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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20230124BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20230124BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20230124BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H02K5/16 Z
H02K11/215
H02K7/116
H02K7/08 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017253679
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019122082
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】上松 豊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瞬
(72)【発明者】
【氏名】及川 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 裕三
(72)【発明者】
【氏名】真貝 一美
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-193554(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107017732(CN,A)
【文献】実開昭60-162980(JP,U)
【文献】特開平06-351186(JP,A)
【文献】特開2001-145320(JP,A)
【文献】特開2015-142948(JP,A)
【文献】特開2015-027200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
H02K 11/215
H02K 7/116
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるモータシャフトおよび前記モータシャフトに固定されるロータ本体を有するモータ部と、
前記モータシャフトに連結される減速機構と、
前記モータ部と電気的に接続され、前記ロータ本体よりも軸方向一方側に配置される回路基板と、
前記減速機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトを有する出力部と、
前記モータシャフトに取り付けられる被検出部と、
前記被検出部の位置を検出して前記モータシャフトの回転を検出するモータ部センサと、
前記モータシャフトに予圧を加える予圧部材と、
前記モータシャフトを軸方向他方側から支持する支持部と、
を備え、
前記モータ部は、前記モータシャフトを回転可能に支持する第1ベアリングを有し、
前記回路基板は、前記回路基板を軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記モータシャフトは、前記貫通孔に通されて前記回路基板を軸方向に貫通し、
前記被検出部は、前記モータシャフトのうち前記回路基板よりも軸方向一方側に突出した部分に取り付けられ、前記回路基板の軸方向一方側の面と隙間を介して軸方向に対向し、
前記モータ部センサは、前記回路基板の軸方向一方側の面のうち前記被検出部と隙間を介して軸方向に対向する部分に固定され、
前記予圧部材は、前記モータシャフトに軸方向他方側向きに予圧を加え、前記モータシャフトを前記支持部に押し付け
前記モータ部は、前記モータシャフトに取り付けられる被検出部ホルダを有し、
前記被検出部は、前記被検出部ホルダに固定され、
前記被検出部ホルダは、
前記モータシャフトに軸方向他方側から支持されかつ周方向に位置決めされ、軸方向と直交する板状である被支持部と、
前記回路基板よりも軸方向一方側で前記モータシャフトに固定される固定部と、
軸方向と交差する円環板状の円環板部と、を有し、
前記予圧部材は、前記第1ベアリングと、前記円環板部と、の間に位置する、
電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1ベアリングは、ボールベアリングであり、
前記予圧部材は、前記第1ベアリングに軸方向他方側向きに予圧を加え、前記第1ベアリングを介して前記モータシャフトに軸方向他方側向きに予圧を加える、請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1ベアリングは、前記モータシャフトのうち前記被検出部が取り付けられる部分よりも軸方向他方側の部分を支持する、請求項1または2に記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1ベアリングの少なくとも一部は、前記貫通孔に挿入される、請求項3に記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記被検出部は、マグネットであり、
前記モータ部センサは、前記被検出部の磁界を検出する磁気センサである、請求項1からのいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項6】
前記減速機構は、前記モータシャフトの軸方向一方側に連結され、
前記回路基板は、前記減速機構の軸方向一方側に配置される、請求項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項7】
前記予圧部材は、ウェーブワッシャである、請求項1からのいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項8】
前記円環板部は、
前記被検出部が固定される第1円環板部と、前記被支持部または前記固定部に繋がる第2円環板部と、を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【請求項9】
前記被検出部ホルダは、
前記第1円環板部の径方向内縁部および前記第2円環板部の径方向外縁部を繋ぐ筒部を有する、請求項8に記載の電動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ部と、モータ部に連結される減速機構と、減速機構を介してモータ部の回転が伝達される出力部と、モータ部におけるモータシャフトに取り付けられる被検出部と、被検出部の位置を検出してモータシャフトの回転を検出するモータ部センサと、を備える電動アクチュエータが知られる。例えば、特許文献1には、被検出部としての磁石と、モータ部センサとしてのホールICと、を備える電動アクチュエータが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-65742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動アクチュエータに振動が加えられると、モータシャフトが軸方向に移動する場合がある。この場合、モータシャフトに取り付けられた被検出部がモータ部センサに接触して、被検出部またはモータ部センサ、あるいは被検出部およびモータ部センサの両方が損傷する場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、被検出部およびモータ部センサが損傷することを抑制できる構造を有する電動アクチュエータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動アクチュエータの一つの態様は、軸方向に延びるモータシャフトおよび前記モータシャフトに固定されるロータ本体を有するモータ部と、前記モータシャフトに連結される減速機構と、前記モータ部と電気的に接続され、前記ロータ本体よりも軸方向一方側に配置される回路基板と、前記減速機構を介して前記モータシャフトの回転が伝達される出力シャフトを有する出力部と、前記モータシャフトに取り付けられる被検出部と、前記被検出部の位置を検出して前記モータシャフトの回転を検出するモータ部センサと、前記モータシャフトに予圧を加える予圧部材と、前記モータシャフトを軸方向他方側から支持する支持部と、を備える。前記モータ部は、前記モータシャフトを回転可能に支持する第1ベアリングを有する。前記回路基板は、前記回路基板を軸方向に貫通する貫通孔を有する。前記モータシャフトは、前記貫通孔に通されて前記回路基板を軸方向に貫通する。前記被検出部は、前記モータシャフトのうち前記回路基板よりも軸方向一方側に突出した部分に取り付けられる。前記回路基板の軸方向一方側の面と隙間を介して軸方向に対向する。前記モータ部センサは、前記回路基板の軸方向一方側の面のうち前記被検出部と隙間を介して軸方向に対向する部分に固定される。前記予圧部材は、前記モータシャフトに軸方向他方側向きに予圧を加え、前記モータシャフトを前記支持部に押し付ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、被検出部およびモータ部センサが損傷することを抑制できる構造を有する電動アクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の電動アクチュエータを示す断面図である。
図2図2は、本実施形態の電動アクチュエータの一部を示す断面図であって、図1の部分拡大図である。
図3図3は、本実施形態のモータシャフトおよびマグネットホルダを示す斜視図である。
図4図4は、本実施形態のモータ部用センサマグネットおよびマグネットホルダを示す斜視図である。
図5図5は、本実施形態の金属部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
各図においてZ軸方向は、正の側を上側とし、負の側を下側とする上下方向である。各図に適宜示す仮想軸である中心軸J1の軸方向は、Z軸方向、すなわち上下方向と平行である。以下の説明においては、中心軸J1の軸方向と平行な方向を単に「軸方向Z」と呼ぶ。また、特に断りのない限り、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
本実施形態において、上側は、軸方向一方側に相当し、下側は、軸方向他方側に相当する。なお、上側および下側とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0011】
図1および図2に示す本実施形態の電動アクチュエータ10は、車両に取り付けられる。より詳細には、電動アクチュエータ10は、車両の運転者のシフト操作に基づいて駆動されるシフト・バイ・ワイヤ方式のアクチュエータ装置に搭載される。図1に示すように、電動アクチュエータ10は、モータ部40と、減速機構50と、出力部60と、回路基板70と、モータ部センサ71と、出力部センサ72と、ハウジング11と、バスバーホルダ90と、図示しないバスバーと、を備える。
【0012】
モータ部40は、モータシャフト41と、第1ベアリング44aと、第2ベアリング44bと、第3ベアリング44cと、第4ベアリング44dと、ロータ本体42と、ステータ43と、モータ部用センサマグネット45と、マグネットホルダ46と、を有する。本実施形態において、モータ部用センサマグネット45は、被検出部に相当し、マグネットホルダ46は、被検出部ホルダに相当する。
【0013】
モータシャフト41は、軸方向Zに延びる。第1ベアリング44aと第2ベアリング44bと第3ベアリング44cと第4ベアリング44dとは、モータシャフト41を中心軸J1周りに回転可能に支持する。本実施形態において、第1ベアリング44a、第2ベアリング44b、第3ベアリング44c、および第4ベアリング44dは、例えば、ボールベアリングである。
【0014】
モータシャフト41のうち第3ベアリング44cに支持される部分である偏心軸部41aは、中心軸J1と平行で中心軸J1に対して偏心した偏心軸J2を中心として延びる円柱状である。モータシャフト41のうち偏心軸部41a以外の部分は、中心軸J1を中心として延びる円柱状である。
【0015】
図2および図3に示すように、モータシャフト41は、位置決め凹部41bを有する。位置決め凹部41bは、モータシャフト41の上側の端部における外周面から径方向内側に窪む。位置決め凹部41bは、上側に開口する。
【0016】
図1に示すように、ロータ本体42は、モータシャフト41に固定される。より詳細には、ロータ本体42は、モータシャフト41の下側の部分に固定される。ロータ本体42は、ロータコア42aと、ロータマグネット42bと、を有する。ロータコア42aは、モータシャフト41のうち偏心軸部41aよりも下側の部分の外周面に固定される。ロータマグネット42bは、ロータコア42aの外周面に固定される。
【0017】
ステータ43は、ロータ本体42の径方向外側に隙間を介して配置される。ステータ43は、ロータ本体42の径方向外側を囲む環状である。ステータ43は、ステータコア43aと、インシュレータ43bと、複数のコイル43cと、を有する。コイル43cは、インシュレータ43bを介してステータコア43aに装着される。
【0018】
図3に示すように、マグネットホルダ46は、中心軸J1を中心とする円環状である。マグネットホルダ46は、例えば、金属製である。本実施形態においてマグネットホルダ46は、金属製の板部材をプレス加工することによって作られる単一の部材である。マグネットホルダ46は、モータシャフト41に取り付けられる。より詳細には、マグネットホルダ46は、モータシャフト41の上側の端部における外周面に固定される。図2に示すように、マグネットホルダ46は、回路基板70よりも上側に配置される。マグネットホルダ46は、第1円環板部46aと、第2円環板部46bと、第1筒部46cと、第2筒部46dと、第3筒部46eと、被支持部46fと、位置決め凸部46gと、を有する。
【0019】
図3に示すように、第1円環板部46aおよび第2円環板部46bは、中心軸J1を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。図2に示すように、第1円環板部46aは、回路基板70のうち後述する貫通孔70aよりも径方向外側の部分の上側に配置される。第2円環板部46bは、第1円環板部46aよりも上側かつ径方向内側に配置される。第2円環板部46bは、貫通孔70aの上側に配置される。第2円環板部46bの外径は、第1円環板部46aの外径よりも小さい。
【0020】
図3に示すように、第1筒部46cは、第1円環板部46aの径方向外縁部から下側に突出する円筒状である。第2筒部46dは、第1円環板部46aの径方向内縁部から上側に突出する円筒状である。第2筒部46dの上側の端部には、第2円環板部46bの径方向外縁部が繋がる。すなわち、第2筒部46dは、第1円環板部46aの径方向内縁部と第2円環板部46bの径方向外縁部とを繋ぐ。第2筒部46dの外径および内径は、第1筒部46cの外径および内径よりも小さい。
【0021】
第3筒部46eは、第2円環板部46bの径方向内縁部から上側に突出する筒状である。第3筒部46eは、円筒の周方向の一部が切り欠かれた形状であり、軸方向Zに沿って視て、径方向のうちの一方向に開口するC字形状である。第3筒部46eの上側の端部は、マグネットホルダ46の上側の端部である。第3筒部46eの外径および内径は、第2筒部46dの外径および内径よりも小さい。第3筒部46eの径方向内側には、モータシャフト41の上側の端部が嵌め合わされる。モータシャフト41の上側の端部は、第3筒部46eよりも僅かに上側に突出する。
【0022】
図3および図4に示すように、被支持部46fは、第2円環板部46bの径方向内縁部から径方向内側に突出する。被支持部46fは、板面が軸方向Zと直交する板状である。被支持部46fは、C字状の第3筒部46eが径方向に開口する部分を介して、第3筒部46eよりも径方向内側に突出する。被支持部46fは、軸方向Zに沿って視て略矩形状である。図3に示すように、被支持部46fは、位置決め凹部41bの内部に嵌め合わされる。これにより、被支持部46fが位置決め凹部41bの内側面のうち周方向両側に位置する側面に引っ掛かり、マグネットホルダ46をモータシャフト41に対して周方向に位置決めできる。
【0023】
図2に示すように、被支持部46fは、位置決め凹部41bの内側面のうち下側に位置する底面に接触し、支持される。これにより、被支持部46fは、モータシャフト41の一部に下側から支持される。したがって、マグネットホルダ46をモータシャフト41に対して軸方向Zに位置決めでき、かつ、マグネットホルダ46がモータシャフト41に対して下側にずれることを阻止できる。
【0024】
位置決め凸部46gは、第1円環板部46aの径方向内縁部から下側に突出する。位置決め凸部46gは、例えば、第1円環板部46aの一部が下側に切り起こされて作られる。位置決め凸部46gの下側の端部は、第1筒部46cの下側の端部よりも上側に配置される。
【0025】
図4に示すように、モータ部用センサマグネット45は、中心軸J1を中心とする円環板状である。モータ部用センサマグネット45の板面は、軸方向Zと直交する。モータ部用センサマグネット45は、マグネットホルダ46に固定される。より詳細には、モータ部用センサマグネット45は、第1筒部46cの径方向内側に嵌め合わされ、第1円環板部46aの下側の面に接着剤等により固定される。これにより、モータ部用センサマグネット45は、マグネットホルダ46を介してモータシャフト41に取り付けられる。
【0026】
上述したように、マグネットホルダ46は、回路基板70よりも上側に配置される。これにより、図2に示すように、本実施形態においてモータ部用センサマグネット45は、モータシャフト41のうち回路基板70よりも上側に突出した部分に取り付けられる。モータ部用センサマグネット45は、回路基板70の上側の面と隙間を介して軸方向Zに対向する。
【0027】
なお、本明細書において「モータシャフトのうち被検出部が取り付けられる部分」とは、被検出部がモータシャフトに直接的に固定される場合には、モータシャフトのうち被検出部が接触する部分であり、被検出部がモータシャフトに被検出部ホルダを介して間接的に固定される場合には、モータシャフトのうち被検出部ホルダが接触する部分である。本実施形態では、被検出部としてのモータ部用センサマグネット45は、被検出部ホルダとしてのマグネットホルダ46を介してモータシャフト41に固定されるため、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分とは、モータシャフト41のうちマグネットホルダ46が接触する部分である。
【0028】
本実施形態においてモータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分は、第1ベアリング44aよりも上側に配置される。すなわち、第1ベアリング44aは、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分よりも下側の部分を支持する。そのため、第1ベアリング44aが、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分よりも上側の部分を支持する場合に比べて、電動アクチュエータ10を軸方向Zに小型化しやすい。
【0029】
図4に示すように、モータ部用センサマグネット45は、位置決め凹部45aを有する。位置決め凹部45aは、モータ部用センサマグネット45の径方向内縁部から径方向外側に窪む。位置決め凹部45aは、モータ部用センサマグネット45を軸方向Zに貫通する。位置決め凹部45aの内部には、位置決め凸部46gが嵌め合わされる。これにより、位置決め凸部46gが位置決め凹部45aの内側面のうち周方向両側に位置する側面に引っ掛かり、モータ部用センサマグネット45をマグネットホルダ46に対して周方向に位置決めできる。したがって、被支持部46fおよび位置決め凹部41bと、位置決め凸部46gおよび位置決め凹部45aとによって、モータ部用センサマグネット45をモータシャフト41に対して周方向に位置決めすることができる。
【0030】
図1に示すように、減速機構50は、モータシャフト41の上側に連結される。減速機構50は、ロータ本体42およびステータ43の上側に配置される。減速機構50は、外歯ギア51と、内歯ギア52と、出力ギア53と、を有する。
【0031】
図示は省略するが、外歯ギア51は、偏心軸部41aの偏心軸J2を中心として、偏心軸J2の径方向に拡がる円環板状である。外歯ギア51の径方向外側面には、歯車部が設けられる。外歯ギア51は、モータシャフト41に第3ベアリング44cを介して接続される。これにより、減速機構50は、モータシャフト41に連結される。外歯ギア51は、第3ベアリング44cの外輪に径方向外側から嵌め合わされる。これにより、第3ベアリング44cはモータシャフト41と外歯ギア51とを、偏心軸J2周りに相対的に回転可能に連結する。
【0032】
外歯ギア51は、外歯ギア51を軸方向Zに貫通する複数の孔51aを有する。図示は省略するが、複数の孔51aは、偏心軸J2を中心とする周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。孔51aの軸方向Zに沿って視た形状は、円形状である。
【0033】
内歯ギア52は、外歯ギア51の径方向外側を囲んで回路基板ケース20に固定され、外歯ギア51と噛み合う。内歯ギア52は、ハウジング11の後述する金属部材22に保持される。内歯ギア52は、中心軸J1を中心とする円環状である。内歯ギア52の内周面には、歯車部が設けられる。内歯ギア52の歯車部は、外歯ギア51の歯車部と噛み合う。
【0034】
出力ギア53は、出力ギア本体53aと、複数のピン53bと、を有する。出力ギア本体53aは、外歯ギア51および内歯ギア52の下側に配置される。出力ギア本体53aは、中心軸J1を中心として径方向に拡がる円環板状である。出力ギア本体53aの径方向外側面には、歯車部が設けられる。出力ギア本体53aは、モータシャフト41に第4ベアリング44dを介して接続される。
【0035】
複数のピン53bは、出力ギア本体53aの上面から上側に突出する円筒状である。図示は省略するが、複数のピン53bは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。ピン53bの外径は、孔51aの内径よりも小さい。複数のピン53bは、複数の孔51aのそれぞれに下側から通される。ピン53bの外周面は、孔51aの内周面と内接する。孔51aの内周面は、ピン53bを介して、外歯ギア51を中心軸J1周りに揺動可能に支持する。
【0036】
出力部60は、電動アクチュエータ10の駆動力を出力する部分である。出力部60は、モータ部40の径方向外側に配置される。出力部60は、出力シャフト61と、駆動ギア62と、出力部用センサマグネット63と、マグネットホルダ64と、を有する。
【0037】
出力シャフト61は、モータシャフト41の軸方向Zに延びる筒状である。このように、出力シャフト61がモータシャフト41と同じ方向に延びるため、モータシャフト41の回転を出力シャフト61に伝達する減速機構50の構造を簡単化できる。本実施形態において出力シャフト61は、仮想軸である出力中心軸J3を中心とする円筒状である。出力中心軸J3は、中心軸J1と平行であり、中心軸J1から径方向に離れて配置される。すなわち、モータシャフト41と出力シャフト61とは、モータシャフト41の径方向に離れて配置される。
【0038】
出力シャフト61は、下側に開口する開口部61dを有する。本実施形態において出力シャフト61は、軸方向両側に開口する。出力シャフト61は、内周面の下部にスプライン溝を有する。出力シャフト61は、円筒状の出力シャフト本体61aと、出力シャフト本体61aから出力中心軸J3の径方向外側に突出するフランジ部61bと、を有する。出力シャフト61は、モータシャフト41の径方向においてロータ本体42と重なる位置に配置される。出力シャフト61の下側の端部、すなわち開口部61dは、モータ部40の下側の端部よりも上側に配置される。本実施形態においてモータ部40の下側の端部とは、モータシャフト41の下側の端部である。
【0039】
出力シャフト61には、下側から開口部61dを介して被駆動シャフトDSが挿入されて連結される。より詳細には、被駆動シャフトDSの外周面に設けられたスプライン部が、出力シャフト61の内周面に設けられたスプライン溝に嵌め合わされることで、出力シャフト61と被駆動シャフトDSとが連結される。被駆動シャフトDSには、出力シャフト61を介して電動アクチュエータ10の駆動力が伝達される。これにより、電動アクチュエータ10は、被駆動シャフトDSを出力中心軸J3周りに回転させる。
【0040】
以上に説明したように、軸方向Zにおいて、被駆動シャフトDSが挿入される開口部61dが開口する側は、減速機構50に対してモータ部40が配置されるのと同じ側である。そのため、モータ部40を、電動アクチュエータ10が取り付けられる被取付体側に配置することができる。これにより、被駆動シャフトDSの径方向において、被駆動シャフトDSの外側の空間を、モータ部40を配置する空間として利用できる。したがって、電動アクチュエータ10をより近づけた状態で被取付体に取り付けることができる。そのため、本実施形態によれば、被取付体に取り付けた際に取り付け高さを小さくできる電動アクチュエータ10が得られる。本実施形態において被取付体は、車両である。
【0041】
また、本実施形態によれば、モータシャフト41がモータ部40から減速機構50に向かって延びる向きは、上向きであり、出力シャフト61の開口部61dが開口する向きと逆向きである。そのため、出力シャフト61が減速機構50から延びる向きを、モータシャフト41がモータ部40から減速機構50に向かって延びる向きと逆向きにできる。これにより、モータシャフト41と出力シャフト61とを、モータシャフト41の径方向に重ねて配置することができ、電動アクチュエータ10を軸方向Zに小型化できる。また、出力シャフト61がモータシャフト41の径方向においてロータ本体42と重なるため、電動アクチュエータ10をより軸方向Zに小型化できる。これにより、被取付体に取り付けた際に電動アクチュエータ10の取り付け高さをより小さくしやすい。
【0042】
また、本実施形態によれば、モータ部40の下側の端部は、開口部61dよりも下側に配置される。そのため、モータ部40をより被取付体に近づけて配置することができる。これにより、被取付体に取り付けた際に電動アクチュエータ10の取り付け高さをより小さくしやすい。
【0043】
駆動ギア62は、出力シャフト61に固定され出力ギア53と噛み合う。本実施形態において駆動ギア62は、出力シャフト本体61aの外周面のうちフランジ部61bよりも上側の部分に固定される。駆動ギア62は、フランジ部61bの上面と接触する。図示は省略するが、駆動ギア62は、出力シャフト61から出力ギア53に向かって延び、出力ギア53に近づくに従って幅が大きくなる扇形ギアである。駆動ギア62の出力ギア53側の端部には、歯車部が設けられる。駆動ギア62の歯車部は、出力ギア53の歯車部と噛み合う。
【0044】
マグネットホルダ64は、出力中心軸J3を中心として軸方向Zに延びる略円筒状の部材である。マグネットホルダ64は、軸方向両側に開口する。マグネットホルダ64は、出力シャフト61の上側、かつ、減速機構50の径方向外側に配置される。マグネットホルダ64は、回路基板70を軸方向Zに貫通する。マグネットホルダ64の内部は、出力シャフト61の内部と繋がる。マグネットホルダ64には、出力シャフト61に挿入された被駆動シャフトDSの上端部が圧入される。これにより、マグネットホルダ64は、被駆動シャフトDSに固定される。
【0045】
出力部用センサマグネット63は、出力中心軸J3を中心とする円環状である。出力部用センサマグネット63は、マグネットホルダ64の上側の端部における外周面に固定される。被駆動シャフトDSにマグネットホルダ64が固定されることで、出力部用センサマグネット63は、マグネットホルダ64を介して被駆動シャフトDSに固定される。出力部用センサマグネット63は、回路基板70の上側の面と隙間を介して対向する。
【0046】
モータシャフト41が中心軸J1周りに回転されると、偏心軸部41aは、中心軸J1を中心として周方向に公転する。偏心軸部41aの公転は第3ベアリング44cを介して外歯ギア51に伝達され、外歯ギア51は、孔51aの内周面とピン53bの外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギア51の歯車部と内歯ギア52の歯車部との噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギア52に、外歯ギア51を介してモータシャフト41の回転力が伝達される。
【0047】
ここで、本実施形態では、内歯ギア52は固定されているため回転しない。そのため、内歯ギア52に伝達される回転力の反力によって、外歯ギア51が偏心軸J2周りに回転する。このとき外歯ギア51の回転する向きは、モータシャフト41の回転する向きと反対向きとなる。外歯ギア51の偏心軸J2周りの回転は、孔51aとピン53bとを介して、出力ギア53に伝達される。これにより、出力ギア53が中心軸J1周りに回転する。出力ギア53には、モータシャフト41の回転が減速されて伝達される。
【0048】
出力ギア53が回転すると、出力ギア53に噛み合う駆動ギア62が出力中心軸J3周りに回転する。これにより、駆動ギア62に固定された出力シャフト61が出力中心軸J3周りに回転する。このようにして、出力シャフト61には、減速機構50を介してモータシャフト41の回転が伝達される。
【0049】
回路基板70は、ロータ本体42よりも上側に配置される。回路基板70は、減速機構50の上側に配置される。回路基板70は、板面が軸方向Zと直交する板状である。回路基板70は、回路基板70を軸方向Zに貫通する貫通孔70aを有する。貫通孔70aには、モータシャフト41が通される。これにより、モータシャフト41は、回路基板70を軸方向Zに貫通する。回路基板70は、図示しないバスバーを介して、ステータ43と電気的に接続される。すなわち、回路基板70は、モータ部40と電気的に接続される。
【0050】
モータ部センサ71は、回路基板70の上面に固定される。より詳細には、モータ部センサ71は、回路基板70の上側の面のうちモータ部用センサマグネット45と隙間を介して軸方向Zに対向する部分に固定される。モータ部センサ71は、モータ部用センサマグネット45の磁界を検出する磁気センサである。モータ部センサ71は、例えば、ホール素子である。図示は省略するが、モータ部センサ71は、例えば、周方向に沿って3つ設けられる。モータ部センサ71は、モータ部用センサマグネット45の磁界を検出することでモータ部用センサマグネット45の回転位置を検出してモータシャフト41の回転を検出する。
【0051】
本実施形態では、減速機構50がモータシャフト41の上側に連結され、回路基板70がロータ本体42よりも上側かつ減速機構50の上側に配置される。そのため、回路基板70とロータ本体42との軸方向Zの間に減速機構50が配置される。これにより、回路基板70に固定されるモータ部センサ71を、ロータ本体42およびステータ43から離して配置することができる。したがって、モータ部センサ71がロータ本体42およびステータ43から生じる磁界の影響を受けにくくでき、モータ部センサ71の検出精度を向上できる。
【0052】
出力部センサ72は、回路基板70の上面に固定される。より詳細には、出力部センサ72は、回路基板70の上側の面のうち出力部用センサマグネット63と隙間を介して軸方向Zに対向する部分に固定される。出力部センサ72は、出力部用センサマグネット63の磁界を検出する磁気センサである。出力部センサ72は、例えば、ホール素子である。図示は省略するが、出力部センサ72は、例えば、出力中心軸J3を中心とする周方向に沿って3つ設けられる。出力部センサ72は、出力部用センサマグネット63の磁界を検出することで出力部用センサマグネット63の回転位置を検出して被駆動シャフトDSの回転を検出する。
【0053】
本実施形態によれば、減速機構50がモータ部40よりも回路基板70側に配置される構成により、出力ギア53に回転駆動力を伝達する駆動ギア62を出力部用センサマグネット63に近づけて配置できる。そのため、出力ギア53における回転駆動力が伝達される部分から出力部用センサマグネット63が固定される部分までの軸方向Zの距離を短くでき、出力部用センサマグネット63が固定される部分における被駆動シャフトDSの軸ぶれを抑制できる。これにより、出力部センサ72による被駆動シャフトDSの回転検出精度を向上できる。
【0054】
ハウジング11は、モータ部40、減速機構50、出力部60、回路基板70、モータ部センサ71、出力部センサ72、バスバーホルダ90および図示しないバスバーを収容する。ハウジング11は、モータケース30と、回路基板ケース20と、を有する。モータケース30は、上側に開口する。モータケース30は、モータケース本体31と、ステータ固定部材37と、を有する。回路基板ケース20は、略直方体の箱状である。回路基板ケース20は、モータケース30の上側に取り付けられてモータケース30の開口を塞ぐ。回路基板ケース20は、回路基板70を収容する。回路基板ケース20は、回路基板ケース本体21と、金属部材22と、回路基板ケースカバー26と、を有する。
【0055】
回路基板ケース本体21とモータケース本体31とは、樹脂製である。本実施形態においては、回路基板ケース本体21とモータケース本体31とによってハウジング本体11aが構成される。すなわち、ハウジング11は、樹脂製のハウジング本体11aを有する。
【0056】
回路基板ケース本体21は、上側に開口する箱状である。回路基板ケース本体21は、底壁21aと、側壁21bと、を有する。底壁21aは、軸方向Zと直交する平面に沿って拡がる。底壁21aは、軸方向Zに沿って視て、モータケース本体31よりも径方向外側に拡がる。底壁21aは、モータケース30の上側の開口を塞ぐ。底壁21aは、ステータ43の上側を覆う。
【0057】
底壁21aは、底壁21aの下側の面から上側に窪む凹部21cを有する。底壁21aは、底壁21aを軸方向Zに貫通する中央貫通孔21dを有する。中央貫通孔21dは、凹部21cの底面から底壁21aの上側の面まで底壁21aを貫通する。中央貫通孔21dは、軸方向Zに沿って視て、中心軸J1を中心とする円形状である。中央貫通孔21dには、モータシャフト41が通される。
【0058】
側壁21bは、底壁21aの外縁部から上側に突出する角筒状である。側壁21bの内側には、回路基板70が収容される。すなわち、回路基板ケース20は、底壁21aよりも上側において回路基板70を収容する。側壁21bは、上側に開口する。側壁21bの上側の開口、すなわち回路基板ケース20の上側の開口は、回路基板ケースカバー26によって塞がれる。回路基板ケースカバー26は、例えば、金属製である。
【0059】
金属部材22は、金属製である。金属部材22は、回路基板ケース本体21に保持される。すなわち、金属部材22は、ハウジング本体11aに保持される。金属部材22は、凹部21c内に収容されて保持される。本実施形態において金属部材22の一部は、ハウジング本体11aに埋め込まれる。そのため、金型に金属部材22を挿入して樹脂を流し込むインサート成形を用いて、ハウジング本体11aの一部または全体を作ることができる。したがって、ハウジング11の作製が容易である。本実施形態では、ハウジング本体11aのうち回路基板ケース本体21が、金型に金属部材22を挿入して樹脂を流し込むインサート成形によって作られる。
【0060】
図5に示すように、金属部材22は、ベアリング保持部23と、腕部25と、出力シャフト支持部24と、を有する。ベアリング保持部23は、円環板部23aと、外側筒部23bと、内側筒部23cと、天板部23dと、を有する。円環板部23aは、中心軸J1を中心とする円環板状である。円環板部23aの板面は、軸方向Zと直交する。
【0061】
外側筒部23bは、円環板部23aの外周縁部から下側に突出する円筒状である。外側筒部23bは、外側筒部23bの壁部を径方向に貫通する複数のスリット23eを有する。複数のスリット23eは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置される。スリット23eは、下側に開口する。
【0062】
図1に示すように、外側筒部23bの径方向内側には、内歯ギア52が保持される。これにより、減速機構50は、金属部材22を介して底壁21aの下側の面に保持される。図示は省略するが、内歯ギア52の外周面には径方向外側に突出する複数の突起部が設けられ、その突起部は、スリット23eのそれぞれに挿入される。これにより、突起部がスリット23eの内側面に引っ掛かり、内歯ギア52が金属部材22に対して周方向に動くことを抑制できる。外側筒部23bは、中央貫通孔21dの径方向内側に埋め込まれて保持される。
【0063】
内側筒部23cは、円環板部23aの内周縁部から上側に突出する円筒状である。内側筒部23cの径方向内側には、第1ベアリング44aが保持される。これにより、ベアリング保持部23は、第1ベアリング44aを保持する。内側筒部23cは、底壁21aよりも上側に突出する。内側筒部23cは、側壁21bの径方向内側に配置される。内側筒部23cは、貫通孔70aを介して回路基板70を軸方向Zに貫通し、回路基板70よりも上側に突出する。
【0064】
これにより、内側筒部23cに保持される第1ベアリング44aの少なくとも一部は、貫通孔70aに挿入される。そのため、第1ベアリング44aによって、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分に近い位置で、モータシャフト41を支持することができる。これにより、モータシャフト41のうちモータ部用センサマグネット45が取り付けられる部分の軸がぶれることを抑制でき、モータ部用センサマグネット45の位置がぶれることを抑制できる。したがって、モータ部センサ71によるモータシャフト41の回転検出精度が低下することを抑制できる。また、径方向に沿って視て、第1ベアリング44aと回路基板70とを重ねて配置できるため、電動アクチュエータ10を軸方向Zに小型化しやすい。
【0065】
本明細書において「ベアリング保持部が第1ベアリングを保持する」とは、ベアリング保持部が第1ベアリングを径方向に位置決めできればよく、第1ベアリングがベアリング保持部に固定されなくてもよい。本実施形態において第1ベアリング44aは、内側筒部23cに嵌め合わされることで、径方向に位置決めされる。第1ベアリング44aは、内側筒部23cに対して固定されない。
【0066】
天板部23dは、内側筒部23cの上側の端部から径方向内側に突出する。天板部23dは、中心軸J1を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。天板部23dの内側には、モータシャフト41の上側の端部が通される。天板部23dの内周縁部は、下側に湾曲する。天板部23dは、第1ベアリング44aの上側を覆う。
【0067】
図2に示すように、天板部23dと第1ベアリング44aとの軸方向Zの間には、予圧部材47が配置される。すなわち、電動アクチュエータ10は、予圧部材47を備える。予圧部材47は、周方向に沿って延びる円環状のウェーブワッシャである。予圧部材47は、天板部23dの下側の面と第1ベアリング44aの外輪の上側の端部とに接触する。予圧部材47は、第1ベアリング44aの外輪に対して下向きの予圧を加える。これにより、予圧部材47は、第1ベアリング44aに下側向きに予圧を加え、第1ベアリング44aを介してモータシャフト41に下側向きに予圧を加える。
【0068】
予圧部材47によって下側向きに予圧を受けるモータシャフト41は、図1に示す第2ベアリング44bによって下側から支持される。より詳細には、第2ベアリング44bは、外輪が後述するモータ収容部32の環状凸部32aによって下側から支持され、モータシャフト41の外周面に固定された内輪によってモータシャフト41を下側から支持する。本実施形態において第2ベアリング44bは、モータシャフト41を下側から支持する支持部に相当する。すなわち、電動アクチュエータ10は、支持部としての第2ベアリング44bを備える。
【0069】
支持部としての第2ベアリング44bが設けられることで、予圧部材47によってモータシャフト41に下側向きの予圧を加えても、モータシャフト41が下側に移動することを抑制できる。予圧部材47は、モータシャフト41に下側向きの予圧を加え、モータシャフト41を支持部としての第2ベアリング44bに押し付ける。これにより、電動アクチュエータ10に振動が加えられていない状態において、モータシャフト41の軸方向Zの位置を最も下側の位置に維持することができる。したがって、電動アクチュエータ10に振動が加えられてモータシャフト41が軸方向Zに移動する場合であっても、モータシャフト41が下側に移動することを抑制でき、モータシャフト41が移動する向きを上側向きとすることができる。
【0070】
そして、モータ部用センサマグネット45は回路基板70の上側の面と隙間を介して軸方向Zに対向し、かつ、モータ部センサ71は回路基板70の上側の面のうちモータ部用センサマグネット45と隙間を介して軸方向Zに対向する部分に固定される。すなわち、モータシャフト41に取り付けられるモータ部用センサマグネット45は、モータ部センサ71の上側に配置される。これにより、電動アクチュエータ10に振動が加えられた際のモータシャフト41の移動する向きを上側向きにできることで、モータシャフト41が移動しても、モータ部用センサマグネット45がモータ部センサ71から離れる向きに移動する。したがって、モータ部用センサマグネット45がモータ部センサ71に接触することを抑制できる。なお、モータシャフト41が上側に移動する際、予圧部材47は、軸方向Zに圧縮弾性変形する。
【0071】
以上に説明したように、本実施形態によれば、予圧部材47がモータシャフト41に予圧を加える向きをモータ部用センサマグネット45からモータ部センサ71に向かう向きとすることで、モータ部用センサマグネット45がモータ部センサ71に接触することを抑制できる。これにより、モータ部用センサマグネット45およびモータ部センサ71が損傷することを抑制できる構造を有する電動アクチュエータ10が得られる。
【0072】
また、例えば、モータ部用センサマグネットが回路基板よりも下側に配置され、モータ部センサが回路基板の下側の面に取り付けられる場合について考える。この場合、上述したようにしてモータ部用センサマグネットとモータ部センサとの接触を抑制するためには、予圧部材によってモータシャフトに対して上側向きの予圧を加えて、電動アクチュエータに振動が加えられた際のモータシャフトの移動する向きを下側向きとすればよい。しかし、この場合、モータシャフトが下側に移動した際に、モータ部を収容するモータケース等にモータ部用センサマグネットまたはモータ部用センサマグネットを保持するマグネットホルダが接触する場合がある。これにより、モータシャフトに対するモータ部用センサマグネットの位置が上側にずれる場合がある。この状態で、モータシャフトが元の位置に戻ると、上側に位置するモータ部センサにモータ部用センサマグネットが接触する虞があった。
【0073】
これに対して、本実施形態によれば、モータシャフト41は、ロータ本体42よりも上側に配置される回路基板70を軸方向Zに貫通し、モータ部用センサマグネット45は、モータシャフト41のうち回路基板70よりも上側に突出した部分に取り付けられる。したがって、電動アクチュエータ10に振動が加えられた際にモータシャフト41が移動する向きは、モータ部40を収容するモータケース30から離れる向きとなる。そのため、モータシャフト41が移動した際に、モータ部用センサマグネット45およびマグネットホルダ46がモータケース30と接触することを抑制でき、モータシャフト41に対するモータ部用センサマグネット45の位置がずれることを抑制できる。これにより、モータシャフト41の軸方向Zの位置が元に戻った際に、モータ部用センサマグネット45とモータ部センサ71とが接触することを抑制できる。したがって、モータ部用センサマグネット45およびモータ部センサ71が損傷することをより抑制できる。
【0074】
本実施形態では、図2に示すように、モータシャフト41の上側の端部、モータ部用センサマグネット45、およびマグネットホルダ46と、回路基板ケースカバー26との軸方向Zの間には、隙間Sが設けられる。隙間Sは、電動アクチュエータ10に振動が加えられた際に上側に移動するモータシャフト41の最大移動量よりも大きい。したがって、モータシャフト41が上側に移動した場合であっても、モータシャフト41の上側の端部、モータ部用センサマグネット45、およびマグネットホルダ46が回路基板ケースカバー26と接触することを抑制できる。
【0075】
また、本実施形態によれば、第1ベアリング44aがボールベアリングであるため、予圧部材47によって第1ベアリング44aに予圧が加えられることで、第1ベアリング44aによるモータシャフト41の軸保持精度を向上できる。また、予圧部材47による予圧は、モータシャフト41を介して、ボールベアリングである第2ベアリング44b、第3ベアリング44c、および第4ベアリング44dにも伝達される。したがって、各ボールベアリングによるモータシャフト41の軸保持精度を向上できる。また、1つの予圧部材47によって、第1ベアリング44aに予圧を加えるとともにモータシャフト41にも予圧加えることができるため、電動アクチュエータ10の部品点数が増加することを抑制できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、モータ部用センサマグネット45を保持するマグネットホルダ46は、モータシャフト41の一部に下側から支持される被支持部46fを有する。そのため、モータシャフト41が上側に移動した際、仮にマグネットホルダ46がハウジング11に接触した場合であっても、被支持部46fによってマグネットホルダ46がモータシャフト41に対して下側に移動することを抑制できる。そのため、モータ部用センサマグネット45がモータシャフト41に対して下側に移動することを抑制でき、モータシャフト41の軸方向Zの位置が元に戻った際に、モータ部用センサマグネット45がモータ部センサ71に接触することを抑制できる。
【0077】
また、本実施形態のように、被検出部がマグネットである場合、他の部材と接触した際に、被検出部の一部が欠ける等、損傷が生じやすい。したがって、上述した被検出部としてのモータ部用センサマグネット45の損傷を抑制できる効果は、本実施形態のように被検出部がマグネットである場合に、特に有用に得られる。
【0078】
また、本実施形態によれば、予圧部材47は、ウェーブワッシャである。そのため、例えば、予圧部材がコイルスプリング等である場合に比べて、電動アクチュエータ10を軸方向Zに小型化できる。
【0079】
図1に示すように、腕部25は、ベアリング保持部23からモータシャフト41の径方向外側に延びる。図5に示すように、腕部25は、板面が軸方向Zと直交する板状である。腕部25は、軸方向Zに沿って視て、長方形状である。腕部25は、ベアリング保持部23と出力シャフト支持部24とを繋ぐ。これにより、金属部材22のうちベアリング保持部23と出力シャフト支持部24と以外の部分の大きさを最小限に抑えやすく、金属部材22を小型化しやすい。したがって、ハウジング11の製造コストを低減しやすく、ハウジング11の重量を小さくしやすい。
【0080】
出力シャフト支持部24は、腕部25の径方向外側の端部に繋がる。出力シャフト支持部24は、出力中心軸J3を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。このように、本実施形態によれば、出力シャフト支持部24および腕部25が板状であるため、出力シャフト支持部24および腕部25を金属製の板部材を打ち抜く、または折り曲げる等のプレス加工によって容易に作ることができる。本実施形態において金属部材22は、金属製の板部材をプレス加工することによって作られる単一の部材である。
【0081】
出力シャフト支持部24は、出力シャフト支持部24を軸方向Zに貫通する貫通孔24aを有する。図1に示すように、貫通孔24aには、出力シャフト本体61aの上側の端部である嵌合部61cが嵌め合わされる。すなわち、出力シャフト61は、貫通孔24aに嵌め合わされる嵌合部61cを有する。これにより、出力シャフト支持部24は、出力シャフト61を支持する。
【0082】
このように、本実施形態によれば、金属製の金属部材22によって第1ベアリング44aを保持でき、かつ、出力シャフト61を支持できる。これにより、第1ベアリング44aに支持されるモータシャフト41と出力シャフト61とを、相対位置精度よく配置できる。また、金属部材22が保持されるハウジング本体11aは、樹脂製であるため、ハウジング11を軽量化できる。以上により、本実施形態によれば、軽量化でき、かつ、モータシャフト41と出力シャフト61との相対位置精度が低下することを抑制できる構造を有する電動アクチュエータ10が得られる。また、金属部材22は、金属製であるため、樹脂に比べて強度および耐熱性が高い。そのため、ハウジング11に外力および熱が加えられた場合であっても、金属部材22が大きく変形・損傷することを抑制でき、モータシャフト41と出力シャフト61とがずれることを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態によれば、貫通孔24aに嵌合部61cを嵌め合わせることで、出力シャフト61を金属部材22に対して、容易に支持させることができ、かつ、容易に位置決めすることができる。したがって、電動アクチュエータ10の組み立てを容易にできる。
【0084】
モータケース本体31は、モータ収容部32と、出力部保持部33と、を有する。モータ収容部32は、底部を有し上側に開口する筒状である。モータ収容部32は、中心軸J1を中心とする円筒状である。モータ収容部32は、モータ部40を収容する。すなわち、モータケース本体31は、モータ部40を収容する。
【0085】
なお、本明細書において「モータケース本体がモータ部を収容する」とは、モータケース本体によってモータ部の一部が収容されればよく、モータ部の他の一部がモータケース本体の外部に突出してもよい。本実施形態では、モータケース本体31、すなわちモータ収容部32は、モータシャフト41の下側の部分、ロータ本体42、ステータ43、および第2ベアリング44bを収容する。
【0086】
モータ収容部32は、モータ収容部32の底面から上側に突出する環状凸部32aを有する。図示は省略するが、環状凸部32aは、中心軸J1を中心とする円環状である。環状凸部32aは、第2ベアリング44bの外輪を下側から支持する。環状凸部32aの径方向内側部分は、軸方向Zに沿って視て、第2ベアリング44bの内輪およびモータシャフト41の下側の端部と重なる。そのため、モータシャフト41に下側向きの予圧が加えられて、第2ベアリング44bの内輪およびモータシャフト41の下側の端部が、第2ベアリング44bの外輪より下側に突出して配置される場合であっても、第2ベアリング44bの内輪およびモータシャフト41の下側の端部がモータ収容部32の底面と接触することを抑制できる。
【0087】
出力部保持部33は、モータ収容部32から径方向外側に突出する。出力部保持部33は、基部33aと、出力シャフト保持部33bと、を有する。基部33aは、モータ収容部32から径方向外側に突出する。出力シャフト保持部33bは、基部33aの径方向外側の端部から軸方向両側に突出する。出力シャフト保持部33bは、出力中心軸J3を中心とする円筒状である。出力シャフト保持部33bは、軸方向両側に開口する。出力シャフト保持部33bの内部は、基部33aを軸方向Zに貫通する。
【0088】
出力シャフト保持部33bの内側には、円筒状のブッシュ65が嵌め合わされる。ブッシュ65の上側の端部には、出力中心軸J3を中心とする径方向の外側に突出するフランジ部が設けられる。ブッシュ65のフランジ部は、出力シャフト保持部33bの上側の端部によって下側から支持される。ブッシュ65の内側には、出力シャフト本体61aのうちフランジ部61bよりも下側の部分が嵌め合わされる。ブッシュ65は、出力シャフト61を出力中心軸J3周りに回転可能に支持する。フランジ部61bは、ブッシュ65のフランジ部を介して出力シャフト保持部33bの上側の端部によって下側から支持される。出力シャフト61の下側の開口部61dは、ブッシュ65よりも下側に配置される。
【0089】
ステータ固定部材37は、底部を有し上側に開口する筒状である。ステータ固定部材37は、中心軸J1を中心とする円筒状である。ステータ固定部材37は、モータ収容部32の内側に嵌め合わされる。ステータ固定部材37の底部には周方向に沿って配置される複数の貫通孔が設けられる。ステータ固定部材37の貫通孔には、モータ収容部32の底部に設けられた複数の突起がそれぞれ嵌め合わされる。
【0090】
ステータ固定部材37の上側の端部は、モータ収容部32よりも上側に突出する。ステータ固定部材37の底部には、第2ベアリング44bが保持される。ステータ固定部材37の内周面には、ステータ43の外周面が固定される。ステータ固定部材37は、金属製である。モータケース30は、例えば、金型にステータ固定部材37が挿入された状態で樹脂が流し込まれるインサート成形によって作られる。
【0091】
バスバーホルダ90は、ステータ固定部材37の上側の開口に配置される。バスバーホルダ90は、中心軸J1を中心とする円環状であり、板面が軸方向Zと直交する板状である。バスバーホルダ90は、図示しないバスバーを保持する。バスバーホルダ90は、ステータ43の上側を覆う。
【0092】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。予圧部材は、モータシャフトに予圧を加えられるならば、特に限定されない。予圧部材は、コイルスプリング等であってもよい。また、予圧部材は、モータシャフトに直接的に接触して予圧を加えてもよい。また、第1ベアリング等のボールベアリングに予圧を加える部材とは別に、モータシャフトに予圧を加える予圧部材が設けられてもよい。
【0093】
支持部は、モータシャフトを下側から支持できるならば、特に限定されない。支持部は、例えば、モータ収容部の底部から上側に突出する凸部であってもよい。この場合、凸部は、例えば、モータシャフトの下側の端部の中心と点接触し、モータシャフトを下側から直接的に支持する。
【0094】
モータ部センサは、ホール素子以外の磁気センサであってもよいし、磁気センサ以外のセンサであってもよい。モータ部センサは、例えば、磁気抵抗素子であってもよいし、光学式センサであってもよい。被検出部は、モータ部センサによって検出されるならば、特に限定されず、マグネット以外であってもよい。被検出部は、モータシャフトに直接的に取り付けられてもよい。これらについては、出力部センサ等についても同様である。
【0095】
ハウジング本体は、単一の部材であってもよい。ハウジング本体は、射出成形により単体で作られてもよい。この場合、金属部材は、ハウジング本体が作られた後に、ハウジング本体に保持される。ハウジング本体の形状は、特に限定されない。ハウジング本体は、軸方向に沿って視て、多角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、楕円形状であってもよい。ハウジング本体は、樹脂製でなくてもよく、例えば、金属製であってもよい。
【0096】
金属部材は、特に限定されない。金属部材は、複数の別部材が連結されて構成されてもよい。金属部材は、設けられなくてもよい。第1ベアリング、第2ベアリング、第3ベアリングおよび第4ベアリングは、ボールベアリングでなくてもよく、滑り軸受等であってもよい。減速機構の構成は、特に限定されない。出力シャフトが延びる方向は、モータシャフトが延びる方向と異なってもよい。
【0097】
出力シャフトのうち被駆動シャフトが挿入される開口部は、上側に開口してもよい。出力シャフトが配置される位置は、特に限定されない。
【0098】
上述した実施形態の電動アクチュエータの用途は、特に限定されず、車両以外に搭載されてもよい。また、上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0099】
10…電動アクチュエータ、40…モータ部、41…モータシャフト、42…ロータ本体、44a…第1ベアリング、44b…第2ベアリング(支持部)、45…モータ部用センサマグネット(被検出部)、46…マグネットホルダ(被検出部ホルダ)、46f…被支持部、47…予圧部材、50…減速機構、51a…孔、60…出力部、61…出力シャフト、70…回路基板、70a…貫通孔、71…モータ部センサ、Z…軸方向
図1
図2
図3
図4
図5