(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトL材料の調製方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/32 20060101AFI20230123BHJP
C09B 6/00 20060101ALI20230123BHJP
C09B 57/12 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C01B39/32
C09B6/00
C09B57/12
(21)【出願番号】P 2020503820
(86)(22)【出願日】2018-07-25
(86)【国際出願番号】 CH2018000033
(87)【国際公開番号】W WO2019018951
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519073092
【氏名又は名称】メルツ+ベンテリ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フーバー
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-013749(JP,A)
【文献】特表2009-502558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0003188(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03225590(EP,A1)
【文献】米国特許第03169942(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 37/00-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトL材料の調製方法であって、
a)少なくとも1種の環状シロキサンと、少なくとも1つのタイプのゲスト分子及びストレートスルーチャネルを有するゼオライトL結晶の混合物とを含む組成物を得る工程、及び
b)工程a)で得られた前記組成物を、少なくとも100℃であり、かつ、前記少なくとも1種の環状シロキサンの溶融温度以上である温度に加熱して、前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子を前記ゼオライトL結晶の前記チャネルに組み込む工程、ここで、前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子は、前記少なくとも1種の環状シロキサンの溶融温度以上で、前記少なくとも1種の環状シロキサンに少なくとも可溶である、
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の環状シロキサンが、式I:
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立に、水素、直鎖又は分岐鎖の、置換又は非置換C
1~C
8アルキル残基、置換又は非置換C
2~C
8アルケン残基、置換又は非置換C
2~C
8アルキン残基、置換又は非置換C
5~C
10シクロアルキル残基、置換又は非置換C
5~C
10アリールであり、これらの残基は必要に応じて、O、N、S、Siのような少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、nは3~20の整数である。)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状シロキサンは、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサビニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、オクタビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラキス(3,3,3-トリフルオロプロピル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタエチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチル-1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサビニルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサフェニルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカビニルシクロヘキサシロキサン、及びドデカフェニルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記環状シロキサンは、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物から成る群から選ばれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子は、電荷を帯びていない有機ゲスト分子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子は、蛍光色素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記蛍光色素が、ペリレンジイミド色素、テリレンジイミド色素、及びクアテリレンジイミド色素からなる群から選ばれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における温度が150℃~350℃である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)における前記組成物が1~5時間撹拌される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)における前記組成物が真空下又は不活性ガス中で加熱される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
組み込まれたゲスト分子を有するゼオライトLホスト-ゲスト材料を含む前記組成物を冷却し、洗浄してゼオライトL結晶の外表面に吸着したゲスト分子を除去する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子及び前記ゼオライトL結晶の混合物が、
i.前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子を溶媒に溶解させる工程、
ii.前記ゼオライトL結晶と前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子を含む前記溶媒とを混合する工程、及び
iii.工程ii)で得られた混合物を乾燥させ、前記ゼオライトL結晶及び前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子の、乾燥した、溶媒及び酸素を含まない混合物を得る工程、
によって得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程iii)における前記混合物が真空下で乾燥される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ゲスト分子をチャネル内に含むゼオライトL結晶の調製のための移動剤としての環状シロキサンの使用
であって、前記ゲスト分子は、前記環状シロキサンの溶融温度以上で、前記環状シロキサンに少なくとも部分的に可溶である、前記環状シロキサンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトLホスト-ゲスト材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレートスルーチャネル(straight through channels)を有するゼオライトL結晶は、分子、複合体、クラスター、及び量子サイズの粒子の超分子組織のためのホストとして機能する。これらの特性は、例えば、通信用の赤外線プラスチック発光ダイオードなどのデバイスや、光学データ保存用の色素ナノ構造材料の開発、又はポリマーの化学物理的特性の改善のために使用できる。例えば、欧州特許出願公開第1873202号明細書には、光デバイスに使用することができるポリマー中に分散されたゲスト分子を含むゼオライトL結晶を含む透明なゼオライト-ポリマーハイブリッド材料が開示されている。
【0003】
ゼオライトは、多くの化学反応のよく知られた触媒である。例えば、米国特許第3,169,942号明細書には、結晶性ゼオライトモレキュラーシーブにより触媒されるヒドロキシル及び/又はアルコキシ含有ケイ素組成物の縮合反応が開示されている。
【0004】
色素担持ゼオライトL材料は、様々な用途に適していることが知られている。国際公開第02736490号には、非常に高い輝度と安定性を有するルミネセント色素顔料として、非常に高い感度と汎用性を有するシンチレーション材料として、及び、ルミネセント光デバイス、例えば数百ナノメートルの寸法を有する色素レーザー、走査型近接場顕微鏡及び他の高度に統合された光デバイス用のニードルなどとしての色素担持ゼオライトL材料の使用が開示されている。
【0005】
溶液中又はプラスチック複合材料中の色素自体と比較したゼオライトLのチャネルにおける蛍光色素の安定性がより高いため、色素担持ゼオライトL顔料及び色素担持ゼオライトLアンテナシステムは、国際公開第2010/009560号に記載されているように、ルミネセンスコンセントレータ(luminescence concentrators)又はルミネセンスディスパーサ(luminescence dispersers)における顔料として適している。
【0006】
しかしながら、ゼオライトLのチャネルは挿入プロセス中にゲスト分子のみを収容し、それ以上の分子を収容しないことが好ましいため、適切な担持条件を見出すことはかなり困難である。特に、酸素、水、及び有機溶媒、例えばエタノールやメタノールなどの存在は、挿入プロセス中に高温で有機色素の分解をもたらすおそれがある。さらに、メタノールやエタノールなどの有機溶媒は、チャネル内の大量の空間を占めるため、色素がゼオライトLのチャネルに入るのを妨げる。
【0007】
特に、大きな商業的関心のある大きな有機色素分子をゼオライトLのキャビティに挿入することは非常に難しい。Pengpeng Caoらは、Chem. Eur. J. 2016, 22, 4046-4060,“supramolecular organization of dye molecules in zeolite L channels: synthesis, properties and composite materials”において、かかる色素担持ゼオライトの製造方法を開示している。この方法によれば、色素は、真空排気され加熱されたアンプル内での吸収により、ゼオライトチャネルに挿入される。色素の挿入は、180℃~260℃の温度で、色素分子と所望の担持とに応じて、真空下で24時間~72時間に及ぶ時間で行われる。しかし、アンプルを使用するため、ほんの数百mgの製品しか得られない。さらに、挿入時間が非常に長く、挿入効率が低く、そのため、生産コストがさらに増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトL結晶の迅速かつ効率的な大規模製造を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の方法により解決される。さらに好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0010】
驚くべきことに、少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトLホスト-ゲスト材料を、非常に効率的、迅速、かつ安価な方法で製造できることが判った。本発明に係る方法は、以下の工程:
a)少なくとも1種の環状シロキサンと、少なくとも1つのタイプのゲスト分子及びストレートスルーチャネルを有するゼオライトL結晶の混合物とを含む組成物を得る工程、
b)工程a)で得られた組成物を少なくとも100℃に加熱して、ゲスト分子をゼオライトL結晶のチャネルに組み込む工程、
を含む。
【0011】
環状シロキサンは、挿入温度で少なくとも1つのタイプのゲスト分子を少なくとも部分的に溶解できるが、同時にゼオライトL結晶のチャネルに入ることはできないことが判った。液体状態で存在する環状シロキサンは、少なくとも部分的に可溶化されたゲスト分子をゼオライトLチャネルの開口部に輸送し、次いで、ゼオライトLチャネルはゲスト分子を吸収する。挿入温度でゲスト分子を少なくとも部分的に溶解できる環状シロキサンの存在により、ガラスアンプル内での複雑で時間のかかる気相吸収プロセスを回避することができる。
【0012】
本発明において、ゼオライトL結晶は、結晶内部に平行なチャネル及び/又はキャビティを有し、結晶長が20~7000nm、好ましくは30~3000nmであるアルミノケイ酸塩として理解される。ゼオライトLは、好ましくは、円筒形の多孔性アルミノケイ酸塩である。好ましくは、結晶の直径に応じて、ゼオライトLは数百~数十万の厳密に平行なチャネルを含む。ゼオライトLチャネルは積み重ねたタイヤのように見える(
図1a及び1b)。チャネル開口部の直径は約0.7nmであり、最大自由直径(largest free diameter)は約1.3nmであり、これらの直径は、ゼオライトLを、ゲスト分子、特に有機色素の超分子組織化に理想的なホスト材料にせしめている。ゼオライトLは、例えば、TOSOH CorporationからHSZ-500KOAという名称で市販されている。
【0013】
さらに、ゼオライトL結晶は、Pengpeng CaoらのChem. Eur. J. 2016, 22, 4046-4060,“supramolecular organization of dye molecules in zeolite L channels: synthesis, properties and composite materials”、特に第64及び65頁の「SI1.4 Synthesis and Post-Synthetic Treatment of ZL (Zeolite L, LTL Type)」に開示されている合成法に従って容易に調製することができる。
【0014】
好ましくは、環状シロキサンは式I:
【0015】
【0016】
の化合物である。ここで、R1及びR2は、互いに独立に、水素、直鎖又は分岐鎖の、置換又は非置換C1~C8アルキル残基、置換又は非置換C2~C8アルケン残基、置換又は非置換C2~C8アルキン残基、置換又は非置換C5~C10シクロアルキル残基、置換又は非置換C5~C10アリールであり、これらの残基は必要に応じて、O、N、S、Siのような少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、nは3~約20、好ましくは4~10の整数である。上記残基は、非置換であっても、ハロゲンにより、フッ素、塩素により置換されていてもよい。好ましくは、R1及びR2は、互いに独立に、メチル、エチル、フルオロプロピル又はフェニルである。最も好ましくは、R1及びR2はメチル又はフェニルである。
【0017】
あるいは、環状シロキサンは式II:
【0018】
【0019】
の化合物であってもよい。ここで、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は、互いに独立に、水素、直鎖又は分岐鎖の、置換又は非置換C1~C8アルキル残基、置換又は非置換C2~C8アルケン残基、置換又は非置換C2~C8アルキン残基、置換又は非置換C5~C10シクロアルキル残基、置換又は非置換C5~C10アリールであり、これらはO、N、S、Siなどの少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、
a、b、c、d及びeは0又は1であり、
R3、R5、R7、R9、R11、R13、R15及びR17のうちの少なくとも1つ、及び/又はR4、R6、R8、R10、R12、R14、R16及びR18のうちの少なくとも1つは、互いに異なる。
【0020】
例えば、かかる環状シロキサンでは、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は全てメチルであることができ、R3はフェニルであることができ、a、b、c、d及びeは全て1であることができる。
【0021】
好ましくは、環状シロキサンは式Iの化合物である。最も好ましくは、環状シロキサンは1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサビニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、オクタビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラキス(3,3,3-トリフルオロプロピル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタエチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチル-1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサビニルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサフェニルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカビニルシクロヘキサシロキサン及びドデカフェニルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物からなる群から選ばれる。最も好ましくは、環状シロキサンは、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物である。
【0022】
少なくとも1つのタイプのゲスト分子は、色素又は薬剤などの、ゼオライトLのキャビティ内に受容されるべき任意の種類の電荷を帯びていない又は電荷を帯びた有機又は無機分子であることができる。好ましくは、ゲスト分子は電荷を帯びていない有機ゲスト分子である。ゲスト分子は、天然物(例えば、植物源からのもの)又は合成物であることができる。ゼオライトL結晶の幾何学的な制約は、チャネル内のゲスト分子の超分子組織化をもたらす。好ましくは、ゲスト分子は、ゼオライトLのチャネルに入ることができるが、チャネル内で重なり合うか又は二量体を形成できないサイズを有する。特に興味深いものは、色素、好ましくは蛍光色素である。チャネルに蛍光色素を担持することによって、強発光性材料の創製が可能となる。幾何学的な制約により、非常に高濃度のモノマー蛍光色素分子を実現できる。それらの間の短い距離は、励起エネルギーが分子から分子に直接伝達される、高速の無放射フェルスター型エネルギー移動をもたらす。この現象は、当業者に知られている(Forster-Type Energy Transfer along a Specified Axis, Claudia Minkowski and Gion Calzaferri, Angew. Chem.Int. Ed. 2005, 44, 5325-5329)。さらに好ましいゲスト分子は、好ましくはベンゾフェノン類、オキサラニリド類、ベンゾトリアゾール類及びトリアジン類からなる群から選択される紫外線(UV)吸収剤である。
【0023】
好ましくは、蛍光色素は、ペリレンジイミド色素、テリレンジイミド色素、クアテリレンジイミド色素、ビフェニル類、テルフェニル類、クアテルフェニル類、テトラセン類、ペリレン類、トリフェンジオキサジン類、アクリジン類、スチルベン類、アゾベンゼン類、オキサゾリルベンゼン類、スチリルベンゼン類、フルオレノン、イソビオラントロン類、H-アントラ(2,1,9-mna)チオキサンテン-オン(C.I.ソルベントオレンジ63)、1H-チオキサンテノ2,1,9-デフィソキノリン-1,3(2H)-ジオン(C.I.ソルベントイエロー98)、36-アミノ-2-(2,4-ジメチルフェニル)-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-1,3(2H)-ジオン(C.I.ソルベントイエロー44)、ジイソブチルペリレン-3,9-ジカルボキシレート、ジイソブチル-3,9-ペリレンジカルボキシレート(C.I.ソルベントグリーン5)、チオインジゴ化合物、14H-アントラ[2,1,9-mna]チオキサンテン-14-オン(Hostasol Red GG)、1,4-ビス(4-メチル-5-フェニル-2-オキサゾリル)ベンゼン(ジメチル-POPOP)、1,4-ビス(5-フェニル-2-オキサゾリル)ベンゼン(POPOP)、スプロピラン類、ナフトピラン類、カロテノイド類、カロテン類、キサンテノフィル類、フラビン類、ピロニン類、オキサジン類、チオニン類、レゾルフィン、スクアライン色素、ホウ素-ジピロメテン色素(BODIPY色素)、メチルビオロゲン及びカルボシアニン類からなる群から選ばれる。特に好ましいものは、ペリレンジイミド系蛍光色素及びテリレンジイミド色素、クアテリレンジイミド色素及びチオキサンテンベンズアントロン色素である。
【0024】
かかる蛍光ペリレンジイミド色素の例は、以下のリストに記載されている:
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
幾つかの環状シロキサンは室温で固体である。環状シロキサンが室温で固体である場合、本発明に係る方法の工程b)における混合物は、環状シロキサンが確実に輸送剤(transport agent)として機能することができるように、環状シロキサンの溶融温度に、好ましくは溶融温度超に加熱されなければならない。本発明の文脈において輸送剤という用語は、輸送剤が、ゲスト分子の少なくとも小さな部分、好ましくは少なくとも2質量%を挿入温度で溶解でき、ゼオライトL結晶のチャネル開口部に輸送できることを意味する。ゼオライトL結晶のチャネル開口部でゲスト分子はチャネル内に吸収される。
【0030】
工程b)で使用される温度は、ゲスト分子のホストへの挿入温度に依存し、環状シロキサンが室温で固体の場合、環状シロキサンの溶融温度に依存する。挿入温度は、好ましくは150℃を超え、最も好ましくは150℃~350℃、理想的には200℃~250℃である。これらの温度は、ゲスト分子の一部を環状シロキサンに良好に可溶化し、ホスト材料及びゲスト材料の振動変形を誘発させて、ひいては、ゼオライトLチャネルへのゲスト分子の担持を促進することを可能にする。
【0031】
好ましくは、ゼオライトL結晶のチャネルへのゲスト分子の組み込みは約1~5時間で起こる。組み込みプロセスの間、混合物は好ましくは撹拌される。温度は、必要な挿入温度に保たれることが好ましい。好ましくは、工程b)の組み込みプロセスは、真空下、又は窒素、アルゴンなどのような不活性ガスの下で行われる。
【0032】
好ましくは、結晶チャネルへのゲスト分子の担持を完了した後、組み込まれたゲスト分子を有するゼオライトLホスト-ゲスト材料を含む組成物を冷却し、洗浄してゼオライトL結晶の外表面に吸着したゲスト分子を除去する。結晶表面のゲスト分子は配向しておらず、二量体を形成しうるため、ゼオライトLホストゲスト材料の化学物理的特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0033】
本発明に係る方法の出発材料として、ゲスト分子とゼオライトL結晶の混合物を用意しなくてはならない。好ましくは、ゲスト分子は、ゼオライトL結晶の外表面に吸着される。これは、例えば、
i.ゲスト分子を溶媒に溶解させる工程、
ii.ゼオライトL結晶とゲスト分子を含む溶媒とを混合する工程、及び
iii.工程ii)で得られた混合物を好ましくは真空下で乾燥させ、ゼオライトL結晶及びゲスト分子の乾燥した溶媒及び酸素を含まない混合物を得る工程、
によって得ることができる。
【0034】
この手順により、結晶の外表面がゲスト分子でほぼ均一に覆われたゼオライトL結晶がもたらされる。その外表面にゲスト分子を含むかかる結晶は本発明に係る方法の好ましい出発材料である。
【0035】
また、本発明に係る方法によって、ゼオライトL結晶に2つ以上のタイプのゲスト分子を担持することが可能である。特に、第1工程において第1のタイプの蛍光色素を担持し、第2工程において第2のタイプの蛍光色素を担持することによって、いわゆるアンテナシステムを創製することが可能である。好ましくは、これらの2つのタイプの蛍光色素は互いに正確に調整される。つまり、第2の蛍光色素はチャネル内の第1の蛍光色素から励起エネルギーを受け取ることができるが、それを戻すことはできない。第2の蛍光色素は、このエネルギーを結晶表面から、チャネルの入口の内部もしくは外部から、又は、チャネルの内側から蛍光として再放出するか、あるいは、より高度な設定で、光電子又は光化学デバイスに放射なしで移すことができる。かかる「受信アンテナ」は、2種の蛍光色素の位置が逆になっている場合、代わりに「トランスミッタ」に変えることができる。この場合、第2の蛍光色素は外部からエネルギーを捕捉し、それを結晶内側に位置する分子に伝達する。かかるシステムの原理は国際公開第2010/009560号に詳細に記載されている。
【0036】
好ましくは、少なくとも2つのタイプの異なるゲスト分子を受容しているゼオライトLホスト-ゲスト材料は、以下の工程:
a)少なくとも1種の環状シロキサンと、第1のタイプのゲスト分子及びストレートスルーチャネルを有するゼオライトL結晶の混合物とを含む組成物を得る工程、
b)工程a)で得られた組成物を少なくとも100℃に加熱して、ゼオライトL結晶のチャネルに第1のタイプのゲスト分子を組み込む工程、
c)第1タイプのゲスト分子を受容している工程b)で得られたゼオライトホスト-ゲスト材料を洗浄する工程、
d)ゼオライトL結晶の表面に第2のタイプのゲスト分子を提供する工程、
e)少なくとも1種の環状シロキサンと、工程d)で得られた、その表面に第2のタイプのゲスト分子を含むゼオライトLホスト-ゲスト材料とを含む組成物を得る工程、
f)工程e)で得られた組成物を少なくとも100℃に加熱して、第2のタイプのゲスト分子をゼオライトL結晶のチャネル内に組み込む工程、
を含む方法によって調製される。
【0037】
この手法は、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。
【0038】
洗浄処置に適した溶媒は、ゲスト分子が可溶な溶媒である。かかる溶媒は当業者に知られている。
【0039】
あるいは、2つ以上の異なるタイプのゲスト分子を混合物としてゼオライトLのチャネルに1段階で挿入することができる。
【0040】
ゼオライトL結晶のチャネル内のゲスト分子の量は文献(Efficient and Robust Host-Guest Antenna Composite for Light Harvesting, Andre Devaux, Gion Calzaferri, Peter Belser, Pengpeng Cao, Dominik Bruhwiler, Andreas Kunzmann Chem. Mater., ACS, Chem. Mater. 2014, 26, 6878-6885)に記載されているように、占有確率pによって説明することができる。pの値は、空のゼオライトLの0から完全に担持されたゼオライトの1までに及ぶ。本発明に係る方法によって、0から約0.5まで、場合によっては1までの占有確率pを得ることができる。
【0041】
本発明に係る方法によりゼオライトLホスト-ゲスト材料の調製後、担持ゼオライトLホスト-ゲスト材料は、当該技術分野で知られているようにさらに処理されてもよい。例えば、担持ゼオライトL結晶の表面を重合可能なシランでコーティングし、次にそれを液体モノマー中に分散させ、その後、重合可能なシランと液体モノマーとを重合させて、前記ゼオライトL結晶が分散したポリマーを形成することができる。かかる方法は、欧州特許出願公開第1873202号明細書に詳細に記載されている。
【0042】
本発明に係る方法によって得られたゼオライトLホスト-ゲスト材料は、例えばレンズ、眼鏡、特殊ミラー、フィルター、偏光子、グリッド、光学ストレージ、モニター/窓ガラス、フロートガラスなどの光学デバイスを開発するため、又は、反射防止特性もしくは光波長変換のための有機及び無機表面のコーティングのため、あるいは、蛍光もしくは非蛍光顔料、ルミネセンスコンセントレータ又はルミネセンスディスパーサ用の光学デバイスなどの開発に使用することができる。
【0043】
ゼオライトLのチャネルにおけるゲスト分子として有機UV吸収剤、好ましくはベンゾフェノン類、オキサラニリド類、ベンゾトリアゾール類又はトリアジン類の部類のUV吸収剤を使用して、非常に安定なUV吸収性ホスト-ゲスト材料を調製することができる。この種の材料は、プラスチック、接着剤、シーラント、あるいは、化粧品や、サンクリームなどのパーソナルケア製品において、UV安定剤として使用することができる。
【0044】
本発明は、チャネル中にゲスト分子を含むゼオライトL結晶の調製のための移動剤(transfer agent)としての環状シロキサンの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1b】
図1bはc軸に沿うゼオライトL結晶チャネルの骨格の側面図である。
【
図2a】
図2aは本発明に係るゼオライトL結晶の蛍光及び励起スペクトルを示す。
【
図2b】
図2bは参照サンプルの蛍光スペクトル及び励起スペクトルを示す。
【実施例】
【0046】
ゼオライトLのチャネルへの中性分子の挿入
ゼオライトL結晶の前処理
市販のゼオライトL(HSZ-500KOA、TOSOH Corporation)を全ての実験に使用した(P. Cao, O. Khorev, A. Devaux, L. Sagesser, A. Kunzmann, A. Ecker, R. Haner, D. Bruhwiler, G. Calzaferri, P. Belser, Chem. Eur. J. 2016, 22, 4046-4060)。ゼオライトLチャネル内の電荷補償カチオンの組成が明確に規定されるように、3gのHSZ-500KOAゼオライトLを脱イオン水中の30mlの0.5M KNO3(Sigma-Aldrich)中に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。懸濁液を遠心分離し、脱イオン水で2回洗浄し、上澄みを排出した。市販のゼオライトLに存在する可能性のあるアモルファス不純物を上澄みから除去した。
【0047】
チャネルに挿入された幾つかの色素は酸性pHの影響を受けやすいため、K+イオンの一部を1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(IMZ+)とさらに交換して、チャネル内のpHを制御した。
【0048】
2gのK+交換ゼオライトL HSZ-500KOAを、3.6mlの1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド溶液(Sigma-Aldrich)(脱イオン水中0.1M)及び20mlの脱イオン水に懸濁した。懸濁液を超音波浴で均質化し、還流下、80℃で16時間撹拌した。その後、懸濁液を遠心分離し、上澄みを排出し、K+/IMZ+-ゼオライトLを80℃のオーブン内で12時間乾燥させた。
【0049】
参考例:K+/IMZ+ゼオライトLのチャネル内へのHostasol Red GG(HR、Clariantから入手)(14H-アントラ[2,1,9-mna]チオキサンテン-14-オン)及びtb-DXP Ν,Ν’-ビス(4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(文献に従って合成)の挿入
400mgのK+/IMZ+ゼオライトLを0.95mgのHostasol Red GG及び7.5mgのtb-DXPと混合し、メノウ乳鉢で微粉末に粉砕した。粉末をエタノール中に懸濁させ、超音波浴で均質化した。エタノールを減圧下で除去し、ガラス製アンプルに粉末を充填した。粉末をアンプル内で<0.1mbarの圧力で16時間乾燥させ、アンプルを密封した。密封したアンプルをオーブンに入れ、210℃で3日間貯蔵した。冷却後、アンプルを開け、粉末をジクロロメタンで数回洗浄し、遠心分離して、チャネル内側ではなくゼオライトLの外表面に吸着した分子を除去した。組み合わせた上澄みのUV-VIS分光法により、ゼオライトLのチャネル内へのHostasol Red GG及びtb-DXPの75~80%の挿入効率が示された。
【0050】
実施例1
800mgのK+/IMZ+ゼオライトLを1.9mgのHostasol Red GG及び15mgのtb-DXPと混合し、メノウ乳鉢で微粉末に粉砕した。粉末をエタノール中に懸濁させ、超音波浴で均質化した。エタノールを減圧下で除去し、テフロン(登録商標)バルブを備えたシュレンクフラスコに粉末を入れた。5gのオクタフェニルシクロテトラシロキサン(OPCTS)(Alfa Aesar製)を加え、シュレンクフラスコを<0.1mbarの圧力まで排気し、混合物を150℃で2時間乾燥させた。混合物をOPCTSの融点まで加熱し、テフロンバルブを閉じた。混合物を210℃で3時間撹拌した。冷却後、混合物をジクロロメタンで数回洗浄し、遠心分離して、チャネル内側ではなくゼオライトLの外表面に吸着した分子を除去した。組み合わされた上澄みのUV-VIS分光法により、ゼオライトLのチャネル内へのHostasol Red GG及びtb-DXPの>98%の挿入効率が示された。
【0051】
実施例2
800mgのK+/IMZ+ゼオライトLを1.9mgのHostasol Red GG及び15mgのtb-DXPと混合し、メノウ乳鉢で微粉末に粉砕した。粉末をエタノール中に懸濁させ、超音波浴で均質化した。エタノールを減圧下で除去し、テフロン(登録商標)バルブを備えたシュレンクフラスコに粉末を入れた。フラスコを<0.1mbarの圧力まで排気し、粉末を150℃で2時間乾燥させ、冷却後、フラスコを窒素でフラッシュした。窒素雰囲気下で5mlのデカメチルシクロペンタシロキサン(BRB International b.v.製のCM-50)を加え、懸濁液を超音波浴で均質化した。懸濁液を窒素下で200℃に3時間加熱した。冷却後、混合物をジクロロメタンで数回洗浄し、遠心分離して、チャネル内側ではなくゼオライトLの外表面に吸着した分子を除去した。組み合わせた上澄みのUV-VIS分光法により、ゼオライトLのチャネルへのHostasol Red GG及びtb-DXPの挿入効率が94%であることが示された。
【0052】
ゼオライトLのチャネル内への両方の分子の挿入が成功したことは、蛍光分光法によって証明された(
図2a及び2b)。チャネル内の分子の配列及び距離のために、tb-DXP分子間及びtb-DXPからHRへのフェルスター型の共鳴エネルギー移動が起こる。HRの発光波長(640nm)での励起測定と490nmでのtb-DXPの励起による発光スペクトルは、両方ともtb-DXPからHRへのかなりの量のフェルスター型共鳴エネルギー移動を示している。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
少なくとも1つのタイプのゲスト分子を受容しているゼオライトL材料の調製方法であって、
a)少なくとも1種の環状シロキサンと、少なくとも1つのタイプのゲスト分子及びストレートスルーチャネルを有するゼオライトL結晶の混合物とを含む組成物を得る工程、及び
b)工程a)で得られた前記組成物を少なくとも100℃に加熱して、前記ゲスト分子を前記ゼオライトL結晶の前記チャネルに組み込む工程、
を含む方法。
[態様2]
前記少なくとも1種の環状シロキサンが、式I:
【化1】
(式中、R
1
及びR
2
は、互いに独立に、水素、直鎖又は分岐鎖の、置換又は非置換C
1
~C
8
アルキル残基、置換又は非置換C
2
~C
8
アルケン残基、置換又は非置換C
2
~C
8
アルキン残基、置換又は非置換C
5
~C
10
シクロアルキル残基、置換又は非置換C
5
~C
10
アリールであり、これらの残基は必要に応じて、O、N、S、Siのような少なくとも1つのヘテロ原子を含んでいてもよく、nは3~約20、好ましくは4~10の整数である。)
の化合物である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記環状シロキサンは、1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリエチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルシクロトリシロキサン、ヘキサビニルシクロトリシロキサン、ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリビニル-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリフェニルシクロトリシロキサン、1,3,5-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,3,5-トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラエチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタエチルシクロテトラシロキサン、オクタビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラキス(3,3,3-トリフルオロプロピル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタエチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デカフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタビニル-1,3,5,7,9-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9-ペンタメチル-1,3,5,7,9-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサメチルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサビニルシクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11-ヘキサフェニルシクロヘキサシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ドデカビニルシクロヘキサシロキサン、及びドデカフェニルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物からなる群から選ばれる、態様1又は2に記載の方法。
[態様4]
前記環状シロキサンは、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン、又はそれらの混合物から成る群から選ばれる、態様1~3のいずれか一つに記載の方法。
[態様5]
前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子は、電荷を帯びていない有機ゲスト分子、好ましくは色素又はUV吸収剤、最も好ましくは蛍光色素である、態様1~4のいずれか一つに記載の方法。
[態様6]
前記蛍光色素が、好ましくは、ペリレンジイミド色素、テリレンジイミド色素、及びクアテリレンジイミド色素からなる群から選ばれる、態様5に記載の方法。
[態様7]
工程b)における温度が150℃~350℃、好ましくは200℃~250℃である、態様1~6のいずれか一つに記載の方法。
[態様8]
工程b)における前記組成物が1~5時間撹拌される、態様1~7のいずれか一つに記載の方法。
[態様9]
工程b)における前記組成物が真空下又は不活性ガス中で加熱される、態様1~8のいずれか一つに記載の方法。
[態様10]
組み込まれたゲスト分子を有するゼオライトLホスト-ゲスト材料を含む前記組成物を冷却し、洗浄してゼオライトL結晶の外表面に吸着したゲスト分子を除去する、態様1~9のいずれか一つに記載の方法。
[態様11]
前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子及び前記ゼオライトL結晶の混合物が、
i.前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子を溶媒に溶解させる工程、
ii.前記ゼオライトL結晶と前記ゲスト分子を含む溶媒とを混合する工程、及び
iii.工程ii)で得られた混合物を乾燥させ、前記ゼオライトL結晶及び前記少なくとも1つのタイプのゲスト分子の、乾燥した、溶媒及び酸素を含まない混合物を得る工程、
によって得られる、態様1~10のいずれか一つに記載の方法。
[態様12]
工程iii)における前記混合物が真空下で乾燥される、態様11に記載の方法。
[態様13]
ゲスト分子をチャネル内に含むゼオライトL結晶の調製のための移動剤としての環状シロキサンの使用。