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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】接着剤および積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230124BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230124BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20230124BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230124BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J4/02
C09J175/14
C09J11/06
B32B27/30 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018243290
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105277
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石崎 慎治
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 大
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-241069(JP,A)
【文献】特開2007-177169(JP,A)
【文献】特開2018-095829(JP,A)
【文献】特開2008-174667(JP,A)
【文献】特開2008-115341(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047615(WO,A1)
【文献】特開2017-137395(JP,A)
【文献】特開2008-024818(JP,A)
【文献】特開2017-110129(JP,A)
【文献】特開2013-241508(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0292378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/04
B32B 27/30
C09J 4/02
C09J 11/06
C09J 175/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が1000以上の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、および重量平均分子量が1000未満の(メタ)アクリレートモノマーを含む接着剤であって、
前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(B)、水酸基を有しアミド基を有しないモノ(メタ)アクリレート(C)、水酸基を有し且つアミド基を有する(メタ)アクリレート(D)を含み、前記(A)~(D)以外のラジカル重合性成分(E)をさらに含み得る接着剤であって、
前記(A)~(E)の合計100質量%中、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を1~20質量%含み、且つ水酸基を有するモノマーを40~80質量%含む、
接着剤。
【請求項2】
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)がポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)である、請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
前記ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)が、ポリエーテル骨格を有するポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1-1)である、請求項2記載の接着剤。
【請求項4】
水酸基を有し且つアミド基を有する前記(メタ)アクリレートモノマー(D)を前記(A)~(E)の合計100質量%中に5~30質量%含む、請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を前記(A)~(E)の合計100質量%中に1~30質量%含む、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
さらに光重合開始剤を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の接着剤。
【請求項7】
第一の基材、請求項1~6いずれか1項に記載の接着剤の硬化物である接着層、および第二の基材を備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイは、反射防止フィルム、位相差フィルム、偏光板、液晶セル(または有機EL層)、タッチパネル等の光学部材を粘着剤や接着剤で貼り合わされた積層体として使用されている。
【0003】
これら、ディスプレイなどの表示装置等の光学用途では、活性エネルギー線重合性接着剤は、重合速度が速く、また一般に無溶剤で使用できるため、作業性に優れ、さらに重合時に必要となるエネルギーが極めて低い等の優れた特性を有しているため幅広く使用されている。活性エネルギー線重合性接着剤は、一般的に、ラジカル重合性の活性エネルギー線重合性接着剤や、カチオン重合性の活性エネルギー線重合性接着剤が知られている。
【0004】
また、ディスプレイは、テレビやモニターとしての利用に加え、その表面に透明電極層等を設け、入力機能を備えたタッチパネルとして、スマートフォンやタブレット端末等の携帯端末用途、カーナビゲーション等の車載用途で広く使用されている。
スマートフォン等では、限られた大きさの中で表示面積を拡大するためスマートフォンの外周の厚み部分にまでディスプレイを拡張したいわゆる曲面ディスプレイが使用されている。さらに、スマートフォンは、その高機能を活かしアプリを利用したカーナビゲーションとして自動車内で使用される場合が増えている。
【0005】
表示装置に使用される接着剤としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性多官能アクリレート、ベンジルメタリレート、および2-ヒドロキシエチルメタクリレート等を含む活性エネルギー線硬化性接着剤(特許文献1)が開示されている。
【0006】
特許文献2には、多官能ウレタンアクリレート、オルトフェニルフェノールアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、およびヒドロキエチルメタクリレートを含む活性エネルギー線硬化性接着剤が開示されている。
【0007】
特許文献3には、複素環を有するアクリレート、複素環以外の環を有するアクリレート、水酸基を有するアクリレートを含む活性エネルギー線硬化性接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2011/145524号
【文献】国際公開第2006/118078号
【文献】特開2017-137395
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車載用途の一般的なディスプレイは、冬季や夏季の温度変化の影響を直接受ける。しかし、表示装置を構成する各光学部材や各光学部材の積層に使用される接着剤は温度変化に伴う寸法変化率が互いに違うため、貼り合せた後、浮きや剥がれが発生する場合があった。曲面ディスプレイの場合、寸法変化率の違いによる応力は、変形部位であるディスプレイ外周の厚み部分に集中するので、変形部位における浮きや剥がれが特に発生し易くなる。また、ディスプレイの生産性を向上させるために、活性エネルギー線重合性接着剤を基材に高速で塗工すると、活性エネルギー線の照射量が不足して接着力が不足する問題があった。多官能モノマーをより多く含む接着剤を用いることによって、重合速度を速め、少ない照射量でも十分硬化するようにしようとすると、硬化収縮に伴う応力が大きくなり変形部位での光学部材同士に浮きや剥がれが発生する場合があった。
【0010】
本発明は、低照射量でも十分硬化し、初期接着力だけでなく、変形部位における高温保存後および低温保存後の接着力に優れる積層体を形成し得る接着剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、重量平均分子量が1000以上の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、および重量平均分子量が1000未満の(メタ)アクリレートモノマーを含む接着剤であって、前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(B)、水酸基を有しアミド基を有しないモノ(メタ)アクリレート(C)、水酸基を有し且つアミド基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)を含み、前記(A)~(D)以外のラジカル重合性成分(E)をさらに含み得る接着剤であって、
前記(A)~(E)の合計100質量%中、水酸基を有するモノマーを40~80質量%含む、接着剤に関する。
【0012】
前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)であることが好ましく、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)は、ポリエーテル骨格を有するポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1-1)であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、水酸基を有し且つアミド基を有する前記(メタ)アクリレートモノマー(D)を、前記(A)~(E)の合計100質量%中に5~30質量%含むことが好ましい。
また、本発明は、前記(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を、前記(A)~(E)の合計100質量%中に1~30質量%含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、さらに光開始剤を含む接着剤に関する
【0015】
さらに、本発明は、第一の基材と、上記本発明の接着剤の硬化物である樹脂層と、第二の基材とを備える積層体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、低照射量でも十分硬化し、高温から低温まで幅広い温度領域において、変形部位の優れた接着力を発現し得る接着剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<接着剤>
まず、本明細書で用いる用語を説明する。「活性エネルギー線」とは、紫外線、可視光線、赤外線、エレクトロンビーム(EB)、及び放射線を含む、化学反応を生じさせるための活性化に必要なエネルギーを提供できる広義のエネルギー線を意味する。本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤は、上記活性エネルギー線の照射によって、重合反応が進行し、接着層等の硬化物を形成する。
また、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイルおよびメタクリロイル」を含む。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸およびメタクリル酸」を含む。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレート」を含む。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、「アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシ」を含む。「(メタ)アリル」は、「アリルおよびメタリル」を含む。「モノマー」は、「エチレン性不飽和結合含有単量体」である。
ラジカル重合性モノマーとは、例えば、ビニル基、アクリロイル基等のラジカル重合性官能基を有するモノマーである。
また多官能とはエチレン性不飽和基の官能基数が1分子中に2個以上であることを示し、2官能、または3官能はエチレン性不飽和基の官能基数が1分子中に2個、または3個であることを示す。
【0018】
本明細書の接着剤は、前述の通り、重量平均分子量が1000以上の(メタ)アクリレートオリゴマー(A)、および重量平均分子量が1000未満の(メタ)アクリレートモノマーを含む接着剤であって、前記(メタ)アクリレートモノマーが、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(B)、水酸基を有しアミド基を有しないモノ(メタ)アクリレート(C)、水酸基を有し且つアミド基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)を含み、前記(A)~(D)以外のラジカル重合性成分(E)をさらに含み得る接着剤であって、前記(A)~(E)の合計100質量%中、水酸基を有するモノマーを40~80質量%含む。
【0019】
本明細書の接着剤は、活性エネルギー線により硬化し、第一の基材と第二の基材を貼り合わせるための接着層形成用に使用することが好ましい。また、前記基材のうち少なくとも一つの基材が透明導電層を具備する基材であることが好ましい。
【0020】
<(メタ)アクリレートオリゴマー(A)>
(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、重量平均分子量が1000以上のものであり、100,000以下であることが好ましく、1500~50000がさらに好ましい。また、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、一分子当たり平均で(メタ)アクリロイル基を二つ以上有することが好ましい。
(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、例えば、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー(A3)が挙げられる。(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を使用することで室温接着力及び高温適性が優れた活性エネルギー線重合性接着剤を得ることができる。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、重量平均分子量が既知のポリスチレンを標準物質として測定した値である。
【0021】
(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー(A3)からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0022】
ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)は、ウレタン結合とラジカル重合性官能基を有する化合物である。ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)は、例えば、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する化合物を反応させて得られる末端にイソシアネート基を有する化合物に、水酸基を有する(メタ)アクリロイル基を反応させて得ることができる。または、水酸基を有する化合物と、イソシアネート基および(メタ)アクリレート基を有する化合物を反応させて合成できる。
ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)としては、ポリエーテル骨格を有するもの(A1-1)、ポリエステル骨格を有するもの(A1-2)等があり、初期接着力、高温適性及び接着剤の経時安定性が優れるという面でポリエーテル骨格を有するポリウレタン系(メタ)アクリレート(A1-1)が好ましい。水酸基を有する化合物として、ポリエーテル骨格やポリエステル骨格を有するものを用いることによって、ポリエーテル骨格を有するもの(A1-1)やポリエステル骨格を有するもの(A1-2)を得ることができる。
【0023】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物は、例えば4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,4-フェニレンビスメチレンジイソシアナート等の芳香族イソシアネート;3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート等が挙げられる。
【0024】
ポリウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー(A1)は、商品名でいうと例えば、EBECRYL210、EBECRYL220(以上、ダイセル・オルネクス社製)、CN9782、CN9783(以上、SARTOMER社製)等の芳香族ポリウレタンオリゴマー;紫光3000B、紫光3300B(以上、日本合成化学工業社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL8402、EBECRYL8701(以上、ダイセル・オルネクス社製)等の脂肪族ポリウレタンオリゴマーが挙げられる。
【0025】
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)は、エステル結合とラジカル重合性官能基を有する化合物である。化合物(A2)は、例えば、多塩基酸と多価アルコールを重縮合して合成したポリエステルが有する水酸基と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸など)とをエステル化反応により合成できる。
【0026】
多塩基酸は、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等の脂肪族系多塩基酸;ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族系が挙げられる。
【0027】
多価アルコールは、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール等で数平均分子量(Mn)50~500のポリオール、およびその数平均分子量(Mn)500~30,000のポリオール、ならびにトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0028】
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー(A2)は、商品名でいうとCN296、CN2203、CN2259、CN2261(以上、SARTOMER社製)等の芳香族ポリエステルオリゴマー;CN294、CN2270、CN2271(以上、SARTOMER社製)等の脂肪族ポリエステルオリゴマーが挙げられる。
【0029】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー(A3)は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基と、カルボキシル基や水酸基を有する化合物とを反応させた、ラジカル重合性官能基を有する化合物である。なお、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー(A3)は、エポキシ基が少量残留しても構わない。
【0030】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー(A3)は、商品名でいうと、CN104、CN110(以上、SARTOMER社製)、EBECRYL600、EBECRYL3701(以上、ダイセル・オルネクス社製)等の芳香族エポキシオリゴマー、CN111、CN113(以上、SARTOMER社製)、EBECRYL860(ダイセル・オルネクス社製)等の脂肪族エポキシオリゴマーが挙げられる。
【0031】
(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)(A)、および後述する(メタ)アクリレートモノマー(B)~(E)の合計100質量%中、1~30質量%含まれることが好ましく、2~20質量%含まれることがより好ましい。接着剤は、接着剤層の凝集力が向上することで室温接着力や変形部位における高温適性の点で(メタ)アクリレートオリゴマー(A)を1質量%以上含むことが好ましく、粘度と塗工適性の点からアクリレートオリゴマー(A)を30重量%以下含むことが好ましい。
【0032】
<脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(B)>
脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレート(B)(以下、脂環含有モノマー(B)、化合物(B)ということもある)としては、脂肪族炭化水素環及び(メタ)アクリロイル基を一つ有するモノマーである。化合物(B)を含むことで高温での接着力に優れた活性エネルギー線重合性接着剤を得ることができる。なお、化合物(B)はアミド基を有しない。
【0033】
化合物(B)としては例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、4-ターシャリーブチルーシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3-ジシクロプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル-(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-プロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の縮合環の脂肪族炭化水素環を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0034】
化合物(B)としては、高温での接着力に優れる点で、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレートが好ましく、イソボルニルアクリレート、4-ターシャリーブチルーシクロヘキシルアクリレートが特に好ましい
【0035】
化合物(B)は、(A)、(B)、および後述する(メタ)アクリレートモノマー(C)~(E)の合計100質量%中の1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。化合物(B)を適量使用すると変形部位における高温適性が向上する。
【0036】
<水酸基を有しアミド基を有しないモノ(メタ)アクリレート(C)>
水酸基含を有しアミド基を有しないモノ(メタ)アクリレート(C)(以下、化合物(C)ともいう)としては、水酸基、および(メタ)アクリロイル基を一つ有しアミド基を有しないモノマーである。化合物(C)は、基材との親和性が高く密着性が向上することで接着力の向上に寄与する。また、化合物(C)は、酸素阻害を受けにくいことから活性エネルギー線の感度が優れるため低照射での重合性向上に寄与する。
【0037】
化合物(C)は、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)等の単官能(メタ)アクリル酸グリセロール;
(メタ)アクリル酸グリシジルラウリン酸エステル等の脂肪酸エステル系(メタ)アクリル酸エステル;
【0038】
シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ア(メタ)アクリロイルキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸等の環状(メタ)アクリル酸エステル;
これら水酸基を有するモノ(メタ)アクリレートにε-カプロラクトンを開環付加させて合成した分子末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
これら水酸基を有するモノ(メタ)アクリレートにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等;の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
なお、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレートは、脂環構造を有するモノ(メタ)アクリレートではあるが、水酸基を有しアミド基を有しないものモノ(メタ)アクリレート(C)に分類することとする。
【0039】
化合物(C)は、これらの中でも低温適性および低照度での接着力が優れる点で(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。また、化合物(C)は単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0040】
化合物(C)は、(A)~(C)、および後述する(メタ)アクリレートモノマー(D)~(E)の合計100質量%中の10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。化合物(C)を適量使用すると低照度での重合性や変形部位における低温適性が向上する。
【0041】
<水酸基を有し且つアミド基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)>
水酸基を有し且つアミド基を有する(メタ)アクリレートモノマー(D)(以下、化合物(D)ともいう)としては、水酸基、およびアミド基を有するモノマーである。なお、化合物(D)は脂環構造を有しない。化合物(D)は、基材との親和性が高く密着性が向上することで接着力の向上に寄与する。また、水酸基とアミド基の両方を有することで水素結合力が向上し、高温適性が向上する。さらに、化合物(D)は、酸素阻害を受けにくいことから活性エネルギー線の感度が優れるため低照射での重合性向上に寄与する。アミド基は脂肪族アミド基であることが好ましい。
【0042】
水酸基を有し且つ脂肪族アミド基を有する化合物(D)としては、例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0043】
化合物(D)は、これらの中でも接着力および低照度での接着力が優れる点でN-ヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましい。また、化合物(D)は単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0044】
化合物(D)は、(A)~(D)、および後述する(メタ)アクリレートモノマー(E)の合計100質量%中に、5~30質量%含むことが好ましく、8~25重量%含むことがより好ましい。化合物(D)を適量使用すると、変形部位における高温適性、および低照度での重合性が向上し接着力が向上する。
【0045】
本発明の接着剤は、(A)~(D)、および後述する(メタ)アクリレートモノマー(E)の合計100質量%中に、水酸基を有するモノマー、即ち化合物(B)と化合物(C)とを合計で40~80質量%含むことが好ましく、40~70重量%含むことがより好ましい。水酸基を含むモノマーを適量使用すると、変形部位における低温適性、高温適性、および低照度での重合性が向上する。
【0046】
本発明の接着剤は、さらに、(B)~(D)以外のその他のラジカル重合性成分(E)(以下、化合物(E)ともいう)を含んでも良い。
【0047】
化合物(E)を接着剤の物性を悪化させない適量で含むことにより、接着剤の粘度を下げて塗工性をより向上させたり、硬化後の架橋度を増加させることで高温適性をより向上させることができる。
【0048】
化合物(E)としてはモノ(メタ)アクリレート化合物であっても多官能(メタ)アクリレート化合物でも良い。
化合物(E)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。モノ(メタ)アクリレート化合物のみを2種類以上を併用することもできるし、多官能(メタ)アクリレート化合物のみを2種類以上を併用することもできるし、モノ(メタ)アクリレート化合物と多官能(メタ)アクリレート化合物を併用することもできる。
【0049】
モノ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル-、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、および(アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
【0050】
(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-エチル、および(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル-等の(メタ)アクリル酸パーフルオロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸(メトキシカルボニル)メチル、(メタ)アクリル酸2-(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-(プロポキシカルボニルオキシ)エチル-、および(メタ)アクリル酸2-(オクチルオキシカルボニルオキシ)ブチル等のカルボニル基を1つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸2-オキソブタノイルエチル、(メタ)アクリル酸3-オキソブタノイルプロピル、(メタ)アクリル酸2,3-ジ(オキソブタノイル)ブチル、(メタ)アクリル酸2,3-ジ(オキソブタノイル)ヘキシル等のカルボニル基を2つ有する脂肪族(メタ)アクリル酸エステル;
【0051】
(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸3-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ブトキシエチル、および(メタ)アクリル酸4-ブトキシエチル等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸のアルキレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド含有(メタ)アクリル酸誘導体;
【0052】
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-ノニル(メタ)アクリルアミド、N-トリコシル(メタ)アクリルアミド、N-ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N-ドコシル(メタ)アクリルアミド、N-メチレン(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-(5,5-ジメチルヘキシル)、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル-(メタ)アクリルアミド、N-[3-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピル]-(メタ)アクリルアミド、N-(ジブチルアミノメチル)(メタ)アクリルアミド、などの水酸基を有しない脂肪族系の(メタ)アクリルアミド類;
【0053】
N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシオクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシデシル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシドデシル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシオクタデシル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシオクチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシオクチル(メタ)アクリルアミド、等の水酸基を有しないN-アルコキシ基含有の(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0054】
また、多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシ基含有ジ(メタ)アクリレート、ポリオールエステル系ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、3官能ラジカル重合性モノマーは、例えば、トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。4官能以上のラジカル重合性モノマーは、例えば、4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
ジ(メタ)アクリレートは、例えば、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレンオキシ基含有ジ(メタ)アクリレートは、例えば、エチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコール-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール-ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ブチルオキサイド変性ジ(メタ)アクリレートおよびイソシアヌル酸ブチルオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリオールエステル系ジ(メタ)アクリレートは、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
トリ(メタ)アクリレートは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド2mol変性2,2-ジメチルプロパン-1、エチレンオキサイド3mol変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド3mol変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド3mol変性グリセリン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ブチルオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ブチルオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
4官能以上の(メタ)アクリレートは、例えば、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
<光重合開始剤(G)>
光重合開始剤(G)は、活性エネルギー線により重合反応のトリガーとなる化合物であり、例えば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤(G)は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
光ラジカル重合開始剤の市販品を挙げると、例えば、OMNIRAD184、907、651、1700、1800、819、369、261、TPO(以上、IGM Resin社製)、ダロキュア-1173(メルク社製)、エザキュア-KIP150、TZT(日本シイベルヘグナ-社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI、(以上、日本化薬社製)等が挙げられる。
【0059】
光カチオン重合開始剤の市販品を挙げると、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック社製)、CPI-110P(サンアプロ社製)等のスルホニウム塩やOMINICAT250(IGM Resin社製)、WPI-113(和光純薬工業社製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン社製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
【0060】
光アニオン重合開始剤の市販品を挙げると、例えば、WPBG-165、WPBG-018、WPBG-172、WPBG-140、WPBG-166、WPBG-027、WPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266(以上、和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0061】
光重合開始剤(G)は、(A)~(E)の合計100質量部に対し0.1~15質量部含むことが好ましく、0.5質量部以上10質量部がより好ましい。
【0062】
本発明の接着剤は、必要に応じて、さらに光増感剤、アミン系触媒、リン系触媒、フィラー、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、可塑剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を含有できる。
【0063】
本発明の接着剤は、実質的に有機溶剤を含まないことが好ましく、有機溶剤を全く含まないことがより好ましい。接着剤は特にトルエンは含まないことが好ましい。しかし、光重合開始剤(G)は、モノマーやオリゴマーに溶解し難いため、光重合開始剤(G)を溶解するために、少量の有機溶剤は含んでもよい。その場合、接着剤中の有機溶剤の含有量は、5質量%以下が好ましい。
【0064】
本発明の接着剤は、課題が解決できる範囲内であれば、その他添加剤を含むことができる。その他添加剤は、例えば、光増感剤、アミン系触媒、リン系触媒、フィラー、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、消泡剤、可塑剤等が挙げられる。
【0065】
本明細書の接着剤は、接着層の表面が平滑性を高めるとともに厚み制御を容易にするため、25℃での粘度が1~2000mPa・sであることが好ましく、10~1500mPa・sがより好ましく、20~1000mPa・sがさらに好ましい。なお、粘度は、E型コーンローター粘度計を使用し、1°34’×R24ローターで10回転/1分で測定した、回転開始1分後の数値である。
【0066】
本明細書の接着剤は、これまで説明した材料を配合し、撹拌することで作製できる。
【0067】
接着剤を光学積層体の接着層として使用する際、接着層の厚さは、0.1~6μmが好ましく、0.1~3μmがより好ましい。接着層の厚さが、上記範囲内であると接着力がより向上する。
【0068】
接着剤の基材への塗工は、公知の塗工装置を使用できる。例えば、ワイヤ-バ-、アプリケ-タ-、刷毛、スプレ-、ロ-ラ-、グラビアコ-タ-、ダイコ-タ-、マイクログラビアコ-タ-、リップコ-タ-、コンマコ-タ-、カ-テンコ-タ-、ナイフコ-タ-、リバ-スコ-タ-、スピンコ-タ-等が挙げられる。
【0069】
接着剤の硬化に使用する活性エネルギー線は、紫外線を含む光が好ましく、その場合の波長は150~550nmが好ましい。活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェ-ブ励起水銀灯、LEDランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0070】
活性エネルギー線の照射強度は、10~500mW/cmが好ましい。照射強度と照射時間の積として表される積算照射量は、10~5000mJ/cmが好ましく、30~4000mJ/cmがより好ましい。
【0071】
本発明の積層体は、第一の基材、本発明の接着剤から形成した接着層、第二の基材とを備えている。
【0072】
接着剤の重合反応は、接着剤の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後、活性エネルギー線を照射することにより進行するが、基材を積層した後に活性エネルギー線を照射して重合反応を進めることが好ましい。その際、活性エネルギー線の照射によって重合反応を進行させるために、第一の基材と第二の基材の少なくとも一方は、活性エネルギー線を透過し易い材料から構成されていることが好ましく、具体的には、透明フィルム、プラスチックレンズ、透明ガラス板等が好ましい。例えば、第一の基材として透明フィルムまたは透明ガラス板を使用すれば、第二の基材として活性エネルギー線が透過し難い基材、例えば、木材、金属板、プラスチック板、紙加工品等を使用しても良い。
【0073】
本発明の積層体では、基材として、フィルム状基材を使用することが好ましい。フィルム状基材としては、セロハン、各種プラスチックフィルム、紙等が挙げられる。なかでも、透明な各種プラスチックフィルムの使用が好ましい。また、フィルム状基材は、フィルムが透明であれば、単層または、複数の基材を積層した多層構造であっても良い。
【0074】
以下、本発明の光学積層体のより具体的な実施形態について、基材として透明フィルムを使用した場合を例にして説明する。
【0075】
本発明の積層体は、例えば、透明フィルム/接着層/透明フィルム、又は透明フィルム/接着層/透明フィルム/接着層/透明フィルムといった、複数の透明フィルムを積層して得られるシ-ト状の多層フィルムである。また、シ-ト状の多層フィルムを、ガラス又は光学シートといった他の光学部材に接着した構成も好ましい。上記積層体は、光学用活性エネルギー線重合性接着剤を、フィルムの片面または両面から活性エネルギー線を照射して重合硬化することによって、接着層を硬化させることによって得ることができる。
【0076】
透明フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、ポリトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルム;ポリカーボネート系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、並びにポリオキシラン系フィルム等が挙げられる。
基材に透明フィルムを使用した場合、本発明の積層体は、光学用途に好適に使用することができる。
【0077】
透明フィルムの厚さは、適宜決定することができるが、一般には、フィルムの強度、作業性、薄層性などの観点から、1~500μmが好ましく、1~300μmがより好ましく、5~200μmがさらに好ましい。また、光学用途に使用する場合、透明フィルムの厚さは、5~150μmが好ましい。
【0078】
本発明の光学積層体の実施態様の一例、光学素子用積層体は、透明フィルムとして、主に光学用途にて用いられる光学フィルムを使用することが好ましい。
【0079】
光学フィルムは、例えばハ-ドコ-トフィルム、帯電防止コ-トフィルム、防眩コ-トフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシ-トともいう)、加飾フィルム(タッチパネル用充填シ-トも含まれる)、導光フィルム(導光板ともいう)、タッチセンサーフィルム(透明導電層を具備するフィルム)等が挙げられる。
【0080】
本発明の光学用活性エネルギー線重合性接着剤を使用して、液晶表示装置、PDPモジュ-ル、タッチパネルモジュ-ル、有機ELモジュ-ル等の積層体を形成できる。
【実施例
【0081】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、測定装置として昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPC System-21」、カラムとして昭和電工社製shodex GPC LF-604を2本使用して、展開溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)、流速0.6ml/分、カラム温度40℃の条件にて測定した。標準物質として重量平均分子量既知の単分散分子量のポリスチレンを使用して作成した検量線により重量平均分子量を決定した。
【0082】
[実施例1]
<接着剤の製造例>
遮光された容量300mLのガラス瓶に、(メタ)アクリレートオリゴマー(A)としてUV3300B(ポリエーテル骨格ウレタンアクリレートオリゴマー、日本合成化学工業社製、商品名紫光UV3300B)15部、化合物(B)としてイソボルニルアクリレート20部、化合物(C)としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル55部、化合物(D)としてN-ヒドロキシエチルアクリルアミド10部、化合物(G)として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイト゛3部を加え、十分に攪拌と脱泡を行い、活性エネルギー線重合性接着剤を得た。
【0083】
<積層体の製造例>
透明フィルムとして、アクリルフィルムHBD-022(厚さ50μm、三菱レイヨン社製)、および、紫外線吸収剤を含有しないポリノルボルネン系フィルム(厚さ100μm 日本ゼオン社製)を使用した。2枚の透明フィルムの片側の表面に300W・分/mの放電量でコロナ処理を行った。その後1時間以内に、アクリルフィルムHBD-022のコロナ処理面上に、得られた接着剤を、ワイヤーバーコーターを用いて、厚みが2μmとなるように塗工し接着層を形成した。さらに紫外線吸収剤を含有しないポリノルボルネン系フィルムを重ね、アクリルフィルムがブリキ板に接するように、四方をセロハンテープで、ブリキ板に固定した。
【0084】
活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)を用い、最大照度200mW/cmの条件にて、前記の紫外線吸収剤を含有しないポリノルボルネン系フィルム側から、積算光量600mJ/cmの紫外線をから照射した後、25℃-50%環境にて1日以上保管し積層体1を作成した。また積算光量を300mJ/cmに変えた以外は同様の方法で積層体2を作成した。
得られた積層体1、2について、初期接着力、変形部位における高温保存後接着力、変形部位における低温保存後接着力を評価した。結果を表1~表3に示す。
【0085】
《初期接着力試験》
接着力は、JIS K6854-4 接着剤-剥離接着強さ試験方法-第4部:浮動ローラー法に準拠して測定した。
即ち、得られた積層体1、2を、幅25mm×長さ150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルを作製した。サンプルの片面に両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を貼り付け、ラミネータを用いて金属板上に接着させた。測定用の積層体には、透明フィルムの間に予め剥離用のキッカケを設けておき、この測定用の積層体1、2を23℃、相対湿度50%の条件下で、300mm/分の速度、90°の角度で、接着力を測定した。接着力は、アクリルフィルムHBD-022を引き剥がして接着力を測定した。この接着力を以下の4段階で評価した。なお、評価基準は、◎、○、△の評価であれば、実用上、問題のないレベルである。
◎:剥離力が4.0(N/25mm)以上 (非常に良好)
○:剥離力が2.0(N/25mm)以上4.0(N/25mm)未満 (良好)
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満 (使用可)
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満 (使用不可)
【0086】
《湾曲変形高温保存後の接着力試験》
高温適性を以下の接着力で評価した。
直径8cmの金属製円柱(SUS304製)に得られた積層体1の前記の紫外線吸収剤を含有しないポリノルボルネン系フィルムが接するように巻き付け、積層体1の端部をセロハンテープで固定した状態で、80℃、相対湿度50%RHで1か月間保管した後、積層体1を金属製円柱から外し、積層体1の接着力を測定し、評価した。積層体2についても積層体1の場合と同様に測定し、評価した。
接着力の測定方法、評価基準は初期接着力の場合と同様である。
【0087】
《湾曲変形低温保存後の接着力試験》
低温適性を以下の接着力で評価した。
金属製円柱に巻き付け固定した状態の積層体1、2を、-20℃で1カ月保管条件した以外は、湾曲変形高温保存後接着力試験の場合と同様に接着力を測定し、同様の基準で評価した。
【0088】
[実施例2~19]、[比較例1~5]
表1、2に示す組成に従って、実施例1と同様にして接着剤を得、積層体1、2を形成し、同様に評価した。ただし、実施例4は参考例である。
【0089】
以下に、実施例、比較例で使用した材料とその略号を示す。
<(メタ)アクリレートオリゴマー(A)>
UV3300B:ポリエーテル骨格のポリウレタン系アクリレートオリゴマー、重量平均分子量13000、(日本合成化学工業社製、商品名紫光UV3300B)

UV3000B:ポリエステル骨格のポリウレタン系アクリレートオリゴマー、重量平均分子量18000、(日本合成化学工業社製、商品名紫光UV3300B)

EBECRYL884:ポリエステル系アクリレートオリゴマー 重量平均分子量3000(ダイセル・オルネクス社製)

EBECRYL860:エポキシ系アクリレートオリゴマー、重量平均分子量1200
(ダイセル・オルネクス社製)、
【0090】
<化合物(B)>
IBXA:イソボルニルアクリレート、大阪有機化学工業社製、商品名IBXA
SR217:4-ターシャリーブチルシクロヘキサノールアクリレート SARTOMER社製
【0091】
<化合物(C)>
4-HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
HPA:アクリル酸2ーヒドロキシプロピル
HEA:アクリル酸2ーヒドロキシエチル
【0092】
<化合物(D)>
HEAA:N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製)
【0093】
<化合物(E)>
A-NOD-N:ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製)
DMAA:N,N-ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ社製)
【0094】
<光重合開始剤(G)>
OMNIRAD TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイト゛ (IGM Resins社製)
【0095】
<増感剤>
DETX-S:2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製)
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
表1、2に示すように実施例1~19の接着剤は、積算光量が少ない場合においても、初期接着力だけでなく、湾曲変形高温保存後、湾曲変形低温保存後の接着力に優れる積層体を形成できる。