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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】医療用吸引器具
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230124BHJP
【FI】
A61M1/00 107
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018191854
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058607
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善悦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 正芳
(72)【発明者】
【氏名】金澤 尚
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4921488(US,A)
【文献】実公平2-21075(JP,Y2)
【文献】特開昭61-131751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00 ― 1/38
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧容器で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具であって、
前記陰圧容器と、
前記陰圧容器に接続されており、弾性を有して第1状態と該第1状態から圧搾された第2状態とに変形可能に構成されて、外部にエアを排気して前記陰圧容器を陰圧にすることが可能な排気部と、
前記陰圧容器と前記排気部との間に配置された陰圧容器側一方弁と、
前記排気部と前記外部との間に配置され、前記排気部から前記外部への排気を許容しつつ、前記外部から前記排気部への吸気を阻止する排気部側一方弁と、を備え、
前記陰圧容器側一方弁は、前記排気部が前記第2状態から前記第1状態に復元する際に、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容しつつ、前記排気部が前記第1状態から前記第2状態になる際に、前記排気部から前記陰圧容器への吸気を阻止し、
前記陰圧容器側一方弁は、前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されて前記陰圧容器の圧力が高まることにより、前記排気部が前記第1状態にあるときに、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容し、
前記陰圧容器側一方弁は、前記エアの流路を形成及び閉塞する第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記陰圧容器と前記排気部とを連通する横穴である連通孔を有する本体部材であり、
前記第2部材は、
前記連通孔を閉塞可能及び開放可能に前記本体部材に取り付けられた膜状部材であり、
前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されることにより前記陰圧容器の圧力が高まったときに、前記連通孔を塞いだ状態から前記連通孔を開放した状態となり、
前記本体部材と前記膜状部材とが、前記陰圧容器と前記排気部との間の前記エアの流路において非圧接状態で配設されていることを特徴とする医療用吸引器具。
【請求項2】
前記陰圧容器側一方弁は、前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されることにより、前記陰圧容器側の圧力が陽圧であって前記排気部側よりも10mmHg以下の値まで高まったときに、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容する請求項1に記載の医療用吸引器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方弁を備える医療用吸引器具に関する。
【背景技術】
【0002】
人体から体液(排液ともいう。)を、チューブを介して吸引して排出する際に、体液を吸引する陰圧容器を備える医療用吸引器具が一般的に用いられている。このような医療用吸引器具は、陰圧容器内の空気を外部に排出して陰圧にするために、一方弁が設けられているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧搾可能及び復元可能に弾性変形する排気部材(同文献には、ポンプ部と記載。)と、2つの一方弁と、を備える医療用吸引器具が開示されている。
1つの一方弁は、排気部材の排気口に配置されエアの排気を許容し吸気を阻止するものである。他の一方弁は、陰圧容器(同文献には、吸引容器と記載。)における排気部材との接続部に設けられ、陰圧容器の内部からの排気部材の内部へのエアの流動は許容するが、排気部材の内部からの陰圧容器の内部へのエアの戻りを阻止するものである。
【0004】
他の一方弁の構成について特許文献1に詳細な記載はないものの、従来の一方弁の構成は、弾性変形可能なフィルムを用いることが一般的であった。
従来の一方弁の構成について具体的には、上記の接続部に陰圧容器の内部と排気部材の内部とに連通する横孔の連通孔が設けられており、拡径方向に弾性変形させた状態のフィルムで、連通孔の周りに圧接させるようにして、連通孔を被って封止する構成である。
このフィルムによって構成される一方弁は、圧搾時にフィルムが面圧を受けることで連通孔を塞ぐ。一方で、この一方弁は、排気部材が圧搾状態から自然状態に復元するときにのみ、フィルムが拡径方向に伸びて、連通孔から浮き上がり、陰圧容器の内部から排気部材の内部へのエアの流動を許容するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-74914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来のフィルムによって構成される一方弁は、排気部材が圧搾状態から自然状態に復元するときのみ、陰圧容器の内部から排気部材の内部へのエアの流動を許容するものである。つまり、排気部材を操作しないときには、連通孔の周りに圧接している状態であるため、陰圧容器と排気部材との間のエアの流動を阻止している。
このような一方弁であると、陰圧容器の陰圧状態が維持されることになるため、排液の吸引速度及び吸引量を調整することは困難であった。
【0007】
また、例えば、キャップ(固定部材)を開く等により、陰圧容器の陰圧状態を一時的に大気圧と等しくした後に、収容容器(同文献には、貯留容器と記載。)への体液(排液)の収容量を増やしていくと、容器内部が大気圧よりも高圧に加圧されてしまう。なぜなら、収容容器からのエアの排出が一方弁により規制されるため、エアの容積が小さくなるためである。
【0008】
このように収容容器内が加圧されると、体液を収容容器内に送り込めなくなるため、体液を受け入れた分だけ容器内部の空気を排気する必要がある。しかし、体液が容器内に浸入しようとする力が非常に弱いため、フィルムによって構成されて圧接されている一方弁によっては、フィルムが拡径方向に伸びず、体液は収容容器に入ってこなくなる。このため、収容容器と陰圧容器とを接続する連結チューブの一端部を取り外して大気開放にするなど手間がかかり、効率よく体液を吸引することは困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、排液の吸引速度及び吸引量を調整することが容易で、効率よく排液を吸引可能な医療用吸引器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の医療用吸引器具は、陰圧容器で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具であって、前記陰圧容器と、前記陰圧容器に接続されており、弾性を有して第1状態と該第1状態から圧搾された第2状態とに変形可能に構成されて、外部にエアを排気して前記陰圧容器を陰圧にすることが可能な排気部と、前記陰圧容器と前記排気部との間に配置された陰圧容器側一方弁と、前記排気部と前記外部との間に配置され、前記排気部から前記外部への排気を許容しつつ、前記外部から前記排気部への吸気を阻止する排気部側一方弁と、を備え、前記陰圧容器側一方弁は、前記排気部が前記第2状態から前記第1状態に復元する際に、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容しつつ、前記排気部が前記第1状態から前記第2状態になる際に、前記排気部から前記陰圧容器への吸気を阻止し、前記陰圧容器側一方弁は、前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されて前記陰圧容器の圧力が高まることにより、前記排気部が前記第1状態にあるときに、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医療用吸引器具は、排液の吸引速度及び吸引量を調整することを容易にでき、効率よく排液を吸引可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る医療用吸引器具を示す斜視図である。
図2】陰圧容器側一方弁を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る排気部材を圧搾しているときの空気の流れを示す排気部材及び陰圧容器側一方弁の断面図である。
図4】圧搾されていた排気部材が復元しているときの空気の流れを示す排気部材及び陰圧容器側一方弁の断面図である。
図5】変形例に係る陰圧容器側一方弁を示す断面図であり、連通孔を封止している状態を示す図である。
図6】変形例に係る陰圧容器側一方弁を示す断面図であり、連通孔を開放している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の医療用吸引器具の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。以下において、「上下方向」は、図1に示すように、医療用吸引器具1を立設させた状態における上下方向をいう。
【0014】
<概要>
まず、本実施形態に係る医療用吸引器具1の概要について、図1図4を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る医療用吸引器具1を示す斜視図、図2は、陰圧容器側一方弁8を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係る排気部材4を圧搾しているときの空気の流れを示す排気部材4及び陰圧容器側一方弁8の断面図、図4は、圧搾されていた排気部材4が復元しているときの空気の流れを示す排気部材4及び陰圧容器側一方弁8の断面図である。
【0015】
本実施形態に係る医療用吸引器具1は、陰圧容器2で形成される陰圧により排液を吸引するものである。
医療用吸引器具1は、陰圧容器2と、陰圧容器2に接続されており、外部にエアを排気して陰圧容器2を陰圧にすることが可能な排気部(排気部材4)と、陰圧容器2と排気部材4との間に配置された陰圧容器側一方弁8と、排気部材4と外部との間に配置された排気部側一方弁7と、を備える。
排気部材4は、弾性を有して第1状態(自然状態)と第1状態から圧搾された第2状態(圧搾状態)とに変形可能に構成されている。
【0016】
陰圧容器側一方弁8は、排気部材4が第2状態から第1状態に復元する際に、陰圧容器2から排気部材4へのエアの排気を許容する。また、陰圧容器側一方弁8は、排気部材4が第1状態から第2状態になる際に、排気部材4から陰圧容器2への吸気を阻止する。
さらに、陰圧容器側一方弁8は、排液が医療用吸引器具1に吸引されて陰圧容器2の圧力が高まることにより、排気部材4が第1状態にあるときに、陰圧容器2から排気部材4へのエアの排気を許容する。
【0017】
上記構成によれば、排液が吸引されることにより陰圧容器2の圧力が高まったときに、陰圧容器側一方弁8がエアを排気部材4に通して自然に外部に排出する。このため、医療用吸引器具1に手を加えることなく陰圧容器2内の圧力が高まりすぎることを抑制できる。
さらに、患部よりも低い高さ範囲で、陰圧容器2の相対的な位置を調整することで、サイフォンの原理により排液を体外にゆっくりと排出して収容容器3に収容することができる。収容容器3に体液が満たされると、収容容器3及び収容容器3に連通する陰圧容器2の内圧は大気圧近くまで回復していき、体液の吸引を自然に終了することができ、効率よく手技を行うことができる。
【0018】
<全体構成>
まず、図1を参照して、医療用吸引器具1の全体構成を説明する。医療用吸引器具1は、陰圧状態となる陰圧容器2と、体液等を収容する収容容器3と、医療用吸引器具1(陰圧容器2)内のエアを外部に排気するための排気部材4と、陰圧容器2の圧力状態を確認等するためのバルーン5と、を主に備える。
【0019】
陰圧容器2の下部には、陰圧容器2内のエアを外部と連通させてエアを抜くことが可能なキャップ2aが取り付けられている。また、キャップ2aによってバルーン5が陰圧容器2の内部に配設されている。
陰圧容器2と収容容器3とは、連結チューブ6によって内部を連結されている。
【0020】
収容容器3の上部には、吸引口3aと排出口3cが設けられている。吸引口3aに不図示のチューブが接続されて、収容容器3内に体液等を収容可能に構成されている。また、収容容器3内に収容された体液等を、排出口3cを通じて直接排出可能に構成されている。
吸引口3aには、クランプ部材3bが取り付けられており、クランプ部材3bによって吸引口3aに繋がる流路を閉塞することで、人体から収容容器3内への体液の流入を止めることが可能に構成されている。吸引口3aを有する接続部材に、収容容器3から体内への排液の逆流を防止するための、後述する一方弁と同様の構成の一方弁が設けられていると好ましい。
【0021】
陰圧容器2は、上方に突出した円筒状の接続部2bを有し、接続部2bに排気部材4が接続される。詳細については後述するように、接続部2bには、陰圧容器側一方弁8が設けられている。
排気部材4は、陰圧容器2内を陰圧状態とするためのものであり、弾性を有する球体状の圧搾部4aと、圧搾部4aから下方に突出して陰圧容器2の上部に接続される円筒状の第1開口部4bと、外部に連通する円筒状の第2開口部4cと、を備える。排気部材4の上部の第2開口部4cには、排気部側一方弁7が取り付けられている。
【0022】
排気部側一方弁7は、排気部材4が第1状態から第2状態になる際の排気部材4内と外部との差圧の変化により排気部材4から外部への排気を許容する。また、排気部側一方弁7は、排気部材4が第2状態から第1状態に復元する際の排気部材4内と外部との差圧の変化により外部から排気部材4への吸気を阻止する。
排気部側一方弁7の構成は、特開2013-74914号公報に開示されたものと同様の構成である。具体的には、排気部側一方弁7には、上下に流通路が形成されており、排気部側一方弁7は、流通路上にあるフロート状の不図示の弁体と、弁体の座面である不図示の弁座と、を有する。そして、弁体の自重によって弁体と当接することにより流通路を閉塞し、排気部材4の内圧が下方から加わり、弁体が弁座から離間することによって、流通路を開放して、排気部材4内から外部への排気を許容するものである。
【0023】
<陰圧容器側一方弁について>
次に、陰圧容器側一方弁8の詳細について、図2図4を主に参照して説明する。
本実施形態に係る陰圧容器側一方弁8は、エアの流路を形成及び閉塞する第1部材(可撓壁8a)と、第2部材(可撓壁8b)とを備え、可撓壁8aと可撓壁8bとはダックビル弁を構成している。より詳細には、陰圧容器側一方弁8の上方側には、スリット8cが形成されている。可撓壁8a及び可撓壁8bはスリット8cを中心に対称な形状であり、上方に向かって先細りとなる形状で形成されている。
このように、陰圧容器側一方弁8にダックビル弁を採用することで、排液が吸引されて収容容器3に収容されることにより収容容器3に連結チューブ6を介して連通する陰圧容器2の圧力が高まったときに、陰圧容器側一方弁8を自然に開かせることができる。
【0024】
第1部材(可撓壁8a)と第2部材(可撓壁8b)とは、陰圧容器2と排気部(排気部材4)との間のエアの流路において非圧接状態で配設されている。ここで、「非圧接状態で配設されている」とは、弁の前後で圧力差のない自然状態において、圧接していない状態をいい、離間している状態はもちろん、圧力を付与しない状態で単に接触している状態も含む。特に離間している場合には、逆止機能を失わない程度の可撓性を有することが条件となる。
陰圧容器側一方弁8が非圧接状態で設けられていることで、排液が吸引されることにより陰圧容器2及び排気部材4の圧力が高まったときに、陰圧容器側一方弁8及び排気部側一方弁7がエアを外部に大気開放することができる。
【0025】
特に、本実施形態に係る陰圧容器側一方弁8は、医療用吸引器具1によって排液が吸引されることにより、陰圧容器2側の圧力が陽圧であって排気部(排気部材4)側よりも10mmHg以下の所定の値まで高まったときに、陰圧容器2から排気部材4へのエアの排気を許容する。
また、排気部側一方弁7が開く圧力と陰圧容器側一方弁8が開く圧力を加えた圧力が、14.7mmHg以下、好ましくは10mmHg以下であると、排気部側一方弁7の弁体を押し上げて大気開放可能となるため好適である。
【0026】
ここで、陰圧容器側一方弁8が開閉する際の圧力(排気部材4の内圧に対する陰圧容器2内の圧力)について、表1を参照して説明する。
【表1】
表1に示すように、陰圧容器側一方弁8が開く圧力が0である場合であっても、陰圧容器2の内部を陰圧にする機能を損なうわけではない。しかしながら、排気部材4を圧搾するときに、一部のエアが陰圧容器2の内部に逆流するため、陰圧容器2内を目標の陰圧状態にする効率が低くなる。
また、陰圧容器側一方弁8が開く圧力が20mmHgである場合には、収容容器3に排液を収容したとしてもなかなか陰圧容器側一方弁8が開かず、収集速度が遅くなってしまう。
一方、陰圧容器側一方弁8が開く圧力が10mmHg以下で、特に5mmHgである場合には、吸引箇所(患部)よりも低い高さ範囲で、収容容器3の高さを低くし、サイフォンの原理により収容容器3内の圧力を大きくしたときに陰圧容器側一方弁8を開かせることができる。
具体的には、一般的な患部高さから被験者の架台の上面との高低差である約20cm低い位置に収容容器3を配設することにより、収容容器3内の圧力を大きくして陰圧容器側一方弁8を開かせることができる。例えば、比重1の排液の場合には、患部高さから20cm低い位置に収容容器3があるときには、14.7mmHgの圧力が収容容器3の内部に加わることになる。
【0027】
なお、所定量だけ排液を収容容器3内に収容したときに自然排出が可能となるように、排気部材4を圧搾する操作量(操作回数)について指標が定められていると好適である。
指標について具体的には、排気部材4の操作回数(例えば3回)についての注意書きのあるラベルや、陰圧容器2に描かれた線図によって、目標となるバルーン5の膨らみ度合いを示すこと等が挙げられる。
【0028】
<変形例>
上記実施形態においては、ダックビル弁を用いた陰圧容器側一方弁8について説明したが、吸引される排液の量に応じて、陰圧容器側一方弁を開放できる構成であれば、本発明はこのような構成に限定されない。
次に、変形例に係る陰圧容器側一方弁18について図5及び図6を主に参照して説明する。図5は、変形例に係る陰圧容器側一方弁18を示す断面図であり、連通孔19aを封止している状態を示す図、図6は、変形例に係る陰圧容器側一方弁18を示す断面図であり、連通孔19aを開放している状態を示す図である。
【0029】
本変形例に係る陰圧容器側一方弁18は、エアの流路を形成及び閉塞する第1部材(本体部材19)と第2部材(膜状部材20)とを備える。
第1部材は、陰圧容器2と排気部(排気部材4)とを連通する連通孔19aを有する本体部材19である。
具体的には、本体部材19は、中空で先鋭形状を有しており、連通孔19aは、本体部材19に対して水平方向に延在して、本体部材19内部の中空空間と外部(排気部材4の内部)とを連通する横穴である。
第2部材は、本体部材19に取り付けられた膜状部材20であり、排液が医療用吸引器具に吸引されることにより陰圧容器2の圧力が高まったときに、連通孔19aを塞いだ状態から連通孔19aを開放した状態となる。
陰圧容器側一方弁18に膜状部材20を採用することで、排液が吸引されることにより陰圧容器2の圧力が高まったときに、連通孔19aを開放するように膜状部材20が拡径方向に伸びることにより弁を開くことができる。
【0030】
特に、第1部材(本体部材19)と第2部材(膜状部材20)とは、陰圧容器2と排気部(排気部材4)との間のエアの流路において非圧接状態で配設されている。
このように、陰圧容器側一方弁18が非圧接状態で設けられていることで、排液が吸引されることにより陰圧容器2及び排気部材4の圧力が高まったときに、陰圧容器側一方弁18及び排気部側一方弁7がエアを外部に大気開放することができる。
【0031】
上記実施形態に係る医療用吸引器具1においては、陰圧容器2と収容容器3とを別個に備えるものとして説明したが、本発明は陰圧容器側一方弁を備える限り、このような構成に限定されない。つまり、陰圧容器2と収容容器3とが一体的に形成されて、陰圧容器を構成するものであってもよい。
【0032】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)陰圧容器で形成される陰圧により排液を吸引する医療用吸引器具であって、
前記陰圧容器と、
前記陰圧容器に接続されており、弾性を有して第1状態と該第1状態から圧搾された第2状態とに変形可能に構成されて、外部にエアを排気して前記陰圧容器を陰圧にすることが可能な排気部と、
前記陰圧容器と前記排気部との間に配置された陰圧容器側一方弁と、
前記排気部と前記外部との間に配置され、前記排気部から前記外部への排気を許容しつつ、前記外部から前記排気部への吸気を阻止する排気部側一方弁と、を備え、
前記陰圧容器側一方弁は、前記排気部が前記第2状態から前記第1状態に復元する際に、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容しつつ、前記排気部が前記第1状態から前記第2状態になる際に、前記排気部から前記陰圧容器への吸気を阻止し、
前記陰圧容器側一方弁は、前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されて前記陰圧容器の圧力が高まることにより、前記排気部が前記第1状態にあるときに、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容することを特徴とする医療用吸引器具。
(2)前記陰圧容器側一方弁は、前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されることにより、前記陰圧容器側の圧力が陽圧であって前記排気部側よりも10mmHg以下の値まで高まったときに、前記陰圧容器から前記排気部への前記エアの排気を許容する(1)に記載の医療用吸引器具。
(3)前記陰圧容器側一方弁は、前記エアの流路を形成及び閉塞する第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材は、前記陰圧容器と前記排気部とを連通する連通孔を有する本体部材であり、
前記第2部材は、
前記本体部材に取り付けられた膜状部材であり、
前記排液が前記医療用吸引器具に吸引されることにより前記陰圧容器の圧力が高まったときに、前記連通孔を塞いだ状態から前記連通孔を開放した状態となる(1)又は(2)に記載の医療用吸引器具。
(4)前記陰圧容器側一方弁は、前記エアの流路を形成及び閉塞する第1部材と第2部材とを備え、
前記第1部材と前記第2部材とはダックビル弁を構成している(1)又は(2)に記載の医療用吸引器具。
(5)前記第1部材と前記第2部材とが、前記陰圧容器と前記排気部との間の前記エアの流路において非圧接状態で配設されている(3)又は(4)に記載の医療用吸引器具。
【符号の説明】
【0033】
1 医療用吸引器具
2 陰圧容器
2a キャップ
2b 接続部
3 収容容器
3a 吸引口
3b クランプ部材
3c 排出口
4 排気部材(排気部)
4a 圧搾部
4b 第1開口部
4c 第2開口部
5 バルーン
6 連結チューブ
7 排気部側一方弁
8 陰圧容器側一方弁
8a 可撓壁(第1部材)
8b 可撓壁(第2部材)
8c スリット
18 陰圧容器側一方弁
19 本体部材(第1部材)
19a 連通孔
20 膜状部材(第2部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6