(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20230124BHJP
A63B 60/02 20150101ALN20230124BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230124BHJP
【FI】
A63B53/04 D
A63B60/02
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2018154313
(22)【出願日】2018-08-20
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】小高 淳
(72)【発明者】
【氏名】田窪 悦子
(72)【発明者】
【氏名】神野 大介
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-131369(JP,A)
【文献】特開2018-011913(JP,A)
【文献】特開2005-118157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00-60/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、
クラウン部と、
ソール部と、
を備え、
前記ソール部の内面には、
前記フェース部からフェース-バック方向に所定の長さに亘ってトゥ-ヒール方向に延びる薄肉部と、
前記薄肉部よりもバック側に形成され、当該薄肉部よりも肉厚の大きい厚肉部と、
が形成されており、
前記厚肉部は、トゥ側からヒール側に並び、一体的に形成された、トゥ側部、中央部、及びヒール側部を有しており、
リーディングエッジを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線から、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、前記距離Dcは、前記距離Dt及び距離Dhよりも長
く、
前記厚肉部は、フェース側を向く面に凹部を有しており、
前記凹部と対応する部位が、前記中央部を構成し、
前記薄肉部は、前記凹部に入り込むように形成されており、
前記中央部のフェース-バック方向の長さが、前記トゥ側部及びヒール側部のフェース-バック方向の長さよりも短い、ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部のバック側を向く面は、フェース-バック方向において略同じ位置に配置されている、請求項
1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
フェース部と、
クラウン部と、
ソール部と、
を備え、
前記ソール部の内面には、
前記フェース部からフェース-バック方向に所定の長さに亘ってトゥ-ヒール方向に延びる薄肉部と、
前記薄肉部よりもバック側に形成され、当該薄肉部よりも肉厚の大きい厚肉部と、
が形成されており、
前記厚肉部は、トゥ側からヒール側に並び、一体的に形成された、トゥ側部、中央部、及びヒール側部を有しており、
リーディングエッジを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線から、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、前記距離Dcは、前記距離Dt及び距離Dhよりも長く、
前記厚肉部は、フェース側を向く面に凹部を有しており、
前記凹部と対応する部位が、前記中央部を構成し、
前記薄肉部は、前記凹部に入り込むように形成されており、
前記凹部は、下方にいくにしたがって、トゥ-ヒール方向の長さが短くなるように形成されてい
る、ゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
フェース部と、
クラウン部と、
ソール部と、
を備え、
前記ソール部の内面には、
前記フェース部からフェース-バック方向に所定の長さに亘ってトゥ-ヒール方向に延びる薄肉部と、
前記薄肉部よりもバック側に形成され、当該薄肉部よりも肉厚の大きい厚肉部と、
が形成されており、
前記厚肉部は、トゥ側からヒール側に並び、一体的に形成された、トゥ側部、中央部、及びヒール側部を有しており、
リーディングエッジを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線から、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、前記距離Dcは、前記距離Dt及び距離Dhよりも長く、
前記厚肉部においてフェース側を向く面は、前記フェース部と略平行となるように形成されてい
る、ゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
フェース部と、
クラウン部と、
ソール部と、
を備え、
前記ソール部の内面には、
前記フェース部からフェース-バック方向に所定の長さに亘ってトゥ-ヒール方向に延びる薄肉部と、
前記薄肉部よりもバック側に形成され、当該薄肉部よりも肉厚の大きい厚肉部と、
が形成されており、
前記厚肉部は、トゥ側からヒール側に並び、一体的に形成された、トゥ側部、中央部、及びヒール側部を有しており、
リーディングエッジを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線から、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、前記距離Dcは、前記距離Dt及び距離Dhよりも長く、
前記クラウン部のバック側の部位を構成するバック側クラウン部と、前記ソール部のバック側の部位を構成するバック側ソール部とを有し、当該バック側クラウン部と前記バック側ソール部で囲まれた開口を有する、ヘッド本体と、
前記フェース部と、前記フェース部の周縁から延びる周縁部と、を有するカップ状に形成されたフェース部材と、
を備え、
前記周縁部が、前記クラウン部のフェース側の部位及び前記ソール部のフェース側の部位を構成し、前記フェース部材が、前記ヘッド本体の開口を塞ぐように構成されており、
前記厚肉部は、前記バック側ソール部に設けられてい
る、ゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記薄肉部は、前記周縁部の一部と、前記バック側ソール部の一部により形成されている、請求項
5に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウッド型のゴルフクラブヘッドは、従来から、多くの改良がなされてきており、飛距離を延ばすために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1では、ソール部に厚肉部を設け、ヘッドの重心を低くすることで、飛距離を伸ばすことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構造のゴルフクラブヘッドにおいても、反発性能を向上するためには改良の余地があり、さらに飛距離を伸ばすことが要望されている。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、さらに反発性能を高めることができる、ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るゴルフクラブヘッドは、フェース部と、クラウン部と、ソール部と、を備え、前記ソール部の内面には、前記フェース部からフェース-バック方向に所定の長さに亘ってトゥ-ヒール方向に延びる薄肉部と、前記薄肉部よりもバック側に形成され、当該薄肉部よりも肉厚の大きい厚肉部と、が形成されており、前記厚肉部は、トゥ側からヒール側に並び、一体的に形成された、トゥ側部、中央部、及びヒール側部を有しており、リーディングエッジを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線から、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、前記距離Dcは、前記距離Dt及び距離Dhよりも長い。
【0006】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記厚肉部は、フェース側を向く面に凹部を有しており、前記凹部と対応する部位が、前記中央部を構成し、前記薄肉部は、前記凹部に入り込むように形成されているものとすることができる。
【0007】
上記ゴルフクラブヘッドにおいては、前記中央部のフェース-バック方向の長さが、前記トゥ側部及びヒール側部のフェース-バック方向の長さよりも短いものとすることができる。
【0008】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記中央部、トゥ側部、及びヒール側部のバック側を向く面は、フェース-バック方向において略同じ位置に配置することができる。
【0009】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記凹部は、下方にいくにしたがって、トゥ-ヒール方向の長さが短くなるように形成することができる。
【0010】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記厚肉部においてフェース側を向く面は、前記フェース部と略平行となるように形成することができる。
【0011】
上記ゴルフクラブヘッドにおいては、前記クラウン部のバック側の部位を構成するバック側クラウン部と、前記ソール部のバック側の部位を構成するバック側ソール部とを有し、当該バック側クラウン部と前記バック側ソール部で囲まれた開口を有する、ヘッド本体と、前記フェース部と、前記フェース部の周縁から延びる周縁部と、を有するカップ状に形成されたフェース部材と、を備えることができ、前記周縁部が、前記クラウン部のフェース側の部位及び前記ソール部のフェース側の部位を構成し、前記フェース部材が、前記ヘッド本体の開口を塞ぐように構成されており、前記厚肉部は、前記バック側ソール部に設けられているものとすることができる。
【0012】
上記ゴルフクラブヘッドにおいて、前記薄肉部は、前記周縁部の一部と、前記バック側ソール部の一部により形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るゴルフクラブヘッドによれば、さらに反発性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図2】
図1のゴルフクラブヘッドの基準状態での平面図である。
【
図7A】厚肉部の他の例を示す
図3のB-B線断面図である。
【
図7B】厚肉部の他の例を示す
図3のB-B線断面図である。
【
図8】厚肉部の他の例を示す
図3のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るゴルフクラブヘッドの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
<1.ゴルフクラブヘッドの概要>
図1は、このゴルフクラブヘッドの斜視図、
図2は、ヘッドの基準状態での平面図、
図3は、
図2のA-A線断面図である。
図1~
図3に示すように、このゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある)100は、内部空間を有する中空構造であり、フェース部1、クラウン部2、ソール部3、及びホーゼル部4によって壁面が形成されたウッド型のゴルフクラブヘッドである。具体的には、ユーティリティ(ハイブリッド)、フェアウェイウッド、ドライバーといったゴルフクラブヘッドに適用することができる。
【0017】
フェース部1は、ボールを打球する面であるフェース面を有しており、クラウン部2はフェース部1と隣接し、ヘッド100の上面を構成する。ソール部3は、主としてヘッド100の底面を構成し、フェース部1とクラウン部2以外のヘッド100の外周面を構成する。すなわち、ヘッド100の底面のほか、フェース部1のトウ側からヘッドのバック側を通りフェース部1のヒール側へと延びる部位もソール部3の一部である。さらに、ホーゼル部4は、クラウン部2のヒール側に隣接して設けられる部位であり、ゴルフクラブのシャフト(図示省略)が挿入される挿入孔41を有し、ヘッドの内部まで延びる筒状に形成されている。そして、この挿入孔41の中心軸線Zは、シャフトの軸線に一致している。
【0018】
ここで、ゴルフクラブヘッド100を地面に設置するときの基準状態について説明する。まず、
図2に示すように、上記中心軸線Zが地面に対して垂直な平面P1に含まれ、且つ所定のライ角及びリアルロフト角で地面上にヘッドが載置された状態を基準状態と規定する。そして、上記平面P1を基準垂直面と称する。また、
図2に示すように、上記基準垂直面P1と地面との交線の方向をトゥ-ヒール方向と称し、このトゥ-ヒール方向に対して垂直であり且つ地面に対して平行な方向をフェース-バック方向と称することとする。また、トゥ-ヒール方向及びフェース-バック方向に直交する方向を上下方向と称することがある。
【0019】
本実施形態において、フェース部1とクラウン部2、及びフェース部1とソール部3との境界は、次のように定義することができる。すなわち、両者の間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、明確な稜線が形成されていない場合には、
図4Aに示されるように、ヘッド重心GとスイートスポットSSとを結ぶ直線Nを含む各断面E1、E2、E3…において、
図4Bに示されるように、フェース外面輪郭線Lfの曲率半径rがスイートスポット側からフェース外側に向かって初めて200mmとなる位置Peがフェース部1の周縁となり、これがクラウン部2またはソール部3との境界として定義される。なお、スイートスポットSSとは、ヘッド重心Gを通るフェース面の法線(直線N)とこのフェース面との交点である。
【0020】
また、本実施形態において、クラウン部2とソール部3との境界は次のように定義することができる。すなわち、クラウン部2とソール部3との間に稜線が形成されている場合には、これが境界となる。一方、これらの間に明確な稜線が形成されていない場合には、ヘッドを基準状態に設置し、これをヘッド100の重心の真上から見たときの輪郭が境界となる。
【0021】
ヘッド100は、例えば、比重がほぼ4.3~4.5程度のチタン合金(Ti-6Al-4V、Ti-8Al-1Mo-1V等)で形成することができる。また、チタン合金以外にも、例えばステンレス鋼、マレージング鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、またはアモルファス合金などの中から1種または2種以上を用いて形成することもできる。
【0022】
このゴルフクラブヘッド100の体積は、例えば、90cm3以上、470cm3以下が望ましい。
【0023】
<2.ゴルフクラブヘッドの組立構造>
本実施形態に係るゴルフクラブヘッド100は、
図3に示すように、クラウン部2及びソール部3を有するヘッド本体101と、フェース部1及びその周縁から延びる周縁部15を有するカップ状に形成されたフェース部材102と、を組み立てることで構成される。このヘッド本体101は、クラウン部2及びソール部3で囲まれた開口18を有し、この開口18を塞ぐようにフェース部材102が取り付けられる。すなわち、フェース部材102の周縁部15の端面が、ヘッド本体101の開口18の端面と突き合わされ、これらが、溶接によって接合される(いわゆるカップフェース構造)。そして、フェース部材102は、ヘッド本体101の開口18の縁部に取付けられることで、ヘッド本体101と一体化され、これによって、フェース部材102の周縁部15は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部として機能する。
【0024】
したがって、フェース部材102の周縁部15がヘッド本体101に取付けられることで一体的に形成される面が、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3を構成する。そのため、厳密には、ヘッド本体101のクラウン部2及びソール部3は、ヘッド100のクラウン部2及びソール部3の一部ではあるが(本発明におけるバック側クラウン部、及びバック側ソール部に相当する)、本明細書では、これらを区別することなく、ヘッド本体101の各部も、単にクラウン部2、ソール部3と称することがある。
【0025】
<3.クラウン部の構造>
続いて、クラウン部2について説明する。
図1~
図3に示すように、クラウン部2は、フェース部1側に配置される隆起部21と、隆起部21よりもバック側に配置される基部22とを備えている。隆起部21は、主として、フェース部1に沿ってトゥ-ヒール方向に延びる帯状の領域である。一方、基部22は、隆起部21よりも低い位置でクラウン部2の大半を占める領域であり、その周縁はソール部3と接している。また、
図3に示すように、基部22は、断面において、上方に向かって凸となるように湾曲している。そして、隆起部21と基部22との境界には段差を構成する傾斜面23が形成されている。これにより、隆起部21と基部22との段差の分だけ、フェース部1の上下方向の高さが高くなっている。
【0026】
この傾斜面23は、バック側ににいくにしたがって、下方に延びるように構成されている。これにより、ゴルフクラブヘッド100を基準状態で設置したとき、上方から傾斜面23を視認することができる。すなわち、アドレスに入ったゴルファーから視認可能となっている。そして、傾斜面23は、隆起部21に沿って形成されているため、隆起部21と同様に、平面視において帯状に形成されている。
【0027】
図3に示すように、隆起部21のフェース-バック方向の幅Dは、例えば、平面視において、5~25mmとすることが好ましく、7~20mmとすることがさらに好ましい。
【0028】
また、傾斜面23の平面視におけるフェース-バック方向の幅Wは、例えば、1~9mmとすることが好ましく、2~7mmであることがさらに好ましい。さらに、傾斜面23の高さHは、例えば、0.5~8mmとすることが好ましく、0.5~6mmとすることがさらに好ましく、0.5~5mmとすることが特に好ましい。
【0029】
なお、
図3の断面は、フェースセンターを通るフェース-バック方向の断面である。フェースセンターとは、以下のように定義することができる。まず、フェース部1(フェース面)上において、トゥ-ヒール方向および上下方向の概ね中央付近で任意の点Poを決定する。この点Poを通りトゥ-ヒール方向に延びる線xを引き、この線xの中点Pxを決定する。続いて、フェース部1上において、点Pxを通り上下方向に延びる線yを引き、この線の中点Pyを決定する。そして、こうして決定された点Pyを通りトゥ-ヒール方向に延びる線を線xとして引き直し、その後上記と同様にして点Pyを決定し直す工程を繰り返す。この工程の繰り返しの中で、前回の点Pyと新たな点Pyとの間の距離が0.5mm以下となったときの当該新たな点Pyが、フェースセンターと定義される。なお、より詳細には、上記の点Poを通る線xは、この点Poを通るフェース面の法線を含みかつトゥ-ヒール方向に平行な平面と、フェース面(フェース部1の表面)との交線である。また、より詳細には、上記の点Pxを通る線yは、この点Pxを通るフェース面の法線を含みかつ上下方向に平行な平面と、フェース面との交線である。また、より詳細には、上記の点Pyを通る線xは、この点Pyを通るフェース面の法線を含みかつトゥ-ヒール方向に平行な平面と、フェース面との交線である。なお、上記線xおよび線yの長さの測定は、フェース面に沿って測定される。
【0030】
<4.ソール部の内壁面の構造>
次に、ソール部3の内壁面の構造について、
図5及び
図6も参照しつつ説明する。
図5は、ヘッド本体を開口側から見た斜視図、
図6は、
図3のB-B線断面図である。
【0031】
図3,
図5及び
図6に示すように、ヘッド本体101のソール部3の内壁面には、開口18からバック側へわずかに延び、且つトゥ-ヒール方向に延びる第1薄肉部31が形成されている。そして、この第1薄肉部31と隣接するようにトゥーヒール方向に延びる直方体状の厚肉部32が形成されている。さらに、厚肉部32よりもバック側には、第2薄肉部33が形成され、この第2薄肉部33のバック側の端縁と隣接するように、ウエイト部材(図示省略)が取り付けられる取付部34が形成されている。
図3に示すように、取付部34におけるソール部3の外面には、ウエイト部材がはめ込まれる凹部341が形成されており、これに対応するようにソール部3の内面側には凸部が形成されている。
【0032】
厚肉部32は、トゥ側からヒール側に向かって並ぶトゥ側部321、中央部322、及びヒール側部323が一体的に形成されたものである。いずれも直方体状に形成されているが、バック側の面325及び上面は、面一となるように、つまり同一平面により形成されている。一方、中央部322のフェース側の面3221は、トゥ側部321及びヒール側部323のフェース側の面3211,3231よりもバック側に位置している。したがって、中央部322と、トゥ側部321及びヒール側部323との間には段差が形成されており、これによって、厚肉部32のフェース側の面には凹部が形成されている。また、この凹部は、トゥーヒール方向の中央付近、より具体的には、フェース-バック方向に延び、フェースセンターを通る直線が通る位置に配置される。
【0033】
そして、
図5に示すように、この凹部が形成される段差において、トゥ側部321のヒール側の面3212、及びヒール側部323のトゥ側の面3232は、下方にいくにしたがって互いに近接するように傾斜している。また、
図3に示すように、トゥ側部321、中央部322、及びヒール側部323のフェース側の面3211,3221,3231は、いずれもフェース部1と概ね平行になるように垂直方向から傾斜している。但し、厳密に平行でなくてもよく、例えば、15度程度であれば、ずれていてもよい。一方、厚肉部32のバック側の面325は、バック側にいくにしたがって下方に延びるように傾斜している。
【0034】
トゥ側部321のトゥ側の端部は、ソール部3におけるクラウン部2との連結部分付近まで延びている。一方、ヒール側部323のヒール側の端部は、ヘッドの内部に配置されるホーゼル部4付近まで延びている。
【0035】
以上のように、厚肉部32は、中央部322のフェース側の面がバック側に位置しているため、
図6に示すように、ヘッドのリーディングエッジLを通りトゥ-ヒール方向に延びる基準直線Kから、中央部322、トゥ側部321、及びヒール側部323までのフェース-バック方向の距離Dc、Dt及びDhを規定したとき、距離Dcが、距離Dt及び距離Dhよりも長くなるように形成されている。なお、距離Dcは、中央部322のトゥーヒール方向の中心と基準直線Kとの距離、距離Dtは、トゥ側部において最もヒール側の位置と基準直線Kとの距離、距離Dhは、ヒール側部において最もトゥ側の位置と基準直線Kとの距離とする。具体的には、例えば、距離Dcは、10~25mmとすることができ、距離Dt及び距離Dhは、5~20mmとすることができる。
【0036】
厚肉部32の寸法は、特には限定されないが、例えば、次のように設定することができる。厚肉部32の第1薄肉部31からの高さTは、例えば、5~10mmとすることができる。トゥ側部321及びヒール側部323のフェース-バック方向の長さS1,S3は、概ね同じで有り、例えば、10~25mmとすることができる。一方、中央部322のフェース-バック方向の長さS2は、例えば、5~20mmとすることができる。なお、トゥ側部321、中央部322、ヒール側部323のフェース-バック方向の長さS1~S3は、第1薄肉部31と接している部分から第2薄肉部33と接している部分のうち、最も長い長さとする。
【0037】
中央部322のトゥーヒール方向の長さWcは、例えば、15~35mmとすることができる。また、中央部322のトゥ-ヒール方向の長さWcは、例えば、ヘッドのトゥ-ヒール方向の長さの15~35%とすることもできる。ヘッドのトゥーヒール方向の長さとは、基準状態にあるヘッドの最もトゥ側の点と、ヘッドのヒール側の外面において設置面から22.23mm上方にある点との間のトゥーヒール方向の長さである(日本ゴルフ協会ゴルフ規則、付属規則IIクラブのデザイン 4クラブヘッド 4b(i)の
図VIII寸法
C参照)。
【0038】
また、厚肉部32は、ヘッドのフェース-バック方向の長さXに対し、リーディングエッジLからXの60%以内の範囲に配置されることが好ましく、50%以内の範囲に配置されることがさらに好ましい。
【0039】
また、
図6に示すように、第1薄肉部31において中央部322と対向する部分の長さMcは、3~15mm、トゥ側部321及びヒール側部323と対向する位置の長さMt,Mhは、1~10mmとすることができる。但し、Mc,Mt,Mhを測定する位置は、Dc,Dt,Dhを測定する位置と同じである。
【0040】
また、第1薄肉部31の肉厚は、例えば、0.5~4mmとすることができる。本実施形態では、第1薄肉部31に接合されるフェース部材102の周縁部15の肉厚が、第1薄肉部31よりも薄くなっている。
【0041】
<5.ゴルフクラブヘッドの製造方法>
次に、上記のゴルフクラブヘッドの製造方法の一例について説明する。まず、上述したヘッド本体101とフェース部材102とを準備する。このようなヘッド本体101及びフェース部材102は、種々の方法で作製することができる。例えば、ヘッド本体101は、公知のロストワックス精密鋳造法などの鋳造によって製造することができる。また、フェース部材102は、例えば、鍛造製法や、平板のプレス加工、鋳造等により製造することができる。また、圧延材料を用いてフェース部材102を形成する場合、フェース部材102の加工前の平板は、圧延方向が、フェース部1のトゥ側の上部からヒール側の下部に向かう方向とほぼ一致するように加工される。
【0042】
そして、これらを、例えば、溶接(TIG(タングステン-不活性ガス)溶接、プラズマ溶接、レーザー溶接、ロウ付けなど)により接合した後、所定の塗装を施すと、ゴルフクラブヘッドが完成する。
【0043】
<6.特徴>
以上の実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0044】
(1) ソール部3に厚肉部32を設けているため、ゴルフクラブヘッドの重心を低くすることができる。
【0045】
(2) 厚肉部32は、フェース-バック方向においてフェース部1に近い位置に配置されているため、ゴルフクラブヘッドの重心をフェース部1に近くすることができる。そのため、フェース部1におけるスイートスポットSSを低くすることができ、ユーティリティ、フェアウェイウッドなど、地面に直接ボールをおいて打撃を行うクラブを用いる場合、スイートスポットSSと打撃点とを近づけやすくなるため、飛距離を伸ばすことができる。
【0046】
(3) 厚肉部32のトゥ-ヒール方向における中心付近に凹部が形成されているため、この部分において第1薄肉部31のフェース-バック方向の長さが長くなる。そのため、撓みやすい第1薄肉部31の面積が増大するため、トゥーヒール方向の中央部分における反発性能を向上することができる。また、第1薄肉部31と接合されるフェース部材102の周縁部15の肉厚が第1薄肉部31よりも薄いため、この周縁部15も第1薄肉部31とともに撓みやすくなり、よって、反発性能の向上に寄与する。
【0047】
(4)
図5に示すように、厚肉部32の凹部は、トゥーヒール方向の長さが、下方にいくにしたがって増大するように形成されている。すなわち、トゥ側部321及びヒール側部323の平面視の面積は、下方にいくにしたがって増大するため、凹部が形成されていても、ゴルフクラブヘッドの重心をより低くすることができる。特に、凹部において、トゥ側部321及びヒール側部323は、下方にいくにしたがって、近接するように形成されている。そのため、ゴルフクラブヘッドのトゥ-ヒール方向の中央付近により重量を多く配分し、ゴルフクラブヘッドの重心をより低くすることができる。
【0048】
(5) 本実施形態のようなカップフェース構造では、フェース部材102の周縁部15とヘッド本体101の開口周縁とを溶接によって接合するため、この接合部分の剛性が高くなり、撓みが抑制されるおそれがある。これに対して、本実施形態では、上記のように、ヘッド本体101に第1薄肉部31を形成し、打撃時の撓みを大きくしているため、上記のように溶接によって剛性が高くなったとしても、その影響を低減することができる。
【0049】
(6) 厚肉部32のフェース側の面は、フェース部1と概ね平行に形成されているため、フェース部材102とヘッド本体101とを接合する際、厚肉部32のフェース側の面がフェース部1に干渉するのを防止することができる。
【0050】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、以下の変更が可能である。
【0051】
<7-1>
上記実施形態における厚肉部32の形態は一例であり、この形態に限定されるものではない。すなわち、厚肉部32はトゥーヒール方向に延び、中央付近において、トゥ側及びヒール側よりもリーディングエッジからの距離が長くなるように形成されていればよい。
【0052】
したがって、凹部の形状は特には限定されず、例えば、平面視において、矩形状以外に、
図7Aに示す半円状、
図7Bに示す多角形状(b)など種々の形状にすることができる。また、上記実施形態では、厚肉部32の上面及びバック側の面を、トゥ側部321、中央部322、ヒール側部323において、同一平面で形成しているが、異なる面で形成することもできる。例えば、
図8に示すように、中央部322のみをバック側に突出させてもよい。この場合、トゥ側部321、中央部322、ヒール側部323のフェース-バック方向の長さは、概ね同じになる。また、厚肉部32のトゥ-ヒール方向の長さも特には限定されず、トゥーヒール方向においてソール部3の全体に亘って形成されていなくてもよく、一部であってもよい。
【0053】
<7-2>
第1薄肉部31の厚みは、一定でなくてもよく、異なる厚みを有していてもよい。例えば、凹部が形成されている部分を多少厚くしたりまたは薄くすることもできる。同様に、トゥ側及びヒール側を厚くしたり、あるいは薄くすることもできる。
【0054】
<7-3>
上記実施形態では、フェース部材102の周縁部15が第1薄肉部31よりも肉厚が薄いため、この部分と第1薄肉部31とで本発明の薄肉部として機能する。また、周縁部15の肉厚は、第1薄肉部31と同じ、あるいは薄くてもよく、厚肉部32よりも肉厚が薄ければ、第1薄肉部31とともに本発明の薄肉部として機能する。
【0055】
<7-4>
ソール部3の内面の形状は、特には限定されず、上記のように、厚肉部32よりもバック側の形状は特には限定されない。したがって、厚肉部32のバック側に接する部分(第2薄肉部33)が厚肉部32よりも肉厚が小さければよく、その他の形状は特には限定されない。よって、デザイン上、または構造上の観点から、第2薄肉部33の形状を含め、種々形状にすることができる。そのため、上記のような取付部34を設けない形状にすることもできる。
【0056】
<7-5>
上記実施形態に係るヘッドは、カップフェース構造を有しているが、その他の態様であってもよい。例えば、フェース部1及びソール部3を備え、クラウン部2用の開口が形成されたヘッド本体に対し、クラウン部を開口に嵌め込んでヘッドを構成することができる。また、カップフェース構造でなくてもよく、フェース部1に形成された開口に平板状のフェース用部材を嵌め込み、ヘッド本体に溶接することでヘッドを構成することもできる。
【0057】
<7-6>
クラウン部2の形状は特には限定されず、デザイン上、構造上の観点から、隆起部21、傾斜面23、基部22の形状も特には限定されない。また、隆起部21、傾斜面23を設けず、外面に凹凸が形成されていないクラウン部2とすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
1 フェース部
2 クラウン部
3 ソール部
31 第1薄肉部
32 厚肉部
321 トゥ側部
322 中央部
323 ヒール側部
4 ホーゼル部