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特許7215199分離方法、親水性粒子の回収方法、及び疎水性粒子の回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】分離方法、親水性粒子の回収方法、及び疎水性粒子の回収方法
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/44 20060101AFI20230124BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20230124BHJP
   B03C 1/02 20060101ALI20230124BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230124BHJP
   B09B 3/35 20220101ALI20230124BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20230124BHJP
【FI】
B03B5/44
B03C1/00 B
B03C1/02 Z
B03C1/00 A
B09B3/30
B09B3/35
B09B101:30
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019020134
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2019136701
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2018019312
(32)【優先日】2018-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小野 信行
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-023803(JP,A)
【文献】特開昭63-061022(JP,A)
【文献】特開平11-128881(JP,A)
【文献】特開2013-193078(JP,A)
【文献】特開平07-213950(JP,A)
【文献】米国特許第05047145(US,A)
【文献】米国特許第04376700(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-11/04
B03B 5/00-5/74
B03C 1/00-1/32
B09B 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性粒子と親水性粒子とが混在する混合物から、疎水性粒子と親水性粒子とを分離する分離方法において、
前記混合物に、水と、前記水より比重が大きい疎水性液体とを混合してスラリー化する混合工程と、
前記混合工程で生成されたスラリーを、水相と疎水性液体相とに分離しながら、前記親水性粒子を前記水相に移動させ、前記疎水性粒子を前記疎水性液体相に移動させることにより、前記疎水性粒子と前記親水性粒子とを分離する分離工程と、
を含
向流型多段連続プロセスにより、前記混合工程と前記分離工程の組合せをN段階(Nは2以上の整数)繰り返す、分離方法。
【請求項2】
前記混合物は、フライアッシュである、請求項1に記載の分離方法。
【請求項3】
前記分離工程では、分離装置内で前記スラリーを静置することにより、比重差を利用して、前記スラリーを、前記親水性粒子を含む前記水相と、前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相とに分離する、請求項1又は2に記載の分離方法。
【請求項4】
Nは3以上の整数であり、
1段目の前記混合工程で前記混合物及び前記水が投入され、
N段目の前記混合工程で前記疎水性液体が投入され、
n段目(nは1以上、N-2以下の整数)の前記分離工程で分離された前記親水性粒子及び残存した前記疎水性粒子を含む前記水相と、n+2段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子及び残存した前記親水性粒子を含む前記疎水性液体相とを、n+1段目の前記混合工程で混合してスラリー化する、請求項1~3のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項5】
1段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相に残存した前記親水性粒子を除去する洗浄工程を更に含み、
前記洗浄工程は、
1段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子及び前記残存した親水性粒子を含む前記疎水性液体相に、前記水を加えて混合してスラリー化する洗浄用混合工程と、
前記洗浄用混合工程で生成されたスラリーを、水相と疎水性液体相とに分離しながら、前記残存した親水性粒子を前記水相に移動させることにより、前記疎水性粒子と前記残存した親水性粒子とを分離する洗浄用分離工程と、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項6】
前記洗浄工程の前記洗浄用混合工程及び前記洗浄用分離工程の組合せをM段階(Mは2以上の整数)繰り返す、請求項5に記載の分離方法。
【請求項7】
前記分離工程により分離された前記親水性粒子を含む前記水相から、前記水を分離して、前記親水性粒子を回収する第1回収工程と、
前記分離工程により分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相から、前記疎水性液体を分離して、前記疎水性粒子を回収する第2回収工程と、
を更に含み、
前記第1回収工程で分離された前記水、及び前記第2回収工程で分離された前記疎水性液体を、前記混合工程で再利用する、請求項1~6のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項8】
前記第1回収工程では、
前記分離工程により分離された前記親水性粒子を含む前記水相に対して、加温又は減圧のうち少なくともいずれかの処理を行うことにより、当該水相中に残存する前記疎水性液体を除去する、請求項7に記載の分離方法。
【請求項9】
前記混合物に混入している磁着物を、磁石を用いて吸着して分離する磁選工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項10】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の比重は、1.05超であり、かつ、前記疎水性粒子の比重よりも小さい、請求項1~9のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項11】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において40℃以上、150℃以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項12】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において40℃以上、95℃以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項13】
前記混合物は、フライアッシュであり、
前記分離工程より前に、前記フライアッシュに対して粉砕処理を施す粉砕工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の分離方法。
【請求項14】
前記粉砕工程では、疎水性液体と水の少なくともいずれかと前記フライアッシュとを混合して混合液を生成し、前記混合液に含まれる前記疎水性粒子としてのカーボン粒子を、ビーズを用いて粉砕する、請求項13に記載の分離方法。
【請求項15】
前記ビーズの直径が1mm以下である、請求項14に記載の分離方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の分離方法を用いて分離された前記親水性粒子を含む前記水相から、前記親水性粒子を回収する、親水性粒子の回収方法。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載の分離方法を用いて分離された前記親水性粒子を含む前記水相を回収する、親水性粒子の回収方法。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の分離方法を用いて分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相から、前記疎水性粒子を回収する、疎水性粒子の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性粒子と親水性粒子とが混在する混合物から、疎水性粒子と親水性粒子とを迅速かつ効率的に分離するための分離方法と、当該分離方法を利用した親水性粒子の回収方法、及び疎水性粒子の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き火力発電所等における発電時に発生するフライアッシュは、コンクリート用原料、建材原料、セメント用原料等にリサイクルされる。ところが、フライアッシュは、Al、SiO等の金属酸化物からなる灰分中に、燃え残った炭素成分である未燃カーボンを含んでいる。このため、リサイクルされるフライアッシュの品質を高めるためには、フライアッシュ中に含まれる未燃カーボンを分離・除去することが好ましい。
【0003】
フライアッシュ中の未燃カーボンを分離する方法として、例えば、静電分離方法や浮選方法が知られている。静電分離方法は、乾式状態で、平行平板の電極内にフライアッシュを投入することにより、帯電させた未燃カーボンを正電極側に引き寄せて分離する方法である。また、浮選方法は、フライアッシュのスラリー内で気泡剤を用いて発生させたマイクロエアーに対し、灯油等の捕集剤を介して未燃カーボン粒子を付着させることで、未燃カーボン粒子を浮上させて分離する方法である。
【0004】
例えば、特許文献1には、フライアッシュ中の未燃カーボンを浮選により除去する方法が開示されている。この特許文献1の浮選方法では、まず、水を添加してスラリー化したフライアッシュを撹拌することにより、未燃カーボン粒子の表面に活性エネルギーを生じさせて、未燃カーボン粒子を親油化(疎水化)する。次いで、親油化した未燃カーボンを含むスラリーに、灯油、軽油等の捕集剤及び起泡剤を添加して、捕集剤を未燃カーボンに付着させるともに、発生した気泡に未燃カーボンを付着させて浮選する。かかる浮選方法により、疎水性粒子である未燃カーボン(比重:1.3~1.5)と、親水性粒子である金属酸化物(比重:2.4~2.6)との混合物であるフライアッシュから、未燃カーボンが分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-167825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のようにフライアッシュに含まれる未燃カーボンを気泡に付着させて浮上させる浮選方法では、分離速度が遅く、分離効率が悪いという問題があった。
【0007】
詳細には、上記特許文献1に記載の浮選方法では、図18に示すように、水とフライアッシュが混合・撹拌された状態で、多くの金属酸化物102の粒子が浮遊している水相105において、未燃カーボン101の粒子が捕集剤104を介して微細な気泡103に付着し、気泡103とともに未燃カーボン101が水相105中を浮上していく。このとき、未燃カーボン101が気泡103から剥離することもあり、未燃カーボン101は水相105中で浮上及び沈降を繰り返しながら徐々に浮上し、水相105の表層部に集まる。このため、未燃カーボン101の分離速度が遅いので、金属酸化物102から未燃カーボン101を分離して、未燃カーボン101の含有率を目標値以下まで低下させるためには、例えば1時間程度の長時間がかかってしまう。
【0008】
また、上記浮選方法では、未燃カーボン101の分離効率は、未燃カーボン101の粒子径や疎水性の程度(これらは使用する石炭種に依存)、未燃カーボン101の存在形態等の影響をかなり受ける。例えば、未燃カーボン101の粒子が大きいと、未燃カーボン101の自重により、未燃カーボン101が気泡103に付着し難くなるだけでなく、水相105中を浮上し難くなる。さらに、未燃カーボン101が金属酸化物102に噛み込んでいる存在形態である場合、気泡103が付着できる未燃カーボン101の表面部分が小さくなるので、未燃カーボン101が気泡103に付着し難くなる。これら原因により、未燃カーボン101の分離速度が低下するとともに、未燃カーボン101の分離効率が悪くなり、混合物中の未燃カーボン101の含有率を目標値まで低下できないことも多く、処理コストも高かった。
【0009】
なお、上記では未燃カーボン(疎水性粒子)と金属酸化物(親水性粒子)との混合物であるフライアッシュから、未燃カーボンを浮選する場合の問題を述べたが、その他の疎水性粒子と親水性粒子の混合物から各粒子を分離する場合であっても、同様な問題が生じうる。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、疎水性粒子と親水性粒子が混在する混合物から疎水性粒子と親水性粒子を分離するときの分離速度及び分離効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
疎水性粒子と親水性粒子とが混在する混合物から、疎水性粒子と親水性粒子とを分離する分離方法において、
前記混合物に、水と、前記水より比重が大きい疎水性液体とを混合してスラリー化する混合工程と、
前記混合工程で生成されたスラリーを、水相と疎水性液体相とに分離しながら、前記親水性粒子を前記水相に移動させ、前記疎水性粒子を前記疎水性液体相に移動させることにより、前記疎水性粒子と前記親水性粒子とを分離する分離工程と、
を含み、向流型多段連続プロセスにより、前記混合工程と前記分離工程の組合せをN段階(Nは2以上の整数)繰り返す、分離方法が提供される。
【0012】
前記分離工程では、分離装置内で前記スラリーを静置することにより、比重差を利用して、前記スラリーを、前記親水性粒子を含む前記水相と、前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相とに分離するようにしてもよい。
【0014】
Nは3以上の整数であり、
1段目の前記混合工程で前記混合物及び前記水が投入され、
N段目の前記混合工程で前記疎水性液体が投入され、
n段目(nは1以上、N-2以下の整数)の前記分離工程で分離された前記親水性粒子及び残存した前記疎水性粒子を含む前記水相と、n+2段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子及び残存した前記親水性粒子を含む前記疎水性液体相とを、n+1段目の前記混合工程で混合してスラリー化するようにしてもよい。
【0015】
1段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相に残存した前記親水性粒子を除去する洗浄工程を更に含み、
前記洗浄工程は、
1段目の前記分離工程で分離された前記疎水性粒子及び前記残存した親水性粒子を含む前記疎水性液体相に、前記水を加えて混合してスラリー化する洗浄用混合工程と、
前記洗浄用混合工程で生成されたスラリーを、水相と疎水性液体相とに分離しながら、前記残存した親水性粒子を前記水相に移動させることにより、前記疎水性粒子と前記残存した親水性粒子とを分離する洗浄用分離工程と、
を含むようにしてもよい。
【0016】
前記洗浄工程の前記洗浄用混合工程及び前記洗浄用分離工程の組合せをM段階(Mは2以上の整数)繰り返すようにしてもよい。
【0017】
前記分離工程により分離された前記親水性粒子を含む前記水相から、前記水を分離して、前記親水性粒子を回収する第1回収工程と、
前記分離工程により分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相から、前記疎水性液体を分離して、前記疎水性粒子を回収する第2回収工程と、
を更に含み、
前記第1回収工程で分離された前記水、及び前記第2回収工程で分離された前記疎水性液体を、前記混合工程で再利用するようにしてもよい。
【0018】
前記第1回収工程では、
前記分離工程により分離された前記親水性粒子を含む前記水相に対して、加温又は減圧のうち少なくともいずれかの処理を行うことにより、当該水相中に残存する前記疎水性液体を除去するようにしてもよい。
【0019】
前記混合物に混入している磁着物を、磁石を用いて吸着して分離する磁選工程を更に含むようにしてもよい。
【0020】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の比重は、1.05超であり、かつ、前記疎水性粒子の比重よりも小さいようにしてもよい。
【0021】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において40℃以上、150℃以下であるようにしてもよい。
【0022】
前記疎水性液体は、疎水性有機溶剤であり、
前記疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において40℃以上、95℃以下であるようにしてもよい。
【0023】
前記親水性粒子は、金属酸化物であり、
前記疎水性粒子は、コークス粉又は石炭粉であるようにしてもよい。
【0024】
前記混合物は、フライアッシュであるようにしてもよい。
【0025】
前記混合物は、フライアッシュであり、前記分離工程より前に、前記フライアッシュに対して粉砕処理を施す粉砕工程をさらに含むようにしてもよい。
【0026】
前記粉砕工程では、疎水性液体と水の少なくともいずれかと前記フライアッシュとを混合して混合液を生成し、前記混合液に含まれる前記疎水性粒子としてのカーボン粒子を、ビーズを用いて粉砕するようにしてもよい。
【0027】
前記ビーズの直径が1mm以下であるようにしてもよい。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
前記分離方法を用いて分離された前記親水性粒子を含む前記水相から、前記親水性粒子を回収する、親水性粒子の回収方法が提供される。
【0029】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
前記分離方法を用いて分離された前記親水性粒子を含む前記水相を回収する、親水性粒子の回収方法が提供される。
【0030】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
前記分離方法を用いて分離された前記疎水性粒子を含む前記疎水性液体相から、前記疎水性粒子を回収する、疎水性粒子の回収方法が提供される。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように本発明によれば、疎水性粒子と親水性粒子が混在する混合物から疎水性粒子と親水性粒子を分離するときの分離速度及び分離効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係る分離方法において、疎水性粒子と親水性粒子を含む混合物に水と疎水性有機溶剤を混合及び撹拌した直後の混合液の状態を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る分離方法において、混合液を1~30秒程度静置した後の状態の一例を示す模式図である。
図3A】本実施形態に係る分離方法において、混合液を30秒以上静置した後の状態の一例を示す模式図である。
図3B】本実施形態に係る分離方法において、混合液を30秒以上静置した後の状態の別の例を示す模式図である。
図4】水相のスラリー濃度Cとスラリー比重dとの関係を示したグラフである。
図5】親水性粒子の粒子径φと、水被膜粒子の見掛け比重dとの関係を示すグラフである。
図6】同実施形態に係る粒子分離装置と、それを用いた単段連続プロセスを示す模式図である。
図7】同実施形態の変更例に係る粒子分離装置と、それを用いた単段連続プロセスを示す模式図である。
図8】同実施形態に係る横流式分離装置を示す模式図である。
図9】同実施形態の変更例に係る上昇流式分離装置を示す模式図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る粒子分離装置を用いた向流型2段連続プロセスを示す模式図である。
図11】同実施形態に係るN段の向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。
図12】同実施形態に係る洗浄工程を追加した向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。
図13】同実施形態に係る洗浄工程を多段階で実施する向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。
図14】本発明の第3の実施形態に係る磁選工程を含む向流型2段連続プロセスを示す模式図である。
図15】本発明の実施例に係る向流型3段連続プロセスの各段における疎水性粒子の含有率の変化を示すグラフである。
図16】本発明の実施例に係る洗浄工程を含む向流型4段連続プロセスの各段における疎水性粒子の含有率の変化を示すグラフである。
図17】本発明の実施例に係る洗浄工程を含む向流型4段連続プロセスの各段における疎水性粒子の含有率の変化を示すグラフである。
図18】従来の浮選方法における未燃カーボンの浮上原理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
[1.分離方法の処理対象]
まず、本発明の第1の実施形態に係る分離方法による処理対象の混合物、親水性粒子、疎水性粒子、疎水性液体等について説明する。
【0035】
表1は、本実施形態に係る分離方法の処理対象物(親水性粒子と疎水性粒子の混合物)の例を示す。表1に示すように、例えば、処理対象物のフライアッシュや高炉ガス灰は、親水性粒子である金属酸化物(Al、SiO、Fe等)の粒子と、疎水性粒子である未燃カーボンの粒子(石炭粉等)とが混在した混合物である。また、処理対象物の石炭は、疎水性粒子であるカーボンの粒子(コークス粉又は石炭粉等)に、親水性粒子である金属酸化物(Al、SiO等)の粒子が混入した混合物である。
【0036】
【表1】
【0037】
より具体的には、フライアッシュは、親水性粒子である酸化物粒子を約90~95質量%含み、疎水性粒子である未燃カーボンを約5~10質量%含むものが多い。フライアッシュの粒子径は約1~200μmである。フライアッシュ中の一部の粒子は、カーボンと金属酸化物が一体となった粒子として存在している。
【0038】
高炉ガス灰とは、高炉へ装入した原料の粉塵、高炉内の冶金反応により生じた粉塵等を捕集したもの、言い換えると高炉集塵灰であり、成分として、カーボンを15~30質量%含む。高炉ガス灰の粒子径は、約1~200μmである。高炉ガス灰の成分例を以下の表2に示す。高炉ガス灰は、疎水性粒子として、コークス由来のカーボンを含んでいる。また、高炉ガス灰は、親水性粒子として、表2に示す複数種の金属酸化物を含んでいる。高炉ガス灰中の一部の粒子は、カーボンと金属酸化物が一体となった粒子として存在している。
【0039】
【表2】
【0040】
本実施形態では、上記のような親水性粒子と疎水性粒子の混合物から、親水性粒子(例えば金属酸化物)と疎水性粒子(例えばカーボン)をそれぞれ分離して回収する。これにより、金属酸化物は、例えば、コンクリート用原料(骨材、混和剤等)や建材の原料等に再利用され、カーボンは、例えば、発電用、製鉄用、セメントクリンカー用の石炭等として再利用される。この際、回収される金属酸化物中におけるカーボン含有率を例えば3質量%以下にまで低下させることができれば、JIS A6201-2008に記載のコンクリート用フライアッシュI種の品質規定中の強熱減量(未燃カーボンの含有率とほぼ同値)の範囲内になり、他の粉末度などの品質規定を調整することにより、コンクリート用フライアッシュとして、金属酸化物を有償でリサイクル可能となり、さらにそのリサイクル用途も拡張する。
【0041】
次に、本実施形態に係る分離方法で使用する疎水性液体について説明する。疎水性液体は、疎水性を有する液体、即ち、水に対する親和性が低い(水に溶解し難い、若しくは水と混ざり難い)性質を有する液体である。疎水性液体は、例えば、20℃の水に対する溶解度が0g/L以上、5.0g/L以下の液体である。なお、本明細書における疎水性とは、親油性を含む性質である。疎水性液体は、例えば、疎水性を有する有機溶剤(以下、「疎水性有機溶剤」という。)、又は各種の油等であってよい。疎水性液体は、水に対する親和性が低いので、疎水性液体と水を混合及び撹拌した混合液を静置すると、水を主体とする水相と、疎水性液体(例えば疎水性有機溶剤)を主体とする疎水性液体相(例えば疎水性有機溶剤相)の2相に分離される。
【0042】
さらに、本実施形態では、疎水性液体として、水よりも比重が大きい液体、即ち、比重が1より大きい液体を使用する。水よりも比重が大きい疎水性液体を用いることで、疎水性液体と水の混合液を撹拌した後に静置すると、両液の比重差によって、上側の水相と、下側の疎水性液体相とに分離される。
【0043】
表3は、本実施形態に係る分離方法で使用される疎水性液体の例を示す。表3に示すように、疎水性液体は、例えば、フッ素系、臭素系又は塩素系の有機溶剤であってもよいし、シリコーンオイル等の油であってもよい。表3に例示した疎水性液体はいずれも、その比重が1超であり、水に対する溶解度が5g/L以下であり、疎水性を有する。
【0044】
【表3】
【0045】
疎水性液体の比重は、1.05超であることが好ましい。これにより、水(比重1)と疎水性液体を混合して静置した後、例えば1~30秒程度の短時間で迅速に、水相と疎水性液体相の2相に分離でき、分離速度を増加できる。また、疎水性液体の比重は、疎水性粒子の比重(例えば1.2~1.8)よりも小さいことが好ましい。これにより、疎水性粒子を含む疎水性液体相から、疎水性粒子を分離及び回収する工程において、固液分離装置を用いて、疎水性液体と疎水性粒子を効率的に分離できるようになるが、その詳細は後述する。
【0046】
次に、親水性粒子と疎水性粒子について説明する。親水性粒子は、水に対する親和性を有する粒子であり、上記疎水性液体よりも水に混ざり易い性質を有する。一方、疎水性粒子は、上記疎水性液体に対する親和性を有する粒子であり、水よりも疎水性液体に混ざり易い性質を有する。従って、水と疎水性液体の混合液中では、親水性粒子は疎水性液体相から水相に移動して、主に水相中に分散して存在するようになる。一方、疎水性粒子は水相から疎水性液体相に移動して、主に疎水性液体相中に分散して存在するようになる。
【0047】
親水性粒子は、例えば、上記表1に示したようにAl、SiO、Fe等の金属酸化物の粒子であるが、親水性を有する粒子であれば、その他の材質の粒子であってもよい。一方、疎水性粒子は、例えば、未燃カーボン等の石炭粉若しくはコークス粉、プラスチック粉などであるが、疎水性を有する粒子であれば、その他の材質の粒子であってもよい。本実施形態が対象とする親水性粒子の粒子径は、500μm以下であり、200μm以下であることが好ましい。疎水性粒子の粒子径は、500μm以下である。なお、詳細は後述する。
【0048】
処理対象物である混合物中に含まれる親水性粒子の含有率、疎水性粒子の含有率は、特に限定されないが、例えば、混合物中の親水性粒子の含有率は5~97質量%であってよく、疎水性粒子の含有率は3~95質量%程度であってよい。ただし、親水性粒子と疎水性粒子6の含有率は合計で100質量%以下である。疎水性粒子がカーボンである場合、例えば、混合物がフライアッシュ又は高炉ガス灰である場合、強熱減量率を測定し、その値を疎水性粒子の含有率とすることができる。強熱減量率とは、105℃で乾燥したサンプルを975℃にセットした大気雰囲気化の炉内で15分以上保持した際の質量減少率である。また、疎水性粒子がプラスチックである場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート粉又は塩化ビニル樹脂粉である場合、例えば燃焼-赤外線吸収法にてサンプル中のカーボン含有率を測定し、そのカーボン含有率から各プラスチックの組成に合わせて換算し、その換算値を疎水性粒子の含有率とすることができる。なお、上記燃焼-赤外線吸収法は、サンプルを助燃剤(純鉄粉とタングステン粉)で覆い、高周波炉内で加熱・燃焼させ、サンプル中のカーボン成分をCOにガス化させ、発生したCO量より、サンプル中のカーボン含有率を測定する方法である。
【0049】
また、表1に示したように、親水性粒子の比重は、例えば、2.4~2.6(Al、SiO)、4~5(Fe)である。疎水性粒子の比重は、例えば、1.2~1.8である。疎水性粒子がカーボン粒子である場合、カーボン粒子の比重は、例えば1.3~1.5である。このように親水性粒子の比重よりも疎水性粒子の比重の方が小さい場合であっても、本実施形態に係る分離方法によれば、後述するように、親水性粒子を上相の水相に浮上させ、疎水性粒子を下相の疎水性液体相に沈降させて、両粒子を迅速かつ効率的に湿式分離することができる。なお、本明細書において、粒子の比重とは、粒子自体の比重(真比重)であって、粒子嵩比重ではない。
【0050】
[2.分離方法の概要]
次に、本実施形態に係る混合物から親水性粒子と疎水性粒子を分離する方法の概要について説明する。
【0051】
本実施形態に係る分離方法は、親水性粒子(例えば金属酸化物)と疎水性粒子(例えば未燃カーボン)が混在する混合物(例えばフライアッシュ)から、親水性粒子と親水性粒子をそれぞれ分離する湿式分離方法である。
【0052】
この分離方法では、親水性粒子の抽出剤として水を使用するとともに、疎水性粒子の抽出剤として、水より比重が大きい疎水性液体を使用する。そして、当該水と疎水性液体を、処理対象の混合物(固形分)に混合して撹拌し、混合物が分散した混合液(第1スラリー)を生成する(混合工程)。次いで、分離装置(例えば、沈殿槽、静置槽等のセトラー)内で当該混合液を静置することで、水と疎水性液体の比重差を利用して、上記混合液を上側の水相と、下側の疎水性液体相との2相に分離しつつ、親水性粒子を水相に移動させ、疎水性粒子を疎水性液体相に移動させる(分離工程)。なお、少量の混合物を処理する場合等では、分離装置として、セトラーに替えて、ビーカー等の各種の容器を用いて、混合液を静置し、水相と疎水性液体相に分離することもできる。さらに、上記分離工程で分離された水相(第2スラリー)から、親水性粒子を分離して回収するとともに(第1回収工程)、上記分離工程で分離された疎水性液体相(第3スラリー)から、疎水性粒子を分離して回収する(第2回収工程)。これによって、親水性粒子と疎水性粒子を迅速かつ効率的に分離でき、含有率の高い親水性粒子と疎水性粒子をそれぞれ回収して再利用することができる。以下に、かかる分離方法について詳述する。
【0053】
[2.1.分離原理と作用効果]
ここで、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る分離方法の原理について説明する。なお、疎水性粒子及び親水性粒子の比重は1より大きいものとする。また、疎水性液体として疎水性有機溶剤を用いることとする。また、以下では、「疎水性有機溶剤」を「疎水性溶剤」若しくは単に「溶剤」等と称し、「疎水性有機溶剤相」を「疎水性溶剤相」若しくは単に「溶剤相」と称する場合もある。
【0054】
図1は、疎水性粒子と親水性粒子を含む混合物に、水と疎水性有機溶剤を投入し、激しく撹拌した直後に、混合物と水と疎水性有機溶剤の混合液(第1スラリー)が上側の水相1と下側の疎水性有機溶剤相2とに分離した状態を示す。図2は、上記撹拌後に1~30秒程度静置することにより、混合液が、親水性粒子5を含む水相1と、疎水性粒子6を含む疎水性有機溶剤相2とに分離された状態を示す。
【0055】
図1に示すように、混合液の撹拌直後には、水相1中には疎水性有機溶剤の液滴3(以下、「溶剤液滴3」又は単に「液滴3」と称する場合もある。)が存在し、疎水性有機溶剤相2中には水滴4が存在する。溶剤液滴3の内部には疎水性粒子6が含まれ、当該溶剤液滴3の表面には疎水性粒子6が付着している。一方、水滴4の内部には親水性粒子5が含まれ、水滴4の表面には親水性粒子5が付着している。混合液の撹拌強度にもよるが、溶剤液滴3、水滴4は例えば0.5mm以上の直径を有するものが多い。
【0056】
水の比重は1であり、疎水性有機溶剤の比重は1.05~1.8である。水及び疎水性有機溶剤の比重、粘度の影響もあるが、水相1中の溶剤液滴3(直径0.5mm)の沈降速度は、例えば、約0.05~0.1m/secと非常に大きく、溶剤液滴3に付着している疎水性粒子6の沈降速度も同様に大きい。また、水及び疎水性有機溶剤の比重、粘度の影響もあるが、疎水性有機溶剤相2中の水滴4(直径0.5mm)の浮上速度は、例えば、約0.1~0.2m/secと非常に大きく、水滴4に付着している親水性粒子5の浮上速度も同様に大きい。
【0057】
水相1において、疎水性粒子6の多くは、溶剤液滴3に付着するか、当該溶剤液滴3の内部に取り込まれる。しかし、水相1中には、溶剤液滴3に付着できなかった疎水性粒子6も少ないが存在する。当該疎水性粒子6の表面には、水より比重が大きい疎水性有機溶剤の液膜が薄く(例えば約5~20μm)付着している。そのため、疎水性有機溶剤の液膜が付着した疎水性粒子6の見掛け比重は、疎水性溶剤の比重と疎水性粒子6の比重の中間の比重となる。よって、疎水性粒子6の表面に付着した疎水性有機溶剤の液膜により、当該見掛け粒子径(液膜厚を含む)は大きくなる。このため、水相1中において、疎水性有機溶剤が付着した疎水性粒子6は、沈降し易くなり、その沈降速度は大きくなる。
【0058】
一方、疎水性有機溶剤相2中には、水滴4に付着できなかった親水性粒子5も少ないが存在する。当該親水性粒子5の表面には水被膜が薄く(例えば約5~20μm)付着している。水の比重は、疎水性有機溶剤の比重より小さいため、当該水被膜で被覆された親水性粒子5(以下、「水被膜粒子5」と称する場合もある。)の見掛け比重は、親水性粒子5自体の比重より小さくなる。このため、付着した水被膜の厚さが一定であるとき、水被膜粒子5の見掛けの粒子径(親水性粒子5と水被膜を合わせた粒子径)が小さいと、水被膜粒子5は、疎水性有機溶剤相2から水相1へ浮上する一方、当該見掛けの粒子径が大きいと、疎水性有機溶剤相2内の水被膜粒子5は、疎水性有機溶剤相2内を沈降する。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る分離方法では、図1に示す水相1中において、疎水性粒子6が付着した溶剤液滴3と、疎水性有機溶剤の液膜が付着した疎水性粒子6は、水相1から疎水性有機溶剤相2に迅速に沈降する。さらに、図1に示す疎水性有機溶剤相2中において、親水性粒子5が付着した水滴4と、水膜が付着した親水性粒子5は、疎水性有機溶剤相2から水相1に迅速に浮上する。
【0060】
従って、本実施形態では、分離対象である混合物と、水及び疎水性有機溶剤とを混合・撹拌した後、その混合液を静置することで、例えば1~30秒程度の短時間で、図2に示すように、混合液は上側の水相1と、下側の疎水性有機溶剤相2とに分離される。かかる上下2相の液相の分離に伴い、疎水性粒子6は、大きな沈降速度で沈降して疎水性有機溶剤相2に移動する。一方、親水性粒子5は、大きな浮上速度で浮上して水相1に迅速に移動する。このため、親水性粒子5と疎水性粒子6を迅速に分離できる。
【0061】
ここで、上記特許文献1に記載の従来の浮選方法では、本実施形態のように大量の疎水性有機溶剤を用いるのではなく、灯油、軽油等の捕集剤と起泡剤をわずかに用いて、比重が相対的に小さい疎水性粒子(未燃カーボン101)を気泡103に付着させて浮上させていた(図18参照。)。このとき、水に添加される捕集剤及び起泡剤の添加量は、フライアッシュの質量に対して数質量%程度と微量である。しかし、かかる従来方法では、未燃カーボン101の粒子径が大きい場合には、未燃カーボン101が気泡103に付着したとしても、気泡103から剥がれ易いため、浮上しにくくなり、分離し難い。この従来方法では、沈降しようとする未燃カーボン101に気泡を付着させて、重力に逆らって無理矢理に浮上させようとしている。このため、浮上速度が非常に遅く、未燃カーボン含有率を低含有率(例えば3質量%以下)まで低下させるまでの時間が1時間程度もかかるだけでなく、回収された親水性粒子(金属酸化物)中における未燃カーボン101の含有率を目標値以下(例えば3質量%以下)に低下できない場合もあるなど、分離効率も悪いという問題があった。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る分離方法では、水よりも比重の大きい疎水性有機溶剤を、水と同程度に大量に用いて、当該疎水性有機溶剤と水との分離作用を利用して、親水性粒子5と疎水性粒子6を分離する点が特徴である。即ち、大量の疎水性有機溶剤と疎水性粒子6を確実に接触させることにより、比重が相対的に小さい疎水性粒子6(例えば、比重:1.3~1.5)を、溶剤液滴3等とともに沈降させて、下相の疎水性有機溶剤相2(例えば、比重:1.05超、1.8以下)に取り込む。一方、比重が相対的に大きい親水性粒子5(例えば、比重:2.4~2.6)を水滴4等とともに浮上させて、上相の水相1(比重:1)に取り込む。なお、疎水性粒子6の比重が親水性粒子5の比重より大きくても、上記のように水及びこれと同程度の量の疎水性有機溶剤を用いて、親水性粒子5と疎水性粒子6を分離することは可能である。
【0063】
さらに、本実施形態に係る分離方法では、後述するように分離工程で使用した疎水性有機溶剤を、後段の固液分離、蒸留処理などの回収工程により回収して、混合工程及び分離工程に再利用する。これにより、混合工程及び分離工程において、大量の疎水性有機溶剤を循環使用できるので、当該工程中において、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤との接触確率は非常に高い。さらに、比重が1より大きい疎水性粒子6と、比重が1より大きい疎水性有機溶剤とが付着するため、疎水性粒子6を、より沈降し易くできる。
【0064】
従って、本実施形態に係る分離方法は、上記特許文献1に記載の従来の浮選方法と比べて、疎水性粒子6(例えば未燃カーボン)を疎水性有機溶剤相2中に効率的に分離して分離でき、混合物から疎水性粒子6を分離する能力に優れる。よって、疎水性粒子6の分離速度を大幅に高めることができるとともに、分離効率も向上できるので、回収された親水性粒子5中における疎水性粒子6の含有率を大幅に低減できる。
【0065】
以上のように、水相1と疎水性有機溶剤相2を利用して、親水性粒子5と疎水性粒子6を湿式分離した結果、最終的には、図2に示すように、疎水性粒子6は水相1内にはほとんど含まれなくなる。このため、分離工程で用いた容器の上部から水相1(親水性粒子5を含む第2スラリー)を抜き出し、脱水することで、疎水性粒子6の含有率が低い親水性粒子5を回収することができる。一方、当該容器の下部から疎水性有機溶剤相2(疎水性粒子6を含む第3スラリー)を抜き出し、疎水性有機溶剤を固液分離することで、親水性粒子5の含有率が低い疎水性粒子6を回収することもできる。
【0066】
また、図1及び図2に示してはいないが、水相1と気相9との界面において、表面張力により、疎水性有機溶剤の薄い表層が、水相1の表層よりも上側に形成される場合がある。この疎水性有機溶剤の表層には疎水性粒子6が付着しうる。従って、分離工程により分離された水相1(親水性粒子5を含む第2スラリー)を容器から抜き出す際に、水相1の表層付近から採取するよりも、水相1の表層から例えば2~30cm程度下の領域から、親水性粒子5を含む第2スラリーを抜き出すことが好ましい。これにより、上記水相1の上側に形成された疎水性有機溶剤の表層に浮上している疎水性粒子6を、採取しないようにすることができる。従って、回収される親水性粒子5中における疎水性粒子6の含有率を、さらに低減できる。
【0067】
[2.2.水相のスラリーの比重と疎水性有機溶剤の比重との関係]
次に、図3A及び図3B(以下、「図3」と総称する場合もある。)並びに図4を参照して、上記分離方法を実現するために好適な、親水性粒子5を含む水相1のスラリーの比重と、疎水性有機溶剤の比重との関係について説明する。
【0068】
図3に示す水相1中の親水性粒子5の比重は、通常、疎水性有機溶剤の比重より大きいことが多い。にもかかわらず、水相1中の親水性粒子5は、疎水性有機溶剤相2中には沈まずに、水相1に滞留していることがほとんどである。
【0069】
特に、図3に示すように、上記分離方法では、水相1(即ち、水と親水性粒子5のスラリー)に分散していた親水性粒子5が水相1内を沈降し、水相1の下部で、親水性粒子5の濃縮部7を形成するようになる。濃縮部7は、水相1の下部において、多数の親水性粒子5が密集して存在する領域である。濃縮部7のスラリーの比重が、疎水性有機溶剤の比重より十分に小さいと、水相1と疎水性有機溶剤相2との界面は水平になり、明確になる。しかし、濃縮部7のスラリーの比重が、疎水性有機溶剤相2の比重とほぼ同等、若しくは大きくなると、濃縮部7のスラリーが溶剤相2に沈降し、水相1と疎水性有機溶剤相2との界面は不明瞭になる。
【0070】
例えば、疎水性有機溶剤としてトリクロロエチレン(比重:1.46)と水(比重:1)を混合した混合液に、親水性粒子5を主体とする混合物(フライアッシュ)を投入していくと、トリクロロエチレン相(溶剤相2)と水相1との界面が不明瞭になる。このとき、水相1内で沈殿したフライアッシュの濃縮部7のスラリーの平均比重は、1.35であり、トリクロロエチレンの比重(1.46)に近くなる。フライアッシュの濃縮部7の中でも、水相1とトリクロロエチレン相との界面付近では、圧密が界面から進んでいくため、濃縮部7のスラリーの比重は高くなり、トリクロロエチレンの比重1.46にさらに近くなるため、上記界面が不明瞭になると考えられる。特に図3Bのように、溶剤相2中を浮上する疎水性粒子6が多くなるにつれて、溶剤相2内の疎水性粒子6の濃縮部7’の見掛け比重は、溶剤そのものの比重より小さくなり、水相1内の親水性粒子5の濃縮部7の見掛け比重と近くなる。そのため、さらに、水相1と溶剤相2の界面は不明瞭となる。
【0071】
図4は、水相1のスラリー濃度Cとスラリー比重dとの関係を示したグラフである。図4では、主な疎水性有機溶剤の比重の範囲も示してある。
【0072】
ここで、スラリー濃度C[質量%]は、水相1(水と親水性粒子5のスラリー)に含まれる親水性粒子5の質量割合であり、以下の式(1)で表される。スラリー比重dは、水相1(水と親水性粒子5のスラリー)の見掛け密度ρ[g/cm]を、同温度及び同圧力における水の密度ρ[g/cm]で除算した値であり、以下の式(2)で表される。
【0073】
=m/(m+m) ・・・(1)
=ρ/ρ=(m+m)/(V+V)/ρ ・・・(2)
[g] :水相1に含まれる親水性粒子5の質量
[g] :水相1に含まれる水の質量
[cm] :水相1に含まれる親水性粒子5の体積
[cm] :水相1に含まれる水の体積
ρ[g/cm]:水相1における水と親水性粒子5のスラリーの見掛け密度
ρ[g/cm]:同温度及び同圧力における水の密度
【0074】
図4に示すように、分離対象物がフライアッシュ(比重:2.4)であり、疎水性溶剤がトリクロロエチレン(比重:1.46)である場合、スラリー濃度Cが54質量%以上になると、スラリー比重dが1.46以上になる。よって、スラリー濃度Cが54質量%未満であれば、フライアッシュに含まれる金属酸化物(親水性粒子5)と水のスラリー(水相1)は、トリクロロエチレン相(溶剤相2)中には沈降しないといえる。しかし、フライアッシュと水を混合した場合、スラリー濃度Cが54質量%であると、当該混合物は、固い泥状となり、スラリー状ではなくなるため、混合性が悪くなり、トリクロロエチレンに対して混合することは難しい。
【0075】
そこで、分離対象物としてフライアッシュを用いる場合は、フライアッシュ中の未燃カーボンの存在形態にもよるため、実験により求める必要はあるが、スラリー濃度Cは、38質量%未満であることが好ましい。スラリー濃度Cが38質量%超になると、処理後のフライアッシュ中の未燃カーボンの含有率の低下はほとんど見られないが、スラリー濃度Cを、38質量%未満にすると、処理後のフライアッシュ中の未燃カーボンの含有率は低下し、さらには、27質量%未満になると、処理後のフライアッシュ中の未燃カーボンの含有率は低位で一定となる。従って、水相1のスラリー濃度Cが38質量%未満となるように、混合工程におけるフライアッシュと水の混合比を調整したり、適切な比重の疎水性有機溶剤を選択したりすることが好ましい。
【0076】
また、分離対象物が高炉ガス灰(比重:4.0)であり、疎水性溶剤がトリクロロエチレン(比重:1.46)である場合、図4に示すように、スラリー濃度Cが42質量%以上になると、スラリーの比重が1.46以上になる。よって、スラリー濃度Cが42質量%未満であれば、高炉ガス灰に含まれる金属酸化物(親水性粒子5)と水のスラリー(水相1)は、トリクロロエチレン相(溶剤相2)中には沈降しないといえる。
【0077】
高炉ガス灰は、フライアッシュよりも、水相1とトリクロロエチレン相(溶剤相2)との界面付近で濃縮し易く、濃縮部7でのスラリー比重dが大きくなり易い。このため、高炉ガス灰中の未燃カーボンの存在形態によるため、実験により求める必要はあるが、濃縮部7でのスラリー比重dを低くするために、スラリー濃度Cは14質量%未満であることが好ましい。スラリー濃度Cが14質量%超になると、処理後の高炉ガス灰中の未燃カーボンの含有率の低下はほとんど見られないが、スラリー濃度Cを、14質量%未満にすると、処理後の高炉ガス灰中の未燃カーボンの含有率は低下し、さらには、Cが7質量%未満になると、処理後の高炉ガス灰中の未燃カーボンの含有率は低位で一定となる。
【0078】
以上、図4を参照して説明したように、親水性粒子5の比重が大きいほど、比重が大きい疎水性有機溶剤を選択することにより、親水性粒子5が水相1から溶剤相2に沈降することを防止でき、水相1内の親水性粒子5の含有率(スラリー濃度C)を高くすることができる。なお、親水性粒子5の比重が小さい場合には、比重が小さい疎水性有機溶剤を敢えて選択する必要はなく、適用できる疎水性有機溶剤の比重の範囲を拡張できる。
【0079】
[2.3.親水性粒子の見掛け粒子径と疎水性有機溶剤の比重との関係]
次に、図1及び図5を参照して、上記分離方法を実現するために好適な、疎水性有機溶剤相2中において水膜で被覆された親水性粒子5(「水被膜粒子5」ともいう。)の見掛け粒子径と、疎水性有機溶剤の比重との関係について説明する
【0080】
図1に示すように、疎水性有機溶剤相2中には、水滴4に付着できなかった親水性粒子5の表面に、薄い水被膜(例えば約5~20μm)が付着する場合もある。当該水被膜で被覆された親水性粒子5の見掛け比重は、親水性粒子5自体の比重より小さくなる。水被膜の厚さ、親水性粒子5の空隙等などによって、親水性粒子5に付着する水被膜の量は異なる。
【0081】
例えば、図5は、空隙がない球形の微粒子(親水性粒子5)に10μm厚の水被膜が付着した場合の、親水性粒子5の粒子径φと、水被膜粒子5の見掛け比重dとの関係を示すグラフである。
【0082】
ここで、水被膜粒子5の見掛け比重dは、水被膜粒子5の見掛け密度ρ[g/cm]を、同温度及び同圧力における水の密度ρ[g/cm]で除算した値であり、以下の式(3)で表される。
【0083】
=ρ/ρ=(m+m)/(V+V)/ρ ・・・(3)
[g] :親水性粒子5の質量
[g] :親水性粒子5に付着した水被膜の質量
[cm] :親水性粒子5の体積
[cm] :親水性粒子5に付着した水被膜の体積
ρ[g/cm]:水被膜粒子5の見掛け密度
ρ[g/cm]:同温度及び同圧力における水の密度
【0084】
図5に示すように、親水性粒子5の粒子径φが小さいほど、親水性粒子5の粒子径φに対して水被膜の厚さtが大きくなるため、水被膜粒子5の見掛け比重dは小さくなる。水被膜粒子5の見掛け比重dが疎水性有機溶剤の比重より小さくなると、水被膜粒子5は溶剤相2内で浮上し、水相1に移動する。
【0085】
従って、親水性粒子5の粒子径φ、水被膜の厚さt、親水性粒子5の空隙の度合い等に応じて、適切な比重の疎水性有機溶剤を選択し、水被膜粒子5の見掛け比重dが疎水性有機溶剤の比重より小さくなるように調整することが好ましい。水被膜の厚さt等を直接測定することが困難である場合、例えば、栓付メスシリンダーに水80mlと疎水性有機溶剤20mlからなる混合液に親水性粒子5を0.5~1g入れ、そのとき親水性粒子5のほとんどが疎水性有機溶剤相2に沈降しないような疎水性有機溶剤を選択することが好ましい。これにより、上記分離工程において、水被膜粒子5を溶剤相2から水相1に浮上させて、水相1内に滞留させることができ、親水性粒子5を疎水性有機溶剤及び疎水性粒子6から迅速かつ効率的に分離できる。
【0086】
[2.4.粒子の粒子径又は比重の好ましい範囲]
次に、図3を参照して、上記分離方法を実現するために好適な、粒子の粒子径又は比重の範囲について説明する。図3に示すように、親水性粒子5が水相1中を沈降し、水相1と疎水性溶剤相2との界面に到達した状態で、当該親水性粒子5には、浮力と界面張力と重力とが作用する。界面張力は、上記界面において、親水性粒子5が一方の相1から他方の相2へ移動することを阻害するエネルギー障壁として作用する。これらの力のバランスによって、親水性粒子5がどちらの相に移動するのかが決まるとも言える。親水性粒子5に作用する浮力と界面張力との合計を重力が上回る程度に、親水性粒子5の粒子径が大きいか、又は水の比重に対して親水性粒子5の比重が大きいと、当該粒子5が水相1から界面を通過して溶剤相2へ移動してしまうと考えられる。この場合、親水性粒子5と疎水性粒子6との分離効率が低下する。この観点からは、界面を通過して溶剤相2へ移動してしまう程度に粒子径が大きいか又は比重が大きい親水性粒子5を、分離処理の前に除いておくことが好ましい。例えば、分離処理前の混合物に含まれる親水性粒子5の粒子径は、500μm以下であってよく、200μm以下であることが好ましい。
【0087】
図3Bに示すように、疎水性溶剤相2中を浮上し、界面に到達した疎水性粒子6についても上記と同様である。疎水性粒子6に作用する重力と界面張力との合計を浮力が上回る程度に、疎水性粒子6の粒子径が大きいか、又は疎水性溶剤の比重に対して(特に水の比重よりも)疎水性粒子6の比重が小さいと、当該粒子6が溶剤相2から界面を通過して水相1へ移動してしまうと考えられる。この観点からは、界面を通過して水相1へ移動してしまう程度に粒子径が大きいか又は比重が小さい疎水性粒子6を、分離処理の前に除いておくことが好ましい。例えば、分離処理前の混合物に含まれる疎水性粒子6の粒子径は、500μm以下であってよく、200μm以下であることが好ましい。なお、これら親水性粒子5又は疎水性粒子6の最大粒子径は、篩による篩分けや、サイクロンによる分級をすることでコントロールすることができる。
【0088】
[3.粉砕処理による分離性向上]
疎水性粒子と親水性粒子とが混在する混合物には、部分的に疎水性粒子と親水性粒子が一体化しているものがある。例えば、混合物がフライアッシュである場合、フライアッシュ中の酸化物粒子は、AlとSiOを成分の主体としたほぼ球形の粒子である。多くの酸化物粒子は、未燃カーボン粒子の外側に存在している。しかし、フライアッシュ中の未燃カーボン粒子は、多孔質であり、未燃カーボン粒子中の細孔部分には、酸化物粒子の一部が入りこんでいる。未燃カーボン粒子中に入りこんでいる酸化物粒子の比率は、未燃カーボンの質量と同量におよぶことがある。
【0089】
上記の[2.分離方法の概要]に示した分離方法のみで、疎水性粒子と親水性粒子との分離はある程度までは進むが、混合物中に疎水性粒子と親水性粒子が一体化している部分が多いと、分離性は悪化する。例えば、混合物がフライアッシュである場合、分離して回収した親水性粒子中の未燃カーボン含有率は、3質量%以下になることが多いが、3質量%を超える場合もあり、変動する。分離して回収した疎水性粒子中の未燃カーボン含有率は、50質量%以上になることが多いが、その含有率は大きく変動する。これらの変動の原因は、フライアッシュ中で未燃カーボン粒子と酸化物粒子が部分的に一体化しているためであり、一体化している部分が多いと、分離性は悪化する。そこで、[2.分離方法の概要]に示した方法で分離する前に、対象とする混合物に対して粉砕処理を施すことで、疎水性粒子と親水性粒子との分離性が向上する。
【0090】
粉砕方法としては、スラリー状にした混合物を、ボールやビーズ等の粉砕媒体を用いたミルにより粉砕する、高せん断式ホモジナイザーの高速せん断羽根に衝突させて粉砕する、又は超音波粉砕機により超音波を照射して粉砕する、等のいずれを用いてもよい。混合物中の親水性粒子と疎水性粒子のそれぞれの硬さ又は両粒子の一体化状況等を観察し、最終的には粉砕方法をテストして、最適な方法を選定すればよい。
【0091】
例えば、混合物がフライアッシュである場合、多孔質である未燃カーボン粒子は粉砕されやすいが、酸化物粒子は球形で緻密であり粉砕しにくい。よって、ビーズを用いた粉砕処理を採用することにより、フライアッシュ中に含まれる硬い酸化物粒子を破壊せずに、脆い未燃カーボン粒子を、短時間で効率的に粉砕できる。上記ビーズの直径(以下、ビーズ径という。)が大きいほど、略球状の酸化物粒子の間にある粒子径が小さい未燃カーボン粒子を粉砕するためには、硬い略球状の酸化物粒子を粉砕せねばならず、ビーズと粒子径の小さい未燃カーボン粒子が衝突する可能性は低くなる。一方、ビーズ径が小さく、言い換えるとビーズの曲率が大きくなるほど、ビーズは、硬い略球状の酸化物粒子と衝突せずに、粒子径の小さい未燃カーボン粒子と接触することができる。そのため、ビーズ径は1mm以下が好ましいといえる。
【0092】
そこで、混合物がフライアッシュである場合、直径が1mm以下のビーズを使用し、1秒~5分程度の粉砕処理を、スラリー状にしたフライアッシュに施すことで、主に未燃カーボン粒子のみを粉砕することができる。このとき、未燃カーボン粒子の細孔部に入りこんでいた酸化物粒子は、未燃カーボン粒子から放出される。このように粉砕処理を施した後のフライアッシュのスラリーに対して、[2.分離方法の概要]に示した分離方法を適用することにより、分離して回収した親水性粒子中の未燃カーボン含有率は1質量%以下に安定し、分離して回収した疎水性粒子中の未燃カーボン含有率は70質量%以上95%未満となり、安定化する。
【0093】
[4.単段連続プロセス]
次に、本実施形態に係る分離方法及び回収方法を、1組の混合装置(混合工程)と分離装置(分離工程)を用いて、単段連続プロセスで実施する形態について説明する。なお、本実施形態に係る分離方法は、混合工程、分離工程及び回収工程等を回分処理で実施することも可能であるが、分離・回収速度及び生産性の観点からは、これら工程を同時並行する連続処理で実施することが好ましい。
【0094】
[4.1.粒子分離装置の構成と分離方法]
まず、図6を参照して、本実施形態に係る粒子分離装置8の構成と、当該粒子分離装置8を用いた親水性粒子5と疎水性粒子6の分離方法及び回収方法について説明する。図6は、本実施形態に係る粒子分離装置8と、それを用いた単段連続プロセスを示す模式図である。
【0095】
図6に示すように、粒子分離装置8は、ミキサー10(混合装置)と、セトラー20(分離装置)と、第1回収装置30と、第2回収装置40とを備える。
【0096】
(1)混合装置による混合工程(S1)
混合工程では、親水性粒子5及び疎水性粒子6が混在した混合物を、水及び疎水性液体(以下では疎水性有機溶剤の例で説明する。)に混合して、混合液を撹拌してスラリー化し、第1スラリーを生成する(S1)。これにより、図1に示したように、親水性粒子5は水滴4の表面に付着、若しくは水滴4の内部に取り込まれ、疎水性粒子6は、溶剤液滴3の表面に付着、若しくは溶剤液滴3の内部に取り込まれる。
【0097】
この混合工程(S1)を実行する混合装置としては、例えば、混合液を撹拌する撹拌翼を備えた容器、ラインミキサー、又は内部で混合液を撹可能なポンプなどを使用することができる。図6の例のミキサー10は、混合液を撹拌する撹拌翼を備えた容器の一例である。
【0098】
ミキサー10は、モータ11と撹拌翼12を有する攪拌機である。このミキサー10は、後段のセトラー20に対して配管13を介して接続されている。ミキサー10の容器内部には、分離対象の混合物と、水と、水より比重が大きい疎水性有機溶剤とが投入される。ミキサー10は、モータ11により撹拌翼12を回転させることにより、当該混合物と水と疎水性有機溶剤とを混合して、第1スラリー(親水性粒子5、疎水性粒子6、水及び疎水性有機溶剤の混合液)を生成する(混合工程)。
【0099】
(2)分離装置による分離工程(S2)
セトラー20は、分離工程を実行する分離装置の一例である。セトラー20は、上記混合工程(S1)で生成された第1スラリーを静置することにより、水と疎水性有機溶剤の比重差を利用して、親水性粒子5を主として含む水相1と、疎水性粒子6を主として含む疎水性有機溶剤相2とに分離する(S2)。
【0100】
セトラー20は、複数種類の液体の混合液を静置して、比重差を用いて該液体を分離する比重分離装置の一例であり、上記ミキサー10に対して配管13を介して接続される。また、セトラー20は、後段の第1回収装置30に対して配管21を介して接続され、当該配管21には、親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)を送出するためのポンプ22が設けられている。さらに、セトラー20は、後段の第2回収装置40に対しても配管23を介して接続され、当該配管23には、疎水性粒子6を含む溶剤相2(第3スラリー)を送出するためのポンプ24が設けられている。
【0101】
セトラー20は、ミキサー10から配管13を通じて導入された第1スラリーを、比重差を利用して、上相の水相1と、下相の疎水性有機溶剤相2とに分離しながら、親水性粒子5を水相1に移動させ、疎水性粒子6を溶剤相2に移動させることにより、親水性粒子5と疎水性粒子6を分離する。この分離原理は、前述の図1及び図2で説明した通りである。その後、親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)は、セトラー20の上部から配管21を通じて第1回収装置30に排出される。一方、疎水性粒子6を含む溶剤相2(第3スラリー)は、セトラー20の下部から配管23を通じて第2回収装置40に排出される。
【0102】
(3)第1回収装置30による第1回収工程(S3)
第1回収装置30は、上記分離工程(S2)により分離された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)から水を分離して、親水性粒子5(例えば金属酸化物)を回収する(S3)。第1回収装置30は、遠心分離機31と、乾燥装置32と、コンデンサー33とを備える。
【0103】
遠心分離機31は、固液分離装置の一例であり、遠心力を利用して、液体中に懸濁する固体と液体とを分離する。遠心分離機31は、後段の乾燥装置32に対して配管34を介して接続され、前段のミキサー10に対して配管35を介して接続されている。遠心分離機31には上記セトラー20から上記親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)が導入される。遠心分離機31は、遠心力を利用して、当該第2スラリーを、親水性粒子5と水とに分離する(固液分離工程)。遠心分離機31で脱水された親水性粒子5は、配管34を通じて乾燥装置32に排出される。一方、遠心分離機31で分離された水は、配管35を通じてミキサー10に戻されて、上記混合工程(S1)にて再利用される。
【0104】
なお、本実施形態では、遠心分離機31による遠心分離により、第2スラリーを水と親水性粒子5に固液分離するが、これに替えて、フィルタープレス又は蒸留又はろ過等の固液分離方法を用いてもよい。ただし、疎水性有機溶剤が揮発性を有する場合、揮発した溶剤ガスの漏えいが激しいため、フィルタープレスを使用することは好ましくない。溶剤ガスの漏えいを少なくするには、固液分離装置として、例えば、蒸留装置、遠心分離装置、ろ過装置を使用することが好ましい。
【0105】
乾燥装置32は、上記遠心分離機31から導入された親水性粒子5を加熱して、残存する水分を蒸発させることで、親水性粒子5を乾燥させる(乾燥工程)。乾燥した親水性粒子5は、配管36から排出されて回収される。コンデンサー33は、乾燥装置32から配管37を通じて送出された水蒸気を凝縮して、液体の水に戻す(凝縮工程)。コンデンサー33で生成された液体の水は、配管38を通じてミキサー10に戻されて、上記混合工程(S1)にて再利用される(第1リサイクル工程)。
【0106】
このように、本実施形態に係る親水性粒子5の回収方法では、第1回収工程(S3)にて、上記分離工程(S2)により分離された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)を、遠心分離機31により親水性粒子5と水に分離した後に、乾燥装置32で親水性粒子5を乾燥させて、乾粉の親水性粒子5を回収する。しかし、第1回収工程(S3)は、かかる例に限定されず、上記分離工程(S2)により分離された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)に対して、上記固液分離工程や乾燥工程を行わずに、そのまま回収して、水スラリー状態の親水性粒子5を回収してもよい。親水性粒子5を乾粉状態又は水スラリー状態のいずれで回収するかは、親水性粒子5のリサイクル用途等に応じて適宜選択可能である。
【0107】
また、第1回収工程(S3)では、上記分離工程(S2)により分離された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)に対して、疎水性有機溶剤の沸点以上の温度まで加温する、又は、疎水性有機溶剤が蒸発する気圧まで減圧することにより、当該水相1中に残存する疎水性有機溶剤を蒸発させて除去することが好ましい。これにより、回収される親水性粒子5に疎水性有機溶剤が含まれることを防止でき、親水性粒子5の品質を向上できる。本実施形態に係る粒子分離装置8では、図6に示す乾燥装置32による乾燥工程で、水とともに疎水性有機溶剤を加熱して蒸発させることで、第2スラリー中に残存している疎水性有機溶剤を除去できる。なお、疎水性有機溶剤が揮発性を有する場合には、常温で蒸発するが、疎水性有機溶剤の比重が水の比重より大きいことから、気相と直接接しないことが多いため、撹拌もしくはエアレーションを行う必要があり、揮発した溶剤が飛散しないように対処することが望ましい。
【0108】
(4)第2回収装置40による第2回収工程(S4)
第2回収装置40は、上記分離工程(S2)により分離された疎水性粒子6を含む疎水性有機溶剤相2(第3スラリー)から疎水性有機溶剤を分離して、疎水性粒子6(例えばカーボン)を回収する(S4)。第2回収装置40は、遠心分離機41と、乾燥装置42と、コンデンサー43とを備える。
【0109】
遠心分離機41は、後段の乾燥装置42に対して配管44を介して接続され、前段のミキサー10に対して配管45を介して接続されている。遠心分離機41には上記セトラー20から上記疎水性粒子6を含む疎水性有機溶剤相2(第3スラリー)が導入される。遠心分離機41は、遠心力を利用して、当該第3スラリーを、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤とに分離する(固液分離工程)。遠心分離機41で疎水性有機溶剤が分離された疎水性粒子6は、配管44を通じて乾燥装置42に排出される。一方、遠心分離機41で分離された疎水性有機溶剤は、配管45を通じてミキサー10に戻されて、上記混合工程(S1)にて再利用される。なお、本実施形態では、遠心分離機41による遠心分離により、第3スラリーを疎水性有機溶剤と親水性粒子5に固液分離するが、これに替えて、フィルタープレス又は蒸留又はろ過等の固液分離方法を用いてもよい。
【0110】
乾燥装置42は、上記遠心分離機41から導入された疎水性粒子6を加熱して、残存する疎水性有機溶剤分を蒸発させることで、疎水性粒子6を乾燥させる(乾燥工程)。乾燥した疎水性粒子6は、配管46から排出されて回収される。コンデンサー43は、乾燥装置42から配管47を通じて送出された疎水性有機溶剤の蒸気を凝縮して、液体の疎水性有機溶剤に戻す(凝縮工程)。コンデンサー43で生成された液体の疎水性有機溶剤は、配管48を通じてミキサー10に戻されて、上記混合工程(S1)にて再利用される(第2リサイクル工程)。
【0111】
このように、本実施形態に係る疎水性粒子6の回収方法では、第2回収工程(S4)にて、上記分離工程(S2)により分離された疎水性粒子6を含む溶剤相2(第3スラリー)を、遠心分離機41により疎水性粒子6と疎水性有機溶剤に分離した後に、乾燥装置42で疎水性粒子6を乾燥させて、乾粉の疎水性粒子6(例えばカーボン粉)を回収する。
【0112】
以上、本実施形態に係る分離方法と、親水性粒子5又は疎水性粒子6の回収方法の各工程(S1~S4)について説明した。本実施形態では、当該方法を単段連続プロセスで行うため、上記の混合工程(S1)、分離工程(S2)、第1回収工程(S3)及び第2回収工程(S4)を同時並行で行う。これにより、親水性粒子5と疎水性粒子6の分離効率及び生産性を向上できる。
【0113】
さらに、第1回収工程(S3)にて親水性粒子5から分離された水を回収して、混合工程(S1)で投入される水として再利用するとともに、第2回収工程(S4)にて疎水性粒子6から分離された疎水性有機溶剤を回収して、混合工程(S1)で投入される疎水性有機溶剤として再利用する。これにより、水及び疎水性有機溶剤を使い捨てにしなくても済むので、疎水性有機溶剤の原料コストや廃棄コストを低減できる。さらに、混合工程(S1)及び分離工程(S2)で大量の疎水性有機溶剤を繰り返し使用でき、疎水性粒子6が疎水性有機溶剤に接触する機会を増加できる。また、分離工程(S2)では、混合物のうち疎水性粒子6を疎水性粒子6に取り込み、親水性粒子5を水相1に取り込むことにより、親水性粒子5と疎水性粒子6を高効率で分離できる。
【0114】
従って、本実施形態に係る分離方法は、上記特許文献1に記載の従来の浮選方法と比べて、親水性粒子5と疎水性粒子6の分離速度及び分離効率を大幅に向上できる。例えば、本実施形態に係る分離工程(S2)により、例えば1秒~30秒程度の短時間で親水性粒子5と疎水性粒子6を迅速に分離できる。また、分離対象の混合物が例えばフライアッシュである場合、分離及び回収された親水性粒子5に含まれる疎水性粒子6の含有率を、3質量%以下に低減でき、純度の高い親水性粒子5を回収できる。同様に、分離対象の混合物が例えばフライアッシュである場合、分離及び回収された疎水性粒子6に含まれる親水性粒子5の含有率を、50質量%以下、好ましくは質量20%以下に低減でき、純度の高い疎水性粒子6も回収できる。
【0115】
[4.2.分離装置の具体例]
次に、図7図9を参照して、本実施形態に係る粒子分離装置8が備える分離装置(例えば、上記セトラー20)の具体例について説明する。
【0116】
本実施形態に係る分離方法の分離工程(S2)を実行する分離装置(セトラー20)としては、例えば、図8に示す横流式分離装置200又は図9に示す上昇流式分離装置210などの比重分離装置を用いてもよい。或いは、分離装置として、不図示の液体サイクロン式分離装置を用いることも可能である。
【0117】
図8に示すように、横流式分離装置200では、横長の容器201の側面から、水平方向に混合液が供給され、当該混合液が容器201内で静置されることで、水相1と溶剤相2に比重分離される。また、図9に示すように、上昇流式分離装置210では、縦長の容器211の底面から上向きに混合液が供給され、当該混合液が容器211内で静置されることで、水相1と溶剤相2に比重分離される。
【0118】
かかる横流式分離装置200、上昇流式分離装置210を用いて混合液を比重分離する場合には、水相1と溶剤相2の界面が、水相1中の親水性粒子5の含有率の影響を受けにくいため、水相1中のスラリー濃度Cを高くすることができる。特に、上昇流式分離装置210では、図7及び図9に示すように、容器211の底面から上向きに混合液(第1スラリー)を供給する方式であるので、水相1の下部において、親水性粒子5が濃縮しにくく、スラリー濃度Cの上昇が小さい。従って、上昇流式分離装置210に供給する第1スラリーの濃度(即ち、親水性粒子5の含有率)を高くすることができるので、親水性粒子5の分離処理量を増加でき、生産性を向上できる。
【0119】
一方、液体サイクロン式分離装置では、水相1中のスラリー濃度Cを高くすると、水相1と溶剤相2との界面付近で、水相1中のスラリー濃度Cが高くなりやすいため、横流式分離装置200、上昇流式分離装置210と比較して、水相1中のスラリー濃度Cを低くする必要がある。しかし、液体サイクロン式分離装置では、サイクロン中の回転流に伴い遠心力を作用させるため、水相1中の粒子径が大きい親水性粒子5を分離することが可能となる。
【0120】
[4.3.疎水性有機溶剤の比重の好ましい範囲]
次に、本実施形態に係る分離方法で用いられる疎水性有機溶剤の比重(液比重)の好ましい範囲について詳細に説明する。
【0121】
疎水性有機溶剤の比重は、1.05超であることが好ましい。疎水性有機溶剤の比重が1.05以下であると、疎水性有機溶剤と水の比重が近いので、上記分離工程(S2)においてセトラー20等の分離装置による比重分離速度が低下してしまう。このため、分離装置内で混合液(第1スラリー)を静置してから、水相1と溶剤相2の上下2相に分離するまでに、例えば1分以上の長時間がかかるので、所望の処理量を得るためには分離装置を大型化する必要がある。
【0122】
さらに、疎水性有機溶剤の比重が1.05以下であると、図4に示したように、水相1と溶剤相2の相分離を好適に行うためには、水相1内のスラリー濃度Cを6質量%未満、余裕を見て3質量%未満にする必要があり、やはり、分離装置が大型化してしまう。
【0123】
従って、疎水性有機溶剤の比重を1.05超とすることにより、分離装置内で水と疎水性有機溶剤を静置した後、例えば1~30秒程度で迅速に、水相1と溶剤相2の2相に分離することができ、比重分離速度を向上できる。さらに、水相1内のスラリー濃度Cを例えば少なくとも3質量%以上にできるので、単位時間当たりの分離処理量を高めて、大型の分離装置を使用しなくてすむ。
【0124】
また、疎水性有機溶剤の比重は、疎水性粒子6の比重(例えば1.2~1.8)よりも小さいことが好ましく、例えば1.8未満であることが好ましい。これにより、上記第2回収工程(S4)において、遠心分離機41を用いて、疎水性粒子6を含む溶剤相2(第3スラリー)から、疎水性粒子6を効率的に分離でき、脱液性が向上する。この理由を以下に説明する。
【0125】
上記分離工程(S2)において、セトラー20内で水相1と疎水性有機溶剤相2に分離すると、図3A及び図3Bに示すように、疎水性有機溶剤と疎水性粒子6の比重差によって、疎水性粒子6は溶剤相2内を沈降したり、浮上したりする。その後、第2回収工程(S4)において、遠心分離機41等による固液分離処理により、疎水性有機溶剤相2から疎水性粒子6が分離される。
【0126】
遠心分離機41は、対象物の比重差を用いて固液分離するので、もし「疎水性粒子6の比重<疎水性有機溶剤の比重」である場合、相対的に軽い疎水性粒子6は、遠心分離機41内で浮上する。そうすると、疎水性有機溶剤の表層で疎水性粒子6が濃化することとなるが、疎水性有機溶剤の表層は揺らぐために、疎水性粒子6間の間隙が十分小さくならないことが多く、良好な脱液性を得ることはできにくくなる。そのため、分離工程(S2)内の固液分離装置に、遠心分離機41を使用する場合には、「疎水性粒子6の比重>疎水性有機溶剤の比重」となるように、疎水性有機溶剤を選択することが好ましい。なお、「疎水性粒子6の比重<疎水性有機溶剤の比重」となる場合でも、脱液性は劣るが遠心分離機を使用でき、或いは、ろ過方式又は蒸留方式の固液分離装置を採用することもできる。
【0127】
一方、「疎水性粒子6の比重>疎水性有機溶剤の比重」であるとき、相対的に重い疎水性粒子6は遠心分離機41内で沈降して、遠心容器の底部に堆積する。従って、疎水性粒子6を回収する際に、余分な疎水性有機溶剤の回収量を低減にできるため、脱液性が向上する。従って、疎水性粒子6の比重(例えば1.2~1.8)よりも小さい比重の疎水性有機溶剤を使用することが好ましい。
【0128】
[4.4.疎水性有機溶剤の沸点の好ましい範囲]
次に、本実施形態に係る分離方法で用いられる疎水性有機溶剤の沸点の好ましい範囲について説明する。
【0129】
上記第1回収工程(S3)において、親水性粒子5を含む水相1から親水性粒子5を回収する際、当該水相1中に残存している疎水性有機溶剤を加熱して蒸発させることで、当該疎水性有機溶剤を除去することが望ましい。ここで、回収される親水性粒子5がケーキ状であるか、スラリー状であるかによって、疎水性有機溶剤の沸点の適正範囲が異なる。
【0130】
セトラー20等の分離装置で分離された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)は、スラリー状であるが、当該水相1を上記遠心分離機31等により脱水した場合には、ケーキ状の親水性粒子5が得られる。親水性粒子5を含む第2スラリーと比較して、ケーキ状の親水性粒子5の水分は少ない。
【0131】
このため、ケーキ状の親水性粒子5を加熱して疎水性有機溶剤を除去する場合には、水分を蒸発させるための熱量が少なくて済むので、疎水性有機溶剤を加熱して蒸発・除去するための必要熱量を少なくできる。従って、大気圧下で100℃を超える沸点の疎水性有機溶剤を用いたとしても、比較的少ない熱量で容易に、ケーキ状の親水性粒子5を当該沸点以上に加熱することができ、疎水性有機溶剤を蒸発させて除去できる。ただし、疎水性有機溶剤の沸点が150℃超であると、加熱装置の設備コストや加熱処理コストが増加してしまうため、疎水性有機溶剤の沸点は150℃以下であることが好ましい。
【0132】
一方、スラリー状の親水性粒子5を加熱して疎水性有機溶剤を除去する場合には、水分が多いため、沸点が100℃以上の疎水性有機溶剤を使用すると、疎水性有機溶剤のみならず大量の水分も蒸発させる必要が生じ、加熱処理の必要熱量が増大してしまう。そこで、水よりも沸点が低い95℃未満の疎水性有機溶剤を使用することが好ましい。これにより、スラリー状の親水性粒子5を加熱して疎水性有機溶剤を除去する際に、加熱温度を100℃未満で疎水性有機溶剤の沸点以上の温度にすることで、水の蒸発を抑制しつつ、疎水性有機溶剤を蒸発させることができる。よって、加熱処理に必要な熱量を低減でき、加熱装置の設備コストや加熱処理コストを抑制できる。
【0133】
また、疎水性有機溶剤の沸点が40℃未満であると、常温大気圧下で溶剤の揮発量が著しく多くなり、回収できない溶剤量が増加してしまう。このため、常温大気圧下において疎水性有機溶剤を容易に取り扱い可能とするため、疎水性有機溶剤の沸点は40℃以上であることが好ましい。
【0134】
以上により、疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において40℃以上、150℃以下であることが好ましい。これにより、固液分離後のケーキ状の親水性粒子5から、疎水性有機溶剤を容易に蒸発させて除去することができる。さらに、疎水性有機溶剤の沸点は、大気圧下において、40℃以上、95℃以下であることがより好ましい。これにより、スラリー状の親水性粒子5から疎水性有機溶剤を蒸発させて除去する際に、水の蒸発を抑制することができるので、少ない熱量で容易に疎水性有機溶剤を蒸発させて除去することができる。
【0135】
[5.向流型多段連続プロセス]
次に、本発明の第2の実施形態に係る分離方法及び回収方法について説明する。第2の実施形態に係る分離方法では、複数組の混合装置及び分離装置を設置して、上記混合工程(S1)と分離工程(S2)を繰り返す向流型多段連続プロセスを採用している。
【0136】
上述したように分離装置(セトラー20)による分離工程(S2)では、混合液(第1スラリー)を静置した後に、例えば1秒~30秒で、水相1と疎水性有機溶剤相2に分離することが好ましい。静置時間が長すぎると、水相1と溶剤相2との界面付近における水相1の下部のスラリー濃度Cが上昇しすぎ、当該界面が不明瞭になり、疎水性粒子6の分離効率が低下する可能性がある。そこで、本実施形態に係る分離方法は、回分プロセスも可能ではあるが、連続プロセスで実行することが好ましい。
【0137】
このように、本実施形態に係る分離方法では、分離工程(S2)における分離速度が速く、数秒~数十秒で相分離できる。この場合には、以下に示す第2の実施形態のように、混合装置(ミキサー10等)による混合工程(S1)と、分離装置(セトラー20等)による分離工程(S2)とを繰り返し適用する、多段連続プロセスを採用することができる。親水性粒子5及び疎水性粒子6の分離効率及び品質の観点からは、上記第1の実施形態に係る単段連続プロセス(図6参照。)よりも、第2の実施形態に係る多段連続プロセスを採用することが好ましい。これにより、水相1から回収される固形物中に含まれる疎水性粒子6の含有率を減少させることができ、かつ、溶剤相2から回収される固形物中に含まれる疎水性粒子6の含有率を増加させることができる。
【0138】
[5.1.粒子分離装置の構成と向流型2段連続プロセス]
ここで、図10を参照して、第2の実施形態に係る粒子分離装置8Aの構成と、それを用いた向流型2段連続プロセスについて説明する。図10は、向流型多段連続プロセスにおいて、混合工程(S1)と分離工程(S2)の組合せを2段階で実施する向流型2段連続プロセスの例を示している。
【0139】
図10に示すように、第2の実施形態に係る向流型2段連続プロセスを実施する粒子分離装置8Aは、2組の混合装置及び分離装置(2組のミキサー10A、10B及びセトラー20A、20B)と、第1回収装置30と、第2回収装置40を備える。ここで、ミキサー10A、10B、セトラー20A、20B、第1回収装置30、第2回収装置40の各々の機能及び構成は、上記第1の実施形態(図6等参照。)の各装置と略同一であるので、詳細説明は省略する。
【0140】
図10に示すように、第2の実施形態に係る粒子分離装置8Aでは、1段目のミキサー10A及びセトラー20Aは、1段目の混合工程(S1_1)及び1段目の分離工程(S2_1)を実行する。さらに、2段目のミキサー10B及びセトラー20Bは、2段目の混合工程(S1_2)及び2段目の分離工程(S2_2)を実行する。そして、第1回収装置30は、2段目の分離工程(S2_2)で分離された親水性粒子5を含む水相1から、親水性粒子5と水を回収する(S3)。一方、第2回収装置40は、1段目の分離工程(S2_1)で分離された疎水性粒子6を含む疎水性有機溶剤相2から、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤を回収する(S4)。
【0141】
詳細には、まず、外部から供給される混合物、系内でリサイクルされる水、及び2段目のセトラー20Bから排出された疎水性粒子6を含む溶剤相2は、1段目のミキサー10Aに投入されて、混合・撹拌され(S1_1)、1段目のセトラー20Aにて、水相1と溶剤相2に分離される(S2_1)。次いで、1段目のセトラー20Aの上部から排出された親水性粒子5及び残存した疎水性粒子6を含む水相1(第2スラリー)は、配管21Aを通じて、2段目のミキサー10Bに投入され、後段の遠心分離機41で固液分離された疎水性有機溶剤とともに混合・撹拌され(S1_1)、さらに、2段目のセトラー20Bにて、水相1と溶剤相2に分離される(S2_2)。次いで、2段目のセトラー20Bの上部から排出された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)は、配管21Bを通じて、第1回収装置30の遠心分離機31に投入され、固液分離、乾燥等を経て、親水性粒子5が回収される(S3)。なお、この第1回収工程(S3)で回収された水は、リサイクルされて、1段目のミキサー10Aに投入され、1段目の混合工程(S1_1)に利用される。
【0142】
一方、疎水性有機溶剤は、2段目のミキサー10Bに投入され、上記1段目のセトラー20Aの上部から排出された親水性粒子5を含む水相1(第2スラリー)とともに混合・撹拌され(S1_2)、さらに、2段目のセトラー20Bにて、水相1と溶剤相2に分離される(S2_2)。次いで、2段目のセトラー20Bの下部から排出された疎水性粒子6及び残存した親水性粒子5を含む溶剤相2(第3スラリー)は、配管23Bを通じて、1段目のミキサー10Aに投入され、上記混合物、及び後段の遠心分離機31で固液分離された水とともに混合・撹拌され(S1_1)、1段目のセトラー20Aにて、水相1と溶剤相2に分離される(S2_1)。次いで、1段目のセトラー20Aの下部から排出された疎水性粒子6を含む溶剤相2(第3スラリー)は、配管23Aを通じて、第2回収装置40の遠心分離機41に投入され、固液分離、乾燥等を経て、疎水性粒子6が回収される(S4)。なお、この第2回収工程(S4)で回収された疎水性有機溶剤は、リサイクルされて、2段目のミキサー10Bに投入され、2段目の混合工程(S1_2)に利用される。
【0143】
以上のように、第2の実施形態に係る向流型2段連続プロセスでは、2組の混合装置及び分離装置を用いて混合工程(S1)と分離工程(S2)の組合せが2段階で実施される。これにより、親水性粒子5を含む水相1と、疎水性粒子6を含む溶剤相2が2段階で分離されるので、第1の実施形態に係る単段連続プロセスと比べて、親水性粒子5と疎水性粒子6の分離効率をさらに向上できる。よって、疎水性粒子6の含有率がより低い親水性粒子5と、親水性粒子5の含有率がより低い疎水性粒子6をそれぞれ回収できる。さらに、向流型連続プロセスであるので、第1の実施形態に係る単段連続プロセスと比べて、分離速度や、生産性を低下させることもない。
【0144】
[5.2.向流型多段連続プロセスによる分離方法]
上記図10では、向流型2段連続プロセスについて説明したが、第2の実施形態に係る分離方法は、N段以上(Nは3以上の整数)の向流型多段連続プロセスにも適用可能である。
【0145】
図11は、N段の向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。図11に示すように、N段の向流型多段連続プロセスでは、混合工程(S1)と分離工程(S2)の組合せをN段階繰り返す。Nが多いほど、親水性粒子5と疎水性粒子6の分離効率は向上し、回収される固形物中の親水性粒子5と疎水性粒子6の含有率をそれぞれ増加できる。
【0146】
図11に示す例では、例えば、1段目の混合工程(S1_1)にて、分離処理対象の混合物と水が投入され、2~N段目の混合工程(S1_2~N)では、水は単独では投入されない。一方、最終段目であるN段目の混合工程(S1_N)にて、疎水性有機溶剤が投入され、1~N-1段目の混合工程(S1_1~N-1)では、疎水性有機溶剤は単独では投入されない。
【0147】
そして、n段目(nは1以上、N-2以下の整数)の分離工程(S2_n)で分離された親水性粒子5及び残存した疎水性粒子6を含む水相1と、n+2段目の分離工程(S2_n+2)で分離された疎水性粒子6及び残存した親水性粒子5を含む溶剤相2とが、n+1段目の混合工程(S1_n+1)で混合、スラリー化される。次いで、当該n+1段目の分離工程(S2_n+1)にて、親水性粒子5を主に含む水相1と、疎水性粒子6を主に含む溶剤相2とに分離される。
【0148】
かかる混合工程(S1)及び分離工程(S2)の組合せを、各段で繰り返すことで、1段目からN段目に向かうほど、親水性粒子5の含有率の高い水相1が得られる一方、N段目から1段目に向かうほど、疎水性粒子6の含有率の高い溶剤相2が得られる。その後、N段目の後段の第1回収工程(S3)では、親水性粒子5の含有率の高い水相1から、親水性粒子5と水がそれぞれ分離及び回収され、回収された水は、1段目の混合工程(S1_1)に戻されて再利用される。一方、1段目の後段の第2回収工程(S4)では、疎水性粒子6の含有率の高い溶剤相2から、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤がそれぞれ分離及び回収され、回収された疎水性有機溶剤は、N段目の混合工程(S1_N)に戻されて再利用される。
【0149】
このようにして、N段階で向流型多段連続プロセスを実施することで、第1の実施形態に係る単段連続プロセスと比べて、より一層、親水性粒子5と疎水性粒子6の分離効率を向上できるとともに、疎水性粒子6の含有率が低い親水性粒子5と、親水性粒子5の含有率が低い疎水性粒子6をそれぞれ回収でき、分離速度や、生産性を低下させることもない。
【0150】
なお、図11の例では、分離対象物である混合物を1段目の混合工程(S1_1)で投入しているが、他の段目の混合工程(S1_2~N)で当該混合物を投入してもよい。
【0151】
[5.3.洗浄工程を追加した向流型多段連続プロセス]
次に、図12及び図13を参照して、水による洗浄工程を追加した向流型多段連続プロセスについて説明する。
【0152】
図12は、上記図11に示したN段の向流型多段連続プロセスに対して、1段の洗浄工程(S5、S6)を追加したN段の向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。図12に示すように、1段目の混合工程(S1_1)及び分離工程(S2_1)の前段に、1段の洗浄工程(S5、S6)が追加されている。
【0153】
洗浄工程(S5、S6)は、1段目の分離工程(S2_1)で分離された疎水性粒子6及び残存した微量の親水性粒子5を含む溶剤相2から、当該微量の親水性粒子5を除去するための工程である。この洗浄工程(S5、S6)は、洗浄用混合工程(S5)と、洗浄用分離工程(S6)を含む。
【0154】
洗浄用混合工程(S5)では、上述した混合装置(例えば図6のミキサー10)を用いて、1段目の分離工程(S2_1)で分離された疎水性粒子6及び残存した微量の親水性粒子5を含む溶剤相2(第3スラリー)に水を加えて、混合・撹拌し、スラリー化する。次いで、洗浄用分離工程(S6)では、洗浄用混合工程(S5)で生成されたスラリーを、上述した分離装置(例えば図6のセトラー20)を用いて、水相1と溶剤相2とに分離しながら、微量の親水性粒子5を水相1に移動させることにより、当該親水性粒子5を、疎水性粒子6から分離する。
【0155】
その後、洗浄用分離工程(S6)で分離された疎水性粒子6を含む溶剤相2は、第2回収工程(S4)に送られ、疎水性粒子6を含む溶剤相2から、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤がそれぞれ分離及び回収され、回収された疎水性有機溶剤は、N段目の混合工程(S1_N)に戻されて再利用される。一方、洗浄用分離工程(S6)で分離された微量の親水性粒子5を含む水相1は、1段目の混合工程(S1)に送られて、混合物及び疎水性有機溶剤と混合され、その後は上記と同様に処理される。
【0156】
以上のように洗浄工程(S5、S6)では、疎水性粒子6及び微量の親水性粒子5を含む溶剤相2に水のみを添加して、当該水で親水性粒子5を洗浄することにより、当該溶剤相2に残存した微量の親水性粒子5を当該水に取り込んで除去することができる。これにより、第2回収工程(S4)にて溶剤相2から回収される固形物中の疎水性粒子6の含有率を、さらに増加させることができる。
【0157】
次に、図13を参照して、上記洗浄工程(S5、S6)を多段階で実施する向流型多段連続プロセスについて説明する。図13は、上記図11に示したN段の向流型多段連続プロセスに対して、M段の洗浄工程(S5、S6)を追加した向流型多段連続プロセスによる分離方法を示す工程図である。図13に示すように、1段目の混合工程(S1_1)及び分離工程(S2_1)の前段に、M段(Mは2以上の整数)の洗浄工程(S5_-1~-M、S6_-1~-M)が追加されている。
【0158】
図13に示すように、上記洗浄工程の洗浄用混合工程(S5)及び洗浄用分離工程(S6)の組合せをM段階繰り返してもよい。Mが多いほど、溶剤相2中に残存した微量の親水性粒子5を効果的に分離及び除去でき、第2回収工程(S4)で回収される疎水性粒子6中の親水性粒子5の含有率を低下できる。
【0159】
図13に示す例では、例えば、-M段目の洗浄用混合工程(S5_-M)にて、水が投入され、-M+1~-1段目の洗浄用混合工程(S5_-M+1~-1)、及び1~N段目の混合工程(S1_1~N)では、水は単独では投入されない。一方、最終段目であるN段目の混合工程(S1_N)にて、疎水性有機溶剤が投入され、1~N-1段目の混合工程(S1_1~N-1)、及び-M~-1段目の洗浄用混合工程(S5_-M~-1)では、疎水性有機溶剤は単独では投入されない。
【0160】
そして、-m段目(mは1以上、M-2以下の整数)の洗浄用分離工程(S6_-m)で分離された疎水性粒子6及び残存した親水性粒子5を含む溶剤相2と、-m-2段目の洗浄用分離工程(S6_-m-2)で分離された親水性粒子5及び残存した疎水性粒子6を含む水相1とが、-m-1段目の洗浄用混合工程(S5_-m-1)で混合、スラリー化される。次いで、当該-m-1段目の分離工程(S6_-m-1)にて、親水性粒子5を主に含む水相1と、疎水性粒子6を主に含む溶剤相2とに分離される。
【0161】
かかる洗浄用混合工程(S5)及び洗浄用分離工程(S6)の組合せを、各段で繰り返すことで、-1段目から-M段目に向かうほど、疎水性粒子6の含有率の高い溶剤相2が得られる一方、-M段目から-1段目に向かうほど、親水性粒子5の含有率の高い水相1が得られる。その後、-M段目の後段の第2回収工程(S4)では、疎水性粒子6の含有率の高い溶剤相2から、疎水性粒子6と疎水性有機溶剤がそれぞれ分離及び回収され、回収された疎水性有機溶剤は、N段目の混合工程(S1_N)に戻されて再利用される。
【0162】
上記のように、-M~-1段目では、水の添加により、溶剤相2に残存した微量の親水性粒子5が除去され、1~N段目では、溶剤の添加により、水相1に残存した疎水性粒子6が除去される。このように、向流型多段連続プロセスにおいて、M段階の洗浄工程(S5、S6)を実施することにより、図11に示す向流型多段連続プロセスと比べて、より一層、疎水性粒子6から疎水性粒子6を分離して、親水性粒子5の含有率が低い疎水性粒子6を回収できるとともに、分離速度や、生産性を低下させることもない。
【0163】
[5.4.磁着物の分離]
次に、図14を参照して、本発明の第3の実施形態に係る磁選工程を含む分離方法及び回収方法について説明する。
【0164】
上記分離方法による分離対象の混合物が例えばフライアッシュである場合、フライアッシュを水と疎水性有機溶剤の混合液に混合し静置すると、鉄分を含む金属酸化物(親水性粒子5)を主に含む水相1と、未燃カーボン(疎水性粒子6)を含む溶剤相2とに分離される。鉄分の比重は大きいため(比重:4~5)、鉄分の粒子径が6μmより大きいと、鉄分は、親水性粒子ではあるが、図5で説明したように、溶剤相2内へ沈降することもある。このようにフライアッシュには、鉄分等の磁着物がコンタミネーションとして含まれていることがある。石炭火力発電所等の炉内においては、酸素濃度が低く、かつ、石炭が炉内に滞留する時間は短時間であるため、石炭中に含まれている鉄分(Fe)の一部がマグネタイト(Fe)に還元される。このため、当該鉄分は主に、マグネタイト粉(Fe)として、フライアッシュに残存することとなる。
【0165】
このマグネタイト粉等の磁着物は、本実施形態に係る分離方法において、上記親水性粒子5及び疎水性粒子6と分離して回収することが好ましい。そこで、第3の実施形態では、上記分離対象の混合物(例えばフライアッシュ)に混入している磁着物(例えばマグネタイト粉)を、磁石を用いて吸着して分離する磁選工程を更に含む。
【0166】
図14は、第3の実施形態に係る磁選工程を含む分離方法を実行するための粒子分離装置8Bと、それを用いた向流型多段連続プロセスを示す模式図である。なお、第3の実施形態に係る粒子分離装置8B(図14参照。)は、上記第2の実施形態に係る粒子分離装置8(図10参照。)と比べて、磁選ストレーナー51、52、53等の磁選装置を具備する点で相違し、その他の各装置の機能及び構成は、第2の実施形態と略同一であるので、その詳細説明は省略する。
【0167】
図14に示すように、磁選工程を実行するための磁選装置としては、例えば、磁選ストレーナー51、52、53等が考えられる。向流型多段連続プロセスを実行する粒子分離装置8Bにおいて、磁選装置の設置位置は、磁選の目的によって変化し、例えば以下の(1)~(3)であってよい。
【0168】
(1)分離対象の混合物全体から磁着物を分離する場合は、図14に示す1段目の混合装置(ミキサー10A)の後段における、ミキサー10Aとセトラー20Aを接続する配管13Aの位置に、磁選ストレーナー51を設置すればよい。
(2)疎水性有機溶剤相2に混入している固形物(主に疎水性粒子6)から磁着物を分離する場合には、図14に示す1段目の分離装置(セトラー20A)の後段において、セトラー20Aと第2回収装置40を接続する配管23Aの位置に、磁選ストレーナー52を設置すればよい。
(3)水相1に混入している固形物(主に親水性粒子5)から磁着物を分離する場合には、図14に示す2段目の分離装置(セトラー20B)の後段において、セトラー20Bと第1回収装置30を接続する配管21Bの位置に、磁選ストレーナー53を設置すればよい。
【0169】
なお、磁選装置として磁選ストレーナー51、52、53を用いる場合、磁着物の回収方法としては、例えば、電磁ストレーナー内に磁着物がある程度蓄積されたら、ストレーナー内部から磁着物を手動で取り出して回収する方法と、磁着物を自動的に取り出して回収する方法がある。磁着物の含有率、処理量に応じて、これら手動回収又は自動回収を選択すればよい。
【0170】
ここで、分離対象の混合物がフライアッシュである場合の磁選方法について、詳細に説明する。上述したように、フライアッシュに含まれる磁着物は、マグネタイト粉(Fe)が主体である。当該マグネタイト粉は高温状態ではFeに酸化し、赤色になる。一方、フライアッシュを構成するSiO、Al等の金属酸化物は、薄い灰色乃至白色をしている。ここで、本実施形態に係る磁選工程によりフライアッシュから磁着物を取り除くことにより、回収される金属酸化物(親水性粒子5)の色むらを低減でき、品質を向上できる。この場合は、磁選装置として、図14に示す(1)磁選ストレーナー51、(3)磁選ストレーナー53の位置に磁選装置を設置することが好ましい。
【0171】
しかし、水相1内に存在する、約6μm未満の大きさの微細な磁着物粉は、水相1と溶剤相2の界面で作用する界面張力により、溶剤相2に移行させることが難しい場合が多い。そのため、水相1に含まれる微細な磁着物粉を除去するためには、図14に示す(3)磁選ストレーナー53の位置に磁選装置を設置することが好ましい。また、未燃カーボン中のカーボン含有率を増加させ、燃料としての効率を上げたい場合には、未燃カーボン(疎水性粒子6)とともに溶剤相2に含まれる磁着物を除去するために、図14に示す(2)磁選ストレーナー52の位置に磁選装置を設置することが好ましい。
【0172】
以上のように、製鉄業でフライアッシュを分離対象として、磁着物の磁選工程を行うとすれば、フライアッシュ中に微細な磁着物粉を含むことから、図14に示す(3)磁選ストレーナー53の位置に磁選装置を設置し、鉄分を含んだ磁着物粉を回収し、未燃カーボンの濃縮物とともに製鉄工程内で使用することが好ましいと考えられる。
【0173】
なお、上記では、磁選工程で分離される磁着物として、フライアッシュ中の鉄分を磁選する例について説明したが、磁着物はかかる例に限定されない。例えば、高炉ガス灰中には、磁着物として、磁性を有するスピネル型結晶構造のスピネルフェライトや、AFe(AはFe、Mn、Ni、Zn等)などが含まれている。従って、分離対象の混合物が高炉ガス灰である場合、当該高炉ガス灰からこれら磁着物を磁選により分離及び回収することも可能である。
【実施例
【0174】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0175】
[実施例1]
まず、表4を参照して実施例1の試験について説明する。表4は、本実施例1の試験条件と結果を示す。
【0176】
表4に示すように、栓付の100mlメスシリンダー内に、水80mlと各種の疎水性液体20mlを入れた後、水相1中のスラリー濃度C[質量%]が表4に記載の濃度になるように、混合物を投入した。次いで、メスシリンダー内の混合液を手で激しく10秒間混合した後、10秒間静置した。その後、すぐに水相1部分からサンプルを採取し、水相1中の固形物を回収し、回収した固形物の含有率を測定した。また、当該回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cを測定した。また、以下の式(4)で表される疎水性粒子分離率Kを算出した。一方、親水性粒子回収率Kは、以下の式(5)で算出した。
【0177】
[質量%]={(m-m)/m}×100 ・・・(4)
[質量%]=(m/m)×100 ・・・(5)
[g] :投入した疎水性粒子6の質量
[g] :水相1に含まれる疎水性粒子6の質量
[g] :投入した親水性粒子5の質量
[g] :水相1に含まれる親水性粒子5の質量
【0178】
また、表4に示すように、分離対象の混合物として使用した比較例1及び実施例1-1~1-9のフライアッシュ中には、カーボンが1.9質量%含まれており、その体積基準の50%粒子径は19μmであった。実施例1-10~1-13のフライアッシュ中にはカーボンが5.3質量%含まれており、その体積基準の50%粒子径は21μmであった。実施例1-14の高炉ガス灰中には、カーボンが26質量%含まれており、その体積基準の50%粒子径は15μmであった。実施例1-15のポリエチレンテレフタレート粉の体積基準の50%粒子径は94μmであった。実施例1-16の塩化ビニル樹脂粉の体積基準の50%粒子径は87μmであった。実施例1-15、1-16において、Fe粉(試薬)の体積基準の50%粒子径は1.2μmであり、実施例1-15、1-16で用いた混合物の疎水性粒子含有率は、それぞれ10質量%、10.4質量%であった。実施例1-17では、実施例1-10~1-13で使用したフライアッシュを水でスラリー化した混合液に対し、直径0.3mmのビーズで5秒間、粉砕処理を施した。このような粉砕処理後の混合液を乾燥して得られるフライアッシュを用いた。なお、体積基準の50%粒子径は、レーザー回折・散乱法を用い、サンプルを水でスラリー化し、撹拌と超音波により分散される湿式法で測定した。
【0179】
【表4】
【0180】
以上の試験の結果、表4に示すように、親水性粒子回収率Kは、実施例1-1~1-17のいずれも73質量%以上であり、特に実施例1-1と1-6以外の実施例では、92質量%以上であった。従って、本実施形態に係る分離方法により、混合物から親水性粒子5を高い回収率で回収できることが分かる。疎水性粒子分離率Kは、実施例1-15、1-16で、96~98質量%と非常に高く、実施例1-1~1-14において、42~56質量%であった。従って、本実施形態に係る分離方法により、回収された親水性粒子5中に含まれる疎水性粒子6の含有率を大幅に低減でき、含有率の高い高品質の親水性粒子5を回収できることが確認された。さらに、フライアッシュを粉砕処理した実施例1-17では、粉砕処理以外の点では同条件である実施例1-11と比較して、疎水性粒子分離率K、親水性粒子回収率Kともに上昇し、回収された親水性粒子5中に含まれる疎水性粒子6の含有率も大幅に低減した。
【0181】
水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、疎水性液体であるシリコーンオイルの比重が1.07である実施例1-1では、1.2質量%であった。一方、シリコーンオイルの比重が1.03である比較例1では、含有率Cは1.9質量%であった。従って、疎水性液体の比重を1.05超とすることにより、比重分離速度を向上できることが分かる。すなわち、比較例1では、シリコーンオイルの比重が1.05以下であるため、水相1の比重と疎水性液体相である溶剤相2の比重が近く、相の分離速度が非常に遅い。上記混合後、1分間静置したが、相の分離はほとんど進行しなかった。そこで、メスシリンダー上部の約20mlを採取し、固形物を回収し、回収物中の疎水性粒子6の含有率を測定したところ、1.9質量%であった。すなわち、投入したフライアッシュ中の疎水性粒子6の含有率からほとんど変化がなかった。
【0182】
なお、水相1中のスラリー濃度Cを変化させた実施例1-2~1-6を比較すると、水相1中のスラリー濃度が38質量%以上になると、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは大きくなり、特に水相1中のスラリー濃度が47質量%の場合(実施例1-6)、Cは1.7質量%であったが、元のスライアッシュ中の疎水性粒子の含有率(1.9質量%)と比較して、わずかに低下したにすぎない。これは、水相1中のスラリー濃度Cを高くしすぎると、水相1と溶剤相2との界面が不明確となり、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、あまり低下しなかったことを表していると推測される。
【0183】
[実施例2]
次に、実施例2の試験について説明する。実施例2の試験では、図7に示すミキサー10、セトラー20を備えた粒子分離装置8を使用して、単段の回分処理で分離プロセスを行った。まず、混合装置であるミキサー10(容量0.3L)内に、水と臭素系有機溶剤(1-ブロモプロパン)を1L/分ずつ、フライアッシュを75g/分投入し、攪拌機で激しく混合した。混合された混合液を、ポンプで2L/分の流量で上昇流式分離装置であるセトラー20(直径:40mm、高さ:300mm)に連続投入した。セトラー20の下部には、臭素系有機溶剤相(溶剤相2)が形成され、上部には水相1が形成され、水相1と空気の間には臭素系有機溶剤相の薄膜が形成された。そして、水相1の表層部から下に約3cmの箇所から水相1を連続して1L/分で引き抜き、水相1のサンプルを得た。一方、臭素系有機溶剤相の最下部から約3cmの箇所から、臭素系有機溶剤相を連続して1L/分で引き抜き、溶剤相2のサンプルを得た。各サンプルは遠心分離(1,700G×30秒間)にて脱液した後、乾燥炉にて乾燥し、固形物を回収した。上記式(4)と式(5)に基づいて、疎水性粒子分離率K、親水性粒子回収率Kを計算した。なお、使用したフライアッシュ中には、カーボンが13質量%含まれ、その体積基準の50%粒子径は21μmであった。体積基準の50%粒子径は、実施例1と同様に測定した。
【0184】
この実施例2の試験の結果、疎水性粒子分離率Kは55質量%であり、親水性粒子回収率Kは90質量%であった。また、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、6.9質量%であり、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子含有率は、53質量%であった。かかる試験結果によれば、本実施形態に係る粒子分離装置8を用いた分離方法により、親水性粒子5と疎水性粒子6を高い分離効率で分離及び回収できることが確認された。
【0185】
[実施例3]
次に、図15を参照して、実施例3の試験について説明する。なお、図15は、洗浄工程を含まない向流型3段連続プロセス(図11参照。)の各段における水相1又は溶剤相2の固形物中の疎水性粒子6の含有率の変化を示す。
【0186】
実施例3の試験では、上記実施例2で用いた混合装置と分離装置を3組接続した粒子分離装置8Aを用いて、向流型3段連続プロセス(混合-上昇流式分離、図11でN=3のとき)を実施した。実施例3でも、実施例2で使用したフライアッシュを用い、実施例2と同条件で試験を行った。
【0187】
この実施例3の試験の結果、疎水性粒子分離率Kは81質量%であり、親水性粒子回収率Kは91質量%であった。また、図15に示すように、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、2.9質量%であり、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子含有率は、56質量%であった。かかる試験結果によれば、実施例3の向流型3段連続プロセスでは、単段回分プロセスである実施例2と比較して、疎水性粒子分離率K及び親水性粒子回収率Kとも向上し、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは低下し、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率は上昇することが確認された。
【0188】
[実施例4]
次に、図16を参照して実施例4の試験について説明する。なお、図16は、洗浄工程(S5、S6)を含む向流型4段連続プロセス(図13参照。)の各段及び洗浄工程における水相1又は溶剤相2の固形物中の疎水性粒子6の含有率の変化を示す。
【0189】
実施例4の試験では、上記実施例3で用いた粒子分離装置8Aに、図12に示す-1段目の1組の混合装置と分離装置を追加し、-1段目の洗浄工程(S5、S6)を行う向流型4段連続プロセス(混合-上昇流式分離、図12でN=4のとき)を実施した。実施例4でも、実施例3で使用したフライアッシュを用い、実施例3と同条件で試験を行った。
【0190】
この実施例4の試験の結果、疎水性粒子分離率Kは82質量%であり、親水性粒子回収率Kは91質量%であった。また、図16に示すように、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、2.8質量%であり、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率は、58質量%であった。かかる試験結果によれば、実施例4の向流型4段連続プロセスでは、実施例3と比較して、洗浄工程(S5、S6)と4段目の混合工程(S1-4)と分離工程(S2-4)を追加することで、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cを低位にしながら、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率を著しく改善できることが確認された。
【0191】
[実施例5]
次に、図17を参照して実施例5の試験について説明する。なお、図17は、図16と同様の疎水性粒子6の含有率の変化を示す。
【0192】
実施例5の試験では、上記実施例3で使用したフライアッシュを水でスラリー化した(スラリー濃度500g/l)。ビーズミルを用い、直径500μmのジルコニアビーズ1kgを入れた容器(1l)内に上記スラリーを1l/分で投入し、1500rpmで撹拌し、粉砕後スラリーを得た。粉砕後スラリーを乾燥し、乾燥粉としての粉砕後フライアッシュを得た。粉砕後フライアッシュを用い、実施例4と同様の方法で固形物を回収し、図17に示す結果を得た。
【0193】
この実施例5の試験の結果、疎水性粒子分離率Kは97質量%であり、親水性粒子回収率Kは97質量%であった。また、図17に示すように、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cは、0.4質量%であり、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率は、84質量%であった。かかる試験結果によれば、フライアッシュを事前に粉砕することにより、水相1から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率Cをさらに低位にしながら、臭素系有機溶剤相から回収した固形物中の疎水性粒子6の含有率を著しく改善できることが確認された。
【0194】
[実施例6]
次に、上記の実施例1-3(表4参照。)に対し、ネオジム磁石による磁選工程を実施した試験について述べる。
【0195】
分離対象物として用いたフライアッシュ中の鉄分は、マグネタイト換算で5.7質量%であった。このフライアッシュを水のみと混合して、水スラリー化した後に、ネオジム磁石を近づけ、磁着物を分離したところ、マグネタイト換算で32質量%含有の磁着物を得ることができ、マグネタイト換算で35質量%の鉄分を回収できた。また、実施例1-3で分離した水相1に、ネオジム磁石を近づけ、磁着物を分離したところ、マグネタイト換算で34質量%含有の磁着物を得ることができ、マグネタイト換算で37質量%の鉄分が回収できた。さらに、実施例1-3で分離した溶剤相2に、ネオジム磁石を近づけ、磁着物を分離したところ、マグネタイト換算で24質量%の磁着物を得ることができた。いずれの場合も、マグネタイト換算の鉄分濃度は上昇しており、磁選工程による磁着物の回収ができることを確認した。なお、上記試験では、ICP法にてフライアッシュ中の鉄分を測定し、マグネタイト(Fe)に換算した。
【0196】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0197】
1 水相
2 疎水性溶剤相
3 溶剤液滴
4 水滴
5 親水性粒子
6 疎水性粒子
7 濃縮部
8、8A、8B 粒子分離装置
10 ミキサー(混合装置)
20 セトラー(分離装置)
30 第1回収装置
31 遠心分離機
32 乾燥装置
33 コンデンサー
40 第2回収装置
41 遠心分離機
42 乾燥装置
43 コンデンサー
51、52、53 磁選ストレーナー
200 横流式分離装置
210 上昇流式分離装置
S1 混合工程
S2 分離工程
S3 第1回収工程
S4 第2回収工程
S5 洗浄用混合工程
S6 洗浄用分離工程
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18