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特許7214915PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20230123BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20230123BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230123BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230123BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230123BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230123BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230123BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N9/22
C12N15/63 Z
C12N15/864 100Z
A61K31/7088
A61K35/76
A61P9/10
A61P3/06
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145178
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2019556884の分割
【原出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2022188058
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】62/516,966
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/488,403
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508117721
【氏名又は名称】プレシジョン バイオサイエンシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バートサビチ,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ジャンツ,デレック
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェームス,ジェファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ラペ,ジャネル
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524472(JP,A)
【文献】特表2011-501971(JP,A)
【文献】特表2009-511085(JP,A)
【文献】特表2011-527906(JP,A)
【文献】特表2006-516403(JP,A)
【文献】国際公開第2015/175642(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/044649(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/00- 9/99
C12Q 1/00- 3/00
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号6のアミノ酸配列を含む、プロタンパク質コンバターゼであるサブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)の遺伝子中の配列番号4からなる認識配列と結合し切断する操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項2】
請求項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドはmRNAである、請求項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む、組換えDNA構築物。
【請求項5】
前記組換えDNA構築物は、請求項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする前記核酸配列を含むウイルスベクターをコードする核酸配列を含む、請求項に記載の組換えDNA構築物。
【請求項6】
前記ウイルスベクターは組換えアデノ随伴ウイルス(AAVベクターである、請求項に記載の組換えDNA構築物。
【請求項7】
前記組換えAAVベクターは血清型8である、請求項6に記載の組換えDNA構築物。
【請求項8】
請求項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む、ウイルスベクター。
【請求項9】
前記ウイルスベクターは組換えAAVベクターである、請求項に記載のウイルスベクター。
【請求項10】
前記組換えAAVベクターは血清型8である、請求項9に記載のウイルスベクター。
【請求項11】
前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする前記核酸配列は、肝臓特異的プロモーターに作動可能に連結される、請求項8~10のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項12】
薬学的に許容される担体と、
請求項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸と、
を含む医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、請求項11のいずれか1項に記載の前記ウイルスベクターを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化された請求項に記載の前記mRNAを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及び組換え核酸技術の分野に関する。特に、本発明は、PCSK9遺伝子内の認識配列に対して特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼに関する。このような操作されたメガヌクレアーゼは、心血管疾患及び常染色体優性家族性高コレステロール血症を含む高コレステロール血症を治療する方法に有用である。
【0002】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列リストへの参照
本願は、EFS-WEBを介してASCII形式で提出され、参照することによりその全文が本明細書に組み込まれる配列リストを含む。2018年4月20日に作成された当該ASCIIコピーはP109070022WO00-SEQTXT-MJTという名称であり、89,660バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
高レベルの低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)に関連した心血管疾患は、先進国における主な死因であり、LDL-Cレベルの上昇は、冠動脈疾患(CHD)及びアテローム斑発生の主な危険因子である。例えば、家族性高コレステロール血症(FH)は、高いコレステロールレベル、特に高レベルのLDL-C及び早期発症型CHDの発症を特徴とする遺伝病である。ヘテロ接合性FH患者は典型的には、総コレステロールレベル、具体的にはLDL-Cレベルを減少させるスタチン等の脂質低下薬で治療される。実際に、スタチンの投与はある患者集団の心血管疾患のリスクを大いに減少させた。しかし、一部の患者集団、特にホモ接合型のFH患者集団は、高用量スタチンを含む治療に応じて正常なLDL-Cレベルを達成できなかった。
【0004】
脂質低下分野における重要な進歩は、プロタンパク質コンバターゼであるサブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とする治療法の進歩であった。ヒトPCSK9遺伝子は染色体1p32.3に局在し、長さは25,378bpsである。ヒトPCSK9遺伝子は、692個のアミノ酸をコードする12個のエキソンを含む。PCSK9タンパク質は、シグナルペプチド、プロドメイン、触媒ドメイン、及び3つのモジュール(M1、M2、及びM3)から構成されるC末端システインヒスチジンリッチドメインを含む。
【0005】
PCSK9の合成、分泌、及び発現は主に肝臓で起こるが、PCSK9は胃腸管、腎臓、及び中枢神経系(CNS)では低レベルで発現される。PCSK9前駆体タンパク質の分子量は75kDaである。小胞体(ER)での自己触媒切断後、PCSK9プロドメインは62kDaの成熟型PCSK9タンパク質から分離される。分離されたプロドメインは、成熟型PCSK9タンパク質に非共有結合したままであり、PCSK9の触媒ドメインを強制的に不活性な構造にするプロセグメントPCSK9複合体を形成する。その後、切断された複合体は、ERからゴルジ装置に輸送され、放出される。肝細胞においては、分泌されたPCSK9は肝細胞膜上のLDL受容体に結合する。この結合は、PCSK9の触媒ドメイン及びプロドメインがそれぞれLDL受容体の上皮成長因子様反復相同性ドメインA(EGF-A)及びβ-プロペラドメインと相互作用することによって媒介される。
【0006】
LDL受容体は典型的には、細胞外液(コレステロールを含む)中の脂肪分子を細胞内に輸送し、それにより循環LDL濃度を減少させる。PCSK9の非存在下では、LDL受容体-リガンド複合体は、LDLの細胞内輸送及びLDL受容体の細胞表面への再利用を可能にする構造変化を受ける。しかし、PCSK9のLDL受容体への結合は、複合体のこの構造変化を防止し、分解のために受容体をリソソームへと案内する。その結果、細
胞表面上に存在するLDL受容体は少なくなり、血流中の循環LDLコレステロールレベルが増加する。LDL受容体に加えて、PCSK9は、超低比重リポタンパク(VLDL)受容体、アポリポタンパクE受容体2、LDL受容体関連タンパク1を含む、同じファミリーの他の脂質受容体の分解を媒介することが示されている。
【0007】
PCSK9は、LDL受容体及びアポリポタンパクBをコードする遺伝子とともに、FHの常染色体優性型に関連する第3の遺伝子である。常染色体優性FHでは、PCSK9遺伝子の機能獲得型変異は更に細胞表面でのLDL受容体の局在を減少させ、LDLコレステロールレベルの上昇と関連する。興味深いことに、PCSK9の機能喪失型変異は、LDLコレステロールレベルが低く、心血管系事象の発生率が大幅に低下した患者において発見されることが観察されている。更に、PCSK9機能喪失患者は、スタチン療法に対する反応が高まることが示されている。
【0008】
従って、PCSK9のターゲティングは、心血管疾患及び常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の治療に対する有望な治療アプローチである。この分野の研究は、複数の治療を用いてPCSK9とLDL受容体との相互作用を阻害することに重点を置いてきた。こうした阻害によるアプローチとしては、アリロクマブ(REGN727/SAR236553)、エボロクマブ(AMG145)、及びボコシズマブ(RN316)を含む、PCSK9に対するモノクローナル抗体の使用が挙げられる。しかし、抗体によるアプローチは、過敏反応及び免疫原性をはじめとする抗体療法に特有の問題だけではなく、神経認知的な副作用を起こしやすい。阻害によるアプローチはアドネクチン及びペプチドミメティクスも使用して研究されてきた。これまで、治療の観点から望ましいPCSK9小分子阻害剤の使用の大部分は失敗している。
【0009】
推し進められてきた他のアプローチとしては、PCSK9発現の阻害が挙げられる。このような戦略は、遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAの使用を含む。とりわけ、PCSK9遺伝子を恒久的に変化させ、タンパク質発現をノックアウトするための遺伝子編集アプローチも推し進められてきた。例えば、Dingらは、マウス肝臓のPCSK9を標的とするアデノウイルスによるCRISPR/Cas9システムを使用して、マウス肝臓のPCSK9の突然変異率が3日目から4日目で50%超であり、PCSK9レベルは減少し、肝LDL受容体レベルは上昇し、血清コレステロールレベルは35%~40%減少することを発見した(非特許文献1)。キメラヒト肝臓を有するFah-/-Rag2-/-Il2rg-/-(FRG
KO)マウスを使用したWangらの更なる研究においては、ヒトPCSK9遺伝子を標的とするCRISPR-Cas9を用いた治療により、PCSK9のオンターゲット突然変異誘発が高レベルで引き起こされ、血液中のヒトPCSK9タンパク質レベルが52%減少した(非特許文献2)。しかし、現在、PCSK9に焦点を合わせたヒト遺伝子治療に必要である、ヒト肝臓を含む霊長類の肝臓で特異的に遺伝子を修飾及び/又はノックアウトするためにCRISPR/Casシステムをうまく利用できるという証拠が当該技術分野では著しく欠如している。
【0010】
I-CreI(配列番号1)は、藻類であるクラミドモナスの葉緑体染色体内の22塩基対の認識配列を認識し切断するホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADG(配列番号2)ファミリーのメンバーである。遺伝子選択技術を用いて、野生型I-CreI切断部位の好みを変更した(非特許文献3~6)。哺乳動物、酵母菌、植物、及びウイルスゲノムを含む広く多様なDNA部位を標的とするI-CreI及び他のホーミングエンドヌクレアーゼを包括的に再設計できるモノLAGLIDADG(配列番号2)ホーミングエンドヌクレアーゼを合理的に設計する方法が記載されている(特許文献1)。
【0011】
まず特許文献2に記載されているように、I-CreI及びその操作された誘導体は通
常二量体だが、第1のサブユニットのC末端を第2のサブユニットのN末端に結合する短いペプチドリンカーを使用して単一のポリペプチドに融合できる(非特許文献7~8)。従って、機能的な「一本鎖」メガヌクレアーゼは、単一の転写物から発現させることができる。
【0012】
操作されたメガヌクレアーゼの使用は、PCSK9遺伝子を標的とし、PCSK9発現を減少させ、従って、コレステロール関連疾患の患者の循環LDLレベル及び総コレステロールレベルを減少させるための有望なアプローチとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開WO2007/047859号公報
【文献】国際公開WO2009/059195号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】Ding et al.(2014),Circ Res 115(5):488-492
【文献】Wang et al.(2016),Arteriosclerosis Thromb Vasc Biol 36:783-786
【文献】Sussman et al.(2004),J.Mol.Biol.342:31-41
【文献】Chames et al.(2005),Nucleic Acids Res.33:e178
【文献】Seligman et al.(2002),Nucleic Acids Res.30:3870-9
【文献】Arnould et al.(2006),J.Mol.Biol.355:443-58
【文献】Li et al.(2009),Nucleic Acids Res.37:1650-62
【文献】Grizot et al.(2009),Nucleic Acids Res.37:5405-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、部分的に、PCSK9遺伝子内のDNA配列を認識するように操作された部位特異的レアカットエンドヌクレアーゼの開発に依存する。本発明者らは、PCSK9の発現及び/又は活性を減でき、後に霊長類、例えば、ヒトの総コレステロールレベル及びLDLコレステロールレベルを減少させるPCSK9遺伝子の特定の認識配列を特定した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本明細書に開示の方法及び組成物は、被験体のコレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の症状を治療又は低減するのに有用である。従って、本発明は、霊長類のコレステロール関連障害に対する更なる遺伝子治療アプローチのための当該技術分野における必要性を満たす。
【0017】
本発明は、被験体のコレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の治療に有用な操作されたメガヌクレアーゼを提供する。本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子内の認識配列(配列番号3)を認識し切断する。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼによるそのような認識配列での切断は
、切断部位での非相同末端結合(NHEJ)によりPCSK9の発現及び/又は活性を阻害できる。NHEJは、挿入、欠失を生じさせることができ、又は遺伝子発現と干渉し得るフレームシフト突然変異を生じさせることができる。従って、正常な遺伝子発現を阻害することにより、PCSK9の発現及び/又は活性が本明細書で開示される方法に従って減少するか又はなくされる。本発明はまた、PCSK9遺伝子内に位置する認識配列に対して特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼを利用した、コレステロール関連障害の治療のための医薬組成物及び方法を提供する。本発明は、総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少させるために、且つ/又はコレステロール関連障害に関連する症状を減少させるために、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを、コレステロール関連障害を有する被験体に送達する方法を更に提供する。
【0018】
従って、一態様では、本発明は、PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼを提供する。操作されたメガヌクレアーゼは、第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識ハーフサイトに結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識ハーフサイトに結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、認識配列は、配列番号4(即ち、PCS7-8認識配列)を含むことができる。認識配列が配列番号4を含むいくつかの実施形態では、HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、及び77に対応する残基を含むことができる。ある種の実施形態では、HVR1領域は、配列番号8の残基48、50、71、及び73に対応する残基を更に含むことができる。特定の実施形態では、HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79を含むことができる。
【0020】
認識配列が配列番号4を含むいくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215~270に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266、及び268に対応する残基を含むことができる。そのような実施形態では、HVR2領域は、配列番号12の残基258に対応する残基を更に含むことができる。特定の実施形態では、HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215~270を含むことができる。
【0021】
認識配列が配列番号4を含むそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基7~153に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができ、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。ある種の実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基80に対応する位置にD、E、Q、N、K、R、及びS残基を含む。ある種の実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基271に対応する位置にD、E、Q、N、K、R、及びS残基を含む。ある種の実施形態では、第1のサブユニ
ットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基80に対応する残基を含む。ある種の実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基271に対応する残基を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基7~153を含むことができる。同様に、いくつかの実施形態では、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344を含むことができる。
【0022】
認識配列が配列番号4を含むある種のこのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼはリンカーを含むことができ、リンカーは第1のサブユニットと第2のサブユニットを共有結合する。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドはmRNAであり得る。
【0024】
更なる実施形態では、mRNAは、本明細書に記載の1又は複数の操作されたメガヌクレアーゼをコードする多シストロン性mRNAであり得る。更なる実施形態では、本発明の多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の1又は複数の操作されたメガヌクレアーゼと、コレステロール関連障害を有する被験体において治療的に有益な効果をもたらす1又は複数の追加のタンパク質とをコードできる。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む組換えDNA構築物を提供する。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0026】
他の実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0027】
特定の実施形態では、組換えDNA構築物は、本明細書に開示の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターをコードする。そのような実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得る。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。他の実施形態では、ウイルスベクターは、2以上のカセットを含み、各カセットは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むことができる。
【0029】
他の実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含む1つのカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0030】
別の態様では、本発明は、本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得る。特定の実施形態では、ウイルスベク
ターは組換えAAVベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0031】
更なる実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含む1つのカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0032】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と、(a)本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸、又は(b)本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼタンパク質とを含む、医薬組成物を提供し、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号4等のPCSK9内の認識配列に対して特異性を有する。
【0033】
一実施形態では、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする医薬組成物の核酸配列は、本明細書に記載のmRNAであり得る。いくつかのそのような実施形態では、mRNAは、本明細書に記載の2以上の操作されたメガヌクレアーゼがインビボ(in vivo)で標的細胞において発現されるような本明細書に記載の多シストロン性mRNAであり得る。
【0034】
別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む本明細書に記載の組換えDNA構築物を含む。いくつかのそのような実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0035】
他の実施形態では、医薬組成物の組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、本明細書に記載の2つ以上の操作されたメガヌクレアーゼが標的細胞で発現されるように、標的細胞にインビボで本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0036】
別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターを含む。そのような一実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はAAVであり得る。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターであり得る。
【0037】
いくつかのそのような実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0038】
他のそのような実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含む1つのカセットを含み、プロモーターは、本明細書に記載の2以上の操作されたメガヌクレアーゼが標的細胞で発現されるように、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞にインビボで本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0039】
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号4を認識し切断する本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを含むことができる。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化された本明細書に記載の1又は複数のmRNAを含むことができる。特定の実施形態では、医薬組成物の脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の2以上のmRNAを含むことができ、各々は、本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は
、肝臓、特に肝実質細胞内での送達及び取り込みを増強する組成を有する。
【0041】
別の態様では、本発明は、被験体のPCSK9の発現又は活性を減少させる治療方法を提供する。同様に、本明細書では、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減する方法が提供される。本方法は、被験体の標的細胞に、(a)有効量の、標的細胞で発現される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸、又は(b)有効量の操作されたメガヌクレアーゼタンパク質を送達することを含み、操作されたメガヌクレアーゼは配列番号4等のPCSK9の認識配列に対する特異性を有する。
【0042】
本方法のいくつかの実施形態では、被験体はコレステロール関連障害を有する。特定の実施形態では、被験体は高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態では、被験体の高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症又は常染色体優性家族性高コレステロール血症である。特定の実施形態では、被験体はヒト又は非ヒト霊長類である。
【0043】
本方法の特定の実施形態では、被験体は、本明細書に開示の医薬組成物を投与される。医薬組成物は、本明細書に開示の組換えAAVベクターを含むことができる。ある種の実施形態では、医薬組成物は、操作されたメガヌクレアーゼをコードする本明細書に開示のmRNAを含むことができる。特定の実施形態では、mRNAは脂質ナノ粒子内にカプセル化することができる。
【0044】
本方法のいくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸は標的肝細胞に送達され得る。標的肝細胞は、初代肝実質細胞等の肝実質細胞であり得る。
【0045】
本方法のいくつかの実施形態では、被験体の肝細胞の細胞表面上におけるLDL受容体のディスプレイは、ベースラインLDL受容体レベルと比較した場合、治療により増加する。細胞表面上のLDL受容体のディスプレイは、ベースラインLDL受容体レベルと比較した場合、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、150%、250%、500%、1000%、又はそれ以上増加し得る。
【0046】
本方法のある種の実施形態では、被験体の血清総コレステロールレベルは治療により減少する。血清総コレステロールレベルは、ベースライン血清総コレステロールレベルと比較した場合、(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は(b)5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~80mg/dL、若しくは70~100mg/dL減少し得る。
【0047】
ある種の実施形態では、被験体の血清LDLコレステロールレベルは治療により減少する。血清LDLコレステロールレベルは、ベースライン血清LDLコレステロールレベルと比較した場合、(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は(b)5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、若しくは60~80mg/dL減少し得る。
【0048】
本方法の特定の実施形態では、第1の認識配列は配列番号4を含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号4を認識し切断する本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼであり得る。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0049】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼを提供する。本発明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少させるか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減するための薬剤としての本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼの使用を更に提供する。特定の実施形態では、本発明は、被験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少させるための薬剤としての本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼの使用を提供する。
【0050】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための単離されたポリヌクレオチドを提供し、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。本発明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少させるか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減するための薬剤としての単離されたポリヌクレオチドの使用を更に提供し、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。特定の実施形態では、本発明は、被験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少させるための薬剤としての本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドの使用を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための組換えAAVベクターを提供し、組換えAAVベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。本発明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少させるか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減するための薬剤としての組換えAAVベクターの使用を更に提供し、組換えAAVベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。本発明は、被験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少させるための薬剤としての組換えAAVベクターの使用を更に提供し、組換えAAVベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。
【0052】
本発明の上記及び他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによってより完全に理解することができる。明確さのために別個の実施形態に関連して記述されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせた形で提供されてもよい。実施形態の全ての組み合わせは、本発明により具体的に包含され、あたかもありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されるかのように本明細書で開示される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記述されている本発明の種々の特徴は、別個に又は任意の適した下位組み合わせの形で提供されてもよい。実施形態に列挙される特徴の全ての下位組み合わせも、本発明により具体的に包含され、あたかもありとあらゆる下位組み合わせが個別にかつ明示的に本明細書で開示されるかのように本明細書で開示される。本明細書で開示される本発明の各態様の実施形態は、必要な変更を加えて本発明の互いの態様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ヒトPCSK9遺伝子の操作されたメガヌクレアーゼ認識配列。本発明の操作されたメガヌクレアーゼにより標的とされる認識配列は、2つの認識ハーフサイトを含む。各認識ハーフサイトは9塩基対を含み、2つのハーフサイトは、4塩基対の中央配列によって分離される。PCS7-8認識配列(配列番号4)は、PCS7及びPCS8と呼ばれる2つの認識ハーフサイトを含む。
図2】本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、2つのサブユニットを含み、第1のサブユニットは、第1の認識ハーフサイト(例えばPCS7)に結合するHVR1領域を含み、第2のサブユニットは、第2の認識ハーフサイト(例えばPCS8)に結合するHVR2領域を含む。操作されたメガヌクレアーゼが一本鎖メガヌクレアーゼである実施形態では、HVR1領域を含む第1のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして位置し得る。同様に、HVR2領域を含む第2のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして位置し得る。
図3】PCS7-8認識配列を標的とした操作されたメガヌクレアーゼを評価するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞のレポーターアッセイの概略。本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼについては、CHO細胞株が産生され、レポーターカセットは細胞のゲノムに安定的に組み込まれる。レポーターカセットは、5’から3’の順で、SV40初期プロモーター、GFP遺伝子の5’ 2/3、本発明の操作されたメガヌクレアーゼの認識配列(例えばPCS7-8認識配列)、CHO-23/24メガヌクレアーゼの認識配列(国際公開第2012/167192号)、及びGFP遺伝子の3’ 2/3を含んでいた。このカセットを安定的にトランスフェクトされた細胞は、DNA切断誘導剤の非存在下でGFPを発現しなかった。メガヌクレアーゼは、各メガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNA又はmRNAの形質導入により導入された。DNA切断がメガヌクレアーゼ認識配列のいずれかで誘導されると、GFP遺伝子の複製領域は互いに再結合し、機能的GFPタンパク質を産生する。すると、GFP発現細胞の割合は、メガヌクレアーゼによりゲノム切断頻度の間接的な尺度として、フローサイトメトリーにより決定され得る。
図4】CHO細胞レポーターアッセイにおけるPCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するための操作されたメガヌクレアーゼの効率。配列番号6~14に規定された操作されたメガヌクレアーゼを操作して、PCS7-8認識配列(配列番号4)を標的とし、CHO細胞レポーターアッセイにおける有効性についてスクリーニングした。示されている結果は、各アッセイにて観察されたGFP発現細胞の割合を提供し、これは、標的認識配列又はCHO-23/24認識配列を切断する各メガヌクレアーゼの有効性を示す。陰性対照(bs)を更に各アッセイに含めた。図4A図4Cは、PCS7-8認識配列を標的としたメガヌクレアーゼを示す。図4Aは、PCS7-8x.88及びPCS7-8x.66を示す。図4Bは、PCS7-8L.197、PCS7-8L.204、PCS7-8L.209、PCS7-8L.261、PCS7-8L.262、及びPCS7-8L.268を示す。図4Cは、PCS7-8L.197及びPCS7-8L.367を示す。
図5】CHO細胞レポーターアッセイにおけるヒトPCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するための操作されたメガヌクレアーゼの効率。配列番号6~14に規定された操作されたメガヌクレアーゼを操作して、PCS7-8認識配列(配列番号4)を標的とし、ヌクレオフェクション後11日にわたる複数時点でCHO細胞レポーターアッセイにおける有効性についてスクリーニングした。示されている結果は、11日間の分析中の各アッセイにて観察されたGFP発現細胞の割合を提供し、これは、時間に応じた標的認識配列又はCHO-23/24認識配列を切断する各メガヌクレアーゼの有効性を示す。図5Aは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8x.88及びPCS7-8x.66メガヌクレアーゼを示す。図5Bは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8x.88及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼを示す。図5Cは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8L.367メガヌクレアーゼを示す。
図6】T7エンドヌクレアーゼI(T7E)アッセイ。T7Eアッセイを行って、PCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞のその認識部位においてindelを生じさせたかどうかを判定した。T7Eアッセイでは、PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に隣接するプライマーを用いたPCRによって増幅された。PCS7-8座内にindel(無秩序な挿入又は欠失)があった場合、得られるPCR産物は野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子の混合物からなる。PCR産物は変性され、ゆっくりとリアニールされ得る。ゆっくりとしたリアニールにより、野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子からなるヘテロ二本鎖が形成され、ミスマッチ塩基及び/又はバルジが生じる。T7E1酵素はミスマッチ部位で切断され、ゲル電気泳動により可視化され得る切断産物が生じる。PCS7-8x.88及びPCS7-8x.66メガヌクレアーゼはヌクレオフェクションの2日後及び5日後に評価した。
図7】非ヒト霊長類における血清PCSK9タンパク質レベル。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHと呼ばれるAAVベクターを調製して異なる3用量で3匹のオス及び1匹のオスのアカゲザルに投与した。動物RA1866(オス)は、3×1013ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量を受けた。動物RA1857(オス)は、6×1012GC/kgの単回用量を受けた。動物RA1829(メス)及びRA2334(オス)はそれぞれ、2×1012GC/kgの単回用量を受けた。血液サンプルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析のために、-3日目及び0日目、並びに投与後168日間(低用量動物)又は280日間(中用量及び高用量動物)の間に複数の時点で採取した。
図8】総コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルは、-3日目、0日目、及びPCS7-8x.88メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。図8Aは、各被験体の経時的に測定されたLDLレベルを示す。図8Bは、被験体RA1866の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Cは、被験体RA1857の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Dは、被験体RA1829の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Eは、被験体RA2334の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。
図9】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルは、各被験体において、-3日目、0日目、及びPCS7-8x.88メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。
図10】肝細胞のPCS7-8認識配列においてインビボで観察される挿入及び欠失(indel)の頻度。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHベクターの投与後17日目に肝生検を行い、PCS7-8認識配列におけるindelの存在について検査した。indelは、認識配列に隣接するPCRプライマー、ゲノムの介在領域の増幅、及び得られたPCR産物のシーケンシングにより検出した。
図11】インビボでの肝細胞のPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAを検出するためのインサイチューハイブリッド形成。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHベクターの投与後17日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)により検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8x.88 mRNAに結合する。図11Aは、オリゴプローブなしで対照として行った別の被験体M11657由来の生検細胞の模擬処理を示す。図11Bは、被験体RA1866の生検サンプルを示す。図11Cは、被験体RA1857の生検サンプルを示す。図11Dは、被験体RA1829の生検サンプルを示す。図11Eは、被験体RA2334の生検サンプルを示す。
図12】非ヒト霊長類の血清PCSK9タンパク質レベル及び血清LDL。AAV8.TBG.PI.PCS7-8L.197.WPRE.bGHと呼ばれるAAVベクターを調製して6×1012遺伝子コピー/kgの用量を1匹のオス及び1匹のメスのアカゲザル(被験体RA2125及びRA2343)に投与した。血液サンプルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析のために、投与前、及び投与後の複数の時点で採取した。
図13】総コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルは、投与前、及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。図13Aは、各被験体の経時的に測定されたLDLレベルを示す。図13Bは、被験体RA2125の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図13Cは、被験体RA2343の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。
図14】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルは、各被験体において、投与前、及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。
図15】インビボでの肝細胞のPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAを検出するためのインサイチューハイブリッド形成。AAV8.TBG.PI.PCS7-8L.197.WPRE.bGHベクターの投与後18日目及び128日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)により検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8L.197 mRNAに結合する。図15Aは、被験体RA2125の生検サンプルを示す。図15Bは、被験体RA2343の生検サンプルを示す。
図16】アンカードマルチプレックスPCR(AMP-seq)による各被験体のrhPCSK9標的化座に対するindel分析。
【発明を実施するための形態】
【0054】
配列の簡単な説明
配列番号1は、野生型I-CreIメガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0055】
配列番号2は、LAGLIDADGのアミノ酸配列を規定する。
【0056】
配列番号3は、ヒトPCSK9遺伝子の核酸配列を規定する。
【0057】
配列番号4は、PCS7-8認識配列(センス)の核酸配列を規定する。
【0058】
配列番号5は、PCS7-8認識配列(アンチセンス)の核酸配列を規定する。
【0059】
配列番号6は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0060】
配列番号7は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0061】
配列番号8は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0062】
配列番号9は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0063】
配列番号10は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0064】
配列番号11は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0065】
配列番号12は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する
【0066】
配列番号13は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0067】
配列番号14は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0068】
配列番号15は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0069】
配列番号16は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0070】
配列番号17は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0071】
配列番号18は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0072】
配列番号19は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0073】
配列番号20は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0074】
配列番号21は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0075】
配列番号22は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0076】
配列番号23は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0077】
配列番号24は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0078】
配列番号25は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0079】
配列番号26は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0080】
配列番号27は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0081】
配列番号28は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0082】
配列番号29は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0083】
配列番号30は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0084】
配列番号31は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0085】
配列番号32は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットのアミノ酸配列を規定する。
【0086】
配列番号33は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0087】
配列番号34は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0088】
配列番号35は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0089】
配列番号36は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0090】
配列番号37は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0091】
配列番号38は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0092】
配列番号39は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0093】
配列番号40は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたindelの核酸配列を規定する。
【0094】
1.1 参考文献及び定義
本明細書で参照される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立している。本明細書に引用されているGenBankデータベース配列を含む、登録済み米国特許、認可された出願、公開された外国出願、及び参考文献は、あたかもそれぞれが具体的且つ個々に示されて、参照により組み込まれた場合と同じ程度で参照により本明細書に組み込まれている。
【0095】
本発明は異なる形態で実施でき、本明細書で記載される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、本開示が完璧かつ完全であるように、また当業者に完全に本発明の範囲を伝えるように、これらの実施形態が提供される。例えば、一実施形態に関して例示した特徴を他の実施形態に組み込むことができ、特定の一実施形態に関して例示した特徴をその実施形態から削除することもできる。加えて、本開示に照らせば、本明細書に示した実施形態に対する本発明から逸脱しない多くの変更及び追加が当業者には明白である。
【0096】
特に定義しない限り、本明細書で用いる技術的及び科学的用語は、本発明の属する分野における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明の説明で使用する用語は、詳細な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定することを意図していない。
【0097】
本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はその全文が参照することにより本明細書に組み込まれている。
【0098】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、又は「the」は1又は複数を意味する可能性がある。例えば「細胞(a cell)」は単一の細胞又は複数の細胞を意味してよい。
【0099】
本明細書で使用する場合、特に断りがない限り、「又は」という語は、「及び/又は」の包含的な意味で使用されるのであって、「いずれか一方」の排他的な意味で使用されるのではない。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「ヌクレアーゼ」及び「エンドヌクレアーゼ」は同じ意味で用いられ、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する、天然に存在するか又は操作された酵素を指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「メガヌクレアーゼ」は、12塩基対を超える認識配列で二本鎖DNAに結合するエンドヌクレアーゼを指す。好ましくは、本発明のメガヌクレアーゼのための認識配列は22塩基対である。メガヌクレアーゼは、I-CreIに由来するエンドヌクレアーゼであり得、例えばDNA結合特異性、DNA切断活性、DNA結合親和性、又は二量体化特性に関して天然I-CreIと比較して改変されたI-CreIの操作された変異体を指すことができる。I-CreIのこのような改変された変異体を作製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えば、国際公開第2007/047859号)。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、ヘテロ二量体として二本鎖DNAに結合する。メガヌクレアーゼは更に、一対のDNA結合ドメインがペプチドリンカーを用いて単一のポリペプチドに連結された「一本鎖メガヌクレアーゼ」であってもよい。用語「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、用語「メガヌクレアーゼ」と同義である。本発明のメガヌクレアーゼは、本明細書に記載の方法を用いて測定した場合に、細胞生存率に対する有害な効果又はメガヌクレアーゼ切断活性の有意な減少を観察することなく、細胞において発現した場合に実質的に非毒性である。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「一本鎖メガヌクレアーゼ」は、リンカーによって連結された一対のヌクレアーゼサブユニットを含むポリペプチドを指す。一本鎖メガヌクレアーゼは、N末端サブユニット-リンカー-C末端サブユニットという構成を有する。2つのメガヌクレアーゼサブユニットは、一般的に、アミノ酸配列において同一ではなく、同一ではないDNA配列を認識する。従って、一本鎖メガヌクレアーゼは、典型的には、偽パリンドローム又は非パリンドロームの認識配列を切断する。一本鎖メガヌクレアーゼは、実際、二量体ではないにもかかわらず、「一本鎖ヘテロ二量体」又は「一本鎖ヘテロ二量体メガヌクレアーゼ」と呼ばれる場合がある。明確さのために、特に指定のない限り、用語「メガヌクレアーゼ」は二量体又は一本鎖メガヌクレアーゼを指すことができる。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、2つのメガヌクレアーゼサブユニットを1つのポリペプチドへと結合するために使用される外因性ペプチド配列を指す。リンカーは、天然タンパク質に見出される配列を有していても、又は天然タンパク質には見出されない人工配列であってもよい。リンカーは可撓性で二次構造が欠如していても、又は生理学的条件下で特定の三次元構造を形成する性質を有していてもよい。リンカーとしては
、限定するものではないが、米国特許第8,445,251号及び米国特許第9,434,931号に包含されるものを挙げることができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号6~14のいずれか1つの残基154~195を含むアミノ酸配列を有することができる。
【0104】
タンパク質に関して本明細書で使用する場合、用語「組換え」又は「操作された」は、タンパク質をコードする核酸及び当該タンパク質を発現する細胞又は生物に遺伝子工学技術を適用した結果として変更されたアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関して、用語「組換え」又は「操作された」は、遺伝子工学技術を適用した結果として変更された核酸配列を有することを意味する。遺伝子工学技術としては、PCR及びDNAクローニング技術;トランスフェクション、形質転換及び他の遺伝子移入技術;相同組換え;部位特異的突然変異誘発;並びに遺伝子融合が挙げられるが、これらに限定されない。この定義に従って、天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主でのクローニング及び発現によって産生されるタンパク質は、組換え体とはみなされない。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「野生型」は、同種の遺伝子の対立遺伝子集団における最も一般的な天然に存在する対立遺伝子(即ち、ポリヌクレオチド配列)を指し、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドがその元の機能を有する。用語「野生型」は、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドも指す。野生型対立遺伝子(即ち、ポリヌクレオチド)及びポリペプチドは、野生型配列に対して1又は複数の突然変異及び/又は置換を含む突然変異体又は変異体の対立遺伝子及びポリペプチドとは区別される。野生型の対立遺伝子又はポリペプチドは、生物において正常な表現型を付与することができるが、突然変異体又は変異体の対立遺伝子又はポリペプチドは、場合によっては、変化した表現型を付与し得る。野生型ヌクレアーゼは、組換え体又は非天然のヌクレアーゼとは区別される。用語「野生型」は、特定の遺伝子の野生型対立遺伝子、又は比較目的のために使用される細胞、生物及び/若しくは被験体を有する細胞、生物、及び/又は被験体を指すこともできる。
【0106】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子改変」は、細胞若しくは生物、又はそれらの祖先において、ゲノムDNA配列が組換え技術によって故意に改変された細胞又は生物を指す。本明細書で使用する場合、用語「遺伝子改変」は、用語「トランスジェニック」を包含する。
【0107】
組換えタンパク質に関して本明細書で使用する場合、用語「改変」は、参照配列(例えば、野生型配列又は天然配列)に対する組換え配列中のアミノ酸残基の挿入、欠失、又は置換を意味する。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「認識配列」又は「認識部位」は、エンドヌクレアーゼによって結合及び切断されるDNA配列を指す。メガヌクレアーゼの場合、認識配列は、4つの塩基対によって分離された一対の逆位9塩基対「ハーフサイト」を含む。一本鎖メガヌクレアーゼの場合、タンパク質のN末端ドメインは第1のハーフサイトに接触し、タンパク質のC末端ドメインは第2のハーフサイトに接触する。メガヌクレアーゼによる切断は、4塩基対の3’「オーバーハング」を生じる。「オーバーハング」又は「粘着末端」は、二本鎖DNA配列のエンドヌクレアーゼ切断によって産生することができる短い一本鎖DNAセグメントである。I?CreIに由来するメガヌクレアーゼ及び一本鎖メガ
ヌクレアーゼの場合、オーバーハングは、22塩基対認識配列の塩基10~13を含む。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「標的部位」又は「標的配列」は、ヌクレアーゼの認識配列を含む細胞の染色体DNAの領域を指す。
【0110】
本明細書で使用する場合、用語「DNA結合親和性」又は「結合親和性」は、メガヌクレアーゼが参照DNA分子(例えば、認識配列又は任意の配列)と非共有的に関連する傾向を意味する。結合親和性は、解離定数Kによって測定される。本明細書で使用される場合、参照認識配列に対するヌクレアーゼのKが参照ヌクレアーゼに対して統計的に有意な量(p<0.05)だけ増加又は減少する場合、ヌクレアーゼは「変化した」結合親和性を有する。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「特異性」は、認識配列と呼ばれる特定の塩基対の配列でのみ、又は認識配列の特定のセットにおいてのみ、二本鎖DNA分子を認識し切断するメガヌクレアーゼの能力を意味する。認識配列のセットは、特定の保存された位置又は配列モチーフを共有するが、1又は複数の位置で縮重していてもよい。高度に特異的なメガヌクレアーゼは、1又は非常に少数の認識配列のみを切断することができる。特異性は、当該技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。本明細書で使用する場合、メガヌクレアーゼは、生理学的条件下で参照メガヌクレアーゼ(例えば野生型)に結合されず切断されない認識配列に結合し切断する場合、又は認識配列の切断率が参照メガヌクレアーゼに対して生物学的に有意な量(例えば、少なくとも2倍、又は2倍~10倍)増加又は減少する場合、「変化した」特異性を有する。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「相同組換え」又は「HR」は、二本鎖DNA切断が相同DNA配列を修復鋳型として用いて修復される、天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahill et al.(2006),Front.Biosci.11:1958-1976)。相同DNA配列は、内因性染色体配列又は細胞に送達された外因性核酸であってよい。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「非相同末端結合」又は「NHEJ」は、二本鎖DNA切断が2つの非相同DNAセグメントの直接結合によって修復される、天然の細胞プロセスを指す(例えば、Cahill et al.(2006),Front.Biosci.11:1958-1976を参照)。非相同末端結合によるDNA修復は間違いを起こしやすく、修復部位で鋳型と対応しないDNA配列の付加又は欠失が頻繁に起こる。場合によっては、標的認識配列における切断は、標的認識部位にNHEJを生じる。遺伝子のコード配列中の標的部位のヌクレアーゼ誘導切断に続くNHEJによるDNA修復によって、フレームシフト突然変異等、コード配列への突然変異を導入し、遺伝子機能を破壊する可能性がある。このように、操作されたメガヌクレアーゼは、細胞集団中の遺伝子を効果的にノックアウトするために使用することができる。
【0114】
本明細書で使用する場合、用語「減少した」は、コレステロール関連疾患の症状若しくは重症度の低下、又はPCSK9のタンパク質発現若しくは活性の減少を指す。いずれの状況においても、このような減少は、最高5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%であってよい。従って、用語「減少した」は、病態、タンパク質発現、タンパク質活性、又はLDL受容体へのPCSK9の結合の部分的な減少及び完全な減少の両方を包含する。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「増加した」は、細胞表面上のLDL受容体のディスプレイの増加を指す。このような増加は、最高5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、150%、250%、500%、1000%、又はそれ以上であってよい。LDL受容体の表面ディスプレイの増加を測定するために、任意の方法が使用できる。
【0116】
本明細書で使用する場合、用語「高コレステロール血症」は、コレステロールレベルが望ましいレベルを超えて上昇している状態を指す。ある種の実施形態では、LDLコレス
テロールレベルは望ましいレベルを超えて上昇している。ある種の実施形態では、血清LDLコレステロールレベルは望ましいレベルを超えて上昇している。本明細書で使用する場合、用語「家族性高コレステロール血症」又は「FH」は、血清中の低比重リポタンパク質(LDL)関連コレステロールレベルの上昇を特徴とする遺伝病を指す。正常な患者のLDLコレステロールレベル(例えば130mg/dL未満)と比較すると、ヘテロ接合性FH患者のレベルは350~550mg/dLに、ホモ接合性FH患者のレベルは600mg/dL超まで上昇している。FHを有する患者又は被験体におけるこれらのレベルでのLDLコレステロールの上昇は、組織内のコレステロール沈着及び若年での心血管疾患リスクの増加につながる。
【0117】
アミノ酸配列及び核酸配列の両方に関して本明細書で使用する場合、用語「同一性割合」、「配列同一性」、「類似性割合」、「配列類似性」等は、整列したアミノ酸残基又はヌクレオチド間の類似性を最大にする配列のアライメントに基づく、2つの配列の類似性の程度の尺度を指し、これは配列のアライメントにおける同一又は類似の残基又はヌクレオチドの数、全ての残基又はヌクレオチドの数、並びにギャップの存在及び長さの関数である。標準的なパラメータを使用して配列類似性を決定するための様々なアルゴリズム及びコンピュータプログラムが利用可能である。本明細書で使用する場合、配列類似性は、アミノ酸配列のBLASTpプログラム及び核酸配列のBLASTnプログラムを用いて測定され、これらは両方ともNational Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて利用可能であり、例えば、Altschul et al.(1990),J.Mol.Biol.215:403?410;Gish and States(19
93),Nature Genet.3:266?272;Madden et al.
(1996),Meth.Enzymol.266:131?141;Altschul
et al.(1997),Nucleic Acids Res.25:33 89?3402;Zhang et al.(2000),J.Comput.Biol.7
(1?2):203?14に記載されている。本明細書で使用する場合、2つのアミノ酸配列の類似性割合は、BLASTpアルゴリズムのパラメータ、即ち、ワードサイズ=3、ギャップオープニングペナルティ=-11、ギャップ伸長ペナルティ=-1、及びスコアリングマトリックス=BLOSUM62に基づくスコアである。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列の類似性割合は、BLASTnアルゴリズムのパラメータ、すなわち、ワードサイズ=11、ギャップオープニングペナルティ=-5、ギャップ伸長ペナルティ=-2、マッチ報酬=1、及びミスマッチペナルティ=-3に基づくスコアである。
【0118】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の改変に関して本明細書で使用する場合、用語「対応する」は、第1のタンパク質における特定の改変が第2のタンパク質における改変と同じアミノ酸残基の置換であり、第1のタンパク質における改変のアミノ酸位置は、2つのタンパク質が標準的な配列アライメント(例えば、BLASTpプログラムを用いて)に供される場合に、第2のタンパク質における改変のアミノ酸位置に対応するか、又はそれと整列することを示すために使用される。従って、配列アライメントにおいて残基X及び残基Yが互いに対応する場合には、第1のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「X」の修飾は、第2のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「Y」の修飾に対応し、残基X及び残基Yは異なる数であってもよい。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語「認識ハーフサイト」、「認識配列ハーフサイト」、又は単に「ハーフサイト」は、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体メガヌクレアーゼのモノマーによって、又は一本鎖メガヌクレアーゼの1つのサブユニットによって認識される、二本鎖DNA分子中の核酸配列を意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」は、比較的高い変動性を有するアミノ
酸を含むメガヌクレアーゼモノマー又はサブユニット内の局在配列を指す。超可変領域は、約50~60個の連続残基、約53~57個の連続残基、又は好ましくは約56個の残基を含むことができる。いくつかの実施形態では、超可変領域の残基は、配列番号6~14のいずれか1つの位置24~79又は位置215~270に対応し得る。超可変領域は、認識配列中のDNA塩基に接触する1個又は複数個の残基を含むことができ、単量体又はサブユニットの塩基選択を変化させるように改変することができる。超可変領域はまた、メガヌクレアーゼが二本鎖DNA認識配列と関連するときにDNA骨格に結合する1個又は複数個の残基を含むことができる。そのような残基は、DNA骨格及び標的認識配列に対するメガヌクレアーゼの結合親和性を変化させるように改変することができる。本発明の異なる実施形態では、超可変領域は、変動性を示す1~20個の残基を含んでよく、塩基選択及び/又はDNA結合親和性に影響を及ぼすように改変することができる。いくつかの実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号6~14のいずれか1つの位置24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、及び77のうちの1又は複数に対応する。ある種の実施形態では、超可変領域内の可変残基はまた、配列番号8の位置48、50、71、及び73のうちの1又は複数に対応する。他の実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号6~14のいずれか1つの位置215、217、219、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261、266、及び268のうちの1又は複数に対応する。更なる実施形態では、超可変領域内の可変残基はまた、配列番号12の位置258に対応してもよい。
【0121】
用語「組換えDNA構築物」、「組換え構築物」、「発現カセット」、「発現構築物」、「キメラ構築物」、「構築物」、及び「組換えDNA断片」は、本明細書では同じ意味で用いられ、核酸断片である。組換え構築物は、限定されるものではないが、天然には一緒に見出されない調節配列及びコード配列を含む核酸断片の人工的な組み合わせを含む。例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は同じ供給源に由来し、天然に見出されるものとは異なる様式で配置された調節配列及びコード配列を含み得る。このような構築物は、単独で使用しても、又はベクターと組み合わせて使用してもよい。
【0122】
本明細書で使用する場合、「ベクター」又は「組換えDNAベクター」は、所定の宿主細胞においてポリペプチドをコードする配列の転写及び翻訳が可能な複製系及び配列を含む構築物であり得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知の宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。ベクターとしては、プラスミドベクター及び組換えAAVベクター、又は本発明のメガヌクレアーゼをコードする遺伝子を標的細胞に送達するのに適した当該技術分野で公知の任意の他のベクターを挙げることができるが、これらに限定されない。当業者は、本発明の単離されたヌクレオチド又は核酸配列のいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択、及び増殖させるために、ベクター上に存在しなければならない遺伝因子を十分に認識している。
【0123】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、ウイルスベクターを指すこともできる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0124】
本明細書で使用する場合、「多シストロン性」mRNAは、2以上のコード配列(即ち、シストロン)を含み、複数のタンパク質をコードする単一のメッセンジャーRNAを指す。多シストロン性mRNAは、IRESエレメント、T2Aエレメント、P2Aエレメント、E2Aエレメント、及びF2Aエレメントが挙げられるがこれらに限定されない、同じmRNA分子から2以上の遺伝子の翻訳を可能にする当該技術分野において公知の任
意のエレメントを含むことができる。
【0125】
本明細書で使用する場合、用語「対照」又は「対照細胞」は、遺伝子改変細胞の遺伝子型又は表現型における変化を測定するための参照点を提供する細胞を指す。対照細胞は、例えば(a)野生型細胞、即ち、遺伝子改変細胞を生じる遺伝子変更のための出発物質と同じ遺伝子型の細胞、(b)遺伝子改変細胞と同じ遺伝子型の細胞であるが、ヌル構築物で形質転換された(即ち、目的の形質に対して既知の効果を有していない構築物を有する)細胞、又は(c)遺伝子改変細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型又は表現型の発現を誘導する条件又は刺激、あるいは更なる遺伝子改変に曝されていない細胞を含んでよい。
【0126】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の改変に関して本明細書で使用する場合、用語「対応する」は、第1のタンパク質における特定の改変が第2のタンパク質における改変と同じアミノ酸残基の置換であり、第1のタンパク質における改変のアミノ酸位置は、2つのタンパク質が標準的な配列アライメント(例えば、BLASTpプログラムを用いて)に供される場合に、第2のタンパク質における改変のアミノ酸位置に対応するか、又はそれと整列することを示すために使用される。従って、配列アライメントにおいて残基X及び残基Yが互いに対応する場合には、第1のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「X」の修飾は、第2のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「Y」の修飾に対応し、残基X及び残基Yは異なる数であってもよい。
【0127】
本明細書で使用する場合、用語「治療」又は「被験体を治療する」は、本発明の操作されたメガヌクレアーゼ又は本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を、高レベルの脂肪及び/又は血中を循環するコレステロール値の増加を特徴とする疾患、例えばコレステロール関連障害を有する被験体に投与することを指す。例えば、この被験体は、心血管疾患、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、及び他のコレステロール関連障害を有していてもよい。治療の望ましい効果としては、疾患の発症又は再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の減少、病勢悪化速度の減少、病態の改善又は一時的軽減、及び予後の緩解又は改善が挙げられるが、これらに限定されない。従って、疾患及び/又は障害を治療することとは、疾患及び/又は障害の進行を変化させること(例えば遅らせること)、総コレステロールレベル及び/又は低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを減少させること、クリグラー・ナジャー症候群を改善すること、鉄の取り込みを調節するためにヘプシジン及び/又はヘモクロマトーシス2型の機能を回復させること、胆汁酸代謝を回復させること、家族性高コレステロール血症の冠状動脈性心疾患リスクを低減すること、手及び/又は足の過角化性斑(hyperkeratotic plaque)を治癒させ得る、過角化性斑及び角膜混濁の防止を指す。いくつかの態様では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼ、又はこれをコードする核酸は、本発明の医薬組成物の形で治療中に投与される。
【0128】
本明細書で使用する場合、「コレステロール関連疾患」としては、高コレステロール血症、心疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠状動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾患、アルツハイマー病、及び一般的な脂質異常症で、例えば高血清総コレステロール、高LDL、高トリグリセリド、VLDL、及び/又は低HDLにより顕在化可能なもののうちのいずれか1つ又は複数が挙げられる。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを単独で又は1種若しくは複数種の他の薬剤と組み合せて使用して治療できる原発性及び続発性脂質異常症のいくつかの非限定的な例としては、メタボリックシンドローム、真性糖尿病、家族性複合型高脂血症、家族性高トリグリセリド血症、ヘテロ接合性高コレステロール血症、ホモ接合性高コレステロール血症を含む家族性高コレステロール血症、家族性欠陥アポリポタンパク質B-100;多遺伝子性高コレステロール血症;レムナント除去疾患、肝性リパーゼ欠乏症;食事の不摂生、甲状腺機能低下症、エストロゲン及びプロ
ゲスチン療法、ベータ遮断薬、及びチアジド系利尿薬を含む薬剤のうちの任意のものに続発する脂質異常症;ネフローゼ症候群、慢性腎不全、クッシング症候群、原発性胆汁性肝硬変、糖原病、肝癌、胆汁うっ滞、末端肥大症、インスリノーマ、成長ホルモン単独欠損症及びアルコール性高トリグリセリド血症が挙げられる。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼはまた、例えば、冠状動脈性心疾患、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳卒中(虚血性及び出血性)、狭心症、又は脳血管疾患及び急性冠動脈症候群、心筋梗塞等のアテローム性動脈硬化症の予防又は治療にも有用であり得る。
【0129】
用語「プロタンパク質コンバターゼスブチリシンケキシン9型」又は「PCSK9」は、配列番号3に規定されるヒトPCSK9遺伝子(及び活性PCSK9ポリペプチドをコードするその変異体)等のPCSK9遺伝子によってコードされるポリペプチド又はその断片、並びに対立遺伝子バリアント、スプライスバリアント、誘導体バリアント、置換バリアント、欠失バリアント、及び/又は挿入バリアント(N末端メチオニンの付加を含む)、融合ポリペプチド、及び種間相同体が挙げられるがこれらに限定されない関連するポリペプチドを指す。ある種の実施形態では、PCSK9ポリペプチドとしては、リーダー配列残基、標的残基、アミノ末端メチオニン残基、リジン残基、タグ残基、及び/又は融合タンパク質残基等であるがこれらに限定されない末端残基が挙げられる。「PCSK9」は、FH3、NARC1、HCHOLA3、プロタンパク質コンバターゼサブチリシン/ケキシン9型、及び神経アポトーシス調節コンバターゼ1とも呼ばれている。PCSK9遺伝子は、分泌性サブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属するプロタンパク質コンバターゼタンパク質をコードする。用語「PCSK9」は、プロタンパク質及びプロタンパク質の自己触媒後に産生される産物の両方を表す。自己触媒された産物のみが引用されている場合には、タンパク質は、「成熟」、「切断された」、「プロセシングされた」、又は「活性な」PCSK9と呼ぶことができる。非活性形態のみが引用されている場合には、タンパク質は、PCSK9の「非活性」、「プロ型」、又は「プロセシングを受けていない」形態と呼ぶことができる。本明細書において使用される用語「PCSK9」は、変異D374Y、S127R、及びF216L等の天然に存在する対立遺伝子も含む。用語「PCSK9」は、グリコシル化、PEG化されたPCSK9配列、そのシグナル配列が切断されたPCSK9配列、触媒ドメインからそのプロドメインから切断されているが、触媒ドメインから分離されていないPCSK9配列等、PCSK9アミノ酸配列の翻訳後修飾を取り込んだPCSK9分子も包含する。
【0130】
用語「PCSK9活性」は、PCSK9のあらゆる生物学的作用を含む。ある種の実施形態では、PCSK9活性は、基質若しくは受容体と相互作用するか、又は基質若しくは受容体に結合するPCSK9の能力を含む。いくつかの実施形態では、PCSK9活性は、LDL受容体(LDLR)に結合するPCSK9の能力によって表される。いくつかの実施形態では、PCSK9は、LDLRに結合し、LDLRに関与する反応を触媒する。例えば、PCSK9活性は、LDLRの利用可能性を変化させる(例えば、低下させる)PCSK9の能力を含む。従って、いくつかの実施形態では、PCSK9活性は、被験体のLDL量を増加させるPCSK9の能力を含む。特定の実施形態では、PCSK9活性は、LDLへの結合に利用可能なLDLRの量を減少させるPCSK9の能力を含む。従って、PCSK9活性を減少させることによって、表面上にディスプレイされ、被験体のLDLを見つけられるLDLRの量が増加する。いくつかの実施形態では、「PCSK9活性」は、PCSK9シグナル伝達から生じるあらゆる生物活性を含む。例示的な活性としては、LDLRへのPCSK9の結合、LDLR又は他のタンパク質を切断するPCSK9酵素活性、PCSK9作用を促進するLDLR以外のタンパク質へのPCSK9の結合、APOB分泌を変化させるPCSK9(Sun et al.(2005),Human Molecular Genetics 14:1161-1169、及びOuguerram et al.(2004),Arterioscler thromb Vasc Biol.24:1448-1453)、肝臓の再生及び神経細胞の分化にお
けるPCSK9の役割(Seidah et al.,PNAS 100:928-933,2003)及び肝臓のグルコース代謝におけるPCSK9の役割(Costet et al.(2006),J.Biol.Chem.281(10):6211-18)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、有益な又は望ましい生物学的及び/又は臨床結果を達成するのに十分な量を指す。治療有効量は、メガヌクレアーゼの配合又は組成、治療される被験体の疾患及びその重症度、年齢、体重、健康状態、並びに反応性に依存して変化する。特定の実施形態では、有効量の本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ又は医薬組成物は、被験体の総コレステロール又はLDLコレステロール(即ち、血清LDL)のレベルを減少させることによって、高コレステロール血症又はその他コレステロール関連障害、及び/又は脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患(CVD)、若しくは冠状動脈性心疾患のうちの少なくとも1つの症状を治療又は防止する。
【0132】
用語「脂質ナノ粒子」は、典型的には、平均直径が10~1000ナノメートルの球状構造を有する脂質組成物を指す。いくつかの配合物では、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質及び少なくとも1つの複合脂質を含むことができる。mRNA等の核酸をカプセル化するのに適した当該技術分野において公知の脂質ナノ粒子は、本発明中での使用が予想される。
【0133】
本明細書で使用する場合、変数の数値範囲の列挙は、本発明が、その範囲内の値のいずれかに等しい変数で実施されてもよいと伝えることが意図されている。従って、本質的に離散的な変数の場合、その変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の整数値に等しくなり得る。同様に、本質的に連続する変数の場合、その変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の実数値と等しくなり得る。限定ではなく例として、0と2の間の値を有すると記載される変数は、変数が本質的に離散的である場合には、0、1、又は2の値をとることができ、変数が本質的に連続している場合には、0.0、0.1、0.01、0.001、又は0以上2以下の任意の他の実数値をとることができる。
【0134】
2.1 本発明の原理
本発明は、部分的に、操作されたメガヌクレアーゼを使用して、PCSK9の発現を減少させ、それにより血液から脂肪及び/又はコレステロールの除去を増加させることができるという仮説に基づく。PCSK9の発現減少により、細胞表面上のLDL受容体のディスプレイが増加し、それにより血流からの脂質の除去を増加させることができる。従って、PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼを送達することによって、PCSK9発現を減少させることができ、これによって後に被験体の血中の総コレステロール(例えば、血中LDL)を減少させることができる。従って、本明細書に開示の方法及び組成物は、適切に制御されたPCSK9発現レベルと比べて、PCSK9の発現が増加したことによって引き起こされるコレステロール関連障害の治療に特定の用途を見出す。
【0135】
従って、本発明は、PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼを包含する。本発明は、医薬組成物中、及びコレステロール関連障害、例えば、高コレステロール血症を治療する方法においてそのような操作されたメガヌクレアーゼを使用する方法も包含する。更に、本発明は、操作されたメガヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を含む医薬組成物と、コレステロール関連障害、例えば、高コレステロール血症の治療のためのそのような組成物の使用とを包含する。
【0136】
2.2 PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するためのメガヌクレアーゼ
部位特異的ヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子に切断を導入するために使用でき、そのような切断の修復により、活性なPCSK9遺伝子が発現しないようにNHEJを介して遺伝子を永久的に改変することができる。従って、一実施形態では、本発明は、操作された組換えメガヌクレアーゼを用いて実施することができる。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明を実施するために使用されるヌクレアーゼは一本鎖メガヌクレアーゼである。一本鎖メガヌクレアーゼは、リンカーペプチドによって接合されたN末端サブユニット及びC末端サブユニットを含む。2つのドメインの各々は、認識配列の半分(即ち、認識ハーフサイト)を認識し、DNA切断の部位は、2つのサブユニットの界面付近の認識配列の中央にある。DNA鎖切断は、メガヌクレアーゼによるDNA切断が4塩基対の3’一本鎖オーバーハングの対を生成するように、4塩基対によって相殺される。
【0138】
いくつかの例では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、PCS7-8認識配列(配列番号4)を認識して切断するように操作されている。PCS7-8認識配列は、配列番号3に規定されるPCSK9遺伝子の中に位置する。このような操作されたメガヌクレアーゼは、本明細書では集合的に「PCS7-8メガヌクレアーゼ」と呼ばれる。例示的なPCS7-8メガヌクレアーゼは、配列番号6~14に提供される。
【0139】
本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、第1の超可変(HVR1)領域を含む第1のサブユニットと、第2の超可変(HVR2)領域を含む第2のサブユニットとを含む。更に、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識ハーフサイト(例えば、PCS7ハーフサイト)に結合し、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識ハーフサイト(例えば、PCS7ハーフサイト)に結合する。操作されたメガヌクレアーゼが一本鎖メガヌクレアーゼである実施形態では、HVR1領域を含み、第1のハーフサイトに結合する第1のサブユニットがN末端サブユニットとして位置し、HVR2領域を含み、第2のハーフサイトに結合する第2のサブユニットがC末端サブユニットとして位置するように第1のサブユニット及び第2のサブユニットを配向できる。代替的実施形態では、HVR1領域を含み、第1のハーフサイトに結合する第1のサブユニットがC末端サブユニットとして位置し、HVR2領域を含み、第2のハーフサイトに結合する第2のサブユニットがN末端サブユニットとして位置するように第1のサブユニット及び第2のサブユニットを配向できる。本発明の例示的なPCS7-8メガヌクレアーゼを表1に示す。
【0140】
表1.PCS7-8認識配列(配列番号4)を認識して切断するように操作された例示的な操作されたメガヌクレアーゼ
【表1】
【0141】
「PCS7サブユニット%」は、各メガヌクレアーゼのPCS7結合サブユニット領域とPCS7-8L.197メガヌクレアーゼのPCS7結合サブユニット領域とのアミノ酸配列同一性を表し、「PCS8サブユニット%」とは、各メガヌクレアーゼのPCS8結合サブユニット領域とPCS7-8L.197メガヌクレアーゼのPCS8結合サブユニット領域とのアミノ酸配列同一性を表す。
【0142】
2.3 エンドヌクレアーゼの送達及び発現方法
被験体の高コレステロール血症及び心血管疾患を治療する方法が本明細書に開示される。同様に、薬学的に許容される担体及び本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ(又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸)を含む医薬組成物を投与することを含む、被験体の高コレステロール血症及び心血管疾患の症状を低減させる方法が提供される。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを被験体の標的細胞に送達することを含む、被験体のPCSK9の発現及び/又は活性を減少させる方法もまた提供される。本発明の方法において、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼは、標的細胞内のDNA/RNAに送達され、且つ/又はそこから発現され得る。
【0143】
本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼは、タンパク質の形態で、又は好ましくは操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸として細胞内に送達される。このような核酸はDNA(例えば、環状若しくは線状プラスミドDNA又はPCR産物)又はRNA(例えば、mRNA)であってよい。操作されたメガヌクレアーゼコード配列がDNAの形で送達される実施形態の場合、ヌクレアーゼ遺伝子の転写を促すためにプロモーターに作動可能に連結されるべきである。本発明に適した哺乳動物プロモーターとしては、構成型プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス初期(CMV)プロモーター(Thomsen et al.(1984),Proc Natl Acad Sci USA.81(3):659-63)又はSV40初期プロモーター(Benoist and Chambon(1981),Nature 290(5804):304-10)並びに誘導性プロモーター、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Dingermann et al.(1992),Mol Cell Biol.12(9):4038-45)が挙げられる。本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、合成プロモーターにも作動可能に連結され得る。合成プロモーターとしては、JeTプロモーター(国際公開第2002/012514号)を挙げることができるが、これに限定されない。特定の実施形態では、本明細書で開示される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列は
、肝臓特異的プロモーター又は肝実質細胞特異的プロモーターに作動可能に連結され得る。肝臓特異的プロモーターの例としては、限定されないが、ヒトα-1抗トリプシンプロモーター、ハイブリッド肝臓特異的プロモーター(ApoE遺伝子の肝臓遺伝子座制御領域(ApoE-HCR)及び肝臓特異的α1-抗トリプシンプロモーター)、ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター及びアポリポタンパク質A-IIプロモーターが挙げられる。
【0144】
特定の実施形態では、少なくとも1つの操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列は組換えDNA構築物又は発現カセットに送達される。例えば、組換えDNA構築物は、プロモーターと、本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含む発現カセット(即ち、「カセット」)を含むことができる。他の実施形態では、組換えDNA構築物は、2以上のカセットを含み、各カセットは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含む。特定の実施形態では、組換えDNA構築物は、2つのカセット、3つのカセット、4つのカセット、又はそれ以上を含むことができる。
【0145】
他の実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0146】
いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼをコードするmRNAは細胞に送達されるが、これは、このことにより操作されたメガヌクレアーゼをコードする遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれる可能性が低下するためである。操作されたメガヌクレアーゼをコードするそのようなmRNAは、インビトロ転写等の当該技術分野で公知の方法を用いて産生することができる。いくつかの実施形態では、mRNAは、7-メチルグアノシン、ARCA、CleanCapを使用してキャッピングされるか、又はVacciniaキャッピング酵素等を使用して酵素的にキャッピングされる。いくつかの実施形態では、mRNAはポリアデニル化されていてもよい。mRNAは、コードされた操作されたメガヌクレアーゼの発現を促し、且つ/又はmRNA自体の安定性を高めるために、様々な5’及び3’非翻訳配列要素を含んでいてもよい。mRNAは、プソイドウリジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、5-メチルウリジン、又は2-チオウリジン等のヌクレオシド類似体を含んでいてもよい。
【0147】
特定の実施形態では、本発明の操作されたヌクレアーゼをコードするmRNAは、細胞内で同時に発現される2以上のヌクレアーゼをコードする多シストロン性mRNAであってよい。いくつかの実施形態では、多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の2以上のメガヌクレアーゼと、細胞において治療的に有益な効果をもたらす少なくとも1種の更なるタンパク質とをコードできる。本発明の多シストロン性mRNAは、IRESエレメント、T2Aエレメント、P2Aエレメント、E2Aエレメント、及びF2Aエレメントが挙げられるがこれらに限定されない、同じmRNA分子から2以上の遺伝子の翻訳を可能にする当該技術分野において公知の任意のエレメントを含むことができる。特定の実施形態では、多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の2つのメガヌクレアーゼをコードするバイシストロン性mRNA、本明細書に記載の3つのメガヌクレアーゼをコードするトリシストロン性mRNAである。
【0148】
別の特定の実施形態では、本発明のエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、一本鎖DNA鋳型として標的細胞に送達され得る。一本鎖DNAは、操作されたメガヌクレアーゼをコードする配列の上流及び/又は下流に5’及び/又は3’AAV逆方向末端反復(ITR)を更に含むことができる。他の実施形態では、一本鎖DNAは、操作されたメガヌクレアーゼをコードする配列の上流及び/又は下流に5’及び/又は3’相同性アームを
更に含むことができる。
【0149】
別の特定の実施形態では、本発明のエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、線状DNA鋳型として標的細胞に送達され得る。いくつかの例において、エンドヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAは、標的細胞への送達前に環状プラスミドDNAが線状になるように、1又は複数の制限酵素により消化され得る。
【0150】
精製されたヌクレアーゼタンパク質を細胞に送達して、本明細書で以下に更に詳述するものを含む、当該技術分野で公知の様々な異なるメカニズムによってゲノムDNAを切断することができる。
【0151】
本発明の操作されたメガヌクレアーゼの送達のための標的組織としては、限定されないが、肝実質細胞、又は好ましくは初代肝実質細胞、より好ましくはヒト肝実質細胞又はヒト初代肝実質細胞、HepG2.2.15又はHepG2-hNTCP細胞等の肝臓の細胞が挙げられる。特定の実施形態では、細胞は霊長類初代肝実質細胞等の霊長類肝実質細胞の細胞である。説明したように、本発明のメガヌクレアーゼは、精製タンパク質として、又はメガヌクレアーゼをコードするRNA若しくはDNAとして送達することができる。一実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はエンドヌクレアーゼをコードするmRNA若しくはDNAベクターは、標的組織への直接の注射を介して標的細胞(例えば、肝臓の細胞)に供給される。あるいは、メガヌクレアーゼタンパク質、mRNA、又はDNAは、循環系を介して全身に送達することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、公知の技術に従って薬学的に許容される担体中において、全身投与するために、又は標的組織に投与するために製剤化される。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(21st ed.2005)を参照のこと。本発明による医薬製剤の製造において、タンパク質/RNA/mRNAは典型的には薬学的に許容される担体と混合される。担体は、当然ながら、製剤中の他の成分と適合性があるという意味で許容されなければならず、また患者に有害であってはならない。担体は、固体、液体、又はその両方であってよく、1回用量製剤として化合物と共に製剤化されてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、膜透過性ペプチド又は標的リガンドに結合し、細胞取り込みを促す。当該技術分野で公知の膜透過性ペプチドの例としては、ポリアルギニン(Jearawiriyapaisarn et al.(2008)Mol Ther.16:1624-9)、HIVウイルス由来のTATペプチド(Hudecz et al.(2005)、Med.Res.Rev.25:679-736)、MPG(Simeoni et al.(2003),Nucleic Acids Res.31:2717-2724)、Pep-1(Deshayes et al.(2004),Biochemistry 43:7698-7706、及びHSV-1 VP-22(Deshayes et al.(2005),Cell Mol Life Sci.62:1839-49)が挙げられる。代替的実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、メガヌクレアーゼタンパク質/DNA/mRNAが標的細胞に結合し、且つ標的細胞によって内在化されるように、標的細胞上に発現される特異的細胞表面受容体を認識する抗体に共有結合又は非共有結合する。あるいは、メガヌクレアーゼタンパク質/DNA/mRNAは、このような細胞表面受容体の天然リガンド(又は天然リガンドの一部)に共有結合又は非共有結合することができる(McCall et al.(2014),Tissue Barriers.2(4):e944449;Dinda et al.(2013),Curr Pharm B
iotechnol.14:1264-74;Kang et al.(2014),Curr Pharm Biotechnol.15 (3):220-30; Qian
et al.(2014),Expert Opin Drug Metab Toxicol.10(11):1491-508)。
【0154】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、肝臓の所望の領域内に注射又は移植するための生分解性ヒドロゲル内にカプセル化される。ヒドロゲルは、頻繁な注射を必要とすることなく、標的組織の所望の領域に治療ペイロードの持続的かつ調整可能な放出を提供することができ、刺激応答性材料(例えば温度応答性ヒドロゲル及びpH応答性ヒドロゲル)は、環境的又は外因的に加えられる合図に応答してペイロードを放出するように設計することができる(Kang Derwent et al.(2008),Trans Am Ophthalmol Soc.106:206-214)。
【0155】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、当該技術分野で公知の方法を用いて、ナノ粒子に共有結合する、好ましくは非共有結合するか、又はそのようなナノ粒子内にカプセル化される(Sharma et al.(2014),Biomed Res Int.2014:327950)。ナノ粒子は、その長さスケールが1μm未満、好ましくは100nm未満であるナノスケール送達システムである。そのようなナノ粒子は、金属、脂質、ポリマー、又は生体高分子から構成されるコアを用いて設計されてもよく、メガヌクレアーゼタンパク質、mRNA、又はDNAの複数のコピーをナノ粒子コアに結合させるか又はカプセル化することができる。これは、各細胞に送達されるタンパク質/mRNA/DNAのコピー数を増加させ、したがって各メガヌクレアーゼの細胞内発現を増加させて、標的認識配列が切断される可能性を最大にする。このようなナノ粒子の表面にポリマー又は脂質(例えば、キトサン、カチオン性ポリマー、又はカチオン性脂質)を更に修飾して、表面が追加の官能性を付与するコアシェルナノ粒子を形成し、細胞送達及びペイロードの取り込みを増強してもよい(Jian et al.(2012),Biomaterials 33(30):7621-30)。有利には、ナノ粒子を標的分子に更に結合させて、ナノ粒子を適切な細胞型に導き、且つ/又は細胞取り込みの可能性を高めてもよい。そのような標的分子の例としては、細胞表面受容体に特異的な抗体、及び細胞表面受容体の天然リガンド(又は天然リガンドの一部)が挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、カチオン性脂質を用いてリポソーム内にカプセル化又は複合化される(例えば、LIPOFECTAMINEトランスフェクション試薬、Life Technologies Corp.,Carlsbad、CA;Zuris et al.(2015),Nat Biotechnol.33:73-80;Mishra
et al.(2011),J Drug Deliv.2011:863734を参照)。リポソーム及びリポプレックス製剤は、ペイロードを分解から保護し、標的部位での蓄積及び保持を促進し、標的細胞の細胞膜との融合及び/又は破壊により細胞の取り込み及び送達効率を促進することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、ポリマー足場(例えば、PLGA)内にカプセル化されるか、又はカチオン性ポリマー(例えばPEI、PLL)を用いて複合化される(Tamboli et al.(2011),Ther Deliv.2(4):523-536)。ポリマー担体は、ポリマー侵食及び薬物拡散の制御によって調整可能な薬物放出速度を提供するように設計することができ、高効率の薬物カプセル化によって、所望の標的細胞集団への細胞内送達まで治療ペイロードの保護を提供することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、ミセルに自己集合する両親媒性分子と組み合わされる(Tong et al.(2007),J Gene Med.9(11):956-66)。ポリマーミセルは、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)で形成されたミセルシェルを含んでもよく、親水性ポリマーは、凝集を防止し、電荷相互作用をマスクし、非特異的相互作用を減少させることができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、標的細胞への投与及び/又は送達のために、エマルジョン又はナノエマルジョン(即ち、平均粒子直径1nm未満)に製剤化される。用語「エマルジョン」は、限定すされないが、水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油型の分散液又は液滴を指し、水不混和相が水相と混合されると、無極性残基(例えば、長い炭化水素鎖)を水から離れるように移動させ、極性頭部基を水に向かって移動させる疎水力の結果として形成することができる脂質構造体を指す。これらの他の脂質構造体としては、単層、少数層(paucilamellar)、及び多重層脂質小胞体、ミセル、並びにラメラ相が挙げられるが、これらに限定されない。エマルジョンは、水相及び親油相(典型的には油及び有機溶媒を含有する)から構成される。エマルジョンはまた、1種又は複数種の界面活性剤を含有することが多い。ナノエマルジョン製剤は、例えば、米国特許出願第2002/0045667号及び第2004/0043041号、並びに米国特許第6,015,832号、第6,506,803号、第6,635,676号、及び第6,559,189号に記載されているように周知であり、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0160】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、多官能性ポリマー複合体、DNAデンドリマー、及びポリマーデンドリマーに共有結合しているか、又は非共有結合している(Mastorakos
et al.(2015),Nanoscale 7(9):3845-56;Cheng et al.(2008),J Pharm Sci.97(1):123-43)。デンドリマー生成は、ペイロードの容量及びサイズを制御することができ、高い薬物ペイロード容量を提供することができる。更に、複数の表面基のディスプレイを利用して、安定性を改善し、非特異的相互作用を低減し、細胞特異的標的化及び薬物放出を増強することができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼをコードする遺伝子は、ウイルスベクターを用いて送達される。そのようなベクターは、当該技術分野で公知であり、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが挙げられる(Vannucci et al.(2013),New Microbiol.36:1-22に概説されている)。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは標的組織(例えば肝組織)に直接注射される。代替的実施形態では、ウイルスベクターは、循環系を介して全身に送達される。当該技術分野では、異なるAAVベクターが異なる組織に局在する傾向があることが知られている。肝標的組織では、肝実質細胞の効果的な形質導入が、例えばAAV血清型2、8、及び9で示されている(Sands(2011),Methods Mol Biol 807:141-157;国際出願公開第2003/052051号公報)。AAVベクターはまた、宿主細胞において第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCarty
et al.(2001),Gene Ther 8:1248-54)。
【0162】
一実施形態では、エンドヌクレアーゼ遺伝子送達に使用されるウイルスベクターは、自己制限ウイルスベクターである。自己制限ウイルスベクターは、ベクター内の操作された
メガヌクレアーゼの認識配列の存在故に、細胞又は生物において持続時間が制限され得る。従って、自己制限ウイルスベクターを操作して、プロモーター、本明細書に記載のエンドヌクレアーゼ、及びITR内のエンドヌクレアーゼ認識部位のコードを提供することができる。自己制限ウイルスベクターは、エンドヌクレアーゼ遺伝子を細胞、組織、又は生物に送達することで、エンドヌクレアーゼが発現され、ゲノム内の内因性認識配列で細胞のゲノムを切断することができるようにする。送達されたエンドヌクレアーゼはまた、自己制限ウイルスベクター自体の中にその標的部位を見出し、この標的部位でベクターを切断する。切断されると、ウイルスゲノムの5’及び3’末端は、エキソヌクレアーゼによって曝露されて分解され、それによりウイルスを殺し、エンドヌクレアーゼの産生を停止する。
【0163】
エンドヌクレアーゼ遺伝子がDNA形態(例えばプラスミド)で、且つ/又はウイルスベクター(例えばAAV)を介して送達される場合、それらはプロモーターに作動可能に連結されてよい。いくつかの実施形態では、これは、ウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクターのLTR)又は周知のサイトメガロウイルス初期プロモーター若しくはSV40ウイルス初期プロモーター由来の内因性プロモーター等のウイルスプロモーターであってもよい。好ましい実施形態では、メガヌクレアーゼ遺伝子は、標的細胞において遺伝子発現を優先的に駆動するプロモーターに作動可能に連結される。肝臓特異的プロモーターの例としては、限定されないが、ヒトα-1抗トリプシンプロモーター、ハイブリッド肝臓特異的プロモーター(ApoE遺伝子の肝臓遺伝子座制御領域(ApoE-HCR)及び肝臓特異的α1-抗トリプシンプロモーター)、ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター及びアポリポタンパク質A-IIプロモーターが挙げられる。
【0164】
特定の実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。ウイルスベクターは2以上のカセットを含むこともでき、各カセットは、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含む1つのカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNA、例えば、操作されたメガヌクレアーゼをコードする多シストロン性mRNAを産生する。
【0165】
コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を有する被験体の肝臓に本明細書に開示のメガヌクレアーゼを送達する方法及び組成物が提供される。一実施形態では、哺乳動物から取り出された天然肝実質細胞は、操作されたメガヌクレアーゼをコードするベクターを用いて形質導入され得る。あるいは、被験体の天然肝実質細胞は、操作されたメガヌクレアーゼ及び/又は肝再生を刺激する分子、例えば肝臓毒素をコードするアデノウイルスベクターを用いてエクスビボで形質導入され得る。好ましくは、肝臓毒素はuPAであり、ウイルスベクターにより発現されると肝実質細胞からの分泌を阻害するように改変されている。別の実施形態では、ベクターは、肝実質細胞再生を新たに刺激することができるtPAをコードする。次いで、哺乳動物から取り出された形質導入肝実質細胞を哺乳動物に戻すことができ、操作されたメガヌクレアーゼの発現を促す条件が提供される。典型的には、形質導入肝実質細胞は、脾臓又は門脈系を通して注入することによって患者に戻すことができ、投与は1~5日間又はそれ以上の期間にわたって単回又は複数回であってよい。
【0166】
本発明の方法のインビボ態様では、操作されたメガヌクレアーゼをコードし、被験体に投与されるレトロウイルス、偽型又はアデノウイルス関連ベクターが構築される。操作されたメガヌクレアーゼをコードするベクターの投与は、分泌障害肝臓毒素をコードする、又は肝臓毒素として作用することなく肝実質細胞の再生を刺激するtPAをコードするア
デノウイルスベクターの投与を用いて行うことができる。
【0167】
適切な用量は、他の要因の中でも、使用するリポソーム製剤、選択した任意のAAVベクターの特異性(例えば、血清型等)、投与経路、治療される被験体(即ち、被験体の年齢、体重、性別、及び全身状態)、及び投与方法に依存する。従って、適切な用量は患者ごとに異なっていてもよい。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。投薬治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってよい。更に、被験体は、必要に応じて何回投与されてもよい。当業者は、適切な投薬回数を容易に決定することができる。代替的な投与経路を考慮するか、又は治療的利益と副作用とのバランスをとるために、用量は調整する必要がある場合がある。
【0168】
本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、又はその重症度を低下させることができる。特定の実施形態では、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の少なくとも1つの症状を低減することができる。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸は、有効量で被験体に送達される。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸が送達される被験体は、任意の哺乳動物であってよい。特定の実施形態では、被験体は、馴化動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)である。ある種の実施形態では、被験体は、非ヒト霊長類又はヒトである。いくつかの実施形態では、被験体はコレステロール関連障害を有する。例えば、被験体は、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、又は常染色体優性家族性高コレステロール血症を有していてもよい。特定の実施形態では、被験体は、170mg/dL又は200mg/dL超、例えば、170~200mg/dL、又は200~250mg/dL、200~300mg/dL、200~350mg/dL、200~400mg/dL、200~450mg/dL、200~500mg/dL、又は200~600mg/dLの総コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、被験体は、110mg/dL又は130mg/dL超、例えば、110~120mg/dL、110~130mg/dL、130~150mg/dL、130~180mg/dL、130~200mg/dL、130~250mg/dL、130~300mg/dL、130~350mg/dL、130~400mg/dL、130~450mg/dL、130~500mg/dL、又は130~600mg/dLのLDLコレステロールレベルを有する。
【0169】
特定の実施形態では、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、PCSK9の発現を減少させ、且つ/又はPCSK9活性を減少させることができる。例えば、PCSK9の発現又は活性は、対照細胞又はベースラインPCSK9活性と比較した場合、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%減少され得る。いくつかの態様では、PCSK9の発現及び/又は活性は、対照細胞又はベースラインPCSK9活性と比較した場合、約5~10%、5~20%、10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、60~80%、70~90%、又は80~100%減少され得る。PCSK9活性は、本明細書の他の箇所で開示されているように、当該技術分野で公知の任意の手段によって測定することができる。本明細書で使用する場合、対照細胞は、医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書で開示される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の送達前の被験体由来の細胞等の任意の適切な対照であり得る。特定の実施形態では、対
照細胞は、医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書で開示される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸が送達されていない被験体の肝臓細胞又は初代肝実質細胞である。本明細書で使用する場合、被験体の「ベースライン」レベル(例えば、PCSK9発現若しくは活性又は総コレステロールレベル若しくはLDLコレステロールレベルのベースラインレベル等)は、本明細書に記載の医薬組成物を個体に投与する前のレベルを指す。ある種の実施形態では、ベースラインは、本明細書に記載の医薬組成物の投与前に得られた2以上の測定値の平均(mean)又は平均(average)であってよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示され操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、細胞表面上のLDL受容体のディスプレイを増加させるか、又はLDL受容体のレベルを増加させることができる。LDL受容体のレベルは、被験体の肝臓におけるLDL受容体又はアポリポタンパク質B(APOB)受容体のレベルを測定する等、当該技術分野で公知の方法によって測定することができる。例えば、LDL受容体のディスプレイ又はレベルは、対照細胞又は細胞表面上のLDL受容体のベースラインレベルと比較した場合、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を、標的細胞に送達した後に少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、150%、250%、500%、1000%、又はそれ以上増加し得る。
【0171】
本明細書に開示の医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、送達前の被験体の総コレステロールレベルと比較した場合、被験体の総コレステロールレベルを減少させ得る。例えば、総コレステロールレベルは、治療前の被験者と比較した場合、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%減少させることができる。特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物を送達された被験体の総コレステロールレベルは、最終投薬後から少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は3ヶ月間、医薬組成物送達前の総コレステロールレベルと比較して減少を維持する。
【0172】
特定の実施形態では、総コレステロールレベルは、本明細書に開示の医薬組成物を被験体に送達する前のコレステロールレベルと比較した場合、約5mg/dL、10mg/dL、15mg/dL、20mg/dL、25mg/dL、30mg/dL、40mg/dL、50mg/dL、60mg/dL、70mg/dL、80mg/dL、90mg/dL、100mg/dL、110mg/dL、5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~80mg/dL、70~100mg/dL、又はそれ以上減少する。特定の実施形態では、被験体は、140mg/dL、150mg/dL、160mg/dL、170mg/dL、175mg/dL、180mg/dL、185mg/dL、190mg/dL、195mg/dL、200mg/dL、205mg/dL、210mg/dL、215mg/dL、220mg/dL、225mg/dL、230mg/dL、235mg/dL、240mg/dL、250mg/dL、260mg/dL、270mg/dL、280mg/dL、290mg/dL、300mg/dL、又はそれ以上のベースライン総コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、総コレステロールレベルは、血清コレステロールレベル又は全身コレステロールレベルである。
【0173】
本明細書に開示の医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、送達前の被験体のLDLコレ
ステロールレベルと比較した場合、被験体のLDLコレステロールレベルを減少させることができる。例えば、LDLコレステロールレベルは、治療前の被験体と比較した場合、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%減少され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物を送達された被験体のLDLコレステロールレベルは、最終投薬後から少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は3ヶ月間、医薬組成物送達前の総コレステロールレベルと比較して減少を維持する。
【0174】
特定の実施形態では、LDLコレステロールレベルは、本明細書に開示の医薬組成物を被験体に送達する前のLDLコレステロールレベルと比較した場合、約5mg/dL、10mg/dL、15mg/dL、20mg/dL、25mg/dL、30mg/dL、40mg/dL、50mg/dL、60mg/dL、70mg/dL、80mg/dL、90mg/dL、5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~80mg/dL、70~100mg/dL、又はそれ以上減少する。特定の実施形態では、被験体は、100mg/dL、110mg/dL、115mg/dL、120mg/dL、125mg/dL、130mg/dL、135mg/dL、140mg/dL、145mg/dL、150mg/dL、155mg/dL、160mg/dL、165mg/dL、170mg/dL、175mg/dL、180mg/dL、185mg/dL、190mg/dL、195mg/dL、200mg/dL、又はそれ以上のベースラインLDLコレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、LDLコレステロールレベルは、血清LDLコレステロールレベル又は全身LDLコレステロールレベルである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、本明細書に開示の医薬組成物を被験体に送達する前のアテローム斑の初期サイズと比較した場合、被験体のアテローム斑のサイズを少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、又は60%、又は更に多く減少させるのに有効であり得る。アテローム斑のサイズは、約19%~24%、14%~29%、12%~35%、10~40%、8%~45%、5%~50%、2%~60%、又は1%~70%減少され得る。
【0176】
2.4 医薬組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と本発明の操作されたメガヌクレアーゼ、又は薬学的に許容される担体と本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を含むポリヌクレオチドとを含む、医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と、標的組織に送達することができ、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを発現する、本発明の細胞とを含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、心血管疾患、及び常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を有する被験体の治療、又はPCSK9の発現及び/若しくは活性の減少に有用であり得る。
【0177】
そのような医薬組成物は、公知の技術に従って調製することができる。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(21st ed.2005)を参照のこと。本発明による医薬製剤の製造において、メガヌクレアーゼポリペプチド(又はそれをコードするDNA/RNA)は、典型的
には、薬学的に許容される担体と混合され、得られた組成物が被験体に投与される。担体は、当然ながら、製剤中の他の成分と適合性があるという意味で許容されなければならず、また被験体に有害であってはならない。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、被験体における疾患の治療に有用な1種又は複数種の追加の薬剤又は生物学的分子を更に含むことができる。同様に、追加の薬剤及び/又は生物学的分子は、別個の組成物として同時投与することができる。
【0178】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書の別の箇所に記載されている、脂質ナノ粒子内にカプセル化された本明細書に記載の1又は複数のmRNAを含むことができる。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の1又は複数の多シストロン性mRNAを含むことができ、各多シストロン性mRNAは、2以上の本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の2つ、3つ、又は4つの操作されたメガヌクレアーゼをコードする多シストロン性mRNAを含むことができる。他の特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の2以上の多シストロン性mRNAを含むことができ、その各々は、2以上の本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。
【0179】
本発明中で使用するために考えられる脂質ナノ粒子の一部は、少なくとも1つのカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、及び少なくとも1つの複合脂質を含む。更なる特定の例では、脂質ナノ粒子は、約40mol%~約85mol%のカチオン性脂質、約13mol%~約49.5mol%の非カチオン性脂質、及び約0.5mol%~約10mol%の脂質複合体を含むことができ、非ラメラ(即ち、非二重層)形態を有するような方法で産生される。
【0180】
カチオン性脂質としては、例えば、パルミトイル-オレオイル-ノル-アルギニン(PONA)、MC3、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、CP-γ-LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4、及びPan MC5、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA;「XTC2」)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキサン(DLin-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(
DLin-EG-DMA)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、又はこれらの混合物のうちの1又は複数を挙げることができる。カチオン性脂質は、DLinDMA、DLin-K-C2-DMA(「XTC2」)、MC3、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、CP-γ-LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4、Pan MC5、又はこれらの混合物であってもよい。
【0181】
種々の実施形態では、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約40mol%~約90mol%、約40mol%~約85mol%、約40mol%~約80mol%、約40mol%~約75mol%、約40mol%~約70mol%、約40mol%~約65mol%、又は約40mol%~約60mol%を占めていてもよい。
【0182】
非カチオン性脂質は、例えば、1又は複数のアニオン性脂質及び/又は中性脂質を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、非カチオン性脂質は、中性脂質成分、即ち、(1)コレステロール若しくはその誘導体;(2)リン脂質、又は(3)リン脂質とコレステロールの混合物若しくはその誘導体のうちの1つを含む。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、卵ホスファチジルコリン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない中性脂質であってもよい。ある種の好ましい実施形態では、リン脂質は、DPPC、DSPC、又はこれらの混合物である。
【0183】
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質(例えば、1又は複数のリン脂質及び/又はコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約60mol%、約15mol%~約60mol%、約20mol%~約60mol%、約25mol%~約60mol%、約30mol%~約60mol%、約10mol%~約55mol%、約15mol%~約55mol%、約20mol%~約55mol%、約25mol%~約55mol%、約30mol%~約55mol%、約13mol%~約50mol%、約15mol%~約50mol%、又は約20mol%~約50mol%を占めていてもよい。非カチオン性脂質がリン脂質とコレステロール又はコレステロール誘導体との混合物である場合、この混合物は粒子中に存在する総脂質の最高約40、50、又は60mol%を占めていてもよい。
【0184】
粒子の凝集を阻害する複合脂質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、カチオン性ポリマー-脂質複合体(CPL)、又はこれらの混合物のうちの1又は複数を含んでいてもよい。好ましい一実施形態では、核酸-脂質粒子は、PEG-脂質複合体又はATTA-脂質複合体のいずれかを含む。ある種の実施形態では、PEG-脂質複合体又はATTA-脂質複合体は、CPLと共に使用される。粒子の凝集を阻害する複合脂質は、例えば、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)、PEGジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、又はこれらの混合物等のPEG-脂質を含んでいてもよい。PEG-DAA複合体は、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)、又はこれらの混合物であってもよい。
【0185】
本発明での使用に適した追加のPEG-脂質複合体としては、mPEG2000-1,2-ジ-O-アルキル-sn3-カルボモイルグリセリド(PEG-C-DOMG)が挙げられるが、これに限定されない。PEG-C-DOMGの合成は、PCT出願番号PCT/US08/88676に記載されている。本発明での使用に適した更なる追加のPEG-脂質複合体としては、1-[8’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパノキシ)-カルボキサミド-3’、6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-ω-メチル-ポリ(エチレングリコール)(2KPEG-DMG)が挙げられるが、これに限定されない。2KPEG-DMGの合成は、米国特許第7,404,969号に記載されている。
【0186】
場合によっては、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、PEG-脂質複合体)は、粒子中に存在する総脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2mol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約1mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7mol%、約1.3mol%~約1.6mol%、約1.4mol%~約1.5mol%、又は約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2mol%(又はその任意の割合若しくはその範囲内)を占めていてもよい。典型的には、そのような場合、PEG部分は約2,000ダルトンの平均分子量を有する。その他の場合、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、PEG-脂質複合体)は、粒子中に存在する総脂質の約5.0mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol%、又は約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、又は10mol%(又はその任意の割合若しくはその範囲内)を占めていてもよい。典型的には、そのような場合、PEG部分は約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0187】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、肝臓、特に肝実質細胞内での送達及び取り
込みを特異的に増強する組成を有する。
【0188】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む本明細書に記載の組換えDNA構築物とを含む。特定の実施形態では、そのような組換えDNA構築物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化されるか、又は標的細胞(例えば、肝臓細胞、特に肝実質細胞)への送達に適した、当該技術分野で公知の他の送達媒体にパッケージ化され得る。
【0189】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む本明細書に記載のウイルスベクターとを含む。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、標的細胞、特に肝実質細胞等の肝臓細胞への送達に適したAAVベクターであってよい。このようなAAVベクターは、例えば、AAV8、AAV2、AAV9のカプシド、又は当該技術分野で公知の他の肝臓標的化キャプシドを有し得る。ある種の実施形態では、AAVキャプシドはAAV8キャプシドであり、これは5’逆方向末端反復、肝臓特異的ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、イントロン、本発明の操作されたメガヌクレアーゼのコード配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント、及び3’逆方向末端反復を含むカセットを含む。
【0190】
ある種の実施形態では、治療有効量の本明細書に開示の医薬組成物を別の治療薬と一緒に投与することを含む、高コレステロール血症等のコレステロール関連障害を治療する方法が提供される。特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は単独で投与される。
【0191】
本発明の医薬組成物は、併用療法で、即ち他の薬剤と組み合わせて投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、少なくとも1つの他の治療薬の投与前に送達される。本明細書に開示の医薬組成物は、少なくとも1つの他の治療薬の投与と同時に送達されても、又は少なくとも1つの他の治療薬の投与後に送達されてもよい。ある種の実施形態では、併用療法は、本明細書に開示の医薬組成物を、少なくとも1つの抗コレステロール薬と組み合わせて含む。薬剤としては、インビトロで合成的に調製された化学的組成物、抗体、抗原結合領域、並びにそれらの組み合わせ及び複合体が挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、薬剤は、アゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレーター、又は毒素として作用し得る。ある種の実施形態では、薬剤は、その標的を阻害又は刺激するように作用し(例えば、受容体又は酵素の活性化又は阻害)、それによりLDLRの発現増加を促進するか、又はPCSK9発現若しくは血清コレステロールレベルを減少させる。
【0192】
治療薬(本明細書に開示の医薬組成物以外)としては、少なくとも1つの他のコレステロール低下(血清及び/又は全身コレステロール)薬又は薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、薬剤は、LDLRの発現を増加させ、血清HDLレベルを増加させ、LDLレベルを減少させ、又はトリグリセリドレベルを減少させることが観察されている。例示的な薬剤としては、スタチン(アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR、NIASPAN(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(徐放性ナイアシン))、フィブリン酸(LOPID(ゲムフィブロジル)、TRICOR(フェノフィブラート)、胆汁酸隔離剤(QUESTRAN(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL)、COLESTID(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(ZETIA(エゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(LOVASTATIN及びNIASPAN)、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(
ZOCOR及びZETIA)、及び/又は脂質修飾剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、PPARγアゴニスト、PPARα/γアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、CETP阻害剤、降圧剤、抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、DDPIV阻害剤等)、ApoB調節物質、MTP阻害剤、及び/又は閉塞性動脈硬化症治療と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、スタチン、オンコスタチンMのようなある種のサイトカイン、エストロゲン、及び/又はベルベリン等のある種の植物成分のような、被験体中のLDLRタンパク質のレベルを増加させる薬剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、(ある種の抗精神病薬、ある種のHIVプロテアーゼ阻害剤、高フルクトース、スクロース、コレステロール又はある種の脂肪酸等の食事要因並びにRXR、RAR、LXR、FXRに対するある種の核受容体アゴニスト及びアンタゴニスト等)、被験体の血清コレステロールレベルを増加させる薬剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、スタチン及び/又はインスリン等の、被験体中のPCSK9のレベルを増加させる薬剤と組み合わされる。2つの組み合わせは、他の薬剤の望ましくない副作用を本明細書に開示の医薬組成物によって軽減させることを可能とし得る。
【0193】
ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、コレステロール低下(血清及び/又は総コレステロール)薬を用いた治療の前、同時、及び後に投与することができる。ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、高コレステロール血症、心臓病、糖尿病、及び/又はコレステロール関連障害のいずれかの発症を予防又は軽減するために、予防的に投与することができる。ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、既存の高コレステロール血症症状の治療のために投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、コレステロール関連障害に伴う障害及び/又は症状の発症を遅延させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、コレステロール関連障害のいずれか1つの任意の症状がない被験体に提供される。
【0194】
2.5 組換えAAVベクターの産生方法
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法において使用するための組換えAAVベクターを提供する。組換えAAVベクターは、典型的には、HEK-293等の哺乳動物細胞株で産生される。ウイルスのcap遺伝子及びrep遺伝子は、その自己複製によって治療遺伝子(例えば、メガヌクレアーゼ遺伝子)が送達される余地を作ることを防ぐためにベクターから除去されるため、パッケージング細胞株においてトランスで供給する必要がある。更に、複製を支持するために必要な「ヘルパー」(例えば、アデノウイルス)成分を提供することが必要である(Cots D,Bosch A,Chillon
M(2013)Curr.Gene Ther.13(5):370-81)。しばしば、組換えAAVベクターは、「ヘルパー」成分をコードする第1のプラスミドと、cap遺伝子及びrep遺伝子を含む第2のプラスミドと、ウイルスにパッケージングされる介在DNA配列を含有するウイルスITRを含む第3のプラスミドとで細胞株がトランスフェクトされる、三重トランスフェクション(triple transfection)を用いて産生される。キャプシドに包まれたゲノム(目的のITR及び介在遺伝子)を含むウイルス粒子は、その後、凍結融解サイクル、超音波処理、界面活性剤、又は当該技術分野で公知の他の手段によって細胞から単離される。次いで、塩化セシウム密度勾配遠心分離又は親和性クロマトグラフィーを用いて粒子を精製し、続いて細胞、組織、又はヒト患者等の生物の目的の遺伝子に送達する。
【0195】
組換えAAV粒子は、典型的には細胞中に産生(製造)させるため、部位特異的メガヌクレアーゼがパッケージング細胞中で発現しないことを確実にするように、本発明を実施する際に注意を払わなければならない。本発明のウイルスゲノムは、メガヌクレアーゼの
認識配列を含むため、パッケージング細胞株で発現する任意のメガヌクレアーゼは、ウイルスゲノムがウイルス粒子にパッケージングされる前にウイルスゲノムを切断することができる。このことは、パッケージング効率の低下及び/又は断片化したゲノムのパッケージングをもたらす。以下を含むいくつかのアプローチを使用して、パッケージング細胞におけるメガヌクレアーゼ発現を防止することができる。
1.メガヌクレアーゼを、パッケージング細胞において活性ではない組織特異的プロモーターの制御下に置くことができる。例えば、筋組織にメガヌクレアーゼ遺伝子を送達するためにウイルスベクターを開発する場合、筋特異的プロモーターを使用することができる。筋特異的プロモーターの例としては、C5-12(Liu et al.(2004),Hum Gene Ther.15:783-92)、筋特異的クレアチンキナーゼ(MCK)プロモーター(Yuasa、et al.(2002),Gene Ther.9:1576-88)、又は平滑筋22(SM22)プロモーター(Haase et
al.(2013),BMC Biotechnol.13:49-54)が挙げられる。CNS(ニューロン)特異的プロモーターの例としては、NSE、シナプシン、及びMeCP2プロモーターが挙げられる(Lentz et al.(2012),Neurobiol Dis.48:179-88)。肝臓特異的プロモーターの例としては、アルブミンプロモーター(Palb等)、ヒトα1-抗トリプシン(Pa1AT等)、及びヘモペキシン(Phpx等)が挙げられる(Kramer et al.(2003),Mol.Therapy 7:375-85)。眼特異的プロモーターの例としては、オプシン、及び角膜上皮特異的K12プロモーターが挙げられる(Martin et al.(2002),Methods(28):267-75)(Tong et al.(2007),J Gene Med、9:956-66)。これらのプロモーター又は当該技術分野で公知の他の組織特異的プロモーターは、HEK-293細胞において高度に活性ではなく、従って、本発明のウイルスベクターに組み込まれた場合に、パッケージング細胞において有意なレベルのメガヌクレアーゼ遺伝子発現を生じることは期待されない。同様に、本発明のウイルスベクターは、不適合組織特異的プロモーター(即ち、周知のHeLa細胞株(ヒト上皮細胞)及び肝臓特異的ヘモペキシンプロモーターを用いる)の使用と共に他の細胞株を使用することを企図している。組織特異的プロモーターの他の例としては、滑膜肉腫PDZD4(小脳)、C6(肝臓)、ASB5(筋肉)、PPP1R12B(心臓)、SLC5A12(腎臓)、コレステロール調節APOM(肝臓)、ADPRHL1(心臓)、及び一遺伝子性奇形症候群TP73L(筋肉)が挙げられる(Jacox E et al.(2010),PLoS One 5(8):e12274)。
2.別の方法として、ベクターは、メガヌクレアーゼが発現されにくい異なる種に由来する細胞にパッケージングすることができる。例えば、ウイルス粒子は、非哺乳動物パッケージング細胞において活性ではない、周知のサイトメガロウイルス初期プロモーター又はSV40ウイルス初期プロモーター等の哺乳動物プロモーターを用いて、微生物、昆虫、又は植物細胞中に産生させることができる。好ましい実施形態では、Gaoらによって記載されているようなバキュロウイルス系を用いてウイルス粒子を昆虫細胞中に産生させる(Gao et al.(2007),J.Biotechnol.131(2):138-43)。哺乳動物プロモーターの制御下にあるメガヌクレアーゼは、これらの細胞中で発現する可能性は低い(Airenne et al.(2013),Mol.Ther.21(4):739-49)。更に、昆虫細胞は、哺乳動物細胞とは異なるmRNAスプライシングモチーフを利用する。したがって、ヒト成長ホルモン(HGH)イントロン又はSV40ラージT抗原イントロン等の哺乳動物イントロンをメガヌクレアーゼのコード配列に組み込むことが可能である。これらのイントロンは昆虫細胞のプレmRNA転写物から効率的にスプライシングされないため、昆虫細胞は機能的メガヌクレアーゼを発現せず、全長ゲノムをパッケージングする。対照的に、得られた組換えAAV粒子が送達される哺乳動物細胞は、プレmRNAを適切にスプライシングし、機能的メガヌクレアーゼタンパク質を発現する。Haifeng Chenは、HGH及びSV40ラージT
抗原イントロンを使用して、昆虫パッケージング細胞中の毒性タンパク質バルナーゼ及びジフテリア毒素断片Aの発現を減弱させ、これらの毒素遺伝子を担持する組換えAAVベクターの産生を可能にすることを報告した(Chen(2012),Mol Ther Nucleic Acids.1(11):e57)。
3.メガヌクレアーゼ遺伝子は、メガヌクレアーゼ発現のために小分子誘導物質が必要とされるように、誘導性プロモーターに作動可能に連結され得る。誘導性プロモーターの例としては、Tet-Onシステム(Clontech;Chen et al.(2015),BMC Biotechnol.15(1):4))及びRheoSwitchシステム(Intrexon;Sowa et al.(2011),Spine 36(10):E623-8)が挙げられる。両方のシステム及び当該技術分野で公知の類似のシステムは、小分子アクチベーター(それぞれドキシサイクリン又はエクジソン)に応答して転写を活性化するリガンド誘導性転写因子(それぞれTetリプレッサー及びエクジソン受容体の変異体)に依存する。このようなリガンド誘導性転写アクチベーターを用いて本発明を実施することは、1)対応する転写因子に応答するプロモーターの制御下にメガヌクレアーゼ遺伝子を配置することであって、メガヌクレアーゼ遺伝子が(a)転写因子の結合部位を有することと、2)パッケージングされたウイルスゲノム中の転写因子をコードする遺伝子を含むこととを含む。転写アクチベーターが同じ細胞にも供給されない場合、組換えAAV送達後に標的細胞又は組織中にメガヌクレアーゼが発現しないため、後者のステップが必要である。次いで、転写アクチベーターは、コグネイト小分子アクチベーターで処理された細胞又は組織中にのみメガヌクレアーゼ遺伝子発現を誘導する。このアプローチは、小分子誘導因子がいつ、どの組織に送達されるかを選択することによって、メガヌクレアーゼ遺伝子発現を空間時間的に調節することができるため有利である。しかしながら、担持能力が著しく制限されたウイルスゲノムに誘導因子を含める必要性は、このアプローチの欠点を作り出す。
4.別の好ましい実施形態では、組換えAAV粒子は、メガヌクレアーゼの発現を妨げる転写リプレッサーを発現する哺乳動物細胞株に産生される。転写リプレッサーは当該技術分野で公知であり、Tetリプレッサー、Lacリプレッサー、Croリプレッサー、及びLambdaリプレッサーが挙げられる。エクジソン受容体等の多くの核内ホルモン受容体は、それらのコグネイトのホルモンリガンドの非存在下で転写リプレッサーとしても作用する。本発明を実施するために、パッケージング細胞は、転写リプレッサーをコードするベクターでトランスフェクション/形質導入され、ウイルスゲノム中のメガヌクレアーゼ遺伝子(パッケージングベクター)は、プロモーターに作動可能に結合され、このプロモーターは、リプレッサーがプロモーターをサイレンシングするように、リプレッサーのための結合部位を含むように改変されている。転写リプレッサーをコードする遺伝子は、種々の位置に配置することができる。この遺伝子は、別のベクターにコードすることができ、ITR配列の外側のパッケージングベクターに組み込むことができ、cap/repベクター又はアデノウイルスヘルパーベクターに組み込むことができ、又は最も好ましくは、構成的に発現されるようにパッケージング細胞のゲノムに安定的に組み込むことができる。転写リプレッサー部位を組み込むために一般的な哺乳動物プロモーターを改変する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Chang and Roninsonは、強力な構成的CMV及びRSVプロモーターをLacリプレッサーのオペレーターを含むように改変し、改変プロモーターからの遺伝子発現がリプレッサーを発現する細胞で大きく減弱したことを示した(Chang及びRoninson(1996),Gene 183:137-42)。非ヒト転写リプレッサーの使用は、メガヌクレアーゼ遺伝子の転写が、リプレッサーを発現するパッケージング細胞においてのみ抑制され、得られる組換えAAVベクターで形質導入される標的細胞又は組織においては抑制されないことを確実にする。
【0196】
2.6 操作されたメガヌクレアーゼ変異体
本発明の実施形態は、本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼ及びその変異体を
包含する。本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載のメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド及びそのようなポリヌクレオチドの変異体を包含する。
【0197】
本明細書で使用する場合、「変異体」は、実質的に類似の配列を意味することを意図する。「変異体」ポリペプチドは、天然のタンパク質の1若しくは複数の内部部位における1個若しくは複数個のアミノ酸の欠失若しくは付加、及び/又は天然のポリペプチドの1若しくは複数の部位における1個以上のアミノ酸の置換によって、「天然の」ポリペプチド由来のポリペプチドを意味することを意図する。本明細書で使用する場合、「天然の」ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、変異体が由来する親配列を含む。実施形態によって包含される変異体ポリペプチドは生物学的に活性である。即ち、それらは天然のタンパク質の所望の生物学的活性、即ち、例えば、PCS7-8認識配列(配列番号4)を含む、PCSK9遺伝子の認識配列を認識し切断する能力を保持し続けている。そのような変異体は、例えばヒトの操作から生じ得る。実施形態の天然のポリペプチドの生物学的に活性な変異体(例えば、配列番号6~14)、又は本明細書に記載のサブユニットを結合する認識ハーフサイトの生物学的に活性な変異体は、本明細書の他の箇所に記載されている配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定されるように、天然のポリペプチド又は天然のサブユニットのアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を有する。実施形態のポリペプチド又はサブユニットの生物学的に活性な変異体は、そのポリペプチド又はサブユニットと、わずか約1~40個のアミノ酸残基、わずか約1~20個、わずか約1~10個、わずか約5、わずか4、3、2個、又は更には1個のアミノ酸残基だけが異なっていてもよい。
【0198】
実施形態のポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法で変化させることができる。そのような操作のための方法は、当該技術分野において一般的に公知である。例えば、アミノ酸配列変異体は、DNA中の突然変異によって調製することができる。突然変異誘発及びポリヌクレオチド変更の方法は、当該技術分野において周知である。例えば、Kunkel(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488-492;Kunkel et al.(1987),Methods in Enzymol.154:367-382;米国特許第4,873,192号;Walker and Gaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)及びそれらに引用されている参考文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、参照により本明細書に組み込まれているDayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)に記載されているだろう。あるアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸と交換する等の保存的置換が最適であり得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、本明細書に開示のHVR1領域及びHVR2領域の変異を含むことができる。親HVR領域は、例えば例示された操作されたメガヌクレアーゼの残基24~79又は残基215~270を含むことができる。従って、変異HVR領域が操作されたメガヌクレアーゼの生物活性(即ち、認識配列に結合し切断する)を維持するように、本明細書で例示された操作されたメガヌクレアーゼの残基24~79又は残基215~270に対応するアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。更に、本発明のいくつかの実施
形態では、変異HVR1領域又は変異HVR2領域は、親HVR内の特定の位置で見出されるアミノ酸残に対応する残基を含むことができる。本文脈中、「対応する」とは、変異HVRのアミノ酸残基が、同じ相対位置で(即ち、親配列の残りのアミノ酸に対して)親HVR配列中に存在する同じアミノ酸残基(即ち、別個の同一残基)であることを意味する。例として、親HVR配列が位置26にセリン残基を含む場合、残基26「に対応する残基を含む」変異HVRは、親位置26に相対的な位置にもセリンを含む。
【0200】
野生型I-CreIメガヌクレアーゼのDNA認識ドメインに対するかなりの数のアミノ酸修飾が以前に同定されており(例えば、米国特許第8,021,867号)、これは単独で又は組み合わせて、DNA認識配列ハーフサイト内の個々の塩基において特異性が変更された組換えメガヌクレアーゼを生じることで、得られる合理的に設計されたメガヌクレアーゼは、野生型酵素とは異なるハーフサイト特異性を有するようになる。表2は、認識ハーフサイトの各ハーフサイト位置(-1~-9)に存在する塩基に基づいて、特異性を増強するために操作されたメガヌクレアーゼモノマー又はサブユニットにてなされ得る潜在的置換を提供する。
【0201】
【表2】
【0202】
太字の項目は野生型の接触残基であり、本明細書で使用される「改変」を構成しない。星印は、残基がアンチセンス鎖上の塩基と接触することを示す。
【0203】
ポリヌクレオチドについて、「変異体」は、天然のポリヌクレオチド内の1又は複数の部位で1又は複数のヌクレオチドの欠失及び/又は付加を含む。当業者は、実施形態の核酸の変異体が、オープンリーディングフレームが維持されるように構築されることを認識するであろう。ポリヌクレオチドの場合、保存的変異体には、遺伝コードの縮重故に、実施形態のポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。変異体ポリヌクレオチドとしては、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて生成されるが、実施形態の操作されたメガヌクレアーゼを依然としてコードするような、合成由来のポリヌクレオチドが挙げられる。一般に、実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体は、本明細書の他の箇所に記載されている配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定されるように、その特定のポリペプチドに対して少なくとも約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上の配列同一性を有する。実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体(即ち、参照ポリヌクレオチド)は、変異体ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドと参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとの間の配列同一性割合を比較することによって評価することもできる。
【0204】
本明細書に包含されるタンパク質配列の欠失、挿入、及び置換は、ポリペプチドの特徴において根本的な変化を生じることは期待されない。しかし、置換、欠失、又は挿入の正確な効果をそれに先立って予測することが困難な場合、当業者は、ヒトPCSK9遺伝子内の認識配列を優先的に認識し切断する能力についてポリペプチドをスクリーニングすることによって、その効果が評価されることを理解するであろう。
【実施例
【0205】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、日常的な実験を用いて、本明細書に記載の特定の物質及び手順に対する多数の等価物を認識し、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の実施例に従う特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0206】
実施例1
PCSK9認識配列を認識し切断するメガヌクレアーゼの特性評価
1.PCS7-8認識配列を認識し切断するメガヌクレアーゼ
本明細書で「PCS7-8メガヌクレアーゼ」と集合的に呼ばれる操作されたメガヌクレアーゼ(配列番号6~14)は、PCS1-2認識配列(配列番号4)を認識し切断するように操作され、PCS1-2認識配列(配列番号4)は、PCSK9遺伝子内に位置する。操作されたPCS7-8メガヌクレアーゼの各々は、SV40に由来するN末端ヌクレアーゼ局在化シグナルと、第1のメガヌクレアーゼサブユニットと、リンカー配列と、第2のメガヌクレアーゼサブユニットとを含む。各PCS7-8メガヌクレアーゼの第1のサブユニットは配列番号4のPCS7認識ハーフサイトに結合し、第2のサブユニットはPCS8認識ハーフサイトに結合する(図2参照)。
【0207】
PCS7結合サブユニット及びPCS8結合サブユニットは、それぞれHVR1及びHVR2と呼ばれる56塩基対の超可変領域を含む。PCS7結合サブユニットは、HVR1領域の外側で高度に保存されている。同様に、PCS8結合サブユニットも、HVR2領域の外側で高度に保存されている。配列番号6~14のPCS7結合領域は、それぞれ配列番号15~23として提供される。配列番号15~23の各々は、メガヌクレアーゼ
PCS7-8L.197(配列番号6)のPCS7結合領域である配列番号15と少なくとも90%の配列同一性を共有する。配列番号6~14のPCS8結合領域は、それぞれ配列番号24~32として提供される。配列番号24~32の各々は、メガヌクレアーゼPCS7-8L.197(配列番号6)のPCS8結合領域である配列番号24と少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0208】
2.CHO細胞レポーターアッセイにおけるPCSK9認識配列の切断
PCS7-8メガヌクレアーゼがその対応する認識配列(配列番号4)を認識し切断できるかどうかを決定するために、先に記載されたCHO細胞レポーターアッセイを用いて各操作されたメガヌクレアーゼを評価した(国際公開第2012/167192号及び図3を参照)。アッセイを行うために、細胞のゲノムに組み込まれた非機能的緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子発現カセットを担持するCHO細胞レポーター株を産生させた。各細胞株のGFP遺伝子は、メガヌクレアーゼによるいずれかの認識配列の細胞内切断が機能的GFP遺伝子をもたらす相同組換え事象を刺激するように、一対の認識配列によって割り込まれた。
【0209】
この研究のために開発したCHOレポーター細胞株において、GFP遺伝子に挿入された1つの認識配列は、PCS7-8認識配列(配列番号4)であった。GFP遺伝子に挿入された第2の認識配列は、「CHO-23/24」と呼ばれる対照メガヌクレアーゼによって認識され切断されるCHO-23/24認識配列であった。PCS7-8認識配列及びCHO-23/24認識配列を含むCHOレポーター細胞を「PCS7-8細胞」と呼ぶ。
【0210】
CHOレポーター細胞を、その対応する操作されたメガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAでトランスフェクトするか(例えば、PCS7-8細胞を、PCS7-8メガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAでトランスフェクトした)、又はCHO-23/34メガヌクレアーゼをコードするプラスミドでトランスフェクトした。各アッセイにおいて、4e CHOレポーター細胞を、製造者の指示に従ってLipofectamine 2000(ThermoFisher)を用いて96ウェルプレートにて50ngのプラスミドDNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、細胞をフローサイトメトリーによって評価し、トランスフェクトされていない陰性対照(PCS bs)と比較したGFP陽性細胞の割合を決定した。図4A図4Cに示すように、全PCS7-8メガヌクレアーゼは、対応する認識配列を含む細胞株において陰性対照を有意に超える頻度でGFP陽性細胞を産生することが見出された。
【0211】
CHOレポーター細胞にメガヌクレアーゼを導入した後、PCS7-8メガヌクレアーゼの有効性も時間依存的に測定した。この研究では、製造者の指示に従ってBioRad
Gene Pulser Xcellを使用して、PCS7-8細胞(1.0×10個)に、細胞ごとに1×10コピーのメガヌクレアーゼmRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクション後の指定された時点で、細胞をフローサイトメトリーによって評価し、GFP陽性細胞の割合を決定した。CHO-23/24メガヌクレアーゼも、陽性対照として各時点で含めた。
【0212】
図5A図5Cに示すように、異なるPCS7-8メガヌクレアーゼによって産生された%GFPは、各研究の時間経過にわたって比較的一貫しており、細胞における持続的な切断活性及び実質的な毒性の欠如を示している。
【0213】
3.結論
これらの研究は、本発明に包含されるPCS7-8メガヌクレアーゼが、細胞中の対応する認識配列を効率的に標的とし切断できることと、この効果は時間経過にわたって一貫
していることと、ヌクレアーゼは細胞に対して非毒性であることとを実証した。
【0214】
実施例2
HEK293細胞におけるPCS7-8認識配列の切断
1.実験プロトコル及びT7Eアッセイ
この研究は、本発明に包含されるPCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞におけるPCS7-8認識配列を切断できることを実証した。
【0215】
2e 293細胞に、製造者の指示に従ってBioRad Gene Pulser
Xcellを使用して、2.7ugの所与のPCSメガヌクレアーゼmRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクションの2日後及び5日後に、ゲノムDNA(gDNA)を細胞から回収し、T7エンドヌクレアーゼI(T7E)アッセイを行って内因性PCS7-8認識配列における遺伝子改変を評価した(図6)。T7Eアッセイでは、PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に隣接するプライマーを用いたPCRによって増幅された。PCS7-8座内にindel(無秩序な挿入又は欠失)があった場合、得られるPCR産物は野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子の混合物からなる。PCR産物は変性され、ゆっくりとリアニールされ得る。ゆっくりとしたリアニールにより、野生型及び突然変異対立遺伝子からなるヘテロ二本鎖が形成され、ミスマッチ塩基及び/又はバルジが生じる。T7E1酵素はミスマッチ部位で切断され、ゲル電気泳動により可視化され得る切断産物が生じる。
【0216】
2.結果
トランスフェクションの2日後及び5日後に、低分子量DNA断片がPCS7-8x.66及びPCS7-8x.88を受け取った細胞で観察されたが、GFP対照のみをコードするmRNAで模擬トランスフェクト又はトランスフェクトされた細胞は、全長PCR産物を示した(図6)。これらの低分子量DNA断片は、PCS認識部位でのメガヌクレアーゼの活性により起こるミスマッチDNAにおけるT7エンドヌクレアーゼI切断によって産生される。
【0217】
3.結論
T7エンドヌクレアーゼIアッセイは、PCS7-8メガヌクレアーゼで処理されたHEK293細胞内のPCS7-8メガヌクレアーゼ認識部位周辺におけるindelの存在を検出し、標的部位の切断及び非相同末端結合(NHEJ)により当該部位の誤りがちな修復を示す。
【0218】
実施例3
PCS7-8認識配列におけるindelを観察するためのディープシーケンシング
1.ディープシーケンシングプロトコル
目的のPCS7-8メガヌクレアーゼ標的部位における挿入又は欠失を直接観察するために、ディープシーケンシングプロトコルを用いた。2e HEK293細胞に、製造者の指示に従ってBioRad Gene Pulser Xcellを使用して、5ugのPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAをエレクトロポレーションした。模擬エレクトロポレーションはmRNAなしでも行った。トランスフェクションの48時間後、ゲノムDNA(gDNA)を細胞から回収した。PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に隣接するプライマーを用いたPCRによって増幅された。このアンプリコンは、目視による確認のためにアガロースゲルで行い、Macherey-Nagel社製Nucleospin Gel and PCR Clean-upキットを用いて抽出し、New England Biolabs社製のIllumina用NEBNext Ultra
II DNA Library Kitを使用してシーケンシングライブラリーを調製した。ペアエンドシーケンシングライブラリーは、Illumina社製Miseq D
NAシーケンサで読み取った。シーケンスシングデータはカスタムスクリプトを用いて分析した。全長アンプリコンの25bp内にない始点又は終点を含むリードは除いた。indelを含むリードの割合は、認識配列の中間8bpのうちの少なくとも1つを組み込んだindelを持つ全長リードの数を全長リードの総数で除して計算した。
【0219】
2.結果
表3に示すように、ディープシーケンシングにより評価されたPCS7-8メガヌクレアーゼの各々は、模擬処理と比較して、その目的の認識部位におけるindelの割合の少なくとも100倍の増加を示した。
【0220】
【表3】
【0221】
3.結論
これらの実験は、本発明のPCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞内のその目的とする標的部位(即ち、PCS7-8認識配列)を切断し、非相同末端結合による誤りがちな修復を介したindelの出現を誘導する能力をはっきりと実証している。
【0222】
実施例4
PCS7-8メガヌクレアーゼを用いた霊長類肝臓のインビボ遺伝子編集
1.方法及び材料
実験を行って、PCS7-8メガヌクレアーゼが非ヒト霊長類モデルの肝臓細胞をインビボでPCS7-8認識部位編集する能力を評価し、被験体のPCSK9の血清レベルに対するそのような編集の効果を決定した。
【0223】
PCS7-8x.88メガヌクレアーゼは組換えAAVベクターを介して導入された。AAVベクターはAAV8キャプシドを有し、5’から3’へ、5’逆方向末端反復、肝臓特異的ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、イントロン、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼのコード配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント、及び3’逆方向末端反復を含んでいた。このベクターをAAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHと呼ぶ。
【0224】
AAVベクターは、医薬組成物で調製され、0日目に各々の体重が約6.5kgの4匹の異なるアカゲザルに単回注入として投与した。動物(オス)RA1866は、3×1013GC/kgの単回用量を受けたが、これはこれらの研究において評価される最高用量を表す。動物RA1857(オス)は、6×1012ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量を受けた。動物RA1829(メス)動物RA2334(オス)はそれぞれ、2×1012ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量を受けた。血液サンプルは、ELISAに
よる血清PCSK9タンパク質レベルの分析、総コレステロール、HDL、LDL、及びトリグリセリドの分析、並びにアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの分析のために、-3日目及び0日目、並びに投与後168日間(低用量動物)又は280日間(高用量及び中用量動物)の間に複数の時点で採取した。加えて、PCS7-8認識配列における挿入及び欠失(indel)のPCR分析、並びにインサイチューハイブリッド形成(ISH)による肝細胞におけるPCS7-8x.88メガヌクレアーゼ発現の分析のために、肝生検サンプルを投与後17日目に得た。
【0225】
2.血清PCSK9タンパク質レベルの変化
血清PCSK9タンパク質レベルは、-3日目、0日目、及びAAVベクターの投与後の複数の時点にてELISAにより測定した。高用量及び中用量動物は、投与後280日間追跡調査したが、低用量動物は168日間追跡調査された。
【0226】
図7に示すように、0日目でのメガヌクレアーゼAAVの単回投与は、7日目までに被験体RA1866、RA1857、及びRA1829において、14日目までには全群において血清PCSK9レベルの劇的な用量依存性の増加を引き起こした。高用量の3×1013GC/kgを受けた被験体RA1866は、7日目までに約84%の減少、20日目までには約91%の減少を示した。6×1012GC/kgの用量を受けた被験体RA1857は、7日目までに約46%の減少、20日目までには約77%の減少を示した。2×1012GC/kgを受けた被験体RA1829は、7日目までに約35%の減少、20日目までには約70%の減少を示した。更に2×1012GC/kgを受けた被験体RA2334は、14日目までに約35%の減少を示したが、20日目までにはベースライン付近へ戻り、ここでは約10%の減少が観察された。
【0227】
更なる時点を評価して、研究の全期間を通じてタンパク質阻害の一貫性を評価した。血清PCSK9レベルの用量依存性の減少は、測定した最終時点を通じて引き続き観察された。両方の低用量動物(RA1829及びRA2334)において、約25%の減少が168日目にも引き続き観察された。中用量動物(RA1857)において、約50%の減少が280日目にも引き続き観察された。高用量動物(RA1866)において、約85%の減少が280日目にも引き続き観察された。全体的に見て、観察期間を通じた血清PCSK9レベルの減少は用量依存性であると思われ、減少は各被験体について研究終了まで持続した。
【0228】
3.血清コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルの変化
血清コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルに対するPCS7-8メガヌクレアーゼ治療の効果は、-3日目、0日目、及びAAVベクターの投与後の複数の時点にも測定した。
【0229】
重要なことには、総LDLレベルは、PCS7-8メガヌクレアーゼを用いた治療により全4匹の動物において減少した(図8A)。全4匹の動物は、20日目までに血清LDLのかなりの減少を示し、減少は用量依存的に研究の期間全体を通じて持続した。動物RA2334は、168日目まで約25%の減少を示し、もう一方の低用量動物RA1829は同じ時点で約35%のより大きな減少を示した。動物RA1857(中用量)及びRA1866(高用量)はそれぞれ、研究268日目に測定したときに約70%の減少を示した。
【0230】
とりわけ、LDLレベルの一時的な増加が各動物において研究28日目及び42日目に観察された。これは、同じ時点で観察されたALTレベルの変化と一致し(図9)、メガヌクレアーゼ又はベクターキャプシドに対するT細胞の活性から生じたものであり得る。
【0231】
図8B図8Eにおいて、各動物についての研究期間中の総コレステロール、HDL、LDL、及びトリグリセリドの変化を示す。示されているように、総コレステロールレベルは、高用量動物(RA1866)及び中用量動物(RA1857)では明らかに減少したが、低用量動物ではより穏やかな効果が観察された。HDLも高用量の動物ではいくらか減少したが、他の3匹においては比較的安定している。各動物についてトリグリセリドレベルの一時的な変化が研究期間中に観察されたが、測定した最後の時点ではほぼベースラインレベルのままであった。
【0232】
4.メガヌクレアーゼ発現及び肝細胞のインビボ遺伝子編集
17日目に肝生検を行い、PCS7-8認識配列における挿入又は欠失(indel)の存在について検査した。indelは、認識配列に隣接するPCRプライマー、ゲノムの介在領域の増幅、及び得られたPCR産物のシーケンシングにより検出した。種々のindel、即ち、異なった長さの挿入及び欠失の両方がPCS7-8認識配列にて種々の頻度で検出された。図10は、被験体RA1857及びRA1866において最も頻繁に観察された8つのindelとその対応する頻度を示す。これら8つのindelは、被験体RA1857で観察されるindelの73%、被験体RA1866で観察されるindelの66%を占めていた。
【0233】
PCS7-8x.88メガヌクレアーゼは肝細胞にてインビボで実際に発現されたかを確認するために、17日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)で検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8x.88 mRNAに結合する。対照として別の被験体M11657由来の生検細胞の模擬処理をオリゴプローブなしで行った。図11に示すように、模擬処理細胞では蛍光シグナルは観察されなかった(図11A)。しかし、治療済みの被験体の肝細胞(図11B図11E)では17日目にかなりの蛍光が観察された。従って、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼmRNAは、indel形成が観察され、血清PCSK9及び血清脂質の減少が検出された早い時点で治療済みの被験体においては強く発現されたことが明らかである。図11は、メガヌクレアーゼmRNAの発現が、2回目の肝生検材料を得た研究の129日目では観察されなくなったことを更に示す。
【0234】
5.PCS7-8L.197メガヌクレアーゼを用いた治療
更なる研究を行って、最適化された第2世代PCS7-8L.197メガヌクレアーゼの有効性を決定した。研究プロトコルは前述したものと同様であった。PCS7-8L.197メガヌクレアーゼは組換えAAVベクターを介して導入された。AAVベクターはAAV8キャプシドを有し、5’から3’へ、5’逆方向末端反復、肝臓特異的ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、イントロン、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼのコード配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント、及び3’逆方向末端反復を含んでいた。AAVベクターは、医薬組成物で調製され、0日目に各々の体重が約6.5kgの1匹のオスと1匹のメスのアカゲザルに6×1012ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量で単回注入として投与した。初期の血液サンプルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析及び総LDLレベルの分析のために、0日目及び投与後7日目に採取した。
【0235】
図12に示すように、PCSK9血清レベルは、研究7日目までに両被験体において急速かつ劇的に減少した。被験体RA2125では、PCSK9レベルは0日目の約180ng/mLから7日目の約55ng/mLに減少した(約70%の減少)。被験体RA2343では、PCSK9レベルは0日目の約245ng/mLから7日目の約125ng/mLに減少した(約49%の減少)。PCSK9レベルの減少は、メガヌクレアーゼAAVの投与後182日目まで持続し、各被験体は約60%の減少を示し続けた。
【0236】
図13Aは、血清PCSK9レベルの減少が、治療の7日以内に血清LDLレベルのかなり減少を伴ったことを示す。被験体RA2125では、血清LDLレベルは、0日目の約40mg/dLから7日目の約25mg/dLに減少した(約38%の減少)。被験体RA2343では、血清LDLレベルは0日目の約75mg/dLから7日目の約55mg/dLに減少した(約27%の減少)。血清LDLレベルは引き続き21日目から28日目まで減少し続け、ベースラインと比較して約65%減少した。血清LDLの減少は、研究168日目まで持続し、その時点では被験体RA2125及びRA2343はそれぞれ約35%及び50%の大幅に安定した減少を示した。
【0237】
図13B及び図13Cにおいて、各動物についての研究期間中の総コレステロール、HDL、LDL、及びトリグリセリドの変化を示す。示されているように、総コレステロールレベルは、各被験体において研究期間を通じて穏やかに減少したが、被験体RA2343ではより穏やかな減少であった。HDLレベル及びトリグリセリドレベルは、各被験体において研究期間を通じて本質的に変化していない。PCS7-8x.88 AAVの投与と同様に、28日目から42日目までの間に被験体RA2125では血清脂質の一時的な増加が観察され、これはALTの上昇と一致し(図14)、メガヌクレアーゼ又はAAVキャプシドに応答したT細胞活性化に起因し得る。
【0238】
PCS7-8L.197メガヌクレアーゼが肝細胞にてインビボで発現されたことを確認するために、18日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)で検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8L.197 mRNAに結合する。図15に示すように、治療済みの被験体の肝細胞では18日目にかなりの蛍光が観察された。従って、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼmRNAは、血清PCSK9及び血清脂質の減少が検出された早い時点で治療済みの被験体において強く発現されたことが明らかである。図15は、メガヌクレアーゼmRNAの発現が、2回目の肝生検材料を得た研究の128日目では観察されなくなったことを更に示す。
【0239】
6.オンターゲットゲノム編集の分子評価
肝生検サンプルから単離したDNAを、アンカードマルチプレックスPCRシーケンシング(AMP-seq)により生じたアンプリコンのディープシーケンシングによる指定したrhPCSK9エキソン7標的部位でのオンターゲット編集のために特性決定した。AMPアンプリコンは、入れ子状の遺伝子座特異的プライマーを用いて産生されるが、フォワードプライマーは、標的とされるメガヌクレアーゼ切断部位の50bp上流の固定位置にハイブリダイズし、アンプリコンの3’末端は、増幅前のゲノムDNAのランダムシェアリング後にDNA断片の長さによって画定される。
【0240】
全ての肝臓サンプルにおいて、AMPシーケンシングによって観察される短い挿入及び欠失の頻度は、陰性対照(即ち、ナイーブ動物由来のPBMCサンプル)で観察されるよりも高いことが見出された(図16)。PCS7-8x.88メガヌクレアーゼについては、129日目にAMP-seqによって検出されたindelの頻度は、高用量で46%であり、低用量では用量に比例して13%(平均、n=2)に減少した。AAV8血清型及びTBGプロモーターの使用により初代肝実質細胞のみが選択的に編集されることを考慮すると、AMP-seqは、未編集の混入非実質細胞が肝生検サンプル中に存在するため、オンターゲットゲノム編集の合計頻度を少なく見積もりすぎる可能性が高い。編集事象の総数は、2つの時点(即ち、17日目及び129日目)の間で、増加した高用量を除いて全ての動物で僅かに減少した。挿入の総数は各サンプルの欠失の総数を超えたが、時間の経過に応じて程度は変化した。欠失の頻度は、高用量動物と中用量動物の両方で経時的に増加し、低用量動物では経時的に減少することが判明したが、分析される各サンプ
ルについて、挿入は経時的に一貫して減少した。PCS7-8L.197 AAVで治療された被験体から得たサンプルの同様のオンターゲット分子分析は、中用量のAAVを受けた被験体RA1857で観察されたようなindelのスペクトル及び頻度を示した。
【0241】
7.結論
これらの研究から、ISHで観察されるように、PCS7-8メガヌクレアーゼは霊長類肝細胞においてインビボで首尾良く発現され、その後、PCS7-8認識配列に切断部位を生ずることが明らかになった。切断部位における誤りがちな非相同末端結合は、その後、当該部位のPCR分析及びAMP-seq分析で観察されるように多数のindelを生じさせ、これにより、ELISAで観察されるようにPCSK9タンパク質発現を阻害する。これらの研究は、本発明者らに公知の霊長類肝臓における遺伝子編集の最初の報告された観察である。更に、これは霊長類におけるPCSK9遺伝子の遺伝子編集の最初の観察であり、これは血清PCSK9タンパク質レベル、血清LDLレベル、及び総コレステロールレベルのかなりの持続的な減少を伴った。本発明者らは、これらの実験で投与されたAAVの用量が比較的多いことを認め、有効性及び安全性プロファイルの両方を決定するために、追加のPCS7-8メガヌクレアーゼを用いた更なる実験を大幅に少ない用量で実施する。総コレステロールレベル、血清LDLレベル、及び肝細胞LDLレベルの更なる分析も、コレステロールを減少させるこの方法の前臨床検証のために実施する。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
【配列表】
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