(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】排水システム及び管路の補修方法
(51)【国際特許分類】
E03F 7/00 20060101AFI20230123BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20230123BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
E03F7/00
F16L55/18 Z
E03F3/04 Z
(21)【出願番号】P 2020174085
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520402498
【氏名又は名称】管友メンテナンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160912
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】宮田 修
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-040443(JP,A)
【文献】特開2001-271781(JP,A)
【文献】実開昭54-001973(JP,U)
【文献】特開2007-255097(JP,A)
【文献】特開2013-189811(JP,A)
【文献】特開2003-239373(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1607525(KR,B1)
【文献】特開2018-012094(JP,A)
【文献】特開平09-104283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
F16L 55/18
E03F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修対象となる埋設された管路を流れる水を排水する排水システムにおいて、
前記管路の補修区間の上流側に配置されて前記管路と同軸で回転するスクリューを有して前記水を揚水するスクリューポンプと、
該スクリューポンプと連結されて該スクリューポンプが配置された位置から地上を経由して前記補修区間の下流側の位置に亘って配設されて揚水した前記水を前記補修区間の下流側に排出するサクションホースと、
を備え、
前記サクションホースは、
前記スクリューポンプに連結される複数の第1分岐ホース、複数の前記第1分岐ホースが合流して前記補修区間に対応する地上に配設される中間ホース及び該中間ホースから複数に分岐して前記補修区間の下流側の位置に配設される第2分岐ホース、
を
有することを特徴とする排水システム。
【請求項2】
前記スクリューポンプが配置された位置の上流側に配置されて前記スクリューポンプと連結される止水装置を備え、
該止水装置は、
前記管路の上流側から下流側への流水を許容する連通部を有し、該連通部を介して前記スクリューポンプと連結される、
ことを特徴とする請求項1に記載の排水システム。
【請求項3】
前記スクリューポンプの前記スクリューを駆動させるモータと、
該モータと前記スクリューとを連結して前記モータの駆動力を前記スクリューに伝達するフレキシブルケーブル
と、を備え、
前記モータが、防音機能を有するケーシングに収納されることを特徴とする請求項1
または2に記載の排水システム。
【請求項4】
補修対象となる埋設された管路を流れる水を排水する排水システムを用いた管路の補修方法において、
前記管路の補修区間の上流側に配置されて前記管路と同軸で回転するスクリューを有するスクリューポンプを用いて前記水を揚水する揚水工程と、
該揚水工程で揚水した前記水を、前記スクリューポンプと連結され
る複数の第1分岐ホース、該第1分岐ホースが合流して地上を経由して前記補修区間
に対応する地上に配設される中間ホース及び該中間ホースから複数に分岐して前記補修区間の下流側の位置
に配設され
る第2分岐ホースを有するサクションホースを介して前記補修区間の下流側に排出する排出工程と、
前記補修区間において前記管路を補修する管路補修工程と、
を備えることを特徴とする管路の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水システム及び管路の補修方法、特に、補修対象となる埋設された管路を流れる水を排水する排水システム及びこの排水システムを用いた管路の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下水等の流路となる下水管路等の既設管路が老朽化した場合に、既設管路の内周面をライニング材で被覆して硬化させて補修したり、補修対象となる区間の既設管路を除去して新たな管路を配設したりする工法が広く行われている。
【0003】
この場合において、補修対象となる既設管路の区間内に下水等が流れていると、補修作業の効率が低下することから、補修作業に及ぼす影響を低減させて補修作業の作業性を確保することを目的とした技術が提案されている。
【0004】
特許文献1には、既設管路の補修区間の上流側に止水装置を配備して止水し、止水装置で止水した位置から地上を経由して補修区間の下流側の位置まで排水ホースを設置し、ポンプによって排水ホースで補修区間の下流側に排水する技術が提案されている。
【0005】
この特許文献1の技術によれば、止水装置で止水した位置からポンプで揚水して、地上を経由して設置された排水ホースで補修区間の下流側に排水することから、既設管路の補修作業の作業性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の技術を用いて、既設管路の管径が大きく流量が多い既設管路を補修する場合には、既設管路の補修区間の下流側へ排水する際に、比較的大きな排水能力を有するポンプが要求される。
【0008】
排水能力の大きなポンプはその寸法も比較的大型になるところ、排水能力の大きなポンプを採用するとすれば、作業現場において広い設置スペースを確保する必要がある。
【0009】
一方、排水能力の大きなポンプを採用しないで大きな排水能力を確保するためには、ポンプを増設することも考えられるが、ポンプを複数台に増設するとすれば、増設及び撤去の際の作業負担も増大することが懸念される。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、流量が多い既設管路を補修する場合であっても、効率的に排水することができる排水システム及び管路の補修方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するための本発明に係る排水システムは、補修対象となる埋設された管路を流れる水を排水する排水システムにおいて、管路の補修区間の上流側に配置されて管路と同軸で回転するスクリューを有して水を揚水するスクリューポンプと、スクリューポンプのスクリューを駆動させるモータと、スクリューポンプと連結されてスクリューポンプが配置された位置から地上を経由して補修区間の下流側の位置に亘って配設されて揚水した水を補修区間の下流側に排出するサクションホースと、を備え、モータが、防音機能を有するケーシングに収納されることを特徴としている。
【0012】
これによれば、スクリューポンプが、管路と同軸で回転するスクリューを有することから、管径が比較的大径で流量が多い場合であっても、管路を流れる水の作用を利用して効率的に揚水して排水することができる。
【0013】
この排水システムは、スクリューポンプが配置された位置の上流側に配置されてスクリューポンプと連結される止水装置を備え、止水装置は、管路の上流側から下流側への流水を許容する連通部を有し、連通部を介してスクリューポンプと連結されることを特徴としている。
【0014】
この排水システムのサクションホースは、スクリューポンプに連結される複数の第1分岐ホース、複数の第1分岐ホースが合流して補修区間に対応する地上に配設される中間ホース及び中間ホースから複数に分岐して補修区間の下流側の位置に配設される第2分岐ホースを備えることを特徴としている。
【0015】
この排水システムは、モータとスクリューとを連結してモータの駆動力をスクリューに伝達するフレキシブルケーブル、を備えることを特徴としている。
【0016】
上記課題を達成するための本発明に係る管路の補修方法は、補修対象となる埋設された管路を流れる水を排水する排水システムを用いた管路の補修方法において、管路の補修区間の上流側に配置されて管路と同軸で回転するスクリューを有するスクリューポンプのスクリューと防音機能を有するケーシングに収納されるモータとを接続するスクリューポンプ準備工程と、スクリューポンプ準備工程に続いてスクリューポンプを用いて水を揚水する揚水工程と、揚水工程で揚水した水を、スクリューポンプと連結されてスクリューポンプが配置された位置から地上を経由して補修区間の下流側の位置に亘って配設されたサクションホースを介して補修区間の下流側に排出する排出工程と、補修区間において管路を補修する管路補修工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、補修対象となる管路の水の流量が多い場合であっても、効率的に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水システムの構成の概略を模式的に説明する図である。
【
図2】同じく、本実施の形態に係る排水システムの止水装置及びスクリューポンプの構成の概略を説明する図である。
【
図3】同じく、本実施の形態に係る排水システムを用いた既設管路の補修方法の概略を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1~
図3に基づいて、本発明の実施の形態に係る排水システムについて説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態に係る排水システムの構成の概略を模式的に説明する図である。図示のように、排水システム10は、地中に埋設された既設管路100に配備されて既設管路100内を流れる水を排水するシステムである。
【0021】
既設管路100は、矢線Fで示す既設管路100の上流側から下流側の流方向に水が流れる本管101、流方向Fの上流側の上流側人孔110及び流方向Fの下流側の下流側人孔111を備え、本管101における上流側人孔110と下流側人孔111との間に補修区間101aが設定される。
【0022】
この既設管路100は、本実施の形態では、管径が400~600mmの比較的大径で流量が多い下水管路である。
【0023】
排水システム10は、本実施の形態では、上流側人孔110の上流に配置される止水装置20、止水装置20と連結されて上流側人孔110に配置されるスクリューポンプ30、スクリューポンプ30に連結されるサクションホース40及びスクリューポンプ30を駆動させる駆動ユニット50を備える。
【0024】
図2は、止水装置20及びスクリューポンプ30の構成の概略を説明する図である。図示のように、止水装置20は、既設管路100の本管101に嵌入される円筒状の止水栓21を備える。
【0025】
この止水栓21には、本実施の形態では、既設管路100の本管101に嵌入された状態で既設管路100の軸線Cと同軸で止水栓21を貫通する連通孔22が形成され、既設管路100の上流側から下流側の流方向Fへの流水を許容する。
【0026】
さらに、止水栓21は、本実施の形態では、連通孔22に合わせて配備されて既設管路100の下流側に突出するカムロック23を備える。
【0027】
本実施の形態では、この連通孔22及びカムロック23によって、連通部24が構成される。
【0028】
スクリューポンプ30は、本実施の形態では、ハウジング31、ハウジング31に収容されるスクリュー32、ハウジング31に配備されるカムロック33及びハウジング31に形成される吐出部34、34を主要構成として備える。
【0029】
スクリュー32は、本実施の形態では、複数のブレード(例えば6枚のブレード)を有するプロペラ状であって、既設管路100の軸線C及び止水栓21の連通孔22と同軸で回転するようにハウジング31に配備される。
【0030】
このスクリュー32には、後述するフレキシブルケーブル53が連結されて、駆動ユニット50からの駆動力が伝達される。
【0031】
カムロック33は、本実施の形態では、既設管路100の上流側に突出するようにハウジング31に形成され、このカムロック33に止水装置20のカムロック23が嵌合せしめられて、スクリューポンプ30に止水装置20が連結される。
【0032】
吐出部34、34は、本実施の形態では、既設管路100の下流側に突出するようにハウジング31に形成され、この吐出部34、34に次述するサクションホース40が連結される。
【0033】
図1で示すように、サクションホース40は、複数、本実施の形態では2本の第1分岐ホース41、41、各第1分岐ホース41、41が合流して延在する中間ホース42及び中間ホース42から複数、本実施の形態では2本に分岐して端縁が開口した排出部43a、43aを有する第2分岐ホース43、43を備え、これらが一体的に形成される。
【0034】
このサクションホース40は、第1分岐ホース41、41がスクリューポンプ30の吐出部34、34に連結されて上流側人孔110に配設され、中間ホース42が補修区間101aに対応する地上200に配設され、かつ第2分岐ホース43、43が補修区間101aの下流側の位置の下流側人孔111に配設されて、第2分岐ホース43、43の排出部43a、43aが既設管路100における下流側人孔111の下流側に位置決めされる。
【0035】
駆動ユニット50は、本実施の形態では、モータ51、モータ51に駆動力を付与する発電機52、モータ51の駆動力をスクリューポンプ30のスクリュー32に伝達するフレキシブルケーブル53及びこれらを収納するケーシング54を備える。
【0036】
モータ51は、エンジンモータあるいは油圧式モータ等、種々のモータを採用することができ、ケーシング54は、本実施の形態では防音機能を備え、ケーシング54に収納されるモータ51から発生する駆動音が外部に漏洩することが抑制される。
【0037】
次に、本実施の形態に係る排水システム10を用いた既設管路100の補修方法の概略を説明する。
【0038】
図3は、排水システム10を用いた既設管路100の補修方法の概略を説明するフローチャートである。まず、補修対象となる既設管路100が埋設された現地において、図示のように、ステップS1において、ケーシング54を地上200に設置し、ケーシング54内でモータ51と発電機52とを接続する(駆動ユニット準備工程)。
【0039】
続いて、ステップS2において、モータ51とスクリューポンプ30とをフレキシブルケーブル53で接続する(スクリューポンプ準備工程)。その後、必要に応じて、モータ51を駆動させてスクリューポンプ30の試運転を実施する。
【0040】
ステップS3において、補修区間101aの上流側の上流側人孔110の上流側における既設管路100の本管101に、止水装置20を嵌入して配置する(止水装置配置工程)。
【0041】
その後、ステップS4において、スクリューポンプ30を上流側人孔110に配置して、止水装置20の連通部24を介して止水装置20にスクリューポンプ30を連結させる(スクリューポンプ設置工程)。
【0042】
スクリューポンプ30を上流側人孔110に設置した後、ステップS5において、スクリューポンプ30にサクションホース40の第1分岐ホース41、41を接続して第1分岐ホース41、41を上流側人孔110に配設し、サクションホース40の中間ホース42を補修区間101aに対応する地上200に配設し、かつサクションホース40の第2分岐ホース43、43を下流側人孔111に配設して、第2分岐ホース43、43の排出部43a、43aを既設管路100における下流側人孔111の下流側に位置決めする(サクションホース配設工程)。
【0043】
これにより、排水システム10の設置が完了し、既設管路100を流れる水の排水作業を実行する。
【0044】
ステップS6において、スクリューポンプ30を駆動させて、上流側人孔110の上流側における既設管路100の本管101から流方向Fに流れて止水装置20の連通孔22を介してスクリューポンプ30内に流入する水を揚水する(揚水工程)。
【0045】
本実施の形態では、スクリュー32が、既設管路100の軸線C及び止水栓21の連通孔22と同軸で回転するようにハウジング31に配備されることから、例えば管径が400~600mmのように、比較的大径で流量が多い場合であっても、流方向Fに流れる水の作用を利用して効率的に止水することができる。
【0046】
スクリューポンプ30で揚水した水は、サクションホース40に揚水されるところ、サクションホース40は、第1分岐ホース41、41に分岐していることから、サクションホース40内への水の流入容積が大容量に確保される。
【0047】
続いて、ステップS7において、第1分岐ホース41、41に流入した水を、中間ホース42を介して第2分岐ホース43、43に送り出して、第2分岐ホース43、43の排出部43a、43aから既設管路100における下流側人孔111の下流側に、水を排出する(排出工程)。
【0048】
本実施の形態では、サクションホース40は、補修区間101aの下流側において第2分岐ホース43、43に分岐していることから、サクションホース40から水を排出する容積が大容量に確保される。
【0049】
ステップS8において、補修区間101aにおいて、既設管路100の内周面をライニング材で被覆して硬化させて補修する、あるいは補修区間101aの既設管路100を除去して新たな管路を配設する等、管路の補修を行う(管路補修工程)。
【0050】
このように、排水システム10によって、補修区間101a内に既設管路100を流れる水が流入することが阻止されることから、既設管路100の補修作業の作業性が確保される。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記実施の形態では、スクリュー32と駆動ユニット50のモータ51とがフレキシブルケーブル53で連結される場合を説明したが、駆動ユニット50を上流側人孔110内に配置してモータ51をスクリュー32に直接的に接続するように構成してもよい。
【0053】
上記実施の形態では、管径が400~600mmの既設管路100に流れる水を排水する場合を説明したが、種々の管径の既設管路100に流れる水を排水することができる。
【0054】
上記実施の形態では、サクションホース40が上流側において第1分岐ホース41、41に分岐し、下流側において第2分岐ホース43、43に分岐する場合を説明したが、分岐する本数は任意の数であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 排水システム
20 止水装置
21 止水栓
22 連通孔
24 連通部
30 スクリューポンプ
32 スクリュー
40 サクションホース
41 第1分岐ホース
43 第2分岐ホース
50 駆動ユニット
51 モータ
53 フレキシブルケーブル
100 既設管路
101a 補修区間