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特許7215122活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ、およびそれを用いた印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ、およびそれを用いた印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20230124BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20230124BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C09D11/101
B41M1/06
B41M1/30 D
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018229038
(22)【出願日】2018-12-06
(62)【分割の表示】P 2018512439の分割
【原出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019052319
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2017042418
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017042419
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017042420
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017048101
(32)【優先日】2017-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】辻 祐一
(72)【発明者】
【氏名】定国 広宣
(72)【発明者】
【氏名】小清水 昇
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 浩一
(72)【発明者】
【氏名】井上 武治郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-015755(JP,A)
【文献】特開2011-225748(JP,A)
【文献】特開平10-287787(JP,A)
【文献】特開2000-72832(JP,A)
【文献】特開2002-294131(JP,A)
【文献】特開2013-241580(JP,A)
【文献】特開平10-195361(JP,A)
【文献】特開2007-197544(JP,A)
【文献】特開2011-221476(JP,A)
【文献】特表2012-521386(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1944548(CN,A)
【文献】国際公開第2015/173552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00- 13/00
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21- 2/215
B41M 1/00- 3/18
B41M 7/00- 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和基および親水性基を有するアクリル系樹脂、アシルホスフィンオキシド化合物、並びに脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含み、前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの水酸基価が50mgKOH/g以上であり、前記アクリル系樹脂の親水性基がカルボキシル基およびヒドロキシル基を含み、前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートが、少なくともトリシクロデカン骨格を有する、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項2】
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートのインキ中の含有量が5質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項3】
前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの水酸基価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下ある、前記請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有するアクリル系樹脂の酸価が30mgKOH/g以上250mgKOH/g以下である、請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有するアクリル系樹脂のヨウ素価が0.5mol/kg以上3.0mol/kg以下である、請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有するアクリル系樹脂が、アクリル樹脂、およびスチレンアクリル樹脂から選ばれる1種類以上を含む、請求項1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項7】
さらにヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートを含む、請求項1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項8】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートの重量平均分子量が400以上3000以下である、請求項7に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項9】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートの水酸基価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下である、請求項7または8に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項10】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートが、(メタ)アクリレート由来構造を2つ以上有する、請求項7~9のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項11】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートのインキ中の含有量が5重量%以上50重量%以下である、請求項7~10のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項12】
前記アシルホスフィンオキシド化合物の含有量が1質量%以上20質量%以下である、請求項1~11のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項13】
さらに分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物を含み、前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物のインキ中の含有量が、0.15質量%以上1.0質量%以下である請求項1~12のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項14】
さらに酸触媒を含む、請求項13に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項15】
前記酸触媒が第四級アンモニウムカチオンである、請求項14に記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項16】
さらに、HLB値が8以上18以下である界面活性剤を含む、請求項1~15のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項17】
前記顔料が二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイトからなる群より選ばれる1種類以上である、請求項1~16のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項18】
25℃、コーンプレート型回転粘度計で測定した回転数0.5rpmにおける粘度(A)が5Pa・s以上100Pa・s以下、回転数50rpmにおける粘度(B)が10Pa・s以上40Pa・s以下であり、かつ、粘度比率(B)/(A)が0.25以上0.4以下であることを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを基材上に塗布した後、活性エネルギー線を照射する工程を含む印刷物の製造方法。
【請求項20】
前記基材が、プラスチックフィルムであり、その厚みが5μm以上50μm以下である、請求項19に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷時の硬化性、耐地汚れ性に優れ、濡れ性の低いプラスチックフィルムに対して良好な転移性、密着性を示し、印刷物に高い隠蔽性を付与する活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ、およびそれを用いた印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷は、高速、大量、安価に印刷物を供給するシステムとして広く普及している印刷方式であり、特に近年においては、生産性の高さから、水銀ランプやメタルハライドランプ等の光源を用いる活性エネルギー線硬化型平版印刷の利用が、多くの分野で広がっている。
【0003】
従来、平版印刷は、紙を対象に行われることが多かったが、印刷適用品種の多様化からプラスチックフィルムへの印刷も広がりつつある。特に近年では、薄膜フィルムを基材とし、日用雑貨、食料品、医薬品などの用途に用いられる軟包装印刷を、平版で行う試みが始まっている。
【0004】
薄膜フィルムへの印刷はロールトゥロール方式で行われるため、裏移り防止の観点から、瞬間硬化が可能な活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが必須となる。しかしながら、従来の水銀ランプやメタルハライドランプ等の光源は高出力である一方、光源からの発熱により薄膜フィルムが熱伸縮し、見当精度が大幅に低下する。
【0005】
光源からの発熱や消費電力が小さい活性エネルギー線光源として、単峰性かつ発光波長幅の狭い輝線を発する発光ダイオード光源が着目されているが、利用可能な活性エネルギー線の波長・エネルギー量が限られるため、インキの高感度化が必要となる。このため、特定の光重合開始剤を組み合わせた活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ(特許文献1参照)が開示されている。
【0006】
また、軟包装で用いられる薄膜フィルムは、柔軟で容易に折れ曲がるため、表刷りの場合に、印刷面は擦れやすく、インキ皮膜は薄膜フィルムに強固に密着する必要がある。さらに裏刷りの後にラミネートする場合でも、後加工や使用時に基材の薄膜フィルムからインキ皮膜が剥がれない密着性が要求される。そのため、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキにおいて、硬化性向上のために、反応性基を複数有する高硬化性のモノマー類を用いる態様が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
また透明フィルムに下地色として印刷される白インキは、高い隠蔽性の発現が要求され(特許文献3参照)、これを実現するためには素抜けの防止や高レベリング性が必要不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】日本国特許第4289441号公報
【文献】日本国特開2012-162646号公報、背景技術
【文献】日本国特開2003-192970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキでは、365nmに発光波長を有する発光ダイオードを光源として用いた場合、一定の硬化性が得られるが、利用可能な波長領域に対して、吸光度が小さいため、あるいは開始剤効率の低い光重合開始剤を併用しているため、光重合開始剤の含有量が増大する傾向にあった。
【0010】
特許文献2に開示された活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキでは、硬化時の体積収縮が大きく、基材のプラスチックフィルムとの間の密着性が不足する傾向にあった。
【0011】
また、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、一般に軟包装印刷に用いられているグラビアインキと比較して100倍以上高粘度であり、基材への転移性やレベリング性に劣ること、加えて活性エネルギー線照射により瞬時に硬化するため、インキがレベリングする時間がなく、印刷物に素抜けやインキ皮膜表面の凹凸が生じやすいこと、が課題となっていた。
【0012】
さらに、転移性やレベリング性を向上するためにインキの粘度を下げると、印刷時の高剪断下でインキの凝集力が不足し、本来インキが付着しない非画線部にもインキが反発せずに付着する、地汚れと呼ばれる印刷不良が発生するという課題があった。またプラスチックフィルム、特にポリエチレンやポリプロピレンなどポリオレフィン類は表面エネルギーが低く、濡れにくいことも課題となっていた。
【0013】
そこで、本発明ではかかる従来技術の課題を克服し、印刷時の硬化性、耐地汚れ性に優れ、濡れ性の低いプラスチックフィルムに対して良好な転移性を示し、得られる印刷物に高い基材密着性、隠蔽性を付与することができる、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ、およびそれを用いた印刷物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは顔料、ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和基および親水性基を有するアクリル系樹脂、アシルホスフィンオキシド化合物、並びに脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含み、前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの水酸基価が50mgKOH/g以上であり、前記アクリル系樹脂の親水性基がカルボキシル基およびヒドロキシル基を含み、前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートが、少なくともトリシクロデカン骨格を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷時の硬化性、耐地汚れ性に優れ、濡れ性の低いプラスチックフィルムに対して良好な転移性を示す活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを提供し、それを用いることで、高い密着性、隠蔽性を有する印刷物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、顔料を含む。本発明に含まれる顔料としては、平版印刷用インキ組成物で一般的に用いられる有機顔料と無機顔料から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0017】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートを含む。前記ヒドロキシル基は、インキ中で顔料の表面官能基と相互作用するため良好な顔料の分散性を備えることができ、インキの流動性を向上する。インキの流動性が向上することで、印刷時に良好な転移性を示す。
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂を含む。前記親水性基は、インキ中で顔料の表面官能基と相互作用するため良好な顔料の分散性を備えることができ、結果としてインキの流動性が向上する。また、前記樹脂の親水性基同士、および樹脂の親水性基と、前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートのヒドロキシル基の間で、相互作用し、印刷時の高剪断下におけるインキの凝集力を高める。インキの凝集力が高くなると、非画線部に対するインキ反発性が向上することから、結果として耐地汚れ性が向上する。
【0019】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの添加により、インキの粘度、および表面自由エネルギーが低下するため、基材へのインキ転移性、およびレベリング性が向上する。
【0020】
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線照射による硬化時の体積収縮が小さくなり、基材に対する密着性が向上するため、脂環骨格を有することが好ましい。
前記脂環骨格は、より剛直で、硬化時の体積収縮が小さく、硬化皮膜の耐傷性などの膜物性が良好となることから、縮環骨格であることがより好ましい。
前記脂環骨格としては、ノルボルナン骨格、アダマンタン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格などが挙げられ、特にトリシクロデカン骨格が好ましい。
【0021】
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線への硬化感度が良好となり、硬化膜の強度を高め密着性が向上することから、(メタ)アクリレート由来構造を2つ以上有することが好ましい。
【0022】
前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、単官能では炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートとして、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートが挙げられ、脂環骨格を有する(メタ)アクリレートとして、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルナン-2-メタノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。2官能では炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートとして、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、脂環骨格を有する(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンタジエントリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また炭素数6から18の脂肪族骨格を繰り返し単位として有するポリエステルジ(メタ)アクリレートでもよい。上記の中でも、硬化時の体積収縮が小さく、縮環骨格を有し、かつ2官能であるトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。なおここで官能数は、(メタ)アクリレート由来構造の数をいう。
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを5質量%以上含むと、インキの粘度、および表面自由エネルギーを低減し、基材に対する転移性が向上するため、好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらにより好ましい。また、インキの耐地汚れ性を良好に保つことが出来る、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0024】
前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの水酸基価は、顔料分散性が向上することから50mgKOH/g以上が好ましく、75mgKOH/g以上がより好ましく、100mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、前記水酸基価は、極性基同士による粘度上昇を抑制し、流動性を良好に保つことが出来るため200mgKOH/g以下が好ましく、180mgKOH/g以下がより好ましく、160mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0025】
前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、イソシアヌル酸、およびジペンタエリスリトール等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、およびこれらのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。より具体的には、トリメチロールプロパンのジ(メタ)アクリレート、グリセリンのジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのジ、トリ、テトラ又はペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体、テトラエチレンオキシド付加体等が挙げられる。上記の中でも、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが顔料分散性、流動性に優れることから、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートを20質量%以上含むと、インキの顔料分散性が向上するため好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、極性基同士による粘度上昇を抑制し、流動性を良好に保つことが出来る、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の親水性基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが好ましく挙げられる。中でも顔料の分散性が良好な、カルボキシル基、ヒドロキシル基がより好ましく、カルボキシル基およびヒドロキシル基を含むことが特に好ましい。
【0028】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の酸価は、インキの顔料分散性が良好で、かつ耐地汚れ性が向上することから30mgKOH/g以上が好ましく、60mgKOH/g以上がより好ましく、75mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、多官能(メタ)アクリレートに対する溶解性を示し、極性基同士による粘度上昇を抑制によりインキの流動性が保たれる250mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。なお、前記樹脂の酸価は、JIS K 0070:1992の試験方法第3.1項の中和滴定法に準拠して求めることができる。
【0029】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂は、前記エチレン性不飽和基がラジカル種との反応により架橋構造を形成するため、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの活性エネルギー線に対する感度を向上する。
【0030】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価は、活性エネルギー線への硬化感度が良好となることから、0.5mol/kg以上が好ましく、1.0mol/kg以上がより好ましく、1.5mol/kg以上がさらに好ましい。また、インキの保存安定性が向上することから、3.0mol/kg以下が好ましく、2.5mol/kg以下がより好ましく、2.0mol/kg以下がさらに好ましい。エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価は、エチレン性不飽和基の量により調節することができる。なお、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂のヨウ素価はJIS K 0070:1992の試験方法第6.0項に記載の方法により求めることができる。
【0031】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の主鎖構造として、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられるが、特に限定されるものではない。上記に挙げた樹脂由来の主鎖構造のうち、モノマー入手の容易性、低コスト、合成の容易性、インキ他成分との相溶性、顔料の分散性等の点から、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂に由来する主鎖構造が好ましく用いられる。
【0032】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0033】
上記に挙げた樹脂のうち、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂から選ばれる樹脂由来の主鎖構造を有するエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂は、次の方法により作成できる。すなわち、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルまたはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマー、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸2-(メルカプトアセトキシ)エチルなどのメルカプト基含有モノマー、(メタ)アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などのスルホ基含有モノマー、2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等の中から選択された化合物を、ラジカル重合開始剤を用いて重合または共重合させることで親水性基を有する樹脂が得られる。さらに前記親水性基を有する樹脂中の活性水素含有基であるメルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させることにより、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂が得られる。ただし、これらの方法に限定されるものではない。
【0034】
また、グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジルなどが挙げられる。
【0035】
また、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0036】
前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の重量平均分子量は、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの耐地汚れ性が向上するため5,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましくは、20,000以上がさらに好ましい。また、インキの流動性が保たれるため100,000以下が好ましく、75,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。なお、前記樹脂の重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算で測定を行い、得ることができる。
【0037】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂を5質量%以上50質量%以下含むことが好ましい。前記樹脂の含有量が上記範囲内にあることで、インキの顔料分散性および耐地汚れ性を良好に保つことが出来る。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートは、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂との相溶性に優れ、濡れ性の低い基材に対するインキの密着性を向上する。ロジン骨格は同程度の分子量を有する石油系炭化水素と比べて軟化点が低いため、特に極性の低いオレフィン系基材への密着性に優れる。
【0039】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、硬化時の収縮応力を低減し、密着性を向上するため400以上が好ましく、600以上がより好ましい。また、活性エネルギー線硬化性が良好な3,000以下が好ましく、2,000がより好ましい。
【0040】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートの水酸基価は、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂に対して良好な相溶性を示し、基材との密着性に優れる50mgKOH/g以上が好ましく、75mgKOH/g以上がより好ましい。また、インキ硬化膜の耐水性に優れる150mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましい。
【0041】
前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線への硬化感度が良好となり、硬化膜の強度を高め密着性が向上することから、(メタ)アクリレート由来構造を2つ以上有することが好ましい。
【0042】
ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートは、天然樹脂であるガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類、前記ロジン類の不均化体、二量化体、多量化体、および水素化体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて得ることができる。前記ロジン類にはアビエチン酸、ネオアビエチン酸、レポビマール酸等のカルボキシル基を含有する化合物が含まれるため、グリシジル(メタ)アクリレートと反応によりエポキシ基が開環し、得られる(メタ)アクリレートはヒドロキシル基を有する。ロジン類に反応させるグリシジル(メタ)アクリレートの数、すなわちヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートのアクリレート由来構造は1以上であればよく、好ましくは2以上である。またアクリレート由来構造が1のヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート、およびアクリレート由来構造が2以上のヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートを組み合わせてもよい。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートを5質量%以上含むと、基材との密着性が高まるため好ましく、15質量%以上がより好ましい。また粘度上昇を抑制し、流動性を良好に保つ50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキはアシルホスフィンオキシド化合物を含むことが好ましい。前記アシルホスフィンオキシド化合物は、350nm以上の長波長域の光も吸収するため、紫外光を吸収あるいは反射する顔料が含まれる系においても、高い感度を有する。加えて、アシルホスフィンオキシド化合物は、いったん反応した後は光吸収が無くなるフォトブリーチング効果を有し、この効果により、優れた内部硬化性を示す。また、前記アシルホスフィンオキシド化合物は、一般に多官能(メタ)アクリレートに対する溶解性が低いため、均一にインキ中に拡散せず、結果として、添加量に見合った感度の向上が見られない場合や、アシルホスフィンオキシド化合物の析出によりインキ流動性が低下する場合がある。一方で、前記アシルホスフィンオキシド化合物は前記ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレートに対して高相溶性を示すため、媒体中に均一に拡散し、結果として活性エネルギー線に対する感度が向上する。
【0045】
前記アシルホスフィンオキシド化合物の具体例としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-4-メトキシフェニル-フェニル-ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメチルベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイル-ジシクロヘキシル-ホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド等が挙げられる。中でも入手が容易である2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシドが特に好ましい。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、350nm以上の発光に対する硬化感度が向上するため、前記アシルホスフィンオキシド化合物を1質量%以上含むことが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、インキの保存安定性を向上し、流動性を良好に保つことが出来る、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物を、インキ全量の0.15質量%以上1.0質量%以下含むことが好ましい。前記ヒドロキシ化合物とはヒドロキシ基を有する化合物を示す。前記ヒドロキシ化合物は、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂との間で、ファンデルワールス力や水素結合等の分子間力で相互作用することで、樹脂同士間での相互作用を低減し、インキの流動性が向上する。特に、前記ヒドロキシ化合物の含有量が0.15質量%以上であると、前記ヒドロキシ化合物と前記樹脂間との相互作用がより増加し、インキ粘度の低下幅が大きくなる。また、前記ヒドロキシ化合物の含有量がインキ全量中の1.0質量%以下であれば、良好な流動性と耐地汚れ性を両立することができる。
【0048】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキにおいて、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂の親水性基に接近し、ファンデルワールス力や水素結合等の分子間力が作用しやすくなることから、前記ヒドロキシ化合物は分子量200以下が好ましく、150以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。
【0049】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記ヒドロキシ化合物を0.15質量%以上含むと、インキの流動性が向上するため好ましい。より好ましくは0.25質量%以上、さらに好ましくは0.35質量%以上である。また、1.0質量%以下であると、インキの耐地汚れ性が保たれるため好ましい。より好ましくは0.95質量%以下、さらに好ましくは0.9質量%以下である。なお、前記ヒドロキシ化合物の含有量は、前記ヒドロキシ化合物が水であれば、カールフィッシャー水分率計により測定することができる。前記ヒドロキシ化合物が水以外の場合、分子量200以下の揮発性の成分であるため、ガスクロマトグラフィー/質量分析測定を用いて定量することができる。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物を1種以上使用することができる。上記含有量について、本発明の平版印刷用インキが、前記分子量が200以下であり、かつヒドロキシ化合物を2種以上含有する場合、それぞれの含有量の合計値を用いて議論する。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂由来の水酸基数を100mol部とした時、前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物が、20mol部以上であると、インキの流動性が向上するため好ましい。より好ましくは25mol部以上、さらに好ましくは30mol部以上である。また、120mol部以下であると、インキの耐地汚れ性が保たれるため好ましい。より好ましくは115mol部以下、さらに好ましくは110mol部以下である。前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが、前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物を2種以上含有する場合、それぞれのmol部数の合計値を用いて議論する。
【0052】
前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物の極性パラメーターET値(参考文献:Reichardt,C;Chem Rev 1994,94,p.2337~2340)が45.0kcal/mol以上であると、前記ヒドロキシ化合物と前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂との間に分子間力が作用しやすくなり、インキの流動性が向上するため好ましい。より好ましくは47.0kcal/mol以上、さらに好ましくは49.0kcal/mol以上である。また、65.0kcal/mol以下であると、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂との相溶性が良化するため好ましい。より好ましくは64.0kcal/mol以下、さらに好ましくは63.5kcal/mol以下である。
【0053】
前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物が液体である場合には、その粘度はB型粘度計を用い、25℃において測定される。前記ヒドロキシ化合物が液体である場合には、その粘度は0.1mPa・s以上であると、インキの耐地汚れ性が保たれるため好ましい。より好ましくは、0.4mPa・s以上、さらに好ましくは0.7mPa・s以上である。また、70mPa・s以下であると、インキの流動性が保たれるため好ましい。より好ましくは60mPa・s以下、さらに好ましくは50mPa・s以下である。
【0054】
前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、2-プロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、2-ヘキサノール、2-ヘプタノール、2-オクタノール、2-ノナノール、2-デカノール、2-ウンデカノール、2-ドデカノール、2-トリデカノール、3-ペンタノール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、3-ノナノール、3-デカノール、3-ウンデカノール、3-ドデカノール、3-トリデカノール、4-ヘプタノール、4-オクタノール、4-ノナノール、4-デカノール、4-ウンデカノール、4-ドデカノール、4-トリデカノール、5-ノナノール、5-デカノール、5-ウンデカノール、5-ドデカノール、5-トリデカノール、6-ウンデカノール、6-ドデカノール、6-トリデカノール、7-トリデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、4-メトキシフェノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メルカプトエタノール、2-アミノエタノール、2-シアノエタノール、2-クロロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,2-トリクロロエタノール、1-メトキシー2-プロパノール、1-アミノー2-プロパノール、2-アミノー1-ブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、グリセロール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2-イソプロピルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、5-イソプロピル-2-メチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2,6-ジクロロフェノール、4-クロロー3-メチルフェノール、4-メトキシフェノール、2,6-ジメトキシフェノール、3,5-ジメトキシフェノール、3-アセトキシフェノール、2-(メトキシカルボニル)フェノール、2-(フェノキシカルボニル)フェノール、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、2-ニトロフェノール、4-シアノフェノール等が挙げられるが、液体、固体問わず、特に限定されるものではない。中でも、入手の容易性、低コスト、非危険性等の点から、水、エタノール、プロピレングリコール、2-プロパノール、4-メトキシフェノール等が好ましく用いられる。
【0055】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、前記分子量が200以下であり、かつ(メタ)アクリレート基を含まないヒドロキシ化合物に加えて、酸触媒を含むことが好ましい。前記酸触媒を含むことで、前記エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂との間にファンデルワールス力や水素結合等の分子間力が作用し、前記樹脂間の相互作用を低減し、結果としてインキの流動性が向上する。
【0056】
前記酸触媒としては、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、2-プロパン酸、2-ブタン酸、2-ペンタン酸、2-ヘプタン酸、2-オクタン酸、2-ノナン酸、2-デカン酸、2-ウンデカン酸、2-ドデカン酸、3-ペンタン酸、3-ヘプタン酸、3-オクタン酸、3-ノナン酸、3-デカン酸、3-ウンデカン酸、3-ドデカン酸、4-オクタン酸、4-ノナン酸、4-デカン酸、4-ウンデカン酸、4-ドデカン酸、5-デカン酸、5-ウンデカン酸、5-ドデカン酸、6-ドデカン酸、安息香酸、2-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、4-メチル安息香酸などのカルボン酸や、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨージドなどの第4級アンモニウムカチオンが挙げられ、中でも第4級アンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、界面活性剤を含むことが好ましい。前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが界面活性剤を含むことにより、水あり平版印刷時に、適切な量(一般にインキ全量の10~20質量%と言われる)の湿し水を取り込み乳化することで、非画線部の湿し水に対する反発性が増し、インキの耐地汚れ性が向上する。
【0058】
前記界面活性剤の親水性基と疎水性基の比率はHLB値により表される。ここで言うHLB値とは界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値であり、HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高いことを意味する。前記界面活性剤のHLB値としては、水を溶解することから、8以上であることが好ましく、10以上がより好ましい。また、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキに溶解することから、18以下であることが好ましく、16以下がより好ましい。
【0059】
前記界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチンエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンパルミチンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、ポリオキシアルキレンステアリルエーテル、ポリオキシアルキレンセチルエーテル、ポリオキシアルキレンパルミチンエーテルや、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリアルキルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリラウリルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリオレイルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリステアリルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリセチルエーテル、ソルビタン酸のモノ、ジ、トリパルミチンエーテルや、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリセチルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン酸のモノ、ジ、トリパルミチンエーテルや、ポリエーテル変性シリコーンオイルなどが挙げられ、HLB値が8以上18以下にあるものが好ましく用いられる。
【0060】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、水あり平版印刷中に湿し水を取り込み乳化状態が安定することから、前記界面活性剤を0.01質量%以上含むことが好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが、印刷中に湿し水を過剰に取り込み、湿し水と相溶しない、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、有機顔料および/または無機顔料からなる顔料を含む。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン系顔料、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、レーキ顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられ、その具体例としてはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾレッド、モノアゾレッド、モノアゾイエロー、ジスアゾレッド、ジスアゾイエロー、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンダ、イソインドリンイエロー等が挙げられる。
【0062】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ベンガラ、カドミウムレッド、黄鉛、亜鉛黄、紺青、群青、酸化物被覆ガラス粉末、酸化物被覆雲母、酸化物被覆金属粒子、アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、亜鉛粉、ステンレス粉、ニッケル粉、有機ベントナイト、酸化鉄、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0063】
透明なプラスチックフィルムの下地色として印刷するインキの場合、隠蔽性を付与する二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナホワイト等の白色顔料が好ましい。
前記白色顔料の粒子径としては、散乱により可視光の透過率が最も低下する、200nm以上300nm以下であることが好ましい。
【0064】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキ中に含まれる顔料濃度は、比重が2以下の有機顔料やカーボンブラックであれば、印刷濃度を得るために、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。また、インキの流動性を向上し、良好な転移性を得るために、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。比重が2より大きい無機顔料であれば、印刷濃度を得るために、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、インキの流動性を向上し、良好な転移性を得るために、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0065】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、増感剤を含有することができる。増感剤の具体例としては、2-メチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,3-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)-ベンゾフェノン(別名:ミヒラーケトン)、4,4-ビス(ジエチルアミノ)-ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)-イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-カルボニル-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、N-フェニル-N-エチルエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、N-トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸メチル、ジエチルアミノ安息香酸エチル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3-フェニル-5-ベンゾイルチオテトラゾール、1-フェニル-5-エトキシカルボニルチオテトラゾールなどが挙げられる。
【0066】
増感剤を添加する場合、その含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが良好な感度を得られることから、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの保存安定性が向上することから、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0067】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、重合禁止剤を含有することが好ましい。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N-ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p-t-ブチルカテコール、N-フェニルナフチルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-p-メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキが良好な保存安定性を得られることから、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの0.001質量%以上が好ましく、良好な感度を得られる5質量%以下が好ましい。
【0068】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、シリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、植物油、植物油由来の脂肪酸エステル、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる成分の1種類以上を含むことが好ましい。より好ましくは、シリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる成分の1種類以上を含むとよい。
【0069】
前記成分は、水なし平版印刷版の非画線部であるシリコーンゴムへのインキ付着性を低下させる効果がある。シリコーンゴムへのインキ付着性を低下させる理由は以下のように推測される。すなわち、インキに含まれる前記成分は、シリコーンゴム表面との接触によりインキ中から拡散し、シリコーンゴム表面を薄膜状に覆う。このようにして形成された薄膜がシリコーンゴム表面へのインキの付着を阻止し、シリコーン表面の地汚れを防止すると推測される。
【0070】
前記成分のうち、アルキル(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線照射時に硬化することから、インキの硬化膜の耐水性を向上させると同時に活性エネルギー線に対する感度が向上するため好ましい。
前記成分の具体的な化合物は次のとおりである。
【0071】
シリコーン液体としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、脂肪酸アミド変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、フルオロアルキル変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、シラノール変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン等が挙げられる。
【0072】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、炭素数が好ましくは5~24、より好ましくは6~21であるとよい。
【0073】
植物油としては、大豆油、アマニ油、サフラワー油、桐油、トール油、脱水ヒマシ油等が挙げられる。
植物油由来の脂肪酸エステルとしてはステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等炭素数15~20程度のアルキル主鎖を有する脂肪酸の、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル等の炭素数1~10程度のアルキルエステル等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、ポリオレフィンオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
【0074】
フルオロカーボンとしては、1,1,1,2,2-ペンタフルオロエタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4-ノナフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8-ヘプタデカフルオロオクタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3,4,4-オクタフルオロー2―トリフルオロメチルブタン、1,1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロ-2-トリフルオロメチルヘキサン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-ドデカフルオロヘキサン等が挙げられる。
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、耐地汚れ性を向上させることから、上述したシリコーン液体、アルキル(メタ)アクリレート、植物油、植物油由来の脂肪酸エステル、炭化水素系溶媒、およびフルオロカーボンから選ばれる1種類以上の成分を0.5質量%以上含むことが好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、さらに好ましくは、2質量%以上である。また、活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの保存安定性を向上させることができることから、10質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0076】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、顔料の分散性を高めるために顔料分散剤を含むことが好ましい。使用する顔料の密度、粒子径、表面積等によって最適な含有量は異なるが、前記顔料分散剤は前記顔料の表面に作用し、前記顔料の凝集を抑制する。これにより顔料分散性が高まり、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの流動性が向上する。
【0077】
前記顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti-Terra-U」、「Anti-Terra-203/204」、「Disperbyk-101、102、103、106、107、110、111、115、118、130、140、142、145、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、184、185、187、190、191、192、193、199、2000、2001、2008、2009、2010、2012、2013、2015、2022、2025、2026、2050、2055、2060、2061、2070、2096、2150、2151、2152、2155、2163、2164、2200、2205、9067、9076」、「Bykumen」、「BYK-P104、P105」、「P104S、240S」、「Lactimon」が挙げられる。
【0078】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100、150、400、401、402、403、450、451、452、453、745」、共栄社化学社製「フローレン TG-710、「フローノンSH-290、SP-1000」、「ポリフローNo.50E、No.300」、楠本化成社製「ディスパロン 325、KS-860、873SN、874、1401、#2150、#7004」が挙げられる。
【0079】
さらに、花王社製「デモールRN、N、MS、C、SN-B、EP」、「ホモゲノールL-18、「エマルゲン920、930、931、935、950、985」、「アセタミン24、86」、アビシア社製「ソルスパース5000、13940、17000、24000GR、32000、33000、39000、41000、53000」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824」等が挙げられる。
【0080】
前記顔料分散剤の含有量は、前記活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの流動性が向上することから、前記顔料に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0081】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキには、必要に応じてワックス、消泡剤、転移性向上剤、レベリング剤等の添加剤を使用することが可能である。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの粘度は、コーンプレート型回転式粘度計を用い、25℃において測定される。回転数0.5rpmにおける粘度(A)は、5Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度(A)が5Pa・s以上であることによって、インキが、良好なローラー間の転移性を示す傾向にある。より好ましくは、10Pa・s以上であり、さらに好ましくは20Pa・s以上である。また、前記粘度(A)が100Pa・s以下であることによって、前記インキの流動性が良好となり、特に白インキであれば、隠蔽性が向上する。より好ましくは80Pa・s以下であり、さらに好ましくは60Pa・s以下である。回転数50rpmにおける粘度(B)は、10Pa・s以上40Pa・s以下であることが好ましい。前記粘度(B)が、10Pa・s以上であることによって、インキの耐地汚れ性を向上させることが出来る。より好ましくは、15Pa・s以上であり、さらに好ましくは20Pa・s以上である。また、前記粘度(B)が40Pa・s以下であることによって、前記インキの平版印刷版への転移性(画線部に対する着肉性)が向上する。より好ましくは35Pa・s以下であり、さらに好ましくは30Pa・s以下である。前記粘度(A)と前記粘度(B)の比率である、粘度比率(B)/(A)は、0.25以上0.4以下であることが好ましい。より好ましくは0.30以上0.4以下であり、さらに好ましくは0.35以上0.4以下である。前記粘度比(B)/(A)が上記範囲内にあることによって、インキの耐地汚れ性と流動性を両立可能であり、そのインキを用いると地汚れ無く、画線部が平滑な高品質の印刷物が得られる。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの製造方法を次に述べる。本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、顔料、ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂、好ましくは脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレート、その他成分を、必要に応じて5~100℃で加温溶解した後、ニーダー、三本ロールミル、ボールミル、遊星式ボールミル、ビーズミル、ロールミル、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、自公転型攪拌機等の撹拌・混練機で均質に混合分散することで得られる。混合分散後、もしくは混合分散の過程で、真空もしくは減圧条件下で脱泡することも好ましく行われる。
【0084】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを用いた印刷物の製造方法は次のとおりである。まず、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを基材上に塗布する工程によりインキ塗膜を有する印刷物を得ることができる。また、基材上に塗布された活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキからなるインキ塗膜に活性エネルギー線を照射する工程を含むことができる。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、活性エネルギー線を照射することで、印刷物上のインキ塗膜を瞬時に硬化させることができる。前記活性エネルギー線としては、硬化反応に必要な励起エネルギーを有するものであればいずれも用いることができ、例えば紫外線や電子線などが好ましく用いられる。電子線により硬化させる場合は、100~500eVのエネルギー線を有する電子線装置が好ましく用いられる。紫外線により硬化させる場合は、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード等の紫外線照射装置が好ましく用いられる。波長350~420nmの輝線を発する発光ダイオードを用いることが、省電力・低コスト化の点から好ましい。
【0086】
基材としては、アート紙、コート紙、キャスト紙、合成紙、新聞用紙、アルミ蒸着紙、金属、プラスチックフィルムなどが挙げられるが、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、プラスチックフィルムに対する転移性に優れる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチックフィルム、前記プラスチックフィルムが紙上にラミネートされたプラスチックフィルムラミネート紙、アルミニウム、亜鉛、銅などの金属がプラスチック上に蒸着された金属蒸着プラスチックフィルム等が挙げられるが、本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキは、特にポリプロピレンからなるフィルムに対して良好な転移性を示す。
またこれらのプラスチックフィルムは易接着性の付与のため、プライマ樹脂のコーティング、コロナ放電処理、プラズマ処理の表面処理を施すことが好ましい。
【0087】
前記基材の厚みとしては、軟包装用途に用いる場合、印刷に必要な基材の機械的強度から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、基材のコストが安価となる50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0088】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの基材上へ塗布する方法としては、フレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、バーコーター等の周知の方法により、基材上に塗布することができる。特に平版印刷が好ましく、平版印刷の方式としては、水あり印刷、水なし印刷とあるが、どちらの方式も用いることが可能である。基材としては、枚葉、ロールフィルムのいずれも用いることが可能である。軟包装用の薄膜フィルムに印刷する場合は、ロールフィルムを用い、ロールトゥロールで印刷することが好ましい。
【0089】
印刷物上のインキ塗膜(インキ硬化膜)の厚みは0.1~50μmであることが好ましい。インキ塗膜の厚みが上記範囲内であることにより、良好な印刷品質を保ちつつ、インキコストを低減させることが出来る。
【実施例
【0090】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<インキ原料>
顔料1(白インキ):タイペークCR57(石原産業(株)製)
顔料2(藍インキ):セイカシアニンブルー4920(大日精化(株)製)
顔料3(藍インキ):リオノールブルーFG7330(東洋カラー(株)製)
顔料4(紅インキ):セイカブリリアントカーミン6B1483LT(大日精化(株)製)
体質顔料:“ミクロエース”(登録商標)P-3(日本タルク(株)製)
【0091】
多官能(メタ)アクリレート1:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“Miramer”(登録商標)M340(MIWON社製)、水酸基価115mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート2:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“アロニックス”(登録商標)M-402(東亜合成(株)製)、水酸基価28mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート3:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“アロニックス”(登録商標)M-403A(東亜合成(株)製)、水酸基価53mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート4:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“アロニックス”(登録商標)M-306(東亜合成(株)製)、水酸基価171mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート5:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート“NKエステル”(登録商標)701(新中村化学(株)製)、水酸基価224mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート6:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ジグリセリントリアクリレートとジグリセリンテトラアクリレートの混合物、水酸基価119mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート7:ヒドロキシル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレートとジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの混合物、水酸基価102mgKOH/g
多官能(メタ)アクリレート8:ペンタエリスリトールテトラアクリレートエチレンオキシド付加物“Miramer”(登録商標)M4004(MIWON社製)ヒドロキシル基なし
多官能(メタ)アクリレート9:脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート“NKエステル”(登録商標)A-DCP(新中村化学(株)製)
多官能(メタ)アクリレート10:炭素数6の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート“NKエステル”(登録商標)A-HD-N(新中村化学(株)製)
官能(メタ)アクリレート11:脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、イソボニルアクリレート“NKエステル”(登録商標)A-IB(新中村化学(株)製)
官能(メタ)アクリレート12:脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート“Miramer”(登録商標)M1130(MIWON社製)
官能(メタ)アクリレート13:脂環骨格を有する(メタ)アクリレート、トリシクロデカンアクリレート“ファンクリル”(登録商標)513-AS(日立化成(株)製)
【0092】
ロジン(メタ)アクリレート1:ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート“バンビーム”(登録商標)UV-22A(ハリマ化成(株)製)、水酸基価84mgKOH/g
ロジン(メタ)アクリレート2:ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート、バンビームUV-22C(ハリマ化成(株)製)官能基数2~3、水酸基価70mgKOH/g、重量平均分子量760
ロジン(メタ)アクリレート3:ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート、ビームセットBS-101(荒川化学工業(株)製)官能基数1、水酸基価125mgKOH/g、重量平均分子量430
ロジン(メタ)アクリレート4:ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート、パインクリスタルKE-615-3(荒川化学工業(株)製、ロジン含有ジオール)のヒドロキシル基に対し、1.0当量のグリシジルメタクリレート(GMA)付加させた反応物。官能基数2、水酸基価32mgKOH/g、重量平均分子量1100
ロジン(メタ)アクリレート5:ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート、二量化ロジンを0.5当量のペンタエリスリトールでエステル化した後、ヒドロキシル基に対し、1.0当量のグリシジルメタクリレート(GMA)付加させた反応物。官能基数2~4、水酸基価53mgKOH/g、重量平均分子量3500
【0093】
樹脂1:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.6当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させて、エチレン性不飽和基と親水性基を有する樹脂1を得た。得られた樹脂1は重量平均分子量34,000、酸価102mgKOH/g、ヨウ素価2.0mol/kgであった。
樹脂2:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、1.0当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基を有する樹脂2を得た。得られた樹脂2の重量平均分子量40,000、酸価0mgKOH/g、ヨウ素価3.2mol/kgであった。
樹脂3:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.95当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂3を得た。得られた樹脂3は重量平均分子量39,000、酸価10mgKOH/g、ヨウ素価3.1mol/kgであった。
樹脂4:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.9当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂4を得た。得られた樹脂4は重量平均分子量38,000、酸価35mgKOH/g、ヨウ素価2.9mol/kgであった。
樹脂5:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.8当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂5を得た。得られた樹脂5は重量平均分子量37,000、酸価62mgKOH/g、ヨウ素価2.5mol/kgであった。
樹脂6:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂6を得た。得られた樹脂6は重量平均分子量32,000、酸価190mgKOH/g、ヨウ素価1.0mol/kgであった。
樹脂7:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.2当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂7を得た。得られた樹脂7は重量平均分子量31,000、酸価240mgKOH/g、ヨウ素価0.5mol/kgであった。
樹脂8:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.1当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させてエチレン性不飽和基および親水性基を有する樹脂8を得た。得られた樹脂8は重量平均分子量30,000、酸価259mgKOH/g、ヨウ素価0.25mol/kgであった。
樹脂9:25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のスチレン、50質量%のメタクリル酸からなる共重合体(樹脂9)を得た。得られた親水性基を有する樹脂9は重量平均分子量29,000、酸価282mgKOH/g、ヨウ素価0mol/kgであった。
樹脂10:28質量%のメタクリル酸メチル、28質量%のスチレン、44質量%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシ基に対して0.5当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させて、エチレン性不飽和基と親水性基を有する樹脂10を得た。得られた樹脂10は重量平均分子量30,000、酸価105mgKOH/g、水酸基価210mgKOH/g、ヨウ素価1.9mol/kgであった。
【0094】
光重合開始剤1:アシルホスフィンオキシド化合物、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド“ルシリン”(登録商標)TPO(BASF社製)385nm吸収:有り
光重合開始剤2:アシルホスフィンオキシド化合物、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキシド“イルガキュア”(登録商標)819(BASF社製)385nm吸収:有り
光重合開始剤3:アシルホスフィンオキシド化合物、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチル-ホスフィンオキシド“イルガキュア”(登録商標)1700(BASF社製)385nm吸収:有り
光重合開始剤4:アシルホスフィンオキシド化合物、ジフェニル-ベンゾイルホスフィンオキシド 385nm吸収:有り
光重合開始剤5:2-[4-(メチルチオ)ベンゾイル]-2-(4-モルホリニル)プロパン“イルガキュア”(登録商標)907(BASF社製)385nm吸収:無し
光重合開始剤6:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン“イルガキュア”(登録商標)184(BASF社製)385nm吸収:無し
光重合開始剤7:2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン“カヤキュア”(登録商標)DETX-S(日本化薬(株)製)385nm吸収:有り
【0095】
重合禁止剤1:p-メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)
重合禁止剤2:N-ニトロソジフェニルアミン(和光純薬工業(株)製)
ヒドロキシ化合物1:純水(和光純薬工業(株)社製)、分子量18
ヒドロキシ化合物2:エタノール(和光純薬工業(株)社製)、分子量46
ヒドロキシ化合物3:2-プロパノール(和光純薬工業(株)社製)、分子量60
ヒドロキシ化合物4:エチレングリコール(和光純薬工業(株)社製)、分子量62
ヒドロキシ化合物5:プロピレングリコール(和光純薬工業(株)社製)、分子量76
ヒドロキシ化合物6:2,6-ジーtert-ブチル-4-メチルフェノール(和光純薬工業(株)社製)、分子量220
酸触媒1:酢酸(和光純薬工業(株)社製)、分子量60
酸触媒2:ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(東京化成工業(株)社製)、分子量228
溶剤:トルエン(和光純薬工業(株)社製)、ヒドロキシ基なし、分子量92
界面活性剤:“レオドール”(登録商標)TW-L120(花王(株)製)HLB値16.7
顔料分散剤:“Disperbyk”(登録商標)111(ビックケミー社製)
添加剤1:オレイン酸エチル(和光純薬工業(株)製)
添加剤2:ラウリルアクリレート(和光純薬工業(株)製)
ワックス:“KTL”(登録商標)4N(喜多村(株)製)
【0096】
<重量平均分子量の測定>
樹脂の重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。GPCはHLC-8220(東ソー(株)製)、カラムはTSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製)、TSKgel SuperHM-H(東ソー(株)製)、TSKgel SuperH2000(東ソー(株)製)の順で連結したものを用い、RI検出は前記GPCに内蔵されたRI検出器を用い測定した。検量線はポリスチレン標準物質を用いて作成し、試料の重量平均分子量を計算した。測定試料の作成方法を説明する。濃度が0.25質量%となるように試料をテトラヒドロフランで希釈し、希釈溶液をミックスローター(MIX-ROTAR VMR-5、アズワン(株)社製)にて5分間100rpmで攪拌し溶解させ、0.2μmフィルター(Z227536-100EA、SIGMA社製)でろ過して、ろ液を測定試料とした。測定条件を説明する。打ち込み量は10μL、分析時間は30分、流量は0.4mL/min、カラム温度は40度として、測定した。
【0097】
<水なし印刷試験>
水なし平版印刷版(TAC―VG5、東レ(株)製)をオフセット輪転印刷機(MHL13A、宮腰精機(株)製)に装着し、参照例1,実施例2,参照例3~5,実施例6~10,参照例11~18,実施例19,20,参照例21,実施例22~32,参照例33~38,実施例39~57、参照例60~75および比較例1~13の各インキを用いて、OPPフィルム(“パイレン”(登録商標)P2111、膜厚20μm、コロナ処理、東洋紡(株)製)に印刷速度50m/分で、2000m印刷した。
【0098】
<水あり印刷試験>
水あり平版印刷版(XP-F、富士フィルム(株)製)をオフセット輪転印刷機(MHL13A、宮腰精機(株)製)に装着し、湿し水にエッチ液(SOLAIA-505、T&K TOKA社製)を3質量%混合した水道水を用い、実施例58、および59のインキを用いて、OPPフィルムに印刷速度50m/分で、2000m印刷した。
【0099】
本発明の活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの各評価方法は以下の通りである。
(1)インキ粘度
アントン・パール(Anton Paar)製レオメーターMCR301にコーンプレート(コーン角1°、φ=40mm)を装着し、インキピペットで秤量した0.15mlのインキの25℃の0.5rpmにおける粘度(A)、および50rpmにおける粘度(B)を測定した。
【0100】
(2)耐地汚れ性(非画線部反射濃度)
白インキ:黒色上質紙を紙白(反射濃度0の基準)とし、印刷物のベタ部反射濃度が-1.0であるときの、非画線部における色濃度を反射濃度計(GretagMacbeth製、SpectroEye)を用いて評価した。反射濃度が-0.15以上であると耐地汚れ性が良好であり、-0.05以上であると耐地汚れ性が極めて良好である。
藍、および紅インキ:上質紙を紙白(反射濃度0の基準)とし、印刷物のベタ部反射濃度が2.0であるときの、非画線部における色濃度を反射濃度計(GretagMacbeth製、SpectroEye)を用いて評価した。反射濃度が0.15以下であると耐地汚れ性が良好であり、0.05以下であると耐地汚れ性が極めて良好である。
【0101】
(3)着肉性(耐素抜け性)
印刷物のベタ部分のインキの着肉性をミクロメータースコープ(杉藤製、倍率×25)ごしに目視にて3段階で評価した。評価基準は以下の通り。
3:素抜けがほとんど見られず良好。
2:素抜けが散見される。
1:目視でも素抜けが多く見られる。
【0102】
(4)隠蔽性(ヘイズ)
参照例1,実施例2,参照例3~5,実施例6~10、および比較例1~3の白インキに関して、印刷物のベタ部分のヘイズ(曇度)を、ヘイズメーター(スガ試験機(株)製、HGM-2DP)を用いて測定した。80%以上であると隠蔽性が良好であり、85%以上であると隠蔽性が極めて良好である。
【0103】
(5)385nmの紫外光に対する硬化感度
0.2gのインキをRIテスター(テスター産業(株)製、PI-600)にて、OPPフィルムに転写し、パナソニックデバイスSUNX(株)製発光ダイオード―紫外線照射装置UD90(照射強度8W/cm、照射波長385nm)を用いて、ベルトコンベアースピードを0~150m/分の条件で紫外線を照射した。2時間後に、印刷物上のインキが十分に硬化して、セロハン粘着テープ(“セロテープ”(登録商標)No.405)を接着させて剥離しても、剥がれなくなるときのベルトコンベアースピードを求めた。ここで、ベルトコンベアースピードが速いほど少ない露光量で硬化できることから高感度である。ベルトコンベアースピードが60m/分未満であると感度が不十分であり、60m/分以上100m/分未満であると感度が良好であり、100m/分以上であると感度が極めて良好と判断した。
【0104】
(6)密着性(ラミネート剥離強度)
0.1gのインキをRIテスター(テスター産業(株)製、PI-600)にて、OPPフィルムに転写し、パナソニックデバイスSUNX(株)製発光ダイオード―紫外線照射装置UD90(照射強度8W/cm2、照射波長385nm)を用いて、ベルトコンベアースピード10m/分で硬化させた。ラミネートフィルム(太閤ポリエチレン社製、LL-XMTN、厚み30μm)に、ディックドライLX500/KR-90S(重量比率15/1で混合、ともにDIC(株)製)を塗工し、60℃で1分乾燥させた後、印刷物にラミネートし、40℃で40時間乾燥させた。ラミネートした印刷物から幅15mmの評価用切片を切り出し、引張試験機(テンシロンUTA-500、オリエンテック(株)製)にて、30cm/min、180°で剥離した際の最大応力を剥離強度とした。剥離強度が1.0N/15mm未満であると密着性が不十分であり、1.5N/15mm以上2.0N/15mm未満であると密着性が良好であり、2.0N/15mm以上であると密着性が極めて良好と判断した。
【0105】
[参照例1]
表1に示す、顔料、多官能(メタ)アクリレート、樹脂、光重合開始剤を含むインキ組成を秤量し、三本ロールミル“EXAKT”(登録商標)M-80S(EXAKT社製)を用いて、ギャップ1で3回通すことで活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキを得た。
【0106】
得られた活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキについて、上記の通りインキ粘度、硬化感度(コンベアー速度)を評価した。また水なし印刷試験を実施し、耐地汚れ性(非画線部反射濃度)を評価した。印刷物について着肉性、隠蔽性(ヘイズ)、およびフィルム密着性を評価した。作製した活性エネルギー線硬化型平版印刷用インキの0.5rpmにおける粘度(A)は、21Pa・sであった。耐地汚れ性は、非画線部における反射濃度が-0.04であり、極めて良好であった。着肉性は素抜けが散見され、感度は150m/分と極めて良好であった。隠蔽性は84%と良好であった。OPPフィルムへの密着性は、1.1N/15mmと良好であった。
【0107】
[実施例2,参照例3~5,実施例6~10]
インキの組成を表1の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、隠蔽性、感度および密着性の評価を行った。脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することで、参照例1と比較して、着肉性、隠蔽性、密着性は向上する一方で、粘度の低下により、耐地汚れ性は低下する傾向が見られた。前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの含有量が増加すると、その傾向はより顕著になった。前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの中でも、アクリレート基の数が多いほど、感度が向上する傾向にあり、特にトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いた場合、極めて良好な隠蔽性、密着性を有しつつ、耐地汚れ性も良好であった。
【0108】
参照例11~18,実施例19~20]
インキの組成を表2の通りに変更する以外は参照例1と同様の操作ならび粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。参照例11と比較して、ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートを含むことで、密着性が向上する傾向にあった。また、前記ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレート含有量が増加することで、耐地汚れ性、密着性が向上する傾向にあったが、インキ粘度が高くなるため、着肉性が低下する傾向にあった。参照例11と比較して、多官能(メタ)アクリレートの反応性が低いため、感度も低下する傾向にあった。
【0109】
参照例21,実施例22~32]
インキの組成を表3の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することで、参照例21と比較して、着肉性、密着性は向上する一方で、粘度の低下により、耐地汚れ性は低下する傾向が見られた。前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの含有量が増加すると、よりその傾向が見られた。また前記脂環骨格または炭素数6から18の脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレートの中でも、アクリレート基の数が多いほど、感度が向上する傾向にあり、特にトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを用いた場合、極めて良好な密着性を有しつつ、耐地汚れ性も良好であった。また、ヒドロキシル基およびロジン骨格を有する(メタ)アクリレートと組み合わせることで、密着性はさらに向上した。
【0110】
[参照例33~38,実施例39~43,参照例44,45]
インキの組成を表4の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。参照例45と比較して、アシルホスフィンオキシド化合物を含むことで、内部硬化性改善により感度が向上する傾向が見られた。また、385nmに吸収を持たない光重合開始剤では、感度が著しく低下した。
【0111】
参照例46,実施例47~51]
インキの組成を表5の通りに変更する以外は参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。多官能(メタ)アクリレートの水酸基価が高いと、顔料分散性が良好となり、耐地汚れ性が良好な結果を示す傾向にあった。一方で、水酸基価が高くなるにつれてインキの粘度が増加するため、着肉性が低下する傾向にあった。
【0112】
[実施例52~57]
インキの組成を表6の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。樹脂の酸価が高いと、顔料分散性が良好となり、耐地汚れ性が良好な結果を示す傾向にあった。一方で、樹脂の酸価が高くなるにつれてインキの粘度が増加するため、着肉性が低下する傾向にあった。また、ヨウ素価が高くなると、樹脂の反応性が向上するため、感度が向上する傾向にあった。
【0113】
[実施例58および59]
インキの組成を表7の通りとし、水なし印刷試験を水あり印刷試験に変更する以外は参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。実施例58の耐地汚れ性は、非画線部における反射濃度が0.06であり、良好であった。また実施例59の耐地汚れ性は、非画線部における反射濃度が0.02であり、極めて良好であった。
【0114】
参照例60~75]
インキの組成を表8の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、感度および密着性の評価を行った。酸触媒2を加えた参照例68では特に、粘度低下効果が見られ、良好な結果が得られた。またヒドロキシ化合物の含有量が少ないと粘度低下の効果が弱く、流動性が低下する傾向にあった。またヒドロキシ化合物の含有量が多いと、粘度低下効果が大きく、耐地汚れ性が低下する傾向にあった。
【0115】
[比較例1~13]
インキの組成を表9の通りに変更する以外は、参照例1と同様の操作ならびに粘度、耐地汚れ性、着肉性、隠蔽性、感度および密着性の評価を行った。ヒドロキシル基を含有しない多官能(メタ)アクリレートや、親水性基(酸性基)を含有しない樹脂を用いた場合、耐地汚れ性、着肉性、隠蔽性、および密着性のいずれも低下し、不十分であった。また不飽和基を含有しない樹脂を用いた場合、感度が大幅に低下し不十分であった。また酸価が高いために、インキ粘度が高くなり、着肉性、隠蔽性が低下し、不十分であった。
実施例および比較例に用いた各成分の組成と評価の結果を表1~9に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】