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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】タップホルダ
(51)【国際特許分類】
   B23G 1/46 20060101AFI20230123BHJP
【FI】
B23G1/46 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021159331
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2022-04-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伊原 稔
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/053606(WO,A1)
【文献】特開昭57-061415(JP,A)
【文献】実開昭57-043927(JP,U)
【文献】特開昭59-024916(JP,A)
【文献】特開昭55-096224(JP,A)
【文献】米国特許第04174918(US,A)
【文献】特開昭52-016072(JP,A)
【文献】特開昭52-089872(JP,A)
【文献】特開平08-090341(JP,A)
【文献】特開平01-135403(JP,A)
【文献】特開2014-124695(JP,A)
【文献】特開昭52-094578(JP,A)
【文献】特開平11-221733(JP,A)
【文献】特開2020-078869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に開口し中心軸に沿って延びるコレットホルダ穴を有するボディと、
前記コレットホルダ穴に進退可能に挿入されたタップコレットであって、
先端部に配置されたタップ装着穴と、
基端側に配置され、前記中心軸に沿って延びるスリーブ穴と、
を有するタップコレットと、
前記ボディの回転を前記タップコレットに伝達するトルク伝達機構と、
前記ボディと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを先端方向に押圧する第1の弾性リングと、
前記スリーブ穴に挿入されて前記ボディに配置され、前記タップコレットが先端方向に抜けることを防ぐスリーブと、
前記スリーブと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを基端方向に押圧する第2の弾性リングと、
を有する、タップホルダ。
【請求項2】
前記トルク伝達機構は、
前記タップコレットに配置された第1キー溝と、
前記コレットホルダ穴に配置された第2キー溝と、
前記第1キー溝又は第2キー溝のいずれか一方に配置され、前記第1キー溝又は第2キー溝の他方を滑動するキーと、
を有する、
請求項1に記載のタップホルダ。
【請求項3】
先端側に開口するコレットホルダ穴を有するボディと、
前記コレットホルダ穴に進退可能に挿入されたタップコレットであって、
先端部に配置されたタップ装着穴と、
基端側に配置されたスリーブ穴と、
を有するタップコレットと、
前記ボディの回転を前記タップコレットに伝達するトルク伝達機構であって、
前記タップコレットに配置された第1キー溝と、
前記コレットホルダ穴に配置された第2キー溝と、
前記第1キー溝又は第2キー溝のいずれか一方に配置され、前記第1キー溝又は第2キー溝の他方を滑動するキーと、
を有するトルク伝達機構と、
前記ボディと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを先端方向に押圧する第1の弾性リングと、
前記スリーブ穴に挿入されて前記ボディに配置され、前記タップコレットが先端方向に抜けることを防ぐスリーブと、
前記スリーブと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを基端方向に押圧する第2の弾性リングと、
を有する、タップホルダ。
【請求項4】
前記キーは、前記第1キー溝に配置された半月キーである、
請求項2又は3に記載のタップホルダ。
【請求項5】
前記トルク伝達機構は、
前記タップコレットに配置されたスプライン軸と、
前記ボディに配置され、前記スプライン軸と互いに滑動するスプライン穴と、を有する、
請求項1に記載のタップホルダ。
【請求項6】
前記スリーブ穴は、段付きの貫通穴であって、
先端側に配置された大径部と、
基端側に配置された小径部と、を有し、
前記スリーブは、
前記小径部よりも大きい径を有し、前記大径部の内部に配置されたフランジと、
前記小径部を貫通する円筒部と、を有し、
前記第2の弾性リングは、前記フランジと、前記大径部の端面との間に配置される、
請求項1~のいずれかに記載のタップホルダ。
【請求項7】
前記第1の弾性リングは、前記コレットホルダ穴と前記タップコレットとの間に配置される、
請求項1~のいずれかに記載のタップホルダ。
【請求項8】
前記第1の弾性リングは、前記ボディの先端面と、前記タップコレットとの間に配置される、
請求項1~のいずれかに記載のタップホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タップホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
シャンクと、シャンク内に軸方向に摺動自在に挿入されたタップホルダ本体と、シャンクとタップホルダ本体との間に配置され、タップホルダ本体を軸方向の相反する方向に付勢して、付勢力の釣り合い位置にタップホルダ本体を停止させる第1のバネ及び第2のバネを有するタップホルダが提案されている(例えば、特許第4344880号)。このタップホルダは、タップホルダに配置され、軸方向に延びる軸部材と、シャンク内に往復可能に配置されたバネ受け部材とを有する。第2のバネは、バネ受け部材を介してタップホルダ本体をタップ方向に付勢する。第1のバネは、バネ受け部材に支承され、軸部材を介してタップホルダ本体をタップと反対方向に付勢する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のタップホルダは、構造が複雑である。
本発明は、構造が簡単であり、振れ精度が高いタップホルダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、
先端側に開口するコレットホルダ穴を有するボディと、
前記コレットホルダ穴に進退可能に挿入されたタップコレットであって、
先端部に配置されたタップ装着穴と、
基端側に配置されたスリーブ穴と、
を有するタップコレットと、
前記ボディの回転を前記タップコレットに伝達するトルク伝達機構と、
前記ボディと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを先端方向に押圧する第1弾性体と、
前記スリーブ穴に挿入されて前記ボディに配置され、前記タップコレットが先端方向に抜けることを防ぐスリーブと、
前記スリーブと前記タップコレットとの間に配置され、前記タップコレットを基端方向に押圧する第2弾性体と、
を有する、タップホルダである。
【0005】
本発明のタップホルダは、リジッドタップに用いられる。ここで、リジッドタップとは、ねじ立てを行う際に、主軸の回転と送りを同期させる加工である。リジッドタップは、シンクロタップと呼ばれることもある。
【0006】
タップコレットは、コレットホルダ穴に摺動する外円筒面を有する。タップコレットは、外円筒面とコレットホルダ穴に案内されて、進退する。タップコレットは、コレットホルダと、コレットと、ナットと、を有する。コレットホルダは、コレットが装着されるテーパ穴と、スリーブ穴と、雄ねじとを有して良い。コレットホルダは、フランジを更に有して良い。フランジは、ボディの先端面と明確な隙間を設けて配置される。テーパ穴は、スリーブ穴に接続して良い。コレットは、タップ装着穴を有する。ナットは、タップと、コレットと共に雄ねじに締結される。
【0007】
ボディは、シャンクを有しても良い。ボディは、雌ねじを有しても良い。スリーブは、雌ねじに固定される。スリーブは、貫通穴を有して良い。スリーブは、貫通穴を通したボルトと共に、雌ねじに固定されて良い。
【0008】
キーは、滑動キーである。好ましくは、複数のキーが配置される。キーは、ボディの中心軸に回転対称に配置される。
【0009】
第1弾性体は、例えば、皿ばね、弾性リングである。第2弾性体は、例えば、皿ばね、弾性リングである。弾性リングは、例えば、断面が円形または矩形である。弾性リングは、例えば、ゴム、プラスチックで構成される。第1弾性体や第2弾性体は、自由長よりも圧縮されて装着される。
第1弾性体、第2弾性体の伸縮量は、制限されて良い。
【0010】
例えば、第1弾性体は、タップコレットの基端面に配置された片溝内に配置される。片溝は、例えば、円周溝である。また、第1弾性体は、コレットホルダに配置されたフランジの基端面と、ボディの先端面との間に配置されても良い。ここで、タップコレットの基端面とコレットホルダ穴の基端面(底面)とは、わずかな第1隙間を空けて面する。第1弾性体は、第1隙間の幅だけ、圧縮できる。第1弾性体は、復元力によってタップコレットを先端方向に押し出す。
第2弾性体は、フランジとスリーブ穴の間に挟まれる。スリーブの一部がスリーブ穴と直接衝突できるように構成されても良い。例えば、スリーブの小径部とフランジ部との間に中径部を有し、中径部の基端面がスリーブ穴の大径部の端面にわずかな第2隙間を設けて面しても良い。このとき、第2弾性体は、第2隙間の幅だけ圧縮できる。
【0011】
トルク伝達機構は、例えば、キー、スプラインである。トルク伝達機構は、回転方向の遊びが小さい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造が簡単であり、振れ精度が高いタップホルダを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のタップホルダの縦断面図
図2図1のII-II線断面図
図3】第1実施形態のタップホルダの分解組立図(縦断面図)
図4】一般的なタップの側面図
図5】第2実施形態のタップホルダの縦断面図
図6】第3実施形態のタップホルダの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態のタップホルダ10は、ボディ11と、トルク伝達機構14と、タップコレット17と、第1弾性リング(第1弾性体)18と、スリーブ19と、第2弾性リング(第2弾性体)21と、ボルト23と、を有する。なお、図1は、図2のI-I線断面図を示す。タップホルダ10は、例えば、工作機械の主軸1に装着される。タップホルダ10には、タップ3が装着される。
トルク伝達機構14は、第2キー溝12と、第1キー溝16と、半月キー15とを有する。タップコレット17は、コレットホルダ13と、コレット25と、ナット27と、を有する。
【0015】
図3は、I-I線断面図を、部品毎に分解した図である。図3に示すように、ボディ11は、シャンク11aと、大径部11dと、コレットホルダ穴11bと、第2キー溝12と、雌ねじ11cと、先端面11fと、を有する。ボディ11は、小径部11eを有しても良い。シャンク11aは、例えば、ストレートシャンクである。大径部11dは、例えば、円筒形であり、シャンク11aよりも大径である。シャンク11aは、主軸穴に装着される。大径部11dは、主軸1の端面に密接しても良い。小径部11eは、ボディ11の先端部に配置される。コレットホルダ穴11bは、有底の円筒穴であり、シャンク11aと同軸に配置される。コレットホルダ穴11bは、ボディ11の先端面11fに開口する。コレットホルダ穴11bの円筒面は、平滑である。第2キー溝12は、滑動用のキー溝である。第2キー溝12は、先端面11fから、コレットホルダ穴11bの中央部まで延びる。第2キー溝12は、シャンク11aの中心軸に回転対象に配置される。本実施形態のボディ11は、2つの第2キー溝12を有する。雌ねじ11cは、コレットホルダ穴11bの底面の中央に配置される。
【0016】
コレットホルダ13は、コレットホルダ穴11bに挿入される。コレットホルダ13は、中空円柱状である。コレットホルダ13は、外円筒面13aと、円周片溝13dと、第1キー溝16と、フランジ13bと、雄ねじ13cと、テーパ穴13gと、スリーブ穴13eと、を有する。スリーブ穴13eは、段付きの貫通穴である。スリーブ穴13eは、大径部13e2と、小径部13e1と、を有する。
【0017】
コレットホルダ13の外面は、基端側から円周片溝13d、外円筒面13a、フランジ13b、雄ねじ13cの順に配置される。円周片溝13dは、コレットホルダ13の基端面13fに配置された、断面が矩形の円周溝である。外円筒面13aは、平滑であり、コレットホルダ穴11bと実質的に同径である。第1キー溝16は、半月溝であり、外円筒面13aの先端部に配置される。フランジ13bは、外円筒面13aのよりも大径であり、円板状である。フランジ13bにスパナ掛け(例えば平行2面)が配置される。
雄ねじ13cは、コレットホルダ13の先端まで延びる。テーパ穴13gは、先端に向かうにつれて大径である円錐面であり、大径部13e2に接続する。大径部13e2と、小径部13e1は、円筒面である。大径部13e2は、小径部13e1よりも大径である。円周片溝13dと、雄ねじ13cと、テーパ穴13gと、スリーブ穴13eとは、外円筒面13aと同軸である。
【0018】
第1弾性リング18は、断面が矩形の円環である。第1弾性リング18の材質は、天然ゴムや合成ゴムである。第1弾性リング18の軸方向の長さは、円周片溝13dの長さよりも若干長い。第1弾性リング18は、円周片溝13dに装着される。
【0019】
半月キー15は、第1キー溝16に装着される。半月キー15とコレットホルダ13は、ボディ11内をシャンク11aの軸方向に一体となって往復する。このとき、外円筒面13aがコレットホルダ穴11bの円筒面に摺動して、案内される。半月キー15は、第2キー溝12内を滑動する。
【0020】
スリーブ19は、フランジ19cと、円筒部19bと、貫通穴19aと、を有する。円筒部19bの外径は、小径部13e1の内径と実質的に同一である。円筒部19bの長さは、小径部13e1の長さと、第2弾性リング21の長さの和よりも若干短い。フランジ19cの外径は、大径部13e2の内径と実質的に等しい。貫通穴19aは、スリーブ19の中心を貫通する。
【0021】
第2弾性リング21は、断面が矩形の円環である。第2弾性リング21の材質は、天然ゴムや合成ゴムである。第2弾性リング21は、円筒部19bに装着されて、フランジ19cとコレットホルダ穴11bの底面との間に挟まれる。
【0022】
ボルト23は、貫通穴19aと小径部13e1とを貫通して、雌ねじ11cに締め込まれる。これにより、ボルト23は、スリーブ19をボディ11に固定する。スリーブ19がボディ11に締結されたときに、第1弾性リング18と第2弾性リング21とが圧縮される。そして、第1弾性リング18は、その復元力によって、コレットホルダ13を先端方向へ押圧する。第2弾性リング21は、その復元力によって、コレットホルダ13を基端方向へ押圧する。また、スリーブ19は、タップコレット17が先端方向に抜けることを防ぐ。
【0023】
コレット25は、コレットテーパ25aを有する。コレットテーパ25aは、テーパ穴13gと同一のテーパ角度を有する。ナット27は、ナットねじ27aを有する。コレットテーパ25aは、テーパ穴13gに密着する。ナットねじ27aは、雄ねじ13cに嵌まり合う。コレット25は、ナット27に装着されて、タップ3と共にコレットホルダ13に締結される。ナット27が締められると、コレット25には、テーパ穴13gから半径方向内側にナット27の締結力の分力が働く。これにより、タップ3がコレットホルダ13に締結される。
【0024】
なお、ボルト23は、スリーブ19と一体に構成されて良い。この場合、貫通穴19aは省いて良い。
【0025】
本実施形態のタップホルダ10を用いて、リジッドタップ加工を行う。リジッドタップ加工では、主軸1を正回転しながら、ねじリードに合わせるように、主軸1の回転速度に同期して主軸1を先端方向に送り、タップ穴を加工する。タップ深さが所定の深さに達したときに、主軸1を一旦停止する。その後、主軸1を逆回転し、ねじリードに合わせるように、主軸1の回転速度に同期して主軸1を基端方向へ戻す。タップ3には、リード誤差、正逆反転誤差、主軸の送り誤差が生じ得る。本実施形態のタップホルダ10によれば、タップコレット17が前後方向にわずかにずれて、タップ3のねじリードに合わせてタップ3が移動する。そのため、ねじ山が崩れることなく、タップ加工できる。
【0026】
図1を参照して、外円筒面13aは、コレットホルダ穴11bに摺動して、案内される。そのため、ボディ11が回転したときに、タップコレット17が振れにくい。
【0027】
図2を参照して、トルク伝達機構14は滑りキー(半月キー15)を有するため、回転方向の遊びが小さい。したがって、ボディ11の回転にタップコレット17の回転が良く追従する。特に、タップ加工の終点で、主軸1(ボディ11)の回転方向が逆転する。このとき、回転の遊び分だけ、タップコレット17の回転が主軸1の回転から遅れる。タップコレット17の回転の遅れが大きいと、第2弾性リング21で吸収できず、先にタップ3が後退してしまう。そのため、ねじを引きちぎる等、ねじ精度が悪化するおそれがある。
本実施形態のタップホルダ10によれば、トルク伝達機構14の遊びが小さいため、ボディ11に対するタップコレット17の回転の遅れが小さくなる。また、回転の正逆と送りのタイミングの微調整が不要である。
【0028】
トルク伝達機構14は、半月キー15を有するため、第1キー溝16が半月溝である。そのため、コレットホルダ13を容易に製作できる。
【0029】
ここで、第1弾性体や第2弾性体としてコイルばねを用いたときには、主軸1の回転速度が大きくなると、ねじが崩れる場合がある。例えば、スパイラルタップであるタップ3を使用した場合、加工方向にタップ3が引っ張られる。図4に示すように、通常のタップ4は、食いつき部4aと、案内部4bと、シャンク部4cとを有する。タップ4が案内部4bを有する場合、食いつき部4aが加工したねじ山に案内部4bが案内されて、タップ4の送り量がリード送りに自己調整される。そして、案内部4bが、加工したねじ山に支持されるため、タップ4が受ける引張力は、加工されたねじ山と案内部3bに分散して作用する。すると、ねじ山が崩れにくい。
【0030】
これに対して、図1に示すように、リジッドタップ加工用のタップ3は、食いつき部3aと、シャンク部3cとを有し、案内部を有さない。案内部を有さないタップ3を用いて加工すると、タップ3の送り量が、タップ3のリードに自己調整されない。そのため、リジッドタップ加工においては、タップ3の回転速度に、タップ3の進行速度が同期する必要がある。ここで、コイルばねは、伸縮量が大きく復元力が小さい。第1弾性体や第2弾性体としてコイルばねを用いたときには、タップ3の送り量が、タップ3のリードから大きく外れる場合がある。コイルばねを用いたときは、ねじ深さが深くなり、加工不良を起こしやすい。
【0031】
本実施形態のタップホルダ10は、第1弾性体である第1弾性リング18と、第2弾性体である第2弾性リング21とを有する。第1弾性リング18及び第2弾性リング21の軸方向の長さが短い。また、第1弾性リング18及び第2弾性リング21の弾性率が高い。そのため、ボディ11に対するタップコレット17の進退量が小さい。
本実施形態のタップホルダ10によれば、第1弾性リング18や第2弾性リングの伸縮量が小さく、一定の力で弾性力を有するため、タップコレット17がタップ3のリードに合わせて微小量だけ調整される。そのため、加工精度が向上する。
【0032】
コレットホルダ13の基端面13fとコレットホルダ穴11bの底面との隙間は、わずかである。そのため、コレットホルダ13がボディ11に対して大きく後退すると、コレットホルダ13がコレットホルダ穴11bに衝突する。これにより、コレットホルダ13の後退幅が定まる。コレットホルダ13の後退幅が制限されるため、コレットホルダ13が後退しすぎることによる第1弾性リング18の破壊が抑制される。
【0033】
以上のように、本実施形態のタップホルダ10は、高速回転でのタップ加工に好適に利用できる。
【0034】
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態のタップホルダ100は、タップコレット117と、トルク伝達機構114と、皿ばね(第1弾性体)118と、皿ばね(第2弾性体)121と、を有する。タップコレット117は、コレットホルダ113を有する。タップホルダ100のその他の構成は、第1実施形態のタップホルダ10と実質的に同一である。
【0035】
コレットホルダ113は、第1実施形態の円周片溝13dに比べて、シャンク11aの軸方向に深い円周片溝113dを有する。皿ばね118は、円周片溝113dとコレットホルダ穴11bの間に配置される。好ましくは、複数の皿ばね118が、円周片溝113dとコレットホルダ穴11bの間に配置される。
コレットホルダ113は、第1実施形態の大径部13e2に比べて、シャンク11aの軸方向に深い大径部113e2を有する。フランジ19cと大径部113e2との間に、深さの深い空間が生ずる。皿ばね121は、フランジ19cと大径部113e2との間に配置される。好ましくは、複数の皿ばね121が、フランジ19cと大径部113e2との間に配置される。
【0036】
トルク伝達機構114は、第1キー溝116と、平行キー115と、第2キー溝12と、を有する。第1キー溝116は、角溝である。平行キー115は、第1キー溝116に締結され、第2キー溝12を滑動する。
【0037】
平行キー115は、第1キー溝116に締結されるため、第1キー溝116に対して傾くことを抑制される。第1弾性体及び第2弾性体が皿ばね118、121であるため、耐久性が高い。
【0038】
<第3実施形態>
図6に示すように、本実施形態のタップホルダ200は、タップコレット217と、トルク伝達機構214と、第1弾性リング218と、を有する。タップコレット217は、コレットホルダ213を有する。第1弾性リング218は、ボディ11とフランジ213bとの間に挿入される。タップホルダ200のその他の構成は、第1実施形態のタップホルダ10と実質的に同一である。
【0039】
トルク伝達機構214は、スプライン穴212と、スプライン軸215と、を有する。スプライン穴212は、コレットホルダ穴11bの先端部に配置される。スプライン軸215は、コレットホルダ213の外円筒面13aの先端部に配置される。スプライン軸215は、スプライン穴212に嵌りあい、シャンク11aの軸方向に滑動する。
【0040】
コレットホルダ213は、第1実施形態における円周片溝13dを有しない。第1弾性リング218は、先端面11fと、フランジ213bとの間に挿入される。
【0041】
トルク伝達機構214は、スプラインであるため、ボディ11に対するコレットホルダ213の円周方向の遊びが小さい。
【0042】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10、100、200 タップホルダ
11 ボディ
11b コレットホルダ穴
13e スリーブ穴
14、114、214 トルク伝達機構
17、117、217 タップコレット
18、118、218 第1弾性体
19 スリーブ
21,121 第2弾性体
25b タップ装着穴
【要約】
【課題】構造が簡単であり、振れ精度が高いタップホルダを提供する。
【解決手段】タップホルダ10は、先端側に開口するコレットホルダ穴11bを有するボディ11と、コレットホルダ穴11bに進退可能に挿入され、先端部に配置されたタップ装着穴25bと、基端側に配置されたスリーブ穴13eと、を有するタップコレット17と、ボディ11の回転をタップコレット17に伝達するトルク伝達機構14と、ボディ11とタップコレット17との間に配置され、タップコレット17を先端方向に押圧する第1弾性体18と、スリーブ穴13eに挿入されてボディ11に配置され、タップコレット17が先端方向に抜けることを防ぐスリーブ19と、スリーブ19とタップコレット17との間に配置され、タップコレット17を基端方向に押圧する第2弾性体21と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6