(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法
(51)【国際特許分類】
H04L 27/00 20060101AFI20230124BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
H04L27/00 C
G06K7/10 216
H04L27/00 A
(21)【出願番号】P 2019036506
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】菊月 達也
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-342725(JP,A)
【文献】特開2014-235595(JP,A)
【文献】特開2010-225069(JP,A)
【文献】特表2010-504679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0248624(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0301516(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0117535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/00-27/38
G06K 7/10
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出する立下り検出部と、
前記エンベロープの立上りを検出する立上り検出部と、
前記立上り検出部によって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第1時間差を取得する第1時間差取得部と、
前記立下り検出部によって検出される立下りと、当該立下りの次に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第2時間差を取得する第2時間差取得部と、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄するデータ管理部であって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄するデータ管理部と
を含む、無線信号復調装置。
【請求項2】
前記立下り検出部及び前記立上り検出部が前記立下り及び前記立上りの検出に用いる第1閾値と、前記第1閾値よりも低い第2閾値とを設定する閾値設定部をさらに含み、
前記立下り検出部は、前記エンベロープのレベルが前記第1閾値以上から前記第2閾値以下になると前記立下りを検出し、
前記立上り検出部は、前記エンベロープのレベルが前記第2閾値以下から前記第1閾値以上になると前記立上りを検出する、請求項1記載の無線信号復調装置。
【請求項3】
前記無線信号を受信するアンテナを含む受信系のノイズレベルを表すノイズレベルデータを保持する第1データ保持部と、
前記ノイズレベルに対する無線信号の複数の信号レベルの複数の信号ノイズ比の各々において、前記無線信号が破棄される割合が極小になる前記第1閾値又は前記第2閾値を表すテーブルデータを保持する第2データ保持部と
をさらに含み、
前記閾値設定部は、前記ノイズレベルに対する前記受信系で受信する無線信号の信号レベルの信号ノイズ比に前記テーブルデータ内で対応する前記第1閾値又は前記第2閾値を読み出し、前記読み出した前記第1閾値又は前記第2閾値を用いて前記第1閾値及び前記第2閾値を設定する、請求項2記載の無線信号復調装置。
【請求項4】
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りとの第1時間差を取得することと、
前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立下りと、当該立下りの次に前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立上りとの第2時間差を取得することと、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄することであって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄すること
を含む処理をコンピュータに実行させる、無線信号復調プログラム。
【請求項5】
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りとの第1時間差を取得することと、
前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立下りと、当該立下りの次に前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立上りとの第2時間差を取得することと、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄することであって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄すること
を含む、無線信号復調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ASK(Amplitude-Shift Keying)変調された受信信号をサンプリングして立上りを検出し、立上り検出から次の立上り検出までの期間を計測することで、RFID(Radio Frequency Identifier)タグの無線信号を識別する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】平成17年度 経済産業省委託事業.平成17年度エネルギー使用合理化.電子タグシステム開発調査事業.(メディアコンテンツ業界における電子タグ実証実験).報告書.平成18年3月.有限責任中間法人日本出版インフラセンター.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、RFIDタグがRFIDリーダの読み取り信号に対して応答する無線信号のパケット長は最小で7シンボルと短く、ノイズ等を含む他の電波との判別が容易ではない。このため、従来の読み出し方法のように立上り検出から次の立上り検出までの期間のみに基づいて識別する方法では、RFIDリーダが無線信号以外の信号を無線信号として誤検出するおそれがある。また、RFIDタグの無線信号以外の信号であっても、パケット長が短い場合には同様の誤検出が生じるおそれがある。
【0005】
そこで、誤検出を抑制した無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施の形態の無線信号復調装置は、同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出する立下り検出部と、前記エンベロープの立上りを検出する立上り検出部と、前記立上り検出部によって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第1時間差を取得する第1時間差取得部と、前記立下り検出部によって検出される立下りと、当該立下りの次に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第2時間差を取得する第2時間差取得部と、前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄するデータ管理部であって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄するデータ管理部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
誤検出を抑制した無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態の無線信号復調装置100の動作を説明する図である。
【
図2】実施の形態の無線信号復調装置100のハードウェア構成図である。
【
図3】RFIDタグの応答信号のフレームに含まれる同期用パターン及びPSDUを示す図である。
【
図4】PIE方式におけるパターンの判別方法を説明する図である。
【
図5】RFIDタグ10の応答信号の立下りと立上りを検出する際の2つの閾値を示す図である。
【
図6】高閾値HTHに対する誤検出確率の特性を示す図である。
【
図7】実施の形態の無線信号復調装置100の構成を示す図である。
【
図8】高閾値HTHに対する破棄率の特性を示す図である。
【
図9】SNRと、各SNRにおいて破棄率の極小値を与える高閾値HTHとを関連付けたテーブルデータを示す図である。
【
図10】無線信号復調装置100の制御装置110が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【
図11】実施の形態の変形例の無線信号復調装置100Mの構成を示す図である。
【
図12】高感度モードと低感度モードにおける高閾値HTHに対する破棄率と誤検出確率の関係を示す図である。
【
図13】高感度モード及び低感度モードと高閾値HTHを関連付けたテーブルデータを示す図である。
【
図14】無線信号復調装置100Mの制御装置110Mが実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法を適用した実施の形態について説明する。
【0010】
<実施の形態>
図1は、実施の形態の無線信号復調装置100の動作を説明する図である。無線信号復調装置100は、一例としてRFIDタグ10を読み取るRFIDリーダであり、RFIDタグ10の応答信号10Aと、RFIDタグ10の応答信号10A以外の信号及びノイズ等とを識別し、RFIDタグ10の応答信号10Aを復調し、RFIDタグ10の応答信号10A以外の信号及びノイズ等を破棄する。なお、以下では、RFIDタグ10と、RFIDリーダとしての無線信号復調装置100とを含むシステムをRFIDシステムと称す。
【0011】
図1には、一例として、Sigfoxの端末1が放射する電波1Aと熱雑音2とを無線信号復調装置100がRFIDタグ10の応答信号として誤検出しないように正しく判別している状態を示す。
【0012】
無線信号復調装置100は、Sigfoxの端末1が放射する電波1Aと熱雑音2とを受信しても破棄し、RFIDタグ10の応答信号10Aを復調し、さらに復号化してデータ(ID)を読み取る。
【0013】
図2は、実施の形態の無線信号復調装置100のハードウェア構成図である。無線信号復調装置100は、実施の形態の無線信号復調プログラムを実行する。無線信号復調装置100が無線信号復調プログラムを実行することによって実現される方法は、実施の形態の無線信号復調方法である。
【0014】
無線信号復調装置100は、CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)51、メモリ52、ディスプレイ53、キーボード54、I/F(Interface)55、バス56を有する。CPU51、メモリ52、ディスプレイ53、キーボード54、I/F55は、バス56により互いに接続されている。
【0015】
CPU51は、メモリ52に記録された無線信号復調プログラムを読出し、実行することにより、無線信号復調方法を実現する。
【0016】
メモリ52は、HDD(Hard Disk Drive)のような記憶装置、及び、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ等を含む。HDDには、無線信号復調プログラム、及び、CPU51が無線信号復調プログラムを実行する際に利用するデータ等が格納される。RAMは、CPU51が実行する無線信号復調プログラム、及び、無線信号復調プログラムを実行する際に得られるデータ等を一時的に格納する。
【0017】
ディスプレイ53は、無線信号復調装置100の操作に利用される画像等を表示する表示装置であり、タッチパネルが一体化されていてもよい。
【0018】
キーボード54は、利用者が無線信号復調装置100を操作する際に利用する入力装置である。I/F55は、無線信号復調装置100と外部装置とを接続するための外部接続装置である。
【0019】
図3は、RFIDタグの応答信号のフレームに含まれる同期用パターン及びPSDU(Physical Layer Convergence Protocol)を示す図である。ここには、一例としてEPC Gen2のversion 2.0.1によるRFIDタグの応答信号に含まれる同期用パターン及びPSDUを示す。RFIDシステムはPIE方式(Pulse Interval. Encoding)を採用するため、
図3に示す同期用パターン及びPSDUは、PIE方式に準拠している。
【0020】
図3(A)には、同期用パターンとしてFrame-Syncのパルス信号を示す。Frame-Syncは、delimiter,data-0,R=>T calibration(RTcal)の3つの区間を含む。3つの区間のパルス信号の長さは、3シンボル分の長さである。Frame-Syncは、フレームの先頭に配置される。
【0021】
Delimiterは、所定の長さ(固定長)のL(Low)レベルの区間であり、その長さはEPC Gen2のversion 2.0.1によって12.5μs±5%という固有の長さに決められている。data-0の長さは1 Tari(type A reference interval)であり、R=>T calibrationの長さは、2.5Tari以上、3.0Tari以下に決められている。data-0とR=>T calibrationは、ともにLレベルのPW(Pulse Width:パルス幅)区間を含む。data-0とR=>T calibrationのPW区間の長さは等しい。
【0022】
図3(B)に示すPSDUは、RFIDタグの応答信号のフレームのうちのFrame-Sync以外の部分であり、コード及びデータを含む場合と、コードのみを含む場合がある。PSDUは、フレームの中でFrame-Syncの後に配置される。PSDUのパルス信号の長さは、最小で4シンボル分の長さである。このため、Frame-SyncとPSDUの合計の長さは、最小で7シンボルになる。
【0023】
図3(B)には、一例として“1”、“0”、“0”、“1”の並びの4つのシンボルを示す。シンボル“0”、“1”は、ともに1つのPW区間を含み、PW区間以外の区間の長さが異なることで“0”と“1”を識別することができる。
【0024】
ここで、1つのシンボル分のパルス信号は、PIE方式を採用するRFIDシステムでは、パルスが落ち込むPW区間(Lレベルの区間)を1つ含む区間で表され、区間の始期はパルスがHレベルに立ち上がった時点であり、区間の終期はPW区間が終わる時点(LレベルからHレベルに遷移する時点)である。
【0025】
図4は、PIE方式におけるパターンの判別方法を説明する図である。
図4には、一例として4つのシンボル“1”、“0”、“0”、“1”を表すパルス信号を示す。また、
図4には実施の形態によるパターンの判別方法に加えて、比較用に非特許文献1におけるパターンの判別方法も示す。以下では非特許文献1におけるパターンの判別方法を公知例のパターンの判別方法と称す。
【0026】
ここでは、パターンの判別方法を分かり易くするためにパルス信号を用いて立下りと立上りを検出して時間差A、Bを求める手法について説明するが、実際には復調する前のエンベロープから立下りと立上りを検出することになる。
【0027】
公知例のパターンの判別方法は、白抜きの三角形(△)で示す立上りのタイミングのみを検出して隣り合う立上り同士の時間差Aの並びの順番(複数の時間差Aが時系列的に並べられるパターン)に基づいて、RFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定している。
【0028】
実施の形態のパターンの判別方法は、公知例のパターンの判別方法による隣り合う立上り同士の時間差Aの並びの順番に加えて、黒塗りの三角形(▲)で示す立下りのタイミングを検出して、立下りから次の立上りまでの時間差Bの並びの順番(複数の時間差Bが時系列的に並べられるパターン)を用いて、RFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定する。
【0029】
図5は、RFIDタグ10の応答信号の立下りと立上りを検出する際の2つの閾値を示す図である。
図5に示す応答信号は、無線信号の一例である。
【0030】
ここでは、2つの閾値を用いてRFIDタグ10の応答信号の立下りと立上りを検出する。2つの閾値のうち高い方は高閾値HTHであり第1閾値の一例である。2つの閾値のうち低い方は低閾値LTHであり第2閾値の一例である。ここで説明する低閾値LTH及び高閾値HTHは、一例としてLTH=1-HTHの関係を有するが、このような関係を有しなくてもよい。
【0031】
無線信号復調装置100は、応答信号のレベルが高閾値HTH以上から低閾値LTH以下になると応答信号の立下りを検出する。また、無線信号復調装置100は、応答信号のレベルが高低閾値LTH以下から閾値HTH以上になると応答信号の立上りを検出する。
【0032】
図4に示す時間差A、Bは、実際にはエンベロープに対して
図5に示すように低閾値LTH及び高閾値HTHを用いて立下りと立上りを検出することによって求めることになる。
【0033】
図6は、高閾値HTHに対する誤検出確率の特性を示す図である。
図6において、横軸は高閾値HTHを示し、縦軸は誤検出確率を示す。誤検出確率とは、RFIDリーダである無線信号復調装置100がRFIDタグ10の応答信号以外の信号をRFIDタグ10の応答信号として誤って検出する確率である。
【0034】
また、誤検出確率は、1Msps (Megasamples per second:メガサンプル/秒)で観測を行い、10ミリ秒に1回の頻度で無線信号復調装置100が信号を受信する条件下で行った。受信感度を重視して各SNRにおいて得られた最小の誤検出確率の値を選択して特性を作成した。
【0035】
図6には比較用として公知例のパターンの判別方法における誤検出確率を破線で示す。
【0036】
公知例の手法では、高閾値HTHが0.7のときに誤検出確率は約5×10-6であり、無線信号復調装置100が電波を1時間連続で受信した場合の数値に換算すると、約1.4回/時間になる。すなわち、電波を1時間受信すると、1回以上誤検出が生じることになる。これは誤検出が多いと言える値である。
【0037】
これに対して、実施の形態の手法(実線)では、時間差Aに加えて時間差Bを見ているので、高閾値HTHが0.7のときに誤検出確率は約8×10-7であり、無線信号復調装置100が電波を1時間連続で受信した場合の数値に換算すると、約0.25回/時間である。これは公知例の手法の場合の約1/6の確率であり、十分に低減できていることが分かる。
【0038】
図7は、実施の形態の無線信号復調装置100の構成を示す図である。無線信号復調装置100は、アンテナ101、制御装置110、ディスプレイ120、及び操作部130を含む。ディスプレイ120は、
図2のディスプレイ53に対応し、操作部130は、
図2のキーボード54に相当する。なお、操作部130は、キーボード54に加えて、
図2のキーボード54とディスプレイ120に一体化されたタッチパネルを含んでもよく、マウス等のその他の入力デバイスを含んでもよい。
【0039】
制御装置110は、主制御部111、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、SNR取得部115、閾値設定部116、データ管理部117、データ解析部118、及びメモリ119を有する。
【0040】
主制御部111、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、SNR取得部115、閾値設定部116、データ管理部117、データ解析部118は、無線信号復調プログラムを実行する制御装置110の機能を表したものである。また、メモリ119は、メモリ52(
図2参照)を機能的に表したものである。
【0041】
主制御部111は、無線信号復調装置100の処理を統括する処理部であり、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、SNR取得部115、閾値設定部116、データ管理部117、データ解析部118が行う処理以外の処理を実行する。
【0042】
IQ出力部112Aは、アンテナ101に接続されており、アンテナ101から放射される読み取り信号を受信したRFIDタグ10の応答信号の振幅と位相を表すI値及びQ値を取得し、エンベロープ演算部112Bに出力する。
【0043】
エンベロープ演算部112Bは、IQ出力部112Aから入力されるI値及びQ値に基づき、RFIDタグ10の応答信号のエンベロープ(包絡線)を演算する。より具体的には、エンベロープ演算部112Bは、IQ出力部112Aから入力されるI値及びQ値から求まる応答信号の振幅を時系列的に配置することにより、応答信号のエンベロープ(包絡線)を演算する。エンベロープは、応答信号の振幅を時系列的に並べたものだからである。エンベロープ演算部112Bは、応答信号のエンベロープ(包絡線)を立下り検出部113D、立上り検出部113U、SNR取得部115に出力する。
【0044】
立下り検出部113Dは、
図5に示す2つの閾値を用いて、エンベロープ演算部112Bから入力される応答信号のエンベロープから立下りを検出するとともに、立下りが生じた時刻を検出する。立下り検出部113Dは、立下りが生じた時刻を時間差取得部114Bに出力するとともに、立下りが生じたことと、立下りが生じた時刻とをデータ管理部117に出力する。
【0045】
立上り検出部113Uは、
図5に示す2つの閾値を用いて、エンベロープ演算部112Bから入力される応答信号のエンベロープから立上りを検出するとともに、立上りが生じた時刻を検出する。立上り検出部113Uは、立上りが生じた時刻を時間差取得部114A、114Bに出力するとともに、立上りが生じたことと、立上りが生じた時刻とをデータ管理部117に出力する。
【0046】
時間差取得部114Aは、立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻と、立上り検出部113Uから入力された1つ前の立上りの時刻との時間差を取得する。この時間差は、
図4に示す時間差Aに相当するため、以下では時間差Aとして説明する。時間差取得部114Aは、時間差Aを表すデータをデータ管理部117に出力する。
【0047】
1つ前の立上りの時刻は、現時点で立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻よりも1シンボル前の立上りの時刻に相当する。時間差取得部114Aは、第1時間差取得部の一例であり、時間差Aは第1時間差の一例である。
【0048】
時間差取得部114Bは、立下り検出部113Dから入力される立下りの時刻と、その後に立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻との時間差を取得する。立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻は、エンベロープの立下りが生じた後に最初に生じるエンベロープの立上りの時刻である。
【0049】
時間差取得部114Bが取得する時間差は、
図4に示す時間差Bに相当するため、以下では時間差Bとして説明する。時間差取得部114Bは、時間差Bを表すデータをデータ管理部117に出力する。時間差取得部114Bは、第2時間差取得部の一例であり、時間差Bは第2時間差の一例である。
【0050】
SNR取得部115は、メモリ119に格納されるノイズレベルと、エンベロープ演算部112Bから入力される応答信号のエンベロープとに基づいて、SNR(Signal to Noise Ratio:信号ノイズ比)を取得する(求める)。SNR取得部115は、SNRを閾値設定部116に出力する。
【0051】
SNR取得部115は、一例としてエンベロープ演算部112Bから入力される応答信号のエンベロープを保持しておき、データ管理部117から入力されるフレームの切り替わりのタイミングを表す時刻に基づき、各フレームに対応する区間のエンベロープの最大値をノイズレベルで除算することによってSNRを求める。
【0052】
フレームの切り替わりのタイミングを表す時刻が分かれば、各フレームに対応するエンベロープの区間(1フレームに相当する区間)が分かるため、SNR取得部115は、各フレームに対応するエンベロープの区間におけるエンベロープの最大値を求めることができる。
【0053】
閾値設定部116は、SNR取得部115から入力されるSNRを用いてメモリ119から最適な高閾値HTHを読み出し、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定する。低閾値LTHは、読み出した高閾値HTHを用いて、1-HTHで求めることができる。
【0054】
メモリ119には、SNRに応じた最適な高閾値HTHを格納するテーブルデータがある。このテーブルデータは、破棄率を最小化するためのSNRと高閾値HTHとの組み合わせを格納するテーブルデータである。
【0055】
データ管理部117には、立下り検出部113Dから立下りが生じたことを表すデータと、立下りが生じた時刻を表すデータとが入力されるとともに、立上り検出部113Uから立上りが生じたことを表すデータと、立上りが生じた時刻を表すデータとが入力される。
【0056】
また、データ管理部117には、時間差取得部114Aから時間差Aを表すデータが入力されるとともに、時間差取得部114Bから時間差Bを表すデータが入力される。
【0057】
データ管理部117は、立下り及び立上りが生じた時刻を表すデータと、時間差A及び時間差Bを表すデータとに基づいて、エンベロープの立下り及び立上りが時系列的に生じているパターンを識別し、エンベロープがRFIDタグ10の応答信号のものであるかどうかを判定する。
【0058】
データ管理部117は、時間差A及び時間差Bのパターンに基づいてFrame-SyncとPSDUを識別し、Frame-Syncに基づいてフレームの先頭を識別する。すなわち、データ管理部117は、Frame-Syncに基づいてフレームの開始位置及び終了位置を識別することができる。フレームの開始位置及び終了位置は、フレームの切り替わりの位置である。
【0059】
データ管理部117は、エンベロープが時間差A及び時間差Bの所定のパターンを含めば、エンベロープがRFIDタグ10の応答信号のものであると判定し、当該所定のパターンを含む区間の応答信号を復調する。また、データ管理部117は、エンベロープが所定のパターンを含まないときは、エンベロープがRFIDタグ10の応答信号のものではないと判定し、当該所定のパターンを含まない区間の応答信号を破棄する。
【0060】
所定のパターンとは、RFIDシステムの応答信号であることを表す時間差A及び時間差Bのパターンである。
【0061】
また、データ管理部117は、フレームの切り替わりのタイミングを表す時刻を表すデータをSNR取得部115に出力する。
【0062】
データ解析部118は、データ管理部117によって復調された応答信号の復号化を行い、PSDUに含まれるデジタルデータを取得する。
【0063】
メモリ119は、無線信号復調プログラム、無線信号復調プログラムの実行に伴って利用するデータ等の他に、後述する
図9に示すデータ(SNRに応じた最適な高閾値HTHを格納するテーブルデータ)を格納する。メモリ119は、第1データ保持部、第2データ保持部、第3データ保持部の一例である。
【0064】
図8は、高閾値HTHに対する破棄率の特性を示す図である。高閾値HTHに対する破棄率の特性は、複数レベルのSNR(10dB、13dB、15dB、18dB、20dB)について求められている。
図8に示す特性は、シミュレーションで求めたものである。なお、破棄率とは、無線信号復調装置100が受信する電波のエンベロープのうち、1フレームに相当する区間を破棄する確率(割合)である。
【0065】
図8に示すように高閾値HTHを変化させると、破棄率は、ある高閾値HTHにおいて極小値を取る。極小値を取るときの高閾値HTHは、SNRによって変化する。
図8には、各SNRにおける破棄率の特性における極小値を丸(○)で囲って示す。このようにSNRによって破棄率が変化するのは、各SNRにおいて最適な高閾値HTHがあるためと考えられる。
【0066】
そこで、無線信号復調装置100は、
図9に示すテーブルデータをメモリ119に格納する。
図9は、SNRと、各SNRにおいて破棄率の極小値を与える高閾値HTHとを関連付けたテーブルデータを示す図である。SNRが10dB、13dB、15dB、18dB、20dBであるときの破棄率の極小値は、それぞれ、0.75、0.7、0.65、0.6、0.6である。このようなテーブルデータを用いてSNRに応じて高閾値HTHを設定すれば、破棄率を最小化して、受信感度を向上させることができる。
【0067】
図10は、無線信号復調装置100の制御装置110が実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【0068】
処理がスタートすると、IQ出力部112Aは、RFIDタグ10の応答信号からI値及びQ値を取得しエンベロープ演算部112Bに出力する(ステップS1)。
【0069】
エンベロープ演算部112Bは、I値及びQ値に基づいてRFIDタグ10の応答信号のエンベロープを表すデータ(エンベロープの波形を表すデータ)を求め、立下り検出部113D、立上り検出部113U、SNR取得部115に出力する(ステップS2)。
【0070】
SNR取得部115は、メモリ119に格納されるノイズレベルと、エンベロープ演算部112Bから入力される応答信号のエンベロープとに基づいてSNRを取得し、閾値設定部116に出力する(ステップS3)。一例として、SNR取得部115は、取得したSNRの小数点第1位の値を四捨五入したSNRを閾値設定部116に出力すればよい。
【0071】
閾値設定部116は、SNR取得部115から入力されるSNRを用いてメモリ119から最適な高閾値HTHを読み出し、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定する(ステップS4)。
【0072】
主制御部111は、立下り検出部113Dによって立下りが検出されているかどうかを判定する(ステップS5)。
【0073】
主制御部111は、立下り検出部113Dによって立下りが検出されていない(S5:NO)と判定すると、立下り検出部113Dに立下りを検出させる(ステップS6)。
【0074】
主制御部111は、ステップS6の処理を終えるとフローをステップS5にリターンさせる。
【0075】
主制御部111は、ステップS5において、立下り検出部113Dによって立下りが検出されている(S5:YES)と判定すると、立上り検出部113Uによって立上りが検出されているかどうかを判定する(ステップS7)。
【0076】
主制御部111は、立上り検出部113Uによって立上りが検出されていない(S7:NO)と判定すると、立上り検出部113Uに立上りを検出させる(ステップS8)。
【0077】
主制御部111は、ステップS8の処理を終えるとフローをステップS5にリターンさせる。フローがステップS8からS5にリターンした後は、フローはステップS5からS7に進行する。既に立下りが検出されているからである。
【0078】
主制御部111は、ステップS7において立上り検出部113Uによって立上りが検出されている(S7:YES)と判定すると、フローをステップS9に進行させる。ステップS5からS8は、連続した立下りと立上りが検出されるまで繰り返されるループ処理である。
【0079】
時間差取得部114Aは、立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻と、立上り検出部113Uから入力された1つ前の立上りの時刻との時間差Aを取得する(ステップS9)。
【0080】
時間差取得部114Bは、立下り検出部113Dから入力される立下りの時刻と、その後に立上り検出部113Uから入力される立上りの時刻との時間差Bを取得する(ステップS10)。
【0081】
データ管理部117は、時間差取得部114Aによって取得された時間差Aが正常な時間差であるかどうかを判定する(ステップS11)。時間差Aについての正常な時間差とは、RFIDシステムの応答信号について時間差Aについて定められた所定の時間差であり、所定のマージンによる幅(プラスマイナスの幅)を有する。データ管理部117は、時間差取得部114Aによって取得された時間差Aが所定の時間差の範囲内にあれば、時間差Aが正常であると判定する。
【0082】
データ管理部117は、時間差Aが正常である(S11:YES)と判定すると、時間差取得部114Bによって取得された時間差Bが正常な時間差であるかどうかを判定する(ステップS12)。時間差Bについての正常な時間差とは、RFIDシステムの応答信号について時間差Bについて定められた所定の時間差であり、所定のマージンによる幅(プラスマイナスの幅)を有する。データ管理部117は、時間差取得部114Bによって取得された時間差Bが所定の時間差の範囲内にあれば、時間差Bが正常であると判定する。
【0083】
データ管理部117は、時間差Bが正常である(S12:YES)と判定すると、時間差A及びBが正常であると判定した区間の応答信号を復調する(ステップS13)。
【0084】
データ解析部118は、データ管理部117によって復調された応答信号の復号化を行い、PSDUに含まれるデジタルデータを取得する(ステップS14)。
【0085】
一方、データ管理部117は、ステップS11において時間差Aが正常ではない(S11:NO)と判定した場合、又は、ステップS12において時間差Bが正常ではない(S12:NO)と判定した場合は、時間差A又はBが正常ではないと判定した区間の応答信号を破棄する(ステップS15)。
【0086】
主制御部111は、ステップS14又はS15の処理を終えると一連の処理を終える(END)。
【0087】
以上のように、実施の形態の無線信号復調装置100は、隣り合う立上り同士の時間差Aが時系列的に並べられるパターンに加えて、立下りから次の立上りまでの時間差Bが時系列的に並べられるパターンを用いて、RFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定する。時間差A及び時間差Bの両方を用いてRFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定すれば、時間差Aだけで判別する場合に比べて、判定精度を大幅に改善することができる。時間差Aだけでは、RFIDシステムの応答信号以外の信号及びノイズ等と区別できない場合が有り得るからである。
【0088】
シミュレーションでは、時間差A及び時間差Bの両方を用いてRFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定すれば、時間差Aのみに基づいて判定する場合に比べて誤検出確率を約1/6に低減することを確認できた。
【0089】
したがって、誤検出を抑制した無線信号復調装置100、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法を提供することができる。
【0090】
また、高閾値HTH及び低閾値LTHを適切な値に設定することにより、破棄率を低減してRFIDタグ10の受信感度を向上させることができる。
【0091】
なお、以上では、RFIDシステムの応答信号とそれ以外の信号及びノイズ等とを判別する形態について説明したが、RFIDシステムの応答信号に限られるものではない。特にデータ長が短い信号であれば、ノイズ等と誤検出する可能性があるため、そのような信号とそれ以外の信号及びノイズ等とを判別してもよい。
【0092】
また、以上では、無線信号復調装置100について説明したが、例えば横軸を周波数、縦軸を電波強度に設定し、RFIDタグ10の応答信号の電波強度の周波数分布をディスプレイ120に表示すれば、応答信号の分布を可視化(見える化)することができる。このような場合には、無線信号復調装置100を無線電波可視化装置として捉えることができる。無線電波可視化装置は、RFIDタグ10の応答信号に加えて、例えばBLE(Bluetooth Low Energy(登録商標))、WiFi(登録商標)、及びBluetooth(登録商標)のすべて又はいずれかの電波強度の周波数分布をディスプレイ120に表示してもよい。各電波の表示色が異なるようにすれば、複数種類の電波を分布を可視化することができる。このような無線電波可視化装置は、無線電波可視化プログラムを実行して無線電波可視化方法を実現する。
【0093】
また、以上ではフローのステップS4において、
図9に示すテーブルデータから閾値設定部116が最適な高閾値HTHを読み出して、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定する形態について説明した。
【0094】
しかしながら、このように閾値設定部116が立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定することを行わなくてもよい。この場合には、例えば、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに予め所定の高閾値HTH及び低閾値LTHを設定しておくか、又は、利用者が選択した値に設定できるようにすればよい。
【0095】
また、利用者が高閾値HTH及び低閾値LTHを設定するモードを選択できるようにしてもよい。
【0096】
図11は、実施の形態の変形例の無線信号復調装置100Mの構成を示す図である。以下では、
図7に示す無線信号復調装置100と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0097】
無線信号復調装置100Mは、アンテナ101、制御装置110M、ディスプレイ120、及び操作部130を含む。無線信号復調装置100Mは、利用者が高閾値HTH及び低閾値LTHを設定するモードを選択できるようにするために、専用のアプリケーションプログラムを実行し、タッチパネル付きのディスプレイ120にGUI(Graphic User Interface)によるボタンの画像等を表示する。
【0098】
制御装置110Mは、主制御部111M、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、入力受付部115M、閾値設定部116M、データ管理部117、データ解析部118、及びメモリ119Mを有する。
【0099】
主制御部111M、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、入力受付部115M、閾値設定部116M、データ管理部117、データ解析部118は、無線信号復調プログラムを実行する制御装置110Mの機能を表したものである。また、メモリ119Mは、メモリ52(
図2参照)を機能的に表したものである。
【0100】
主制御部111Mは、無線信号復調装置100Mの処理を統括する処理部であり、IQ出力部112A、エンベロープ演算部112B、立下り検出部113D、立上り検出部113U、時間差取得部114A、114B、入力受付部115M、閾値設定部116M、データ管理部117、データ解析部118が行う処理以外の処理を実行する。
【0101】
また、主制御部111Mは、アプリケーションプログラムを実行し、タッチパネル付きのディスプレイ120にGUIボタンの画像等を表示する処理を行う。
【0102】
入力受付部115Mは、操作部130を介して無線信号復調装置100Mの利用者が入力する指令を受け付ける。入力受付部115Mによって受け付けられた指令の内容は、主制御部111Mを介して閾値設定部116Mに入力される。ここで、利用者が入力する指令は、例えば、高閾値HTH及び低閾値LTHの値を設定するモード(高感度モード又は低感度モード)を選択する指令等である。
【0103】
閾値設定部116Mは、入力受付部115Mから入力されるモード(高感度モード又は低感度モード)に応じた高閾値HTHをメモリ119Mから読み出し、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定する。低閾値LTHは、読み出した高閾値HTHを用いて、1-HTHで求めることができる。
【0104】
メモリ119Mは、無線信号復調プログラム、無線信号復調プログラムの実行に伴って利用するデータ等の他に、高感度モード又は低感度モードの高閾値HTHを格納するテーブルデータを格納する。
【0105】
図12は、高感度モードと低感度モードにおける高閾値HTHに対する破棄率と誤検出確率の関係を示す図である。
【0106】
図12(A)に示す高閾値HTHに対する破棄率の特性は、
図8に示す特性と同一である。高感度モードとは、SNRが比較的小さい信号でも復調する割合が比較的高い(破棄率が比較的低い)高閾値HTHに設定するモードである。また、低感度モードとは、SNRが比較的小さい信号を復調する割合が比較的高くない(比較的低い(破棄率が比較的高い))高閾値HTHに設定するモードである。低感度モードは第1モードの一例であり、高感度モードは第2モードの一例である。
【0107】
ここでは一例として、復調する割合が比較的高いかどうかは、一例として破棄率が10%未満(復調する確率が90%以上)であるかどうかで判断することとした。また、高感度モードでは高閾値HTHを0.7に設定し、低感度モードでは高閾値HTHを0.6に設定することとする。
【0108】
高閾値HTHが0.7の場合には、SNRが13dBで破棄率が約10%であるため、SNRが13dB以上あれば復調できることになる。すなわち、高感度モードではSNRが比較的低い13dB、15dBあたりでも復調が可能である。
【0109】
一方、高閾値HTHが0.6の場合には、SNRが13dBでは破棄率が約90%であり、SNRが13dBの場合の破棄率は約30%であり、SNRが15dBの場合の破棄率は約9%であるため、低感度モードではSNRが15dB以上でないと十分に復調できないことになる。
【0110】
また、
図12(B)に示すように、誤検出確率を高閾値HTHが0.7の高感度モードと、高閾値HTHが0.6の低感度モードとを比べると、低感度モードの方が誤検出確率が低いことが分かる。
【0111】
このように、破棄率と誤検出確率とは背反するような関係にあり、高閾値HTHを設定するのは無線信号復調装置100Mの利用者の用途等によって利用者が決めてもよい。このような考えの下で、無線信号復調装置100Mでは利用者が高感度モード又は低感度モードを選択できるようにしている。
【0112】
図13は、高感度モード及び低感度モードと高閾値HTHを関連付けたテーブルデータを示す図である。
図13に示すように、高感度モードでは高閾値HTHが0.7に設定され、低感度モードでは高閾値HTHが0.6に設定されている。
【0113】
図14は、無線信号復調装置100Mの制御装置110Mが実行する処理を表すフローチャートを示す図である。
【0114】
処理がスタートすると、主制御部111Mは、アプリケーションプログラムを実行し、タッチパネル付きのディスプレイ120にGUIボタンの画像等を表示する(ステップS01M)。
【0115】
入力受付部115Mは、操作部130を介して無線信号復調装置100Mの利用者が入力する指令を受け付ける(ステップS02M)。利用者が入力する指令は、高感度モード又は低感度モードのいずれに設定するかを表す指令である。
【0116】
閾値設定部116Mは、入力受付部115Mから入力されるモード(高感度モード又は低感度モード)に応じた高閾値HTHをメモリ119Mから読み出し、立下り検出部113D及び立上り検出部113Uに高閾値HTH及び低閾値LTHを設定する(ステップS03M)。
IQ出力部112Aは、RFIDタグ10の応答信号からI値及びQ値を取得しエンベロープ演算部112Bに出力する(ステップS1)。
【0117】
エンベロープ演算部112Bは、I値及びQ値に基づいてRFIDタグ10の応答信号のエンベロープを演算し、立下り検出部113D、立上り検出部113Uに出力する(ステップS2M)。
【0118】
以下、
図10のステップS5からS15と同様の処理が行われる。
【0119】
そして、ステップS14又はS15の処理が終了すると、主制御部111Mは、アプリケーションプログラムを終了するとともに、一連の処理を終える(END)。
【0120】
以上のように、実施の形態の変形例の無線信号復調装置100Mは、隣り合う立上り同士の時間差Aが時系列的に並べられるパターンに加えて、立下りから次の立上りまでの時間差Bが時系列的に並べられるパターンを用いて、RFIDシステムの応答信号であるかどうかを判定する。
【0121】
このため、誤検出確率を時間差Aのみに基づいて判定する場合に比べて約1/6に低減することができる。
【0122】
したがって、誤検出を抑制した無線信号復調装置100M、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法を提供することができる。
【0123】
また、無線信号復調装置100Mは、アプリケーションプログラムを実行することにより、ディスプレイ120に高感度モード又は低感度モードを選択するGUIボタンを表示するので、利用者は自己の用途に応じたモードを簡単に選択することができる。
【0124】
以上では、高感度モードでは高閾値HTHを0.7に設定し、低感度モードでは高閾値HTHを0.6に設定する形態について説明したが、これらの値に限られるものではない。利用者がシミュレーションで求めた値に設定できるようにしてもよい。
【0125】
また、以上では、SNRが比較的小さい信号でも復調する割合が比較的高く、誤検出確率が比較的高い高感度モードと、SNRが比較的小さい信号を復調する割合が比較的低く、誤検出確率が低い低感度モードとを利用者が選択できるようにする形態について説明した。
【0126】
しかしながら、利用者に対して、破棄率と誤検出確率のどちらを優先するモードにするかを選択させるようにしてもよい。破棄率の低さを優先するモードが利用者によって選択されれば、無線信号復調装置100Mは高感度モードに設定すればよい。また、誤検出確率の低さを優先するモードが利用者によって選択されれば、無線信号復調装置100Mは低感度モードに設定すればよい。
【0127】
以上、本発明の例示的な実施の形態の無線信号復調装置、無線信号復調プログラム、及び無線信号復調方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0128】
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出する立下り検出部と、
前記エンベロープの立上りを検出する立上り検出部と、
前記立上り検出部によって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第1時間差を取得する第1時間差取得部と、
前記立下り検出部によって検出される立下りと、当該立下りの次に前記立上り検出部によって検出される立上りとの第2時間差を取得する第2時間差取得部と、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄するデータ管理部であって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄するデータ管理部と
を含む、無線信号復調装置。
(付記2)
前記立下り検出部及び前記立上り検出部が前記立下り及び前記立上りの検出に用いる第1閾値と、前記第1閾値よりも低い第2閾値とを設定する閾値設定部をさらに含み、
前記立下り検出部は、前記エンベロープのレベルが前記第1閾値以上から前記第2閾値以下になると前記立下りを検出し、
前記立上り検出部は、前記エンベロープのレベルが前記第2閾値以下から前記第1閾値以上になると前記立上りを検出する、付記1記載の無線信号復調装置。
(付記3)
前記無線信号を受信するアンテナを含む受信系のノイズレベルを表すノイズレベルデータを保持する第1データ保持部と、
前記ノイズレベルに対する無線信号の複数の信号レベルの複数の信号ノイズ比の各々において、前記無線信号が破棄される割合が極小になる前記第1閾値又は前記第2閾値を表すテーブルデータを保持する第2データ保持部と
をさらに含み、
前記閾値設定部は、前記ノイズレベルに対する前記受信系で受信する無線信号の信号レベルの信号ノイズ比に前記テーブルデータ内で対応する前記第1閾値又は前記第2閾値を読み出し、前記読み出した前記第1閾値又は前記第2閾値を用いて前記第1閾値及び前記第2閾値を設定する、付記2記載の無線信号復調装置。
(付記4)
前記第1閾値が比較的小さく、前記無線信号の誤検出の割合が比較的低く、前記無線信号が破棄される割合が第1所定割合の第1モードと、前記第1モードよりも前記第1閾値が大きく、前記第1モードよりも前記無線信号の誤検出の割合が高く、前記無線信号が破棄される割合が第2所定割合の第2モードとを表すデータを保持する第3データ保持部と、
前記第1モード又は前記第2モードを選択する操作を受け付ける操作受付部と
をさらに含み、
前記閾値設定部は、前記操作受付部で受け付けた前記第1モード又は前記第2モードの前記第1閾値を用いて前記第1閾値及び前記第2閾値を設定する、付記2記載の無線信号復調装置。
(付記5)
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りとの第1時間差を取得することと、
前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立下りと、当該立下りの次に前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立上りとの第2時間差を取得することと、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄することであって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄すること
を含む処理をコンピュータに実行させる、無線信号復調プログラム。
(付記6)
同期用パターンと複数のシンボルとを含むフレームデータを変調した無線信号のエンベロープの立下りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することと、
前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りと、当該立上りよりも1シンボル前に前記エンベロープの立上りを検出することによって検出される立上りとの第1時間差を取得することと、
前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立下りと、当該立下りの次に前記エンベロープの立下りを検出することによって検出される立上りとの第2時間差を取得することと、
前記無線信号を前記フレームデータに対応する区間単位で復調又は破棄することであって、前記エンベロープが前記第1時間差及び前記第2時間差の所定のパターンを含む場合に当該所定のパターンを含む区間の無線信号を復調し、前記エンベロープが前記所定のパターンを含まない場合に当該所定のパターンを含まない区間の無線信号を破棄すること
を含む、無線信号復調方法。
【符号の説明】
【0129】
10 RFIDタグ
100、100M 無線信号復調装置
101 アンテナ
110、110M 制御装置
113D 立下り検出部
113U 立上り検出部
114A、114B 時間差取得部
115M 入力受付部
116、116M 閾値設定部
117 データ管理部