IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エッペンドルフ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7214759衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機
<>
  • 特許-衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機 図1a
  • 特許-衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機 図1b
  • 特許-衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機 図2
  • 特許-衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】衝突保護を備えた温度コントローラ遠心分離機
(51)【国際特許分類】
   B04B 7/06 20060101AFI20230123BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B04B7/06 Z
F25B49/02 510F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020569993
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019065614
(87)【国際公開番号】W WO2019238891
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】102018114450.4
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591121683
【氏名又は名称】エッペンドルフ エスイー
【氏名又は名称原語表記】Eppendorf SE
【住所又は居所原語表記】Barkhausenweg 1, 22339 Hamburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キール,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ハイコ
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03015791(EP,A1)
【文献】特表2015-513447(JP,A)
【文献】特開2005-016874(JP,A)
【文献】特開2018-066491(JP,A)
【文献】特開2015-104701(JP,A)
【文献】特開平04-284866(JP,A)
【文献】特開2017-116154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189916(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0209874(US,A1)
【文献】特開2006-207928(JP,A)
【文献】特開平11-173684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
F25B 1/00、49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離機(10)における可燃性温度制御媒体の発火を防止するための方法であって、特に実験室用遠心分離機として設計された前記遠心分離機(10)は、遠心分離機ロータ(20)を収容することができる遠心分離コンテナ(16)と、前記遠心分離機ロータ(20)を駆動するための遠心分離機モータ(18)と、前記遠心分離機ロータ(20)の温度を制御するための蒸発器(26)および圧縮機(28)を備えた温度制御手段(24)と、前記遠心分離コンテナ(16)、前記遠心分離機ロータ(20)、前記温度制御手段(24)および前記遠心分離機モータ(18)が収容されるハウジング(12)とを備え、前記温度制御手段(24)は、温度制御媒体ライン(34)内で案内される可燃性温度制御媒体を含み、前記蒸発器(26)内の圧力が、指定の最小圧力を下回るか、および/または、指定の最大圧力を超えているかを決定するために監視され、
前記可燃性温度制御媒体はR290プロパンであり、
前記指定の最小圧力は、少なくとも0.7バール、優先的は少なくとも1バール、特に少なくとも1.3バールであり、および/または
指定の最大圧力は最大5バール、優先的には最大3バール、特に最大2バールであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記圧力が前記蒸発器(26)の出口(42)において決定されることが企図され、特に圧力伝送器(44)の形態の圧力センサが優先的に使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記指定の最小圧力を下回る蒸発器圧力において、
a)前記蒸発器(26)への温度制御媒体の供給が中断され、および/または
b)前記圧縮機(28)がオフにされ、および/または
c)爆発を引き起こす可能性があり、防爆型ではなく、20W未満の電力を吸収するようにも設計されていない、前記遠心分離機(10)の電気的要素(58)への電力供給(62)が停止され、および/または
d)前記遠心分離機モータ(18)がオフにされ、および/または
e)残留電気エネルギーが、的を絞った様態でファン(54)へとその操作のために誘導されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記指定の最大圧力を超える蒸発器圧力において、前記蒸発器(26)内の温度制御媒体の量が低減され、優先的には、
f)前記蒸発器(26)への温度制御媒体の供給が中断され、および/または
g)前記圧縮機(28)の容量が増大され、および/または
h)前記温度制御媒体が温度制御媒体貯蔵タンクに供給されることを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記遠心分離機(10)の電源(62)をオンにした後、前記遠心分離機のファン(54)が始動することを特徴とする、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
特に実験室用遠心分離機である遠心分離機(10)であって、遠心分離機ロータ(20)を収容することができる遠心分離コンテナ(16)と、前記遠心分離機ロータ(20)を駆動するための遠心分離機モータ(18)と、前記遠心分離機ロータ(20)の温度を制御するための蒸発器(26)および圧縮機(28)を備えた温度制御手段(24)と、前記遠心分離コンテナ(16)、前記遠心分離機ロータ(20)、前記温度制御手段(24)および前記遠心分離機モータ(18)が収容されるハウジング(12)とを有し、前記温度制御手段(24)は、温度制御媒体ライン(34)内で案内される可燃性温度制御媒体を含み、前記遠心分離機(10)が、前記蒸発器(26)内の圧力が、指定の最小圧力を下回るか、および/または、指定の最大圧力を超えているかを決定するように適合されており、
前記可燃性温度制御媒体はR290プロパンであり、
前記指定の最小圧力は、少なくとも0.7バール、優先的は少なくとも1バール、特に少なくとも1.3バールであり、および/または
指定の最大圧力は最大5バール、優先的には最大3バール、特に最大2バールであることを特徴とする、遠心分離機(10)。
【請求項7】
前記遠心分離機(10)は、請求項1~のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合されており、および/または、遠心分離機モータ(18)の要素、防爆でないか、または20W未満の電力を吸収するように設計されていない構成要素への電力供給ライン(74、82)、防爆でなく、20W未満の電力を吸収するようにも設計されていない構成要素への電力供給ライン内のスイッチ(76、86)、および前記遠心分離機(10)の制御ユニット(62)の少なくとも一つは、前記遠心分離機(10)内に配置されることを特徴とする、請求項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項8】
i)電磁弁(38)が、前記蒸発器(26)の入口の前に配置され、前記電磁弁(38)は、優先的には圧力逃がし要素(32)の前に配置されること、および/または
k)逆止弁(40)が、前記蒸発器(26)の出口(42)の後に配置されること、および/または
l)主電源スイッチ(64)、ファン(54)、圧力監視制御部(48)、および圧力監視センサ(44)の要素の少なくとも1つが、防爆であり、および/または20W未満の電力を吸収するように設計されていることを特徴とする、請求項またはに記載の遠心分離機(10)。
【請求項9】
前記遠心分離機(10)は、電源(62)の障害後に前記遠心分離機(10)に存在する残留電気エネルギーをファン(54)に供給するように設計され、前記電源(62)によって供給を受け、前記電源(62)に障害が発生した場合、少なくとも1つの要素を前記ファン(54)への残留電気エネルギーと接続するリレーが優先的に提供され、前記少なくとも1つの要素は、特にコンデンサまたはアキュムレータであることを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の遠心分離機(10)。
【請求項10】
前記遠心分離機(10)は、前記遠心分離機(10)の電源(62)をオンにした後、前記遠心分離機(10)のファン(54)を始動するように設計されていることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)
【請求項11】
前記ファン(54)は、結果として生じる排気が前記遠心分離機(10)の前記ハウジング(12)から運び出されるように、前記遠心分離機(10)内の少なくともいくつかの領域において、および/または、前記遠心分離機内の少なくとも1つの、特にいくつかの空洞を通じて温度制御媒体ライン(34)上で流れるように構成されていることを特徴とする、請求項または10に記載の遠心分離機(10)。
【請求項12】
前記遠心分離機は、前記温度制御手段の外側にガスセンサを有し、温度制御媒体が前記ガスセンサによって検出されるときに前記遠心分離機が始動するのを防ぐように優先的に構成されることを特徴とする、請求項11のいずれか1項に記載の遠心分離機(10)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の全般的な条件による遠心分離機、および請求項14の全般的な条件による可燃性温度制御媒体の発火を防止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機ロータは、遠心分離機、特に実験室用遠心分離機内で、質量慣性を利用することによってそれらの中で遠心分離される試料の成分を分離するために使用される。その際、高い分離速度を達成するために、漸進的により高い回転速度が使用される。実験室用遠心分離機は、ロータが好ましくは少なくとも3,000回転毎分、優先的には少なくとも10,000回転毎分、特に少なくとも15,000回転毎分で動作する遠心分離機であり、通常はテーブルに置かれる。それらの遠心分離機を作業台に置くことができるようにするために、それらの遠心分離機は1m×1m×1m未満のフォームファクタを有し、そのため、それらの設置スペースは限られている。好ましくは、デバイスの深さは、それによって最大70cmに制限される。
【0003】
このような遠心分離機は、医学、薬学、生物学および化学などの分野で使用されている。
【0004】
遠心分離される試料は試料コンテナに貯蔵され、そのような試料コンテナは遠心分離機ロータによって回転するように駆動される。これを行う際、遠心分離機ロータは、通常、電気モータによって駆動される垂直駆動シャフトによって回転させられる。用途の目的に応じて使用されるさまざまな遠心分離機ロータがある。これにより、試料コンテナは試料を直接含むことができ、または、試料コンテナは、試料を含む独自の試料レセプタクルを有し、結果、1つの試料コンテナ内で多数の試料を同時に遠心分離することができる。一般に、遠心分離機ロータは、固定角ロータおよびスイングアウトロータなどの形で知られている。
【0005】
ほとんどの場合、試料は特定の温度で遠心分離されることが条件付けられる。例えば、タンパク質および類似の有機物質を含有する試料は、そのような試料の温度制御の上限が通常+40℃の範囲内になるように、過熱してはならない。他方、ある特定の試料は標準として+4℃の範囲内で冷却される(水の異常は3.98℃で始まる)。
【0006】
例えば約+40℃のそのような所定の最高温度および例えば+4℃の標準試験温度に加えて、そのような温度において、遠心分離器の冷却システムが制御された方法で室温未満で作動しているか否かをチェックするために、例えば+11℃のさらなる標準試験温度も与えられる。他方、労働安全上の理由から、+60℃以上の温度を有する要素に触れることを防止する必要がある。
【0007】
原則として、温度制御には能動システムおよび受動システムを使用することができる。受動システムは、空気補助換気に基づいている。このような空気は、遠心分離機ロータを直接通り抜け、この結果として温度が制御される。空気は、開口部を通じて遠心分離容器に吸引され、さらなる開口部を通じて、加熱された空気が、遠心分離容器の別の点において再び排出され、吸引および排出は、遠心分離機ロータの回転によって独立して行われる。
【0008】
他方、能動冷却システムは、遠心分離コンテナの温度を制御する冷媒回路を有し、それによって、遠心分離機ロータおよびその中に組み込まれる試料コンテナが間接的に冷却される。圧縮機によって作動する冷却システムでは、冷却媒体または温度制御媒体として多くの異なる媒体が使用される。原則として、冷却(すなわち、熱抽出)だけでなく、遠心分離中に的を絞った方法での熱供給もまた所望される可能性があるため、本発明は、温度制御および温度制御媒体を参照する。クロロジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタンなどの遠心分離機に通常使用される温度制御媒体に加えて、ブタンまたはプロパンなどの可燃性温度制御手段、またはさまざまな合成混合物も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような可燃性温度制御媒体は非常に良好な熱伝達特性を有するが、遠心分離機ロータが衝突した場合に温度制御手段が漏れて発火する可能性があるため、通常は安全上の理由から使用されない。このような衝突が発生した場合、遠心分離機ロータの破片が高速で、したがって非常に高いエネルギーで遠心分離機内で作用し、それによって蒸発器および温度制御媒体を搬送するラインを破壊する可能性もある。その後、漏れた可燃性温度制御媒体が、衝突において放出されるエネルギー、および遠心分離機内またはその周辺の電気または電子部品によって容易に発火する可能性があり、これによって非常に深刻な損傷、特に人身傷害を引き起こす可能性がある。
【0010】
遠心分離機ロータの衝突が遠心分離機の外側に損傷を与えるのを防ぐために、遠心分離機の内側を強化および補強する手段がすでに提案されている。しかしながら、これは、蒸発器を形成する温度制御手段のラインが、遠心分離機ロータと補強手段との間で遠心分離コンテナの周りを延伸するため、温度制御媒体が漏れるのを防ぐことはできない。
【0011】
したがって、本発明の課題は、可燃性温度制御媒体にも使用できる遠心分離機を提案することであり、これらが遠心分離機ロータの衝突の場合の安全上のリスクの増加を構成することはない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載の本発明による遠心分離機、および請求項14に記載の可燃性温度制御媒体の発火を防止するための本発明による方法によって達成される。有利な追加の形態は、従属請求項および図面を伴う以下の説明に示されている。
【0013】
発明者の側では、蒸発器内の圧力を監視して、それが指定の最小値を下回っているか、または指定の最大値を上回っているかを確認することによって、そのような課題を驚くほど単純な方法で達成できることが認識された。温度制御媒体の発火の可能性を防ぐための対策は、的を絞った方法で行うことができる。圧力が最小圧力を下回っている場合、漏出または衝突のいずれかが存在すると想定する必要があり、ここで、蒸発器における漏出の可能性はほとんどないが、それでも可燃性温度制御媒体の放出が遅くなり、衝突すると、可燃性温度制御媒体が突然放出される。圧力が最大圧力を超える場合、蒸発器内に大量の可燃性温度制御媒体があり、これは衝突時に漏れて発火する可能性がある。
【0014】
特に遠心分離機ロータの衝突後に遠心分離機における可燃性温度制御媒体の発火を防止するための本発明による方法であって、特に実験室用遠心分離機として設計された遠心分離機は、遠心分離機ロータを収容することができる遠心分離コンテナと、遠心分離機ロータを駆動するための遠心分離機モータと、遠心分離機ロータの温度を制御するための蒸発器および圧縮機を備えた温度制御手段と、遠心分離コンテナ、遠心分離機ロータ、温度制御手段および遠心分離機モータが収容されるハウジングとを備え、温度制御手段は、温度制御媒体ライン内で案内される可燃性温度制御媒体を含む、方法は、蒸発器内の圧力が、指定の最小圧力を回るか、および/または、指定の最大圧力を超えているかを決定するために監視されることを特徴とする。
【0015】
有利な追加の形態では、圧力が蒸発器の出口において決定されることが企図され、特に圧力伝送器の形態の圧力センサが優先的に使用される。これにより、圧力を監視し、直接的な制御措置をとることが特に容易になる。
【0016】
有利な追加の形態では、指定の最小圧力が少なくとも0.7バール、優先的には少なくとも1バール、特に少なくとも1.3バールであることが企図される。
【0017】
有利な追加の形態では、指定の最大圧力が最大5バール、優先的には最大3バール、特に最大2バールであることが企図される。
【0018】
有利な追加の形態では、温度制御媒体R290プロパンが使用される。代替的に、イソブタン、プロペン、ブテンなどが使用されてもよい。ただし、R290プロパンが、その有利なパラメータ(圧力範囲、温度曲線、沸点、エンタルピー、および体積効率)に基づいて優先的に使用される。
【0019】
最終的に、圧力範囲は、使用する温度制御媒体および使用目的(たとえば、急速冷凍または通常の冷却)に直に依存し、R290プロパンでは、前述の圧力範囲が有利であることが示されている。
【0020】
有利な追加の形態では、蒸発器の圧力が指定の最小圧力を下回る場合、以下の措置のうちの1つまたは複数が実行されることが企図される。
【0021】
蒸発器への温度制御媒体の供給が中断される。
圧縮機がオフにされる。
【0022】
爆発を引き起こす可能性があり、防爆型ではない、または20W未満の電力を消費するように設計されていない、遠心分離機の電気的要素への電力供給が停止される。
【0023】
遠心分離機モータが停止される。
残留電気エネルギーが、的を絞った様態で遠心分離機のファンへとその操作のために誘導される。
【0024】
蒸発器への温度制御媒体の供給が中断された場合、すでに蒸発器にある温度制御媒体のみが発火でき、発火可能な量が効果的に制限される。
【0025】
圧縮機がオフにされる場合、温度制御媒体を有する残りの回路に空気が吸引されず、安全性が向上する。
【0026】
電源が停止される場合、遠心分離機自体が発火を起こす可能性はない。防爆構成要素は、欧州連合のATEX指令(ATEX製品指令2014/34/EUおよびATEX操作指令1999/92/EC)に準拠した構成要素、または消費電力が20W未満の要素である。
【0027】
遠心分離機モータは、遠心分離機モータによる発火を防ぐために、防爆型であるように優先的に設計されている。
【0028】
有利な追加の形態では、温度制御媒体回路が、150g未満、優先的には140g未満、特に優先的には130g未満、特に120g未満の量の温度制御媒体を含むことが企図される。
【0029】
有利な追加の形態では、温度制御媒体回路は、30gを超える、優先的には40gを超える、特に優先的には50gを超える量の温度制御媒体を含むことが企図される。有利には、量は60g~110gの範囲にあるが、他の指定の量もこの範囲に使用することができる。
【0030】
遠心分離機モータが停止される場合、まだ発生していない衝突が防止されるか、または、すでに発生している衝突がある程度軽減される。有利なことに、遠心分離機モータが防爆であるように設計されている場合、これが機械的衝突保護を提供するため、遠心分離機モータをオフにすることが行われる。
【0031】
残留電気エネルギーが遠心分離機のファンに供給される場合、温度制御媒体が、発火が困難になるほどに分散される。このような電気的フォールバックレベルは、例えば、通常の動作中に常に通電される少なくとも1つのリレーによって実現することができる。衝突が発生した場合に、通電するための電流がないか、または、意図的な切り替えが行われる場合、リレーは残留電気エネルギー(例えば、コンデンサなどからの)とファンとを接触させる。このようなコンデンサは、実験室用遠心分離機の電子システムの標準的なコンデンサであってもよい。通常の動作中にのみ充電され、要求に応じてファンにエネルギーを供給するためにのみ存在する特殊なコンデンサまたはアキュムレータを使用することもできる。例えば、衝突が発生した場合、前述のリレーなどにより要求を行うことができる。
【0032】
有利な追加の形態では、指定の最大圧力を超える蒸発器圧力において、蒸発器内の温度制御媒体の量が低減されることが企図される。これにより、衝突の可能性がある場合に、発火可能な量が最初から可能な限り低く保たれることが保証される。
【0033】
有利な追加の形態では、蒸発器圧力が指定の最大圧力を超える場合、以下の措置のうちの1つまたは複数が実行されることが企図される。
【0034】
蒸発器への温度制御媒体の供給が中断される。
圧縮機の容量が増大される。
【0035】
温度制御媒体が、温度制御媒体貯蔵タンクに供給される。
蒸発器への温度制御媒体の供給が中断される場合、発火可能な量は可能な限り低く保たれる。
【0036】
圧縮機の容量が増大される場合、温度制御媒体が蒸発器から吸い出され、発火可能な量が可能な限り低く保たれる。
【0037】
温度制御媒体が温度制御媒体貯蔵タンクに供給される場合、蒸発器内の発火可能な温度制御媒体の量も減少する。これは、例えば、温度制御媒体が蒸発器に流れ込まないように、温度制御媒体回路のバルブを閉じることによって行うことができる。これにより、圧縮機は温度制御媒体を最小圧力まで圧送し、それを開いた温度制御貯蔵タンクに自動的に供給する。温度制御媒体は、単純にラインのバルブを開くことによって、温度制御媒体貯蔵タンクから再び取り出される。通常の操作では、バルブは開いたままである。
【0038】
したがって、圧縮機の容量を増大させる前、または温度制御媒体を温度制御媒体貯蔵タンクに導入する前に、蒸発器への温度制御媒体の供給が優先的に中断される。
【0039】
有利な追加の形態では、遠心分離機の電源をオンにした後、遠心分離機のファンが始動されることが企図される。それにより、漏れる可能性のある温度制御媒体は、発火の可能性が防止されるように、最初から分散される。この方法について、蒸発器内の圧力が監視されているか否かに関係ない、独立した保護が特許請求される。
【0040】
漏れる可能性のある温度制御媒体を分散させる役割を果たすこのファンまたは前述のファンは、この目的のために特別に構成されたファンとすることができるが、遠心分離機の電子システムを冷却するためのファンまたは遠心分離機の凝縮器を操作するためのファンとすることもできる。優先的には、ファンは、結果として生じる排気が遠心分離機のハウジングから運び出されるように、その流れが、遠心分離機内の少なくともいくつかの領域において、および/または、遠心分離機内の少なくとも1つの、特にいくつかの空洞を通じて温度制御媒体ライン上で誘導されるように設置されるべきである。これらは、好ましくは、漏れた温度制御媒体で満たすことができる空洞を含む。
【0041】
有利な追加の形態では、爆発臨界温度制御媒体-空気混合物が生成されないように、優先的には温度制御媒体含有量が2~9体積%の温度制御媒体-空気混合物が生成されないようにファンが操作されることが企図される。
【0042】
本発明による遠心分離機、特に実験室用遠心分離機に対する独立した保護が特許請求され、遠心分離機は、遠心分離機ロータを収容することができる遠心分離コンテナと、遠心分離機ロータを駆動するための遠心分離機モータと、遠心分離機ロータの温度を制御するための蒸発器および圧縮機を備えた温度制御手段と、遠心分離コンテナ、遠心分離機ロータ、温度制御手段および遠心分離機モータが収容されるハウジングとを有し、温度制御手段は、温度制御媒体ライン内で案内される可燃性温度制御媒体を含み、これは、蒸発器内の圧力が、指定の最小圧力を回るか、および/または、指定の最大圧力を超えているかを決定するために監視されることを特徴とする。
【0043】
有利な追加の形態では、遠心分離機が本発明による方法を実行するように適合されていることが企図される。
【0044】
有利な追加の形態では、非防爆構成要素への電力供給ラインの要素、非防爆構成要素への電力供給ラインのスイッチ、および遠心分離機の制御ユニットのうちの少なくとも1つが遠心分離機の衝突領域内に配置されることが企図される。このとき、衝突が発生した場合、防爆構成要素への電源供給が意図的に中断され、発火が防止される。この文脈での「衝突領域」とは、遠心分離コンテナの周囲の領域を意味する。1つまたは複数の補強要素または衝突エネルギー吸収要素の形態の衝突保護装置が遠心分離機に存在する場合、そのような要素は、遠心分離コンテナと補強要素または衝突エネルギー吸収要素との間に配置されるべきである。遠心分離機のこの設計について、蒸発器内の圧力を監視するためのセンサが存在するか否かに関係ない、独立した保護が特許請求される。
【0045】
有利な追加の形態では、電磁弁が蒸発器の入口の前に配置され、電磁弁が優先的には圧力逃がし要素の前に配置されることが企図される。遠心分離機への電力供給により常に開いたままの電磁弁は、衝突時に予測されるものとして、電力供給が中断されるとばね力により自動的に閉じる。安全上の理由から、圧力が最小圧力を下回った場合、圧力監視システムは自動的に電磁弁を閉じることができる。衝突が発生した場合、これにより、衝突後に温度制御媒体が流入し、発火する可能性がなくなる。電子噴射弁-NC(常閉)または圧力切り替え弁を、電磁弁の代わりに使用することもできる。
【0046】
有利な追加の形態では、逆止弁が蒸発器の出口の後に配置されることが企図される。これにより、衝突が発生した場合に、経時的に漏出する温度制御媒体が凝縮器から圧縮機を介して逆流し、蒸発器に至ることが防止される。逆止弁の代わりに、追加の電磁弁を使用することもできる。
【0047】
有利な追加の形態では、遠心分離機モータの要素、主電源スイッチ、ファン、圧力監視制御部および圧力監視センサのうちの少なくとも1つが、防爆であり、および/または、20W未満の電力を消費するように設計されていることが企図される。これにより、このような要素を永続的に操作し、発火に寄与することなく監視または発火保護措置を実行することが可能になる。
【0048】
有利な追加の形態では、遠心分離機が温度制御手段の外側にガスセンサを有し、それにより、遠心分離機が始動するのを防ぐために、圧力降下とは無関係に、漏出を最小圧力未満で検出することができることが企図される。
【0049】
有利な追加の形態では、遠心分離機は、電源の障害後に遠心分離機に存在する残留電気エネルギーをファンに供給するように設計され、電源によって供給を受け、電源に障害が発生した場合、少なくとも1つの要素をファンへの残留電気エネルギーと接続するリレーが優先的に提供され、少なくとも1つの要素は、特にコンデンサである。これにより、衝突が発生した場合、および、電源に障害が発生した場合でも、温度制御手段が可能な限り分散されることが保証される。
【0050】
本発明の特徴およびさらなり利点が、図面に関連して、好ましい例示的な実施形態の説明に基づいて以下に明らかにされる。したがって、以下が純粋に概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1a】本発明による遠心分離機の斜視図である。
図1b図1aによる、本発明による遠心分離機の断面図である。
図2】温度制御手段に関する、図1aによる、本発明による遠心分離機の簡略化されたブロック図である。
図3】非常に簡略化された回路図に関する、図1aによる、本発明による遠心分離機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1a~図3において、本発明による遠心分離機10が、様々な図において純粋に概略的に示されている。遠心分離機10は、蓋14および操作フロント15を備えたハウジング12を備えた実験室用遠心分離機として設計されていることが分かる。遠心分離機10の遠心分離コンテナ16内で、遠心分離機ロータ20が、遠心分離機ビーカー22を備えたスイングアウトロータとして設計されている、遠心分離機モータ18の駆動シャフト17上に配置されている。
【0053】
図2において、遠心分離機は、温度制御媒体ライン34によって接続された蒸発器26、圧縮機28、凝縮器30、およびサーモスタット噴射弁32を含む温度制御手段24を有することが分かる。
【0054】
例えば、蒸発器26は、遠心分離容器16の周りに延在する温度制御媒体ライン区画として設計されている。
【0055】
凝縮器30と蒸発器26との間で、電磁弁38が、温度制御媒体ライン34において、噴射弁32の前の流れの方向36に配置されている。
【0056】
蒸発器26と圧縮機28との間で、流れの方向36を遮断する逆止弁40が温度制御媒体ライン34内に配置されている。
【0057】
圧力伝送器の形態の圧力センサ44が、蒸発器26の出口42に配置され、その信号46は、監視制御装置48に供給される。監視制御装置48は、優先的にはプロセッサ(図示せず)を有し、制御ライン50によって圧縮機28を制御し、制御ライン52によって凝縮器30に割り当てられたファン54を制御し、制御ライン56によって電気および電子部品を含む実際の制御ユニットならびに遠心分離機10の遠心分離機モータ18のグループ58を制御する。
【0058】
圧力センサ44、監視制御装置48、およびファン54の構成要素のグループ60は、防爆であり、および/または、20W未満の電力を消費するように設計されている。すなわち、そのような構成要素は、いかなる状況においても温度制御手段24の温度制御媒体を発火させ得ない。R290プロパンが、温度制御媒体として優先的に使用される。
【0059】
図3から、遠心分離機10の電源62が、導電相Lおよび中性線Nを有し、メインスイッチ64によって始動されることが分かる。
【0060】
メインスイッチ64は、監視制御装置48を、ライン66を介して電源62に直接接続する。
【0061】
ファン54を電源62に接続するスイッチ70によって切断することができるライン68もある。スイッチ70は、遠心分離機がメインスイッチ64を介して始動された後、ファン54が自動的に低速で始動するように、接続72を介して監視制御装置48によって切り替えられる。
【0062】
電気および電子部品を含む実際の制御ユニットならびに遠心分離機10の遠心分離機モータ18のグループ58を電源62に接続するスイッチ76を介して切断することができるライン74もある。このようなスイッチ76は、同様に、接続78を介して監視制御装置48によって切り替えることができる。
【0063】
ライン74に続いて、ライン80、82があり、これらは、圧縮機28および電磁弁38を電源62に接続する。そのようなラインはまた、スイッチ84、86を有し、これはまた、接続88および90を介して監視制御装置48によって切り替えることができる。
【0064】
電磁弁38のスイッチ86はまた、遠心分離機10の制御ユニット58によって電気エネルギー92を供給され、そのような電気エネルギー92が制御ユニット58に印加される場合、スイッチ86は閉じられる。
【0065】
防爆であり、および/または20W未満の電力を消費するように設計された構成要素のグループ60は、圧力センサ44、監視制御装置48およびファン54だけでなく、メインスイッチ64、ライン68内のスイッチ70およびライン74内のスイッチ76も含むことが分かる。
【0066】
ここで、遠心分離機10は、発火保護に関して以下のように機能する。
メインスイッチ64が作動されるとすぐに、監視制御装置48が作動され、それは、凝縮器30のファン54が低速で、優先的には少なくとも200rpmで動作するように供給を受けるように、その部分においてスイッチ70を閉じる。温度制御媒体が漏出によりすでに漏れている場合でも、これは発火性混合物の形成を防ぐために分散される。
【0067】
監視制御装置48が、圧力センサ44を介して、蒸発器26内の圧力が1.3バールの最小圧力を超えていることを検出した場合、スイッチ76が閉じ、結果、電気および電子部品を含む実際の制御ユニットならびに遠心分離機10の遠心分離機モータ18のグループ58に、電気エネルギーが供給される。さらに、スイッチ84および86が閉じられ、その結果、圧縮機28が操作され、電磁弁38が閉じられる。ここで、圧縮機を、要件に従って制御ユニット58によって操作することができる。
【0068】
圧力センサ44が、蒸発器26内で、指定の最大圧力である2バールを超える圧力を検出した場合、衝突時に可燃性温度制御媒体が多すぎるリスクがある。このとき、監視制御装置48はスイッチ86を開き、それによって電磁弁38が蒸発器26への温度制御媒体の供給を中断する。さらに、監視制御装置48は、圧縮機28の容量を増大させる(監視制御装置48による圧縮機28の対応する直接制御は示されていない)。さらに、温度制御媒体が、温度制御媒体貯蔵タンク(図示せず)に送られることが企図され得る。この目的のために、貯蔵タンクと温度制御媒体ライン34との間に配置された弁(図示せず)が開かれる。これにより、蒸発器26内の圧力が最小圧力と最大圧力との間に戻るように、蒸発器26内の温度制御媒体の量が減少する。続いて、電磁弁38を再び開くために、スイッチ86が監視制御装置48によって再び閉じられ、圧縮機制御ユニットが制御ユニット58によって再び引き継がれ、必要に応じて温度制御媒体が貯蔵タンクから再び除去される。
【0069】
圧力センサ44が、蒸発器26内で、指定の最小圧力である1.3バールよりも低い圧力を検出した場合、温度制御媒体が発火する可能性がある衝突のリスクがある。これを防止するために、監視制御装置48はスイッチ86を開き、それによって電磁弁38が蒸発器26への温度制御媒体の供給を中断する。さらに、監視制御装置48は、スイッチ76を開き、これによって、圧縮機28および制御ユニット58などの遠心分離機10のすべての非防爆構成要素が停止し、発火を不可能にする。スイッチ70は、的を絞った様態で開いたままにされ、特にコンデンサからの残留電気エネルギーは、温度制御媒体を分散させるように動作させるためにファン54に転送される。このような電気的フォールバックレベルは、例えば、通常の動作中に常に通電される少なくとも1つのリレー(図示せず)によって実現することができる。そのようなリレーは、(例えば、コンデンサなどからの)残留電気エネルギーとファン54との間に接触が確立されるように、監視制御装置48によって的を絞った様態で切り替えられる。
【0070】
メインスイッチ64を開いた後にのみ、監視制御装置48が蒸発器28内の圧力が少なくとも1.3バールの最小圧力と同じくらい高いと決定した場合に、遠心分離機10を再始動することができる。
【0071】
衝突自体が発生した場合、制御ユニット58およびライン74、82は破壊され、その結果、すべての非防爆構成要素、特に圧縮機28、制御ユニット58および遠心分離機モータ18はもはやエネルギーを供給されず、同時に、電磁弁38が閉じられ、それによって発火が防止される。ライン74、82、特にまたスイッチ76、86および制御ユニット58もまた、この目的のために、衝突ゾーンに、すなわち、優先的には、遠心分離コンテナ16と、存在する場合は1つまたは複数の補強要素または衝突エネルギー吸収要素の形態の衝突保護装置との間に配置される。
【0072】
前述の説明から、本発明は、遠心分離機ロータの衝突の場合に安全上のリスクをもたらすことなく、温度制御の枠組み内で安全性の懸念なしに可燃性温度制御媒体も使用することができる遠心分離機10を提供することは明らかである。
【0073】
特に明記しない限り、本発明のすべての特徴は自由に組み合わせることができる。さらに、図面の説明に記載されている特徴は、特に明記しない限り、本発明の特徴として他の特徴と自由に組み合わせることができる。それにより、遠心分離機の物質的な特徴はまた、方法の特徴として再定式化されて方法の枠組み内でも使用され得、方法の特徴も、遠心分離機の特徴として再定式化されて、デバイスの枠組み内でも使用され得る。
【符号の説明】
【0074】
10 本発明による遠心分離機、実験室用遠心分離機
12 ハウジング
14 蓋
15 操作フロント
16 遠心分離コンテナ
17 駆動シャフト
18 遠心分離機モータ
20 遠心分離機ロータ、スイングアウトロータ
22 遠心分離機ビーカー
24 温度制御手段
26 蒸発器
28 圧縮機
30 凝縮器
32 サーモスタット噴射弁
34 温度制御媒体ライン
36 流れの方向
38 電磁弁
40 逆止弁
42 蒸発器26の出口
44 圧力センサ、圧力伝送器
46 圧力センサ44の信号
48 監視制御装置
50 圧縮機28への監視制御装置48の制御ライン
52 ファン54への監視制御装置48の制御ライン
54 ファン
56 グループ58への監視制御装置48の制御ライン
58 電気および電子部品を含む実際の制御ユニットならびに遠心分離機10の遠心分離機モータ18のグループ
60 圧力センサ44、監視制御装置48およびファン54などの防爆構成要素のグループ
62 遠心分離機10の電源
64 電源62のメインスイッチ
66 ライン
68 ライン
70 ライン68内のスイッチ
72 接続、監視制御装置48によるスイッチ70の制御ユニット
74 ライン、電力供給ライン
76 ライン74内のスイッチ
78 接続、監視制御装置48によるスイッチ76の制御ユニット
80,82 ライン、電力供給ライン
84,86 ライン80、82内のスイッチ
88,90 接続、監視制御装置48によるスイッチ84、86の制御ユニット
92 制御ユニット58を通じた電気エネルギーのスイッチ86への供給
L 電源62の導電相
N 電源62の中性線N
図1a
図1b
図2
図3