(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】浄水器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230124BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230124BHJP
【FI】
C02F1/00 B
C02F1/28 R
(21)【出願番号】P 2018236268
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高島 孝輔
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-104670(JP,A)
【文献】登録実用新案第3083365(JP,U)
【文献】実開昭60-085686(JP,U)
【文献】特開2008-255717(JP,A)
【文献】特表2012-511124(JP,A)
【文献】特開2018-089613(JP,A)
【文献】特開2009-226326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-1/78
E03C 1/02
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を収納したフィルタカートリッジ、一端がフィルタカートリッジに接続されたフィルタカートリッジへ原水を導入するための原水導入管、および一端がフィルタカートリッジに接続されたフィルタカートリッジから浄水を導出するための浄水導出管を有し、
前記原水導入管の他端および前記浄水導出管の他端は、それぞれ水栓と接続するための接続部であり、
前記接続部は、
相対的に大きな外径の頭部と相対的に小さな外径のホース接続部とで構成された外径に段差のある円筒体であって、ホース接続部に前記原水導入管を構成するホースおよび前記浄水導出管を構成するホースがそれぞれ接続された口金具と、
開口を有する板状体であって、開口の大きさが前記口金具のホース接続部は通り前記口金具の頭部は通らない大きさであり、外縁の最外径が前記口金具の頭部の外径よりも大きな
穴用C形止め輪と、
一端に、前記口金具を挿入するための円形の凹部であって底面には開口があり内部の側壁に全周に渡る環状溝が形成された挿入凹部、を有する継手本体と、
で少なくとも構成され、
前記
穴用C形止め輪を前記ホース接続部にはめた前記口金具が、前記頭部から前記継手本体の前記挿入凹部に挿入されて、挿入された状態で
穴用C形止め輪の外縁が継手本体の前記環状溝にはまることで、口金具が継手本体に回動可能に固定された、
浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を浄化する浄水器に関し、さらに詳しくは、キッチン下のキャビネットが前後方向にスライドする、引き出し奥側の板に設置するアンダーシンク型浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道水を浄化する浄水器としては、水道水栓の吐出口に直結する蛇口直結型浄水器、キッチンの上に置いて使用する据置型浄水器、キッチンの内部に置いて使用するアンダーシンク型(またはビルトイン型)浄水器などが知られている。いずれも浄水器用フィルタカートリッジに充填した濾材は処理できる総濾過水量が限られているため、使用者は、浄水器用フィルタカートリッジを定期的に交換しながら浄水器を継続使用する。
【0003】
アンダーシンク型浄水器は、蛇口直結型浄水器や据置型浄水器に比べて大型であり、処理できる総濾過水量も大きいため長期間使用できる。キッチンの水栓やシンク近傍に浄水器を置かないので、作業の邪魔にならない。
【0004】
アンダーシンク型浄水器としては、例えば特許文献1のように、原水入口と浄水出口を備え、ワンタッチジョイントを先端に取り付けたホースを接続して使用するものが知られている。使用者は、浄水器用カートリッジをシンク下の空間の底面に置き、原水供給用のホースと、浄水吐出用のホースを接続する。キッチンの水栓を操作すれば容易に浄水を得ることができる。
【0005】
しかし、このタイプの浄水器は、通常、流し台収納部の奥に設置されており、キッチン下のキャビネットが前後方向にスライド可能な引き出しタイプであると、浄水器を取り出すには手前に収められている物品を取り出さなければならず、交換に手間がかかるという問題があった。
【0006】
これに対し、例えば特許文献2のように、浄水器用カートリッジのジョイントを保護することができ、さらに浄水器用カートリッジの交換が容易であるカートリッジホルダーと、これを備えるカートリッジ装置が知られている。使用者は、キッチン下のキャビネットの引き出しを使用者の手前側に引き出すことで、カートリッジホルダーから浄水器用カートリッジを容易に取り出すことができ、交換に手間がかからない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-275814号公報
【文献】国際公開第2015/199145号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に提案されているカートリッジ装置は、浄水器用カートリッジがキッチンの流し台に設置された浄水器用水栓に配管及びホースを介して接続されており、キッチン下のキャビネットが前後方向にスライドすることに伴いホースも動き、ホースが動く際に発生するねじれにより、浄水器用水栓とホースとの接続部位から水漏れが起こるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、従来の技術における上記の問題点に鑑み、浄水器用水栓とホースとの接続部位を回動可能にすることで、キャビネットが前後方向にスライドすることにより発生するホースのねじれを逃がして、浄水器用水栓とホースとの接続部位からの水漏れを防ぐことができる浄水器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の浄水器は、
濾材を収納したフィルタカートリッジ、一端がフィルタカートリッジに接続されたフィルタカートリッジへ原水を導入するための原水導入管、および一端がフィルタカートリッジに接続されたフィルタカートリッジから浄水を導出するための浄水導出管を有し、
上記原水導入管の他端および上記浄水導出管の他端は、それぞれ水栓と接続するための接続部であり、
上記接続部は、
相対的に大きな外径の頭部と相対的に小さな外径のホース接続部とで構成された外径に段差のある円筒体であって、ホース接続部に上記原水導入管を構成するホースおよび上記浄水導出管を構成するホースがそれぞれ接続された口金具と、
開口を有する板状体であって、開口の大きさが上記口金具のホース接続部は通り上記口金具の頭部は通らない大きさであり、外縁の最外径が上記口金具の頭部の外径よりも大きな抜け止め部材と、
一端に、上記口金具を挿入するための円形の凹部であって底面には開口があり内部の側壁に全周に渡る環状溝が形成された挿入凹部、を有する継手本体と、
で少なくとも構成され、
上記抜け止め部材を上記ホース接続部にはめた上記口金具が、上記頭部から上記継手本体の上記挿入凹部に挿入されて、挿入された状態で抜け止め部材の外縁が継手本体の上記環状溝にはまることで、口金具が継手本体に回動可能に固定されている。
【0011】
本発明の浄水器は、上記抜け止め部材が穴用C形止め輪であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浄水器によれば、原水導入管、浄水導出管が回転可能に固定されることで、キャビネットが前後方向にスライドすることにより発生するホースのねじれを逃がして、浄水器用水栓とホースとの接続部位からの水漏れを防ぐことができる。
【0013】
また、本発明の好ましい態様の浄水器によれば、穴用C形止め輪を用いることで、工具などを用いない限り穴用C形止め輪を取り外すことができないため、使用者が誤って分解することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明における接続部の一例を示す断面図である。
【
図3】本発明における抜け止め部材の一態様である穴用C形止め輪を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の浄水器の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、キッチン5下のキャビネット4などに浄水器用ホルダ300が設置されており、浄水器1が浄水器用ホルダ300に取り付けられている。
【0016】
図1に図示されているように、この浄水器1は、濾材を収納したフィルタカートリッジ2、原水導入管7および浄水導出管8から構成されている。原水導入管7はフィルタカートリッジ2に原水を導入するためのホースであり、一端がフィルタカートリッジ2に接続されている。浄水導出管8はフィルタカートリッジ2から浄水を導出するためホースであり、一端がフィルタカートリッジ2に接続されている。そして、原水導入管7の他端および浄水導出管8の他端には、それぞれ水栓3と接続するための接続部104が取り付けられている。
【0017】
次に、接続部104を構成する各部材について説明する。
図2に示すように、接続部104は、口金具11、継手本体100、抜け止め部材101、Оリング103、締結部材15およびホース体16から構成されている。
【0018】
口金具11は、円筒状の頭部14とこの頭部14から延びる円筒状のニップル部(ホース接続部)13とで構成され、中心部に頭部14とニップル部13とを貫通する流路が形成されている。頭部14の外径はニップル部13の外径よりも大きくなっており、口金具14は全体として外径に段差のある円筒体になっている。
【0019】
ホース体16はニップル部13に挿入され、ホース体16の外周に取り付けた締結部材15を圧迫して固定することにより、ホース体16はニップル部13と締結部材15の間に固定される。
【0020】
ホース体16を圧迫して固定する締結部材15は、配管用ホースを接続して通水した際に、水が漏れたり、水圧によってホースが抜けないものであればよい。このような締結部材としては、加締めて固定する加締め用スリーブ、ホースクランプ、結束バンドなどがある。
【0021】
締結部材15の材料は、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネートなどの安価な樹脂でもよいが、強度の観点から、ステンレス、黄銅、青銅などの金属が好ましい。
【0022】
図2で図示している口金具11とホース体16との接続方式は、ホース体16の内側にニップル部13を挿入する方式であるが、例えばワンタッチ継手のように、ホース体16の外側をシールする方式を採用してもよい。
【0023】
継手本体100には円形の凹部である挿入凹部220がある。挿入凹部220の底面には外部に通ずる開口が開けられており、側壁249には全周に渡る環状溝102が形成されている。
【0024】
口金具11および継手本体100は、強度の観点から、ステンレス、黄銅、青銅などの金属で製造するのが好ましい。
【0025】
図2、3に図示されているように、抜け止め部材101は全体が板状体であり、内側が開口部17になっている。開口部17の大きさは、口金具11のニップル部13は通るが頭部14は通らない大きさになっている。さらに、抜け止め部材101の外縁250の最外径は、口金具11の頭部14の外径よりも大きくなっている。
【0026】
抜け止め部材101をニップル部13にはめた口金具11が、継手本体100の挿入凹部220に挿入され、口金具11が挿入された状態で、抜け止め部材101の外縁250が継手本体100の環状溝102にはめられている。抜け止め部材101は、口金具11の頭部14の頭部端面223を押さえた状態で環状溝102に固定されているので、抜け止め防止部材101は、継手本体100の挿入凹部220に口金具11を軸方向に固定し、口金具11の脱落を防止していることと併せて、口金具11の回動を可能にしている。
【0027】
また、口金具11の頭部14の外周面にはOリング103が配置されており、このOリング103が継手本体100の挿入凹部220の内周面に接することにより、口金具11と継手本体100とは液密に結合され、口金具11と継手本体100との間の液密性が確保されている。
【0028】
原水導入管7を流れる原水と浄水導出管8を流れる浄水は、それぞれ、口金具11の頭部14とニップル部13とを貫通する流路、および継手本体100の挿入凹部220の底面に開けられた開口を通って、接続部104の内部を流れる。
【0029】
継手本体100の内部の側壁249から環状溝102の外径までの長さ、いわゆる環状溝102の溝深さは、抜け止め防止部材101の耐圧性の確保のためには大きいほうが有利である。一方で、環状溝102の溝深さを大きくすると当然ながら継手本体100のサイズが大きくなりコストが上がる。そのため、耐圧性とコストの兼ね合いを考慮し、環状溝102の溝深さは0.4~2.0mmが好ましい。
【0030】
抜け止め部材11の開口部17は、口金具11の頭部14以外の部分が通り、かつ頭部14の頭部端面223を押さえる形状であればよいので、円形状、角形状、長円状形状、U字形状などの様々な形状で形成できる。これらの中でも、頭部端面223と同じ円形状であれば、開口部の大きさを最小にして頭部端面223との接触面積を確保できるため、強度の観点から好ましい
図3に開示されている抜け止め部材101は、隣接する部材を固定するリング状の穴用C形止め輪であるが、これには限定されない。
【0031】
抜け止め部材101は、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの樹脂でもよいが、強度の観点から、ステンレス、黄銅、青銅などの金属で製造するのが好ましい。
【0032】
抜け止め部材101の板厚は、耐圧性の確保のため大きいほうが有利であるが、板厚を大きくすると当然ながらコストが上がるため、耐圧性とコストの兼ね合いを考慮し、板厚は0.3~3.0mmが好ましい。
【0033】
上記の構造により、原水導入管7と浄水導出管8を回転可能にすることができる。これより、浄水器用水栓3と原水導入管7、浄水器用水栓3と浄水導出管8を接続する際に発生するねじれを逃がして、浄水器用水栓3との接続部位からの水漏れを防ぐことができる。
【0034】
また、継手本体100と抜け止め部材101は環状溝102により強固に固定されるため、浄水器1に高い水圧がかかった場合でも水漏れを防ぐことができる。また、抜け止め部材101はプライヤーなどの工具を用いない限り取り外すことができないため、使用者が誤って分解することを防止できる。
【0035】
次に浄水器1の設置について説明する。本発明の浄水器1の設置場所は、浄水器1がキッチン5の流し台に設置された浄水器用水栓3に原水導入管7および浄水導出管8を介して接続されたものであり、キッチン5下のキャビネット4が前後方向にスライドすることに伴い原水導入管7および浄水導出管8も動く、キッチン5下のキャビネット4に設置して使用するアンダーシンク型浄水器として用いれば、従来の課題を解決できて有効である。
【0036】
浄水器1の原水導入管7と、浄水導出管8は、キッチン5の浄水器用水栓3に接続されている。浄水器用水栓3のレバーを回すなどして開栓すると、浄水器用水栓3に内蔵された弁機構から原水導入管7に水道水が供給されるようになっている。浄水器1で浄化された浄水が浄水導出管8から浄水器用水栓3に戻り、弁機構を通過せずに浄水器用水栓3の吐出口からそのまま吐出される。すなわち浄水器用水栓3に内蔵された弁機構より下流側に浄水器1が設けられ、止水時には浄水器1に水圧がかからないようになっている。いわゆるII形の浄水器である。しかしながら本発明の浄水器1はII形に限定されない。止水時に浄水器1に水圧がかかる、いわゆるI形の浄水器として使用してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 浄水器
2 フィルタカートリッジ
3 水栓(浄水器用水栓)
4 キャビネット
5 キッチン
7 原水導入管
8 浄水導出管
11 口金具
13 ニップル部(ホース接続部)
14 頭部
15 締結部材(加締め用スリーブ)
16 ホース体(ホース)
17 開口部
100 継手本体
101 抜け止め部材
102 環状溝
104 接続部
220 挿入凹部
249 内部の側壁
250 外縁
300 浄水器用ホルダ