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特許7214854電力システムの少なくとも1つの回路遮断器を制御するための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】電力システムの少なくとも1つの回路遮断器を制御するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/06 20060101AFI20230123BHJP
【FI】
H02H3/06 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021517387
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075651
(87)【国際公開番号】W WO2020064699
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】201841036616
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18199596.0
(32)【優先日】2018-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタネク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カンタ,ソウミャ
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-051408(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099495(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0273779(US,A1)
【文献】特表2008-529227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システム(100)の少なくとも1つの回路遮断器(1)を制御する方法であって、前記電力システム(100)はさらに、電源(2)と、前記回路遮断器(1)を介して前記電源(2)に結合された伝送線路(3)と、前記伝送線路(3)に結合された分路リアクトル(4)と、前記分路リアクトル(4)に直列接続された変流器(6)とを含み、前記方法は、
前記変流器(6)の出力信号を処理するステップを含み、前記処理するステップは、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を求めるステップを含み、前記方法はさらに、
前記変流器(6)が検知した電流(I)の前記求めた時間微分に基づいて制御動作および/または保護動作を実行するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記変流器(6)の出力信号を処理するステップは、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分に基づいて前記伝送線路(3)の線路電圧(U)を求めるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御動作および/または保護動作は、前記回路遮断器(1)をトリップした後の前記回路遮断器(1)の制御されたリクローズを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電力システムは、前記電源(2)に接続され前記電源(2)の電源電圧(U)を検知するように適合された変圧器(7)を含み、前記制御動作および/または保護動作は、前記変圧器(7)の出力信号と前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分とに基づく、前記回路遮断器(1)の制御されたリクローズを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記回路遮断器(1)の前記制御されたリクローズは、前記変圧器(7)の出力信号と、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分とに基づいて、前記回路遮断器(1)をリクローズする目標リクローズ時間を制御することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記回路遮断器(1)の前記リクローズは、ポイント・オン・ウェーブコントローラを含む制御または保護装置(10)によって制御される、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記変流器(6)の出力信号を処理するステップは、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を、前記分路リアクトル(4)のインダクタンスで、または別の適切なスケーリング係数で乗算することにより、前記伝送線路(3)の線路電圧を求めるステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記変流器(6)の出力信号を処理するステップは、前記変流器(6)が検知した電流(I )の時間微分を、前記分路リアクトル(4)のインダクタンスで、または別の適切なスケーリング係数で乗算することにより、前記伝送線路(3)の線路電圧を求めるステップを含み、
前記回路遮断器(1)が閉じられている間に測定された前記変圧器(7)の出力信号と、前記回路遮断器(1)が閉じられている間に前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分とを使用する較正において、前記分路リアクトル(4)のインダクタンスを求めるステップをさらに含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項9】
前記分路リアクトル(4)のインダクタンスは、前記回路遮断器(1)が閉じられている間の前記変圧器(7)の出力信号の少なくとも1つのピーク値と、前記回路遮断器(1)が閉じられている間に前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分の少なくとも1つのピーク値とに基づいて求められる、または、
前記分路リアクトル(4)のインダクタンスは、前記回路遮断器(1)が閉じられている間の前記変圧器(7)の出力信号の少なくとも1つの計算された二乗平均平方根RMSの値と、前記回路遮断器(1)が閉じられている間に前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分の少なくとも1つの計算されたRMSの値とに基づいて、求められる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を用いて、
-線路通電解除の瞬間を検知すること、
-一時的故障の解消または二次アーク放電の消弧を検出すること、
-少なくとも1つの保護機能、
-線路同期、
のうちの少なくとも1つを実行するステップをさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
電力システムの少なくとも1つの回路遮断器(1)を制御するための制御または保護装置(10)であって、前記電力システムはさらに、電源(2)と、前記回路遮断器(1)を介して前記電源(2)に結合された伝送線路(3)と、前記伝送線路(3)に結合された分路リアクトル(4)と、前記分路リアクトル(4)に直列接続された変流器(6)とを含み、
前記制御または保護装置(10)は、
前記変流器(6)が検知した電流(I)または前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を表す入力信号を受ける入力と、
前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分に基づいて制御動作および/または保護動作を実行するように適合された制御回路とを備える、制御または保護装置(10)。
【請求項12】
前記制御または保護装置(10)は、前記電源(2)に接続された変圧器(7)の出力信号と、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分から得られた線路電圧信号とに基づいて、トリップ後の回路遮断器(1)の制御されたリクローズを実行するように適合されたポイント・オン・ウェーブコントローラを備える、請求項11に記載の制御または保護装置(10)。
【請求項13】
前記制御または保護装置(10)は、前記電源(2)に接続された変圧器(7)の出力信号と、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分から得られた線路電圧信号とに基づいて、トリップ後の回路遮断器(1)の制御されたリクローズを実行するように適合される、請求項11に記載の制御または保護装置(10)。
【請求項14】
前記制御または保護装置(10)は、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合される、請求項11~13のいずれか1項に記載の制御または保護装置(10)。
【請求項15】
電力システム(100)であって、
電源(2)と、
回路遮断器(1)を介して前記電源(2)に結合された伝送線路(3)と、
前記伝送線路(3)に結合された分路リアクトル(4)と、
前記分路リアクトル(4)に直列接続された変流器(6)と、
請求項11~14のいずれか1項に記載の制御または保護装置(10)とを備える、電力システム。
【請求項16】
前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を計算するように適合されたコンピューティングデバイス(8)をさらに備える、請求項15に記載の電力システム。
【請求項17】
前記コンピューティングデバイス(8)は、前記変流器(6)が検知した電流(I)の時間微分を、前記分路リアクトル(4)のインダクタンスで、または別の適切なスケーリング係数で乗算することにより、前記伝送線路(3)の線路電圧信号を再構成するように適合されている、請求項16に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、電力システムの少なくとも1つの回路遮断器を制御するための方法および装置に関する。本発明は、特に、高電圧または中電圧システムの少なくとも1つの回路遮断器の制御を可能にする方法および装置に関する。本発明は、特に、伝送線路の少なくとも1つの回路遮断器の制御されたリクローズ(reclose)のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
高電圧または中電圧送電用システムのような電力システムは、制御機能および保護機能を実現するために1つまたは数個の回路遮断器(circuit breaker)(CB)を備えていることが多い。CBをトリップした後に適切なタイミングでリクローズすることは、スイッチング過渡現象を最小にするには望ましいことが多いものの、相当な難題である可能性がある。
【0003】
図6は、CBのリクローズを制御するための従来技術を使用する電力システム100の基本的な単線結線図を示す。このシステムは、電源2とCB1とを含む。CB1は、伝送線路3の通電および通電解除を行うために配置される。伝送線路3は、1つ以上の分路リアクトル4、9を備えていてもよい。分路リアクトル4、9は、伝送線路3の容量を補償するように動作することができる。分路リアクトル4は、CB1および電源2に近い、伝送線路の局所端に配置されている。もう1つの分路リアクトル9は、伝送線路3の遠端または伝送線路3に沿う別の場所に配置することができる。
【0004】
CB1をトリップすると、健全相は、一般的に、伝送線路3およびリアクトル4、9のパラメータによって決まる1つ以上の周波数で振動するトラップされたチャージ電圧を保持する。CB1をリクローズすると、トラップされたチャージは最大4puの高い過電圧を伝送線路3上に生じさせる可能性がある。高い過電圧は、伝送線路3の絶縁体に多大なストレスを生じさせる場合がある。高い過電圧は、サージ避雷器の動作を生じさせる場合がある。
【0005】
このような高い過電圧発生のリスクを緩和する1つの方法は、制御されたリクローズである。各CB極は、CB1の差動電圧のビート最小値(beat minimum)で閉じることができる。制御または保護装置10を用いることにより、CB1のリクローズを制御することができる。
【0006】
CB1の差動電圧は、通常は直接測定することはできないが、電源電圧Uと線路電圧Uとの差として計算する必要がある。電源電圧(バスバー電圧とも呼ばれる)Uは、電圧の振幅および周波数の双方が一定であるとみなすことができるが、伝送線路3の電圧Uは、CB1がトリップされた後には、すなわちリクローズについて判断する必要があるときには、電圧の振幅および周波数の双方が一定であるとみなすことはできない。
【0007】
図6は、制御されたリクローズのための従来の制御設定を示しており、この場合、制御または保護装置10は、バスバーに配置された電源電圧変圧器(voltage transformer)(VT)7から電源電圧Uを、伝送線路3の局所端に配置された線路VT5から線路電圧Uを受ける。
【0008】
しかしながら、変圧器の一般的な設計は公称電力周波数に同調させることが多い。これは特にコンデンサ型変圧器(capacitive voltage transformer)(CVT)に当てはまる。CBのトリップ後に伝送線路3上に現れる周波数のようなさまざまな周波数において、伝送線路VT5は、振幅および位相の両方において大きな誤差を示す場合がある。線路電圧Uを伝送線路VT5を用いて測定し、CBの電圧差を電源VT7を用いて測定した電源電圧Uと伝送線路VT5を用いて測定した線路電圧Uとの差から計算する、従来の技術では、CB1の電圧差およびそのビート最小値の不正確な予測が生じる可能性がある。
【0009】
CIGRE WG 13.07, "Controlled Switching of HVAC Circuit Breakers: Guide for Application - Lines, Reactors, Capacitors, Transformers." 1st part, ELECTRA, No. 183, April 1999, pp. 43-73. 2nd part," ELECTRA, No. 185, August 1999, pp. 37-57は、分路補償伝送線路の制御されたリクローズを開示し、トリップ後に線路電圧信号Uの正確な画像を得るという課題について述べている。
【0010】
US7936093B2は、制御されたリクローズのための目標の瞬間を得るために、リアクトル電流および電源電圧の時間微分を使用することを開示している。しかしながら、US7936093B2の方法は、リアクトル電流のゼロ交差が電源電圧のゼロ交差と同時発生すると想定している。このような同時発生するゼロ交差は実際には必ずしも生じないものであり、および/またはこのようなゼロ交差の同時発生を観察するには容認できない長い時間を要する可能性がある。また、US7936093B2の方法は、線路周波数が一定であると想定しているが、CBのトリップ後には必ずしもそうとは限らない。
【0011】
US2013/0234731A1は容量結合変圧器を開示している。
特開2004-349001は回路遮断器を開示している。位相制御部および周波数識別部が指令信号を出力するために設けられている。
【0012】
DE19612992A1が開示するシステムでは、電流および電圧の急変を、故障が発生すると自動的に起動される、保護機器に対応付けられた検出器で測定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
概要
本発明の目的は、電力システムにおいて制御動作および/または保護動作を実行するための改善された方法および装置を提供することである。特に、本発明の目的は、1つまたは数個の分路リアクトルを備えた伝送線路上で使用することができ、かつ、トリップ後の回路遮断器の、より信頼性が高い制御されたリクローズを可能にする、制御動作および/または保護動作のための方法および装置を提供することである。特に、本発明の目的は、電源電圧の時間微分のゼロ交差と同時にリアクトル電流がゼロ交差することを要求することなく、および/または線路周波数が一定であることを要求することなく、信頼性高く動作することが可能な、トリップ後の伝送線路のための回路遮断器の制御されたリクローズのための方法および制御または保護装置を、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
独立請求項に記載の方法および装置が提供される。従属請求項は実施形態を規定する。
実施形態に従い、分路リアクトルを流れる電流の時間微分から線路電圧を計算する方法および装置が提供される。このような方法および装置は、電源またはバスバー電圧Uと、L・dI/dt(Lは分路リアクトルのインダクタンスであり、Iは回路遮断器が開いている間に分路リアクトルを流れる電流)として計算される導出線路電圧との差が、ゼロもしくはほぼゼロであるか、または、U-L・dI/dtとして計算される差動電圧のビート最小である目標時間にトリップした後に、回路遮断器の制御されたリクローズを実行することができる。当該方法および装置は、線路通電解除の瞬間を検出すること、一時的故障の解消もしくは二次アーク放電の消弧を検出すること、少なくとも1つの保護機能、および/または線路同期などの、他の目的のために、伝送線路の線路電圧の推定値として、値L・dI/dtを使用することができる。
【0015】
実施形態に係る方法および装置は、伝送線路の端部と接地との間に配置された分路リアクトルと直列接続されている変流器を用いることにより、分路リアクトルを流れる電流を測定することができる。
【0016】
変流器は、誘導変流器であってもよく、または、ロゴスキー(Rogowski)コイルもしくはホール効果センサまたは電流信号を測定するように適合された同様のセンサを含んでいてもよい。変流器の出力信号は、プロセスバス上の、アナログ形態(電流または電圧など)であってもよく、または、デジタル信号のストリームであってもよい。変流器がロゴスキーコイルを含む場合、原則として電流の導関数であるその出力電圧は、伝送線路の線路電圧を表すものとして直接使用されてもよい。
【0017】
電力システムの少なくとも1つの回路遮断器を制御する方法が提供される。電力システムは、電源と、回路遮断器を介して電源に結合された伝送線路と、伝送線路に結合された分路リアクトルと、分路リアクトルと直列接続された変流器とを含む。この方法は、変流器の出力信号を処理するステップを含み、この処理するステップは、変流器が検知した電流の時間微分を求めるステップを含む。この方法は、変流器が検知した電流の、求めた時間微分に基づいて、制御動作および/または保護動作を実行するステップを含む。
【0018】
制御動作および/または保護動作は、少なくとも1つの制御または保護装置によって実行されてもよい。
【0019】
制御動作および/または保護動作は、少なくとも1つの制御または保護装置によって自動的に実行されてもよい。
【0020】
分路リアクトルは、伝送線路の容量を、任意の程度で、通常は30~80%の範囲で、補償するように設計されてもよい。
【0021】
変流器の出力信号を処理するステップは、変流器が検知した電流の時間微分に基づいて伝送線路の線路電圧を求めるステップを含み得る。
【0022】
回路遮断器は、伝送線路用の回路遮断器であってもよい。制御動作および/または保護動作を実行するステップは、回路遮断器のトリップ後に回路遮断器のリクローズを制御するステップを含み得る。
【0023】
電力システムは、電源に接続され少なくとも1つの相において電源またはバスバーの電源電圧を検知するように適合された変圧器を含み得る。少なくとも1つの制御または保護装置は、変圧器の出力信号と、変流器が検知した電流の時間微分とに基づいて回路遮断器のリクローズを制御してもよい。
【0024】
制御動作および/または保護動作は、変圧器の出力信号および変流器が検知した電流の時間微分に基づいて、回路遮断器がリクローズされる目標リクローズ時間を制御することを含み得る。
【0025】
制御または保護装置は、ポイント・オン・ウェーブコントローラを含み得る。
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、Uを示す変圧器の出力信号に基づいて、かつ、分路リアクトル電流の時間微分から導出される、計算された線路電圧L・dI/dtに基づいて、回路遮断器が開かれているときの回路遮断器の差動電圧信号を予測することにより、将来のビート最小値を特定することができる。
【0026】
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、個々のリクローズコマンドを各回路遮断器極に転送することができる。
【0027】
制御されたリクローズは、U-L・dI/dt(Uは変圧器が検知した電源電圧であり、Lは分路リアクトルのインダクタンスであり、Iは、変流器が検知した、回路遮断器が開いている間に分路リアクトルを流れる電流である)が目標リクローズ時間においてゼロまたはゼロの近くになるように、目標閉鎖時間を制御することを含み得る。
【0028】
変流器の出力信号を処理するステップは、変流器が検知した電流の時間微分を、分路リアクトルのインダクタンスで、または別の適切なスケーリング係数で乗算するステップを含み得る。
【0029】
この方法は、分路リアクトルのインダクタンスを受けるステップをさらに含み得る。分路リアクトルのインダクタンスは、制御または保護装置のインターフェイスで受けてもよい。分路リアクトルのインダクタンスは、分路リアクトルの物理的定格プレートから、分路リアクトルのデータシートから、または分路リアクトルの技術データを表すコンピュータ化された記録から読み出されてもよく、制御または保護装置のユーザインターフェイスまたはデータインターフェイスで受けてもよい。
【0030】
この方法は、回路遮断器が閉じられている間に測定された変圧器の出力信号と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分とを使用する較正において、分路リアクトルのインダクタンスを求めるステップをさらに含み得る。
【0031】
分路リアクトルのインダクタンスは、回路遮断器が閉じられている間の変圧器の出力信号の少なくとも1つのピーク値、二乗平均平方根(RMS)の値、または他の平均値に基づいて、および、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分の少なくとも1つのピーク値、RMS値、または他の平均値に基づいて、求められてもよい。
【0032】
分路リアクトルのインダクタンスは、回路遮断器が閉じられている間の変圧器の出力信号のピーク値またはRMS値と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分のピーク値またはRMS値との比率として求めてもよい。
【0033】
分路リアクトルのインダクタンスは、回路遮断器が閉じられている間の変圧器の出力信号のいくつかのピーク値またはRMS値の平均と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分のいくつかのピーク値またはRMS値の平均との比率として求めてもよい。
【0034】
この方法は、変流器が検知した電流の時間微分を用いて、線路通電解除の瞬間を検知すること;一時的故障の解消または二次アーク放電の消弧を検出すること;少なくとも1つの保護機能;線路同期、のうちの1つまたはいくつかを実行するステップをさらに含み得る。
【0035】
この方法は、電力システムの複数の相に使用されてもよい。説明のために、この方法は、電力システムのいくつかの相における制御されたリクローズのために使用されてもよい。複数の相を有する電力システムでは、複数の変流器が異なる相に対して設けられる。複数の変流器の出力信号は、たとえば、2相または3相の電流の時間微分を求めるように処理されてもよい。
【0036】
この方法において、制御または保護装置は、複数の相の電流の求められた時間微分に基づいて制御動作および/または保護動作を実行してもよい。
【0037】
制御動作および/または保護動作を実行することは、伝送線路の異なる相に関連するいくつかの回路遮断器または回路遮断器極の制御されたリクローズを実行することを含み得る。制御されたリクローズは、各相について、変圧器の出力電圧または各相についてバスバー電圧に依存して、および分路リアクトルインピーダンスと各相ごとに変流器が測定した分路リアクトル電流の時間微分との積に応じて、それぞれ実行されてもよい。
【0038】
電力システムの少なくとも1つの回路遮断器を制御するための制御または保護装置が提供される。電力システムは、電源と、回路遮断器を介して電源に結合された伝送線路と、伝送線路に結合された分路リアクトルと、分路リアクトルに直列接続された変流器とを含む。制御または保護装置は、変流器が検知した電流または変流器が検知した電流の時間微分を表す入力信号を受ける入力を備える。制御または保護装置は、変流器が検知した電流の時間微分に基づいて制御動作および/または保護動作を実行するように適合された制御回路を備える。
【0039】
制御または保護装置は、変流器が検知した電流の時間微分を計算するように適合されてもよい。
【0040】
制御または保護装置の入力は、変流器が検知した電流の時間微分を計算するコンピューティングデバイスに結合されてもよい。
【0041】
コンピューティングデバイスは、変流器が検知した電流またはその電流の時間微分を、分路リアクトルのインダクタンスなどの適切なスケーリング係数で乗算するようにさらに適合されてもよい。
【0042】
制御または保護装置は、ポイント・オン・ウェーブコントローラを含み得る。
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、電源に接続された変圧器の出力信号と、変流器が検知した電流の時間微分から得られた線路電圧とに基づいて、トリップ後の回路遮断器のリクローズを制御するように適合されてもよい。
【0043】
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、ソース電圧Uに基づいて、かつ、分路リアクトル電流の時間微分から得られた計算された線路電圧L・dI/dtに基づいて、回路遮断器が開いているときの回路遮断器の差動電圧信号を予測して、将来のビート最小値を特定するように適合されてもよい。
【0044】
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、U-L・dI/dt(Uは電源電圧であり、Lは分路リアクトルのインダクタンスであり、Iは、変流器が検知した、回路遮断器が開いている間に分路リアクトルを流れる電流である)が目標リクローズ時間においてゼロに近くなるように、目標閉鎖時間を制御するように、適合されてもよい。
【0045】
ポイント・オン・ウェーブコントローラは、個々のリクローズコマンドを各回路遮断器極に転送するように適合されてもよい。
【0046】
制御または保護装置は、分路リアクトルのインダクタンスを受けるインターフェイスを有していてもよい。分路リアクトルのインダクタンスは、分路リアクトルの物理的定格プレートから、分路リアクトルのデータシートから、または分路リアクトルの技術データを表すコンピュータ化された記録から読み出されてもよく、制御または保護装置のユーザインターフェイスまたはデータインターフェイスで受けてもよい。
【0047】
制御または保護装置は、回路遮断器が閉じられている間に測定された電源変圧器または負荷変圧器の出力信号と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分とを使用する較正において、分路リアクトルのインダクタンスを求めるように適合されてもよい。
【0048】
制御または保護装置は、回路遮断器が閉じられている間の電源変圧器または負荷変圧器の出力信号の少なくとも1つのピーク値、RMS値、または他の平均値、および回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分の少なくとも1つのピーク値、RMS値、または他の平均値に基づいて、分路リアクトルのインピーダンスを求めるように適合されてもよい。
【0049】
制御または保護装置は、回路遮断器が閉じられている間の電源変圧器または負荷変圧器の出力信号のピーク値またはRMS値と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分のピーク値またはRMS値との比率として分路リアクトルのインダクタンスを求めるように適合されてもよい。
【0050】
制御または保護装置は、回路遮断器が閉じられている間の電源変圧器または負荷変圧器の出力信号のいくつかのピーク値またはRMS値の平均と、回路遮断器が閉じられている間に変流器が検知した電流の時間微分のいくつかのピーク値またはRMS値の平均とのと比率して分路リアクトルのインダクタンスを求めるように適合されてもよい。
【0051】
複数の、たとえば3つの相を有する電力システムに使用される場合、制御または保護装置は、複数の相の各々について分路リアクトルのインダクタンスを求めるように適合されてもよい。
【0052】
制御または保護装置は、電力システムのいずれか1つまたは複数の相において、線路通電解除の瞬間を検出すること;一時的故障の解消または二次アーク放電の消弧を検出すること;少なくとも1つの保護機能;線路同期、のうちの1つまたはいくつかを実行するように適合されてもよい。
【0053】
制御または保護装置は、本発明のいずれかの局面または実施形態の方法を実行するように適合されてもよい。
【0054】
制御または保護装置は、電力システムのいずれか1つまたは複数の相において回路遮断器または回路遮断器極の制御されたリクローズを個別に実行するように適合されてもよい。複数の相を有する電力システムにおいて、異なる相に対して複数の変流器を設けることができる。
【0055】
制御または保護装置は、伝送線路の複数の異なる相の分路リアクトルを通る分路リアクトル電流を検知する複数の変流器の出力信号を受けるように適合された入力を有していてもよい。
【0056】
制御または保護装置は、伝送線路の異なる相に関連するいくつかの回路遮断器または回路遮断器極の制御されたリクローズを有効にするように適合されてもよい。制御されたリクローズは、各相ごとに、各相の変圧器の出力電圧またはバスバー電圧に依存して、かつ、各相の分路リアクトルインピーダンスと変流器が測定した分路リアクトル電流の時間微分との積に依存して、それぞれ実行されてもよい。
【0057】
一実施形態に係る電力システムは、電源と、回路遮断器を介して電源に結合された伝送線路と、伝送線路に結合された分路リアクトルと、分路リアクトルに直列接続された変流器と、本発明に係る制御または保護装置とを備える。
【0058】
分路リアクトルは、伝送線路の局所端に接続されてもよい。1つまたはいくつかの追加の分路リアクトルが、伝送線路の遠端または他の場所に接続されてもよい。
【0059】
電力システムは、変流器が検知した電流の時間微分を計算するように適合されたコンピューティングデバイスをさらに含み得る。
【0060】
コンピューティングデバイスは、変流器が検知した電流の時間微分を、分路リアクトルのインダクタンスで、または別の適切なスケーリング係数で乗算することにより、伝送線路の線路電圧信号を再構成するように適合されてもよい。
【0061】
電力システムの変流器は、ロゴスキーコイルもしくはホール効果センサまたは電流を測定するように適合された同様のセンサを含んでいてもよい。
【0062】
実施形態に係る方法、制御または保護装置、およびシステムは、回路遮断器がトリップされている状態における潜在的に不正確な線路電圧の測定に依存することなく、少なくとも1つの分路リアクトルを備えた伝送線路を有する電力ネットワークにおいて制御動作または保護動作などの他の動作を実行することを可能にする。
【0063】
変流器は、典型的には、コンデンサ型変圧器よりも優れた周波数応答を有する。実施形態に係る方法および制御または保護装置は、異なる線路周波数に対しても、リクローズ目標のより正確な計算のためのベースとして、計算された線路電圧信号の精度を高める。
【0064】
本発明の実施形態は、トリップ後の回路遮断器の制御されたリクローズのために使用することができるが、これに限定される訳ではない。
【0065】
本発明の主題について、添付の図面に示される具体例としての好ましい実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】ある実施形態に係る制御または保護装置を含む電力システムの概略図である。
図2】ある実施形態に係る、制御または保護装置を含み制御または保護装置とは別のコンピューティングデバイスが設けられた電力システムの概略図である。
図3】電力システムのさまざまな位相の信号を示す図である。
図4】ある実施形態に係る方法のフローチャートの図である。
図5】ある実施形態に係る較正を含む方法のフローチャートの図である。
図6】制御されたリクローズのための従来の制御構造を採用した電力システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
実施形態の詳細な説明
本発明の具体例としての実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面において、同一または同様の参照符号は同一または同様の要素を示す。いくつかの実施形態を、トリップ後の回路遮断器(CB)の制御されたリクローズという文脈で説明するが、実施形態はこれに限定される訳ではない。実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0068】
電力システムおよびその構成要素は、単相として説明し示しているが、一般的に、電力システムおよびその構成要素は通常は3相を含むことが理解されるはずである。しかしながら、本発明はその実施形態とともに具体的な数のシステム位相に限定される訳ではない。
【0069】
図1はある実施形態に係る電力システムの概略図である。電力システムは、高電圧電力システムであっても中電圧電力システムであってもよい。
【0070】
電力システムは、電源2およびCB1を含み得る。CB1は、閉じた状態では伝送線路3を電源2に接続し、開いた状態では伝送線路3を電源2から切り離すように構成されている。伝送線路3は、1つ以上の分路リアクトル4、9を備えてもよい。分路リアクトル4、9は伝送線路3の容量を補償するように動作する。分路リアクトル4は、伝送線路のCB1側の局所端に配置されている。別の分路リアクトル9は、伝送線路3の遠端に、または伝送線路3に沿った別の場所に配置することができるが、本開示の技術には必要ではない。
【0071】
制御または保護装置10は、トリップ後にCB1の制御されたリクローズを実行することができる。制御または保護装置10は、ポイント・オン・ウェーブ・コントローラであるか、またはそれを含むことができる。制御または保護装置10は、CB1が開かれているときにリクローズの目標時間を決定するとき、CB1の差動電圧信号を予測するように適合されてもよい。
【0072】
図6に示され、先に説明された)将来のビート最小値を特定するために線路電圧Uを直接測定する変圧器5を使用する従来の制御戦略とは異なり、制御または保護装置10は、電源電圧Uと、分路リアクトル電流Iの時間微分から導出された(測定されたのではなく)計算された線路電圧L・dI/dtを使用して、制御されたリクローズを実行する。制御または保護装置10は、測定された電源電圧Uと、分路リアクトル電流Iの時間微分から導出された計算された線路電圧L・dI/dtとに基づいて、開かれたCB1の電圧差が最小である将来のビート最小値を予測することにより、CB1の目標リクローズ時間を決定することができる。目標リクローズ時間は、CB1の各相または極ごとに個別に決定してもよい。制御または保護装置10は、開かれたCB1の電圧差のビートの予測された将来の最小値に従い、個々のリクローズコマンドを各回路遮断器極に転送するように適合されてもよい。
【0073】
分路リアクトル電流を提供するために、電力システム10は、分路リアクトル4に直列接続された変流器6を含み得る。変流器6と分路リアクトル4との直列接続は、伝送線路3の一端と接地との間に接続されてもよい。
【0074】
制御または保護装置10は、変流器6が検知した分路リアクトル電流Iの時間微分を計算する回路を含み得る。回路は、時間微分を計算するようにプログラムされたプロセッサ、コントローラ、または特定用途向け集積回路などの集積半導体回路を含み得る。別の実施形態では、図2に示されるように、別個のコンピューティングデバイス8が、変流器6と制御または保護装置10との間に接続されてもよい。コンピューティングデバイス8は、変流器6が検知した分路リアクトル電流Iの時間微分を計算することができる。コンピューティングデバイス8は、変流器6が検知した分路リアクトル電流Iの時間微分、または、変流器6が検知した分路リアクトル電流Iの時間微分に、分路リアクトル4のインダクタンスまたは別の適切なスケーリング係数を乗算することによって得られる伝送線路3の再構成線路電圧信号を、制御または保護装置10に提供することができる。
【0075】
制御または保護装置10、またはコンピューティングデバイス8は、ローカル分路リアクトル4と直列に配置された変流器6の出力信号を使用して、伝送線路3のローカル端に電圧信号Uを再構成することができる。リアクトルの基本電気方程式
【0076】
【数1】
【0077】
に従い、分路電流信号Iの時間微分を計算し、分路リアクトルのインダクタンスLを乗算して、線路電圧信号U=Uに等しい分路リアクトルの電圧Uを生成する。波形の例は、U=Uを反映する図3に示される。
【0078】
トリップ後のCB1の差動電圧UCBは、計算された電圧Uを用いて求めてもよい。
【0079】
【数2】
【0080】
CB1の差動電圧UCBにおけるビートパターンは、制御または保護装置10が、たとえばUCBにおける以前のビートの循環パターンに基づいて、将来のビート最小を予測するために、使用してもよい。
【0081】
導出された線路電圧Uの計算は、アナログ回路を介して、またはサンプリングされた電流値(ポイント・オン・ウェーブコントローラ自体によって、またはデジタル通信システムを介して取得される)から数値的に行うことができる。計算は、図1に示されるように、制御または保護装置10によって、または図2に示されるように、CT6と制御または保護装置10との間に介在する別個のコンピューティングデバイス8によって行われてもよい。式(1)におけるインダクタンス値Lの代わりに、たとえば制御または保護装置10の入力定格に合致するように、異なるスケーリング係数を適用することができる。
【0082】
変流器6は、定義では測定されたリアクトル電流の時間微分を出力するロゴスキーコイルを含み得る。そのような実施形態において、分路リアクトル電流信号Iの導関数を計算するステップは、分路リアクトル電流信号の測定に暗に含まれ、導出される線路電圧信号U=Uは、単純に、たとえば式1を満たすようにロゴスキーコイルの出力信号を適切にスケーリングすることによって得られる。
【0083】
制御または保護装置10の動作を、1つの位相を参照して説明してきたが、電力システム10は、典型的には、いくつかの相を有する。伝送線路3、分路リアクトル4、変流器6および変圧器7は、各種相のうちの各相ごとに設けられる。制御または保護装置10は、本明細書に記載の技術を用いて、トリップされた複数の相のいずれかに対する回路遮断器1またはいくつかの回路遮断器極の制御されたリクローズを開始することができる。
【0084】
図3は、3つの異なる相の電源電圧Uの波形11、12、13、3つの異なる相の線路電圧Uの波形21、22、23、3つの異なる相のリアクトル電流Iの波形31、32、33、および、分路リアクトル電流の時間微分から式(1)に従って求められた、計算された線路電圧Uの波形41、42、43を示す。図3からわかるように、分路リアクトル電流の時間微分から式(1)に従って求められた、計算された線路電圧Uは、良好な周波数応答特性を有する変圧器から得られた線路電圧Uに一致する。式(2)に従って計算された、CB1がトリップしたときのCB1の差動電圧UCBは、差動電圧のビート最小値を精度良く予測することを可能にする。
【0085】
変流器6は、通常、コンデンサ型変圧器5よりも優れた周波数応答を有する。したがって、式(1)に従って求められた、導出された線路電圧信号Uの精度は、公称電力周波数とは著しく異なる線路周波数でも、正しいリクローズ目標を計算するのに適している。
【0086】
図4は、ある実施形態に係る方法60のフローチャートである。方法60は、トリップ後にCB1の制御されたリクローズを実現するために実行することができる。
【0087】
ステップ61において、電力システムのCB1をトリップすることができる。
ステップ62において、式(1)に従い、CB1が開いている間に測定された分路電流信号Iの時間微分を計算し分路リアクトルのインダクタンスLで乗算することにより、線路電圧信号に等しい電圧U=Uを得ることができる。インダクタンス値Lの代わりに、他の適切なスケーリング係数を適用してもよい。
【0088】
ステップ63において、式(2)に従い、トリップ後のCB1の差動電圧UCBを求めることができる。トリップ後のCB1の差動電圧UCBにおけるビートパターンは、UCBにおける将来の最小値を予測するために使用されてもよい。
【0089】
ステップ64において、CB1の制御されたリクローズを、ステップ63で求めたトリップ後のCB1の差動電圧UCBにおけるビートパターンを用いて実行することができる。CB1の各極が各相の差動電圧UCBのビート最小値でリクローズするように、目標リクローズ時間を設定してもよい。
【0090】
分路リアクトル4のインダクタンスLを、分路リアクトル4の物理定格プレートから、分路リアクトル4のデータシートから、または分路リアクトル4の技術データを表すコンピュータ化された記録から読み出してもよい。インダクタンスLは、たとえば、ユーザインターフェイスを介して、またはデータインターフェイスを介して、制御または保護装置10に入力されてもよい。
【0091】
これに代えてまたはこれに加えて、分路リアクトル4のインダクタンスLを求めるために較正ルーチンが実行されてもよい。
【0092】
図5は、ある実施形態に係る方法70のフローチャートである。方法70は、較正において分路リアクトル4のインダクタンスLを求めるために実行されてもよい。
【0093】
ステップ71において、キャリブレーションが開始される。
ステップ72において、CB1が閉じられている間に測定された分路リアクトル電流信号Iの時間微分dI/dtを、分路リアクトル電流信号Iから受けるまたは計算することができる。
【0094】
ステップ73において、CB1が閉じられている間にVT7が測定した電源電圧Uを受けることができる。
【0095】
ステップ74において、CB1が閉じられている間にVT7が測定された電源電圧Uと、CB1が閉じられている間に測定された分路リアクトル電流信号Iの時間微分dI/dtとに基づいて、分路リアクトル4のインダクタンスLを計算することができる。VT7が測定した電源電圧Uに代えて、CB1を閉じられている間にVT5が測定した負荷電圧Uを用いてもよい。
【0096】
ステップ75において、分路リアクトル4の計算されたインダクタンスLを、制御または保護装置10にまたはコンピューティングデバイス8に格納して、CB1が開かれている間に測定された分路リアクトル電流信号Iの時間微分dI/dtと組み合わせて、式(1)に従い線路電圧Uを計算し、制御された回路遮断器のリクローズまたは他の電力システムに関連する機能のために使用してもよい。
【0097】
較正ルーチンは、CB1が閉じられている間に実行されてもよい。較正ルーチンは、CB1が閉じられている間にVT7が測定し電源電圧Uと、CB1が閉じられている間に変流器6が測定した分路電流信号Iの時間微分とを使用してもよい。VT7が測定した電源電圧Uの代わりに、CB1を閉じられている間、負荷VT5が測定した負荷電圧Uを用いてもよい。
【0098】
較正ルーチンにおいて、インダクタンスLは以下のように求めることができる。
【0099】
【数3】
【0100】
【数4】
【0101】
1つの相を参照して較正を説明したが、本明細書に記載の技術を使用して電力システムの複数の異なる相の各々について較正を実施することにより、伝送線路の複数の異なる相の分路リアクトルのインダクタンスを求めることができる。これに代えて、すべての相に対し、1つの相で計算したインダクタンス値を適用してもよく、または、すべての相で計算したインダクタンス値の平均値を計算して得たインダクタンス値をすべての相に適用してもよい。
【0102】
本発明の実施形態を、トリップ後の回路遮断器の制御されたリクローズに関連して説明してきたが、方法、装置、およびシステムは、他の目的に使用されてもよい。例として、変流器6の出力信号を使用して線路電圧を計算してもよく、そうすると、図6に示される従来のシステムのように変圧器7を使用する必要がない。分路リアクトル電流の時間微分は、線路通電解除の瞬間を検出するために、一時的故障の解消または二次アーク放電の消弧を検出するために、1つまたはいくつかの保護機能を実行するために、および/または線路同期(たとえば同期チェック)のために、使用されてもよい。
【0103】
装置10を本明細書では「制御または保護装置」と呼ぶが、装置10は、制御機能および保護機能の両方を実行できることが理解されるであろう。本明細書で使用される「または」という語は非排他的なものと理解されねばならない。
【0104】
本明細書ではさまざまな信号のピーク値またはRMS値を、分路リアクトルのインダクタンス値を求めるための技術という文脈で説明してきたが、電圧振幅および時間微分の振幅の特性である他の値を、開示される手順に使用してもよい。
【0105】
本発明を、図面および上記記載において詳細に説明してきたが、そのような説明は、例示または具体例とみなされるべきであって、限定的なものではない。開示された実施形態に対する変形を、当業者は、図面、開示、および以下の請求項の検討を通して理解し、実現することができる。請求項において、「備える/含む(comprising)」という単語は、他の要素またはステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は、複数を除外しない。特定の要素またはステップが異なる請求項に記載されているからといって、これらの要素またはステップの組み合わせが有利に使用できないことが示される訳ではなく、具体的には、実際の請求項の従属に加えて、任意のさらに他の意義のある請求項の組み合わせが開示されると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6