(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】品物(特にフットウェア)の表面上に含浸剤を塗布するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/02 20060101AFI20230123BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20230123BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230123BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230123BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230123BHJP
B05B 15/00 20180101ALI20230123BHJP
A47L 23/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B05B12/02
B05D1/02 A
B05D1/02 B
B05D1/02 J
B05D3/00 D
B05D7/00 D
B05D7/24 301Z
B05B15/00
A47L23/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021063125
(22)【出願日】2021-04-01
(62)【分割の表示】P 2019012800の分割
【原出願日】2014-03-03
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2013-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】515244405
【氏名又は名称】インボックス ショーケア アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】レニ マーガ
(72)【発明者】
【氏名】ピア ビェアレング
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522059(JP,A)
【文献】特表2005-510316(JP,A)
【文献】特開平05-123616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B12/00- 12/14
12/16- 12/36
13/00- 13/06
14/00- 16/80
B05D 1/00- 7/26
A43D 1/00-999/00
A47L23/00- 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フットウェアの表面上に含浸剤を塗布するための装置であって、前記装置は、処理チャンバを含み、前記処理チャンバ内には開閉可能なドアが提供され、前記ドアは、含浸対象のフットウェアを前記処理チャンバ内に配置するために前記処理チャンバの内部へのアクセスを可能にし、前記処理チャンバ内には、前記フットウェアを決定された位置に配置するための手段が、前記処理チャンバの底部の近位に提供され、少なくとも3つのノズルが前記処理チャンバ内に配置され、前記ノズルは、第1ノズルおよび第2ノズルがそれぞれ右側の前方エリアと、左側の前方エリアと、に対応する、前記決定された位置に置かれた前記フットウェアのゾーンへとミストを誘導するよう配置され、第3ノズルが、前記第1ノズル及び前記第2ノズルと共に前記フットウェアの前記決定された位置を包囲するように、前記フットウェアの前記決定された位置の後方でそれら間に配置され、前記第3ノズルは、前記フットウェアの後方側部および内側側部に対応する、前記決定された位置に置かれた前記フットウェアのゾーンに向かって含浸剤のミストを誘導するよう、含浸剤のミストの形成および発射を行うことができるように配置されており、
前記装置は、更に、各ノズルの噴霧ルーチンを、前記フットウェアの形状、サイズ、および材料に応じてプログラムすることができる、制御ユニットを備え、
前記制御ユニットは、入力装置を備え、これにより、ユーザーは、前記フットウェアの形状、サイズ、および材料に応じた噴霧ルーチンを選択することにより、前記装置を操作することができ、
さらなる第4ノズル、第5ノズル及び第6ノズルが提供されており、
前記第4ノズルおよび前記第5ノズルは、それぞれ、前記右側のフットウェアの後方および外側の左側部と、前記左側のフットウェアの後方および外側の右側部と、に向かって含浸ミストを誘導するために、前記決定された位置に置かれた前記フットウェアの後方に配置されており、
前記第6ノズルが前記処理チャンバの上方前方部分に配置され、前記ノズルは、前記処理チャンバの後方部分に向かって含浸剤を発射するよう指向されており、
前記第1ノズル、前記第2ノズル、前記第3ノズル、前記第4ノズル、前記第5ノズル及び前記第6ノズルの各々は、前記第1ノズル、前記第2ノズル、前記第3ノズル、前記第4ノズル、前記第5ノズル及び前記第6ノズルの各々から誘導されたミストの間の干渉を防止するために、順次的に活性化さ
れ、前記第1ノズル及び前記第2ノズルのそれぞれは、50ミリ秒~2000ミリ秒の間隔で含浸剤を発射するように適応されている、装置。
【請求項2】
前記ノズルは前記処理チャンバの前記底部に対して傾斜した角度で配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各ノズルは導管により含浸剤の貯蔵槽に接続され、前記含浸剤は加圧状態で前記ノズルに供給され、各ノズルにはバルブ装置が提供され、各バルブは独立的に制御され、第1ノズルおよび第2ノズルを制御する少なくともそれぞれの前記バルブは、異なる時間に含浸剤を発射するよう制御可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
靴が前記決定された位置に配置されたとき、処理対象の表面と前記ノズルとの間の距離が10mm~200mmとなるよう
、前記ノズルは配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
抽出手段が前記処理チャンバの前記底部に提供され、前記抽出手段
は能動的フィルタ・ユニットを含み得、使用中の抽出ユニットにより、前記処理チャンバの内部は前記装置の外部と比較して比較的低圧状態となる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は遠隔コンピュータ・サーバと通信するための通信手段を含み、前記装置が起動される都度、および/または噴霧ルーチンが活性化される都度、または所定の時間間隔で、前記装置は、内部チェック報告、1つ又はそれ以上の貯蔵槽内の内容物/レベル、噴霧ルーチンの識別、装置識別コード、サイクルの回数、エラー・コードのうちの1つまたは複数を前記遠隔コンピュータ・サーバに送信するよう適応されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の装置を使用して1つまたは複数の靴を含浸するための方法であって、
i.1足の靴または1対の靴が、前記処理チャンバの内部で、前記処理チャンバの底部上に表示された適切な決定された位置に配置され、
ii.前記処理チャンバが閉じられ、含浸プロセスが起動され、
v.前記含浸剤を含む少なくとも1つの貯蔵槽と、前記処理チャンバの内部の前記ノズルと、に接続されたポンプ手段が活性化され、それにより、前記ポンプ手段から前記ノズルへと至る導管内に圧力が生じ、
vi.事前プログラムされた噴霧ルーチンは、少なくとも1つの噴霧ルーチンが事前プログラムされている制御ユニットが、前記少なくとも1つの噴霧ルーチンにしたがって開閉するよう前記ノズルの近位に提供されたバルブを制御することと、前記少なくとも1つの噴霧ルーチンにしたがって抽出手段を活性化することと、を行うことを可能にすることにより、実行される、
方法。
【請求項8】
前記事前プログラムされた噴霧ルーチンが実行された後、前記ドアが開かれる前に、乾燥ルーチンが実行され、前記乾燥ルーチンは、前記乾燥ルーチンの一部として
、前記抽出手段を活性化し、および/または
、加熱要素を活性化し、および/または
、UV光を活性化する、請求項
7に記載の1つまたは複数の靴を含浸する方法。
【請求項9】
遠隔コンピュータ・サーバと通信するための通信手段は、前記装置が開始される都度、および/または噴霧ルーチンが活性化される都度、活性化され、前記装置は、前記通信手段により、時間、日付、内部チェック報告、1つ又はそれ以上の貯蔵槽内の内容物/レベル、噴霧ルーチンの識別、装置識別コードのうちの1つまたは複数を前記遠隔コンピュータ・サーバに送信する、請求項
7又は
8に記載の1つまたは複数の靴を含浸する方法。
【請求項10】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルのそれぞれは、100ミリ秒~1500ミリ秒の間隔で含浸剤を発射するように適応されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は品物(特にフットウェア)の表面上に含浸剤を塗布するための装置と、前述の装置を使用してフットウェアなどの品物を含浸する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
フットウェアまたは他の品物を湿気から保護するためにフットウェアを含浸剤で含浸し、それにより湿気/水分の影響を抑制することが広く一般に行われている。
【0003】
本特許の文脈ではフットウェアは、本発明を用いておよび本発明により処理されるにあたり好適な品物の1例として使用される。当然、当業者は本発明の特長を理解した後、本発明の装置および方法がいずれの他の品物を処理するにあたって好適であるかも認識するであろう。
【0004】
通常、フットウェアは非防水材料から作られ、そのため含浸を行う1つの理由は、フットウェアが湿気に曝露される時点からフットウェアが飽和状態となり湿気が足部に達する時点までの時間的期間を延ばすことである。
【0005】
他の目的は、湿気が表面を退色させ、それによりフットウェアの外観を退色させることを回避することである。係る退色は含浸剤の使用により緩和され得る。
【0006】
通常、エアロゾル缶を作動させることにより含浸ミストがエアロゾル缶のノズルを通して作られ、含浸ミストをフットウェアに誘導することにより、含浸剤の層がフットウェアの表面に塗布されるよう、含浸プロセスはエアロゾル缶内に含有される含浸剤により実行される。
【0007】
このプロセスは、含浸剤および含浸剤を推進するために使用されるエアロゾルが悪臭を有し、周辺部に汚損を生じさせ、さらに吸入された場合には健康に有害となる可能性があるという点で、通常は外部で実行される。
【0008】
フットウェアが無端コンベア上に配置され様々な処理区域を通して移送される含浸装置について、DE19945229に記載されている。コンベア・ベルトは推進器を含み、推進器によりフットウェアは異なる区域を通るよう付勢される。フットウェアが例えば含浸噴霧台に到着するとフットウェアが噴霧ノズルに対して回転され、そのようにしてノズルが(理論上は)フットウェアの外側側部全体を含浸するよう、フットウェアはターンテーブル上に配置される。
【0009】
GB2125319では、フットウェアを含浸するためのさらなる装置が開示される。この装置はレールを含み、含浸対象のフットウェアがそのレール上に配置される。軌道は処理台を通って延長する。軌道上に配置されたフットウェアは、処理台を通して移動される際、例えば含浸剤による噴霧、乾燥、その他が施される。フットウェアは軌道の一部であるホルダ上に配置される。ホルダが処理台で回転すると、全外側表面が確実に噴霧される。
【0010】
これらの問題を解決するために同一の出願者が、エンクロージャを有する装置の開発に成功した。そのエンクロージャ内にフットウェアが配置され、含浸手順が実行される。本願は国際公開WO2009/127214(A1)として公開されたものであり、同特許は参照することにより援用される。
【0011】
この装置は、含浸ミストの有害な吸入、含浸剤の環境内における分散、およびフットウェア品物のより均質な含浸に関する問題を解決するが、本発明が解決するいくつかの望ましい改善項目がさらに存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の目的のうちの1つは、必要にして且つ十分な含浸剤が露出された表面全体に均等に分布されるよう、より均質な含浸剤を作り、係る含浸剤の均等に分布された量をフットウェアの表面全体に塗布することである。さらに、環境問題と、フットウェア品物の含浸に要するコストと、の両方の観点から、可能な限り少量の含浸剤を使用することが望ましい。同時に本装置は、コンパクトであることと、異なる材料製の様々な種類およびサイズのフットウェアを処理する能力を有することと、が要求されるが、それにも関わらず本装置により達成される仕上げ品質は納得できるものであり、含浸された品物に対して期待される品質が維持されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、品物(特にフットウェア)の表面上に含浸剤を塗布するための装置を提供することにより、上記の問題を解決する。前記装置は処理チャンバを含み、処理チャンバ内には開閉可能なドアが提供され、前記ドアは、含浸対象の品物(単数または複数)を前記処理チャンバ内部に配置するために、前記処理チャンバの内部へのアクセスを可能にし、概略的な決定された位置に品物(特にフットウェア。単数または複数)を配置するための手段が前記処理チャンバの底部の近位に提供され、少なくとも3つのノズルが前記処理チャンバ内に配置され、第1ノズルおよび第2ノズルが、それぞれ右側の前方エリアおよび左側の前方エリアに対応する、決定された位置に置かれた品物(単数または複数)のゾーンに含浸剤のミストを誘導するよう配置され、第3ノズルが品物(単数または複数)の決定された位置の後方でそれらの間に配置され、第3ノズルは、品物(単数または複数)の後方側部および内側側部に対応する、決定された位置に置かれた品物(単数または複数)のゾーンに向かって含浸ミストを誘導するよう、前記ノズルはミストの形成および発射を行うことができる。
【0014】
少なくとも本発明の文脈では、請求項においておよび他の説明においても使用される特定的な用語の用法を理解することが重要である。
【0015】
1つの係る用語は「含浸剤」である。含浸剤は、特定の特性(例えば撥水性、発色性、微妙さ(subtleness)、その他など)を獲得するために表面に塗布されることが望ましい、通常は液状またはガス状の任意の物質であると理解される。その例としてはシリコン・ベースの撥水性含浸剤、脂肪質/油性の物質を含む溶媒、または様々な着色剤が挙げられる。本発明では、生成されたミストにおいて水粒子の1/10~1/8の粒径を有する含浸剤が最良の結果をもたらすことが見出されている。同様に、より低い発火温度を有する含浸剤を含む溶媒が最良の結果をもたらした。
【0016】
さらなる係る用語は「フットウェア」である。従来、フットウェアは靴、ブーツ、サンダル、その他を指すことを意図するものであるが、当業者に明らかなように、フットウェアに対応する形状またはサイズを有し、且つ表面処理を提供することが望まれる、任意の品物も、本発明に係る装置による処理または取り扱いに対して好適であると解釈されるべきである。係る品物の例としては、ハンドバッグ、手袋、枕、その他が挙げられる。
【0017】
さらに「ドア」という用語は、本発明の文脈では、開閉を可能にする枢動手段を有するあらゆる従来のドアを意味するものとして解釈されるべきであるが、さらに、ドアの目的が装置内部の処理チャンバへのアクセスを可能にすることであるため、本発明の範囲内では、ドアという用語は実際上、引き出し(ここでは、引き出しの前面がドアとして機能し、すなわち装置の内部へのアクセスが閉じられる)としても理解してよいと考えられる。ドアが引き出しの形状である本発明の実施形態では、概略的な決定された位置にフットウェアを配置するための手段は好適に、使用上の便宜のために引き出しの底部に配置され得る。
【0018】
さらに「ミスト」という用語は、ノズルから発射されたきわめて小さい液滴の比較的密集した集合体であると理解されるべきである。「フットウェアのゾーン」という用語が使用される場合、当該用語はその表面の相対的な方向にかかわらずフットウェアの表面エリアの1部分または区域として理解されるべきである。そのため、当該ゾーンを噴霧するよう指定されたノズルが当該エリア/ゾーン内に存在する特定的なフットウェアの任意の表面に含浸剤のミストを塗布するよう、表面は垂直であってもよく、水平であってもよく、または垂直と水平の間の任意の角度に配置されてもよい。
【0019】
ドアを開くことにより処理チャンバの内部にフットウェアを配置することが可能となり、ドアを閉じることにより含浸プロセスから発するあらゆる有害な悪臭または粒子が装置の内部に保持される程度に処理チャンバが外部から密閉されるよう、ドアは処理チャンバへの容易且つ安全なアクセスを可能にする。さらに、フットウェアの概略的な決定された位置を表示することによりフットウェアを処理チャンバ内部のいずれの位置に配置すべきかを表示することにより、フットウェアがノズルに対して正確な距離に配置され、それにより含浸プロセスが順調に達成され得ることが確実となる。
【0020】
「概略的な決定された位置」という用語は、本装置が様々なサイズのフットウェア用に作られているため処理対象のフットウェアの表面と特定のノズルとの間の距離が必ずしも同一であるとは限らないものとして、理解されるべきである。それを補償するために、本装置はさらなる特長的な実施形態のソフトウェアを含み、このソフトウェアは、順調な含浸を達成するために、以下のパラメータ(含浸剤圧力、ノズル開放時間、使用される含浸剤の量、その他)のうちの1つまたは複数を制御することとなる。
【0021】
「概略的な決定された位置」は例えば、フットウェアのそれぞれ、またはバスケット、または保持器、または処理対象の品物を維持/保持するにあたり好適な他の手段を、処理チャンバ内のノズル位置に対する実質的に決定されたどの位置に配置するべきかを示す底部の輪郭であり得る。
【0022】
本発明の噴霧パターンに関する徹底的な調査により、平均的サイズのフットウェアに対するノズルは発射されたミストにおいて重複を生じさせるが、徹底的且つ完全な含浸サイクルが広範なフットウェアサイズに対して達成されることが示されている。一方、ブーツ、靴、およびサンダルに対しては、特別な含浸ルーチンが適用されることに注意されたい。係る含浸ルーチンについては本装置を使用する本発明の方法の議論を参照して以下で説明する。
【0023】
この含浸ルーチンは、フットウェアの全部のゾーンが直近のノズルにより処理されるよう、上述したように配置された少なくとも3つのノズルを提供することにより、支援される。含浸対象の品物の表面との接触点において実質的に均質なミストを形成することが可能な十分なミストが形成されると同時に、含浸剤が含浸対象のゾーン上に伝達される前に特に溶媒その他が蒸発しないようにするためには、処理対象の表面とノズル放出口との間の距離が特定範囲内となることが非常に重要であることがテストで示されている。
【0024】
さらなる特長的な実施形態では第4ノズルおよび第5ノズルが提供される。第4ノズルおよび第5ノズルは、それぞれ、右側の品物の後方および外側の左側部と、左側の品物の後方および外側の右側部と、に向かって含浸ミストを誘導するために、決定された位置に置かれた品物(単数または複数)の後方に配置される。
【0025】
これらの第4ノズルおよび第5ノズルは、完全且つ効果的な噴霧パターンが得られ、それにより、概略的な決定された位置に配置されたあらゆる品物が効果的にカバーされるよう、3つのノズルを補完する。
【0026】
これらの理由により、およびフットウェアの形状に対して、これらのノズルは、さらに特長的な実施形態では、処理チャンバの底部に対して傾斜した角度で配置され得る。傾斜した角度でノズルを配置することにより、処理対象のフットウェアの表面に対してノズルが最適な状態で配置され、それにより最も適した様式でミスト形態の含浸剤が表面に供給されるよう、ノズルを配置することが可能となる。
【0027】
本発明のさらに特長的な実施形態では、各ノズルは導管により含浸剤の貯蔵槽に接続される。含浸剤は加圧されてノズルに供給される。各ノズルにはバルブ装置が提供される。各バルブは独立的に制御される。少なくとも第1ノズルおよび第2ノズルを制御する各バルブは、異なる時間に含浸剤を発射するよう制御される。
【0028】
このようにしてミストの形成が完全に制御される。各バルブを制御することと、それにより各ノズルを独立的に制御することと、により、含浸プロセスの完全な制御が可能となる。
【0029】
第1ノズルおよび第2ノズルが異なる時間に発射されるようノズルを制御することにより、さらなる特長が達成される。これらのノズルはフットウェアの左側および右側から発射するため、ミストがフットウェア上に強制的に発射されることに起因して何らかの干渉が生じ、それによりフットウェアの一部のエリアに含浸剤が凝集する一方で、他のエリアが含浸剤がほとんど有さない場合もある。単にノズルにおけるミスト生成を順次的に活性化することにより、ノズルは常に「未占有」空間中に発射することになる。すなわちノズルは、特定の時間に、ミストが存在しない空気中に、または移動するミストが存在しない空気中に、発射することとなる。
【0030】
さらなる特長的な実施形態では、第1ノズルおよび第2ノズルはそれぞれ、50ミリ秒~2000ミリ秒の間隔で、より好適には100ミリ秒~1500ミリ秒の間隔で、および最も好適には1500ミリ秒~1300ミリ秒の間隔で、含浸剤を発射する。これらの短時間バーストがソフトウェアの決定により反復され得るために、表面に向かって移動するミストは、移動中に干渉/湾曲されることが確実になくなり、微量の含浸剤が各バーストにおいて使用され、それにより確実に含浸サイクルは経済的なプロセスとなる。
【0031】
すでに上述したように、ノズルと処理対象の表面との間の距離はむしろ重要であり、そのため靴が決定された位置に配置されたとき、処理対象の表面とノズルとの間の距離が10mm~200mmとなるよう、より好適には25mm~100mmとなるよう、ノズルは配置される。
【0032】
さらに特長的な実施形態では、抽出手段が処理チャンバの底部に提供される。抽出手段は任意に能動的フィルタ・ユニットを含み得、使用中の抽出ユニットにより、処理チャンバ内部は装置の外部と比較して比較的低圧状態となり得る。
【0033】
すでに上述したように、含浸剤の一部は操作員または装置の近位にいる人々の健康に有害となり得、さらに含浸剤は、例えば店舗環境などの直近位置では望ましくない悪臭を有し得、したがって任意に抽出手段に能動的フィルタ・ユニットを提供することにより、いかなる含浸剤も処理チャンバから漏れないようにすることが可能となる。特に、装置が存在する周囲圧力よりも空気チャンバ内で空気圧が低くなるよう抽出手段を構成することにより、含浸剤は、処理チャンバから流出することが確実に防止される。
【0034】
本発明のさらに特長的な実施形態では、第6ノズルが処理チャンバの上方前方部分に配置される。第6ノズルは処理チャンバの後方部分に向かって含浸剤を発射するよう指向される。
【0035】
このノズルはブーツのシャフト部分を含浸するために特に配置されたものであり、通常、ユーザがブーツに関する含浸処理を選択したときにのみ、ソフトウェアにより活性化されることとなる。
【0036】
本発明のさらなる特長的な実施形態では、本装置は、遠隔コンピュータ・サーバと通信するための通信手段を含む。本装置が起動される都度、および/または噴霧ルーチンが活性化される都度、または所定の間隔で、本装置は、内部チェック報告、貯蔵槽(単数または複数)内の内容物/レベル(単数または複数)、使用された噴霧ルーチンの識別、装置識別コード、処理の回数、任意のエラーのうちの1つまたは複数を前記遠隔サーバに送信する。
【0037】
本装置が通常は非常に複雑であり、含浸装置が配置された店舗で働く職員は一般に、本装置が故障、エラー、破損など発生させた場合にこれらを軽減することが不可能であるため、これらの通信手段は機械の適切動作を遠隔位置から確認するために提供されたものである。
【0038】
本発明は、上述の装置を使用してフットウェアを含浸する方法も対象とする。本発明の方法では、いくつかのステップが実行される。第1のステップでは、
i.1足の靴または1対の靴が、処理チャンバ内部で、処理チャンバの底部上に表示された適切な決定された位置に配置され、
ii.処理チャンバが閉じられ、含浸プロセスが起動され、
iii.含浸剤を含む少なくとも1つの貯蔵槽と、処理チャンバ内部のノズルと、に接続されたポンプ手段が活性化され、それによりポンプからノズルへと至る導管内に圧力が生じ、
iv.事前プログラムされた噴霧ルーチンは、少なくとも1つの噴霧ルーチンが事前プログラムされている制御ユニットが、ルーチンにしたがって開閉するようノズルの近位に提供されたバルブを制御することと、噴霧ルーチンにしたがって抽出手段を活性化することと、を行うことを可能にすることにより、実行される。
【0039】
図面を参照して以下で説明されるように、必要な全特徴が1つのハウジングの内部に配置され得るため、本発明に係る装置および方法に関するさらなる顕著な特長は、本装置がスタンドアロン型ユニットとして構築され得るという点である。有害蒸気、含浸剤の貯蔵、その他に関する問題がすべて解決され、本装置内に含まれるなら、本装置は先行技術に係る装置が好適ではない環境に配置され得る。係る環境としては、環境上の問題のためにこれらの種類の装置の配置が許可されない店舗、更衣室、その他が挙げられる。
【0040】
この方法を用いることにより、上述した本発明の目的が達成されるであろう。本方法のさらなる特長的な実施形態については、さらなる従属請求項で説明する。
【0041】
ここで本発明の実施形態について以下の添付の図面を参照しつつ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】含浸剤をフットウェアの表面上に塗布するための装置の概略図である。
【
図3】ドアが開かれた状態で上方から見下ろした装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1では、含浸剤をフットウェアの表面上に塗布するための装置が概略的に示されるが、ここでは本装置の包囲壁は本装置の適切な動作を示すことを可能にするために取り除かれている。
【0044】
図1に示す本発明の実施形態では、フットウェアは左側の靴および右側の靴を含む1対の靴10である。靴は処理チャンバ20内に配置される。
図2に示す処理チャンバ20はドア31により開閉され得る(
図2参照)。ドア31は、1対の靴10の形状で
図1に示される品物が配置され処理されるよう、すなわち処理チャンバ内部で含浸されるよう、処理チャンバ20の内部へのアクセスを可能にする。概略的な決定された位置にフットウェアを配置するための、表示22の形状の手段が処理チャンバ20の底部21の近位に提供される。
【0045】
短く
図3を参照すると、装置1は、
図2に示すようにドア31が引き開けられた状態で、上方から見下ろされている。この図面では、フットウェアを配置するための手段22を見ることができ、さらに概略的な決定された位置が、異なる靴のサイズに対応する輪郭23、輪郭24、輪郭25により示される。このようにして、処理対象のフットウェアを適切な靴サイズに配置することにより、本願において概略的な決定された位置と呼ばれる箇所にフットウェアを配置することが可能である。
【0046】
図1に戻ると、いくつかのノズル26、27、28、および29が処理チャンバ内部に配置される。各ノズルは、処理対象のフットウェア10に誘導される含浸剤のミストを形成する。第1ノズル26および第2ノズル27はそれぞれ、右側の靴の前方エリアと、左側の靴の前方エリアと、に対応する、決定された位置に置かれたフットウェアのゾーン41と、ゾーン42と、にミストを誘導するよう配置される。わずかにミストにより隠された第3ノズル30が、右側の靴および左側の靴の決定された位置の後方でそれらの間に配置され、それにより第3ノズル30は、右側の靴の後方および内側の左側部と、左側の靴の後方および内側の右側部と、に対応する、決定された位置に置かれたフットウェア10のゾーンに向かって含浸ミストを誘導する。第4ノズル28および第5ノズル(第5ノズルは靴により隠されている)は、それぞれ右側の靴の後方および外側の左側部と、左側の靴の後方および外側の右側部と、に向かって含浸ミストを誘導するために、決定された位置に置かれたフットウェア10の後方に配置される。このようにして、5つのノズル26、27、28、30(および隠れた状態にある第5ノズル)は、装置1の底部における概略的な決定された位置に配置された靴を実質的に包囲し、含浸剤をノズルを通過させることにより形成されたミストを発射することにより、靴は実質的に外側表面全体が含浸される。
【0047】
処理チャンバ20の底部21の下方には様々な機材が配置される。フィルタ・抽出ユニット50が底部21の直近に配置され、処理チャンバに連通する。フィルタ・抽出ユニット50は余分なミストを処理チャンバ20から吸い出す。フィルタ・ユニット51(例えば活性炭フィルタ)はあらゆる悪臭を中和する。これらの種類の機械は通常、店舗その他の内部に配置され、したがってこれらの機械は、直近の環境において目立たないことが望ましいので、これがむしろ重要である。
【0048】
装置1内の最下方に容器52が配置され、容器52は含浸剤を含み、含浸剤はポンプ53により処理チャンバ20内のノズルに案内される。各ノズルにはバルブ(図示せず)が提供され、これらのバルブが互いに対して独立的に活性化されることが可能となるよう、各バルブは独立的に制御される。上記の構成は重要である。なぜなら加圧されたミストにより乱流が形成され、それにより他のノズルから発射されたミストが「押し退け」られる場合があるためである。異なるノズルを順次的に活性化することにより、決定されたノズルから発射されたミストは、決定された位置に配置されたフットウェア10に確実に到達することとなる。さらに
図1から明らかなように、フットウェア10の表面エリア全体に達するために、これらのノズルがフットウェアの表面上にわずかに上向きまたは下向きに噴霧することとなるよう、ノズルは傾斜した角度で配置される。フットウェア10は通常、全表面が必ずしもノズルに対して垂直とはならず、したがってミストが湾曲表面を含浸することが必要となり、図示のようにノズルを配置することにより、完全且つ満足のいく含浸が達成される。処理チャンバ20の上方部分には第6ノズル29が配置される。第6ノズル29は、処理チャンバ20内でさらに上方に延長する品物(例えばブーツ、ハンドバッグ、その他)を含浸するために、活性化され得る。
【0049】
図2に戻ると、引き出し形状のドア31は、閉止前方ドア表面32と、引き出しの底部33と、を含む。引き出し底部33上には、概略的な決定された位置を表示するための手段22が配置される。フットウェア10が引き出しに配置され、引き出しが閉じられると、処理チャンバは外部から分離される。
【0050】
含浸サイクルが制御パネル54により活性化されると、抽出ユニット50の機能により、処理外部の周囲圧力に対する低圧状態が処理チャンバ20内に確実に存在することとなる。このようにして、含浸ミストが処理から漏出しないことと、いかなる悪臭であっても、周囲環境に戻されて拡散される前にフィルタを通過することと、が確実になる。
【0051】
本装置および本方法は例えばフットウェアのサイズに応じて好適なルーチンにプログラムされ得る。表1に噴霧ルーチンの例がリストされる。ノズルについては、カッコ内の数値は
図1における参照番号を示し、「スモール」、「ミディアム」、その他はフットウェアのサイズに関するものであり、数値は噴霧時間(単位:ミリ秒)である。
【表1】
【0052】
制御パネルは必要な入力装置をすべて含む。それにより、例えば
図1に示す靴に対して表1に示す含浸プログラムを選択する(この場合、第6ノズル29は活性化されない)ことにより、または
図2に示すブーツに対して好適なプログラムを選択することにより、ユーザは装置1を操作し得る。さらに、適切な濃度、ミスト密度、その他がノズルにより作られるよう、入力はフットウェアが作られた材料に関連し得る。含浸サイクルを動作させるソフトウェアは、形状、サイズ、および材料に関して大部分の種類のフットウェアに対応するよう結成される。含浸サイクルが完了した後、短い乾燥サイクルが活性化され、ドア30を開くことによりフットウェア10が処理チャンバ20から取り出されたとき、フットウェアは、新規に含浸された実質的に乾燥した表面を有するであろう。
【0053】
制御パネル54と、特にソフトウェアと、は、さらなる実施形態では、GSM(登録商標)モジュールも含み得る。GSMモジュールは、サービスが良好なときに実行され得るよう、含浸サイクルの回数、使用された含浸剤の量、あらゆるエラー・メッセージの記録を取るセントラル・サーバと通信する。
【0054】
本発明に関して、本発明の実施形態の様々な態様を示す上述した添付の図面を参照して説明してきたが、保護の範囲は、上述の実施形態には限定されず、添付の請求項のみにより、限定される。
【0055】
上述のように、特に図面において、本発明に係る装置に関しては、明らかにスタンドアロン型・内蔵型ユニットである装置を参照して説明してきた。一方、本発明の特長的な実施形態を、生産ラインまたはスタンドアロン型の機能が不必要な状況で実装することも考えられる。