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特許7214728コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/06 20060101AFI20230123BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 24/30 20060101ALI20230123BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B28C7/06
C04B28/02
C04B16/02 Z
C04B22/14 A
C04B24/16
C04B24/26 B
C04B24/38 D
C04B24/38 Z
C04B24/30 D
C04B24/06 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020525438
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2019021742
(87)【国際公開番号】W WO2019244601
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2018115253
(32)【優先日】2018-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】石井 泰寛
(72)【発明者】
【氏名】宮口 克一
(72)【発明者】
【氏名】浦野 真次
(72)【発明者】
【氏名】依田 侑也
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-272808(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012437(WO,A1)
【文献】特開2011-207650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 7/00-7/16
C04B 7/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶紙で構成された包体にコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を封入して内包体とし、当該内包体をコンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車に投入してコンクリートと混合するコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法であって、
前記水溶紙の原料が木材パルプを含み、さらに、多糖類、ポバール、セルロース、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロース、及びでんぷんからなる群から選択される少なくとも1種の水溶紙用添加剤を含み、
前記木材パルプと前記水溶紙用添加剤との合計に対する前記木材パルプの含有量が75~95質量%であり、
前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤がアルミニウムスルホン酸塩を含み、前記アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径が500μm以下であり、
前記内包体は、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を250g/L以上1200g/L以下を封入した状態で、コンクリート1m あたり2~10袋使用するコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項2】
前記水溶紙は、スターラーにより800rpmで撹拌されている20℃の水500mLに10gの前記水溶紙を添加した際に、当該添加後から30秒以内で、前記水溶紙に由来する凝集物が目視により確認できなくなる請求項1記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項3】
前記包体が、袋体及び箱体の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項4】
前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後の前記コンクリートの打ち込み直後から前記コンクリートの表面仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度2~8℃において、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、短縮される請求項1~のいずれか1項に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項5】
前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後の前記コンクリートの仕上げ表面の品質が、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、透水率及びスケーリング量がそれぞれ60%以上低減する請求項1~のいずれか1項に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項6】
前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤が、さらに、メラミン系化合物、オキシカルボン酸類及び/又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1~5のいずれか1項に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【請求項7】
前記内包体を、コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車中のコンクリートに直接投入する、あるいは、前記コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車に空気圧送により投入する請求項1~のいずれか1項に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築分野等におけるコンクリート工におけるコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設業界は、いわゆる3K(危険、キツイ、汚い)作業が多い業界と言われている。国土交通省は、「国土交通白書」や「重点政策」の中で、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望がもてる)を目指すとし、建設業界の改革を掲げている。例えば、コンクリート工においても、「i-Construction」というキーワードの下、作業の効率化や、省力化・軽労化を推進していく方針である。その中で、施工現場の作業員の労働環境の改善と関連し、残業を減らすことが望まれている。
【0003】
コンクリート工では、コンクリートを打設した後に表面仕上げを行う。この表面仕上げの良否はコンクリートのひび割れや強度に影響し、最終的にはコンクリート構造物の耐久性にまで影響する。コンクリートの表面仕上げとしては、金属ゴテや木ゴテやプラスティック製のコテや硬質ゴム製のコテ等で平滑にするコテ仕上げ、表面仕上げ用のバイブレータ等で平滑にするバイブレータ仕上げ等が挙げられるが、主にコテを用いて行われる。
このコテ等による表面仕上げについて、最終の表面仕上げ作業の開始時はブリーディングが引き始めた時機が最適な時期とされており、その時機までは作業を行えない。その時機はコンクリートの凝結始発時間の直前であるため、特に外気温の低い寒冷期におけるコンクリート打設では、何時間もの間、左官職人が待機しているのが現状である。この待機時間が、作業効率の低下を招き、残業につながるケースが多く見受けられる。
【0004】
コンクリートの表面仕上げの工程に関しては、表面仕上げ機を使用する方法(特許文献1)、荒均しをして養生マットを併用する方法(特許文献2)、樹脂フィルムを用いてコテ仕上げする方法(特許文献3)、コンクリート表面からろ過マットを介して真空脱気する方法(特許文献4)、不織布シートを用いる方法(特許文献5および6)などが知られている。しかし、特別な機材や資材を用いる必要があったり、余計な工程や仕上げに特別な技術を要するなど手間がかかったりするなどの課題があった。また、コンクリートの表面仕上げに関しては、ポリマーディスパージョン(特許文献7)、界面活性剤(特許文献8)や水性養生剤(特許文献9)などの表面仕上げ剤を併用することで特別な資機材を必要としない技術が開発されてきた。しかし、これらの表面仕上げ剤ではコンクリート表面のコテ仕上げの品質を向上できるが、コテ仕上げが可能となる時間までの短縮までは不可能であり、工程の短縮は不可能であった。
【0005】
また、混和材をアジテータ車へ投入する工程に関して、投入の手間や設備を要することなく、簡易かつ安全に材料を投入する方法として、水溶紙に封入して材料を投入する方法が知られている(特許文献10、11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第02044653号公報
【文献】特開平06-172060号公報
【文献】特開平10-018566号公報
【文献】特許第03398716号公報
【文献】特開2000-015619号公報
【文献】特許第05830051号公報
【文献】特許第01887894号公報
【文献】特許第04574316号公報
【文献】特開2014-173246号公報
【文献】特開平06-155444号公報
【文献】特開2001-252918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにこれまでのコンクリートの表面仕上げ工程に対する技術では、良好な平滑性を得るために特別な資機材や手間がかかるものであり、加えてコンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮までは不可能であり、工程の短縮は不可能であった。
【0008】
表面仕上げ剤が粉体である場合は、アジテータ車に投入する際に飛散しやすく、発塵抑制を目的とした排気装置に吸引され、アジテータ車内に所定量混和させることが難しい。また、粉体のままの投入では均一に分散させることが難しく、均一に分散させるにはコンクリートの練り混ぜ時間を長く確保する必要があった。さらに、粉体をそのまま投入する場合、作業安全上の問題が生じることが懸念される。
そこで、本発明は、表面仕上げ剤としてのコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を簡易かつ安全に安定してコンクリート中に均一に混和し、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の有する機能を十分に発揮させることができるコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく検討を行なったところ、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0010】
[1] 水溶紙で構成された包体にコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を封入して内包体とし、当該内包体をコンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車に投入してコンクリートと混合するコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[2] 前記水溶紙の原料が木材パルプを含む[1]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[3] 前記水溶紙の原料が、さらに、多糖類、ポバール、セルロース、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロース、及びでんぷんからなる群から選択される少なくとも1種の水溶紙用添加剤を含み、前記木材パルプと前記水溶紙用添加剤との合計に対する前記木材パルプの含有量が75~95質量%である[2]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[4] 前記水溶紙は、スターラーにより800rpmで撹拌されている20℃の水500mLに10gの前記水溶紙を添加した際に、当該添加後から30秒以内で、前記水溶紙に由来する凝集物が目視により確認できなくなる[1]~[3]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[5] 前記包体が、袋体及び箱体の少なくともいずれかである[1]~[4]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[6] 前記コテ仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後の前記コンクリートの打ち込み直後から前記コンクリートの表面仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度2~8℃において、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、短縮される[1]~[5]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[7] 前記コテ仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後の前記コンクリートの仕上げ表面の品質が、前記コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、透水率及びスケーリング量がそれぞれ60%以上低減する[1]~[6]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[8] 前記コテ仕上げ用硬化促進剤が、アルミニウムスルホン酸塩を含む[1]~[7]のいずれか1項に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[9] 前記アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径が500μm以下である[8]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[10] 前記コテ仕上げ用硬化促進剤が、さらに、メラミン系化合物、オキシカルボン酸類及び/又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む[8]又は[9]に記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
[11] 前記内包体を、コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車中のコンクリートに直接投入する、あるいは、前記コンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車に空気圧送により投入する[1]~[10]のいずれかに記載のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法によれば、表面仕上げ剤としてのコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を簡易かつ安全に安定してコンクリート中に均一に混和し、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の有する機能を十分に発揮させることができる。
なお、「コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の有する機能」とは、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を添加することで、コンクリート打設から表面仕上げが可能となる時間を、添加しない場合に比べて短縮できる機能をいう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書で使用する「部」や「%」は特に規定のない限り質量基準である。また、本発明のコンクリートとは、セメントペースト、セメントモルタル、およびセメントコンクリートを総称するものである。さらに、以下では表面仕上げの好ましい一例として、コテ仕上げを挙げて説明するが、他の表面仕上げについても同様なことがいえる。
【0013】
本発明のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の投入方法では、まず、水溶紙で構成された包体にコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を封入して内包体とする。次に、この内包体をコンクリートミキサーおよび/またはアジテータ車に投入してコンクリートと混合する。
【0014】
上記水溶紙としては、水に添加した際に水溶紙に由来する凝集物がほとんど発生しないものであれば特に限定されない。なかでも、スターラー(例えば、池田理工社製)により800rpmで撹拌されている20℃の水500mLに10gの水溶紙を添加した際に、当該添加後から30秒以内で、水溶紙に由来する凝集物が目視により確認できなくなるものであることが好ましい。かかる水溶紙であることで、迅速に溶解若しくは分解し内包されたコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤をコンクリート中に均一に混合することができる。
【0015】
また、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は、良好で平滑なコテ仕上げ表面を確保できるとともに、コンクリート打設からコテ仕上げが可能となる時間までの短縮が可能となり、左官職人の業務効率化につながり、建設現場の残業を減らすことができるといった効果を奏するものであり、「コテ仕上げ用硬化促進剤」ともいう。
【0016】
コテ仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後のコンクリートの打ち込み直後からコンクリートの表面仕上げが可能となるまでの時間が、環境温度2~8℃において、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して短縮されるものであることが好ましい。
かかるコテ仕上げ用硬化促進剤であれば、低温下でも最終コテ仕上げを実施するまでの時間を短縮することが可能となり、建設現場の施工効率を向上させることが可能となる。
また、コテ仕上げ用硬化促進剤は、コンクリート1mに対し4kg/mを混和し、当該混和後のコンクリートの仕上げ表面の品質が、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しない以外は同じ配合のコンクリートと比較して、透水率及びスケーリング量がそれぞれ60%以上(好ましくは70%以上)低減するものであることが好ましい。
【0017】
上記のようなコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤としては、アルミニウムスルホン酸塩を含むことが好ましく、アルミニウムスルホン酸塩からなることがより好ましい。さらに、メラミン系化合物、オキシカルボン酸類及び/又はその塩からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0018】
アルミニウムスルホン酸塩としては、各種の硫酸アルミニウムが挙げられる。硫酸アルミニウムとは、一般式Al(SO・nHOで表され、式中のnは0~18の範囲にある。硫酸アルミニウムとしては、無水硫酸アルミニウム、及び様々な数の結晶水の硫酸アルミニウムが存在するが、本発明ではいずれのものも使用可能である。
アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径は限定されるものではないが、500μm以下が好ましく、325μm以下がより好ましい。アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径が500μm以下であることで、コテ仕上げ性が良好となったり、コテ仕上げ後のブリーディングが収まりやすくなったりする。
なお、平均粒径の測定は、堀場製作所社製、レーザ回折/散乱式粒度分布計により測定したものである。
【0019】
メラミン系化合物としては粉末のメラミン系化合物が好ましく、メチロールメラミン縮合物、メラミンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等が挙げられる。具体的には、日本シーカ(株)製の製品名「シーカメントFF」等が使用可能である。
【0020】
オキシカルボン酸としては、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等が挙げられ、また、オキシカルボン塩としては、上記オキシカルボン酸の塩等が挙げられる。これらは1種類のみ、又は2種類以上を混和させてもよい。
【0021】
コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の混和量はコンクリート1mに対して2kg~10kg/mが好ましい。2kg/m以上であることで、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果が得られやすくなる。10kg/m以下とすることでコンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの時間の短縮効果が得られやすくなり、コンクリートの流動性保持性を良好に維持することができる。なお、本発明においては、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は包体に封入した内包体の状態でコンクリート中に投入される。これにより、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を簡易かつ安全に安定してコンクリート中に均一に混和することができる。
【0022】
本発明に使用する水溶紙は、その原料が木材パルプを含むことが好ましい。水溶紙の原料は、さらに、多糖類、ポバール、セルロース、ポリビニルアルコール、カルボメチルセルロース、及びでんぷんからなる群から選択される少なくとも1種の水溶紙用添加剤を含むことが好ましい。
木材パルプと水溶紙用添加剤との合計に対する木材パルプの含有量は75~95%であることが好ましく、80~90%であることがより好ましい。木材パルプと水溶紙用添加剤との合計に対する水溶紙用添加剤は、5~25%が好ましく、10~20%がより好ましい。
上記範囲の下限値以上であることで、水溶紙で構成された包体を製造する際のヒートシールに必要な接着剤原料が不足せず、製造が容易となる。上記範囲の上限値以下であることで、コンクリート中への空気の巻き込みが抑えられる。
【0023】
本発明に係る包体の使用量は、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を250g/L以上1200g/L以下を封入した状態で、コンクリート1mあたり2~10袋使用することが好ましく4~8袋使用することがより好ましい。
【0024】
本発明に係る水溶紙で構成された包体は、袋体及び箱体の少なくともいずれかであることが好ましい。
本発明に係る包体が袋体である場合、その寸法は、横15~35cmが好ましく、20~30cmがより好ましい。縦は10~50cmが好ましく、15~40cmがより好ましい。幅(袋の底部の奥行き)は5~20cmが好ましい。
本発明に係る包体が箱体である場合、その寸法は、横15~35cmが好ましく、20~30cmがより好ましい。縦は10~50cmが好ましく、15~40cmがより好ましい。高さは5~20cmが好ましい。
上記それぞれの範囲であることで、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の包装袋の封入量が250g/L以上1200g/L以下で封入しやすくなり、1mあたりの添加袋数が増加しすぎるのを防ぐことができる。また、分散するまでの時間も短くなり、コンクリート練り混ぜ後に十分分散しなかったり、空気圧送をした場合、圧送管内で引っかかり破袋したりすることを防ぐことができる。
【0025】
本発明に係る袋体は、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を充填した後は、ヒートシール、接着剤シール、糸縫いシールといった手段で開口部がシールされることが好ましい。
また、本発明に係る箱体は、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を充填した後は、蓋を被せて上記手段で密封することが好ましい。
なお、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を充填する前の袋体及び箱体は、既述の水溶紙を使用して、公知の手法により作製することができる。
【0026】
本発明に係る内包体は、コンクリートミキサー及び/又はアジテータ車中のコンクリートに直接投入してもよく、又は、コンクリートミキサー及び/又はアジテータ車に空気圧送により投入してもよい。
【0027】
アジテータ車に投入する場合は、具体的には、コンクリートアジテータ車が到着して直ぐに、手で内包体をアジテータ車に投入しても、5m~10m程度のホースを用いてコンプレッサーによる圧縮空気を利用して内包体を圧送してもかまわない。この場合、例えば、エクセア社製空気搬送機「ラインバック」が利用可能である。
【0028】
本発明において、コンクリートに使用されるセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱、および中庸熱などの各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ、または石灰石微粉などを混合した各種混合セメント、ならびに、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメントなどが挙げられる。
また、混和材料等も特に限定されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。
【実施例
【0029】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
「実験例1」
単位セメント量310kg/m、単位水量170.5kg/m、s/a=43%、空気量4.5±1.5%、スランプ12±2.5cm、減水剤添加率:セメント×1.0%のコンクリートを生コン工場にて3mを製造し、生コン工場から出荷してから運搬時間も含めて30分後に、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を粉体のまま、あるいはこれを封入した内包体をアジテータ車に直接投入し、3分間回転撹拌し、混和した。その後、1m毎にコンクリートを荷卸しし、荷卸しした順番に「前」(採取時期:前期)、「中」(採取時期:中期)、「後」(採取時期:後期)、としコンクリートの性状を評価した。試験は全て外気温(環境温度)2~8℃の環境下で実施した。
なお、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤は後述のアルミニウムスルホン酸塩Aを用いた。
【0031】
コンクリートの調製に使用した材料は下記のとおりである。
・セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3200cm/g。
・粗骨材:砕石、密度2.64g/cm
・細骨材:海砂を洗浄したもの。塩化物含有量0.02%。密度2.62g/cm
・水:水道水
・減水剤:リグニン系減水剤、GCP株式会社製
・コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤:下記のアルミニウムスルホン酸塩A~Dを使用した。
アルミニウムスルホン酸塩A;市販品を粉砕し平均粒径321μmの粉体としたもの。
アルミニウムスルホン酸塩B;市販品を粉砕し平均粒径492μmの粉体としたもの。
アルミニウムスルホン酸塩C;市販品を粉砕し平均粒径621μmの粉体としたもの。
アルミニウムスルホン酸塩D;市販品を粉砕し平均粒径211μmの粉体としたもの。
【0032】
内包体は下記のようにして作製した。すなわち、下記の水溶紙、非水溶紙又は水溶性フィルムから袋状の袋体を作製し、これに500g/Lとなるようにコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を表1、表5に示す袋数に等量封入した。その後、開口部をシールして内包体を作製した。なお、シールは、ハリナックスプレス(コクヨ社製)を用いて10箇所圧着する圧着シールを採用した。
【0033】
・水溶紙:木材パルプの含有率75%、85%、95%の3種類、秤量、厚さは3種類とも同じであり、坪量60g/m、厚さ110μm、分散時間20秒以内、市販品、袋を作製する際のシールは圧着シール。
・非水溶紙:木材パルプの含有率65%、坪量150g/m、厚さ280μm、分散時間90秒超、市販品、袋を作製する際のシールは圧着シール。
・水溶性フィルム:ポリビニルアルコールフィルム、秤量30g/m、厚さ40μm、分散時間30秒以内、市販品、袋を作製する際のシールは圧着シール。
なお、各種袋(袋体)の寸法は表1に記載のとおりである。
【0034】
水溶紙、非水溶紙及び水溶性フィルムの分散時間は、20℃の水500mlが入ったビーカー(容量1000ml)に、これらの試料を10g添加し、スターラーにより800rpmで攪拌した時に目視により凝集物がなくなった状態までの時間を測定した。
【0035】
「試験および評価方法」
コテ仕上げ時間:30×30×20cmの型枠を24個準備してコンクリートを充填し、コンクリート打設から1時間ごとに1つずつ金コテでコンクリート表面のコテ仕上げを行った。コテ仕上げから24時間後のコンクリート表面の状況を確認し、(1)コンクリート表面が平滑であること、(2)コンクリート型枠上端から沈下が見られないことの2つの条件を満たすコテ仕上げに適した、コンクリートの打ち込み直後からコテ仕上げが可能となるまでの最短時間を測定した。
【0036】
コンクリート表面の目視観察:コテ仕上げに適した時間にコテ仕上げを行ったコンクリート表面を観察し、コンクリート表面に白華物が見られないものを○、白華物が見られるものを×として評価した。
【0037】
コンクリート表面の定量的品質評価(A):
表面含浸材の試験方法(案)(JSCE-K 571)で示されている透水量試験に準拠し、口径75mmの漏斗をコテ仕上げに適した時間にコテ仕上げを行ったコンクリート打設面に設置して、水頭高さを250mmとして透水量を測定し、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和していないコンクリートに比べ、透水量(透水率)が60%以上であれば×、45%以上60%未満であれば△、30%以上45%未満であれば○、30%未満であれば◎とした。なお、評価は、各荷卸し時期、前、中、後のそれぞれで行った。
【0038】
コンクリート表面の定量的品質評価(B):
30×30×20cmの型枠にコンクリートを充填した供試体を作製し、ASTM C672法に準拠し、湛水する試験液には4%のCaCl水溶液とし、-18℃で16時間、+23℃で6時間、冷却・昇温過程1時間となる凍結融解工程とし、25サイクル実施した。目視による評価は5サイクル目と25サイクル目に実施した。
また、表面の目視評価を下記評価指標で行った。
0:剥落なし
1:粗骨材の露出なし劣化深度最大3mm程度のごく軽微な剥落
2:軽度の剥落(評価1と評価3の中間に位置する程度)
3:いくらか粗骨材の露出が確認される中度の剥落
4:強度の剥落(評価3と評価5の中間に位置する程度)
5:表面全体に粗骨材の露出が確認される激しい剥落
さらに、5サイクル毎に目視による表面の観察に加えて、スケーリングしたコンクリートを採取し、40℃で3時間以上乾燥させ計量した。コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和していないコンクリートの25サイクル目までの総スケーリング量を100とし評価した。
なお、評価は、各荷卸し時期、前、中、後のそれぞれで行った。
【0039】
コンクリート流動保持性:アジテータ車からコンクリートを荷卸しした後から90分時点でのコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しないコンクリートの各荷卸し時期、前、中、後のスランプを0とした場合の、各条件のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの各荷卸し時期、前、中、後のスランプとして評価した。
【0040】
圧縮強度:φ10×20cmの型枠に充てんしたコンクリートについて、JISA1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して材齢24時間強度を測定した。各条件のコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和したコンクリートの圧縮強度は、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を混和しないコンクリートの各荷卸し時期、前、中、後の圧縮強度を100として評価した。
【0041】
撹拌によるコンクリートの均一性の確認(撹拌の均一性):コンクリート排出の前、中、後におけるコテ仕上げまでの最適時間の最短時間と最長時間の時間差が、2時間未満なら○、2時間以上3時間未満ならば△、3時間以上ならば×とした。○及び△であれば、実用上問題ない。
【0042】
紙袋の分散の目視観察:アジテータ車から荷卸したコンクリート内に溶けずに残った水溶紙の欠片が発見されなかった場合を○とし、水溶紙の欠片がわずかに発見された場合を△とし、水溶紙の欠片が多く発見された場合を×とした。○及び△であれば、実用上問題ない。
【0043】
空気量:JIS A1116「質量方法」に準拠し測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1、表2、表3より、本発明に係る投入方法では、外気温が2~8℃のような低温環境下において、練り上げ直後のコンクリートがスランプ12±2.5cmのコンクリートに対して、コテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、表面が緻密化し劣化しにくい高品位なコンクリート表面となり、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進することがわかる。また、パルプ製の水溶紙を用いることで均一に混和したコンクリートを調製することができることがわかる。また、水溶紙の袋のサイズは適切な範囲内であっても投入数は10袋以下が望ましい。
【0048】
「実験例2」
実験例1の実験No.1-7で使用したコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤について、表4に示すように、アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径を変えた以外は実験例1と同様に実験及び試験を行った。表5、表6に試験結果を示す。
【0049】
【表4】
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
表5、表6から、アルミニウムスルホン酸塩の平均粒径は500μm以下であると、コテ仕上げ時間が10時間以下となり、コンクリート表面仕上げ用硬化促進剤の有する機能より良好に発揮させることが可能であることがわかる。
【0053】
「実験例3」
実験例1の実験No.1-7で使用した水溶紙の袋体についてシール方法を表7に示すように変えた以外は実験例1と同様に実験を行った。シール方法はヒートシール、接着剤シール、糸縫いシールとした。また、実験例1と同様な試験を行った。表8、表9に試験結果を示す。
【0054】
<シール方法>
ヒートシール:FR-450-10(富士インパルス社製)を用いて、10秒間加熱した。
接着剤シール:BBX909(セメダイン社製)を用いて、開口部から0.5cmの幅で塗布し、封をした。
糸縫いシール:A1-98(DS-9C)(ニューロング社製)を用いて1cmピッチで封をした。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
【表9】
【0058】
表8、表9から、本実施例において、水溶紙の袋体のシール方法によらず空気の巻き込みもなく、水溶紙の分散性もよく、コンクリートの荷卸し時期にかかわらず、均一なコンクリートを得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
水溶紙で構成された包体にコンクリート表面仕上げ用硬化促進剤を封入して内包体としこれを用いた投入方法は、低温環境においてコテ仕上げ可能な時間を大幅に短縮し、コンクリート表面も良好な状態で仕上げが可能となり、コンクリートの流動性にも悪影響を与えず、圧縮強度も増進する。特に低温環境でコンクリート打設からコテ仕上げまでの待機時間を大きく短縮できるため、土木、建築分野に好適であり、左官職人の業務効率化につながり、建設現場の残業を減らすことができるといった効果を奏する。