じ金属、または同じ金属元素を第1成分(質量比で最も配合割合の高い成分。以下同じ。)とする合金であってもよい。
図4~
図6に示すように、第1導電部材41は、板状である。第1導電部材41は、ここでは平板状である。第1導電部材41は、下面41dと、上面41uと、を有する。下面41dは、電池ケース20(具体的には蓋体24)と対向する側の面である。上面41uは、電池ケース20から離れた側の面である。第1導電部材41は、ここでは略矩形状である。第1導電部材41は、長辺方向Xに2つに区分けされた部分であって、第2導電部材42と電気的に接続される接続部41aと、接続部41aから長辺方向Xの一方側(
図4~
図6の左方)に延びる延伸部41bと、を有する。
【0049】
接続部41aは、
図7に示すように、延伸部41bよりも厚みが薄く形成された薄肉部41t(
図4も参照)と、上下方向Zに貫通した貫通孔41hと、第1導電部材41の下面41dから凹んだ凹部41rと、を有する。薄肉部41tには、第2締結部44と金属接合部45とが設けられている。
図4に示すように、薄肉部41tは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。
【0050】
貫通孔41hは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。第1導電部材41の上面41uには、貫通孔41hから第2導電部材42(具体的には、後述する凸部42p)が露出している。
図7に示すように、貫通孔41hは、薄肉部41tの中央部に設けられている。貫通孔41hは、第1締結部43および金属接合部45よりも内周側に設けられている。貫通孔41hは、ここでは下面41dに向かって(言い換えれば、凹部41rに向かって)縮径するテーパ形状に形成されている。貫通孔41hには、後述する第2導電部材42の凸部42pが挿入されている。
【0051】
凹部41rは、第2締結部44および金属接合部45よりも外周側に設けられている。図示は省略するが、凹部41rは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。凹部41rは、ここでは下面41dに向かって(言い換えれば、第2導電部材42に近づくほど)縮径するテーパ形状に形成されている。凹部41rには、後述する第2導電部材42のくびれ部42nが挿入されている。
【0052】
延伸部41bは、例えば複数の電池100を相互に電気的に接続して組電池200(
図8参照)を作製する場合に、導電部材であるバスバー90(
図8参照)が付設される部位である。延伸部41bを有することで、バスバー90との接地面積を十分に確保することができ、組電池200の導通信頼性を向上することができる。
図4、
図5に示すように、第1導電部材41は、延伸部41bを有することで、その中心位置41cが、第2導電部材42の中心位置(詳しくは、後述するフランジ部42fの中心位置)42cから長辺方向Xの右方にずれている。
【0053】
第2導電部材42は、電池ケース20の内部から外部へと延びる部材である。第2導電部材42は、ここでは金属製である。第2導電部材42は、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。第2導電部材42の材質は、例えば第1成分が、第1導電部材41と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2導電部材42は、ここでは第1導電部材41よりも硬度が高い金属で構成されている。第2導電部材42は、ここでは銅製である。第2導電部材42は、負極リード部材14と同じ金属、または同じ金属元素を第1成分とする合金であってもよい。第2導電部材42は、一部または全部の表面に、Ni等の金属が被覆された金属被覆部を備えていてもよい。これにより、電解質に対する耐性を高めて、耐食性を向上することができる。第2導電部材42は、
図6、
図7に示すように、第2導電部材42は、軸心Cを有する。第2導電部材42は、第1導電部材41と電気的に接続されるフランジ部42fと、フランジ部42fの下端部に連結する軸柱部42sと、を有する。
【0054】
フランジ部42fは、軸柱部42sよりも外形が大きい。
図3に示すように、フランジ部42fは、蓋体24の端子引出孔24hよりも外形が大きい。フランジ部42fは、蓋体24の端子引出孔24hから電池ケース20の外部に突出した部位である。
図5~
図7に示すように、フランジ部42fの外形は、ここでは略円柱形状である。
図6、
図7に示すように、フランジ部42fの軸心は、第2導電部材42の軸心Cと一致している。
図7に示すように、フランジ部42fは、下面42dと、下面42dから上方に延びる側面(外周面)42oと、フランジ部42fから突出した凸部42pと、側面42oの一部がくびれたくびれ部42nと、を有する。
【0055】
凸部42pは、軸柱部42sとは逆側(
図7の上方)に突出している。凸部42pは、フランジ部42fの側面42oに、連続的或いは間欠的に設けられている。図示は省略するが、凸部42pは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。凸部42pは、フランジ部42fの軸心Cに対して、軸対称に形成されている。凸部42pは、上面41uに向かって(言い換えれば、軸柱部42sから離れるほど)拡径する逆テーパ形状に形成されている。凸部42pは、第1導電部材41の貫通孔41hに挿入されている。凸部42pは、ここでは第1導電部材41の貫通孔41hに嵌入され、貫通孔41hと嵌合している。
【0056】
くびれ部42nは、フランジ部42fの側面42oの一部に、連続的或いは間欠的に設けられている。図示は省略するが、くびれ部42nは、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。くびれ部42nが環状に形成されていると、高強度な第1締結部43を形成することができる。くびれ部42nは、フランジ部42fの軸心Cに対して、軸対称に形成されている。くびれ部42nは、上面41uに向かって(言い換えれば、軸柱部42sから離れるほど)拡径する逆テーパ形状に形成されている。くびれ部42nは、第1導電部材41の凹部41rに挿入されている。くびれ部42nは、ここでは第1導電部材41の凹部41rに嵌入され、凹部41rと嵌合している。くびれ部42nは、ここに開示される技術において、「凹部41rに収容された部分」の一例である。
【0057】
軸柱部42sは、
図7に示すように、フランジ部42fの下端部から下方に延びている。
図5~
図7に示すように、軸柱部42sは、ここでは円筒形状である。軸柱部42sの軸心は、フランジ部42fの軸心Cと一致している。かしめ加工前において、軸柱部42sの下端部、すなわちフランジ部42fが位置する側とは反対側の端部は、中空状である。
図3に示すように、軸柱部42sは、負極端子40が蓋体24に取り付けられる際に、蓋体24の端子引出孔24hに挿通される部位である。軸柱部42sの下端部は、負極端子40が蓋体24に取り付けられる際に、かしめ加工によって押し広げられ、鋲部40cを構成する部位である。軸柱部42sは、かしめ加工によって、電池ケース20の内部で負極リード部材14と電気的に接続される。
【0058】
第1締結部43は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第1の締結部である。第1締結部43は、ここでは平面視において第2締結部44および金属接合部45よりもフランジ部42fの外周側に設けられている。第1締結部43は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、第1締結部43の強度を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。特に限定されるものではないが、第1締結部43は、ここでは、第1導電部材41の下面41dに設けられている。具体的には、第1導電部材41の凹部41rの内壁が第2導電部材42のくびれ部42nで固定(例えば押圧固定)されることによって構成されている。これにより、第1締結部43の強度を向上することができる。
【0059】
第1締結部43の形成方法は、力学的エネルギーによる機械的接合であれば特に限定されず、例えば、圧入、焼きばめ、かしめ、リベット、折り込み、ボルト接合等であってよい。いくつかの好適な実施形態において、第1締結部43は、第1導電部材41の凹部41rと第2導電部材42のくびれ部42nとが嵌合された嵌合部である。これにより、例えば第1導電部材41と第2導電部材42とが異種金属で構成されていても、第1導電部材41と第2導電部材42とを好適に固定することができる。第1締結部43は、例えば、第2導電部材42のくびれ部42nが圧入によって第1導電部材41の凹部41rに嵌合された圧入嵌合部であってもよい。
【0060】
第2締結部44は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを機械的に固定する第2の締結部である。第2締結部44は、ここでは、平面視において第1締結部43および金属接合部45よりもフランジ部42fの内周側(中心側)に設けられている。第2締結部44は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、第2締結部44の強度を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。特に限定されるものではないが、第2締結部44は、ここでは、第1導電部材41の上面41uに設けられている。すなわち、第1締結部43は第1導電部材41の一方の面(下面41d)に設けられ、第2締結部44は第1導電部材41の他方の面(上面41u)に設けられている。具体的には、第1導電部材41の貫通孔41hに第2導電部材42の凸部42pが挿入されて構成されている。例えば、第1導電部材41の貫通孔41hの内壁が第2導電部材42の凸部42pで固定(例えば押圧固定)されることによって構成されている。これにより、第2締結部44の強度を向上することができる。
【0061】
第2締結部44の形成方法は、力学的エネルギーによる機械的接合であれば特に限定されず、例えば、圧入、焼きばめ、かしめ、リベット、折り込み、ボルト接合等であってよい。いくつかの好適な実施形態において、第2締結部44は、第1導電部材41の貫通孔41hと第2導電部材42の凸部42pとが嵌合された嵌合部である。これにより、例えば第1導電部材41と第2導電部材42とが異種金属で構成されていても、第1導電部材41と第2導電部材42とを好適に固定することができる。第2締結部44は、例えば、第2導電部材42の凸部42pが圧入によって第1導電部材41の貫通孔41hに嵌合された圧入嵌合部であってもよい。いくつかの好適な実施形態において、作業性の観点等から、第2締結部44は、第1締結部43と同じ固定方法によって形成されている。例えば第1締結部43と第2締結部44とがいずれも圧入嵌合部であってもよい。
【0062】
以上のように、負極端子40は、フランジ部42fの中心(軸心C)からの距離が異なる2つの締結部、すなわち、第1締結部43と第2締結部44とを備えている。これにより、たとえ外部から振動や衝撃等が加わっても、負極端子40にひずみを生じにくくなり、第1導電部材41と第2導電部材42とが密接した状態を維持しやすくなる。すなわち、第1導電部材41と第2導電部材42との間が離間しにくくなる。そのため、第1導電部材41と第2導電部材42との導通接続を安定して保つことができ、負極端子40の導通信頼性を向上することができる。
【0063】
金属接合部45は、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとの冶金的な接合部である。金属接合部45は、ここでは第1導電部材41の上面41uに設けられている。金属接合部45は、貫通孔41hから離れた位置に設けられている。金属接合部45は、貫通孔41hよりも外周側に設けられている。金属接合部45は、第1締結部43および第2締結部44から離れた位置に設けられている。金属接合部45は、例えば第1締結部43および/または第2締結部44に比べて、相対的に剛性が高い接合部でありうる。締結部と金属接合部とで、すなわち2種類の異なる接合方法を用いて、第1導電部材41と第2導電部材42とをつなぎ合わせることにより、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0064】
金属接合部45は、ここでは平面視において第1締結部43と第2締結部44との間に設けられている。金属接合部45は、光エネルギー、電子エネルギー、熱エネルギー等を用いて形成されるため、例えば第1締結部43および/または第2締結部44に比べて、相対的に強度が低い(脆い)接合部でありうる。このような金属接合部45を2つの締結部の間に配設することで、金属接合部45を安定して維持し、長期にわたって負極端子40の導通信頼性を高めることができる。金属接合部45は、ここでは薄肉部41tに設けられている。これにより、接合時のエネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。金属接合部45は、連続的或いは間欠的に形成されている。金属接合部45は、フランジ部42fの軸心Cに対して、軸対称に形成されている。金属接合部45は、平面視において環状(例えば円環状)に形成されている。これにより、金属接合部45の強度を高めて、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。
【0065】
金属接合部45の形成方法は特に限定されず、例えば、融接、圧接、ろう接等であってよい。いくつかの好適な実施形態において、金属接合部45は、例えば、レーザ溶接、電子ビーム溶接、超音波溶接、抵抗溶接、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、等の溶接によって形成された溶接接合部である。これにより、高強度の金属接合部45を安定して形成することができる。ただし、金属接合部45は、溶接以外の方法、例えば、熱圧着、超音波圧接、蝋付け等で形成されていてもよい。
【0066】
<負極端子40の製造方法>
特に限定されるものではないが、負極端子40は、例えば、上記したような第1導電部材41と第2導電部材42とを用意し、締結工程と、金属接合工程とを、典型的にはこの順序で含む製造方法によって製造することができる。ただし、締結工程と金属接合工程との順序は逆であってもよいし、略同時であってもよい。また、金属接合工程は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。また、ここに開示される製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよい。
【0067】
締結工程では、第1導電部材41と第2導電部材42のフランジ部42fとを、機械的に固定して、第1締結部43および第2締結部44を形成する。いくつかの好適な実施形態において、締結工程では、相対的に外周側に位置する第1締結部43を形成した後、相対的に内周側に位置する第2締結部44を形成する。これにより、第1導電部材41と第2導電部材42とをしっかりと固定することができ、安定して密接させることができる。そのため、負極端子40の導通信頼性をさらに向上することができる。ただし、第2締結部44の後に第1締結部43を形成してもよいし、第1締結部43と第2締結部44とを略同時に形成してもよい。
【0068】
第1締結部43は、例えば、第1導電部材41の凹部41rに第2導電部材42のくびれ部42nを挿入し、第2導電部材42のくびれ部42nの外形に沿って第1導電部材41の凹部41rを変形させることで、凹部41rの内壁を第2導電部材42で固定することにより形成しうる。これにより、第1締結部43の強度を向上することができる。いくつかの好適な実施形態において、第1締結部43は、第1導電部材41の凹部41rと第2導電部材42のくびれ部42nとを嵌合することで形成される。例えば、第1導電部材41の凹部41rに第2導電部材42のくびれ部42nを水平圧入することで形成しうる。これにより、締結工程の作業性を向上することができる。
【0069】
第2締結部44は、例えば、第1導電部材41の貫通孔41hに第2導電部材42の凸部42pを挿入し、第2導電部材42の凸部42pの外形に沿って第1導電部材41の貫通孔41hを変形させることで、貫通孔41hの内壁を第2導電部材42で固定することにより形成しうる。これにより、第2締結部44の強度を向上することができる。いくつかの好適な実施形態において、第2締結部44は、第1導電部材41の貫通孔41hと第2導電部材42の凸部42pとを嵌合することで形成される。例えば、第1導電部材41の貫通孔41hに第2導電部材42の凸部42pを水平圧入することで形成しうる。これにより、締結工程の作業性を向上することができる。
【0070】
金属接合工程では、第1導電部材41の薄肉部41tと第2導電部材42のフランジ部42fとを金属接合、すなわち冶金的に接合して、金属接合部45を形成する。締結工程の後に金属接合工程を行うことで、形状の安定した金属接合部45を精度よく形成することができる。金属接合部45は、例えば、第1導電部材41の薄肉部41tと第2導電部材42のフランジ部42fとが積層された個所を、薄肉部41tを貫通するように溶接することによって形成しうる。溶接により、高強度の金属接合部45を安定して形成することができる。いくつかの好適な実施形態において、金属接合部45は、例えば、締結工程で形成された第1締結部43と第2締結部44との間に形成される。これにより、接合箇所がずれにくくなり、金属接合工程の作業性を向上することができる。また、溶接によって金属接合部45を形成する場合には、溶接個所がぐらつきにくくなり、溶接性を向上することができる。さらに、薄肉部41tを溶接する場合には、エネルギーが少なくて済み、溶接性を向上することができる。
【0071】
<電池100の製造方法>
電池100は、上記したような製造方法によって製造された正極端子30および/または負極端子40を用いることで特徴付けられる。それ以外の製造プロセスは従来同様であってよい。電池100は、例えば、上記したような電極体10と電解質とケース本体22と蓋体24と正極端子30と負極端子40とを用意し、取付工程と、接合工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
【0072】
取付工程では、蓋体24に、正極端子30と、正極リード部材13と、負極端子40と、負極リード部材14と、を取り付ける。負極端子40および負極リード部材14は、例えば
図3に示すように、かしめ加工(リベッティング)によって蓋体24に固定する。かしめ加工は、負極端子40と蓋体24との間にガスケット50を挟み、さらに蓋体24と負極リード部材14との間にインシュレータ60を挟んで行われる。詳しくは、負極端子40のかしめ加工前の軸柱部42sを、蓋体24の上方から、ガスケット50の筒部51と、蓋体24の端子引出孔24hと、インシュレータ60の貫通孔60hと、負極リード部材14の貫通孔14hと、に順番に貫通させて、蓋体24の下方に突出させる。そして、上下方向Zに対して圧縮力が加わるように、蓋体24の下方に突出した軸柱部42sをかしめる。これにより、負極端子40の軸柱部42sの先端部(
図3の下端部)に、鋲部40cを形成する。
【0073】
このようなかしめ加工によって、ガスケット50の基部52とインシュレータ60の平板状部分とが圧縮され、ガスケット50と蓋体24とインシュレータ60と負極リード部材14とが蓋体24に一体に固定されるとともに、端子引出孔24hがシールされる。なお、正極端子30および正極リード部材13の取付方法も、上記した負極端子40および負極リード部材14と同様であってよい。負極リード部材14は、負極集電体12の負極集電体露出部に溶接され、電極体10の負極と負極端子40とが電気的に接続される。同様に、正極リード部材13は、正極集電体11の正極集電体露出部に溶接され、電極体10の正極と正極端子30とが電気的に接続される。これにより、蓋体24と、正極端子30と、負極端子40と、電極体10と、が一体化される。
【0074】
接合工程では、蓋体24と一体化された電極体10をケース本体22の内部空間に収容し、ケース本体22と蓋体24とを封止する。封止は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。その後、図示しない注液口から非水電解液を注入し、注液口を塞ぐことによって、電池100を密閉する。以上のようにして、電池100を製造することができる。
【0075】
電池100は各種用途に利用可能であるが、使用時に振動や衝撃等の外力が加わりうる用途、典型的には、各種の車両、例えば、乗用車、トラック等に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
図8に示すように、電池100は、バスバー90を介して複数の電池100を相互に電気的に接続してなる組電池200としても好適に用いることができる。この場合、複数の電池100の間の電気的な接続は、第1導電部材41の延伸部41bの間に、例えば平板状のバスバー90を架け渡すことで行いうる。バスバー90は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。バスバー90と延伸部41bとは、例えばレーザ溶接等の溶接によって電気的に接続しうる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0077】
例えば、上記した実施形態では、第1締結部43と第2締結部44とが同じ固定方法によって形成されていた。具体的には、第1締結部43と第2締結部44とがそれぞれ嵌合部(例えば圧入嵌合部)であった。しかし、これには限定されない。第1締結部43と第2締結部44とは異なる固定方法によって形成されていてもよい。第2締結部44は、例えば、第1導電部材41の貫通孔41hに第2導電部材42の凸部42pを挿入した後、凸部42pを塑性変形させることによって構成されていてもよい。例えば、一方の締結部(例えば第1締結部43)が、嵌合部(例えば圧入嵌合部)であり、他方の締結部(例えば第2締結部44)が、かしめ部であってもよい。
【0078】
図9は、
図7の対応図面であり、変形例に係る負極端子140の要部を模式的に示す縦断面図である。負極端子140は、第1導電部材141と、第2導電部材142と、第2締結部144と、を備えること以外、上記した負極端子40と同様であってよい。第1導電部材141は、貫通孔41hにかえて、円柱形状の貫通孔141hを備えること以外、上記した第1導電部材41と同様であってよい。第2導電部材142は、凸部42pにかえて、かしめ加工前の状態で貫通孔141hを挿通可能なように形成された凸部142pを備えること以外、上記した第2導電部材42と同様であってよい。凸部142pの先端部(
図9の上端部)は、かしめ加工されている。第1導電部材141の貫通孔141hの周縁部分には、かしめ部142cが形成されている。第2締結部144は、かしめ部である。これにより、第2締結部144の強度を向上するとともに、第2締結部144を形成する際の作業性を向上することができる。
【0079】
また、例えば、上記した実施形態では、負極端子40の軸柱部42sの下端を変形させてかしめることによって、負極リード部材14と負極端子40とが電気的に接続されていた。しかし、これには限定されない。負極リード部材14と負極端子40とを電気的に接続する方法は、例えば、かしめ加工以外の機械的な固定であってもよいし、溶接に代表される金属接合であってもよいし、それらの組み合わせでもよい。接続部の信頼性を高める観点からは、負極リード部材14と負極端子40との接続部分に、負極リード部材14と負極端子40とを機械的に固定する締結部と、締結部の周縁を連続的或いは間欠的に金属接合する金属接合部と、が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 電極体
14 負極リード部材
20 電池ケース
24 蓋体
24h 端子引出孔
40、140 負極端子
40c 鋲部
41、141 第1導電部材
42、142 第2導電部材
43 第1締結部
44、144 第2締結部
45 金属接合部
100 電池