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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/34 20060101AFI20230124BHJP
   B41F 13/193 20060101ALI20230124BHJP
   B41F 17/08 20060101ALI20230124BHJP
   B41F 17/26 20060101ALI20230124BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230124BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230124BHJP
   B65D 1/12 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B41F13/193
B41F17/08
B41F17/26
B41J2/01 121
B41J2/01 123
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B65D1/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018120421
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020001724
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】尾関 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098753(JP,A)
【文献】特開2003-034333(JP,A)
【文献】特許第3626424(JP,B2)
【文献】特許第4366220(JP,B2)
【文献】特開2007-069407(JP,A)
【文献】特開2006-248600(JP,A)
【文献】特開2010-105713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/34
B65D 1/12
B41J 2/01
B41F 17/08
B41F 17/26
B41F 13/193
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶表面にニス層を有し、且つネッキング加工された開口部を有する空缶の、前記ニス層の表面の少なくとも一部を改質する表面改質工程、及び
前記ニス層の表面改質された表面に画像を印刷する印刷工程、を含み、
前記表面改質工程が、前記ニス層表面の少なくとも一部にケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付ける工程、前記ニス層表面の少なくとも一部をプラズマ処理する工程、前記ニス層表面の少なくとも一部をコロナ処理する工程、又は前記ニス層表面の少なくとも一部をインキ受容層で被覆する工程である、缶の製造方法。
【請求項2】
前記印刷工程は、インクジェット印刷による印刷工程である、請求項に記載の缶の製造方法。
【請求項3】
前記印刷工程における前記画像の印刷が、少なくともネッキング加工部分に施される、請求項1又は2に記載の管の製造方法。
【請求項4】
ネッキング加工された開口部を有する空缶であって、空缶表面上に、ワックス成分を含むニス層と、前記ニス層の表面の少なくとも一部が改質されてなる表面改質層と、インクジェット画像層と、がこの順に積層されており、前記ニス層が前記空缶表面に積層されており、前記表面改質層が酸化ケイ素膜又はインキ受容層であり、前記インクジェット画像層が少なくともネッキング加工部分に形成されている、空缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷を施した缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶では原料金属の使用量を削減するなどの目的で端部にネッキング加工が施される。ネッキング加工の方法は、様々提案されている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-132522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、空缶へ印刷を施す場合、ネッキング加工後ではネッキング部にオフセット印刷を施すことが一般的に困難であることから、ネッキング加工前に印刷を行っている。また、ネッキング加工に先立って、加工時の摩擦の低減や滑り性を良くするため、空缶の表面にニス層が形成される。
しかし、ネッキング加工前に印刷を行うと、ネッキング加工時にネッキング加工部分において印刷部分がシワになったり、剥がれたりする恐れがあった。また、ニス層が形成された後の印刷はインキを弾きやすいため、特に画像などの印刷は避けられる傾向にあった。
本発明はこのような課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討し、ネッキング加工された開口部を有する空缶のニス層上に画像印刷を施すことで、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
缶表面にニス層を有し、且つネッキング加工された開口部を有する空缶の、前記ニス層上に画像を印刷する印刷工程、を含む、缶の製造方法、を含む。
【0007】
また、ネッキング加工には、ワックス成分を含むニスが必要となるところ、ニスにワックス成分が多く含まれることで、ニス表面でインキが弾かれて、そのまま印刷を行うことが困難であった。そのため、前記印刷工程前に、前記ニス層の表面の少なくとも一部を改質する表面改質工程を含み、前記表面改質された缶表面に画像を印刷することが好ましい。
また、前記印刷工程は、インクジェット印刷による印刷工程であることが好ましい。
【0008】
また、本発明は別の側面として、ネッキング加工された開口部を有する空缶であって、空缶表面上に、ワックス成分を含むニス層と、インクジェット画像層と、がこの順に積層された、空缶である。前記ニス層と前記インクジェット画像層との間に、前記ニス層の表面が改質された表面改質層を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ネッキング加工後の空缶のニス層上に画像を印刷することで、ネッキング加工前に印刷することで生じる、ネッキング加工部分において印刷部分がシワになる問題や印刷部分が剥がれたりする問題を解決できる。
更には、本発明によりネッキング加工後の空缶のニス層上に画像を印刷することが可能となることから、製缶の工程における画像印刷の時期的自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】表面改質処理を行う表面処理装置の一形態を示す模式図である。
図2】一実施形態である空缶の、缶表面の印刷層の上面模式図(a)と、A-A´部の断面模式図(b)である。
図3】一実施形態である空缶の、缶表面の印刷層の上面模式図(a)と、B-B´部の断面模式図(b)である。
図4】一実施形態である空缶の、缶表面の印刷層の上面模式図(a)と、C-C´部の断面模式図(b)である。
図5】一実施形態である空缶の、缶表面の印刷層の上面模式図(a)と、D-D´部の断面模式図(b)である。
図6】印刷工程を実施する印刷システムの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態は缶の製造方法であり、缶表面にニス層を有し、且つネッキング加工された開口部を有する空缶の、前記ニス層上に画像を印刷する印刷工程、を含む。
製缶の工程において、一般的に、開口部にネッキング加工するネッキング工程が行われる。本実施形態においてネッキング加工は特段限定されず、既知の方法が適用される。ネッキング加工の際には、ネッキング加工に先立って、加工時の摩擦の低減や滑り性を良くするため、空缶の表面にニス層が施される。本実施形態の印刷工程では、空缶表面の該ニス層上に画像を印刷する。
【0012】
本実施形態では、印刷工程前に、前記ニス層の表面の少なくとも一部を改質する表面改質工程を含むことが好ましく、表面改質された缶表面に画像を印刷することで、ニス層とニス層上に印刷された画像との密着性が向上する。
また、本実施形態では、上記表面改質工程及び印刷工程以外の工程を、必要に応じて含んでもよい。ネッキング加工された開口部を有する空缶またはネッキング後に表面改質された空缶に内容物を充填して密封する充填密封工程や、充填密封後に、レトルト、パスト、高圧殺菌など、充填缶に殺菌処理をする殺菌処理工程を含んでもよいし、パレタイザーなどによる一時裁置(すなわち、一時的に置かれた、又は一時的に保管された)場所に裁置された空缶や充填缶を、一時裁置場所から取り出す取り出し工程を含んでもよい。さらに、印刷工程後に印刷された空缶や充填缶を一時裁置する裁置工程を含んでもよい。なお、前記記載の工程以外の工程を含んでもよいことは言うまでも無い。
【0013】
<表面改質工程>
表面改質工程は、空缶のニス層表面に対し、その表面を改質する工程である。表面改質工程は、空缶のニス層表面と、画像印刷のインキとの密着性を改善できれば特段その方法は限定されない。例えば、ニス層表面にケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付ける方法、ニス層表面をプラズマ処理する方法、ニス層表面をコロナ処理する方法、ニス層表面に塗布するニスとして、インキ密着性を向上させたニスを用いる方法、ニス層表面にインキを留まらせる受容層でニス層表面を被覆する方法、などが挙げられる。
このうち、ケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付けることで表面改質することが好ましい。ケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付けることで、ニス層表面上に酸化ケイ素膜を形成することができる。ニス層表面に該酸化ケイ素膜を形成することで、その後に行われる画像印刷において、インキとニス層との密着性を改善することができる。
【0014】
ケイ素化合物を含む燃焼炎の吹付けは、例えば特許第3626424号や特許第4366220号などに開示された、既知の方法を用いることができる。
ケイ素化合物は特に限定されず、典型的にはアルキルシランやアルコキシシラン等のシラン化合物があげられるが、これらに限られない。これらのシラン化合物は、窒素、塩素等のハロゲン、ビニル基、アミノ基等を有してもよい。
ニス層表面上に良好な酸化ケイ素膜を形成する観点から、ケイ素化合物の沸点の上限は通常250℃以下であり、200℃以下であってよく、180℃以下であってよく、150℃以下であってよい。下限は特段限定されず、通常20℃以上であり、50℃以上であってよい。
【0015】
燃焼炎の温度は特段限定されるものではなく、通常500℃以上、550℃以上であってよく、600℃以上であってよい。また上限は、通常1500℃以下であり、1250℃以下であってよく、1000℃以下であってよい。
【0016】
燃焼炎の吹き付け時間は特段限定されるものではないが、本実施形態ではニス層に対し燃焼炎を吹き付けるため、短時間の吹き付けによる表面改質を行うことが好ましい。燃焼炎の吹き付けは、画像印刷がされるニス層に複数回行うことが好ましい。本実施形態では燃焼炎の吹き付け時間が、吹き付けられる一部分に対して10秒以内であることが好ましく、5秒以内であってよく、3秒以内であってよく、2秒以内であってよく、1秒以内であってよい。下限は表面改質が行われる限り特段限定されないが、通常は0.001秒以上である。
【0017】
燃焼炎とするためには、通常燃料ガスが用いられる。燃料ガスとしては、プロパンガスや天然ガスなどの可燃性ガスが典型的には用いられる。これらの可燃性ガスに適宜、水素、酸素、空気等を混合して用いてもよい。
【0018】
燃料ガス中に含有させるケイ素化合物の量は特段限定されないが、燃料ガス全量に対し、通常1.0×10-10モル%以上であり、1.0×10-9モル%以上であってよく、1.0×10-8モル%以上であってよい。上限は通常10モル%以下であり、5モル%以下であってよく、1モル%以下であってよい。
【0019】
表面改質に用いられる燃焼炎を吹き付けるための表面処理装置の一例を図1に示す。
表面処理装置10は、ガス移送部61aと61bと噴射口62とを有する装置本体6と、装置本体6にケイ素化合物を供給する、ノズル21とケイ素化合物を貯蔵するタンク22とを有するケイ素供給部2と、装置本体6のガス移送部61a、61bにガスを供給するガス供給部(図示せず)と、を備える。
【0020】
ガス移送部61aにはガス供給部から天然ガスなどの燃焼ガスが供給され、ガス移送部61bには、ガス供給部からキャリアガスとして空気が供給される。移送部61a、61bにより移送されたガスはケイ素供給部2から供給されたケイ素化合物と混合され、噴射口62から噴射される。ここで混合ガスは、別途設けられた着火手段により着火され、燃焼炎5となり、空缶1の表面に噴射される。噴射されたケイ素化合物を有する燃焼炎5は、空缶1の表面に酸化ケイ素膜を形成する。
表面処理装置10の噴射口62と、空缶1表面との距離は特段限定されないが、通常1cm以上であり、3cm以上であってよく、5cm以上であってよい。また通常30cm以下であり、20cm以下であってよく、15cm以下であってよい。
【0021】
表面改質工程は、空缶表面のニス層に対し、表面改質を行う。空缶は特段限定されず、典型的には食品や飲料を充填するための空缶が挙げられるが、特にこれに限定されない。
【0022】
空缶の製缶の方法は特段限定されず、既知の方法を適用することができる。例えば2ピース缶の製缶方法では、絞り成形、再絞り成形、しごき成形があげられる。3ピース缶の
製缶方法では、ブリキ板切断工程、ロール成形、缶胴溶接工程、缶胴ストレッチ成形があげられる。その他、缶胴を楕円形、角型、エンボス形状などの異形缶にするためのパネリング成形や、缶蓋を巻締するためのフランジ部成形、さらにネッキング成形などがあげられる。成形した空缶は、すでに説明したとおり、開口部にネッキング加工が施される。
【0023】
成形した空缶の表面、特に缶胴の表面は、上記説明した画像印刷とは別に、少なくともその一部が印刷されていてもよい。印刷方法は特に限定されないが、一般的な缶の印刷方法としてオフセット印刷があげられる。印刷工程は、成形した空缶へ印刷してもよいし、成形する前の板状の段階で行ってもよい。シームレス缶へのオフセット印刷は既知の方法が適用され、例えばインキをブランケットに転写し、連続してシームレス缶表面にオフセット印刷する方法などを適用できる。
【0024】
本実施形態では、ネッキング加工後のニス層上に画像印刷を施すものであるが、当該画像印刷を行う箇所は、何ら印刷されていなくてもよい。即ち、成形した空缶の表面の一部に印刷がされていてもよいし、印刷されていない箇所を有してもよく、全く印刷されていなくてもよい。また同様に、画像印刷の画像を目立たせるために、空缶表面の少なくとも一部の印刷がベタ塗り、例えば白地のベタ塗りであってもよい。ただし、ベタ塗りの印刷方法はオフセット印刷に限定されるものではなく、ホワイトコーターで行ってもよい。また、ベタ塗りの色は特に限定されない。さらに、ベタ塗りの印刷工程は、空缶のニス層へ画像印刷されるまでの間、いつの時点で行ってもよい。
【0025】
このように画像印刷の前に必要に応じ前印刷された空缶は、空缶のニス層上に画像印刷がされた後、食料、飲料などの内容物が充填密封され、内容物が充填密封された充填缶となる。なお、充填密封後の充填缶は、更に缶表面にワックスを含むニスが塗布されていることが多い。
【0026】
<印刷工程>
印刷工程は、開口部にネッキング加工が施された空缶のニス層上に画像を印刷する工程である。画像は、インクジェット画像であることが好ましい。画像印刷の方法は特段限定されず、既知の方法が適用される。例えば、インクジェット印刷によりインクを空缶へ直接印刷する方法でもよいし、一度転写媒体へ画像を形成してからその画像を空缶へ転写する方法でもよい。インクジェット印刷によりインクを空缶へ直接印刷する方法は、公知の方法を適用すればよい。インクジェット印刷により、模様印刷、写真印刷、画像印刷などが可能となり、空缶表面のデザイン性が格段に向上する。また、本実施形態では、表面改質を行うことで、画像印刷との密着性が向上することに加え、該表面改質としてニス層にケイ素化合物を含む燃焼炎を吹き付けることにより、酸化ケイ素膜上でインクがうまく濡れ広がることから、空缶の下地が透けないという効果をも奏する。
なお、インクジェット印刷以外の印刷としては、スクリーン印刷やホットスタンプでも、同様な効果を実現することができる。
【0027】
また、本発明の別の実施形態は、上記製造方法により製造された缶であり、次のような構成を有する。即ち、ネッキング加工が施された空缶であって、空缶表面上に、ワックス成分を含むニス層と、インクジェット画像層と、がこの順に積層された、空缶である。そして、前記ニス層と前記インクジェット画像層との間に、前記ニス層の表面が改質された表面改質層を含むことが好ましい。
或いは、ネッキング加工が施された空缶であって、空缶表面上に、ベタ印刷層、ニス層、酸化ケイ素被膜、インクジェット画像印刷層、の順に形成された、空缶であり得る。これらの構成について、図2図5を用いて説明する。
【0028】
図2は、空缶表面に印刷された印刷層を、平面に展開して、上面から示した上面模式図
(a)と、A-A´部の断面模式図(b)である。
図2(a)に示すように、展開印刷層100は、第1の印刷部101と第2の印刷部である102を有し、第1の印刷部101は画像が版印刷により印刷されており、第2の印刷部102はインクジェット画像がインクジェット印刷により印刷されている。
本形態は、第2の印刷部102以外の箇所、即ち第1の印刷部101をデザイン画像で印刷した後、残りの第2の印刷部102をインクジェット印刷することで、空缶表面の印刷層を形成する。その断面図は、図2(b)にあるとおり、第1の印刷部101と第2の印刷部102で異なる。第1の印刷部101は、空缶表面103上に、画像印刷層104、ニス層105の順に積層されてなる。一方第2の印刷部102は、空缶表面103上に、ニス層105、酸化ケイ素被膜106、インクジェット画像印刷層107の順に積層されてなる。このような形態により、高精細なインクジェット画像印刷層を必要な部分にのみ、印刷することが可能となる。
【0029】
別の形態として、図3の形態を例示する。図3も同様に、空缶の表面に印刷された印刷層を、平面に展開して、上面から示した上面模式図(a)と、B-B´部の断面模式図(b)である。
図3(a)に示すように、展開印刷層200は、第1の印刷部201と第2の印刷部である202を有し、第1の印刷部201は画像が版印刷により印刷されており、第2の印刷部202はインクジェット画像がインクジェット印刷により印刷されている。
本形態は、缶表面全面にデザイン画像204を印刷し、ニスを塗布した状態、すなわちデザイン画像が印刷されたデザイン印刷缶に対し、第2の印刷部202相当箇所に対して表面処理を行い、その後インクジェット画像印刷することで、印刷層を形成する。その断面図は、図3(b)にあるとおり、第1の印刷部201は、空缶表面203上に、画像印刷層204、ニス層205の順に積層されてなる。一方第2の印刷部202は、画像印刷層204、ニス層205の上に、酸化ケイ素被膜206、ベタ印刷層208、インクジェット画像印刷層207の順に積層されてなる。このような形態によっても、高精細なインクジェット画像印刷層を必要な部分にのみ、印刷することが可能となる。
【0030】
図4は、別の形態の空缶の表面に印刷された印刷層を、平面に展開して、上面から示した上面模式図(a)と、C-C´部の断面模式図(b)である。
図4(a)に示すように、展開印刷層300は全面インクジェット画像がインクジェット印刷により印刷されている。その断面図は、図4(b)にあるとおり、空缶表面303上に、ベタ印刷層304、ニス層305、酸化ケイ素被膜306、インクジェット画像印刷層307の順に積層されてなる。ベタ印刷層304は、白塗り層であってよく、他の単色ベタ画像であってもよい。インクジェット画像印刷層307は酸化ケイ素被膜306の存在により、インク接着力が不十分なニス305上であっても十分な密着性を有する。
【0031】
また、別の形態として、図5の形態を例示する。図5は、別の形態の空缶の表面に印刷された印刷層を、平面に展開して、上面から示した上面模式図(a)と、D-D´部の断面模式図(b)である。
図5(a)に示すように、展開印刷層400は全面インクジェット画像がインクジェット印刷により印刷されている。その断面図は、図5(b)にあるとおり、空缶表面403上に、ニス層405が積層されている。即ち、ニスが塗布してあるのみの、空缶表面に、酸化ケイ素被膜406を形成し、その上にベタ印刷層404及びインクジェット画像印刷層407の順に積層されてなる。
【0032】
<充填密封工程>
本実施形態では、ニス層上に画像が印刷された空缶に、内容物を充填する充填密封工程を有してもよい。充填密封工程は、ネッキング加工された開口部を有する空缶に内容物を充填し密封する工程である。充填密封工程は、内容物を空缶に充填し、密封できれば特段
制限はなく、内容物の種類や空缶の種類に応じ適宜実施することができる。
【0033】
以下、空缶表面にインクジェット画像をオフセット印刷する印刷工程を実施する印刷システムの一例について、図6を用いて説明する。
図6は、印刷システムI-100の構成の一例を示す概略図である。
印刷システムI-100は、画像形成手段である印刷ステーションI-10、画像搬送手段である搬送ベルトI-20、転写手段である転写ステーションI-30、缶搬送手段であるマンドレルホイールI-40とマンドレルI-42、洗浄手段である洗浄ステーションI-50、及び、被覆手段であるオーバーコートステーションI-60を備える。印刷システムI-100は、これら以外の構成を備えていてもよい。
【0034】
印刷ステーションI-10は、印刷ユニットI-11を備え、印刷ユニットI-11が備えるインクジェットプリンタヘッドにより、搬送ベルトI-20が備えるブランケットI-23上にインクジェット画像I-14(図示せず)が形成される。印刷ユニットI-11は印刷ステーションI-10内に1つのみ有してもよく、複数有してもよい。印刷ユニットI-11を複数有することで、高速印刷への対応が可能となり、またパス数が多い印刷方法にも対応が可能となることから、印刷画像のクオリティーが向上し、高精細のインクジェット画像I-14をブランケットI-23上に形成することができる。
【0035】
印刷ユニットI-11が備えるインクジェットプリンタヘッドは、典型的にはホワイト(W)、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色のインキを吐出する複数のノズルヘッドI-12が含まれる。なお、色の順番は特に限定されないし、インキの色はこれらに限定されるものではない。そのためクリアインキでもよい。
【0036】
印刷ユニットI-11には、プライマー層(Pr)を吐出するノズルベッドを備えていてもよく、その場合にはインクジェットプリンタヘッドよりも下流に位置することで、形成したインクジェット画像I-14をプライマー層によって被覆することができる。
印刷ユニットI-11には、更に硬化手段として、UV照射部I-13が備えられてもよい。インクジェットプリンタヘッドが吐出するインキがUV硬化性のインキである場合、UV照射により半硬化させることで、転写ステーションでインクジェット画像I-14を缶I-41に転写する際に生じ得るインク残りを抑制できる。
また、UV照射部I-13の代わりに、硬化手段として乾燥手段を備えていてもよい。乾燥手段は、インクジェット画像に温風を吹きかけることなどの方法で、インクジェット画像I-14を半硬化させることができる。
【0037】
搬送ベルトI-20は、第1ローラI-21と第2ローラI-22を介して環状となっており、図中矢印方向に周回することで、搬送ベルトI-20のブランケットI-23上に印刷されたインクジェット画像を転写ステーションI-30に搬送する。搬送ベルトI-20のブランケットI-23は環状の搬送ベルトの周長に応じて、また印刷システムの稼働スピードに応じて、その数を適宜決定できる。
【0038】
搬送ベルトI-20は可撓性を有してもよいが、可撓性が過度に大きい材料であると、ベルトの張りが不十分となり、印刷時や転写時にずれが生じる場合がある。搬送ベルトI-20の材質としては特に限定されない。
搬送ベルトをガイドする目的で、第1ローラI-21と第2ローラI-22以外に補助ローラを1つ又は複数有してもよい。
【0039】
インクジェット画像I-14が形成されたブランケットI-23は、第1ローラI-21の外周に沿って、転写ステーションI-30に搬送される。一方で、マンドレルホイー
ルI-40によって複数の缶I-41が転写ステーションI-30に搬送される。ブランケットI-23の先端部が搬送された缶I-41と接触することで、または缶I-41と接触する直前に、缶I-41は自転を開始し、接触後、ブランケットI-23上に形成されたインクジェット画像I-14は缶I-41の周方向に転写され、缶I-41の表面にインクジェット画像が形成される。なお、ブランケットI-23と缶I-41との位置合わせを適宜行ってもよく、位置合わせは既知の方法で行えばよい。
また、ブランケットI-23の先端部が搬送された缶I-41と接触した際に、マンドレルホイールI-40自体の回転を停止させ、マンドレルホイールI-40が停止した状態でマンドレルI-42の缶I-41を自転させ、ブランケットI-23上に形成されたインクジェット画像I-14を缶I-41に転写してもよい。本実施形態は、このような間欠的な印刷にも適用し得る。
【0040】
転写ステーションI-30で、インクジェット画像I-14がブランケットI-23から缶I-41表面へ転写された後、ブランケットI-23は、洗浄ステーションI-50においてその表面が洗浄されてもよい。本実施形態では、インクジェット画像I-14は、連結部材の存在によって、ブランケットI-23上へのインキ残りを抑制できる。一方で、全てのインキが転写しない場合もあり得ることから、洗浄ステーションI-50を設け、ブランケットI-23上のインキを洗浄してもよい。
【0041】
洗浄ステーションI-50は、典型的には、洗浄剤をブランケットI-23上に吐出する洗浄剤供給部I-51と、ブランケットI-23上のインキを拭き取るスクレーパI-52と、を備える。洗浄ステーションI-50で表面が洗浄されたブランケットI-23は、第2ローラI-22にガイドされ、再度印刷ステーションI-10に搬送され、その上にインクジェット画像I-14が形成される。
【0042】
インクジェット画像I-14が転写された缶I-41は、マンドレルホイールI-40によりオーバーコートステーションI-60に搬送される。オーバーコートステーションI-60において、缶I-41表面上に転写されたインクジェット画像I-14は、コーティングされる。コーティングには、典型的にはニスが用いられるが、インクジェット画像を保護して耐久性を向上し得るものであれば、他のものを用いてもよい。
【0043】
印刷システムI-100中に缶表面の表面改質を行う表面改質手段を設置してもよい。例えば、缶搬送手段の転写ステーションの上流側に、表面改質手段を設置してもよい。
また、図6に記載の印刷システムI-100を用いて空缶の前印刷を行ってもよいことは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0044】
10 表面処理装置
1 空缶
2 ケイ素供給部
21 ノズル
22 容器
3 天然ガス
4 空気
5 燃焼炎
6 装置本体
61a ガス移送部
61b ガス移送部
62 噴射口
100、200 展開印刷層
101、201 第1の印刷部
102、202 第2の印刷部
103、203 金属缶表面
104、204 画像印刷層
105、205 ニス層
106、206 酸化ケイ素被膜
107、207 インクジェット印刷層
300、400 展開印刷層
303、403 金属缶表面
304、404、208 ベタ印刷層
305、405 ニス層
306、406 酸化ケイ素被膜
307、407 インクジェット印刷層
I-100 印刷システム
I-10 印刷ステーション
I-11 印刷ユニット
I-12 ノズルヘッド
I-13 UV照射部
I-20 搬送ベルト
I-21 第1ローラ
I-22 第2ローラ
I-23 ブランケット
I-30 転写ステーション
I-40 マンドレルホイール
I-41 空缶
I-42 マンドレル
I-50 洗浄ステーション
I-51 洗浄剤供給部
I-52 スクレーパ
I-60 オーバーコートステーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6