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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ティシュペーパー包装体
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20230124BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
A47K10/16 C
B65D83/08 A
B65D83/08 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018205958
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020069155
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】村田 剛
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-052559(JP,A)
【文献】特開2013-177181(JP,A)
【文献】特開2004-217298(JP,A)
【文献】特開2018-122891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 7/00、10/16-10/42
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2プライの非ローションティシュペーパーがフィルムパックにポップアップ式で収納されてなるティシュペーパー包装体であって、
前記フィルムパックの上面にミシン目部が形成されており、前記ミシン目部が、開裂されることによって前記ティシュペーパーを取り出すスリット状の取出し口を構成し、
パック密度が、0.11g/cm3以上0.22g/cm3以下であり、
組目から15組目までの前記非ローションティシュペーパーの取出し抵抗の平均値が、60gf以上340gf以下であり、
前記非ローションティシュペーパーの取出し方向における引張強度が、250gf/25mm以上460gf/25mm以下であり、
前記非ローションティシュペーパーの紙厚が、0.6mm/10ply以上1.3mm/10ply以下であり、
前記非ローションティシュペーパーのシート幅に対する前記ミシン目部の長さが、0.4以上0.8以下であり、
前記非ローションティシュペーパーが、JIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTと乾燥時の横方向の引張強さDCDTとの積の平方根GMTが、140gf/25mm以上280gf/25mm以下であり、
前記非ローションティシュペーパーの組数が、140組以上310組以下であるティシュペーパー包装体。
【請求項2】
前記非ローションティシュペーパーは、ティシュソフトネス測定装置TSAにより測定した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度TS7が、8dBV2rms以上14dBV2rmsであり、かつ、剛性Dが2.2mm/N以上4.6mm/N以下である請求項1記載のティシュペーパー包装体。
【請求項3】
前記フィルムパックを構成するフィルムが単層又は複層であり、前記フィルムの最外層が梨地ポリエチレン、乳白ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又は無延伸ポリプロピレンからなり、前記非ローションティシュペーパーが、前記フィルムによりキャラメル包装されている請求項1又は2記載のティシュペーパー包装体。
【請求項4】
前記フィルムの厚みが、40μm以上120μm以下である請求項記載のティシュペーパー包装体。
【請求項5】
前記非ローションティシュペーパーの1組目が、半折りされている請求項1から4いずれか1項記載のティシュペーパー包装体。
【請求項6】
前記非ローションティシュペーパーの1組目及び2組目が、半折りされている請求項1から4いずれか1項記載のティシュペーパー包装体。
【請求項7】
前記非ローションティシュペーパーの坪量が、12g/m2以上22g/m2以下である請求項1から6いずれか1項記載のティシュペーパー包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムパックにティシュペーパーの積層体が収納されたティシュペーパー包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯性を重視したティシュ製品として、ティシュペーパーの積層体がフィルムパックに収納されたいわゆるポケットティシュ製品が知られている(特許文献1参照)。従来のポケットティシュ製品は、携帯性に優れているものの、1パックに収納されるティシュペーパーの組数が10枚(組)程度と少ないため、製品の交換頻度が高い。近年では、花粉症患者の増加により、ポケットティシュ製品よりもティシュペーパーの組数が多く、かつ、コンパクトで携帯性に優れる、カートン製品と略同サイズのフィルムパックに収容されたティシュ製品の需要が高まっている。フィルムパックのティシュは、軽量化及び高コンパクト性による輸送効率の高さ及び商品購入後の保管スペースの少なさといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-142607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルムパックの製品は、カートン製品と異なり、上部空間がないため、使い始めのティシュが取り出しにくく、ティシュペーパーが破れるという問題がある。特に、ティシュの組数が多く大容量である場合、その傾向が顕著である。従来のフィルムパックに包装されたティシュペーパー包装体でも、ティシュの強度が高く、紙厚が低いティシュペーパーは、ティシュペーパーが破れるという問題はない。また、柔らかいローション(保湿剤ともいう)ティシュペーパーの場合は、フィルムの取出し口との摩擦が小さいため、ティシュペーパーの引っ掛かりがなく、取り出し性に問題は見られない。
【0005】
ところが、非ローションティシュペーパーであって、柔らかく、かつ紙厚の高いティシュペーパーを用いた場合は、カートン製品と異なり、上部空間がなくタイトに包装されることに加え、取出し口とティシュペーパーとの摩擦が高いため、使い始めのティシュが取り出しにくく、ティシュペーパーが破れるという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、保湿剤を含まず、柔らかく、かつ紙厚が高いティシュペーパーがフィルムパックに収納されてなるティシュペーパー包装体であって、大容量で交換頻度が少なく、コンパクト性及び取出し性に優れ、取り出し時の破れ及びドロップバックを抑制することができるティシュペーパー包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2プライの非ローションティシュペーパーがフィルムパックにポップアップ式で収納されてなるティシュペーパー包装体であって、前記フィルムパックの上面にミシン目部が形成されており、前記ミシン目部が、開裂されることによって前記ティシュペーパーを取り出すスリット状の取出し口を構成し、パック密度が、0.11g/cm3以上0.22g/cm3以下であり、3枚目(組目)から15枚目(組目)までの前記非ローションティシュペーパーの取出し抵抗の平均値が、60gf以上340gf以下であり、前記非ローションティシュペーパーの取出し方向における引張強度が、250gf/25mm以上460gf/25mm以下であり、前記非ローションティシュペーパーの紙厚が、0.6mm/10ply以上1.3mm/10ply以下であり、前記非ローションティシュペーパーのシート幅に対する前記ミシン目部の長さが、0.4以上0.8以下であり、前記非ローションティシュペーパーが、JIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTと乾燥時の横方向の引張強さDCDTとの積の平方根であるGMTが、140gf/25mm以上280gf/25mm以下であり、前記非ローションティシュペーパーの組数が、140組以上310組以下であるティシュペーパー包装体である。
【0007】
前記非ローションティシュペーパーは、ティシュソフトネス測定装置TSA(Tissue Softness Analyzer)により測定した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度TS7が、8dBVrms以上14dBVrmsであり、かつ、剛性Dが2.2mm/N以上4.6mm/N以下であることが好ましい。
【0008】
前記フィルムパックを構成するフィルムが単層又は複層であり、前記フィルムの最外層が梨地ポリエチレン、乳白ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又は無延伸ポリプロピレンからなり、前記非ローションティシュペーパーが、前記フィルムによりキャラメル包装されていることが好ましい。
【0009】
前記非ローションフィルムの厚みは、40μm以上120μm以下であることが好ましい。
【0010】
前記非ローションティシュペーパーの1組目は、半折りされていることが好ましい。
【0011】
前記非ローションティシュペーパーの1組目及び2組目は、半折りされていることが好ましい。
【0012】
前記非ローションティシュペーパーの坪量は、12g/m以上22g/m以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保湿剤を含まず、柔らかく、かつ紙厚が高い非ローションティシュペーパーがフィルムパックに収納されてなるティシュペーパー包装体において、大容量で交換頻度が少なく、コンパクト性及び取出し性に優れ、取り出し時の破れ及びドロップバックを抑制することができるティシュペーパー包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のティシュペーパー包装体を示す斜視図である。
図2】本発明におけるティシュペーパー積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付する。
【0016】
[ティシュペーパー包装体]
図1に示すように、本発明のティシュペーパー包装体100は、2プライの非ローションティシュペーパー21(以下、単に、ティシュペーパーと記載する場合がある)が、フィルムパック10にポップアップ式に収納されてなるものである。そして、図2に示すように、非ローションティシュペーパー21は、折り畳まれて所望の組数で積層されて積層体20を構成している。フィルムパック10の上面には、ミシン目部11が形成されており、ミシン目部11が開裂されることによって、ティシュペーパー21を取り出すスリット状の取出し口を構成している。
以下、ティシュペーパー包装体100の構成要素について説明する。
【0017】
(パック密度)
本発明のティシュペーパー包装体100の非ローションティシュペーパー21は、パック密度が、0.11g/cm以上0.22g/cm以下である。パック密度は、0.13g/cm以上0.20g/cm以下が好ましく、0.15g/cm以上0.18g/cm以下がより好ましい。パック密度が0.11g/cm以上であることにより、コンパクト性が向上し、パック密度が0.22g/cm以下であることにより、非ローションティシュペーパーが破れたり、取り出しにくいと感じることなく取出すことができる。
ここで、「パック密度」とは、以下の式で求められる値である。
パック密度(g/cm)=フィルムパック中の非ローションティシュペーパーの質量/フィルムパックの容積
【0018】
(取出し抵抗の平均値)
フィルムパック10のスリットから非ローションティシュペーパー21を取り出す際の、3枚目(組目)から15枚目(組目)までの非ローションティシュペーパーの取出し抵抗の平均値は、60gf以上340gf以下である。
取出し抵抗の平均値が60gf以上であることにより、パック密度が高くコンパクト性に優れる。また、取出し抵抗の平均値が340gf以下であることにより、非ローションティシュペーパー21の取出し口での引っ掛かりがなく、取出し易い。
【0019】
取出し抵抗の測定方法は、次の通りとする。
非ローションティシュペーパー21が入っているフィルムパック10から、非ローションティシュペーパー21の最初の2組を静かに引き出して取り除く。次に、3組目をテンシロン引張試験機にセットし、下面を固定しながら、引張速度1000mm/minでティシュペーパーを引き上げて、フィルムパックから引き出すまでにかかる抵抗値の最大値を計測する。4~15組ついても同様に測定し、それぞれの平均値を引き出し抵抗とする。5パックの平均値を取出し抵抗とする。
【0020】
(取出し方向における引張強度)
非ローションティシュペーパー21の取出し方向における引張強度は、250gf/25mm以上460gf/25mm以下である。引張強度が250gf/25mm以上であることにより、取出し時に破れることなく、取出すことができる。また、引張強度が460gf/25mm以下であることにより、柔らかさを感じることができる。非ローションティシュペーパー21の取出し方向における引張強度は、270gf/25mm以上410gf/25mm以下であることが好ましく、290gf/25mm以上350gf/25mm以下であることがより好ましい。
なお、取出し方向における引張強度は、JIS P8113に基づいて測定した値とする。引っ張り強さの測定は、引張速度300mm/minの速度で行う。
【0021】
<非ローションティシュペーパー>
本実施形態において収納された非ローションティシュペーパー21は、2プライのシートから構成され、原紙にカレンダー処理がなされたものである。本発明における非ローションティシュペーパー21とは、保湿剤、薬液などを塗工していないティシュペーパーを意味する。
【0022】
図2に示すように、折り畳まれた非ローションティシュペーパー21は、所望の組数が積層されて積層体20を構成し、フィルムパック10内に収納されている。そして、積層体20の1組目の非ローションティシュペーパー21は、取出し易くするため、半折りされている(符号22で示す部分)。
ここで、本発明において、「半折り」とは、図2において符号22に示すように、ポップアップ式で取り出せるようにティシュペーパーをシート長が約半分になるように折られた状態から、さらに約半分に折ることを意味する。
半折りすることによって、大容量化されたティシュペーパー包装体で上部空間が小さくても、誤って上部の数組を一度に取り出してしまうということがなく、1組目だけを容易に取出すことができる。また、半分に折られていることで、取出し時にティシュが破れにくくなる。
図2では、1組目だけ半折りにした図を示しているが、2組目も半折りしてもよい。
【0023】
(ティシュペーパーの組数)
積層体20を構成する非ローションティシュペーパー21(2プライに積層されたシート)の組数は、140組以上310組以下である。非ローションティシュペーパー21の組数は、170組以上280組以下であることがより好ましく、190組以上250組以下であることが更に好ましい。非ローションティシュペーパー21の組数を上記の範囲に調整することにより、コンパクトタイプでありながら、ティシュペーパー包装体100の交換頻度を低くすることができる。組数が多くなり過ぎると、一定の紙厚である場合に、フィルムパックの高さが高くなり、フィルムパックの中身の非ローションティシュペーパーが少なくなった時に、ドロップバックが発生しやすくなる。
【0024】
(坪量)
また、本実施形態の非ローションティシュペーパー21における、1プライあたりの坪量は、12g/m以上22g/m以下であることが好ましく、13g/m以上20g/m以下であることがより好ましく、14g/m以上18g/m以下であることが更に好ましい。非ローションティシュペーパー21の1プライあたりの坪量が12g/m以上であることにより、ボリューム感を感じることができるうえ、強度も十分であるため取出し時の破れが生じにくい。また、非ローションティシュペーパー21の1プライあたりの坪量が22g/m以下であることにより、柔らかさを感じることができる。
【0025】
(紙厚)
非ローションティシュペーパー21の紙厚は、0.6mm/10プライ以上1.3mm/10プライ以下である。非ローションティシュペーパー21の紙厚が0.6mm/10プライ以上であることにより、本願のようにコンパクトで、組数が多く、柔らかいティシュペーパーを用いた場合に、使用者がボリューム感を感じることができる。また、1.3mm/10プライを超えると、一定の組数とした場合に、フィルムパックの高さが高くなり、フィルムパックの中身の非ローションティシュペーパーが少なくなった時に、ドロップバックが発生しやすくなる。非ローションティシュペーパー21の紙厚は、0.7mm/10プライ以上1.1mm/10プライ以下であることがより好ましく、0.8mm/10プライ以上1.0mm/10プライ以下であることが更に好ましい。
なお、上記の紙厚は、展開した、2プライのシートを5組重ねたときの紙厚を示す。
【0026】
(GMT)
非ローションティシュペーパー21は、JIS P8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さDMDTと乾燥時の横方向の引張強さDCDTとの積の平方根(DMDT×DCDT)1/2であるGMTが、140gf/25mm以上280gf/25mm以下である。GMTは、150gf/25mm以上240gf/25mm以下が好ましく、160gf/25mm以上190gf/25mm以下であることがより好ましい。
GMTが、140gf/25mm以上であることにより、取出し時の破れを防止することができ、280gf/25mm以下であることにより、使用者が柔らかさを感じることができる。
【0027】
(TS7)
非ローションティシュペーパー21は、ティシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度TS7が、8dBVrms以上14dBVrms以下であることが好ましく、9dBVrms以上13dBVrms以下であることがより好ましく、10dBVrms以上12dBVrms以下であることが更に好ましい。
【0028】
(D)
また、ティシュソフトネス測定装置TSA(emtec社製;Tissue Softness Analyzer)上のソフトウェアにて自動的に取得した、剛性Dは、2.2mm/N以上4.6mm/N以下であることが好ましく、2.6mm/N以上4.2mm/N以下であることがより好ましく、3.0mm/N以上3.8mm/N以下であることが更に好ましい。
【0029】
ティシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS7及びDの測定方法、及び、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されており、その公報に記載の方法を用いることができる。
【0030】
(シート幅)
非ローションティシュペーパー21のシート幅L21図1参照)は、110mm以上235mm以下であることが好ましく、130mm以上215mm以下であることがより好ましく、150mm以上195mm以下であることが更に好ましい。なお、非ローションティシュペーパー21のシート幅はフィルムパックの長辺方向に相当する。
【0031】
(シート長)
非ローションティシュペーパー21のシート長は、180mm以上270mm以下であることが好ましく、190mm以上250mm以下がより好ましく、200mm以上230mm以下であることが更に好ましい。
なお、シート長は、非ローションティシュペーパー21のシート幅を示す方向と直交する方向の長さを示す。
【0032】
(ティシュペーパー原料)
非ローションティシュペーパー21を構成する2プライのシートは、パルプを主成分とするものであり、好ましくは、50質量%以上のパルプを含有する。非ローションティシュペーパー21の製造に使用できるパルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプが挙げられるが、本実施形態の非ローションティシュペーパー21は、パルプとして木材パルプ100%から成るものであってもよく、木材パルプの他に、古紙パルプや非木材パルプを含んでいてもよい。パルプ以外の成分としては、填料、合成繊維、天然繊維等を挙げることができる。目標とする品質を得るためには、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20質量%以上50質量%以下と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50質量%以上80質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが好ましく、NBKP:25質量%以上45質量%以下と、LBKP:55質量%以上75質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることがより好ましく、NBKP:30質量%以上40質量%以下と、LBKP:60質量%以上70質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが更に好ましい。
【0033】
<フィルムパック>
フィルムパック10を構成するフィルムは、美粧性(高級感)及び生産性の観点から、単層又は複層であり、材質は、梨地ポリエチレン、乳白ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、又は無延伸ポリプロピレンであり、包装形態はキャラメル包装であることが好ましい。
また、フィルムパック10の最外層におけるフィルムの材質は、美粧性(高級感)及び手触りに優れる、梨地ポリエチレンであることがより好ましい。
なお、フィルムを複層にする場合、ドライラミネート、押出しラミネート等の公知の方法を用いることができるが、フィルム臭気を考慮すると押出しラミネートが好ましい。
【0034】
(フィルムパックの長辺)
フィルムパック10の直方体の長辺の長さCL(図1参照)は113mm以上238mm以下であることが好ましく、133mm以上218mm以下であることがより好ましく、153mm以上198mm以下であることが更に好ましい。
【0035】
(フィルムパックの短辺)
フィルムパック10の直方体の短辺の長さCW(図1参照)は88mm以上140mm以下であることが好ましく、98mm以上135mm以下であることがより好ましく、108mm以上125mm以下であることが更に好ましい。
【0036】
(フィルムパックの高さ)
フィルムパック10の高さCH(図1参照)は、50mm以上128mm以下であることが好ましく、60mm以上110mm以下であることがより好ましく、70mm以上90mm以下であることが更に好ましい。フィルムパック10の高さCHが上記範囲であることにより、ティシュペーパー21のドロップバックが起きにくい。
フィルムパック10の長辺の長さCL、短辺の長さCW及び高さCHを上記の範囲に調整することにより、大容量化及びコンパクト化を実現でき、また交換頻度を小さくすることができる。
【0037】
本明細書におけるフィルムパック10の各寸法は、以下の方法により測定することができる。フェイシャルティシュ製品100を水平面に戴置させた後に、JISの30cmの定規(例えば、シンワ測定株式会社製の直尺シルバー、材質ステンレス、63g)をフィルムパック10のミシン目部11の長手方向上に、横方向に平行となるように載せて、フィルムパック10の横方向両端部における上記水平面からの上記定規までの高さを測定し、2つの測定値の平均値をフィルムパック10の高さ(CH)とする。次に、上記のフィルムパック10の、横方向に形成される辺の寸法(CL)としては、上記定規と天面10aが接する部分の横方向の寸法を採用する。さらに、フィルムパック10の縦方向に形成される辺の寸法(CW)は、上記定規をミシン目部11の長手方向に直角となるように、天面10aの横方向中心部に配置し、上記定規と天面10aが接する部分の縦方向の寸法を採用する。
【0038】
(フィルムの厚み)
フィルムパック10を構成するフィルムの厚みは、40μm以上120μm以下であることが好ましく、60μm以上110μm以下であることがより好ましく、75μm以上100μm以下であることが更に好ましい。フィルムの厚さが40μm未満であると、使用時にフィルムが破れてしまい、包装形態の体をなさなくなってしまうため、取り出し性が悪くなる。また、120μmを超えると、フィルムが固くなり、取り出し時にフィルムとティシュペーパーが擦れてティシュペーパーが破れる。
【0039】
(ミシン目とスリット)
フィルムパック10は、上面10aに、非ローションティシュペーパー21を通過させて取出すためのスリットを形成可能な略直線状のミシン目部11が上面10aに形成されている。ミシン目部11は、上面10aの長辺に沿って略平行に、かつ、短辺方向の略中心に、形成されている。使用者は、ミシン目部11を開封することによりスリットを形成し、非ローションティシュペーパー21を、スリットを通過させて取出すことができる。
【0040】
(ミシン目部の長さ)
ミシン目部11は、図1に示すように、切込部12と非切込部13が交互に配列されることにより形成される。なお、ミシン目部11の両端部は、切込部12で構成される。なお、ミシン目部11の長手方向の長さPLは、ミシン目部11を開封することにより形成されるスリットの長手方向の長さと等しい。ミシン目部11の長手方向の長さPLは、非ローションティシュペーパー21の取出し性を向上させるために、75mm以上150mm以下であることが好ましく、85mm以上140mm以下であることがより好ましく、95mm以上130mm以下であることが更に好ましい。
【0041】
また、各切込部12の長手方向の長さは、1.5mm以上6.0mm以下であり、各非切込部13の長手方向の長さは、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましく、各切込部12の長手方向の長さは、2.0mm以上5.0mm以下であり、各非切込部13の長手方向の長さは、0.7mm以上1.7mm以下であることがより好ましく、各切込部12の長手方向の長さは、2.5mm以上4.0mm以下であり、各非切込部13の長手方向の長さは、0.8mm以上1.3mm以下であることが更に好ましい。なお、上記の長さは、ミシン目部11の各切込部12と各非切込部13のそれぞれの加重平均値とする。
【0042】
(ティシュペーパーのシート幅に対するミシン目部の長さ)
非ローションティシュペーパー21のシート幅L21図1参照)に対するミシン目部11の長さPLは、0.4以上0.8以下であることが好ましく、0.45以上0.75以下であることがより好ましく、0.50以上0.70以下であることが更に好ましい。
非ローションティシュペーパー21のシート幅L21に対するミシン目部11の長さPLが、0.40以上であることにより、非ローションティシュペーパー21を取出し易く、0.80以下であることにより、ドロップバックが発生しにくい。
【0043】
(ミシン目のボンド率)
フィルムのミシン目のボンド率は、8%以上45%以下であることが好ましく、12%以上35%以下であることがより好ましく、14%以上25%以下であることが更に好ましい。上記に調整することにより、輸送時に必要なミシン目の強度を確保することができるとともに、フィルムパック10の良好な開封性を維持することができる。
ミシン目のボンド率とは、以下の式で表される。
非切込部÷(切込部+非切込部)
(一組の切込部と非切込部の長手方向の合計寸法に対する、一つの非切込部13の長手方向の寸法の割合。)
【0044】
(静摩擦係数)
本発明において、フィルムパック10を構成するフィルムの裏面と非ローションティシュペーパー21の、ミシン目部11の開封時に擦れ合う方向で測定した静摩擦係数は、0.20以上0.35以下であることが好ましく、0.22以上0.33以下であることがより好ましく、0.24以上0.30以下であることが更に好ましい。
なお、後述するように、折り畳まれた非ローションティシュペーパー21は、折り畳まれた状態における非ローションティシュペーパー21のMD方向に沿って形成される辺が、フィルムパック10のミシン目部11の長手方向に略平行となるように積層されて収納されるため、ミシン目部11の開封時に擦れ合う方向は、フィルムパック10を構成する裏面の縦方向と非ローションティシュペーパー21のCD方向となり、後述する動摩擦係数の場合も同様である。
【0045】
ここで、ティシュペーパー包装体100に設けられたミシン目部11を開封する際には、例えば、ミシン目部11の長手方向を中心線として、その中心線の左右をそれぞれの手でグリップして開封する方向(ミシン目部11の長手方向に略直交する方向)に、例えば、左手の親指で左方向に、右手の親指で右方向にそれぞれ力を入れてミシン目部11を開封してスリットを形成する。この際に上記のように表面が滑らかな非ローションティシュペーパー21の積層体20を、肌触りがよくコシの弱いフィルムからなるフィルムパック10に収納した場合、グリップしながら親指で各方向に引っ張る際に、フィルムパック10を構成するフィルムの裏面と非ローションティシュペーパー21が滑り易いことで、グリップする力が弱くなり、ミシン目部11を開封しづらくなる傾向にある。
フィルムパック10を構成するフィルムの裏面と非ローションティシュペーパー21の、ミシン目部11の開封時に擦れ合う方向で測定した静摩擦係数0.20以上0.35以下に調整することにより、ミシン目部11の開封する際の力が伝わりやすく開封しやすくすることができる。また、上記の静摩擦係数が大きすぎると取出し性が悪くなる傾向にあるが、上記の範囲とすることで、非ローションティシュペーパー21の取出し性を損なうことがない。
【0046】
(動摩擦係数)
また、フィルムパック10を構成するフィルムの裏面と非ローションティシュペーパー21の、ミシン目部11の開封時に擦れ合う方向で測定した動摩擦係数が、0.17以上0.27以下であることが好ましく、0.18以上0.26以下であることがより好ましく、0.20以上0.25以下であることが更に好ましい。フィルムパック10の裏面と非ローションティシュペーパー21の動摩擦係数が、上記の範囲であることにより、ミシン目部11の開封時に非ローションティシュペーパー21が破れにくくなる。また、上記の動摩擦係数が大きすぎると取出し性が悪くなる傾向にあるが、上記の範囲とすることで、非ローションティシュペーパー21の取出し性を損なうことがない。
【0047】
なお、上記の静摩擦係数と動摩擦係数は、ISO 15359に準拠して、野村商事株式会社製「自動摩擦試験機 NSF-100」を用いて測定することができる。ISO 15359では、同一サンプルを用いて静摩擦係数及び動摩擦係数を3回ずつ測定し、静摩擦係数については1回目と3回目の値を採用し、動摩擦係数については3回目の値を採用する。本発明においては、静摩擦係数、動摩擦係数ともに1回目の値を採用する。なお、ティシュペーパー21については、展開させた状態で測定に供する。
【0048】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0049】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0050】
[実施例及び比較例]
表1から表3に示す特性を有するティシュペーパー包装体を作製した。
ティシュペーパーの原料に関しては、パルプ組成の含有率(質量%)が、NBKP35%、LBKP65%となるように調整した。また、いずれのティシュペーパーにもローションの薬液は塗工していない。
なお、実施例及び比較例では、フィルムパックは、上面に、ティシュペーパーを通過させて取出すためのスリットを形成可能な略直線状のミシン目部を、上面の長辺に対して平行に、かつ、短辺方向の中心に形成した。なお、ミシン目部の長手方向の中心点がフィルムパックの上面の長辺方向の中心となるように設けた。なお、フィルムパックを構成するフィルムは単層とした。
また、表中の静摩擦係数及び動摩擦係数は、フィルムパックを構成するフィルムの裏面とティシュペーパーのミシン目部の開封時に擦れ合う方向で上記方法により測定した。
【0051】
(ティシュペーパーの坪量)
JIS P 8124に基づいて測定し、シート1プライあたりに換算した。
【0052】
(ティシュペーパーの紙厚)
シックネスゲージ(尾崎製作所製のダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK」)を用いて測定した。測定条件は、測定荷重250gf、測定子直径30mmで、測定子と測定台の間に試料を置き、測定子を1秒間に1mm以下の速度で下ろしたときのゲージを読み取った。なお、1回の測定は2プライのシートを5組重ねて行い、測定を10回繰り返して測定結果を平均した。
【0053】
(フィルムの厚さ)
JIS Z 1702に基づいて測定した。
【0054】
なお、坪量、紙厚、取出し方向における引張強度、GMT、TS7、D、シート幅、シート長、フィルム厚さ、静摩擦係数、動摩擦係数の測定は、JIS P 8111に規定する温湿度条件下(23±1℃、50±2%RH)で平衡状態に保持した後に行った。他の項目の測定方法については、上記方法を用いた。
【0055】
[評価]
実施例及び比較例について、モニター20人による以下の評価を行った。
モニター評価は、モニター20人が、各評価項目について、「よい」又は「悪い」を選択する方式で行った。評価基準は以下の通りである。A、B、及びCを合格とした。
A:「よい」が18人以上20人以下のとき
B:「よい」が14人以上17人以下のとき
C:「よい」が10人以上13人以下のとき
D:「よい」が、6人以上9人以下のとき
E:「よい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0056】
(コンパクト性)
フィルムパック(ティシュペーパー包装体)のコンパクトについて評価した。
【0057】
(ティシュの取出しやすさ)
使い始めの際のフィルムパックからティシュペーパーを引き出した時の引き出しやすさを評価した。
【0058】
(ドロップバックの少なさ)
使い終わりの際に、ティシュペーパー使用時のドロップバックがないかどうかを評価した。
【0059】
(取出し時のティシュペーパーの破れにくさ)
フィルムパックからティシュペーパーを引き出した時の破れにくさを評価した。
【0060】
(ティシュペーパーの柔らかさ)
フィルムパックから引き出したティシュペーパーを展開して使用(鼻をかむ、汚れをふき取る等)した時の触感(柔らかさ)を評価した。
【0061】
(ティシュペーパーのボリューム感)
フィルムパックから引き出したティシュペーパーを展開して手に持ったときのボリューム感を評価した。
【0062】
(交換頻度の少なさ)
ティシュペーパー包装体の交換頻度について評価した。
【0063】
評価結果を表1、2及び3に示す。なお、表中の「梨地PE」は、梨地ポリエチレンを意味する。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表1から表3に示すように、本発明のティシュペーパー包装体は、コンパクト性、ティシュの取り出し易さ、ティシュの柔らかさ、及び、ティシュのボリューム感の全てにおいて、良好な結果を得ることができた。
【符号の説明】
【0068】
10 フィルムパック
10a (フィルムパックの)上面
11 ミシン目部
12 切込部
13 非切込部
20 (ティシュペーパー)の積層体
21 ティシュペーパー
22 半折り部分
100 ティシュペーパー包装体
CL フィルムパックの横方向に形成される辺の長さ
CW フィルムパックの縦方向に形成される辺の長さ
CH フィルムパックの高さ
PL ミシン目の長さ
21 ティシュペーパーのシート幅
図1
図2