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  • 特許-加熱炉の空気量制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】加熱炉の空気量制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/18 20060101AFI20230124BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
F23N5/18 101
F23N5/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019036354
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139698
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】泊 圭一郎
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-60588(JP,A)
【文献】特開2004-43912(JP,A)
【文献】特開昭58-117831(JP,A)
【文献】特開昭55-131625(JP,A)
【文献】特開昭55-33529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/18
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳片を所定の温度に加熱するガスバーナが備えられたゾーンを連接状に複数備えた加熱炉において、
前記複数のゾーンのそれぞれに対してガスバーナに接続された空気ライン以外から当該ゾーン内に侵入する侵入空気量を算出し、算出した侵入空気量に応じて前記ガスバーナに接続された空気ラインからガスバーナへ供給するバーナ空気流量を制御するものであって、
炉内酸素濃度、前記ガスバーナの燃料流量、前記バーナ空気流量及び炉内温度に基づいて、炉内各ガス濃度の非定常変化および下流への移流を考慮した質量保存式を用いて、前記侵入空気量を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱炉の空気量制御方法。
【請求項2】
前記侵入空気量を独立変数とする目標バーナ空気比を演算する関数を用いて、前記バーナ空気流量を制御する
ことを特徴とする請求項に記載の加熱炉の空気量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉に設置されたバーナに供給するバーナ空気流量を適正に制御する方法に関するものである。特に、本発明は、加熱炉に対して正規の供給経路以外から侵入する侵入空気量を算出し、算出した侵入空気量に基づいてバーナを適正に燃焼させる加熱炉の空気量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所において製造されるスラブなどの鋳片に関しては、直火式の加熱炉を用いて、当該鋳片を所定温度まで加熱する場合がある。このような加熱炉では、一般的に、加熱炉内を加熱するためのバーナについて、空気比を一定にするような制御が行われている。ここで、空気比とは、理論上で完全燃焼させるために必要な最小の空気量を「理論空気量」とした場合、この理論空気量に対して実際に供給する空気の比率のことである。このような空気比という考え方が用いられるのは、加熱炉においては正規の供給経路以外からも侵入空気が炉内に入り込む場合があることに起因する。
【0003】
例えば、上述した加熱炉の炉内に定常的に炉外からの侵入空気が存在している場合であっても、バーナの燃焼負荷が大きければ侵入空気の影響は小さくなる。しかし、バーナの燃焼負荷が小さい場合には、バーナの燃焼に及ぼす侵入空気の影響が大きくなり、バーナの空気比が変化して結果として炉内酸素濃度が高くなってしまう。このように炉内酸素濃度が高くなると発生NO量が増加したり、逆に炉内空気量不足により未燃ガス濃度が増加したりするという問題を招く。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献1や特許文献2の技術が提案されている。
まず、特許文献1は、少なくとも二つの燃焼制御帯に蓄熱式切替燃焼バーナを有し、前記燃焼制御帯の排ガス誘引系に排ガス中の酸素濃度を検出する検出器を備えた、連続熱間圧延用鋼材を所定の温度に加熱する連続多帯式のウォーキングビームを用いた連続鋼材加熱炉であって、前記蓄熱式切替燃焼バーナを有する燃焼制御帯毎の誘引排ガスヘッダ管に酸素濃度を検出する前記酸素濃度検出器と、当該検出器の検出値に基づいて炉内の空気比を制御する制御手段を設置する連続鋼材加熱炉を開示している。この技術では、炉内酸素濃度、燃料流量および燃料空気量から空気比操作量を算出し、設定空気比との偏差を解消するように燃料空気量を操作することで、空気比を制御しNO発生を抑制している。
【0005】
一方、特許文献2は、外気が侵入し得る燃焼設備で最適燃焼を得るための燃焼設備の燃焼制御方法において、燃料流量に比例した理論空気量を求める手順と、燃焼帯の出側で測定された酸素濃度の測定値と目標設定値との偏差に基づいて、該偏差を解消するための第1空燃比を求める手順と、同じく燃焼帯の出側で測定された一酸化炭素濃度の測定値と目標設定値との偏差に基づいて、該偏差を解消するための第2空燃比を求める手順と、燃料流量、炉内圧及び燃焼状況に応じて重み付け係数を求める手順と、該重み付け係数を用いて前記第1及び第2空燃比を加重平均することにより設定空燃比を求める手順と、該設定空燃比を前記理論空気量に乗じて必要燃焼空気量を求める手順と、該必要燃焼空気量となるよう空気流量を制御する手順と、を含む燃焼設備の燃焼制御方法を開示する。
【0006】
この技術では、燃料流量から求めた理論空気量と燃焼帯出側の酸素濃度および未燃ガス濃度の測定値からそれぞれの影響を加重平均値として反映させた空気比と目標値との偏差を解消する空気比を演算し、それに応じた制御を行うことで最適な燃焼状態を得ることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-285564号公報
【文献】特開昭61-49928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1の技術は、侵入空気の影響が小さい範囲内でのみ適用可能であり、
炉内酸素濃度上昇の要因である侵入空気を直接的に扱う訳ではない。そのため、実際の制御(侵入空気の影響がある場合の制御)では時定数が大きく空気比のハンチングが大きくなる。つまり、補正幅は小さくせざるを得ず、酸素濃度低減効果も小さくなってしまうといった問題がある。
【0009】
また、特許文献2の技術は、特許文献1の技術と同様に、侵入空気量を算出せず空気比を制御しているため、補正幅は小さくせざるを得ず、酸素濃度低減効果も小さくなってしまうという問題を特許文献1と同様に有している。さらに、特許文献2の技術では炉内燃焼状態に基づいて算出される重み付け係数を用いており、この重み付け係数は利用者の価値判断によって決まるものとされている。
【0010】
言い換えれば、特許文献2の技術では、炉内酸素濃度および炉内未燃ガス濃度の空気比への影響を重み付け係数を用いて表現している。しかし、このような重み付け係数の設定方法では利用者の価値判断によっては重み付け係数の一般性が失われ、空気比の目標値に誤差が生じてしまい、加熱炉で最適燃焼状態を得られない問題がある。
加えて、両特許文献の技術は、炉内酸素濃度で空気比を補正するが、本来の要因である侵入空気量を求めている訳ではないため時定数(時間遅れ)が大きく、空気比のハンチングが大きくなり適正な空気比に制御できない。したがって補正幅を小さく制限する必要があり酸素濃度低減効果も小さくなってしまう問題がある。
【0011】
そこで、出願人は、侵入空気量を直接演算し、算出された侵入空気を設定空気比から差し引いた関数を目的関数とすることでバーナ燃焼空気流量を時間遅れのないフィードフォワード方式で制御する技術に想到するに至った。これにより、バーナ空気比を高精度で一定値に制御することができ、その結果定常的に炉内の最適燃焼状態を維持することが可能となる。
【0012】
また、出願人は、炉内酸素濃度変化の本来の要因である侵入空気量を独立変数とするバーナ空気比を演算する関数を目的関数とすることで、バーナ燃焼空気流量を時定数の小さいフィードフォワード方式で制御できる技術を導出するに至った。その結果バーナ空気比を高精度で一定値に制御することが可能となり、定常的に炉内の最適燃焼状態を維持することができるようになった。
【0013】
更には、特許文献1、2では、酸素濃度を測定し、侵入空気の影響について対処しているが、直接、侵入空気量を算出しているわけではないため、侵入空気によるトラブル発生に対しての対処が遅れてしまうことが問題である。この点に対し、出願人は、侵入空気演算方法を用いることによって加熱炉の運転を停止させることなくリアルタイムで侵入空気量を定量化できる技術を想到するにいたり、結果として、不具合の早期発見を可能とした。
【0014】
まとめれば、特許文献1、2では解消できない加熱炉におけるバーナ空気比の制御での問題点を改善することを目的として、本願発明では、外気が侵入し得る加熱炉において、加熱炉への侵入空気量を求め、求めた侵入空気量に応じてバーナ空気量を制御し、未燃ガス濃度の低減および発生NOx量の抑制が可能となる工業炉のバーナ空気比制御方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の加熱炉の空気量制御方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の加熱炉の空気量制御方法は、鋳片を所定の温度に加熱するガスバーナが備えられたゾーンを連接状に複数備えた加熱炉において、前記複数のゾーンのそれぞれに対してガスバーナに接続された空気ライン以外から当該ゾーン内に侵入する侵入空気量を算出し、算出した侵入空気量に応じて前記ガスバーナに接続された空気ラインからガスバーナへ供給するバーナ空気流量を制御するものであって、炉内酸素濃度、前記ガスバーナの燃料流量、前記バーナ空気流量及び炉内温度に基づいて、炉内各ガス濃度の非定常変化および下流への移流を考慮した質量保存式を用いて、前記侵入空気量を算出することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記侵入空気量を独立変数とする目標バーナ空気比を演算する関数を用いて、前記バーナ空気流量を制御するとよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術によれば、外気が侵入し得る加熱炉において、加熱炉への侵入空気量を求め、求めた侵入空気量に応じてバーナ空気量を制御し、最適な燃焼状態を実現できるとともに、未燃ガス濃度の低減および発生NOx量の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態の加熱炉を模式的に示した図である。
図2】バーナの空気比を計算する計算フローを示した図である。
図3】加熱炉を制御する制御フローを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は、本実施形態の加熱炉を模式的に示した図である。
加熱炉1は、スラブなどの鋳片(被圧延材)を炉内に搬入するための搬入口と、鋳片を炉外へ搬出する搬出口と、を有する。搬入口から連続して搬入された鋳片は、搬送装置(図示略)により炉内を図1矢印方向に搬送されて、搬出口から搬出される。搬入口から炉内に搬入された鋳片は、炉内において加熱され、加熱炉1の搬出口から抽出される。
【0021】
加熱炉1から搬出された鋳片は、その後、熱間圧延機に搬送され、熱間圧延されて熱間圧延材となる。加熱炉1内には、搬送される鋳片を加熱するための加熱部として、ガスバーナ5が、鋳片の搬送方向(ライン方向)に沿って複数設けられている。
加熱炉1は、搬入口側から搬出口側に向かって連設された複数のゾーンを有する。具体的には、加熱炉1は、搬入口側から順に、常温で搬入された鋳片を予熱する予熱ゾーン2(予熱帯)、予熱された鋳片を更に加熱しておおよそ1000℃程度にする加熱ゾーン3(加熱帯)、加熱帯で加熱された鋳片の温度むらをなくすために更に加熱を行う均熱ゾーン4(均熱帯)を、鋳片の搬送方向に沿って有している。言い換えれば、加熱炉1は、予熱ゾーン2、加熱ゾーン3、及び均熱ゾーン4の3つのゾーンを搬送方向に沿って隣り合うように、且つ鋳片や雰囲気ガスの移動がゾーン間で往来可能なように組み合わせたものとなっている。
【0022】
各ゾーンには、空気と燃料であるCOガスを供給するライン(配管)が設けられており、それぞれがガスバーナ5へと連結されている。具体的には、予熱ゾーン2に配備されたガスバーナ5には空気を供給する空気ラインが連結されている。この空気ラインには、空気の連通を制御するバルブと空気の流量を計測する空気流量計が設けられており、空気ラインを通じて供給される空気の流量Qa1が計測されている。この空気ラインの終端はガスバーナ5に接続されている。
【0023】
同様に、予熱ゾーン2内に配備されたガスバーナ5には燃料を供給する燃料ラインが連結されている。この燃料ラインにも、空気ライン同様に燃料の連通を制御するバルブと燃料の流量を計測する燃料流量計が設けられており、空気ラインを通じて供給される燃料の流量Qf1が計測されている。この燃料ラインの終端もガスバーナ5に接続されている。
上述した予熱ゾーン2以外のゾーン、つまり加熱ゾーン3、均熱ゾーン4に関しても、同様に酸素ラインと燃料ラインがそれぞれ設けられ、それぞれのライン上にはバルブ及び流量計なとが設けられている。上述したバルブ及び流量計は、いずれも加熱炉1内に供給される前の空気や燃料の流量を計測するものである。
【0024】
一方、ゾーン内には、上述した空気ラインや燃料ラインの先端にガスバーナ5が設けられている。このガスバーナ5は、予熱ゾーン2、加熱ゾーン3、及び均熱ゾーン4のそれぞれに設けられており、どのゾーンにもガスバーナ5の近傍に炉内温度計と炉内酸素濃度計とが取り付けられている。
例えば、予熱ゾーン2を例に挙げれば、当該予熱ゾーン2内に設けられた炉内温度計で予熱ゾーン2内の温度が計測され、計測された温度データがプロコンやPLCなどに取り込まれる。また、予熱ゾーン2内に設けられた炉内酸素濃度計で予熱ゾーン2内の酸素濃度が計測され、計測された酸素濃度データがプロコンやPLCなどに取り込まれる。このプロコンやPLCなどには、上述した空気ラインの空気流量計の値、燃料ラインの燃料流量計の値なども取り込まれる。このようにして取り込まれた値を基に、後述する制御方法に則って、各ラインのバルブの調整が行われることとなる。なお、予熱ゾーン2以外の加熱ゾーン3や均熱ゾーン4にも同様な計測手段とデータの取り込み手段が設けられており、各ゾーンごとに制御が可能となっている。
【0025】
また、予熱ゾーン2と加熱ゾーン3との間には、予熱ゾーン2で予熱されたガスを加熱ゾーン3に流通させる流通路が形成されており、加熱ゾーン3と均熱ゾーン4との間には、加熱ゾーン3で加熱されたガスを均熱ゾーン4に流通させる流通路が形成されている。この流通路を通じて鋳片だけでなくガスもゾーン間を「予熱ゾーン2→加熱ゾーン3→均熱ゾーン4」の順に移動可能となっている。つまり、予熱ゾーン2のガス組成が算出できれば、予熱ゾーン2のガスが流入する加熱ゾーン3のガス組成も算出できる。また、加熱ゾーン3のガス組成が分かれば、流通路を経由してガスが流入する均熱ゾーン4のガス組成も算出できる。このようにして、上述した3つのゾーンでは、あるゾーンについてゾーン内の状態が把握できれば、残りのゾーン内の状態も順次算出でき、最終的には加熱炉1の全体の状態を判断することが可能となる。
【0026】
次に、本発明にかかる侵入空気量を考慮した加熱炉1のバーナ空気比の制御方法について述べる。この制御方法は、前述したプロコンやPLCなどの内部で作動するプログラムで実現されている。
「背景技術」で述べたように、従来から用いられている加熱炉1のバーナ空気比の制御方法は、O濃度補正による空気比のハンチングを避けるために補正幅に制限をかけており、設定空気比を基準にして最大±0.5%の幅でしか変化させることができない(特に特許文献2など)。
【0027】
一方、本発明の制御方法では、O濃度、燃料およびバーナ空気流量から、各帯の侵入空気流量を演算し、目標空気比と侵入空気比との差を目的関数とすることでガスバーナ5から供給すべき空気量を厳密に求めるようにしている。そのため、加熱炉1内を目標空気比に保つことが可能となる。したがって、空気侵入による炉内過剰酸素濃度域の削減に伴うNO発生の抑制および未燃ガス濃度の低減が可能となる。
【実施例
【0028】
以下、具体的な本発明の加熱炉1の空気量制御方法について述べる。
本実施形態の加熱炉1の空気量制御方法は、図2に示すような計算式に従ってガスバーナ5の空気流量を計算するものである。
具体的には、上述した図2の計算式は、3つのゾーンのいずれか1つのゾーンについて、炉内の状態を算出するものとなっている。
【0029】
例えば、加熱ゾーン3についての場合であれば、添字のxは加熱ゾーン3を示す「2」となる。そして、加熱ゾーン3では、加熱ゾーン3の炉内酸素濃度計で計測される炉内酸素濃度CO2,2、加熱ゾーン3の炉内温度計で計測される炉内温度T2、空気ラインからガスバーナ5に供給される空気の流量Qa,2、燃料ラインからガスバーナ5に供給される燃料の流量Qf,2など計測され、計算式に入力される。
【0030】
また、計算式は、各ゾーンごとに、ゾーンに供給されるガスと、ゾーンから排出されるガスとの関係を、質量保存の考え方に従って定式化したものとなっている。このゾーンに供給あるいはゾーンから排出されるガスとは、組成iに示されるようなO、N、CO、CO、HOであり、これらのガスの非定常変化及び下流への濃度移流を考慮した上で、加熱ゾーン3の場合であれば侵入空気の質量流量mO2 L ,2、及び加熱ゾーン3から排出される各ガスの濃度Ci,2(i=O、N、CO、CO、HO)、さらには各ガスの濃度Ci,2を体積流量Q2に換算したものを求める。
【0031】
なお、上述した侵入空気の質量流量mO2 L ,2は、厳密には侵入空気量中に含まれる酸素量を示したものとなる。実際のゾーンiでの侵入空気量は、酸素以外の気体を含むため、以下の式のように定義される。
【0032】
【数1】
【0033】
となる。例えば、空気の場合であれば、空気は酸素21%と窒素79%のみで構成されると考えることができるので、ゾーンiの窒素の質量流量mN2 L ,iは酸素の質量流量mO2 L ,iを用いて次のように示すことができる。
【0034】
【数2】
【0035】
このようにして酸素以外の気体を考慮したゾーンiでの侵入空気量を求めると、次のように示すことができる。
【0036】
【数3】
【0037】
つまり、上述した計算式を用いれば、予熱ゾーン2、加熱ゾーン3、均熱ゾーン4のそれぞれについて、それぞれのゾーンに侵入する侵入空気の質量流量mO2 L ,x(x=1:予熱ゾーン2、x=2:加熱ゾーン3、x=3:均熱ゾーン4)を求めることができる。それゆえ、算出された侵入空気の質量流量に合わせて、各ゾーンに空気ラインから供給する空気量を調整すれば(侵入空気の質量流量に合わせて供給する空気量を減少させれば)、各ゾーンにおいて最適な燃焼状態で燃焼を行うことが可能となり、未燃ガス濃度の低減や発生NOx量の抑制を実現することが可能となる。
【0038】
なお、実際の操業においては、図3のフローチャートに従って加熱炉1の空気量を制御する。
図3に示すように、まず「ガス物性設定」を行う。この「ガス物性設定」は、各ガスに関する物性などの設定である。この設定にあたっては、予め制御部などに記憶させておくこともできるし、入力することもできる。「ガス物性設定」を行ったら、次に「操業データ入力」を行う。
【0039】
「操業データ入力」は、操業に関する諸条件、例えば加熱炉1の容積、炉温、上流側のゾーン、または搬入口からゾーン内に供給されるガスの組成、流量などで構成される操業データを入力するものとなっている。「操業データ入力」を行ったら、次に「ガス密度演算」を行う。
「ガス密度演算」は、ガス物性及び操業データに基づいて、各ゾーンでのガスの密度を演算して求めるものである。このようにして「ガス密度」が算出されたら、「バーナ燃焼ガス」において、炉内酸素濃度計で計測される炉内酸素濃度CO2,x、加熱ゾーン3の炉内温度計で計測される炉内温度Txなどを計測し、次の「侵入空気量演算」において計算式を用いて「侵入空気量」を求める。
【0040】
このようにして各ゾーンで「侵入空気量」が算出されたら、算出された「侵入空気量」に基づいて、理想的な燃焼が可能となるようにガスバーナ5に供給される「空気量」の目標値を設定する。
「空気量」の目標値が設定されたら、目標の「空気量」で燃焼を行う。
なお、目標の「空気量」で燃焼を行うとは、次式で求められる空気比λBで加熱炉1を制御することに他ならない。なお、Qは、上記した手法で求めた侵入空気流量である。
【0041】
λB=1-Q/(Aoq) ・・・(1)
ここで、Q:侵入空気量、Ao:燃料流量に対する完全燃焼に必要な空気流量の比、q:燃料流量。
計算された空気比λBを用いて実機試験を行い、加熱炉1で計測された平均CO濃度および平均NO濃度を実測した。実測の結果、未燃ガス濃度の低減および発生NOx量の抑制が可能となることを出願人は確認した。
【0042】
以上のことから、本実施形態の空気量制御方法により、NO濃度の上昇を抑えて、未燃CO濃度を減らすことが可能となると考えられ、燃焼が効率的に実施されるため非常に大きな経済効果が期待できると判断される。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0043】
1 加熱炉
2 予熱ゾーン
3 加熱ゾーン
4 均熱ゾーン
5 ガスバーナ
図1
図2
図3