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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】フォトマスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/32 20120101AFI20230123BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
G03F1/32
C23C14/06 G
C23C14/06 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021174507
(22)【出願日】2021-10-26
(62)【分割の表示】P 2020079753の分割
【原出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2022017386
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】302003244
【氏名又は名称】株式会社エスケーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】森山 久美子
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎吾
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-230556(JP,A)
【文献】特開平08-328235(JP,A)
【文献】特開平10-020476(JP,A)
【文献】特開平11-125894(JP,A)
【文献】特開2000-181048(JP,A)
【文献】特開2002-189280(JP,A)
【文献】特開2004-301993(JP,A)
【文献】特開2005-091855(JP,A)
【文献】特開2010-198006(JP,A)
【文献】特開2011-013382(JP,A)
【文献】特開2013-134435(JP,A)
【文献】米国特許第05853923(US,A)
【文献】米国特許第05888678(US,A)
【文献】米国特許第06007324(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00~1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過性基板上に下層膜を有し、前記下層膜上に上層膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程と、
前記上層膜上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光し、露光量の異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を形成する露光工程と、
前記第1の領域を選択的に除去する第1のレジスト除去工程と、
前記上層膜及び前記下層膜をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の領域を選択的に除去する第2のレジスト除去工程と、
前記上層膜を前記下層膜に対して選択的にエッチングする第2のエッチング工程と、
前記第3の領域を除去する工程とを含み、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長(i線、h線、g線)に対して位相シフト量が0度以上20度以下の半透過膜であって、
前記第3の領域の両側に対称的に半透過領域のリム部が設けられることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
透過性基板上に下層膜を有し、前記下層膜上に上層膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程と、
前記上層膜上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光し、露光量の異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を形成する露光工程と
前記第1の領域を選択的に除去する第1のレジスト除去工程と、
前記上層膜及び前記下層膜をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の領域を選択的に除去する第2のレジスト除去工程と、
前記上層膜を前記下層膜に対して選択的にエッチングする第2のエッチング工程と、
前記第3の領域を除去する工程とを有し、
前記下層膜は、露光光に含まれる代表波長(i線、h線、g線)に対して位相シフト量が160度以上200度以下の位相シフト膜であって、
前記第3の領域の両側に対称的に半透過領域のリム部が設けられることを特徴とすフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記下層膜と前記上層膜との積層領域の透過率は、前記上層膜の膜厚によって調整されることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記上層膜は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記下層膜は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記上層膜の透過率は、前記上層膜の膜厚よって調整されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ等の電子デバイスを製造する工程において、フォトマスクが使用されている。従来より、フォトマスクとして透過部と遮光部とを有するバイナリーマスクが用いられている。しかし、近年では、例えば微細なパターンを形成するため、遮光膜と位相シフト膜とを備えた位相シフトマスクや、電子デバイスの製造工程数の低減のため多階調フォトマスクが用いられることがある。このようなフォトマスクは、透明基板上に複数の光学的特性の異なるパターンを備えており、これらのパターンを形成するためには、複数回のパターン描画(露光)工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-134435号公報
【文献】特開2017-76146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異なる光学特性を有する半透過領域と遮光領域とを形成する場合、それぞれのパターン形成に対して、フォトレジストの露光(描画)処理が必要となり、製造工数が増大する。さらに、それぞれのパターンを描画する毎に、フォトマスク基板を露光(描画)装置にセットして露光処理を行うため、重ね合わせ誤差(又はアライメントずれ)が発生することがある。そのため、重ね合わせ余裕を考慮したパターン配置とする必要があり、精細なパターンを得ることができなくなる。
【0005】
特許文献1は、異なる材料からなるパターンを形成する方法が開示されている。特許文献1には、異なる材料からなる下層膜と上層膜との積層上にレジストパターンを形成し、上記レジストパターンをマスクに上層膜及び下層膜をそれぞれ選択的にウェットエッチングした後、上記レジストパターンをマスクに上層膜をサイドエッチングする方法が開示されている。特許文献1は、1回の描画工程により形成されたレジストパターンを用い、重ね合わせ誤差の発生を防止できるものの、露光の際の不必要な光量を利用するため不安定であり、自ずとパターンサイズが限定される。
【0006】
特許文献2は、予備現像によって形成された第1レジストパターンをマスクに第1のエッチングを行い、その後に追加現像を施すことで第1レジストパターンのエッジ部を後退させた後に第2のエッチングを行い、遮光部の両側に対称的に位相シフト膜を形成する方法が開示されている。特許文献2に開示された製造方法においても、露光装置での重ね合わせ誤差の発生を防止できるものの、形成できるパターンが限定されてしまう。
【0007】
上記課題を鑑み、本発明は、異なる光学特性を有するパターンを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができるフォトマスク及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
透過性基板上に下層膜を有し、前記下層膜上に上層膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程と、
前記上層膜上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光し、露光量の異なる第1の領域、第2の領域及び第3の領域を形成する露光工程と、
前記第1の領域を選択的に除去する第1のレジスト除去工程と、
前記上層膜及び前記下層膜をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記第2の領域を選択的に除去する第2のレジスト除去工程と、
前記上層膜を前記下層膜に対して選択的にエッチングする第2のエッチング工程と、
前記第3の領域を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、下層膜からなるパターンと、下層膜と上層膜からなるパターンとを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができるフォトマスクを得ることができる。
【0010】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記下層膜は、透過率が10%以上70%以下、位相シフト量が0度以上20度以下の半透過膜であることを特徴とする。
【0011】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、パターン形成のための露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制することができるハーフトーンマスクを得ることができる。
【0012】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記下層膜は、透過率が3%以上15%以下、位相シフト量が160度以上200度以下の位相シフト膜であることを特徴とする。
【0013】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、パターン形成のための露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制することができる位相シフトマスクを得ることができる。
【0014】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記下層膜と前記上層膜とが異なる材料から構成されていることを特徴とする。
【0015】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、選択エッチングによる精細なパターン形成が容易となる。
【0016】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記下層膜と前記上層膜との積層領域の透過率は、前記上層膜の膜厚を調整することによって調整されることを特徴とする。
【0017】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、形成されるパターンの透過率を適宜に設定することができる。
【0018】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記上層膜は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記下層膜は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物であることを特徴とする。
【0020】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、選択エッチングを容易とするための上層膜と下層膜の材料を適宜決定することができる。
【0021】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、
前記上層膜の透過率は、前記上層膜をエッチングして前記上層膜の膜厚を調整することによって調整されることを特徴とする。
【0022】
このようなフォトマスクの製造方法とすることで、上層膜のパターンの透過率を適宜に変更することができる。
【0023】
本発明に係るフォトマスクは、
透過性基板上に下層膜から構成されたパターンと、前記下層膜上に上層膜を有する積層膜から構成されたパターンとを備え、
前記下層膜は透過率が10%以上70%以下、位相シフト量が0度以上20度以下の半透過膜であり、
前記下層膜の材料は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物から選択され、
前記上層膜の材料は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物から選択されるとともに、前記下層膜と異なることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係るフォトマスクは、
透過性基板上に下層膜から構成されたパターンと、前記下層膜上に上層膜を有する積層膜から構成されたパターンとを備え、
前記下層膜は透過率が3%以上15%以下、位相シフト量が160度以上200度以下の位相シフト膜であり、
前記下層膜の材料は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物から選択され、
前記上層膜の材料は、Cr系金属化合物、Si系化合物又は金属シリサイド化合物から選択されるとともに、前記下層膜と異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、異なる光学特性を有するパターンを、露光時の重ね合わせ誤差の発生を抑制して形成することができるフォトマスク及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態1におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
図2】実施形態1におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
図3】フォトレジスト膜の断面を示すSEM写真である。
図4】実施形態1におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
図5】実施形態2におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
図6】実施形態2におけるフォトマスクの主要製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0028】
(実施形態1)
図1、2は、実施形態1によるフォトマスク100の主要製造工程を示す断面図である。以下、図面を参照して、フォトマスク100の製造方法を説明する。
【0029】
(成膜工程:フォトマスクブランクス準備工程)
図1(a)に示すように、合成石英ガラス等の透過性基板1を準備し、透過性基板1上に、例えばCr系金属化合物、Si系化合物、金属シリサイド化合物等の公知の材料からなる半透過性の下層膜2をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚5[nm]~20[nm])成膜する。
【0030】
ここで、透過性基板1は、フォトマスク100を用いたリソグラフィー工程において使用される露光光に含まれる代表波長(例えばi線、h線、g線)に対して90~100%(90%≦透過率≦100%)の透過率を有する。
また、半透過性とは、露光光に含まれる代表波長に対して、透過率が、透過性基板1の透過率よりも低く、後述する積層構造膜の透過率よりも高いことを意味する。
なお、露光光は、例えばi線、h線若しくはg線であってもよく、又はこれらの少なくとも2つの光を含む混合光であってもよい。また、露光光は、これらに限定するものではない。
【0031】
下層膜2は、ハーフトーン膜又は位相シフト膜として用いることができる。
例えば、下層膜2をハーフトーン膜として利用する場合、代表波長に対して、下層膜2の透過率が10~70%(10%≦透過率≦70%)になるよう設定する。また、位相シフト量は小さく(略0°、例えば0~20°)に設定すればよい。
また、例えば、下層膜2を位相シフト膜として利用する場合、露光光に含まれる代表波長に対して、下層膜2の透過率が3~15%(3%≦透過率≦15%)、位相シフト量が略180°(160°≦位相シフト量≦200°)、さらに好適には170°≦位相シフト量≦190°になるよう設定する。
下層膜2のハーフトーン膜及び位相シフト膜としての光学的性質は、例えば、組成及び膜厚を調整することにより、実現が可能である。
【0032】
次に、下層膜2上に、例えばCr系金属化合物、Si系化合物、金属シリサイド化合物等の公知の材料からなる上層膜3をスパッタ法、蒸着法等により(例えば膜厚50[nm]~100[nm])成膜する。ただし、上層膜3は、下層膜2とエッチング特性が異なる材料から構成される。例えば下層膜2としてCr系化合物、上層膜3としてCr以外の金属系化合物、例えばTi系化合物やNi系化合物とする組合わせを選択する。なお、Cr系化合物等の金属系化合物は、金属のみから構成されてもよい。
上層膜3の代表波長に対する透過率は、上層膜3と下層膜2との積層膜が遮光性を有するように上層膜3の材料(組成)及び膜厚を調整すればよい。本積層膜の代表波長に対する透過率は、例えば1%以下(0%≦透過率≦1%)である。換言すれば、上層膜3の材質(組成)及び膜厚を調整することで光学濃度(OD値)が3.0以上を満たせばよい。
【0033】
以下、透過性基板1上に下層膜2及び上層膜3が形成された積層構造体をフォトマスクブランクスと称する。
予め上記構成のフォトマスクブランクスを複数枚準備し、保管しておいてもよい。顧客等から発注された際に、予め準備されていた上記構成のフォトマスクブランクスを利用することで、工期の短縮に寄与することができる。
【0034】
(フォトレジスト形成工程)
次に、図1(b)に示すように、上層膜3上に(フォト)レジスト膜4を塗布法、スプレイ法等により形成する。
【0035】
(露光工程)
次に、図1(c)に示すように、露光(描画)装置(例えばレーザー描画装置)に、フォトマスクブランクスをロード(露光装置内の露光用ステージ上に載置)し、レジスト膜4を露光する。
このとき、レジスト膜4には、露光量が異なる3つの領域、すなわち高ドーズ領域4c(第1の領域)、低ドーズ領域4b(第2の領域)、未露光領域4a(第3の領域)が形成される。
ここで、未露光領域4aとは露光しない領域即ち露光量が0の領域であり、低ドーズ領域4bとは相対的に低い露光量で露光された領域であり、高ドーズ領域4cとは相対的に高い露光量で露光された領域である。
露光装置による描画方法は、レーザー描画に限定されるものではない。例えば電子線を用いてもよい。
【0036】
さらに具体的には、上記高ドーズ領域の高ドーズとは、後述する第1の現像工程でレジストが除去される際に、レジストを溶解させるために必要な露光量以上の露光量を意味する。対して、低ドーズ領域の低ドーズとは、後述する第1の現像工程によりレジストが除去されず残置され、第2の現像工程によって除去される程度の露光量という意味である。例えば、第1の現像工程に必要な高ドーズ量を基準とした場合、その高ドーズ量に対して、5%~90%の露光量の範囲の露光量を意味する。
低ドーズ量の設定は、上記範囲内で適宜設定が可能であるが、第2の現像工程のプロセス工程時間を考慮する必要があることは言うまでもない。
【0037】
なお、簡単のためレジスト膜4の高ドーズ領域4cを「高ドーズ領域4c」、レジスト膜4の低ドーズ領域4bを「低ドーズ領域4b」、レジスト膜4のレジスト膜4の未露光領域4aを「未露光領域4a」と称することがある。
【0038】
低ドーズ領域4b及び高ドーズ領域4cは、露光装置から透明基板1をアンロードする(取り出す)ことなく形成することができる。例えば、低ドーズ領域4bに相当する領域及び高ドーズ領域4cに相当する領域を、それぞれ第1の露光量及び第2の露光量となるようレーザーをスキャンすることで露光し、これらの領域を形成できる。
【0039】
また、低ドーズ領域4b及び高ドーズ領域4cに相当する領域を、第1の露光量となるようレーザーをスキャンして露光し、その後、高ドーズ領域4cが第2の露光量となるように、高ドーズ領域4cに相当する領域のみを追加的にレーザーをスキャンして露光してもよい。複数のレーザー照射により露光量が平均化され、高ドーズ領域4c露光量の均一性が向上する。また、低ドーズ領域4bと高ドーズ領域4cとが接する場合、境界領域での露光量の均一性も向上する。
【0040】
上記のように、フォトマスクブランクスを露光装置からアンロードせずに、低ドーズ領域4b及び高ドーズ領域4cの露光処理を行うため、これらの領域(パターン)間で重ね合わせ誤差(ずれ)の発生は抑制される。
【0041】
(第1の現像(レジスト除去)工程)
次に、図1(d)に示すように、第1の現像工程において、現像液により高ドーズ領域4cのレジスト膜4のみを選択的に除去し、レジスト膜4をパターニングする。
後述するように、レジスト膜4の現像液による溶解特性が、露光量(ドーズ)に依存するため、露光量に応じて露光されたレジスト膜4を選択的に順次除去することが可能となる。第1の現像工程においては、高ドーズ領域4cの溶解速度が、未露光領域4a及び低ドーズ領域4bの溶解速度に対して十分に(例えば、数倍から1桁)高くなる現像条件で現像(現像液による溶解)を行うことで、選択的に高ドーズ領域4cのみを除去できる。
なお、図1(d)に示すように、低ドーズ領域4bのレジスト膜厚は、未露光領域4aのレジスト膜厚と比較して薄くなる。
【0042】
(第1のエッチング工程)
次に、図2(a)に示すように、パターニングされたレジスト膜4、即ち未露光領域4a及び低ドーズ領域4bのレジスト膜4をエッチングマスクにして、上層膜3をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングし、その後下層膜2をウェットエッチング法又はドライエッチング法によりエッチングし、透過性基板1の表面を露出する。
上層膜3と下層膜2とは、互いに異なる材料を採用することにより、下層膜2がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて、上層膜3を選択的にエッチングすることができる。その後、上層膜3がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて、下層膜2を選択的にエッチングすることができる。
【0043】
(第2の現像(レジスト除去)工程)
次に、図2(b)に示すように、第2の現像工程において、現像液により低ドーズ領域4bのレジスト膜4のみを選択的に除去し、レジスト膜4をパターニングする。この工程において、未露光領域4aのみが上層膜3上に残置する。
第1の現像工程及び第2の現像工程に示すように露光量の異なるレジスト膜4を露光量に依存して順次除去できるのは、溶解速度が現像条件(時間等)に非線形に依存する現象があるためである。溶解速度が変化(増大)する変化点が露光量に依存して変化する特性を利用することで露光量の異なる領域を選択的に順次除去することができる。
第2の現像工程では、低ドーズ領域4bの溶解速度が、未露光領域4aの溶解速度に対して十分に高くなる現像条件で現像(溶解)を行い、選択的に低ドーズ領域4bのみを除去できる。
【0044】
なお、この方法を用いることで、3種以上の異なるレジスト膜4のパターンを得ることも可能である。
【0045】
(第2のエッチング工程)
次に、図2(c)に示すように、未露光領域4aをエッチングマスクにして、下層膜2がエッチングされないエッチャント(薬液又はガス)を用いて、上層膜3をウェットエッチング法又はドライエッチング法により選択的にエッチングする。
図2(c)においては、下層膜2と上層膜3の積層から構成されているパターンの両側に下層膜2のみから構成されているパターンが形成されている。
下層膜2のみから構成されているパターンは、低ドーズ領域4bにより確定されるため、図1(c)に示す露光工程において光学的に設定できる。
【0046】
(第3のレジスト除去工程)
次に、図2(d)に示すように、アッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより、未露光領域4aのレジスト膜4を除去する。
以上により、下層膜2及び上層膜3を含む積層から構成された遮光領域5と、下層膜2から構成された半透過領域6と、透過性基板1が露出した透過領域7を備えたフォトマスク100を得ることができる。
フォトマスク100は、下層膜2として上記ハーフトーン膜としての条件を採用することで多階調のハーフトーンマスクして機能する。また、フォトマスク100は、下層膜2として上記位相シフト膜としての条件を採用することで、位相シフトマスクとしての機能させることができる。特にこの場合、露光工程での重ね合わせ誤差の発生が抑制されるため、遮光領域5の両側に対称的に半透過領域6のリム部を設けることができ、精細なパターン形成を可能にする位相シフトマスクを得ることができる。
【0047】
図3は、フォトレジストの断面形状を示すSEM写真である。図3(a)は第1の現像工程後のレジスト膜4の断面形状を示し、図3(b)は第2の現像工程後のレジスト膜4の断面形状を示す。
【0048】
図3(a)に示すように、未露光領域4a及び低ドーズ領域4bとが接する境界部分においては、レジスト膜4の断面は、なだらかなテーパー形状を有することがある。
しかし、図3(b)に示すように、第2の現像工程後においては、未露光領域4aのレジスト膜4の断面は急峻な形状を示す。すなわち、図1(c)に示す露光工程において確定された低ドーズ領域4bのレジスト膜4が、第2の現像工程において選択的に除去され、未露光領域4aは光学的に、正確に確定されることを示す。
【0049】
また、図4(c)に示すように、半透過領域6と遮光領域5とを互いに離隔して形成することも可能である。図4(a)に示すように、露光(描画)装置によって、レジスト膜4に対して、未露光領域4a及び低ドーズ領域4bとを互いに離隔して露光し、その後図4(b)に示すように、第1の現像工程によって、互いに離隔した未露光領域4a及び低ドーズ領域4bを得ることができる。
その後、図2に示す工程によって、半透過領域6と遮光領域5とを互いに離隔して形成することができる。
従って、遮光領域5及び半透過領域6は、光学的に所望のパターンに設定でき、フォトマスク100のパターン設計の自由度が、特許文献1、2に開示された方法と比較して、大きく向上する。
なお、半透過領域6と遮光領域7とが互いに離隔したパターンと、半透過領域6と遮光領域7とが互いに隣接したパターンが混在するパターン配置とすることも可能である。
半透過領域6と遮光領域7とのパターン配置について、上記のとおり種々の配置が可能であることは、他の実施形態についても同様である。
【0050】
(実施形態2)
実施形態1では、1回の露光処理によりレジスト膜4に、未露光領域4a低ドーズ領域4b及び高ドーズ領域4cの3種の領域を形成し、透過領域、半透過領域、遮光領域の3階調のフォトマスクを製造できることを示した。
実施形態2によれば、さらに多階調のフォトマスク100を提供することも可能となる。
【0051】
図5(a)に示すように、1回の露光工程においてレジスト膜4を露光して、露光量が高い順に第1の領域4d、第2の領域4e、第3の領域4f、第4の領域4g(露光量0)を形成する。
【0052】
次に図5(b)に示すように、露光量の最も多い第1の領域4dを選択的に除去後、第2の領域4e、第3の領域4f、第4の領域4gのレジスト膜4をマスクに上層膜3と下層膜2とをエッチングし、透明基板1を露出させる。
【0053】
次に図5(c)に示すように、露光量が2番目に多い第2の領域4eを選択的に除去後、第3の領域4f、第4の領域4gのレジスト膜4をマスクに上層膜3をエッチングして除去し、さらに下層膜2を部分的にエッチングし、相対的に膜厚が薄い第1の下層膜2a(薄膜下層膜2a)と相対的に膜厚が厚い第2の下層膜2b(厚膜下層膜2b)を形成する。
【0054】
次に図5(d)に示すように、露光量が3番目に多い第3の領域4fを選択的に除去後、第4の領域4gのレジスト膜4をマスクに上層膜3をエッチングして除去し、第2の下層膜2bの表面を露出させる。
【0055】
次に図5(e)に示すように、第4の領域4gのレジスト膜4をアッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより除去する。
下層膜2と上層膜3との積層である遮光領域5、透明基板1が露出した透過領域7、膜厚が相対的に薄い第1の下層膜2aから構成される第1の半透過領域61及び膜厚が相対的に厚い第2の下層膜2bから構成される第2の半透過領域62が形成される。
従って、透過領域7及び遮光領域5、並びに透過率の異なる第1の半透過領域61及び第2の半透過領域62の4階調のフォトマスク100を得ることができる。
【0056】
なお、上層膜3の一部の領域を部分的にエッチングして膜厚を減少させることで、半透過領域を形成してもよい。
図5(c)に示す工程において、露光量が2番目に多い第2の領域4eを選択的に除去後、第3の領域4f、第4の領域4gのレジスト膜4をマスクにして、図2(c)に示す工程と同様に、上層膜3のみを選択的にエッチングして除去し、下層膜2の表面を露出させる。(図6(a)参照。)
【0057】
次に、図6(b)に示すように、露光量が3番目に多い第3の領域4fを選択的に除去後、第4の領域4gのレジスト膜4をマスクに上層膜3を部分的にエッチングして相対的に膜厚が薄い第1の上層膜3a(薄膜上層膜3a)と相対的に膜厚が厚い第2の上層膜3b(厚膜上層膜3b)を形成する。
上層膜3の膜厚を減少させることで得られた薄膜上層膜3aは、代表波長に対する透過率が増大し、半透過膜となる。
【0058】
次に、図6(c)に示すように、第4の領域4gのレジスト膜4をアッシング法又はレジスト剥離液に浸漬することにより除去する。
透明基板1が露出した透過領域7、下層膜2から構成される第1の半透過領域61、下層膜2と相対的に膜厚が薄い第1の上層膜3aとの積層から構成される第2の半透過領域62及び下層膜2と相対的に膜厚が厚い第2の上層膜3bとの積層である遮光領域5が形成される。第2の半透過領域62は、下層膜2の上層に第1の上層膜3a(薄膜上層膜3a)を備えるため第1の半透過領域61と比較して、透過率が低くなる。また、第1の上層膜3aは上層膜3より膜厚が薄く透過率が増大するため、第2の半透過領域62は遮光領域5(下層膜2と厚膜上層膜3bとの積層)より透過率が高い半透過領域となる。
従って、それぞれ透過率の異なる透過領域7、第1の半透過領域61、第2の半透過領域62及び遮光領域5を備えた4階調のフォトマスク100を得ることができる。
【0059】
このように、下層膜2又は上層膜3の一部の領域において、膜厚を減少させることで透過率を変化させ、さらなる多階調のフォトマスク100を得ることができる。さらに、図5に示す製造工程と図6に示す製造工程とを組合わせ、下層膜2及び上層膜3の一部の領域において、膜厚を減少させることで透過率を変化させ、多階調フォトマスク100得ることもできる。
【0060】
なお、上記各実施形態は、レジスト膜4としてポジ型レジストを用いた場合を例にして説明したが、ネガ型レジストを用いた場合も同様である。ネガ型レジストの場合、露光量の関係がポジ型レジストと反対になる。例えば、ポジ型レジストの未露光領域がネガ型レジストの高ドーズ領域に、ポジ型レジストの高ドーズ領域がネガ型レジストの未露光領域に対応する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、1回の露光処理工程により、異なる光学特性を有するパターンを備えたフォトマスクを得ることができる。その結果、フォトマスクの製造工数の増大を防止しながら、精細なパターンを実現することができる。
本フォトマスクを、表示装置等の製品の生産工程で用いることにより、製品の性能向上等に寄与することができ、産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0062】
1 透過性基板
2 下層膜
2a 第1の下層膜(薄膜下層膜)
2b 第2の下層膜(厚膜下層膜)
3 上層膜
3a 第1の上層膜(薄膜上層膜)
3b 第2の上層膜(厚膜上層膜)
4 (フォト)レジスト膜
4a 未露光領域(第3の領域)
4b 低ドーズ領域(第2の領域)
4c 高ドーズ領域(第1の領域)
4d 第1の領域
4e 第2の領域
4f 第3の領域
4g 第4の領域
5 遮光領域
6 半透過領域
61 第1の半透過領域
62 第2の半透過領域
7 透過領域
100 フォトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6