IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アビバックスの特許一覧

特許7214718膀胱癌の治療に使用するためのABX196
<>
  • 特許-膀胱癌の治療に使用するためのABX196 図1
  • 特許-膀胱癌の治療に使用するためのABX196 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】膀胱癌の治療に使用するためのABX196
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7028 20060101AFI20230123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230123BHJP
   C07H 15/04 20060101ALN20230123BHJP
【FI】
A61K31/7028
A61P35/00
A61P13/10
C07H15/04 E CSP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020515026
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 EP2018074778
(87)【国際公開番号】W WO2019053142
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】17306182.1
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515048803
【氏名又は名称】アビバックス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ クラブ
(72)【発明者】
【氏名】ディディエ シェレール
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート エールリヒ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ プーレティ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特許第5813953(JP,B2)
【文献】Vaccine,2014年,Vol.32,p.6138-6145
【文献】J Toxicol Pathol,2003年,Vol.16,p.19-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/04
A61P 35/00
A61K 31/7028
A61P 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱癌の治療のための方法に使用するための式(I):
【化1】
の化合物ABX196又はその医薬的に許容される塩のうちの1つ、及び1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物であって、ここで、前記方法が、さらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原の投与を含まない、医薬組成物
【請求項2】
前記膀胱癌が、膀胱移行細胞癌、膀胱扁平上皮細胞癌、及び膀胱腺癌からなる群から選択される、請求項1に記載の使用するための医薬組成物
【請求項3】
前記膀胱癌が、膀胱移行細胞癌である、請求項2に記載の使用するための医薬組成物
【請求項4】
前記膀胱癌が、表在性又は浸潤性の癌である、請求項1~3の何れか1項に記載の使用するための医薬組成物
【請求項5】
前記膀胱癌の治療方法において、前記化合物ABX196が、膀胱内又は静脈内に投与される、請求項1~4項の何れかに1項に記載の使用するための医薬組成物
【請求項6】
前記膀胱癌の治療方法が、手術及び/又は放射線療法をさらに含む、請求項1~5の何れか1項に記載の使用するための医薬組成物
【請求項7】
前記膀胱腫瘍の体積が、治療前の前記腫瘍体積と比較して、前記化合物ABX196による治療後に減少する、請求項1~6の何れか1項に記載の使用するための医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱癌の治療に使用するための化合物ABX196及びそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、長年の研究及び治療の進歩にもかかわらず、主な死亡原因である。特に、膀胱癌は、男性の間で最も一般的な癌の1つである。2014年には、米国において膀胱癌を患っている人は、推定696,440人であった。
【0003】
膀胱は、腹部の下部にある中空器官で、尿が体外に排出されるまで蓄尿する。膀胱癌においては、膀胱の組織に悪性(腫瘍)細胞が形成される。膀胱癌の兆候及び症状は、尿中の血液(血尿)、排尿時の痛み、頻尿及び腰痛を含む。喫煙及び頻繁な膀胱感染が、膀胱癌のリスクに影響することが知られている。
【0004】
診断は通常、組織生検を伴う膀胱鏡検査によって行われる。
【0005】
膀胱癌の最も一般的なタイプは、膀胱癌の90%に相当する移行上皮癌であり、膀胱の内側を覆う尿路上皮細胞に影響する。尿路上皮細胞は、移行細胞であり、膀胱が一杯になると形状が変化して伸びることが可能である。このタイプの癌は、尿路上皮癌とも称される。他の種類の膀胱癌は、扁平上皮癌(膀胱の内側の薄く平らな細胞で始まる癌)及び腺癌(粘液及び他の液体を作り、放出する細胞で始まる癌)を含む。
【0006】
膀胱癌の治療は、癌のステージによって異なる。治療には、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、又はそれらの組み合わせが含まれる場合がある。
【0007】
現在、膀胱癌の治療に使用され得る化学療法は、膀胱内化学療法又は全身化学療法の2種類がある。
【0008】
膀胱内化学療法において、薬物は、尿道を通して挿入されたカテーテルを通して膀胱に送達される。局所治療は、化学療法組成物と接触する表面の腫瘍細胞のみを破壊する。全身化学療法は通常、静脈内又は経口投与される。膀胱癌の最も一般的な化学療法レジメンは、次のような併用療法である:
- シスプラチン及びゲムシタビン;
- カルボプラチン及びゲムシタビン;
- メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、及びシスプラチンの4つの薬物を組み合わせたMVAC療法。
【0009】
膀胱癌の標準的な免疫療法は、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)と称されるマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)の生存型弱毒株である。BCGは、カテーテルを通して膀胱に直接入れられる。BCGは、膀胱の内側に付着し、免疫系を刺激して腫瘍を破壊する。
【0010】
しかしながら、特に化学療法及び/又は免疫療法において、新規膀胱癌療法に対する重要なニーズが未だ存在する。
【0011】
特に、膀胱癌の治療のための改善された化学療法のためのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、膀胱癌、より具体的には膀胱移行細胞癌の治療を提供することである。
【0013】
本発明の目的は、膀胱癌の治療に有用な抗腫瘍化合物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、膀胱癌の効率的な治療を提供すること、特に腫瘍体積を減少させる治療を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、化学療法剤及び/又は免疫療法剤の組み合わせではない膀胱癌の治療を提供することである。
【0016】
本発明の目的は、膀胱癌の治療に有用な医薬組成物を、単独で、又は手術及び/又は放射線療法と組み合わせて提供することである。
【0017】
従って、本発明は、膀胱癌の治療のための方法に用いるための、以下の式(I):
【化1】
を有する化合物ABX196、又はその医薬的に許容される塩のうちの1つに関する。
【0018】
より詳細には、本発明は、膀胱癌の治療のための方法に用いるための、式(I):
【化2】
の化合物ABX196、又はその医薬的に許容される塩のうちの1つに関し、ここで、前記方法は、さらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原の投与を含まない。
【0019】
本発明者達は、驚くべきことに、特定のNKTアゴニスト、すなわち式(I):
【化3】
のαガラクトシルセラミド誘導体ABX196が、特に単独で使用する際に、膀胱癌に対する抗腫瘍活性を有することを見出した。
【0020】
「単独で使用される」とは、ABX196が、さらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原と組み合わされて使用されないことを意味し得る。
【0021】
より具体的には、化合物ABX196は、驚くべきことに、単独で使用した場合、膀胱腫瘍の体積の減少又は縮小を可能にする。さらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原を使用せずに得られるこの抗腫瘍活性は、非常に興味深い。特に、他の化学療法剤及び/又は免疫療法剤の副作用は、そのような治療により回避することができる。従って、患者による治療の許容度及び治療を順守することが改善される可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
ABX196
本発明に用いられる式(I):
【化4】
の化合物ABX196は、KNT(ナチュラルキラーT)細胞を刺激することが知られているα-ガラクトシルセラミド誘導体である。本発明によれば、化合物ABX196はまた、その医薬的に許容される塩のうちの1つも指す。用語「医薬的に許容される塩」は、ABX196の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的又はその他の点で望ましくないものではない塩を指す。医薬的に許容される塩のレビューについては、Berge, et al. ((1977) J. Pharm. Sd, vol. 66, 1)を参照。
【0023】
上記で説明したように、本発明によれば、ABX196は、膀胱癌の治療に単独で使用され得る。「単独」とは、膀胱癌の治療において、化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原を、ABX196と共に使用又は投与(同時に又は別々に(すなわち、ABX196と組み合わせて))しないことを意味する場合がある。特定の実施形態において、ABX196は、ワクチンのアジュバントとして使用されない。
【0024】
一実施形態において、本発明による医薬組成物は、化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原をさらに含まない。他の実施形態において、前記医薬組成物は、ワクチン組成物を含まない又はワクチン組成物ではない。
【0025】
それでもなお、ABX196は、膀胱癌の治療において、手術及び/又は放射線療法と組み合わせて使用され得る。
【0026】
化学療法剤
本明細書で用いられる「化学療法剤」という用語は、抗癌化学療法で使用される細胞増殖阻害化合物又は細胞毒性化合物を指し、上記で定義されたABX196とは異なる。
【0027】
そのような化学療法剤は、当業者に周知であり、例えば以下を含む:
-シクロホファミド、イホスファミド、メクロレタミン、クロラムブシル及びメルファラン等の窒素マスタード;エチレンアミン及びチオテパなどのメチルメラミン;プロカルバジン等のメチルヒドロラジン誘導体;ブスルファン等のアルキルスルホン酸塩;カルムスチン又はロムスチン等のニトロソウレア; ダカルバジン及びテモゾロミド等のトリアゼン;シスプラチン、カルボプラチン及びオキサリプラチン等のプラチナ配位錯体、
を含むアルキル化剤;
-メトトレキサート等の葉酸類似体; フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン及びカペシタビン等のピリミジン類似体; メルカプトプリン、ペントスタチン、クラドリビン及びフルダラビン等のプリン類似体を含む代謝拮抗剤;
-ビンブラスチン、ビノレルビン及びビンクリスチン等のビンカアルカロイド;
-パクリタキセル及びドセタキセル等のタキサン;
-エトポシド及びテニポシド等のエピポドフィロトキシン;
-トポテカン及びイリノテカン等のカンプトテシン;
-ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、プリコマイシン及びエピルビシン等の抗癌抗生物質;
-ミトキサントロン、マイトマイシン及びブレオマイシン等のアントラセンジオン;
-ドラスタチン等の有糸分裂阻害剤;
-L-アスパラギナーゼ等の酵素;
-ヒドロキシ尿素等の置換尿素;
-トレチノイン等の分化剤;
-イマチニブ又はブリオスタチン等のプロテインキナーゼ阻害剤;
-ゲフチニブ及びボルテゾニブ等のプロテアソーム阻害剤;
-アミノグルテチミド等の副腎皮質抑制剤; プレドニゾン等の副腎皮質ステロイド; 酢酸メゲストロール及びメドロキシプロゲステロン等のプロゲスチン; ジエチルスチルベストロール等のエストロゲン; タモキシフェン、イドキシフェン、ドロロキシフェン、ジンドキシフェン、トリオキシフェン、ICI182,780、EM-800及びトレミフェン等の抗エストロゲン; アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタン等のアロマターゼ阻害剤; プロピオン酸テストステロン等のアンドロゲン; フルタミド等の抗アンドロゲン剤; 及びロイプロリド等のゴナドトロピン放出剤、を含むホルモン及び拮抗剤。
【0028】
「化学療法剤」とは、ドキソルビシン、シクロホスファミド、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン及びオキサリプラチンからなる群から選択される化合物を意味し得る。
【0029】
従って、好ましい実施形態において、ABX196は、上記で定義された膀胱癌の治療において、ドキソルビシンと組み合わせては使用されない。他の好ましい実施形態において、ABX196は、上記で定義された膀胱癌の治療において、シスプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、メトトレキサート、ビンブラスチン、及びドキソルビシンからなる群から選択される化学療法剤と組み合わせて使用されない。
【0030】
「化学療法剤」という用語は、医薬組成物に製剤化された化合物を指し得、これは、医薬的に許容される賦形剤をさらに含み得る。
【0031】
免疫療法剤
本明細書で使用される「免疫療法剤」という用語は、腫瘍抗原を標的とする抗体又はリンパ球等の癌性細胞に対する新規の開始すること又は既存の免疫応答を高めることによりs抗腫瘍効果を媒介する抗癌剤を指し、上記で定義したABX196とは異なる。
【0032】
免疫療法剤は、悪性細胞に対する宿主免疫系を(再)活性化する能力に基づいて「活性」又は「受動」として分類され得る。
【0033】
「抗体」は、2つの重鎖がジスルフィド結合によって互いに結合され、各重鎖がジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている天然又は従来の抗体であり得る。本明細書で使用される「抗体」という用語は、従来の抗体及びその断片、並びに単一ドメイン抗体及びその断片、特に単一ドメイン抗体の可変重鎖、及びキメラ、ヒト化、二重特異性又は多重特異性抗体を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、抗体は、その相補鎖決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である「単一ドメイン抗体」を含む。単一ドメイン抗体の例は、重鎖抗体、軽鎖を天然に欠く抗体、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン抗体、改変された単一ドメイン抗体が含まれる。単一ドメイン抗体は、限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む何れかの種に由来し得る。単一ドメイン抗体は、ラクダ種、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルカパ及びグアナコによって産生されるもの等、軽鎖を欠く重鎖抗体として知られる天然に存在する単一ドメイン抗体であり得る。
【0035】
軽鎖を欠く単一ドメイン抗体の可変重鎖は、「VHH」又は「ナノボディ」として当該技術分野で周知である。従来のVHドメインと同様に、VHHは、4つのFR及び3つのCDRを含む。
【0036】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、特定の抗原に対して向けられた単一アミノ酸組成の抗体分子を指す。
【0037】
モノクローナル抗体は、B細胞又はハイブリドーマの単一のクローンによって産生され得るが、組換え、すなわち、タンパク質改変によっても産生され得る。
【0038】
「キメラ抗体」という用語は、1つの抗体の1つ以上の領域及び他の抗体の1つ以上の領域を含む改変された抗体を指す。特に、キメラ抗体は、他の抗体、特にヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインに関連して、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメイン及びVLドメインを含む。非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は同様の動物等の何れかの動物が使用され得る。キメラ抗体はまた、少なくとも2つの異なる抗原に対する特異性を有する多重特異性抗体を示し得る。一実施形態において、キメラ抗体は、マウス起源の可変ドメイン及びヒト起源の定常ドメインを有する。
【0039】
「ヒト化抗体」という用語は、当初の全体又は部分的に非ヒト起源であり、特定のアミノ酸を置換するために、特にヒトの免疫応答を回避又は最小化するために、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域で改変された抗体を指す。ヒト化抗体の定常ドメインは、ほとんどの場合、ヒトのCH及びCLドメインである。一実施形態において、ヒト化抗体は、ヒト由来の定常ドメインを有する。
【0040】
(従来の)抗体の「断片」は、完全な抗体の一部、特に完全な抗体の抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例は、抗体断片から形成されたFv、Fab、F(ab’)、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ、二重特異性及び多重特異性抗体が含まれる。従来の抗体の断片は、重鎖抗体又はVHH等の単一ドメイン抗体であり得る。
【0041】
「Fab」という用語は、IgGをプロテアーゼであるパパインで処理して得られた断片のうち、H鎖のN末端側の約半分とL鎖全体が、ジスルフィド結合で結合される、約50,000Daの分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片を意味する。
【0042】
「F(ab’)2」という用語は、約100,000Daの分子量及び抗原結合活性を有する結合断片を指し、これは、IgGをプロテアーゼであるペプシンで処理することにより得られた断片の中で、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合したFabよりもわずかに大きい。
【0043】
「Fab」という用語は、約50,000Daの分子量及び抗原結合活性を有する抗体断片を指し、これは、F(ab’)2断片のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することにより得られる。
【0044】
単一鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドをコードするリンカーによって結合された遺伝子をコードするVH及びVLを含む遺伝子融合から通常発現される共有結合VH::VLヘテロダイマーである。ヒトscFv断片は、特に遺伝子組換え技術を使用することにより、適切な立体構造に保持されるCDRを含む。二価及び多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合により自発的に形成されるか、二価sc(Fv)2等のペプチドリンカーにより一価scFvを結合することにより生成され得る。
【0045】
「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロダイマーである。
【0046】
「(dsFv)2」は、ペプチドリンカーによって結合された2つのdsFvを示す。
【0047】
「二重特異性抗体」又は「BsAb」という用語は、単一分子内で2つの抗体の抗原結合部位を兼ね備える抗体を示す。従って、BsAbは、2つの異なる抗原に同時に結合できる。
【0048】
「多重特異性抗体」という用語は、単一分子内の2つ以上の抗体の抗原結合部位を兼ね備える抗体を意味する。
【0049】
「ダイアボディ」という用語は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)における軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を持つ小さな抗体フラグメントを指す。同じ鎖上の2つのドメインを対合することに短すぎるリンカーを用いると、ドメインは、他の鎖の相補的なドメインと対合し、2つの抗原結合部位を作成する。
【0050】
「免疫療法」とは、モノクローナル抗体又はその断片、特に、FV、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、(dsFv)2、scFv、sc(Fv)2、ダイアボディ及びVHHからなる群から選択される断片を意味する場合がある。
【0051】
「免疫療法剤」とは、好ましくは、モノクローナル抗体を意味し得る。
【0052】
免疫療法剤は、Her2/neu、EGFR、VEGF、CD20、CD52、CD33、TACE、カテプシンS、uPA、uPAR、PD-1、グリピカン-3、クローディン-3、クローディン-4、BMCA及びCTLA4からなる群から選択される腫瘍抗原に特異的な抗体、特にモノクローナル抗体であり得る。免疫療法剤は、PD-1に特異的な抗体、特にモノクローナル抗体であり得る。一実施形態において、免疫療法剤は、抗PD-1、抗CTLA-4、抗PD-L1、抗GITR、抗CD38、抗4-1BB、抗OX40、抗LAG3及び抗TIM-3からなる群から選択される抗体である。免疫療法剤は、特にモノクローナル抗PD1抗体であり得る。
【0053】
腫瘍抗原に特異的なモノクローナル抗体の例は、当業者に周知であり、リツキシマブ、トラスツズマブ(ハーセプチン)、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ(MBS-936558、MDX-1106又はONO-4538抗PD-1抗体としても知られる)、ペムブロリズマブ(MK-3475抗PD-1抗体としても知られる)、ピジリズマブ(CT-011抗PD-1抗体としても知られる)BMS-936559抗PD-L1抗体、MPDL3280A抗PD-L1抗体、MEDI4736抗PD-L1抗体、MSB0010718C抗PD-L1抗体、D1(A12)抗TACE抗体、A9抗TACE抗体、Fsn0503h抗カテプシンS抗体、ATN-658抗uPAR抗体、又はJ6M0抗BMCA抗体を含む。
【0054】
「免疫療法剤」とは、ニボルマブ、ペンブロリズマブ及びピジリズマブからなる群から選択される化合物を意味し得る。
【0055】
従って、好ましい実施形態において、ABX196は、上記で定義された膀胱癌の治療において、モノクローナル抗PD1抗体又はBCG、好ましくはモノクローナル抗PD1抗体と組み合わせて使用されない。
【0056】
免疫療法剤は、上記で定義されたモノクローナル抗体及び上記の「化学療法剤」のセクションで定義された化学療法剤を含むコンジュゲートであり得る。
【0057】
他の実施形態において、免疫療法剤は、養子移入されたT細胞である。
【0058】
「養子細胞移植」という用語は、一般に(1)循環リンパ球又は腫瘍浸潤リンパ球の回収、(2)ex vivoでの選択/改変/拡大/活性化、及び(3)患者への(再)投与、ほとんどの場合、リンパ球除去プレコンディショニング後及び免疫刺激剤との併用に関する細胞に基づく抗癌免疫療法のバリアントを指す。
【0059】
免疫療法剤は、以下に定義されるように、医薬的に許容される賦形剤をさらに含み得る医薬組成物に製剤化され得る。
【0060】
抗原
本明細書で使用される「抗原」という用語は、抗体又は抗体様結合タンパク質によって結合され得る分子を指す。この用語はさらに、その抗原のエピトープに結合できる抗体を産生するために動物で使用できる分子を指す。標的抗原は、1つ以上のエピトープを有する。
【0061】
好ましくは、「抗原」とは、腫瘍組織上で専ら発現される、腫瘍組織に関連する、又は腫瘍組織において過剰発現される「腫瘍抗原」を意味する。例示的な腫瘍抗原は、限定されないが、5-α-レダクターゼ、α-フェトプロテイン(AFP)、AM-1、APC、APRIL、Bメラノーマ抗原遺伝子(BAGE)、β-セタニン、Bcl12、Bcr-Abl、ブラキュリ、CA-125、カスパーゼ-8(CASP-8、FLICEとしても知られる)、カテプシンS、CD19、CD20、CD21/保体受容体2(CR2)、CD22/BL-CAM、CD23/FcεRII、CD33、CD35保体受容体1(CRT)、CD44/PGP-1、CD45/白血球共通抗原(LCA)、CD46/膜補因子タンパク質(MCP)、CD52/CAMPATH-1、CD55/減衰加速因子(DAF)、CD59/プロテクチン、CDC27、CDK4、癌胎児性抗原(CEA)、c-myc、シクロオキシゲナーゼ-2(cox-2)、大腸癌欠失遺伝子(DCC)、DcR3、E6/E7、CGFR、EMBP、Dna78、ファルネシルトランスフェラーゼ、線維芽細胞成長因子-8a(FGF8a)、線維芽細胞成長因子-8b(FGF8b)、FLK-1/KDR、葉酸受容体、G250、Gメラノーマ抗原遺伝子ファミリー(GAGEファミリー)、ガストリン17、ガストリン放出ホルモン、ガングリオシド2(GD2)/ガングリオシド3(GD3)/ガングリオシド-モノシアル酸-2(GM2)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、UDP-GlcNAc:R1Man(α1-6)R2[GlcNAc~Man(α1-6)]β1,6-Ν-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(GnTV)、GP1、gp100/Pme1-17、gp-100-in4、gp15、gp75/チロシン関連タンパク質-1(gp75/TRP-1)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヘパラナーゼ、Her2/neu、EGFR、ヒト乳腺腫瘍ウイルス(HMTV)、70kD熱ショックタンパク質(HSP70)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インスリン様成長因子受容体-1(IGFR-1)、インターロイキン-13受容体(IL-13R)、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS9、Ki67、KIAA0205、K-ras、H-ras、N-ras、KSA、LKLR-FUT、メラノーマ抗原をコードするファミリー(少なくとも、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、及びMAGE-4を含むMAGEファミリー)、マンマグロビン、MAP17、T細胞-1(MART-1)によって認識されるメランA/メラノーマ抗原、メソセリン、MICA/B、MT-MMPs、ムチン、精巣特異的抗原NY-ESO-1、オステオネクチン、p15、P170/MDR1、p53、p97/メラノトランスフェリン、PAI-1、血小板由来成長因子(PDGF)、PRAME、プロバシン、プロゲニポイエチン、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、RAGE-1、Rb、RCAS1、SART-1、SSX-ファミリー、STAT3、STn、TAG-72、形質転換成長因子-α(TGF-α)、形質転換成長因子-β(TGF-β)、uPA、uPAR、TNF-α変換酵素(TACE)、サイモシン-β-15、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、TP1、TRP-2、チロシナーゼ、血管内皮成長因子(VEGF)、ZAG、p16INK4、PD-1、PD-L1、PD-L2、グリピカン-3、クローディン-3、クローディン-4、BMCA、及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、を含む。
【0062】
好ましくは、化合物ABX196は、抗原との組み合わせではなく、好ましくは、メラノーマ癌細胞によって発現される抗原例えばTRP-2等の腫瘍抗原との組み合わせでなく、単独で使用される。
【0063】
医薬組成物
本発明はまた、上記で定義された使用のため、式(I):
【化5】
の化合物ABX196、及び1つ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0064】
本発明上で用いられる医薬組成物は、医薬的に許容される賦形剤をさらに含み得る。
【0065】
「医薬的に」又は「医薬的に許容される」とは、必要に応じて哺乳動物、特にヒトに投与した場合に有害、アレルギー又は他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。医薬的に許容される担体又は賦形剤とは、非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料又は何れかのタイプの製剤補助剤を指す。
【0066】
本発明上で使用される医薬組成物は、当業者に周知の何れかの適切な経路により投与され得る。当業者に理解されるように、医薬組成物は、意図された投与経路に適合するように適切に製剤化され得る。適切な投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、経口(例えば、頬、吸入、鼻及び肺スプレー)、皮内、経皮(局所)、経粘膜、眼内及び直腸投与が含まれる。
【0067】
好ましくは、本発明上で用いられるABX196又は医薬組成物は、静脈内、膀胱内(すなわち、膀胱に局所的に)又は腫瘍内に投与される。
【0068】
一実施形態において、ABX196又は本発明上で使用される医薬組成物は、膀胱内(すなわち膀胱内に局所的に)又は静脈内に投与される。
【0069】
ABX196又は本発明上で使用される医薬組成物は、それを必要とする患者に1回又は複数回投与され得る。
【0070】
本発明上で使用される医薬組成物は、少なくとも0.2μg/患者の化合物ABX196の用量で送達され得る。一実施形態において、本発明上で使用される医薬組成物は、少なくとも3ng/kg、例えば3ng/kg~5ng/kgの用量のABX196で送達され得る。有効用量は、投与経路によって異なる。
【0071】
治療方法
本発明はまた、上記で定義された式(I):
【化6】
の化合物ABX196の治療有効量を、治療を必要とする患者に投与することを含む、上記で定義された膀胱癌を治療する方法に関する。
【0072】
特定の実施形態において、前記方法は、上記で定義されたさらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原の投与を含まない。
【0073】
本発明はまた、膀胱癌の治療のための医薬の製造のための式(I):
【化7】
の化合物ABX196の使用に関する。特定の実施形態において、前記使用は、上記で定義されたさらなる化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原の投与を含まない。
【0074】
膀胱癌
一実施形態において、膀胱癌は、膀胱移行細胞癌、膀胱扁平上皮細胞癌、及び膀胱腺癌からなる群; 好ましくは膀胱移行細胞癌から選択される。
【0075】
移行細胞癌は、低悪性度又は高悪性度であり得る。「低悪性度移行上皮癌」とは、治療後に再発する膀胱癌(再発癌)を意味し得る。「高悪性度移行上皮癌」とは、治療後に再発し、膀胱の筋肉層から体の他の部分、最終的にはリンパ節に広がる膀胱癌を意味し得る。
【0076】
他の実施形態において、膀胱癌は、表在性又は浸潤性の癌である。
【0077】
「表在性膀胱癌」とは、膀胱癌が膀胱の内層にある場合を意味する。
【0078】
「浸潤性又は浸潤性癌」とは、膀胱の内壁を介して広がり、膀胱の筋肉壁に浸潤し、及び/又は近くの臓器及び/又はリンパ節に広がった膀胱癌を意味する。
【0079】
特定の実施形態において、膀胱癌は、以下のステージのうちの1つを有する膀胱癌から選択される:
-ステージ0a: この癌のステージは、膀胱の内層の表面のみに見られる。このタイプの膀胱癌は、非浸潤性乳頭尿路上皮癌(Ta、N0、M0)とも呼ばれる。
-ステージ0is: このステージの癌は、扁平とも呼ばれ、膀胱の内層にのみに見られ、高悪性度である(Tis、N0,M0)
-ステージI: 膀胱の内層から粘膜固有層に癌が増殖している(T1、N0、M0)。
-ステージII: 癌が膀胱の厚い筋肉壁に広がっている。浸潤癌又は筋肉浸潤癌とも呼ばれる(T2、N0、M0)
-ステージIII: 癌が筋肉壁全体に広がり、膀胱を囲む組織の脂肪層に達する。また、男性では、前立腺に、女性では、子宮及び膣に広がっている可能性がある(T3又はT4a、N0、M0)。
-ステージIV: 次の何れかの病状:
腫瘍が、骨盤壁又は腹壁に広がっているが、リンパ節又は体の他の部分には広がっていない(T4b、N0、M0)。
腫瘍が、1つ以上の局所的なリンパ節に広がっているが、体の他の部分には広がっていない(T、N1-3、M0)。
腫瘍が、リンパ節に広がっていてもいなくても、体の他の部分に広がっている(何れかのT、何れかのN、M1)
【0080】
特定の実施形態において、本発明の使用によれば、化合物ABX196による治療後の膀胱腫瘍体積は、治療前の膀胱腫瘍体積と比較して減少する。
【0081】
他の特定の実施形態において、本発明の使用によれば、化合物ABX196による治療後の郷抗腫瘍体積は、他の化学療法剤及び/又は免疫療法剤及び/又は抗原、好ましくは、抗PD1抗体等の他の免疫療法剤による治療後の膀胱腫瘍体積と比較して減少する。
【0082】
他の特定の実施形態において、本発明の使用によれば、化合物ABX196による治療後の膀胱腫瘍体積は、BCGでの治療後、好ましくは、同じ治療期間の腫瘍体積は減少するか、又は同じである。
【0083】
一実施形態において、本発明の使用によれば、化合物ABX196による治療後の膀胱腫瘍体積は、コントロールによる治療後の膀胱腫瘍の体積と比較して減少する。好ましくは、前記コントロールによる治療は、好ましくは同じ治療期間中に腫瘍膀胱に投与されたビヒクル(すなわち、抗腫瘍剤を含まない組成物)、免疫療法剤、又は化学療法剤による治療を指す。一実施形態において、「膀胱腫瘍体積」とは、平均の「膀胱腫瘍体積」を指す
【0084】
一実施形態において、化合物ABX196のT/C比率(%)は、50%~60%の間を含み、例えば約54%、好ましくは42%より低いか等しい。
【0085】
治療/コントロール比率(T/C(%))は、治療腫瘍体積の中央値をコントロール腫瘍体積の中央値で除算し、100を掛けることで計算され得る。例えば、ABX196の投与後に治療腫瘍体積の中央値が得られ、ABX196のビヒクルの投与後にコントロール腫瘍体積の中央値が得られ、前記腫瘍体積は同時に評価される。
【0086】
特定の実施形態において、前記膀胱癌の治療は、手術及び/又は放射線療法をさらに含む。
【0087】
「手術」とは、膀胱腫瘍の経尿道的切除(腫瘍の除去のみ)又は部分的又は完全な膀胱の切除(膀胱の一部又は全体の除去)を意味し得る。
【0088】
「放射線療法」とは、癌細胞を破壊するための高エネルギーX線又は他の粒子の使用を意味し得る。インプラントを使用して放射線療法を行う場合がある。放射線療法レジメンは通常、設定された期間にわたって行われる特定の数の治療で構成される。
【0089】
上記の全ての実施形態は、上記で定義されたABX196の使用、又は上記で定義された医薬組成物の使用、又は本発明による治療方法に適応される。
【0090】
本発明によれば、用語「患者」、「対象」、「それを必要とする対象」は、膀胱癌に罹患した又は罹患する可能生のあるヒト又は非ヒト哺乳動物を対象とする。
【0091】
本発明上において、「治療する」又は「治療」という用語は、そのような用語が適用される障害又は病状、又は1つ以上のそのような障害又は病状の逆転、緩和、進行の阻害、又は予防を意味する。
【0092】
本発明の化合物の「治療有効量」とは、何れかの医学的な治療に適応可能な合理的な利益/リスク比率で、膀胱癌を治療する(例えば、成長を制限する、又は腫瘍転移を遅らせる又は遮断する)ために十分な量の化合物ABX196を意味する。しかしながら、本発明の化合物の1日の総使用量は、健全な医学的な判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されるだろう。何れか特定の対象のための特定の治療有効用量レベルは、治療中の障害及び障害の重症度、使用される特定の化合物の活性、使用される特定の組み合わせ、年齢、体重、一般的な健康状態、対象の性別及び食事、投与の時間、使用される特定の化合物の投与経路及び排泄速度、治療期間、使用される特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、及び医学的分野で良く知られている同様の要因、を含む様々な要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルより低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、十分に当業者が行い得る範囲である。
【0093】
より詳細には、本明細書で使用される「膀胱癌の治療」という用語は、以下の特徴の少なくとも1つを含む: 膀胱癌に関連する症状の緩和、癌性腫瘍の程度の減少(例えば、腫瘍成長の減少)、癌性腫瘍の状態の安定化(例えば、腫瘍成長の抑制)、癌のさらなる拡散の予防(例えば、転移)、癌の発生若しくは再発の予防、癌の進行の遅延若しくは遅滞(例えば、腫瘍成長の減少)、又は癌の状態の改善(例えば、腫瘍サイズ若しくは体積の減少)。
【0094】
以下の図及び実施例により、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1図1は、様々な試験治療に応じての腫瘍誘発後の時間の関数での膀胱腫瘍の平均体積を示す。
図2図2は、様々な試験治療に応じての腫瘍誘発後23日目の腫瘍成長阻害(T/C%)を示す。
【実施例
【0096】
実施例1:化合物ABX196の抗腫瘍活性
【0097】
研究目的
この研究の目的は、MBT2同系異所性モデルにおいて全身に単独で投与されるABX196又は抗PD-1抗体の抗腫瘍活性を決定し、特に確立された皮下腫瘍を治療するこれらの薬剤の能力を評価することである。
【0098】
材料及び方法
1.製品
抗PD-1抗体(ref.:BE0146、BioXcell; クローン:RMP1-14、反応性:マウス; アイソタイプ:ラットIgG2a; 保存条件:+4℃)。抗PD-1抗体は、製造業者の推奨に従って、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は他の適切なビヒクルで調製される。抗PD-1抗体は、10mg/kgの用量で投与される。抗PD-1抗体は、マウスの腹腔に注射される(腹腔内、IP)。抗PD-1抗体は、10mL/kg/admの用量で投与される。
【0099】
ABX196は、250μg/mLの溶液として提供され、マウス当たり100ngの用量で投与される。ABX196は、マウスの尾静脈に静脈内経路で注射される(IV、ボーラス)。ABX196は、100μLの固定用量で投与される(つまり、体重20gのマウス1匹当たり約5mL/kg/adm)。
【0100】
2.癌細胞系統
【表1】
マウスMBT-2細胞系統は、C3H/HeJマウスにおいて発癌物質誘導膀胱腫瘍に由来する。MBT-2細胞系統は、メモリアル・スローン・ケタリング癌センター(ニューヨーク、USA)のDr. Cozziから入手した。
【0101】
腫瘍細胞を、加湿雰囲気(5% CO、95%空気)で37℃、単層として成長させた。培養培地は、10%ウシ胎児血清(ref.:3302、Lonza)を添加した2mM L-グルタミン(ref.:BE12-702F、Lonza、Verviers、Belgium)を含むRPMI1640である。腫瘍細胞は、プラスチック製フラスコに付着される。実験用として、カルシウム又はマグネシウムを含まないハンクス培地(ref.:BE10-543F、Lonza)でトリプシン-ベルセン(ref.:BE02-007E、Lonza)で5分間処理することにより、培養フラスコから腫瘍細胞を剥離し、完全な培養培地を加えた中和される。
【0102】
細胞を数え、その生存率を、0.25%トリパンブルー排除アッセイにより評価する。
【0103】
3.動物
6~7週齢の68(68)匹の健康な雌のC3H/HeJ(C3H/HeOuJ)マウスを、MBT-2モデルのためジャクソン研究所(バーハーバー、メイン)から入手した。
【0104】
4.動物におけるMBT-2腫瘍の誘導
MBT-2腫瘍は、200μLのRPMI1640中の1×10個の細胞を、68匹の雌動物の右脇腹に皮下注射することにより誘導される。
【0105】
5.治療スケジュール
腫瘍が、平均体積80~120mmに達すると治療が開始される(この実験では13日目)。MBT-2モデルのため68匹のマウスを、Vivo Manager(登録商標)ソフトウェア(Biosystemes、Couternon、France)を使用して、個々の腫瘍体積に応じてランダムに各12匹ずつ4群に分けた(1つは図示せず)。統計的テスト(分散分析、ANOVA)を実行し、群間の均一性をテストする。治療スケジュールは、次のように選択された:
群1の動物には、ABX196ビヒクルのIV注射及び抗PD-1抗体ビヒクルのIP注射が行われ、
群2の動物には、100ngのABX196のIV注射が行われ、
群3の動物には、週2回、抗PD-1抗体が投与される。
治療スケジュールは、以下の表2にまとめられる。
【表2】
【0106】
結果
1.腫瘍体積:
結果を図1に示す。図1は、腫瘍誘導後(腫瘍誘発後)の時間の関数における平均腫瘍体積を示す。これらの結果は、ABX196が、抗PD-1抗体よりも腫瘍体積をより効率的に減少させることを示す。
【0107】
2.腫瘍成長抑制:
腫瘍成長阻害の統計分析は、以下の表3に示すように評価される。
【表3】
【0108】
腫瘍成長抑制(T/C)は、治療群とコントロール群の腫瘍体積の中央値の比率として定義される。最適値は、達成された最大の腫瘍成長阻害を反映する最小のT/C比率である。図2では、ABX196が、抗PD-1抗体よりも腫瘍成長をより効率的に阻害することが観察される。対応するT/C(%)値を以下の表4に示す。
【表4】
【0109】
実施例2:膀胱癌に対する標準的治療との比較研究
目的: OTモデルにおいてABX196とBCGワクチン(標準的ケア)を比較する。
プロトコールの手順は以下の通りである:
-MBT-2腫瘍細胞系統のIn vitro増殖
-マウスにおける腫瘍細胞の同所性注射;
-体重に基づくマウスのランダム化(4群、12マウス/群);
-治療の準備;
-以下のスケジュールに従ったマウス群の治療:
【表5】
-週2回のマウスの体重モニタリング;
-毎日の行動及び生存に関するマウスのモニタリング; 及び
-ABX196の最初の注射後の12~18時間後の全てのマウスからの血液の採取(血清調製のため)。
【0110】
実施例3:同所性mbt-2腫瘍細胞を有するマウスにおけるABX196、抗PD-1抗体標的抗体及びBCGの抗腫瘍活性研究
1.動物及び動物のケア:
105 C3Hマウスを購入し、SPF条件下で6週間ケージに入れる。
【0111】
2.抗腫瘍活性研究:
プロトコールは、以下の手順で行われる:
-MBT-2腫瘍細胞系統のIn vitro増殖;
-マウスの腫瘍細胞の同所性注射;
-体重に基づいたマウスのランダム化(7群、12マウス/群、合計84匹のマウス); 及び
-以下のスケジュールに従ったマウスの治療:
【表6】
図1
図2